JP2014237873A - 溶融塩の製造方法、溶融塩及びアルミニウムの製造方法 - Google Patents

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健吾 後藤
細江 晃久
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晃久 細江
西村 淳一
Junichi Nishimura
淳一 西村
奥野 一樹
Kazuki Okuno
一樹 奥野
弘太郎 木村
Kotaro Kimura
弘太郎 木村
英彰 境田
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英彰 境田
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Abstract

【課題】本発明は、含酸素化合物の含有量の少なく、純度の高い溶融塩を安価に提供することが可能な溶融塩の製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】上記の課題は、アルミニウムハロゲン化物と、アルキルイミダゾリウムハロゲン化物及びアルキルピリジニウムハロゲン化物から選ばれた一種以上と、含酸素化合物と、を含有する溶融塩に塩化水素を添加して前記含酸素化合物を除去する溶融塩の製造方法、によって解決される。【選択図】なし

Description

本発明は、含酸素化合物の含有量の少ない溶融塩の製造方法、前記溶融塩の製造方法により得られる溶融塩、及び前記溶融塩を用いたアルミニウムの製造方法に関する。
アルミニウムは導電性、耐腐食性、軽量、無毒性など多くの優れた特徴を有しており、金属製品等へのめっきに広く利用されている。しかしながらアルミニウムは酸素に対する親和力が大きく、酸化還元電位が水素より低いため、水溶液系のめっき浴では電気めっきを行うことが困難である。このためアルミニウムを電気めっきする方法としては溶融塩浴を用いる方法が行われている。
溶融塩によるめっき浴は一般的には高温にする必要があるが、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(EMIC)や、1−ブチルピリジニウムクロリド(BPC)などの有機塩化物塩と塩化アルミニウム(AlCl3)とを混合することで、室温で液体のアルミニウム浴を形成できることが知られている。
特に、EMIC−AlCl3系は液の特性が良好でアルミめっき液として有用であり、特開2011−225950号公報(特許文献1)には、アルミニウム構造体の製造方法に前記アルミめっき液を用いることが提案されている。
しかしながら前記有機塩化物塩や塩化アルミニウムは吸湿性が高く、前記アルミめっき液も雰囲気中の水分を吸湿して劣化しやすいことが知られている。また、前記有機塩化物塩は簡便な合成方法がなく非常に高価であるため、頻繁にアルミめっき液を交換するとコスト増になるという問題点が有る。
溶融塩中に含まれる水分由来の含酸素不純物を除去して高純度の溶融塩を製造する方法としては、例えば、特開平07−065858号公報(特許文献2)において、塩化チオニルを用いる方法が提案されている。
特開2011−225950号公報 特開平07−065858号公報
本発明は前記問題点に鑑みて、含酸素化合物の含有量の少ない、高純度の溶融塩を安価に提供可能な、溶融塩の製造方法等を提供することを課題とする。
本発明者等は高純度の溶融塩を得るために、まず、前記特許文献2に記載の方法について検討を行った。その結果、確かにめっき液における波数3360cm-1の吸収強度が小さくなるものの、めっき液中に他の含酸素化合物が不純物として含まれていてめっき液の純度が充分に高くなっていないことが確認された。
そこで、本発明者等は当該他の含酸素化合物が何であるかを明らかにするために更なる検討を重ねた。その結果、特許文献2に記載の方法によれば、3360cm-1に吸収を示すAl-OH系の不純物は除去できるが、波数680cm-1に吸収を示すAl-O系の含酸素化合物を除去できていないことが見出された。
上記の前記Al-O系の不純物は、ホスゲン(COCl2)又は四塩化炭素(CCl4)を用いることで除去可能なことが知られている(Gleb Mamantov. et.al, "Removal of Oxide Impurities from Alkali HaloaluminateMelts Using Carbon Tetrachloride", J.Electrochem. Soc., Vol. 140, No.6, June 1993)。しかしながら、ホスゲンは毒性が非常に強く、また四塩化炭素は麻酔性があり、ともに危険な試薬であって製造が制限されている。このため安全面に問題があり、工業的な利用には適さないという問題がある。
そこで、本発明者等は他の方法によって前記めっき液から不純物としてのAl-O系の含酸素化合物を除去することについて更に鋭意探求を重ねた。
本発明は上記課題を解決すべく以下の構成を採用する。
即ち、本発明は(1)アルミニウムハロゲン化物と、アルキルイミダゾリウムハロゲン化物及びアルキルピリジニウムハロゲン化物から選ばれた一種以上と、含酸素化合物と、を含有する溶融塩に塩化水素を添加して前記含酸素化合物を除去する溶融塩の製造方法、である。
本発明により、含酸素化合物の含有量の少ない、高純度の溶融塩を安価に提供可能な溶融塩の製造方法等を提供することが可能となる。
最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本発明は、アルミニウムハロゲン化物と、アルキルイミダゾリウムハロゲン化物及びアルキルピリジニウムハロゲン化物から選ばれた一種以上と、含酸素化合物と、を含有する溶融塩に塩化水素を添加して前記含酸素化合物を除去する溶融塩の製造方法である。
上記(1)に記載の発明により、含酸素化合物の含有量の少ない、高純度の溶融塩を安価に提供可能な溶融塩の製造方法が提供される。例えば、本発明により含窒素化合物の含有量が0.1mol/L以下の溶融塩を簡便に提供することができ、このような溶融塩はアルミニウムを電析させる際に好適に用いることができる。また、前記塩素化剤の添加量や反応時間を適宜調整することで含酸素化合物の含有量が0.05mol/L以下の溶融塩や、0.03mol/L以下の溶融塩を提供することも可能である。なお、溶融塩中の含酸素不純物の含有量が2.5mol/Lを超えるとアルミニウムの電析を行えなくなるため、2.5mol/L以下となるようにして溶融塩の製造を行うことが好ましい。
(2)また、本発明の実施形態である溶融塩は、上記(1)に記載の溶融塩の製造方法によって得られる溶融塩、である。
本発明に係る溶融塩は、不純物としての含酸素化合物の含有量が非常に少ない高純度の溶融塩である。
(3)また、本発明の実施形態であるアルミニウムの製造方法は、上記(2)に記載の溶融塩を用いて、基材表面にアルミニウムを電析させるアルミニウムの製造方法である。
一般に、アルミニウムを電析させる際に用いられる溶融塩は非常に高価なものであるが、本発明のアルミニウムの製造方法に使用する溶融塩は前記のように安価に提供されるものであるため、本発明のアルミニウムの製造方法によればアルミニウムを安価に提供することができる。また、本発明のアルミニウムの製造方法に用いる前記溶融塩は非常に高純度であるため、アルミニウムを電析させる際の電流密度を高くすることができ、この点でもアルミニウムの製造コストを下げることができる。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る溶融塩の製造方法等の具体例を以下に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
<溶融塩の製造方法>
前記のように、本発明の実施形態に係る溶融塩の製造方法は、アルミニウムハロゲン化物と、アルキルイミダゾリウムハロゲン化物及びアルキルピリジニウムハロゲン化物から選ばれた一種以上と、含酸素化合物と、を含有する溶融塩に塩化水素を添加して前記含酸素化合物を除去する、溶融塩の製造方法である。
前記溶融塩中に含まれるアルミニウムハロゲン化物や、アルキルピリジニウムハロゲン化物、アルキルイミダゾリウムハロゲン化物は吸湿性が非常に高く、これらを用いた溶融塩も雰囲気中の水分を吸湿してしまう。このため溶融塩を用いたアルミニウムの電析は通常、窒素雰囲気下やアルゴン雰囲気下等で行われるが、基材等から水分が持ち込まれてしまい、経時的にめっき液が劣化してしまう。
めっき液中に水が混入すると下記の反応が進行する。
AlCl4 - + H2O ⇔ AlOHCl3 - + H+ + Cl- ⇔ AlOCl2 - + 2H+ + 2Cl-
Al2Cl7 - + H2O ⇔ Al2OHCl6 - + H+ + Cl- ⇔ Al2OCl5 - + 2H+ + 2Cl-
上記の反応式で表されるように、まず、塩化アルミニウムイオンと水との反応によってめっき液中にAlOHCl3 -またはAl2OHCl6 -が蓄積する。そして、HClがめっき液から脱離することで、徐々にAlOCl2 -またはAlOCl5 -がめっき液中に蓄積する。なお、この反応は非常にゆっくりではあるが進行し、また、加熱することにより反応が促進されることを本発明者等は確認した。
上記の不純物が蓄積すると、めっき液中のアルミニウムの析出に関与するイオンが減少するため、高電流密度でのめっきが困難となる。具体的には、高電流密度でアルミニウムの電析を行った際に、イオンの供給が追い付かず、コゲめっきと呼ばれる微細な粉末上の析出が生じ、アルミニウム膜が形成されなくなってしまう。
以上のことから本発明においては、アルミニウムハロゲン化物と、アルキルイミダゾリウムハロゲン化物及びアルキルピリジニウムハロゲン化物から選ばれた一種以上と、含酸素化合物と、を含有する溶融塩に塩化水素を添加して前記含酸素化合物を除去する。これによって特許文献2に記載の方法では除去しきれていなかったAl-O系の不純物をも除去することができる。
上記の反応は可逆反応と考えられているが、実際には反応の際に生じるHClガスがめっき液中から脱離するため実質的には不可逆反応となる。しかしながら、本発明者等の鋭意探求の結果、めっき液中に塩化水素ガスを供給して塩化水素が過飽和の状態にすることで、上記の反応が逆に進行することが見出された。また、塩化水素ガスを供給し続けることで、上記の逆反応で生じた水(H2O)が気泡に混ざってめっき液中から追い出されるため、めっき液から非常に簡易に含酸素不純物を除去することができる。また、塩化水素ガスはめっき液中から脱離しやすいため、めっき液中に余計な不純物を増やさずに済ませることができる。
前記溶融塩中への前記塩化水素ガスの供給は、例えば、溶融塩中へのバブリングにより行うことができる。このときの塩化水素ガスの流量は、溶融塩1Lあたり、0.1mL/min以上、5.0L/minが好ましい。塩化水素ガスの流量が0.1mL/min以上であることにより、逆反応を良好に進行させることができる。また、塩化水素ガスの流量が5.0L/min以下であることにより、周囲に液が飛散して汚染することを抑制することができる。前記塩化水素ガスの流量は、0.1L/min以上、0.5L/min以下であることがより好ましく、0.2L/min以上、0.4L/min以下であることが更に好ましい。
また、前記溶融塩中に前記塩化水素ガスをバブリングにより供給する時間は、長いほど充分な効果を得ることができ、10分以上、180分以下であることが好ましく、30分以上、90分以下であることがより好ましく、30分以上、45分以下であることが更に好ましい。
前記溶融塩中に塩化水素を供給する際の温度は特に限定されるものではない。即ち、塩化水素を供給する際の温度を低温にする必要は特になく、寧ろ低温で行うためには冷却のためにエネルギーが必要となり不経済である。また、高温にすると塩化水素ガスが溶融塩中から脱離しやすくなってしまうため、好ましくない。これらの観点から、前記溶融塩中に塩化水素を供給する際の温度は、10℃以上、30℃以下程度の常温で構わない。
また、バブリングの方法としては、例えば、溶融塩を収容した容器中に塩化水素ガスを供給する配管を設け、当該配管の先に無数の微小孔を設けることで、溶融塩中に微小な泡として塩化水素ガスを供給することができる。また、溶融塩を収容した容器の底面に無数の微小孔を設けた板を設け、当該板と溶融の底面との間に塩化水素ガスを供給するようにしてもよい。
溶融塩中に塩化水素ガスを供給する際に流量を多くすると、非常に大量の塩化水素ガスを必要とすることとなる。この場合には、塩化水素ガスに、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを混合させて供給することもできる。これにより、塩化水素ガスの使用量を抑制することができる。
また、前述のように塩化水素ガスは溶融塩中から脱離しやすいため、密閉容器内で塩化水素ガスと含酸素化合物とを反応させることも好ましい態様の一つである。即ち、密閉可能な容器中に溶融塩を収容し、当該容器中に塩化水素ガスを適当量供給した後に容器を密閉し、容器を振動させることで、効率よく塩化水素ガスを反応させることができる。
前記溶融塩に含まれるアルミニウムハロゲン化物としては、例えば、塩化アルミニウム(AlCl3)、臭化アルミニウム(AlBr3)、ヨウ化アルミニウム(AlI3)等が挙げられる。
前記溶融塩に含まれるアルキルイミダゾリウムハロゲン化物としては、例えば、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムクロリド(EMIC)、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムクロリド(BMIC)等が挙げられる。
前記溶融塩に含まれるアルキルピリジニウムハロゲン化物としては、例えば、ブチルピリジニウムクロリド(BPC)、メチルピリジニウムクロリド(MPC)等が挙げられる。
なお、本発明の溶融塩の製造方法は、溶融塩を使用している過程で不純物として含酸素化合物を比較的多量に含んでしまった溶融塩から前記含酸素化合物を除去して、高純度の溶融塩を得る際に特に有効であるが、極微量の含酸素化合物を含んだ未使用の溶融塩の場合からも更に含酸素化合物を除去して高純度の溶融塩を製造することができる。即ち、アルミニウムハロゲン化物と、アルキルイミダゾリウムハロゲン化物及びアルキルピリジニウムハロゲン化物から選ばれた一種以上とを混合したばかりの溶融塩であっても、雰囲気中の水分が取り込まれた結果、微量の含酸素化合物を含む溶融塩となっており、このような溶融塩を出発材料として用いて本発明の溶融塩の製造方法を実施することもできる。
<溶融塩>
本発明に係る溶融塩は、前記本発明の溶融塩の製造方法により得られる。このような溶融塩は、含酸素化合物の含有量が非常に少なく高純度の溶融塩であり、アルミニウムの析出に関与するイオンの量が多い状態にある。
また、本発明の溶融塩は、前述のように含酸素化合物の含有量が多くなり過ぎて使用不可能になってしまったような溶融塩をも出発材料として用いることができるため、新たに高価な試薬を用いて製造される溶融塩よりも、はるかに安価に提供されるものである。
<アルミニウムの製造方法>
本発明係るアルミニウムの製造方法は、前記本発明の溶融塩を用いて、基材表面にアルミニウムを電析させるアルミニウムの製造方法である。アルミニウムを電析させる方法は特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。また、基材は特に限定されず導電性を有するものを使用することができる。
前述のように前記本発明の溶融塩は非常に高純度であり、アルミニウムの析出に関与するイオンの量が多く含んでいるため、高電流密度でアルミニウムを電析させることが可能である。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、これらの実施例は例示であって、本発明の溶融塩の製造方法等はこれらに限定されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲の範囲によって示され、特許請求の範囲の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
[実施例1]
モル比で2:1となるように塩化アルミニウムと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリドとを混合して溶融塩を得た。続いて、この溶融塩に水を3体積%添加して、十分に混合し、100℃で1時間加熱を行った。
上記加熱後の溶融塩について、赤外分光計(IR)により吸収スペクトルを測定したところ、3360cm-1(Al-OH系不純物による吸収)が消失する一方で680cm-1(Al-O系不純物による吸収)に吸収ピークが増加していることが確認された。
続いて、上記溶融塩に、塩化水素ガスを0.5L/minの流量でバブリングにより1時間供給した。
その後、溶融塩の赤外吸収スペクトルを測定したところ、3360cm-1および680cm-1のピークが減少していた。これにより含酸素化合物が除去された高純度の溶融塩が得られたことが確認された。溶融塩中の水由来の含酸素化合物(Al-OH系不純物及びAl-O系不純物)の除去率は96%であった。
塩化水素ガスを供給する前後の溶融塩の赤外線吸収スペクトルを測定したことにより得られた、Al-OH系不純物及びAl-O系不純物の含有量の推移を表1に示す。なお、表1中の値は吸収スペクトルの強度に基づいて不純物量を濃度(mol/L)換算した値である。
[実施例2]
溶融塩に水を3体積%添加して、十分に混合した後、100℃で1時間の加熱を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の作業を行った。その結果、溶融塩中の水由来の含酸素化合物(Al-OH系不純物及びAl-O系不純物)の除去率は92%であった。結果を表1に表す。
Figure 2014237873
<アルミニウムの電析性>
実施例により得られた溶融塩を用いて限界電流密度値を測定することで、アルミニウムのめっき性を評価した。なお、限界電流密度は、銅板を用いたハルセル試験において、付着しためっき被膜が黒くなっている部分と金属光沢を示す部分の境界から読み取った結果とした。
その結果、実施例1の溶融塩は、水を添加して加熱処理をした後と、塩化水素を添加して処理をした後とで、限界電流密度値が2A/dm2から4.5A/dm2に増加していることが確認された。これは本発明の溶融塩が非常に高純度であり、高電流密度でアルミニウムを電析せることが可能なことを示している。

Claims (3)

  1. アルミニウムハロゲン化物と、アルキルイミダゾリウムハロゲン化物及びアルキルピリジニウムハロゲン化物から選ばれた一種以上と、含酸素化合物と、を含有する溶融塩に塩化水素を添加して前記含酸素化合物を除去する溶融塩の製造方法。
  2. 請求項1に記載の溶融塩の製造方法によって得られる溶融塩。
  3. 請求項2に記載の溶融塩を用いて、基材表面にアルミニウムを電析させるアルミニウムの製造方法。
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