以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図面において、同様な構成要素には同一符号を付し、その詳細な説明は重複しないようにする。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1の多層光ディスク装置50の主要構成を概略的に示したものである。図1に示す多層光ディスク装置50は、多層光ディスク5を回転駆動するディスク駆動部51、多層光ディスク5の情報の記録再生に係る光ヘッド装置52、多層光ディスク5の再生信号の処理を行う再生信号処理回路56、再生信号処理回路56の出力に基づき多層光ディスク5の記録再生に係るサーボ制御を行うためのサーボ制御回路55、各種制御の処理を記憶するRAM(Random Access Memory)80および、ホスト機器(図示せず)からのコマンドに応じて各種制御処理を実行するMPU(Micro Processing Unit)81等を含む。
再生信号処理回路56は、ウォブル信号検出回路57、再生信号検出回路(RF信号検出回路)58およびサーボ信号検出回路59を含み、光ヘッド装置52からの指令を受けて動作する。
再生信号処理回路56に含まれるウォブル信号検出回路57は、多層光ディスク5の情報記録層上に存在する蛇行した案内トラック溝からの反射光から、ウォブル信号を検出する機能を有する。ただし、多層光ディスク5が案内トラック溝を持たない再生専用のROM(Read Only Memory)ディスクである場合には、ウォブル信号検出回路57の機能は必要とされない。
再生信号処理回路56に含まれるサーボ信号検出回路59は、光ヘッド装置52から受信した信号に基づいて、フィードバック制御のための各種サーボ信号SSを生成する。これらサーボ信号SSはサーボ制御回路55に含まれる光ヘッド制御回路61に出力される。
復調回路60は、再生信号検出回路58とウォブル信号検出回路57の出力側に接続されており、再生信号検出回路58から出力された再生信号とウォブル信号検出回路57から出力されたウォブル信号とを復調して2値化データを生成する。なお、図示しないがこのような2値化データは同期情報およびアドレス情報として、MPU81およびサーボ制御回路55にも出力され、利用され得る。
再生信号処理回路56に含まれる再生信号検出回路58は、光ヘッド装置52から受信した信号に基づいて、再生信号を検出する機能を有する。また、再生信号検出回路58は、再生信号の信号振幅値を表すデータ等の状態信号を生成し、状態信号をMPU81に出力する。
サーボ制御回路55は、再生信号処理回路56に含まれるサーボ信号検出回路59から出力されたサーボ信号SSに基づいてトラッキングエラー信号を生成する光ヘッド制御回路61、光ヘッド装置52の位置を制御するスレッドモータ制御回路62、および多層光ディスク5を回転駆動するディスク駆動部51を制御するディスク駆動部制御回路63を含む。
また、サーボ制御回路55に含まれる光ヘッド制御回路61は、当該光ヘッド制御回路61で生成したトラッキングエラー信号に基づいて光ヘッド装置52の制御を行う。また、サーボ制御回路55に含まれる、光ヘッド制御回路61、スレッドモータ制御回路62、ディスク駆動部制御回路63は、MPU81からの命令を受けて動作する。
光ヘッド装置52については後に詳しく述べるが、多層光ディスク5に光ビームILを照射し、多層光ディスク5の情報記録層で反射された戻り光ビームを受光して信号を生成する。生成された信号を再生信号処理回路56に出力する。
ディスク駆動部51は、例えば、スピンドルモータ等の回転駆動機構を含む。多層光ディスク5の回転駆動に関し、サーボ制御回路55に含まれるディスク駆動部制御回路63は、スピンドルモータから供給された実回転数を表すパルス信号に基づいて、多層光ディスク5の実回転数を目標回転数に一致させるようにスピンドルサーボを実行する。
多層光ディスク5は、ディスク駆動部51の駆動軸(スピンドル)に固定されたターンテーブルに着脱自在に装着されている。本実施例1において多層光ディスク5は、複数の情報記録層を有する多層光ディスクとして説明する。
ただし、本発明に係る光ヘッド装置52および多層光ディスク装置50は、光ディスクの情報記録層が、単層であるか多層であるかに関わらず、光ディスクへの情報の記録および、光ディスクの情報の再生が可能である。例えば、光ディスクとしては、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu−ray Disc)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
スレッドモータ53は、例えば、ラックまたはピニオンなどの送り機構に回転駆動力を伝達することで、フレーム52Cを多層光ディスク5のラジアル方向(多層光ディスク5の半径方向)に移動させる。なお、光ヘッド装置52は、フレーム52Cに固定されているためフレーム52Cとともに移動する。
以上に述べたサーボ制御回路55、光ヘッド装置52、再生信号処理回路56等により、ビーム光ILを多層光ディスク5の所定の情報記録層に照射するためのフォーカスサーボループ及びトラッキングサーボループが形成されている。
RAM80は、プログラム領域80Aとデータ領域80Bとを含む。前述したMPU81は、RAM80のプログラム領域80Aに記憶されているプログラムを読み込むとともに、データ領域80Bを用いて当該プログラムを実行する。これにより、MPU81は、多層光ディスク装置50内の各回路の動作を制御するとともに、当該各回路から出力された信号に基づいて多層光ディスク装置50を制御するための判断を行うことができる。
以上は、光ディスク装置50において、多層光ディスク5に記録されたデータを再生する場合について説明したが、データを多層光ディスク5に記録する場合には、MPU81は変調回路64を制御する。具体的には、図1に示した変調回路64が、MPU81から出力されたデータに対してエラー訂正符号を付与し、データ変調を施して記録データを生成する。さらに、変調回路64は、当該記録データに基づいてライトストラテジ信号を生成し、レーザ制御回路54に出力する。
レーザ制御回路54は、入力されたライトストラテジ信号に基づいて光ヘッド装置52内にある図示しない半導体レーザを制御し、当該半導体レーザからデータ記録に必要な発光パワーを有するレーザ光ELを出射させる。これにより、記録可能な多層光ディスクに対し、データの記録が可能となる。
次に本発明の実施の形態1に係る光ヘッド装置52について詳しく説明する。図2は、本発明の実施の形態1に係る光ヘッド装置52の基本構成を概略的に示したものである。図2に示されるように、光ヘッド装置52は、光源としての半導体レーザ2、ビームスプリッタ3、対物レンズ4、対物レンズアクチュエータ9、光学素子6、および光検出素子27を含む。
なお、図2は、本実施の形態の光ヘッド装置52の基本構成を示したものであるが、図2の構成に限定されるものではない。例えば、光ヘッド装置52は、対物レンズ4を制御し、多層光ディスク5の情報記録層に対し適切にビーム光ILを照射するための焦点誤差量およびトラッキング誤差量を検出するセンサー光学系を含んでいてもよい。
本発明の実施の形態1において、光ヘッド装置52の動作について説明する。データの再生を行う際、図1に示すレーザ制御回路54は、MPU81からの命令を受け、図2に示す光ヘッド装置52内に含まれる半導体レーザ2の出力を制御し、データ再生に必要な発光パワーを有するレーザ光ELを出射させる。
半導体レーザ2から出射された光ビームELは、ビームスプリッタ3により反射された後、対物レンズ4によって光ビームILとなって集光される。これにより、多層光ディスク5の情報記録層の中で、情報を取得する情報記録層上に集光スポットが形成される。
多層光ディスク5で反射した信号光としての反射光ビームは、対物レンズ4によって集光され、ビームスプリッタ3を透過して光学素子6に入射する。多層光ディスク5の情報記録層で反射したこの反射光ビームは、当該情報記録層の情報トラックの周期構造に起因する回折光(以降、反射回折光ビームと称す)を含んでいる。
すなわち、光ビームILが多層光ディスク5の情報記録層によって、反射されると同時に、回折を受けることになる。このため、反射回折光ビームには、情報記録層に入射する時点では存在しない回折成分が含まれる。
光学素子6は、入射した反射回折光ビームを透過または回折する素子であり、反射回折光ビームを透過光ビーム(0次回折光ビームと称すこともできるが、以降、透過光ビームと称す)D0、第1の回折光ビームD1a、第2の回折光ビームD2aに透過または回折する。
透過光ビームD0、第1の回折光ビームD1aおよび第2の回折光ビームD2aは、光検出素子27上の所定の位置に配置された受光部である、主受光部270、第1の副受光部271および第2の副受光部272にそれぞれ照射され光スポットを形成する。受光部の配置の詳細については後に詳しく説明する。
図3は、光学素子6の構成例と光学素子6に入射する反射回折光ビームの位置(点線で表示)を示したものである。反射回折光ビームは上述したとおり、反射光だけでなく回折光を含んでおり、多層光ディスク5によって回折された、+1次反射回折光ビーム(第1の反射回折光ビーム)RL1と、−1次反射回折光ビーム(第2の反射回折光ビーム)RL2と、多層光ディスク5によって回折されない0次反射回折光ビームRL0を含む。
すなわち、光学素子6には+1次反射回折光ビーム(第1の反射回折光ビーム)RL1と、−1次反射回折光ビーム(第2の反射回折光ビーム)RL2と、多層光ディスク5によって回折されない0次反射回折光ビームRL0が入射することになる。
光学素子6は、光ヘッド装置52に組み込まれた状態での多層光ディスク5のタンジェンシャル(接線)方向に対応する方向Tに沿って形成された2つの分割線600および601により分割された第1の回折領域602と、第2の回折領域604と、第3の領域603とを含む。方向Rは方向Tと直行する、多層光ディスク5のラジアル方向に平行な向きについて示したものである。
図3に示すように、0次反射回折光ビームRL0は、略円形の形状であり、光学素子6の第1の回折領域602、第2の回折領域604、第3の領域603に入射する。+1次反射回折光ビーム(第1の反射回折光ビーム)RL1は光学素子6の第1の回折領域602にのみ入射する。また、−1次反射回折光ビーム(第2の反射回折光ビーム)RL2は、光学素子6の第2の回折領域604にのみ入射する。
すなわち、光学素子6の分割された領域について、第3の領域603には0次反射回折光ビームRL0のみが入射する。また、第1の回折領域602は、0次反射回折光成分RL0が入射するとともに、この0次反射回折光成分RL0に重複する+1次反射回折光成分RL1も入射する。また、光学素子6の第2の回折領域604には、0次反射回折光成分RL0が入射するとともに、この0次反射回折光成分RL0に重複する−1次反射回折光成分RL2も入射する。
+1次反射回折光ビーム(第1の反射回折光ビーム)RL1と、−1次反射回折光ビーム(第2の反射回折光ビーム)RL2と、多層光ディスク5によって回折されない0次反射回折光ビームRL0とを含む、略円形の反射回折光ビームは、光学素子6の第1の回折領域602、第2の回折領域604によって透過または回折され、第3の領域603によって透過される。
光学素子6の第1の回折領域602は、0次及び+1次の透過回折光の屈折効率が、当該0次及び、+1次以外の次数の透過回折光の回折効率よりも高い格子構造を有するので、+1次反射回折光ビーム(第1の反射回折光ビーム)RL1を透過および回折することができ、回折された+1次反射回折光ビーム(第1の反射回折光ビーム)RL1は+1次回折光ビーム(光学素子6によって回折された回折光ビーム)D1aとなる。
一方、光学素子6の第1の回折領域602によって回折されない+1次反射回折光ビーム(第1の反射回折光ビーム)RL1は透過光ビーム(光学素子6によって回折されない透過光ビーム)D0となり第1の回折領域602を透過することになる。(光学素子6を透過、回折した光ビームに関しては記号の先頭に「D」を付す。)
同様に、光学素子6の第2の回折領域604は、0次及び+1次の透過回折光の屈折効率が、当該0次及び、+1次以外の次数の透過回折光の回折効率よりも高い格子構造を有するので、−1次反射回折光ビーム(第2の反射回折光ビーム)RL2を透過および回折することができ、回折された−1次反射回折光ビーム(第2の反射回折光ビーム)RL2は+1次回折光ビーム(光学素子6によって回折された第2の回折光ビーム)D2aとなる。
一方、光学素子6の第2の回折領域604によって回折されない−1次反射回折光ビーム(第2の反射回折光ビーム)RL2は透過光ビーム(光学素子6によって回折されない透過光ビーム)D0となり第2の回折領域604を透過することになる。
光学素子6の第3の領域603に入射した0次反射回折光ビームRL0は、回折されずに透過光ビーム(光学素子6によって回折されない透過光ビーム)D0となる。この場合、第3の領域603は回折構造を有さない構成とすることができる。
光学素子6の第3の領域603に回折構造を付加し、0次及び+1次の透過回折光の屈折効率が、当該0次及び、+1次以外の次数の透過回折光の回折効率よりも高い格子構造を有する第3の回折領域603aとした場合には、第3の回折領域603aに入射した0次反射回折光ビームRL0は、透過および回折される。回折された0次反射回折光ビームRL0は+1次回折光ビームD3aとなる。一方、第3の回折領域603aによって回折されないRL0は透過光ビームD0となり第3の回折領域603aを透過することになる。
このように、第3の領域603を第3の回折領域603aとするか否かは製造者の自由であるが、第3の回折領域603aとすることによって光ヘッド装置を構成する各素子(光学素子、および光検出素子27等)の配置に係る精度を向上させる事が可能となる。これについては、後に詳しく述べる。
光学素子6を構成するこのような第1〜第3の回折領域は、例えば、透過型ブレーズド回折格子を用いて実現することができる。透過型ブレーズド回折格子は、断面形状が鋸歯状である格子溝を有する回折格子である。格子溝のブレーズ角を変化させることで、各次数の回折光の回折効率を調整することが可能である。図3の第1の回折領域602および、第2の回折領域604では、0次及び+1次の透過回折光の回折効率が当該0次及び+1次以外の他の次数の光の回折効率よりも高くなるようにブレーズ角を決定すればよい。
また、回折領域を形成する透過型ブレーズド回折格子の形状を、曲線格子形状とする事によって、反射回折光ビームを透過および回折するだけでなく、透過および回折した回折光ビームを所定の位置(例えば、光検出素子27上にある主受光270部または第1の副受光部271上)に、所定の大きさで集光することが可能となる。
さらに、上述の曲線格子形状は不等間隔に構成してもよく、これにより+1次回折光ビームD1a及び+1次回折光ビームD2aの収差を抑制することができ、より光検出素子27上の光スポットを小さくすることが可能となる。
本発明の実施の形態1においては、光学素子6における回折領域の回折格子を、0次回折光ビーム及び+1次回折光ビームを発生させるように構成しているが、発生させる回折光の次数はこれに限ったものではなく、例えば、0次回折光と−1次回折光を発生させる構成としても良い。
0次反射回折光ビームRL0、+1次反射回折光ビームRL1、−1次反射回折光ビームRL2からなる円形の反射回折光ビームは、図3に示すように光学素子6に入射するが、光学素子6には上述した、反射回折光ビームの他に、光ヘッド装置の光学系にかかる迷光が発生し、光学素子6に入射する可能性がある。そこで、図4に示すように、反射回折光ビームが入射する領域を取り囲むように遮光領域8を備えてもよい。
遮光領域8は、金属薄膜などの光反射膜または光吸収膜、あるいは回折格子によって構成することができる。遮光領域8を光学素子6に設けることにより、光ヘッド装置の光学系にかかる迷光を抑制することが可能となる。また、光学素子6において、第1の回折領域602、第2の回折領域604、第3の領域603は必ずしも互いに密接している必要はなく、それぞれの領域の加工に伴う公差分だけ互いに離れていてもよい。
図5は、光検出素子27における主受光部270および第1の副受光部271、第2の副受光部272の配置、光学素子6を透過および回折した回折光ビームが光検出素子27上に形成する光スポットを概略的に示したものである。図5において、光検出素子27上に形成される光スポットを示す記号の先頭に「Q」を付す。
図5に示すように光検出素子27は、光学素子6を透過した略円形の透過光ビームD0の光スポットQMを受光する主受光部270と、光学素子6の第1の領域602による+1次回折光ビームD1aの光スポットQS1を単一受光面で受光する第1の副受光部271と、光学素子6の第2の領域604による+1次回折光ビームD2aの光スポットQS2を単一受光面で受光する第2の副受光部272とを含む。
主受光部270上の透過光ビームD0の光スポットQMは、略円形状を有している。また、光ヘッド装置の光学系によっては、楕円形状を有することもある。透過光ビームD0の光スポットQMは、光学素子6によって回折されない透過光ビームD0によって形成されている。
さらに、図5に示すように透過光ビームD0は、多層光ディスク5の情報トラックの構造に起因した、多層光ディスク5によって回折されない0次反射回折光ビームRL0による光スポットQ0と、これに重複する第1の反射回折光ビームRL1による光スポットQ01、および第2の反射回折光ビームRL2による光スポットQ02とを含む。主受光部270は、これらの光スポットQ0、Q01、Q02を含む光スポットQMを受光するとともに、光信号を光電変換して電気信号Mを再生信号処理回路56に出力する。
また、光検出素子27の第1の副受光部271および第2の副受光部272は、それぞれ、+1次回折光ビームD1aおよび+1次回折光ビームD2aによる光スポットQS1およびQS2を受光するとともに、それぞれの受光量に応じた電気信号SLおよびSRを生成し、これら電気信号SL、SRを、図1で示した再生信号処理回路56に出力する。再生信号処理回路56は、電気信号SL、SRに基づいてサーボ信号SSを生成し、このサーボ信号SSを光ヘッド制御回路61に出力する。
次に、サーボ信号SSを電気信号SL、SRより生成しトラッキングサーボを実現するためのプッシュプル信号PPの生成方法について説明する。多層光ディスク5の情報記録層における所定のトラックに集光スポットを追従させるために、対物レンズ4の位置を制御するトラッキングサーボには、プッシュプル信号PPが使用される。プッシュプル信号PPは、以下の演算式(1)で与えられる。
ただし、SEは、第1の副受光部271の出力信号SLから得られた第1の受光信号、SFは、第2の副受光部272の出力信号SRから得られた第2の受光信号を、それぞれ表している。
図1に示した、サーボ制御回路55に含まれる光ヘッド制御回路61は、上式(1)で得られるプッシュプル信号PPのレベル(値)を固定値に近づけるように対物レンズ4に備えられた対物レンズアクチュエータ9を制御し、集光スポットを多層光ディスク5の情報記録層のラジアル方向(多層光ディスク5の半径方向)の所定の位置に正確に追従させることが可能となる。
光スポットQS1に含まれる第1の反射回折光ビームRL1と、光スポットQS2に含まれる第2の反射回折光ビームRL2とが等しい場合、前記固定値を0とすれば、前記所定の位置は略トラック位置とすることができる。
また、光スポットQS1に含まれる第1の反射回折光ビームRL1と、光スポットQS2に含まれる第2の反射回折光ビームRL2とが等しくない場合、これらの光量差分をキャンセルさせるように前記固定値にオフセットを与えることで、同様に前記所定の位置は略トラック位置とすることができる。
次に、光検出素子27上に入射する他層迷光について説明する。多層光ディスク5が複数の情報記録層を有する場合、多層光ディスク5で反射した戻り光ビームRLには、集光スポットを形成する情報記録層からの戻り光ビームによる光スポットQM、QS1、QS2を形成する信号光とは別に、集光スポットを形成させている情報記録層以外の情報記録層からの戻り光ビームである他層迷光が含まれる。
図5に他層迷光によって形成された他層迷光領域QSTを示す。他層迷光領域QSTは、集光スポットを形成する情報記録層と、当該情報記録層以外の情報記録層との層間間隔に依存した領域径を持つ。
集光スポットを形成する情報記録層と、その情報記録層に最も近い情報記録層との層間間隔が大きくなるにつれ、他層迷光領域QSTの領域径は大きくなり、同時に光強度の密度は低くなる。逆に、層間間隔が小さくなるにつれ、光検出素子27上の他層迷光領域QSTの領域径は小さくなり、同時に光強度の密度は高くなる。この場合、ノイズ成分としての影響は大きくなる。
以下に、集光スポットを形成する(情報を取得する)情報記録層に最も近い情報記録層による他層迷光領域QSTと当該他層迷光領域QSTにより発生するノイズがキャンセルされる原理について説明する。情報記録層を複数有し、複数の情報記録層からの他層迷光による他層迷光領域QST(n)についても同様の考えである。
図5に示されるように、他層迷光は光検出素子27上に他層迷光領域QSTを形成する。他層迷光領域QSTの領域内の同心円状の点線は他層迷光領域QSTの位相が同位相である位置を示しており、同一の点線上においては他層迷光領域QSTの他層迷光の位相が同じ(同位相)である。
光スポットQS1およびQS2を受光する際、他層迷光領域QSTは主受光部270、第1の副受光部271および第2の副受光部272によって受光されるため、他層迷光領域QSTがノイズ成分として電気信号M、SRおよびSLに重畳してしまう。
このノイズ成分には、光スポットQS1およびQS2による信号光と他層迷光とが干渉することにより発生するAC的なノイズ成分NACと、光スポットQS1およびQS2による信号光と他層迷光とが重なりを持たずに、主受光部270、第1の副受光部271及び第2の副受光部272において受光されることで発生するノイズ成分NDCとを含む。
ノイズ成分NACをキャンセルする原理について説明する。ノイズ成分NACは信号光と他層迷光とが干渉することで発生するため、他層迷光領域QSTの位相の変動がそのままノイズとして現れる。
図5に示されるように、他層迷光領域QSTは、光学素子6を透過した透過光ビームD0による光スポットQMの中心または、他層迷光領域QSTの中心に関して同心円状に等しい位相を有している。このため、光スポットQM、QS1およびQS2がこの等しい位相となる領域に形成されれば、受光部で検知される信号に重畳するノイズ成分NACは略同一の信号となる。
サーボ制御は式(1)で示したように、第1の副受光部271および第2の副受光部272で受光するQS1およびQS2の光強度の差に基づいて行われるので、第1の副受光部271および第2の副受光部272における他層迷光の位相が異なる状態で照射されると、サーボ制御が困難となる。
図5に示されるように、第1の副受光部271および第2の副受光部272を他層迷光領域QSTの中心から等距離の位置に設け、第1の副受光部271に光スポットQS1を形成し、第2の副受光部272に光スポットQS2を形成するように、光学素子6の回折格子を構成することによって、電気信号SL、SRに重畳されるノイズ成分NACは同程度の信号強度となる。
このように第1の副受光部271および、第2の副受光部272を配置することにより、プッシュプル信号PPは、第1の副受光部271による第1の受光信号SEと第2の副受光部272による受光信号SFとの差となるため、ノイズ成分NACはキャンセルされる。
他層迷光領域QSTは、透過光ビームD0による光スポットQMの中心または、他層迷光領域QSTの中心に関して同心円状に位相が等しいため、信号光である光スポットQS1、QS2は他層迷光領域QSTの周方向に延びた形状であってもよい。
また、周方向に垂直な方向に関しては、他層迷光領域QSTの位相差が1/6波長となる幅以内であれば、光の干渉による光強度の変動は1/10以下となるため、ノイズ成分NACをキャンセルすることができ、正確なプッシュプル信号を算出することができる。
図6は、位相差と波長との関係について示したものである。図6において、横軸は他層迷光の位相を表し、縦軸は他層迷光の振幅を表している。位相差の単位は角度(rad)であり、波長の単位は長さ(m)である。図6に示すように他層迷光が、位相0〜2π(rad)で1周期となる状態を基準とすると、位相が1波長分ずれるとは、1波長を角度に換算して2πだけずれることを意味する。
しかしながら、対象とする他層迷光の波長の変化に伴い、位相0〜2π(rad)において光が有する周期の数も変化する。従って、実施の形態1における他層迷光の位相差とは、他層迷光QSTの波長に基づいて算出された、長さの単位を有した値である。例えば、この位相差を表す単位として、nmを用いることができる。
図6に示すように、例えば、第1の副受光部271において受光される他層迷光の位相をθ1、第2の副受光部272において受光される他層迷光の位相をθ2とした場合、第1の副受光部271において受光される他層迷光の位相と、第2の副受光部272において受光される他層迷光の位相との差とは、θ1とθ2に基づいてf(θ1、θ2)により算出された長さの単位を有した値Δとなる。
次に、光スポットの位置の変化に伴う動作について説明する。信号光の光スポットQS1、QS2は光学素子6の第1の領域602および第2の領域604による+1次回折光ビームを用いているため、温度変化等で半導体レーザ2から出力された光ビームELの波長が変動した場合、または、光学素子6の回折溝のピッチが環境温度等で変化した場合等に、光スポットQS1、QS2の照射位置は光軸中心からいずれも、同時に離れる方向、或いは、光軸中心からいずれも近付く方向に変動する。
そのため、信号光の光スポットQS1とQS2との距離は、ずれてしまうが、他層迷光領域QSTに対しては、光スポットQS1、QSは他層迷光領域QSTの同じ位相上を移動することになるため、温度変化に影響されずプッシュプル信号PPでノイズ成分NACはキャンセルされた状態が維持される。
すなわち、図5に示すように第1の副受光部271および第2の副受光部272を光スポットQMの中心または、他層迷光領域QSTの中心から等距離の位置に配置することによって、ノイズ成分NACをキャンセルすることができ、正確なプッシュプル信号を算出することができる。
次にノイズ成分NDCをキャンセルする原理について説明する。ノイズ成分NDCは信号光と他層迷光との干渉が起こらないため、同じ面積の受光部を備えることにより受光部で検出されるノイズ成分を同一のレベルとすることができる。従って、第1の副受光部271と第2の副受光部272とを同一の面積とすることで、プッシュプル信号PPはこれらが引き算されてノイズ成分NDCはキャンセルされる。
以上は、集光スポットを形成する(情報を取得する)情報記録層に最も近い情報記録層からの他層迷光についてのみ説明したが、集光スポットを形成する情報記録層以外の情報記録層に起因する他層迷光も存在する場合について説明する。
集光スポットを形成する情報記録層から2番目に近い情報記録層による他層迷光領域QST(2)は、集光スポットを形成する情報記録層から最も近い情報記録層による他層迷光領域QSTより大きくなる。すなわち、図5に示す他層迷光領域QSTよりも領域が大きくなる。一方で、位相の関係は他層迷光領域QSTと同様に、光スポットQMまたは他層迷光領域QSTの中心を基準として同心円状となる。
このため、最も近い情報記録層による他層迷光でのノイズ成分NACのキャンセルの原理と同様の原理で、集光スポットを形成する情報記録層以外の情報記録層に起因する他層迷光によるノイズ成分NACはキャンセルされる。
すなわち、第1の副受光部271および第2の副受光部272を光スポットQMの中心または他層迷光領域QSTの中心から等距離の位置に配置することによって、層数が多い多層光ディスク5に対しても、ノイズ成分NACをキャンセルすることができ、正確なプッシュプル信号を算出することができる。
集光スポットを形成する情報記録層から3番目またはそれ以降に近い情報記録層についてのノイズ成分NDCにおいても、第1の副受光部271および第2の副受光部の受光部の面積を同一とする事によってキャンセルされる。
また、第1の副受光部271および第2の副受光部272は面積が小さいほど、光ヘッド装置に係る迷光の受光を抑制できるため有効である。
また、他層迷光領域QSTの領域内に第1の副受光部および、第2の副受光部を配置することで、他層迷光領域QSTを避けて第1の副受光部および第2の副受光部を設けたものと比較して、光検出素子27を小さな面積で構成することができる。
仮に、他層迷光領域QSTを避けて副受光部を配置する場合、光学素子6における回折角を大きくする必要がある。すなわち、光学素子6における回折格子の溝のピッチをより狭くする必要があり、加工の限界および精度の限界が問題となってくる。しかしながら、本発明の実施の形態1によると、他層迷光領域QSTの領域内に副受光部を配置するため、回折角も小さくてよく、加工精度は充分に確保しやすい。
図7はトラッキングサーボに伴い、対物レンズ4がラジアル方向にシフトした場合を示したものである。トラッキングサーボに伴い、対物レンズがラジアル方向にシフトした場合、透過光ビームD0による光スポットQMおよび他層迷光領域QSTの中心はともに図7の矢印に示すように、シフトすることになる(図7では矢印で示す方向にシフトしている状態を示す)。一方、光スポットQS1、QS2については光学素子6によって回折照射されたものであるため、対物レンズ4のシフトに伴ってシフトすることがない。
仮に、対物レンズ4のラジアル方向へのシフト量が小さく、光スポットQS1、QS2のそれぞれに重畳される他層迷光領域QSTにおける他層迷光の位相の差が小さい場合、例えば、第1の副受光部271における他層迷光領域QSTの位相と、第2の副受光部272における他層迷光領域QSTの位相との差が、他層迷光領域QSTを形成する他層迷光の波長の1/6以下である場合等においては、ノイズ成分NACの影響は小さく、正確なプッシュプル信号PPを算出しトラッキングサーボを行うことができる。
一方、対物レンズ4のシフトが大きく第1の副受光部271における他層迷光領域QSTの位相と第2の副受光部272における他層迷光領域QSTの位相が大きく異なる場合、例えば、第1の副受光部271における他層迷光領域QSTの位相と第2の副受光部272における他層迷光領域QSTの位相との差が、他層迷光領域QSTを形成する他層迷光の波長の1/6より大きい場合は、プッシュプル信号PPの算出の際ノイズ成分NACがキャンセルされなくなってしまう。
さらに、多層光ディスク5の所定の情報記録層上において、集光スポットが多層光ディスク5の情報記録層における未記録領域と記録領域をまたぐ状態にある場合、記録領域と未記録領域では反射率が異なるため、他層迷光領域QSTにおいて、多層光ディスク5のトラック方向に境界を有する縞状パターンが生じる場合がある。
図8は、他層迷光領域QSTにおいて、多層光ディスク5のトラック方向に境界を有する縞状パターンQSZを示したものである。一般に、情報は、多層光ディスク5を中心とした螺旋に沿って多層光ディスク5の情報記録層に記録されている。しかしながら実際は、多層光ディスク5の製造上のばらつきから、多層光ディスク5の中心とは別の位置にデータ配列の螺旋の中心があるため(偏心しているため)、トラッキングサーボ中、他層迷光領域QSTに発生する縞状パターンQSZは、図8の矢印で示されるように、多層光ディスク5のラジアル方向に往復する。
多層光ディスク5のラジアル方向に往復する縞状パターンQSZが発生した場合、図8に示した第1の副受光部271と第2の副受光部272の配置では、異なった量のノイズ成分NDCが電気信号SR、SLに重畳されてしまいプッシュプル信号PPでノイズ成分DACがキャンセルされなくなってしまうことがある。
そこで、図9に示すように、例えば、第1の副受光部271と第2の副受光部272を、主受光部270を中心として、多層光ディスク5のタンジェンシャル方向Tに配置すれば良い。同時に光学素子6の第1の回折領域602および第2の回折領域604の回折格子を調整し、光スポットQS1およびQS2をそれぞれ、第1の副受光部271と第2の副受光部272によって受光するように構成することにより解決される。
図10は、トラッキングサーボに伴う他層迷光領域QSTおよび透過光ビームD0のシフトした状態を示したものである。上述した通り、この場合、トラッキングサーボに伴ってディスク5のラジアル方向に対物レンズ4がシフトしても、光スポットQS1、QS2は、光学素子6によって回折されて照射されたものであるため、対物レンズ4のシフトに伴ってシフトすることがない。
一方、他層迷光領域QSTおよび光スポットQMに関しては、トラッキングサーボに伴ってその位置は変化してしまう。しかしながら、第1の副受光部271および第2の副受光部272は、主受光部270を中心として、多層光ディスク5のタンジェンシャル方向に配置している。すなわち、第1の副受光部271および第2の副受光部272は、他層迷光領域QSTまたは透過光ビームによる光スポットQMの中心を通り多層光ディスクのラジアル方向に平行な直線P1を軸として対称な位置に配置されている。
このため、図10に示すように、トラッキングサーボに伴う他層迷光領域QSTの移動により、第1の副受光部271と第2の副受光部272で受光される他層迷光領域QSTの位相は同一となる。従って、対物レンズ4がシフトした場合においても、プッシュプル信号PPでノイズ成分NACをキャンセルすることができる。
また、図11に示されるように、情報記録層の記録領域と未記録領域により発生する縞状パターンQSZが現れた場合であっても、第1の副受光部271と第2の副受光部272を、主受光部270を中心として、多層光ディスク5のタンジェンシャル方向に配置しているため、第1の副受光部271と第2の副受光部272は同程度の光強度の部分が受光される。したがって、情報記録層の記録領域と未記録領域により発生する縞状パターンQSZが現れた場合であっても、プッシュプル信号PPでノイズ成分NDCはキャンセルされた状態が維持される。
なお第1の副受光部271および第2の副受光部272を配置する際には、他層迷光領域QSTが対物レンズ4のシフトに伴ってシフトしても、他層迷光領域QSTが第1の副受光部271および第2の副受光部272の全面に常に照射されるように配置する必要がある。
また、光学素子6の第1の回折領域602および第2の回折領域604を、透過型ブレーズド回折格子ではなく矩形溝によって形成した場合、第1の回折領域602は+1次回折光ビームD1aとは別に−1次回折光ビームD1bを共に生成し、第2の回折領域604は+1次回折光ビームD2aとは別に−1次回折光ビームD2bを生成する。
図12は、光学素子6の回折領域を矩形溝により構成した場合の光検出素子27上の様子を示したものである。また、第1の副受光部271と第2の副受光部272は、主受光部270を中心として、多層光ディスク5のタンジェンシャル方向に配置している。光学素子6の同一の回折領域により生じた+1次回折光ビームおよび−1次回折光ビームは、互いに当該回折領域の光軸(0次光が出射される方向)に対し対称の方向に出射される。
図12に示すように、第1の副受光部271と第2の副受光部272を、主受光部270を中心として、多層光ディスク5のタンジェンシャル方向に配置した場合、第1の副受光部271は第1の回折領域602で発生した+1次回折光ビームD1aを受光するとともに、第2の回折領域604で発生した−1次回折光ビームD2bによる光スポットQS12を受光する。
また、第2の副受光272は第2の回折領域604で発生した+1次回折光ビームD2aを受光するとともに、第1の回折領域602で発生した−1次回折光ビームD1bによる光スポットQS11を受光する。
このように、第1の副受光部271と第2の副受光部272を、主受光部270を中心として、多層光ディスク5のタンジェンシャル方向に配置した場合において、光学素子6の回折領域を矩形溝により構成した場合には、第1の副受光部271および第2の副受光部272に複数の回折光が入射する。
このため、第1の副受光部271においては、光スポットQS12が、第2の副受光部272においては光スポットQS11が、ノイズ成分として電気信号SR、SLに重畳してしまう。
すなわち、光学素子6の第1の回折領域602および第2の回折領域604をブレーズド回折格子によって形成することによって、第1の副受光部271と第2の副受光部272を、主受光部270を中心として、多層光ディスク5のタンジェンシャル方向に配置した場合においても、光学素子6によって−1次光を生成しない構成とすることができ、ノイズ成分が電気信号SR、SLに重畳することを回避できる。
次に、光学素子6の第1の回折領域602および第2の回折領域604を矩形溝によって作成した場合においてもノイズ成分を低減する副受光部の配置について説明する。
図13は、光検出素子27上に第1の副受光部271と第2の副受光部272をタンジェンシャル方向に隣接させて配置した例を示したものである。図13に示すように、副受光部を配置した場合、光学素子6の第1の回折領域602および第2の回折領域604を矩形溝によって形成しても、光スポットQS11およびQS12が電気信号SR、SLに重畳することはない。
図14は、トラッキングサーボに伴う他層迷光領域QSTおよび透過光ビームD0が光検出素子27上でシフトした状態を示したものである。図14に示されるように、トラッキングサーボに伴ってラジアル方向に対物レンズシフトしても、他層迷光領域QSTの第1の副受光部271および第2の副受光部272における位相は同一である。
したがって、対物レンズ4のシフトにかかわらず、プッシュプル信号PPでノイズ成分NACはキャンセルされた状態が維持される。また、第1の副受光部271および第2の副受光部272における他層迷光領域QSTは略同じ位相であれば良く、例えば、第1の副受光部271おいて受光される他層迷光の位相と第2の副受光部272おいて受光される他層迷光の位相の差が、他層迷光の波長の1/6に対応する位相の範囲内であれば良い。
また、図15に示されるように、多層光ディスク5における情報記録層の記録領域と未記録領域により発生する縞状パターンQSZが、光検出素子27上に現れた場合であっても、第1の副受光部271と第2の副受光部272は同程度の光強度が受光される。したがって、対物レンズシフトにかかわらず、プッシュプル信号PPでノイズ成分NDCはキャンセルされた状態が維持される。
また、信号光の光スポットQS1、QS2は光学素子6の第1の領域602および第2の領域604による+1次回折光ビームを用いているため、温度変化等で半導体レーザ2から出力された光ビームELの波長が変動した場合、または、光学素子6の回折溝のピッチが環境温度等で変化した場合等は、光スポットQS1、QS2の照射位置は光軸中心からいずれも同時に離れる方向、あるいは、光軸中心からいずれも近付く方向に変動する。
そのため、信号光の光スポットQS1とQS2との距離は、ずれてしまうが、他層迷光領域QSTに対しては、光スポットQS1、QSは他層迷光領域QSTの同じ位相の上を移動することになるため、温度変化に影響されずプッシュプル信号PPでノイズ成分NACはキャンセルされた状態が維持される。
次に、光ヘッド装置52の組み立て時における光学素子6と光検出素子27の位置の調整について説明する。光ヘッド装置52の組み立て時において、光学素子6と光検出素子27の位置関係が、あらかじめ定められた所定の距離よりも光軸方向に離れてしまった場合、あるいは、近づいてしまった場合に、光スポットQS1、QS2が、第1の副受光部271および第2の副受光部272に適切に集光されない問題が発生する。
従って、光学素子6と光検出素子27の光軸方向の位置関係は精度よく調整されていることが必要である。このような問題に対し、先に述べたように、光学素子6の第3の領域603を第3の回折領域603aとすることで解決することができる。
すなわち、図3で示した第3の領域603に対し、さらに回折格子を設け、第3の回折領域603aとする。このとき、第3の回折領域603aには、多層光ディスク5によって回折されない0次反射回折光ビームRL0のみが入射するが、第3の回折領域603aは、このRL0を回折し+1次回折光ビームD3aを発生するとともに、回折しないRL0を透過光ビームD0として透過する。
さらにこの場合、光検出素子27には、新たに、第3の回折領域603aによって発生した+1次回折光ビームD3aによる光スポットQS3を受光するための、第3の副受光部273を設ける。
図16は、第3の副受光部273を設けた光検出素子27を示したものである。光スポットQS3は、光学素子6の第3の回折領域によって光スポットQS1、QS2と同様にして第3の副受光部273に集光させる。また、第3の副受光部273は受光した光スポットQS3の電気信号SCの強度に基づいた受光信号S0を出力する。
ただし、図16において、QS31は、第3の回折領域によってQS3と同時に発生する回折光である。また、QS3は、第3の副受光部273上でフォーカスしている状態を示しており、QS31は光検出素子2上でデフォーカスしている状態である。
製作者は、光ヘッド装置52の製作時等において、第3の副受光部273により出力される受光信号S0に基づいて、光学素子6と光検出素子27の光軸方向の距離を調整することができる。さらに、第3の副受光部273の面積を、他層迷光領域QSTのラジアル方向に対して十分小さくすることで、光スポットQS3が副受光部273よりも大きいかどうかを電気信号SCの大きさで判断することができる。
また、光学素子6において、第1の回折領域602および第2の回折領域604が第1の副受光部271および第2の副受光部272に光スポットQS1、QS2を形成する光学的距離と、第3の回折領域603aが第3の副受光部273に光スポットQS3を形成する光学的距離とが同一になるように第3の回折領域603aを形成することにより、光スポットQS3のスポット径を調節することで、同時に光スポットQS1、QS2も調節することが可能となり、組み立て時において、光学素子6と光検出素子27の光軸方向の距離を正確に調節することができる。
また、第3の副受光部273の面積は、第3の副受光部273が矩形で構成された場合、副受光部273の両辺が他層迷光領域QSTの位相の1/6波長となる幅以内であることが望ましい。これにより光スポットQS1、QS2のスポット径も他層迷光領域QST内における他層迷光の位相差が1/6波長となる幅以内に収まる。
ただし、図16に示したような第3の副受光部273によれば、第3の副受光部273に入射する光スポットQS3の光量がデフォーカスにより減少したのか、または、単に部品のずれにより光スポットQS3が、第3の副受光部273から外れて光量が減少したのかを判別ができない場合がある。
こうした問題に対し、第3の回折領域603aを調整し、例えば、非点収差を与えるような回折構造を付与し、QS3を図17に示すような長方形の光スポットとする。同時に第3の副受光部273を複数の領域に分割し、分割領域を有した第3の副受光部274を有する構成とする。ここでは、分割した第3の副受光部274の分割領域をそれぞれ、受光面274a、274b、274c、274dとする。
分割した第3の副受光部274の分割領域274a、274b、274c、274dのそれぞれにおいて受光された受光強度に基づく受光信号SA、SB、SC、SDの差分を算出することで、分割した第3の副受光部274に入射する光スポットQS3の光量がデフォーカスにより減少したのか、または、単に部品のずれにより光スポットQS3が、副受光部273から外れて光量が減少したのかの判別をすることができる。これにより、本実施の形態1に係る光ヘッド装置の組み立て時において、光学素子6と光検出素子27の光軸方向の距離を、さらに正確に調節することができる。
非点収差法に基づく光学素子6と光検出素子27の光軸方向調整用信号AESは以下の式(2)で示す演算で求めることができる。
ここで、既に述べたように、SAは、受光面274aの電気信号SAから得られた受光信号を、SBは、受光面274bの電気信号SBから得られた受光信号を、SCは、受光面274cの出力信号SCから得られた受光信号を、SDは、受光面274dの電気信号SDから得られた受光信号を、それぞれ表している。
また、非点収差法を行う際のQS3の長辺は、図17に示すように分割した第3の副受光部274の分割線に沿っているが、QS3の長辺と分割した第3の副受光部274の分割の境界とのなす角は45°に傾けることが望ましい。
このように非点収差法に基づく調整用信号AESを用いることにより、光学素子6と光検出素子27の光軸方向の位置関係を精度よく信号で得ることができる。これにより、光スポットQS1およびQS2が、第1の副受光部271および第2の受光部で集光されるよう、光学素子6と光検出素子27の光軸方向の位置関係を調整することが可能となり、組み立て時の調整ズレを最小限に抑えることができる。
また、この非点収差法は、面内方向への部品のずれに対して調整用信号AESの変動は小さくなるという特長があるため、部品ばらつきがある場合においても精度よく光学素子6と光検出素子27の光軸方向の位置関係を調整することができる。
また、分割した第3の副受光部274の4つの受光面274a、274b、274c、274dを分割する分割線はラジアル方向に平行或いは直交する必要はなく、例えば図18に示されるように、回転させて配置させてもよい。
このとき、分割した第3の副受光部274の分割線が、他層迷光領域QSTのラジアル方向に対して、垂直または平行となるように、分割した第3の副受光部274を配置すれば、半導体レーザ2から出力された光ビームELの波長が変動した場合、または、光学素子6の回折溝のピッチが環境温度等で変化した場合にスポットQS3aの位置が光軸を中心として、変動した場合であっても調整用信号AESに与える変動が少なくて済む。
以上に説明した、非点収差法は本実施例における一例を示したものであり、本方法の非点収差法を限定するものではない。また、以上に述べた、副受光部271、272、273、274の形状は一例であり、矩形形状に限定されず、例えば円形状であってもよい。
上記のような方法は、一般的な非点収差法の一つであるが、実施の形態1における非点収差法は、光学素子6と光検出素子27の光軸方向の距離を調節するために、光スポットQS3に対して用いたものである。透過光ビーム(0次回折光ビーム)D0による光スポットQMに対し非点収差法を用いる場合については、実施の形態2以降で説明する。
このように、本発明の実施の形態1では、透過光ビームD0による光スポットQMを受光する主受光部270に対し、フォーカスサーボ用のフォーカスエラー信号生成に非点収差法以外の方法、例えばスポットサイズディテクション法またはフーコー法を用いた場合に有効である。
以上で説明した光ヘッド装置52を搭載した多層光ディスク装置50によると、光ディスク5が複数の記録層を有する場合でも、安定したトラッキングサーボが得られる。
本発明の実施の形態1に係る光ヘッド装置52は、半導体レーザ2と、半導体レーザ2から出射される光ビームを集光し、多層光ディスク5の情報記録層上に集光スポットを形成する対物レンズ4と、対物レンズ4を制御する対物レンズアクチュエータ9と、集光スポットが形成された情報記録層により反射および回折された反射回折光ビームを透過および回折する光学素子6と、光学素子6を透過した透過光ビームD0を受光する主受光部271と、光学素子6により回折された回折光ビームを受光する副受光部とを有した光検出素子27とを備え、副受光部は、多層光ディスク5の集光スポットが形成される情報記録層以外の情報記録層で反射された光ビームの反射光である他層迷光が、光検出素子27上に形成する他層迷光領域QSTの領域内に設けられているので、光検出素子27の小型化が達成される。
また、本発明の実施の形態1に係る光ヘッド装置52によれば、光学素子6は、集光スポットが情報記録層により回折されて発生した+1次反射回折光ビームRL1を透過および回折する第1の回折領域602と、集光スポットが情報記録層により回折されて発生した−1次反射回折光ビームRL2を透過および回折する第2の回折領域604と、集光スポットが情報記録層で回折されずに反射した反射回折光ビームを透過する第3の領域603とを有し、副受光部は、+1次反射回折光ビームRL1が第1の回折領域602によってさらに回折された第1の回折光ビームD1aを受光する第1の副受光部271と、−1次反射回折光ビームRL2が第2の回折領域604によってさらに回折された第2の回折光ビームD2aを受光する第2の副受光部272とを有するので、集光スポットを多層光ディスク5の情報記録層のトラックに正確に追従させることが可能となる。
また、本発明の実施の形態1に係る光ヘッド装置52によれば、第1の副受光部271において受光される他層迷光の位相と、第2の副受光部272において受光される他層迷光の位相との差が、他層迷光の波長の1/6に対応する位相の範囲内となるように第1の副受光部271および第2の副受光部272を配置したので、ノイズ成分NACをキャンセルすることができ、正確なプッシュプル信号を算出することができる。
また、本発明の実施の形態1に係る光ヘッド装置52によれば、第1の副受光部271および第2の副受光部272は、他層迷光領域QSTまたは透過光ビームD0による光スポットQMの中心から等距離の位置にそれぞれ設けられているので、ノイズ成分NACをキャンセルすることができ、さらに正確なプッシュプル信号を算出することができる。
また、本発明の実施の形態1に係る光ヘッド装置52によれば、第1の副受光部271および第2の副受光部272は、他層迷光領域QSTまたは透過光ビームD0による光スポットQMの中心を通り多層光ディスク5のラジアル方向に平行な直線P1を軸として対称な位置にそれぞれ設けられているので、対物レンズ4がシフトした場合においても、ノイズ成分NACをキャンセルすることができる。
また、本発明の実施の形態1に係る光ヘッド装置52によれば、第1の副受光部271および第2の副受光部272は、他層迷光領域QSTまたは透過光ビームD0による光スポットQMの中心を通り多層光ディスク5のラジアル方向に平行な直線P1を軸として対称な位置にそれぞれ設けられているので、情報記録層の記録領域と未記録領域により発生する縞状パターンQSZが現れた場合であっても、ノイズ成分NDCをキャンセルすることができる。
また、本発明の実施の形態1に係る光ヘッド装置52によれば、第1の副受光部271の面積と第2の副受光部272の面積とが等しいので、ノイズ成分NDCをキャンセルすることができ、正確なプッシュプル信号PPを算出することができる。
また、本発明の実施の形態1に係る光ヘッド装置52によれば、第3の領域603は、光ビームILが情報記録層で回折されずに反射された反射回折光ビームを透過および回折する回折構造がさらに設けられた第3の回折領域603aであり、副受光部は、第3の回折領域603aによって回折された第3の回折光ビームD3aを受光する第3の副受光部273をさらに有するので、光学素子6と光検出素子27の光軸方向の距離を正確に調節することができる。
また、本発明の実施の形態1に係る光ヘッド装置52によれば、第3の副受光部273は、複数の領域に分割された分割領域を有した第3の副受光部273sであり、光学素子6と光検出素子27との光軸方向の距離が、分割領域ごとに受光された第3の回折光ビームD3aの受光信号の強度に基づいて調整されるので、光学素子6と光検出素子27の光軸方向の距離を、さらに正確に調節することができる。
また、本発明の実施の形態1に係る光ディスク装置50は、本実施の形態1に係る光ヘッド装置52と、多層光ディスク5を回転させるディスク駆動部と、第1の副受光部271で受光された第1の回折光ビームD1aによる第1の受光信号SEと、第2の副受光部272で受光された第2の回折光ビームD2aによる第2の受光信号SFとの差分に基づいてサーボ信号SSを生成する再生信号処理回路56と、サーボ信号SSに基づいてトラッキングエラー信号を生成し、トラッキングエラー信号に基づいて光ヘッド装置52の制御を行うサーボ制御回路55とを備えるので、光検出素子27の小型化が達成された光ヘッド装置52を備えることができる。
また、本発明の実施の形態1に係る光ディスク装置50は、本実施の形態1に係る光ヘッド装置52と、多層光ディスク5を回転させるディスク駆動部と、第1の副受光部271で受光された第1の回折光ビームD1aによる第1の受光信号SEと、第2の副受光部272で受光された第2の回折光ビームD2aによる第1の受光信号SEとの差分に基づいてサーボ信号SSを生成する再生信号処理回路56と、サーボ信号SSに基づいてトラッキングエラー信号を生成し、トラッキングエラー信号に基づいて光ヘッド装置52の制御を行うサーボ制御回路55とを備えるので、安定したトラッキングサーボが得られる。
実施の形態2.
次に、本発明に係る実施の形態2について説明する。図19は、実施の形態2の光ヘッド装置52の構成を概略的に示したものである。本発明の実施の形態2の光ヘッド装置52および多層光ディスク装置の構成は、図2に示したビームスプリッタ3を偏光ビームスプリッタ10に置き換え、さらに、非点収差光学素子7を光学素子6と光検出素子27との間に配置し、偏光ビームスプリッタ10と対物レンズ4との間にコリメータレンズ8、1/4波長板13とを配置したものである。それ以外の構成は、実施の形態1と同様であるためその説明を省略する。
また、実施の形態1で示した主受光部270が複数の領域に分割された分割領域を有した主受光部270aとなっている。すなわち、実施の形態2では、非点収差光学素子7によって非点収差を受けた透過光ビームが主受光部270aの分割領域ごとに検知される。検知された透過光ビームD0の信号強度に基づいて、受光信号が生成され、当該受光信号が集光スポットのフォーカス制御に用いられる。
本発明の実施の形態2は、本発明に係る光ヘッド装置のフォーカス制御において、透過光ビーム(0次回折光ビーム)D0による光スポットQMに対し非点収差法を応用したものである。非点収差法における、受光信号の差分計算等の詳しい説明については、既に実施の形態1で説明したため省略する。
また、本発明の実施の形態2では光学素子6における回折領域に、矩形溝を用いる場合を説明する。また、本発明の実施の形態2では、非点収差光学素子7の一例としてシリンドリカルレンズを用いている。
図19に示す偏光ビームスプリッタ10は、例えば、P偏光の直線偏光のみを反射し、S偏光の直線偏光のみを透過する偏光面100を有する。半導体レーザ2から出射された光ビームELは、偏光面100でP偏光成分のみが反射されコリメータレンズ8に入射する。コリメータレンズ8を透過した光ビームELは、1/4波長板13に入射し、円偏光に変換された後に対物レンズ4により集光スポットとなり、多層光ディスク5の所定の情報記録層に集光される。
多層光ディスク5で反射した戻り光ビームは、対物レンズ4によって収束光ビームとなり、1/4波長板13でS偏光に変換される。S偏光となった戻り光ビームはコリメータレンズ8および偏光ビームスプリッタ10の偏光面100を透過し、光学素子6に入射する。この構成により、偏光ビームスプリッタ10における光量の損失を最小限に留めることができる。
偏光面100の偏光特性は上記の構成に限られず、例えばP偏光の直線偏光のみを反射し、S偏光の直線偏光のみを透過する特性としても同様の効果が得られる。
図19に示すように、光学素子6から出射された信号光である透過光ビームD0による光スポットQM、+1次回折光ビームD1aによる光スポットQS1、+1次回折光ビームD2aによる光スポットQS2および他層迷光領域QSTは非点収差光学素子7により非点収差を受けて受光素子27に照射される。
図20は、本発明の実施の形態2における光検出素子27における主受光部270a、第1の副受光部271および第2の副受光部272の配置を示したものである。図20に示すように、各光スポットおよび他層迷光領域QSTは非点収差により楕円状のスポット形状となる。
なお、+1次回折光ビームD1aおよび+1次回折光ビームD2aは非点収差光学素子7により非点収差を受けることになるが、光学素子6の第1の回折領域602および第2の回折領域604を不等間隔の曲線格子形状にすることにより、第1の副受光部271および第2の副受光部272上で光スポットQS1およびQS2を形成することができる。
図20において、QS11およびQS12は、光学素子6の回折領域が矩形溝で構成されたことによって生じる回折光であり、QS1およびQS2に対応して発生したものである。本実施の形態2においては、回折領域に透過型ブレーズド回折格子を用いても良い。
図20に示すように、非点収差光学素子7を透過した他層迷光は楕円の他層迷光領域QSTとなって、光検出素子27上に照射される。図20に示す楕円の点線は、同一の点線上において他層迷光領域QSTの位相が同一となることを示している。
また、第1の副受光部271および第2の副受光部272は、楕円状の他層迷光領域QSTにおける他層迷光の位相が同位相となる位置に配置されている。
これにより、図20に示されるように、第1の副受光部271および第2の副受光部272で受光した光ビームの強度に基づく電気信号SR、SLに重畳されるノイズ成分NACは同一の信号成分となる。このため、プッシュプル信号PPの算出において、第1の副受光部271および第2の副受光部272で検出されるノイズ成分NACはキャンセルされる。
また、図21に示されるように、トラッキングサーボに伴ってラジアル方向に対物レンズ4がシフトし場合、楕円状の他層迷光領域QSTは矢印で示す方向に移動する。このような場合であっても光スポットQS1、QS2における他層迷光領域QSTの位相は等しい。
したがって、トラッキングサーボに伴う対物レンズ4のシフトに関わらず、プッシュプル信号PPを算出する過程において、第1の副受光部271および第2の副受光部272で検出されるノイズ成分NACはキャンセルされた状態が維持される。
ただし、図21において矢印で示した対物レンズ4のシフトに伴う他層迷光領域QSTのシフトは、非点収差光学素子7による非点収差の影響を受けるため、多層光ディスク5のラジアル方向に対して平行ではなく非点収差に応じた角度だけ傾斜した方向に動く。そのため、第1の副受光部271と第2の副受光部272は非点収差に応じた角度だけずらして配置する必要がある。
また、図22に示されるように、情報記録層の記録領域と未記録領域に起因した縞状パターンQSZが他層迷光領域QSTに現れていても、第1の副受光部271と第2の副受光部272は同程度の光強度の部分が受光されることになる。したがって、対物レンズ4のシフトに関わらず、プッシュプル信号PPでノイズ成分NDCはキャンセルされた状態が維持される。
縞状パターンQSZの移動方向は、対物レンズ4のシフトに伴う他層迷光領域QSTのシフトと同様で、非点収差光学素子7による非点収差の影響を受け、ラジアル方向に対して平行ではなく非点収差に応じた角度だけ傾斜した方向に動くことになる。
上述した、非点収差に応じた角度は、用いる非点収差光学素子7の仕様によって、製作者が適宜決定することができ、所定の値に限定されるものではない。
また、非点収差光学素子7により、透過光ビームD0、光学素子6の第1の領域602による+1次回折光ビームD1a、光学素子6の第2の領域604による+1次回折光ビームD2a、および他層迷光に対して与える非点収差の方向は実施の形態2で示した例に限らず、逆方向に与えても良い。この場合、図23に示されるように、受光素子27上の受光部の配置は、図20に示す他層迷光領域QST、第1の副受光部271および第2の副受光部272を、図20上で左右反転させたものとすればよい。
また、多層光ディスク5が複数の情報記録層を有し、集光スポットを形成する(情報を取得する)情報記録層以外の情報記録層からの他層迷光が存在する場合についても、実施の形態1と同様に、それらのノイズ成分をキャンセルすることができる。
すなわち、集光スポットを形成する情報記録層に2番目に近い情報記録層による他層迷光領域QST(2)は、集光スポットを形成する(情報を取得する)情報記録層に最も近い情報記録層による他層迷光領域QSTよりも大きくなるが、他層迷光領域QSTおよび、QST(2)内での他層迷光の位相の分布は変化しない。集光スポットを形成する情報記録層に3番目以降に近い情報記録層による他層迷光に関しても同様である。
このため、各情報記録層に起因する他層迷光についてそれぞれ、第1の副受光部271および第2の副受光部272に重畳したノイズ成分NACはキャンセルされることになる。従って、これらの光学素子6及び光検出素子27を用いることで、層数が多い多層光ディスクに対しても充分に他層迷光を抑制でき、光検出素子27は比較的小さな面積で構成することができる。
本発明の実施の形態2に係る光ヘッド装置52によれば、光検出素子27と光学素子6との間に非点収差光学素子7をさらに備え、主受光部271は、複数の領域に分割された分割領域を有し、対物レンズアクチュエータ9は、分割領域ごとに検知された透過光ビームD0の受光信号の強度に基づいて集光スポットのフォーカス制御を行うので、フォーカス制御に非点収差法を用いた場合においても、光検出素子27の小型化が達成される。
また、本発明の実施の形態2に係る光ディスク装置50は、本実施の形態2に係る光ヘッド装置52と、多層光ディスク5を回転させるディスク駆動部と、第1の副受光部271で受光された第1の回折光ビームD1aによる第1の受光信号SEと、第2の副受光部272で受光された第2の回折光ビームD2aによる第2の受光信号SFとの差分に基づいてサーボ信号SSを生成する再生信号処理回路56と、サーボ信号SSに基づいてトラッキングエラー信号を生成し、トラッキングエラー信号に基づいて光ヘッド装置52の制御を行うサーボ制御回路55とを備えるので、フォーカス制御に非点収差法を用いた場合においても、光検出素子27の小型化が達成された光ヘッド装置52を備えることができる。
また、本発明の実施の形態2に係る光ディスク装置50は、本実施の形態2に係る光ヘッド装置52と、多層光ディスク5を回転させるディスク駆動部と、第1の副受光部271で受光された第1の回折光ビームD1aによる第1の受光信号SEと、第2の副受光部272で受光された第2の回折光ビームD2aによる第2の受光信号SFとの差分に基づいてサーボ信号SSを生成する再生信号処理回路56と、サーボ信号SSに基づいてトラッキングエラー信号を生成し、トラッキングエラー信号に基づいて光ヘッド装置52の制御を行うサーボ制御回路55とを備えるので、フォーカス制御に非点収差法を用いた場合においても、安定したトラッキングサーボが得られる。
実施の形態3.
実施の形態1および実施の形態2において、光学素子6は分割線600、601により3つの領域に分割されていた。このような構成において例えば、対物レンズ4の多層光ディスクについてのラジアル方向へのシフトが生じた場合、反射回折光ビームが光学素子6に入射する際、対物レンズの移動量に基づいた分だけずれて入射することになる。
図24は、実施の形態1および実施の形態2において光学素子6に入射する反射回折光ビームが矢印に示す方向にずれて入射した場合を示している。この場合、第1の回折領域602によって回折する+1次回折光ビームD1aの光量が増加する一方、第2の回折領域によって回折する+1次回折光ビームD2aの光量が減少する。
これにより、第1の副受光部271および第2の副受光部272で受光により発生した電気信号SL、SRは対物レンズ4のシフトに基づいた分だけ差を生じる。このため、プッシュプル信号PPの算出時に、対物レンズ4のシフト量に応じた分だけオフセットが生じてしまう。
そこで、実施の形態3では光学素子6において、回折領域をさらに増やすことにより、対物レンズ4のシフト量に応じた電気信号SL、SRによる第1の受光信号SEおよび第2の受光信号SFの差を解消するものである。ただし、光学素子6と光検出素子27における複数の副受光部の配置以外に関しては、実施の形態2と同様であるためその説明を省略する。
図25は、実施の形態1で説明した光学素子6において、第1の回折領域602、第2の回折領域604および、第3の回折領域603aに加え、さらに光学素子6に光学素子6の第4の回折領域609、第5の回折領域610、第6の回折領域611、第7の回折領域612をさらに設けたものである。
図25に示すように、光学素子6の第1の回折領域602、第2の回折領域604、第3の回折領域603a、第4の回折領域609、第5の回折領域610、第6の回折領域611、第7の回折領域612は、矢印で示される多層光ディスク5のラジアル方向Rに沿って形成された2つの分割線605および606により3分割され、そのうち光学素子6の外側に位置する2つの領域が、更に多層光ディスク5のタンジェンシャル方向Tに沿って形成された2つの分割線607、608により分割されている。
図25に示すように、光学素子6の第4の回折領域609、第5の回折領域610、第6の回折領域611、第7の回折領域612に入射する戻り光ビームRLは、それぞれ円形状の0次反射回折光成分RL0を含むが、この0次反射回折光成分RL0に重複する+1次反射回折光ビーム(第1の反射回折光ビーム)RL1及び−1次反射回折光ビーム(第2の反射回折光ビーム)RL2は略含まない。
第4の回折領域609は、0次及び+1次の透過回折光の回折効率が、当該0次及び+1次以外の次数の透過回折光の回折効率よりも高い格子構造を有するので、戻り光ビームRLから透過光ビームD0の一部分と+1次回折光ビームD4aとを生成することができる。
また、第5の回折領域610は、0次及び+1次の透過回折光の回折効率が当該0次及び+1次以外の次数の透過回折光の回折効率よりも高い格子構造を有するので、戻り光ビームRLから透過光ビームD0の一部分と+1次回折光ビームD5aとを生成することができる。
また、第6の回折領域611は、0次及び+1次の透過回折光の回折効率が当該0次及び+1次以外の次数の透過回折光の回折効率よりも高い格子構造を有するので、戻り光ビームRLから透過光ビームD0の一部分と+1次回折光ビームD6aとを生成することができる。
また、第7の回折領域612は、0次及び+1次の透過回折光の回折効率が当該0次及び+1次以外の次数の透過回折光の回折効率よりも高い格子構造を有するので、戻り光ビームRLから透過光ビームD0の一部分と+1次回折光ビームD7aとを生成することができる。
本実施の形態3では、光学素子6のそれぞれの回折領域を矩形溝による回折格子によって構成した例について説明する。
また、このような光学素子6は、例えば、透過型ブレーズド回折格子を用いることによっても実現することができる。透過型ブレーズド回折格子は、断面形状が鋸歯状である格子溝を有する回折格子である。格子溝のブレーズ角を変化させることで、各次数の回折光の回折効率を調整することができる。
図25に示した、第4の回折領域609、第5の回折領域610、第6の回折領域611、第7の回折領域612に対し、透過型ブレーズド回折格子を用いる場合、0次及び+1次の透過回折光の回折効率が当該0次及び+1次以外の他の次数の光の回折効率よりも高くなるようにブレーズ角を決定すればよい。
また、図26に示すように、光学素子6が光ヘッド装置52に係る迷光を抑制するため、第1の回折領域602、第2の回折領域604、第3の回折領域603a、第4の回折領域609、第5の回折領域610、第6の回折領域611、第7の回折領域612を取り囲む遮光領域8設けてもよい。遮光領域8は、金属薄膜などの光反射膜または光吸収膜、あるいは回折格子によって構成されればよい。遮光領域8により、迷光に起因する受光信号の劣化を抑制することが可能となる。
また、第1の回折領域602、第2の回折領域604、第3の回折領域603a、第4の回折領域609、第5の回折領域610、第6の回折領域611、第7の回折領域612は必ずしも互いに密接している必要はなく、これら回折領域は、それぞれの回折面の加工に伴う公差分だけ互いに離れていてもよい。
図27に示すように、光学素子6の第1の回折領域602、第2の回折領域604、第3の回折領域603、第4の回折領域609、第5の回折領域610、第6の回折領域611、第7の回折領域612を透過した、透過光ビームD0の光スポットQMは光検出素子27上の主受光部270上に照射される。
第4の回折領域609は曲線格子形状を有しており、+1次の第4の回折光ビームD4aを生成しこの光スポットQS4を光検出素子27上の第4の副受光部274上に集光するよう構成されている。
また、第5の回折領域610も曲線格子形状をしており、+1次の第5の回折光ビームD5aを生成しこの光スポットQS5を光検出素子27上の第5の副受光部275上に集光するよう構成されている
また、第6の回折領域611も曲線格子形状を有しており、+1次の第6の回折光ビームD6aを生成しこの光スポットQS6を光検出素子27上の第4の副受光部274上に集光するよう構成されている。
また、第7の回折領域612も曲線格子形状を有しており、+1次の第7の回折光ビームD7aを生成しこの光スポットQS7を光検出素子27上の第5の副受光部275上に略集光するよう構成されている。
だだし、図27に示す光スポットQS14、QS15、QS16、QS17はそれぞれ、光学素子6の回折領域が矩形溝の回折格子により発生する光スポット、QS4、QS5、QS6、QS7に対応したものである。また、第4の回折領域609、第5の回折領域610、第6の回折領域611、第7の回折領域612には透過型ブレーズド回折格子を用いた場合これらの光スポット、QS14、QS15、QS16、QS17発生を抑制することができる。
第4の回折領域609、第5の回折領域610、第6の回折領域611、第7の回折領域612は不等間隔の曲線格子形状でもよく、これにより+1次回折光ビームD4a、+1次回折光ビームD5a、+1次回折光ビームD6a及び+1次回折光ビームD7aの収差を抑制することができ、より光検出素子27上の光スポットを小さくすることができる。
図27に示されるように、第4の副受光部274は、+1次回折光ビームD4aと+1次回折光ビームD6aの光スポットQS4および光スポットQS6を単一受光面で受光する。図27においては、QS4とQS6が照射される位置が同一の場合を示している。
また、第5の副受光部275は、+1次回折光ビームD5aと+1次回折光ビームD7aの光スポットQS5および光スポットQS7を単一受光面で受光する。図27においては、QS5とQS7が照射される位置が同一の場合を示している。
また、光検出素子27の第4の副受光部274は、+1次回折光ビームD4aと+1次回折光ビームD6aを受光してその受光量に応じた電気信号SL2に基づく受光信号SGを生成する。また、+1次回折光ビームD5aと+1次回折光ビームD7aを受光してその受光量に応じた電気信号SR2に基づく受光信号SHを生成する。
これら受光信号SGおよびSHは再生信号処理回路56に出力され、再生信号処理回路56は、受光信号SGおよびSHに基づいたサーボ信号SSを生成し、このサーボ信号SSを光ヘッド制御回路61に出力する。
次に、プッシュプル信号の生成方法を以下に説明する。本実施の形態では、プッシュプル信号PPは、以下の式(3)の演算で与えられる。
ここで、SEは第1の副受光部の電気信号SLから得られた第1の受光信号、SFは第2の副受光部の電気信号SRから得られた第2の受光信号である。また、SGは、第4の副受光部274の出力信号SL2から得られた第4の受光信号、SHは第5の副受光部275の出力信号SR2から得られた第5の受光信号を、それぞれ表している。kはゲイン係数である。
図28に示されるように、対物レンズ4のシフトにより反射回折光ビーム全体が光学素子6に対して図28の矢印で示す方向(多層光ディスク5のラジアル方向)に移動することによって、第1の回折領域602、第4の回折領域609、第6の回折領域611に入射する反射回折光ビームの光量が減少し、逆に、第2の回折領域604、第5の回折領域610、第7の回折領域612に入射する反射回折光ビームの光量が増加する。
それぞれの回折領域に入射する反射回折光ビームが減少することにより、これらの回折領域で回折された+1次回折光ビームD1a、+1次回折光ビームD4a、+1次回折光ビームD6aの光量は減少し、+1次回折光ビームD2a、+1次回折光ビームD5a、+1次回折光ビームD7aの光量は増加する。
また、これらの+1次回折光ビームを光検出素子27上の受光部で受光し光電変換された受光信号SL、SL2の信号レベルは低減し、受光信号SR、SR2の信号レベルは増大する。これにより、式(3)で示した(SE−SF)の信号レベルは低減し、(SG−SH)の信号レベルは増大する。他方で、対物レンズシフトにより戻り光ビームRLの全体が光学素子6に対して基準状態の位置から矢印で示す方向と逆方向(紙面上の下方)に移動すれば、(SE−SF)の信号レベルは増大し、(SG−SH)の信号レベルは低減する。
したがって、(SE−SF)とSGは互いに逆位相を有し、(SE−SF)と−SHも互いに逆位相を有することが分かる。よって、ゲイン係数kを適宜調整して(SG−SH)の信号成分を増幅することで、対物レンズシフトに起因するオフセットをキャンセルすることができる。
上式(3)に代えて、以下の式(4)または(5)で与えられるプッシュプル信号PPL、PPRを使用してもよい。
光ヘッド制御回路61は、上式(3)または(4)または(5)で与えられるプッシュプル信号PPのレベル(値)を固定値に近づけるように対物レンズ4に備えられた対物レンズアクチュエータ9を制御し、集光スポットを多層光ディスク5の情報記録層のラジアル方向(多層光ディスク5の半径方向)の所定の位置に正確に追従させることが可能となる。
光スポットQS1に含まれる第1の反射回折光ビームRL1と、光スポットQS2に含まれる第2の反射回折光ビームRL2とが等しい場合、前記固定値を0とすれば、前記所定の位置は略トラック位置とすることができる。
また、光スポットQS1に含まれる第1の反射回折光ビームRL1と、光スポットQS2に含まれる第2の反射回折光ビームRL2とが等しくない場合、これらの光量差分をキャンセルさせるように前記固定値にオフセットを与えることで、同様に前記所定の位置は略トラック位置とすることができる。
以上に説明したように、再生信号処理回路56は、第4の副受光部274および第5の副受光部275で検出された信号SL2およびSR2に基づいて、対物レンズシフトに起因するオフセットに相当する信号成分k×(SG−SH)、k×SGあるいはk×(−SH)を生成し、この信号成分を用いて、オフセットが除かれたプッシュプル信号PP、PPLまたはPPRを生成することができる。
このように、光学素子6に複数の回折領域を形成し、これにより生じた各回折光を受光する副受光部を備える構成は、実施の形態1で説明した非点収差を用いない場合にも適用させることができる。これについては、説明を省略する。
また、実施の形態3では、既に図27に示したように、実施の形態2と同様に他層迷光領域QSTは非点収差により略楕円状のスポット形状となる。一方、信号光である光スポットQS3、QS4は、光学素子6の第4の回折領域609、第5の回折格子610、第6の回折格子611、第7の回折格子612を不等間隔の曲線格子形状にすることにより、+1次回折光ビームD4a、+1次回折光ビームD5a、+1次回折光ビームD6a及び+1次回折光ビームD7aの収差を抑制することがきるため、非点収差光学素子7で受ける非点収差もキャンセルして集光させることができる。
図27に示すように、信号光である光スポットQS1、QS2を他層迷光領域QSTにおいて等しい位相となる位置に集光させるとともに、光スポットQS4、QS5、QS6、QS7についてもそれぞれ他層迷光領域QSTにおいて等しい位相となる部分に集光させる。
これにより、第4の副受光部274における電気信号SR2および第5の副受光部275における電気信号SL2に重畳されるノイズ成分NACは同一の信号成分となり、プッシュプル信号PPではこれらが引き算されてノイズ成分NACはキャンセルされる。そのため、プッシュプル信号PPは式(4)または式(5)ではなく、式(3)により演算することが望ましい。
また、図29に示されるように、トラッキングサーボに伴って多層光ディスク5のラジアル方向に対物レンズ4がシフトしても、他層迷光領域QSTと信号光である光スポットQS3,QS4との位相の関係は略等しいままである。したがって、対物レンズ4がシフトした場合においてもプッシュプル信号PPにおいて、ノイズ成分NACをキャンセルすることができ、正確なプッシュプル信号を算出することができる。
なおこの場合、対物レンズ4のシフトに伴う他層迷光領域QSTのシフトは、非点収差光学素子7による非点収差の影響を受け、図29の矢印に示すように、多層光ディスク5のラジアル方向に対して平行ではなく非点収差光学素子7による非点収差に基づいた角度だけ傾斜した方向に動く。そのため、第1の副受光部271と第2の副受光部、および第4副受光部274と第5副受光部275は非点収差光学素子7による非点収差に基づいた角度だけ傾斜した位置に基づいて配置する必要がある。
すなわち、第1の副受光部271と第2の副受光部272、および第4副受光部274と第5副受光部275(複数の副受光部)は、楕円状の他層迷光領域QSTの中心を通り、楕円状の他層迷光領域QSTの長軸に平行な直線P2を軸として等距離の位置に設けられており、第4の副受光部において受光される他層迷光の位相と、第5の回折領域において受光される他層迷光の位相と、他層迷光の波長の1/6に対応する位相の範囲内となるように配置されている。
また、図30に示すように、多層光ディスク5の情報記録層の記録領域と未記録領域に起因する縞状パターンQSZが他層迷光領域QSTに現れた場合においても、第4副受光部274と第5副受光部275は同程度の光強度が受光される。したがって、対物レンズシフトにかかわらず、式(3)で与えられるプッシュプル信号PPでノイズ成分NDCはキャンセルされた状態が維持される。
なおこの場合、縞状パターンQSZの移動は対物レンズ4のシフトに伴う他層迷光領域QSTのシフトと同様で、非点収差光学素子7による非点収差の影響を受け、ラジアル方向に対して平行ではなく、非点収差光学素子7による非点収差に基づいた角度だけ傾斜した方向の光強度の濃淡の縞となる。
第1の副受光部271、第2の副受光部272、第4の副受光部274、第5の副受光部275を隣接させた配置に限定する必要はなく、例えば、図31に示すように、他層迷光領域QSTの位相が同一の位置であれば、互いに離れた場所に配置してもよい。
また、集光スポットを形成する(情報を取得する)情報記録層に最も近い情報記録層からの他層迷光についてのみ説明したが、集光スポットを形成する情報記録層以外の情報記録層からの他層迷光に関しても実施の形態1および実施の形態2と同様に、ノイズ成分NACをキャンセルすることが可能となる。
すなわち、集光スポットを形成する情報記録層から2番目に近い情報記録層による他層迷光領域QST(2)は、集光スポットを形成する情報記録層から最も近い情報記録層による他層迷光領域QSTより大きくなる。一方で、位相の関係は他層迷光領域QSTと同様に、光スポットQMまたは他層迷光領域QSTの中心を基準として楕円状となる。
この場合、集光スポットを形成する情報記録層から2番目に近い情報記録層による他層迷光領域QST(2)における位相は、第1の副受光部271、第2の副受光部272、第4の副受光部274、第5の副受光部275において同じ位相となる。このため、集光スポットを形成する情報記録層に最も近い情報記録層による他層迷光でのノイズ成分NACのキャンセルの原理と同様の原理で、第1の副受光部271、第2の副受光部272、第4の副受光部274、第5の副受光部275で受光されるノイズ成分NACはキャンセルされる。
これにより、複数の情報記録層を有する多層光ディスク5よりデータを読み取る場合でも、充分に他層迷光を抑制することができ、他層迷光領域QST内に副受光部を配置することができるので光検出素子27の面積をコンパクトにすることが可能となる。
以上で説明した光ヘッド装置52を搭載した多層光ディスク装置50によれば、多層光ディスク5が有する情報記録層の層数に関わらず、安定したトラッキングサーボが得られる。また、実施の形態3に係る副受光部を複数配置する方法は、フォーカス制御に非点収差法を用いた場合を示しているが、実施の形態1に示したように、主受光部に対し非点収差法を用いない場合に応用することも可能である。
さらに実施の形態3では、副受光部を4つ設けたものを示しているが、副受光部の数は4つに限らず複数設けても良い。このとき、複数の副受光部に対し回折光を入射させるため、光学素子に複数の回折領域を持たせることはいうまでもない。
本発明の実施の形態3に係る光ヘッド装置52によれば、光学素子6は、第1の回折領域602および第2の回折領域604の他に、光ビームILが情報記録層により回折されずに反射した反射回折光ビームを透過および回折する複数の回折領域をさらに有し、副受光部は、第1の副受光部271および第2の副受光部272の他に、複数の回折領域によって回折された複数の回折光ビームを受光する、複数の副受光部をさらに有するので、安定したトラッキングサーボが得られる。
また、本発明の実施の形態3に係る光ヘッド装置52によれば、第1の副受光部271および第2の副受光部272および複数の副受光部は、第1の副受光部271において受光される他層迷光の位相と、第2の副受光部272において受光される他層迷光の位相と、複数の副受光部において受光される他層迷光の位相との差が、他層迷光の波長の1/6に対応する位相の範囲内となるように配置されているので、ノイズ成分NACをキャンセルすることができ、正確なプッシュプル信号PPを算出することができる。
また、本発明の実施の形態3に係る光ヘッド装置52によれば、複数の回折領域は、第4の領域609と第5の領域610と第6の領域611と第7の領域612とからなり、複数の副受光部は、第4の副受光部274と第5の副受光部275からなり、第4の領域609で回折された第4の回折光ビームD4aおよび第6の領域611で回折された第6の回折光ビームD6aは第4の副受光部274で受光され、第5の領域610で回折された第5の回折光ビームD5aおよび第7の領域612で回折された第7の回折光ビームD7aは第5の副受光部275で受光されるので、さらに安定したトラッキングサーボが得られる。
第1の副受光部271および第2の副受光部272は、楕円状の他層迷光領域QSTの中心を通り楕円状の他層迷光領域QSTの長軸と平行な直線P2を軸から等距離の位置に設けられ、第4の副受光部274および第5の副受光部275は、軸から等距離の位置に設けられているので、対物レンズ4がシフトした場合においても、ノイズ成分NACをキャンセルすることができる。
第1の副受光部271および第2の副受光部272は、楕円状の他層迷光領域QSTの中心を通り楕円状の他層迷光領域QSTの長軸と平行な直線P2を軸から等距離の位置に設けられ、第4の副受光部274および第5の副受光部275は、軸から等距離の位置に設けられているので、情報記録層の記録領域と未記録領域により発生する縞状パターンQSZが現れた場合であっても、ノイズ成分NDCをキャンセルすることができる。
また、本発明の実施の形態3に係る光ディスク装置50は、本実施の形態3に係る光ヘッド装置52と、多層光ディスク5を回転させるディスク駆動部と、第1の副受光部271で受光された第1の回折光ビームD1aによる第1の受光信号SEと、第2の副受光部272で受光された第2の回折光ビームD2aによる第2の受光信号SFとの差分および、第4の副受光部274で受光された第4の回折光ビームD4aと第6の回折光ビームD6aによる第4の受光信号と、第5の副受光部275で受光された第5の回折光ビームD5aと第7の回折光ビームD7aとの差分に基づいてサーボ信号SSを生成する再生信号処理回路56と、サーボ信号SSに基づいてトラッキングエラー信号を生成し、トラッキングエラー信号に基づいて光ヘッド装置52の制御を行うサーボ制御回路55とを備えるので、光検出素子27の小型化が達成された光ヘッド装置52を備えることができる。
本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜変更、省略したりすることができる。