以下、本発明に係る車両用ブラシレスモータの制御方法の具体的な実施例について、図面を用いて説明する。
本発明の第1の実施形態である実施例1について、図1から図6を用いて説明する。
[ブラシレスモータの構造の説明]
まず、本発明のブラシレスモータの構造について、図1(a),(b)を用いて説明する。
図1(a)は、本発明のブラシレスモータ10を下側から見た下面図である。このブラシレスモータ10は、車両に搭載されて、車両用空調装置の送風機ファンの駆動に用いられ、三相2極巻線のアウタロータ形のブラシレスDCモータ(以後、単にブラシレスモータと呼ぶ)であり、内周側のステータ3に電機子コイル(4a〜4f)、外側のロータ1にメインマグネット(界磁用永久磁石)2を備えている。
すなわち、図1(a)において、ステータ3には、各突出部(3a〜3f)をコアとして、突出部3a〜3fの外周部に、回転磁界を生成する三相(U,V,W)の電機子コイル4a〜4fが配置されている。また、ステータ3の外側には、90°間隔でメインマグネット(界磁用永久磁石)2を備えたロータ1が配置されている。このロータ1の回転位置を示すセンサマグネット5は、N極とS極とが2対、ロータ1の回転中心に対し均等角度に配置されて、ロータ1と一体に回転するシャフト6に取り付けられている。
そして、図1(a)のブラシレスモータ10は、ロータ1と、メインマグネット(界磁用永久磁石)2と、センサマグネット5と、シャフト6と、が一体となって、回転方向Rの向きに回転する。
なお、センサマグネット5によって発生する磁界の方向を検出する磁気センサ(IC1〜IC3)が、ステータ3の内周側に120°間隔で均等に配置されている。磁気センサ(IC1〜IC3)には、例えば、電流に直角に磁場をかけると、電流と磁場の両方に直交する方向に起電力が生じる、いわゆるホール効果を利用して磁界を検出するホールICが用いられる。
ブラシレスモータ10にあっては、電機子コイル(4a〜4f)に流す電流を切り替えるタイミング、すなわち、ロータ1とメインマグネット(界磁用永久磁石)2の位置関係に応じて、発生するトルクが変化する。ロータ1の回転位置を示すセンサマグネット5は、本実施例1では、メインマグネット2に対して遅れ角42°でシャフト6に取り付けられて、さらに電気的な進角制御を行っている。なお、図1(a)において、領域P1は電流経路が短く、他の電機子コイルに対して2倍の電流が流れているコイルを示す(詳しく後述する)。また、領域P2は電機子コイル4c(4f)とメインマグネット2との反発力による正回転トルク発生位置を示し、領域P3は電機子コイル4a(4d)とメインマグネット2との反発力による逆トルク発生位置を示す。
ブラシレスモータ10が図1(a)の状態にあるとき、各電機子コイル(4a〜4f)は、後述するMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)と、図1(b)に示すように接続されている。
すなわち、磁気センサ(IC3)から出力される信号を用いて、図1(b)に示すように、MOSFET(Q1),(Q5)がスイッチングされて導通状態となり、外部に設置した直流電源から、所定の直流電圧が、接続点Uaと接続点Vaの間に印加される。このとき、接続点Uaから接続点Vaに向けて、2つの電流経路に沿って電流が流れる。第1の電流経路は、接続点Uaから電機子コイル(4c,4f)を経て接続点Vaに至る経路であり、第2の電流液路は、接続点Uaから電機子コイル(4b,4e,4a,4d)を経て接続点Vaに至る経路である。
[ブラシレスモータの動作の説明]
次に、ブラシレスモータ10が回転する原理について、図1(a)〜(d)を用いて簡単に説明する。
図1(b)の接続状態にある場合、第1の電流経路の抵抗値は第2の電流経路の抵抗値の半分になるため、第1の電流経路には、第2の電流経路に対して2倍の電流が流れる。前述した領域P1(図1(a)参照)は、この2倍の電流が流れる電機子コイル(4c,4f)を示している。そして、この電流値が2倍となる電機子コイル(4c,4f)とメインマグネット2との間には、他の電機子コイル(4a,4b,4d,4e)と比べて、特に強い反発力が生じる。そして、この反発力によって、前記した逆トルクが打ち消されて、ロータ1は、回転方向Rの向きに回転する。
図1(c)は、このようにしてロータ1が、回転方向Rの向きに30°回転した状態を示している。そして、図1(d)は、このときのMOSFET(Q1〜Q6)の状態を示す。すなわち、この場合、磁気センサ(IC1)から出力される信号を用いて、MOSFET(Q3),(Q5)が導通して、所定の直流電圧が、接続点Waと接続点Vaの間に印加される。
そして、この場合は、電機子コイル(4a,4d)とメインマグネット2との間に、他の電機子コイル(4b,4c,4e,4f)と比べて、特に強い反発力が生じ、ロータ1は、さらに回転方向Rの向きに回転する。以下、同様の動作を繰り返して、ブラシレスモータ10は回転方向Rの向きに回転を続ける。
なお、図1(a),(c)に示したブラシレスモータ10の構造によると、センサマグネット5は、N極とS極とが90°毎に配置されるため、磁気センサ(IC1〜IC3)からの磁界方向変化検出信号(以下、単にセンサ信号と呼ぶ)は、ロータ1が1回転する間に2周期変化する。これによって、ロータ1の回転を2倍細かくタイミング制御することができる。また、磁気センサ(IC1〜IC3)を均等間隔で3個配置したことによって、ロータ1の回転を3倍細かくタイミング制御することができる。この均等間隔で配置された磁気センサ(IC1〜IC3)からの磁界方向検出結果に基づき、ロータ1が1回転する間にMOSFET(Q1〜Q6)の導通/非導通を計12回スイッチングし、導通されたMOSFET(Q1〜Q6)の組み合わせによって、電機子コイル(4a〜4f)に電圧を印加する電源側接続点と接地側接続点とを順次切り替えることによって、電機子コイル(4a〜4f)に流れる電流の方向を切り替える。その結果、回転磁界が生成されて、ロータ1が回転方向Rの向きに回転する駆動力が得られる。
[ブラシレスモータの駆動モードの説明]
次に、ブラシレスモータ10の駆動モードについて、図1〜4を用いて説明する。
図2は、本実施例1において行うオーバーラップ制御の説明図である。図1(b)に示す、接続点Uaと接続点Vaとの間に電圧を印加し、MOSFET(Q1),(Q5)を導通とする状態から、図1(d)に示す、接続点Waと接続点Vaとの間に電圧を印加し、MOSFET(Q3),(Q5)を導通とする状態への切り替えを行う際に、図2に示すように、接続点Uaと接続点Waを共に電源側に接続して、接続点Vaを接地側に接続する状態を作るものとする。このとき、接続点Uaと接続点Waにはともに等しい電圧が印加されており、この状態をオーバーラップ状態と呼ぶことにする。
オーバーラップ状態にあるときは、接続点Ua,接続点Waは同電位となって、接続点Ua,接続点Wa間には電流が流れない。このため、図1(b)の接続状態から図2に示すオーバーラップ状態を経て、図1(d)の接続状態に移行させることによって、電機子コイル(4a〜4f)に流れる電流の変化が穏やかとなり、その結果、電機子コイル(4a〜4f)に発生する磁束の変化が穏やかとなる。このため、ロータ1のメインマグネット2と電機子コイル(4a〜4f)間の反発力の変化が穏やかとなって、反発力によって生じる固有振動音が小さくなる。また、その反面、有効な回転トルクを生じる期間が短くなるため、トルクの発生効率が低下する。
このオーバーラップ状態は、図3のタイミングチャートに示すように、電機子コイル(4a〜4f)の各相(U,V、W)に印加する電圧波形e(t)を切り替えるタイミングにおいて、切り替えタイミング前に電圧を印加していた相(U,V,Wのいずれか)と、切り替えタイミング後に電圧を印加する相(U,V,Wのいずれか)に、同時に電圧を印加することによって実現することができる。このとき、同時に電圧を印加する時間をオーバーラップ時間δと呼ぶことにする。
本実施例1では、具体的には、オーバーラップ時間δを図4に示すように制御する。すなわち、オーバーラップ時間δを長く(例えば670μsec)設定した、ブラシレスモータ10を低騒音で駆動する第1の駆動モードと、オーバーラップ時間δを短く(例えば75μsec)設定した、ブラシレスモータ10を高効率で駆動する第2の駆動モードを設定する。
そして、車両のワイパーが動作しているときには、ブラシレスモータ10の目標回転数によらずに、ブラシレスモータ10を第2の駆動モードで駆動する。また、車両のワイパーが動作していないときには、ブラシレスモータ10の目標回転数が低い(例えば1125rpm以下)ときには、ブラシレスモータ10を第1の駆動モードで駆動して、ブラシレスモータ10の目標回転数が高い(例えば1800rpm以上)ときには、ブラシレスモータ10を第2の駆動モードで駆動する。さらに、ブラシレスモータ10の目標回転数が1125rpmと1800rpmの間にあるときには、目標回転数に応じてオーバーラップ時間δを緩やかに切り替える。これは、オーバーラップ時間を急激に変化させると、ブラシレスモータ10の回転トルクも急激に変化するため、モータの回転むらが発生するためである。
[実施例1の構成の説明]
次に、実施例1の具体的な構成について、図5を用いて説明する。
図5は、本実施例1において、ブラシレスモータ10の回転制御を行うブラシレスモータ制御装置100aの全体構成を示すブロック図である。すなわち、ブラシレスモータ制御装置100aは、ブラシレスモータ10と、センサ信号検出部12と、スイッチングタイミング演算部14aと、モータ駆動部20と、MOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)と、電源供給部22と、ワイパースイッチ26aと、空調制御部24と、からなる。
電源供給部22は、モータ駆動部20、およびMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)に対して、必要な直流電圧を供給する。
センサ信号検出部12は、磁気センサ(IC1〜IC3)から出力されるセンサ信号に基づいて、センサマグネット5の磁界方向が変化したことを検出する。そして、各々の磁気センサ(IC1〜IC3)のセンサ信号の反転信号を生成して、非反転信号と合わせて6種類の信号からなるセンサ信号としてスイッチングタイミング演算部14aに入力する。これは、後述するスイッチングタイミング演算部14aが、信号の立ち下がりエッジを検出して動作するため、立ち上がりエッジを立ち下がりエッジに変換して検出するためである。
スイッチングタイミング演算部14aはマイクロコンピュータで構成されており、さらに、オーバーラップ時間算出部15aと、オーバーラップ制御部16aと電流切り替えタイミング生成部17aと、からなる。
オーバーラップ時間算出部15aは、ワイパースイッチ26aの状態に基づいて、ブラシレスモータ10の駆動モードを決定して、電機子コイル(4a〜4f)に印加する電圧を切り替える際に、切り替え前後の接続点(Ua,Va,Waのいずれか)に重複して電圧を印加する時間であるオーバーラップ時間δを算出する。すなわち、ワイパースイッチ26aが押下されているときは、降雨状態であると推定して、電機子コイル(4a〜4f)に流れる電流の切り替えタイミングにおいて、切り替え前に電流を流していた(電圧を印加していた)電機子コイル(4a〜4fのいずれか)と、切り替え後に電流を流す(電圧を印加する)電機子コイル(4a〜4fのいずれか)と、に重複して電流を流す(電圧を印加する)時間を減らすことによってブラシレスモータ10を駆動する第2の駆動モードで駆動する。
一方、ワイパースイッチ26aが押下されていないときは、降雨状態でないと推定して、電機子コイル(4a〜4f)に流れる電流の切り替えタイミングにおいて、切り替え前に電流を流していた(電圧を印加していた)電機子コイルと、切り替え後に電流を流す(電圧を印加する)電機子コイルと、に重複して電流を流す(電圧を印加する)時間を増やすことによってブラシレスモータ10を駆動する第1の駆動モードで駆動する。
オーバーラップ制御部16aは、オーバーラップ時間算出部15aで算出されたオーバーラップ時間δを設定するために必要な、電機子コイル(4a〜4f)に流す電流の切り替えタイミングを算出する。
電流切り替えタイミング生成部17aは、オーバーラップ制御部16aで算出された電流の切り替えタイミングと、空調制御部24から得た、ブラシレスモータ10の目標回転数を示す空調制御信号に基づいて、各相(U,V,W)に流す電流の切り替えタイミングを決定する。このとき、空調制御信号によって、ブラシレスモータ10の回転数として、所定値(例えば1800rpm)以上の値が指示されたときには、ワイパースイッチ26aの状態に関わらずに、ブラシレスモータ10を第2の駆動モードで駆動する。また、空調制御信号によって、ブラシレスモータ10の回転数として、所定値(例えば1125rpm)以下の値が指示されたときには、ワイパースイッチ26aが押下されているときには、ブラシレスモータ10を第2の駆動モードで駆動して、ワイパースイッチ26aが押下されていないときには、ブラシレスモータ10を第1の駆動モードで駆動する。
そして、モータ駆動部20は、ブラシレスモータ10の各相(U,V,W)に印加する電圧を発生させるタイミング信号を、モータ駆動部20に接続されたMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)のゲートに印加する。
MOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)は、電源供給部22から供給される直流電圧を、前記タイミング信号で設定された所定のタイミングで断続して、ブラシレスモータ10の各相(U,V,W)の接続点(Ua,Va,Wa)に供給する。
このようにして各相(U,V,W)の接続点(Ua,Va,Wa)に供給された電圧信号が、電機子コイル(4a〜4f)に印加されることによって、ステータ3に回転磁界が発生し、この回転磁界と、ロータに設置されたメインマグネット(界磁用永久磁石)2との間で、磁力による吸引力と反発力が発生して、ブラシレスモータ10が所定の回転数で回転する。
[実施例1の処理の流れの説明]
次に、実施例1の具体的な処理の流れについて、図6のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS60)電流切り替えタイミング生成部17aは、空調制御部24から出力された空調制御信号に基づいて、ブラシレスモータ10の目標回転数を算出する。
(ステップS62)オーバーラップ時間算出部15aは、ワイパースイッチ26aの動作状態を表わす信号を検出して、ワイパースイッチ26aがON(押下されている)か否かを判断する。もし、ワイパースイッチ26aがONならばステップS70に進み、ワイパースイッチ26aがOFFのときはステップS64に進む。
(ステップS64)オーバーラップ時間算出部15aにおいて、ブラシレスモータ10の目標回転数が1800rpm以上か否かを判断する。もし、目標回転数が1800rpm以上ならばステップS70に進み、それ以外のときはステップS66に進む。
(ステップS66)オーバーラップ時間算出部15aにおいて、ブラシレスモータ10の目標回転数が1125rpm以下か否かを判断する。もし、目標回転数が1125rpm以下ならばステップS68に進み、それ以外のときはステップS72に進む。
(ステップS68)電流切り替えタイミング生成部17aにおいて、ブラシレスモータ10を第1の駆動モードで駆動する電流切り替えタイミング信号を生成して、モータ駆動部20においてMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)をスイッチングしてブラシレスモータ10を第1の駆動モードで駆動する。
(ステップS70)電流切り替えタイミング生成部17aにおいて、ブラシレスモータ10を第2の駆動モードで駆動する電流切り替えタイミング信号を生成して、モータ駆動部20においてMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)をスイッチングしてブラシレスモータ10を第2の駆動モードで駆動する。
(ステップS72)電流切り替えタイミング生成部17aにおいて、目標回転数に応じたオーバーラップ時間δを有する電流切り替えタイミング信号を生成して、モータ駆動部20においてMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)をスイッチングしてブラシレスモータ10を駆動する。
(ステップS74)ブラシレスモータ10の停止命令の発生を検出する。もし停止命令があったときは、図6の処理を終了し、停止命令がないときは、ステップS60に戻る。
なお、本実施例1では、磁気センサ(IC1〜IC3)から出力される6つのセンサ信号の立ち下がりによって、MOSFET(Q1〜Q6)のゲート信号をタイミング制御する。この場合、各センサ信号の立ち下がりに対応して、次の立ち下がりに相当するタイミング(ロータ1の30°回転相当)を予測して、MOSFET(Q1〜Q6)のゲート信号をオン/オフ制御する。その際、センサ信号の立ち下がりエッジ間の時間からロータ1の回転数を算出し、その回転数に対応したオーバーラップ制御のためのオーバーラップ時間δを求める。そして、ハイサイド側(電源側)およびローサイド側(接地側)のMOSFET(Q1〜Q6)のゲート信号をオン/オフ制御する際、そのオーバーラップ時間δに応じたオーバーラップ制御を行う。なお、センサ信号の立ち上がりエッジを用いて同様の制御を行うこともできる。
また、オーバーラップ制御を行う際に、ハイサイド側のMOSFET(Q1〜Q3)の出力のみ切り替えタイミングを制御して出力オフのタイミングを遅らせても、固有振動音を小さくする効果が得られるが、ローサイド側のMOSFET(Q4〜Q6)の出力の切り替えタイミングも遅らせることによって、電機子コイル(4a〜4f)の全ての電流切り替え時にオーバーラップ制御を行うことになり、よりいっそう固有振動音を小さくすることができる。
次に、本発明の第2の実施形態である実施例2について、図7から図11を用いて説明する。本実施例2では、実施例1で用いた方法とは異なる方法によって、第1の駆動モードと第2の駆動モードを実現する。また、車外騒音の大きさを推定するために、実施例1ではワイパースイッチ26aの状態を検出したが、実施例2では、車両が高速道路を走行していることを検出して、車外騒音が大きい状態であることを推定する。
[実施例2における駆動モードの説明]
ブラシレスモータ10を低騒音の回転状態で駆動する第1の駆動モードと、高効率の回転状態で駆動する第2の駆動モードを作り出す方法は、実施例1で説明した方法に限定されるものではない。
図7(a)は、ブラシレスモータ10の状態を示す下面図である。ブラシレスモータ10自体は、実施例1で説明したものと全く同じであるが、図7(a)では、センサマグネット5が、メインマグネット2(界磁用永久磁石)に対して遅れ角30°になるように、シャフト6に取り付けられている。この配置のとき、最も発生トルクが大きくなって、効率がよくなる。本実施例2においては、図7(a)に示す状態でブラシレスモータ10を駆動するモードを第2の駆動モードとする。
一方、図7(b)は、同じブラシレスモータ10のセンサマグネット5を、遅れ角42°でシャフト6に取り付けた状態を示す図である。この配置のとき、ブラシレスモータ10の振動周波数とブラシレスモータを収納する収納ケースの固有振動周波数との共鳴によるうなり音が最も小さくなる。本実施例2においては、図7(b)に示す状態でブラシレスモータ10を駆動するモードを第1の駆動モードとする。
なお、図7(a),(b)のブラシレスモータ10も、電機子コイル(4a〜4f)に流れる電流を切り替えることによって回転方向Rの向きに回転する。その動作原理は、実施例1で説明した通りである。
そして、この電機子コイル(4a〜4f)に流れる電流を切り替えるタイミングを制御することによって、センサマグネット5の、メインマグネット2(界磁用永久磁石)に対する遅れ角を制御することができる。すなわち、ブラシレスモータ10を、図7(b)に示す状態(遅れ角42°)に設計しておき、電機子コイル(4a〜4f)に流れる電流を切り替えるタイミングを制御することによって、図7(a)に示す状態(遅れ角30°)とすることができる。
この制御は、遅れ角を42°から30°に進める制御であるため、遅れ角の進角制御と呼ぶ。そして、この場合、遅れ角の進角量dは12°となる。
すなわち、ブラシレスモータ10の回転数が少ない(回転速度が遅い)ときには、遅れ角の進角量dを0°(図7(b)の状態)として駆動し(第1の駆動モード)、ブラシレスモータ10の回転数が多い(回転速度が速い)ときには、遅れ角の進角量dを12°(図7(a)の状態)として駆動する(第2の駆動モード)ことによって、ブラシレスモータ10が低速で回転しているときは低騒音で駆動して、ブラシレスモータ10が高速で回転しているときは高効率で駆動することができる。
なお、ブラシレスモータ10の機械的な誤差などによって、うなり音が最も小さくなる遅れ角には幅があるため、余裕をみて、例えば遅れ角44°で取り付けておいて、誤差分を進角制御で補うようにする。本実際例2では、遅れ角の進角量dを8°(すなわち、第2の駆動モードにおける遅れ角は36°)とする進角制御を行って、駆動モード1を駆動モード2に切り替える例をあげて説明する。
[車外騒音の推定方法の説明]
本実施例2においては、車両に搭載された自動料金収受装置(ETC(Electronic Toll Collection)装置)から出力される、高速道路を走行中であることを示す信号を検出して、車両が有料道路を走行していることを検出する。
一般に、高速道路は自動車専用道路であるため、一般道路に比べて法定速度が高く設定されている。したがって、高速道路を走行しているときは高い速度領域で走行する可能性が高い。そのため、高速道路を走行していることが検出されたときは、一般に車外騒音が大きくなると推定することができる。逆に、高速道路を走行していないときは、走行する速度領域が低くなるため、一般に車外騒音が大きくならないと推定することができる。本実施例2は、このように、高速道路を走行しているか否かを検出して、車外騒音の大きさを推定する。
[実施例2における進角制御の説明]
本実施例2では、具体的には、遅れ角の進角量dを図8に示すように制御する。すなわち、遅れ角の進角量dを0°に設定した、ブラシレスモータ10を低騒音で駆動する第1の駆動モードと、遅れ角の進角量dを8°に設定した、ブラシレスモータ10を高効率で駆動する第2の駆動モードを設定する。
そして、車両が高速道路を走行しているときには、ブラシレスモータ10の目標回転数によらずに、ブラシレスモータ10を第2の駆動モードで駆動する。また、車両が高速道路を走行していないときには、ブラシレスモータ10の目標回転数が低い(例えば1800rpm以下)ときは、ブラシレスモータ10を第1の駆動モードで駆動して、ブラシレスモータ10の目標回転数が高い(例えば2500rpm以上)ときは、ブラシレスモータ10を第2の駆動モードで駆動する。さらに、ブラシレスモータ10の目標回転数が1800rpmと2500rpmの間にあるときには、目標回転数に応じて遅れ角の進角量dを緩やかに切り替える。これは、遅れ角の進角量dを急激に変化させると、ブラシレスモータ10の回転トルクも急激に変化するため、モータの回転むらが発生するためである。
なお、ブラシレスモータ10の目標回転数のしきい値が、実施例1に記載した値(図4参照)と、実施例2に記載した値とで異なっているが、このしきい値は、個々のブラシレスモータ10の特性や、空調制御部24の仕様に基づいて設定される値であって、特定の値に限定されるものではない。
[実施例2の構成の説明]
次に、実施例2の具体的な構成について、図9,図10を用いて説明する。
図9は、本実施例2において、ブラシレスモータ10の回転制御を行うブラシレスモータ制御装置100bの全体構成を示すブロック図である。ブラシレスモータ制御装置100bの概略構成は、実施例1で説明したブラシレスモータ制御装置100a(図5参照)とほぼ等しいものであるため、ここでは、ブラシレスモータ制御装置100aとの差異のみ説明する。
ブラシレスモータ制御装置100bは、ブラシレスモータ制御装置100aが有していたワイパースイッチ26a(図5参照)の代わりに、ETCユニット26bを有して、スイッチングタイミング演算部14a(図5参照)の代わりに、スイッチングタイミング演算部14bを有する。
スイッチングタイミング演算部14bはマイクロコンピュータで構成されており、さらに、進角量算出部15bと、進角制御部16bと、電流切り替えタイミング生成部17bと、からなる。
進角量算出部15bは、ETCユニット26bから出力された、有料道路を走行中であるか否かを示す信号に基づいて、ブラシレスモータ10の駆動モードを決定する。そして、高速道路を走行中でないときには、ブラシレスモータ10の目標回転数に応じて駆動モードを切り替える。すなわち、目標回転数が低い(例えば1800rpm以下)ときには、ロータ1に取り付けられた界磁用永久磁石2に対する、前記ロータ1と一体に取り付けられたセンサマグネット5の遅れ角の進角量dを小さく設定して、ブラシレスモータ10を第1の駆動モードで駆動する。そして、ブラシレスモータ10の目標回転数が高い(例えば2500rpm以上)ときには、遅れ角の進角量dを大きく設定して、ブラシレスモータ10を第2の駆動モードで駆動する。
一方、高速道路を走行中であるときには、ロータ1に取り付けられた界磁用永久磁石2に対する、前記ロータ1と一体に取り付けられたセンサマグネット5の遅れ角の進角量dを大きく設定して、ブラシレスモータ10を第2の駆動モードで駆動する。
進角制御部16bは、進角量算出部15bで算出された遅れ角の進角量dを設定するために必要な、電機子コイル(4a〜4f)に流す電流の切り替えタイミングを算出する。
電流切り替えタイミング生成部17bは、進角制御部16bで算出された電流の切り替えタイミングと、空調制御部24から得た、ブラシレスモータ10の目標回転数を示す空調制御信号に基づいて、各相(U,V,W)に流す電流の切り替えタイミングを決定する。このとき、空調制御信号によって、ブラシレスモータ10の回転数として、所定値(例えば2500rpm)よりも大きい値が指示されたときには、ETCユニット26bの出力信号の状態に関わらずに、ブラシレスモータ10を第2の駆動モードで駆動する。また、空調制御信号によって、ブラシレスモータ10の回転数として、所定値(例えば1800rpm)以下の値が指示されたときには、ETCユニット26bの出力が高速道路を走行中であることを示しているときには、ブラシレスモータ10を第2の駆動モードで駆動して、ETCユニット26bの出力が高速道路を走行中であることを示していないときには、ブラシレスモータ10を第1の駆動モードで駆動する(図8参照)。
図10(a),(b)は、磁気センサ(IC1〜IC3)から出力されるセンサ信号と、電機子コイル(4a〜4f)に流す電流を切り替えるためにMOSFET(Q1〜Q6)をスイッチングするゲート信号との関係を示すタイムチャートである。
図10(a)に示すセンサ信号(SAH,SAL)は、それぞれ磁気センサIC1から出力されるセンサ信号、およびその反転信号を示す。同様にセンサ信号(SBH,SBL)は、それぞれ磁気センサIC2から出力されるセンサ信号、およびその反転信号を示し、センサ信号(SCH,SCL)は、それぞれ磁気センサIC3から出力されるセンサ信号、およびその反転信号を示す。以上の6信号によって、ロータ1が30°回転するごとに、電機子コイル(4a〜4f)に流す電流切り替えタイミングをきめ細かく制御することができる。
図10(b)は、進角制御を行った際に、MOSFET(Q1〜Q6)に印加するゲート信号を示し、ゲート信号(AT,BT,CT)はハイサイド側(電源側)のMOSFET(Q1〜Q3)、ゲート信号(AB,BB,CB)はローサイド側(接地側)のMOSFET(Q4〜Q6)に対するゲート信号を示す。
本実施例2では、前記した6つのセンサ信号(SAH,SAL,SBH,SBL,SCH,SCL)の立ち下がりによって、MOSFET(Q1〜Q6)のゲート信号(AT,BT,CT,AB,BB,CB)のタイミングを制御する。この場合、各センサ信号(SAH,SAL,SBH,SBL,SCH,SCL)の立ち下がりに対応して、次の立ち下がりに相当するタイミング(ロータ1の30°回転相当)を予測して、MOSFET(Q1〜Q6)のゲート信号(AT,BT,CT,AB,BB,CB)をオン/オフ制御する。その際、センサ信号(SAH,SAL,SBH,SBL,SCH,SCL)の立ち下がりエッジ間の時間からロータ1の回転速度を算出し、その回転速度に対応した進角制御のための遅れ角の進角量dを求める。そして、MOSFET(Q1〜Q6)のゲート信号(AT,BT,CT,AB,BB,CB)をオン/オフ制御する際、その遅れ角の進角量dに応じたタイミング制御を行う。なお、センサ信号(SAH,SAL,SBH,SBL,SCH,SCL)の立ち上がりエッジを用いて同様の制御を行うこともできる。
[実施例2の処理の流れの説明]
次に、実施例2の具体的な処理の流れについて、図11のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS80)電流切り替えタイミング生成部17bは、空調制御部24から出力された空調制御信号に基づいて、ブラシレスモータ10の目標回転数を算出する。
(ステップS82)進角量算出部15bは、ETCユニット26bから出力された、有料道路を走行中であることを示す信号を検出して、車両が高速道路を走行中か否かを判断する。もし、高速道路を走行中ならばステップS90に進み、高速道路を走行中でないときはステップS84に進む。
(ステップS84)進角量算出部15bにおいて、ブラシレスモータ10の目標回転数が2500rpm以上か否かを判断する。もし、目標回転数が2500rpm以上ならばステップS90に進み、それ以外のときはステップS86に進む。
(ステップS86)進角量算出部15bにおいて、ブラシレスモータ10の目標回転数が1800rpm以下か否かを判断する。もし、目標回転数が1800rpm以下ならばステップS88に進み、それ以外のときはステップS92に進む。
(ステップS88)電流切り替えタイミング生成部17bにおいて、ブラシレスモータ10を第1の駆動モードで駆動する電流切り替えタイミング信号を生成して、モータ駆動部20においてMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)をスイッチングしてブラシレスモータ10を第1の駆動モードで駆動する。
(ステップS90)電流切り替えタイミング生成部17bにおいて、ブラシレスモータ10を第2の駆動モードで駆動する電流切り替えタイミング信号を生成して、モータ駆動部20においてMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)をスイッチングしてブラシレスモータ10を第2の駆動モードで駆動する。
(ステップS92)電流切り替えタイミング生成部17bにおいて、目標回転数に応じた進角制御を行う。具体的には、目標回転数に応じた遅れ角の進角量dを設定する電流切り替えタイミング信号を生成して、モータ駆動部20においてMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)をスイッチングしてブラシレスモータ10を駆動する。
(ステップS94)ブラシレスモータ10の停止命令の発生を検出する。もし停止命令があったときは、図11の処理を終了し、停止命令がないときは、ステップS80に戻る。
次に、本発明の第3の実施形態である実施例3について、図12から図14を用いて説明する。本実施例3では、実施例1,2で説明した方法とは異なる方法によって、第1の駆動モードと第2の駆動モードを実現する。また、車外騒音の大きさを推定するために、車両が渋滞路を走行していることを検出して、車外騒音が大きい状態であることを推定する。
[実施例3における駆動モードの説明]
図12(a),(b)は、ブラシレスモータ10の電機子コイル(4a〜4f)に流す電流を切り替えるために印加する電圧波形e(t)の例である。
図12(a)は電圧波形e(t)が正弦波形状を有する例であり、図12(b)は電圧波形e(t)が矩形波形状を有する例である。
このうち、正弦波形状を有する電圧波形e(t)を用いてブラシレスモータ10の電機子コイル(4a〜4f)に流す電流を切り替えると、相切り替え時の騒音を低減することができる。本実施例3においては、このように正弦波形状の電圧波形e(t)を用いてブラシレスモータ10を駆動するモードを第1の駆動モードとする。
一方、矩形波形状を有する電圧波形e(t)を用いてブラシレスモータ10の電機子コイル(4a〜4f)に流す電流を切り替えると、ブラシレスモータ10を高効率で回転させて高トルクを発生させることができる。本実施例3においては、このように矩形波形状の電圧波形e(t)を用いてブラシレスモータ10を駆動するモードを第2の駆動モードとする。
[車外騒音の推定方法の説明]
本実施例3においては、車両に搭載された道路交通情報の提供装置であるVICS(登録商標)ユニット(Vehicle Information and Communication Unit)から出力される、車両周囲の交通情報を検出して、車両が渋滞路を走行していることを検出する。
一般に、渋滞路を走行しているときは、低い速度領域で走行する可能性が高い。そして、そのときは、車両の周囲に他車両が多く存在するため、一般に車外騒音が大きくなると推定することができる。逆に、渋滞路を走行していないときは、車外騒音が大きくならないと推定することができる。本実施例3は、このように、渋滞路を走行しているか否かを検出することによって、車外騒音の大きさを推定する。
[実施例3の構成の説明]
次に、本実施例の具体的な構成について、図13を用いて説明する。
図13は、本実施例3において、ブラシレスモータ10の回転制御を行うブラシレスモータ制御装置100cの全体構成を示すブロック図である。ブラシレスモータ制御装置100cの概略構成は、実施例1で説明したブラシレスモータ制御装置100a(図5参照)とほぼ等しいものであるため、ここでは、ブラシレスモータ制御装置100aとの差異のみ説明する。
ブラシレスモータ制御装置100cは、ブラシレスモータ制御装置100aが有していたワイパースイッチ26a(図5参照)の代わりにVICS(登録商標)ユニット26cを有する。また、スイッチングタイミング演算部14a(図5参照)の代わりにスイッチングタイミング演算部14cを有し、さらに、駆動電圧波形生成部23を有する。
スイッチングタイミング演算部14cはマイクロコンピュータで構成されており、さらに、駆動波形決定部18と、電流切り替えタイミング生成部17cと、からなる。
駆動波形決定部18は、VICS(登録商標)ユニット26cから出力された、渋滞路を走行中であるか否かを示す信号に基づいて、ブラシレスモータ10の電機子コイル(4a〜4f)に印加する電圧波形を決定する。そして、渋滞路を走行中でないときには、ブラシレスモータ10の目標回転数に応じて駆動モードを切り替える。すなわち、目標回転数が低い(例えば1800rpm以下)ときには、電機子コイル(4a〜4f)に印加する電圧波形を正弦波形として、ブラシレスモータ10を第1の駆動モードで駆動する。そして、ブラシレスモータ10の目標回転数が高い(例えば1800rpmより高い)ときには、電機子コイル(4a〜4f)に印加する電圧波形を矩形波形として、ブラシレスモータ10を第2の駆動モードで駆動する。
一方、渋滞路を走行中であるときには、目標回転数によらずに、電機子コイル(4a〜4f)に印加する電圧波形を矩形波形として、ブラシレスモータ10を第2の駆動モードで駆動する。
電流切り替えタイミング生成部17cは、空調制御部24から得た、ブラシレスモータ10の目標回転数を示す空調制御信号に基づいて、各相(U,V,W)に流す電流の切り替えタイミングを決定する。このとき、空調制御信号によって、ブラシレスモータ10の回転数として、所定値(例えば1800rpm)よりも高い値が指示されたときには、VICS(登録商標)ユニット26cの出力信号の状態に関わらずに、ブラシレスモータ10を第2の駆動モード(矩形波)で駆動する。また、空調制御信号によって、ブラシレスモータ10の回転数として、所定値(例えば1800rpm)以下の値が指示されたときには、VICS(登録商標)ユニット26cの出力に基づいて、車両が渋滞路を走行中であると判断されたときには、ブラシレスモータ10を第2の駆動モード(矩形波)で駆動して、車両が渋滞路を走行中でないと判断されたときには、ブラシレスモータ10を第1の駆動モード(正弦波)で駆動する。
駆動電圧波形生成部23は、ブラシレスモータ10の駆動モードに応じた電圧波形e(t)を生成する。すなわち、電圧波形e(t)として正弦波が選択されたときには、当該正弦波を所定の高周波成分からなる変調波でパルス幅変調したPWM波形を生成する。すなわち、正弦波の振幅に対応したパルス幅を有するPWM波形を生成する。そして、磁気センサ(IC1〜IC3)から出力される6つのセンサ信号の立ち下がりのタイミングで、生成したPWM波形をMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)のゲート信号として出力する。
一方、電圧波形e(t)として矩形波が選択されたときには、駆動電圧波形生成部23において、電流切り替えタイミング生成部17cで生成された電流切り替えタイミングを有する矩形波を生成する。そして、磁気センサ(IC1〜IC3)から出力される6つのセンサ信号の立ち下がりのタイミングで、生成された矩形波をMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)のゲート信号として出力する。
このようにして駆動電圧波形生成部23で生成された、正弦波に対応するPWM波形、または矩形波がモータ駆動部20に入力されて、MOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)をスイッチングしてブラシレスモータ10を駆動する。
[実施例3の処理の流れの説明]
次に、本実施例の具体的な処理の流れについて、図14のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS100)電流切り替えタイミング生成部17cは、空調制御部24から出力された空調制御信号に基づいて、ブラシレスモータ10の目標回転数を算出する。
(ステップS102)駆動波形決定部18は、VICS(登録商標)ユニット26cから出力された渋滞情報に基づいて、走行中の道路が渋滞しているか否かを判断する。もし、渋滞中ならばステップS108に進み、渋滞中でないときはステップS104に進む。
(ステップS104)駆動波形決定部18において、ブラシレスモータ10の目標回転数が1800rpmよりも高いか否かを判断する。もし、目標回転数が1800rpmよりも高いときはステップS108に進み、それ以外のときはステップS106に進む。
(ステップS106)ブラシレスモータ10を第1の駆動モードで駆動する。このときは、駆動電圧波形生成部23において、正弦波からなる電流切り替えタイミング信号(電圧波形e(t))が生成されて、モータ駆動部20においてMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)がスイッチングされる。
(ステップS108)ブラシレスモータ10を第2の駆動モードで駆動する。このときは、駆動電圧波形生成部23において、矩形波からなる電流切り替えタイミング信号(電圧波形e(t))が生成されて、モータ駆動部20においてMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)がスイッチングされる。
(ステップS110)ブラシレスモータ10の停止命令の発生を検出する。もし停止命令があったときは、図14の処理を終了し、停止命令がないときは、ステップS100に戻る。
次に、本発明の第4の実施形態である実施例4について、図15,図16を用いて説明する。本実施例4では、車外騒音の大きさを推定するために、車両が走行している道路の属性を検出することによって、車外騒音が大きい状態であることを推定する。
[車外騒音の推定方法の説明]
本実施例4においては、車両に搭載されたカーナビゲーションユニットが有する走行中の道路の属性情報を検出して、所定の属性の道路を走行しているときは、車外騒音が大きい状態であると推定する。
一般に、高速道路,トンネル,橋梁等の特定の属性の道路を走行しているときは、車外騒音が大きくなると推定することができる。逆に、特定の属性の道路を走行していないときは、車外騒音が大きくならないと推定することができる。本実施例4は、このように、特定の属性の道路を走行しているか否かを検出することによって、車外騒音の大きさを推定する。
[実施例4の構成の説明]
次に、実施例4の具体的な構成について、図15を用いて説明する。
図15は、本実施例4において、ブラシレスモータ10の回転制御を行うブラシレスモータ制御装置100dの全体構成を示すブロック図である。ブラシレスモータ制御装置100dの概略構成は、実施例1で説明したブラシレスモータ制御装置100aとほぼ等しいものであるため、ここでは、ブラシレスモータ制御装置100aとの差異のみ説明する。
なお、本実施例4において、ブラシレスモータ10の第1の駆動モードと第2の駆動モードは、実施例1で説明したオーバーラップ時間δを変更することによって実現されるものとする。
ブラシレスモータ制御装置100dは、ブラシレスモータ制御装置100aが有していたワイパースイッチ26a(図5参照)の代わりに、カーナビゲーションユニット26dを有する。
カーナビゲーションユニット26dの内部には道路地図データベースが内蔵されており、GPSユニットで測位された現在位置情報と、車両の速度、角速度の情報等を用いて、車両の現在位置を道路地図データベースとを、随時対応付ける(マップマッチング)。
道路地図データベースに格納された各道路には、その道路の属性情報が記憶されており、マップマッチングされた道路の属性情報は、随時、オーバーラップ時間算出部15aに出力される。
このようにして出力された道路の属性情報が、高速道路,制限速度が所定の値を超える道路,未舗装路,トンネル,橋梁等の、予め設定された所定の属性であるときは、車外騒音が大きいものと推定する。
電流切り替えタイミング生成部17aは、空調制御部24から得た、ブラシレスモータ10の目標回転数を示す空調制御信号に基づいて、各相(U,V,W)に流す電流の切り替えタイミングを決定する。このとき、空調制御信号によって、ブラシレスモータ10の回転数として、所定値(例えば1800rpm)以上の値が指示されたときには、走行中の道路属性情報に関わらずに、ブラシレスモータ10をオーバーラップ時間δの短い第2の駆動モードで駆動する。また、空調制御信号によって、ブラシレスモータ10の回転数として、所定値(例えば1125rpm)以下の値が指示されたときには、走行中の道路属性情報に基づいて、車両が所定の属性の道路を走行中であると判断されたときには、ブラシレスモータ10をオーバーラップ時間δの短い第2の駆動モードで駆動して、車両が所定の属性の道路を走行中でないと判断されたときには、ブラシレスモータ10をオーバーラップ時間δの長い第1の駆動モードで駆動する。
[実施例4の処理の流れの説明]
次に、本実施例の具体的な処理の流れについて、図16のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS120)電流切り替えタイミング生成部17aは、空調制御部24から出力された空調制御信号に基づいて、ブラシレスモータ10の目標回転数を算出する。
(ステップS122)オーバーラップ時間算出部15aは、カーナビゲーションユニット26dからマップマッチングされた道路の属性情報を読み出して、所定の属性の道路を走行しているか否かを判断する。もし、所定の属性の道路を走行しているならばステップS130に進み、所定の属性の道路を走行していないときはステップS124に進む。
(ステップS124)オーバーラップ時間算出部15aにおいて、ブラシレスモータ10の目標回転数が1800rpm以上か否かを判断する。もし、目標回転数が1800rpm以上ならばステップS130に進み、それ以外のときはステップS126に進む。
(ステップS126)オーバーラップ時間算出部15aにおいて、ブラシレスモータ10の目標回転数が1125rpm以下か否かを判断する。もし、目標回転数が1125rpm以下ならばステップS128に進み、それ以外のときはステップS132に進む。
(ステップS128)電流切り替えタイミング生成部17aにおいて、ブラシレスモータ10を第1の駆動モードで駆動する電流切り替えタイミング信号を生成して、モータ駆動部20においてMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)をスイッチングしてブラシレスモータ10を第1の駆動モードで駆動する。
(ステップS130)電流切り替えタイミング生成部17aにおいて、ブラシレスモータ10を第2の駆動モードで駆動する電流切り替えタイミング信号を生成して、モータ駆動部20においてMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)をスイッチングしてブラシレスモータ10を第2の駆動モードで駆動する。
(ステップS132)電流切り替えタイミング生成部17aにおいて、目標回転数に応じたオーバーラップ時間δを有する電流切り替えタイミング信号を生成して、モータ駆動部20においてMOSFET(スイッチング素子)(Q1〜Q6)をスイッチングしてブラシレスモータ10を駆動する。
(ステップS134)ブラシレスモータ10の停止命令の発生を検出する。もし停止命令があったときは、図16の処理を終了し、停止命令がないときは、ステップS120に戻る。
以上、説明したように、実施例1に係る車両用ブラシレスモータの制御方法によれば、車両用ブラシレスモータ10を、所定の回転数以下で回転させるときには、低騒音で回転させる第1の駆動モードで駆動して、所定の回転数よりも高い回転数で回転させるときには、高効率で回転させる第2の駆動モードで駆動するときに、ワイパースイッチ26aが押下された状態であるときは、車両の車外騒音が大きい状態であると判断して、ブラシレスモータ10の回転数によらずに、高効率で回転させる第2の駆動モードで駆動するため、ブラシレスモータ10を第1の駆動モードで駆動していた低回転領域であっても、車外騒音が大きい状態であると判断されたときには、より効率の高い第2の駆動モードで駆動するため、ブラシレスモータ10を高効率で駆動する時間が増えることによって、省電力化を図ることができる。
また、実施例1に係る車両用ブラシレスモータの制御方法によれば、第1の駆動モードを、車両に搭載されたブラシレスモータ10の電機子コイル(4a〜4f)の各接続点(Ua,Va,Wa)に印加する電圧を切り替える際に、切り替え前に電圧を印加していた電機子コイル(4a〜4fのいずれか)と、切り替え後に電圧を印加する電機子コイル(4a〜4fのいずれか)と、に重複して電圧を印加する時間(オーバーラップ時間δ)を増やすことによってブラシレスモータ10を駆動する駆動モードとしたため、電機子コイル(4a〜4f)に発生する磁束の変化が穏やかとなって、ブラシレスモータ10を低騒音で駆動することができ、第2の駆動モードを、車両に搭載されたブラシレスモータ10の電機子コイル(4a〜4f)の各接続点(Ua,Va,Wa)に印加する電圧を切り替える際に、切り替え前に電圧を印加していた電機子コイル(4a〜4fのいずれか)と、切り替え後に電圧を印加する電機子コイル(4a〜4fのいずれか)と、に重複して電圧を印加する時間(オーバーラップ時間δ)を減らすことによってブラシレスモータ10を駆動する駆動モードとしたため、有効な回転トルクを生じる期間が長くなって、トルクの発生効率が向上してブラシレスモータ10の効率が向上する。そして、ブラシレスモータ10の各相(U,V,W)に印加する電圧波形のオーバーラップ時間δを変更するという簡便な方法によって、第1の駆動モードと第2の駆動モードとを確実に切り替えることができる。
また、実施例1に係る車両用ブラシレスモータの制御方法によれば、車両のワイパースイッチ26aが押下されているときは、降雨状態であって車外騒音が大きい状態であると判断して、ブラシレスモータ10を高効率な第2の駆動モードで駆動するため、ワイパースイッチ26aの状態を確認するという簡単な処理によって車外騒音の状態を推定することができ、ブラシレスモータ10を高効率で駆動する時間を増やして省電力化を図ることができる。
また、実施例2に係る車両用ブラシレスモータの制御方法によれば、第1の駆動モードを、車両に搭載されたブラシレスモータ10への通電状態を制御するMOSFET(Q1〜Q6)(スイッチング素子)の切り替えタイミングを、ブラシレスモータ10のロータ1に取り付けられたメインマグネット2(界磁用永久磁石)に対する、ロータ1と一体に取り付けられたセンサマグネット5の遅れ角の進角量dが大きくなるように制御して、ブラシレスモータ10を駆動する駆動モードとしたため、電機子コイル(4a〜4f)に発生する磁束の変化が穏やかとなって、ブラシレスモータ10を低騒音で駆動することができ、第2の駆動モードを、車両に搭載されたブラシレスモータ10への通電状態を制御するMOSFET(Q1〜Q6)(スイッチング素子)の切り替えタイミングを、メインマグネット2(界磁用永久磁石)に対するセンサマグネット5の遅れ角の進角量dが小さくなるように制御して、ブラシレスモータ10を駆動する駆動モードとしたため、有効な回転トルクを生じる期間が長くなって、トルクの発生効率が向上してブラシレスモータ10の効率が向上する。そして、ブラシレスモータ10の遅れ角の進角量dを変更するという簡便な方法によって、第1の駆動モードと第2の駆動モードとを確実に切り替えることができる。
また、実施例2に係る車両用ブラシレスモータの制御方法によれば、車両のETCユニット26bから出力される信号に基づいて、車両が高速道路を走行していると判断されたときは、車外騒音が大きい状態であると判断して、ブラシレスモータ10を高効率な第2の駆動モードで駆動するため、ETCユニット26bの出力信号を確認するという簡単な処理によって車外騒音の状態を推定することができ、ブラシレスモータ10を高効率で駆動する時間を増やして省電力化を図ることができる。
また、実施例3に係る車両用ブラシレスモータの制御方法によれば、第1の駆動モードを、ブラシレスモータ10の電機子コイル(4a〜4f)の各接続点(Ua,Va,Wa)に印加する電圧波形e(t)を正弦波としてブラシレスモータ10を駆動する駆動モードとしたため、電機子コイル(4a〜4f)に発生する磁束の変化が穏やかとなって、ブラシレスモータ10を低騒音で駆動することができ、第2の駆動モードを、電圧波形e(t)を矩形波としてブラシレスモータ10を駆動する駆動モードとしたため、有効な回転トルクを生じる期間が長くなって、トルクの発生効率が向上してブラシレスモータ10の効率が向上する。そして、ブラシレスモータ10の電機子コイル(4a〜4f)に印加する電圧波形e(t)を変更するという簡便な方法によって、第1の駆動モードと第2の駆動モードを確実に切り替えることができる。
また、実施例3に係る車両用ブラシレスモータの制御方法によれば、車両のVICS(登録商標)ユニット26cから出力される信号に基づいて、車両が渋滞路にいると判断されたときは、車外騒音が大きい状態であると判断して、ブラシレスモータ10を高効率な第2の駆動モードで駆動するため、VICS(登録商標)ユニット26cの出力信号を確認するという簡単な処理によって車外騒音の状態を推定することができ、ブラシレスモータ10を高効率で駆動する時間を増やして省電力化を図ることができる。
また、実施例4に係る車両用ブラシレスモータの制御方法によれば、車両のカーナビゲーションユニット26dから出力される信号に基づいて、車両が走行中に車外騒音が大きい状態になると想定される所定の属性の道路を走行していると判断されたときは、ブラシレスモータ10を高効率な第2の駆動モードで駆動するため、カーナビゲーションユニット26dから出力される走行中の道路属性を確認するという簡単な処理によって車外騒音の状態を推定することができ、ブラシレスモータ10を高効率で駆動する時間を増やして省電力化を図ることができる。
なお、前記した実施例1〜実施例4では、それぞれ、ワイパースイッチ26a,ETCユニット26bの出力,VICS(登録商標)ユニット26cの出力,カーナビゲーションユニット26dの出力に基づいて車外騒音の大きさを推定したが、この推定は、さらに、車両の車速を考慮して行ってもよい。すなわち、車両の車速が所定値よりも大きいときには、車外騒音がより一層大きい状態であると推定して、車両の車速が所定値以下であるときには車外騒音が大きい状態でないと推定してもよい。
また、ETCユニット26b,VICS(登録商標)ユニット26c,カーナビゲーションユニット26dのうち、複数のユニットが搭載された車両にあっては、それら複数のユニットの出力と、ワイパースイッチ26aの状態、車速を組み合わせて、車外騒音を推定する構成としてもよい。このように複数の情報を組み合わせることによって、車外騒音の状態をより正確に判断することができる。
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。