JP2014230534A - N2o還元能が強化された根粒菌及びn2oの除去方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】N2O還元能が強化された新規の根粒菌及びその作製方法を提供する。
【解決手段】bll4572遺伝子の機能を欠損させることにより、根粒菌のNOの還元能が増強された、根粒菌。NO雰囲気下で根粒菌を培養する工程を含む、NO還元能強化株の作製方法。ならびに、前記培養工程により得られる根粒菌がbll4572遺伝子に変異が生じる、前記作製方法。ダイズの種子に、前記NO還元能が増強された前記根粒菌を添加する工程を含む、NOの除去方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、ダイズ根粒菌及び使用方法に関する。
ダイズ根粒菌(Bradyrhizobium japonicum)はダイズの根に共生し窒素固定を行なう共生窒素固定細菌であるが、一方で窒素固定の逆過程である脱窒能も有している。B. japonicum USDA110株は、硝酸イオン(NO3 -)から窒素ガス(N2)までの還元(NO3 -→NO2 -→NO→N2O→N2)を行い、各ステップの反応を担う還元酵素遺伝子(napAB, nirK, norCB, nosZ)を保有することが報告されている(非特許文献1〜4)。これらの脱窒遺伝子群は、B. japonicumにおける低酸素分圧下でのグローバルな転写制御因子であるFixK2及び、窒素酸化物によって誘導されるNnrRの制御を受けていることが明らかとなっており、それぞれの脱窒遺伝子オペロンの上流にはFNR boxと呼ばれるプロモーター領域が保存されている(非特許文献1、2、4及び5)。特にnosZは亜酸化窒素N2OからN2への反応を触媒するN2O還元酵素をコードしており、ダイズ根粒菌のN2O還元酵素nos遺伝子群を広宿主域コスミドで導入すると、既存のダイズ根粒菌のN2O還元酵素の活性上昇および誘導時間短縮が起き、ダイズ根粒菌のN2O還元酵素活性を強化できる余地のあることが知られている(非特許文献6)。N2Oは、紫外線により分解されるなどして一酸化窒素を生成するため、N2Oの増加もオゾン層破壊につながることが知られており、大気中及びダイズ根粒菌自身が発生させるN2Oを削減することが望まれている。しかし、前述のコスミド導入株のような菌は遺伝子組換え微生物であり、現在のところ、野外での使用は困難であるという問題があった。
Velasco, L., S. Mesa, M. J. Delgado, and E. J. Bedmar. 2001. Characterization of the nirK gene encoding the respiratory, Cu-containing nitrite reductase of Bradyrhizobium japonicum. Biochim. Biophys. Acta, 1521:130-134. Mesa, S., L. Velasco, M. E. Manzanera, M. J. Delgado, and E. J. Bedmar. 2002. Characterization of the norCBQD genes, encoding nitric oxide reductase, in the nitrogen fixing bacterium Bradyrhizobium japonicum. Microbiology 148:3553-3560. Delgado, M. J., N. Bonnard, A. Tresierra, E. J. Bedmar, and P. Muller. 2003. The Bradyrhizobium japonicum napEDABC genes encoding the periplasmic nitrate reductase are essential for nitrate respiration. Microbiology, 149:3395-3403. Velasco, L., S. Mesa, C. Xu, M. J. Delgado, and E. J. Bedmar. 2004. Molecular characterization of nosRZDFYLX genes coding for denitrifying nitrous oxide reductase of Bradyrhizobium japonicum. Antonie van Leeuwenhoek 85:229-235 Robles, E.F., C. Sanchez, N. Bonnard, M. J. Delgado, and E. J. Bedmar. 2006. The Bradyrhizobium japonicum napEDABC genes are controlled by the FixLJ-FixK2-NnrR regulatory cascade. Biochemical Society Transactions 34:108-110. Sameshima-Saito, R., K. Chiba, J. Hirayama, M. Itakura, H. Mitsui, S. Eda, and K. Minamisawa. 2006. Symbiotic Bradyrhizobium japonicum reduces N2O surrounding the soybean root system via nitrous oxide reductase. Appl. Environ. Microbiol. 72:2526-2532.
本発明は、N2O還元能が強化された新規の根粒菌及びその使用方法を提供することを課題とする。
上記のような状況の下、本発明者らは多くの試行錯誤の結果、同化系の硝酸還元酵素を制御することが示唆されているbll4572遺伝子の機能を欠損させることにより、根粒菌のN2Oの還元能が増強されることを見出した。本発明は、この新規の知見に基づくものである。従って、本発明は以下の項を提供する:
1.bll4572遺伝子に欠損を有する根粒菌。
2.ダイズの種子に項1に記載の根粒菌を添加する工程を含む、N2Oの除去方法。
3.N2O雰囲気下で根粒菌を培養する工程を含む、N2O還元能強化株の作製方法。
4.前記培養工程により得られる根粒菌がbll4572遺伝子に変異が生じる、項3に記載の方法。
5.項3又は4に記載の方法により得られる、項1に記載の根粒菌。
本発明によれば、N2O還元能が強化された新規の根粒菌を得ることができる。
bll4572遺伝子の塩基配列を示す。 実施例で作製した各変異株における変異の位置を示す。 bll0775遺伝子の塩基配列を示す。 bsl1187遺伝子の塩基配列を示す。 bll2460遺伝子の塩基配列を示す。 bll2792遺伝子の塩基配列を示す。 bsr2863遺伝子の塩基配列を示す。 bll3563遺伝子の塩基配列を示す。 bll3563遺伝子の塩基配列を示す。 bll3563遺伝子の塩基配列を示す。 bll3563遺伝子の塩基配列を示す。 blr4133遺伝子の塩基配列を示す。 blr4466遺伝子の塩基配列を示す。 bsr4717遺伝子の塩基配列を示す。 bll4905遺伝子の塩基配列を示す。 bll5968遺伝子の塩基配列を示す。 blr5975遺伝子の塩基配列を示す。 bll6009遺伝子の塩基配列を示す。 blr6248遺伝子の塩基配列を示す。 bll6832遺伝子の塩基配列を示す。
N 2 O還元能が強化された根粒菌
本発明は、bll4572遺伝子に欠損を有する根粒菌を提供する。bll4572遺伝子とは、ダイズ根粒菌(Bradyrhizobium japonicum)が有する遺伝子であって、配列番号1で表される塩基配列を示す(図1)。
本発明において、欠損とは、ゲノム中のbll4572遺伝子の塩基配列の全部または一部(例えば、少なくとも1個)が欠失しているもの、全部または一部に別の核酸分子が挿入されているもの、当該コード領域の全部または一部が別の核酸分子で置換されているもの等が挙げられる。例えば、bll4572遺伝子の281位のCのAへの置換、302位のTのGへの置換、701位のGの欠失等が挙げられるが、これらに限定されない。
Bradyrhizobium japonicumにおけるbll4572遺伝子の機能は、解明されていないが、Victor et al. Biochemical Society Transactions 2011. vol.39 1838-1843にはAzotobacter vinelandii においてbll4572(nasS)及びbll4573(nasT)相同遺伝子が細胞内の硝酸・亜硝酸系を感知する2成分制御系因子であり、同化系硝酸還元酵素(NO3 -→NO2 -→NH3)を制御することが記載されている。
nosZ及びnos遺伝子オペロンに変異を有さないものであってもよい。また、本発明において、ダイズ根粒菌はbll4572遺伝子に欠損を有するものであればよく、ダイズ根粒菌が有するその他の遺伝子に変異を有さないものであってもよい。ダイズ根粒菌が有するbll4572遺伝子以外の遺伝子としては、例えば、下記に示すものが挙げられる:
Gene ID Product
bll0775: hypothetical protein
bsl1187: F0F1 ATP synthase subunit C
bll2460: hypothetical protein
bll2792: putative dehydrogenase, oxidoreductase FAD flavoprotein
bsr2863: two-component response regulator
bll3563: hypothetical protein
blr4133: hypothetical protein
blr4466: transcriptional regulatory protein
bsr4717: hypothetical protein
bll4905: NADH dehydrogenase subunit M
bll5968: putative mannose-6-phosphate isomerase
blr5975: putative oxidoreductase
bll6009: hypothetical protein
blr6248: ABC transporter ATP-binding protein
bll6832: ABC transporter permease。
従って、本発明においてN2O還元能が強化された根粒菌は、bll4572遺伝子に加えて上記表1に示す遺伝子の少なくとも1個(例えば1〜15個、例えば1〜14個、例えば1〜7個、例えば1〜3個)に欠損を有するものであっても、bll4572遺伝子に欠損を有するものの表1に示す遺伝子には欠損を有さないものであってもよい。ここで、表1に示す各遺伝子は自体公知のものであり、その具体的な塩基配列は、例えば、図3〜20に示すものが挙げられる(配列番号2〜16)。本発明において、N2O還元能が強化された根粒菌としては、bll4572遺伝子及びそれ以外の遺伝子のうち、51個以下または67個以上の遺伝子の変異を有しているものが挙げられる。
本発明における根粒菌変異株の作製方法としては、bll4572遺伝子に欠損をもたらすことができるものであれば特に限定されず、例えば、bll4572遺伝子の破壊カセットの構築及びその導入による方法、不均衡変異導入法等が挙げられる。また、本発明の根粒菌変異株は、後述する、N2O雰囲気下で根粒菌を培養する工程を含む方法でも得ることができる。
不均衡変異導入法とは、DNAポリメラーゼの校正機能不全により生じるミューテーター形質を利用した方法であり、(Miller, H. J. 1996. Spontaneous mutators in bacteria: insights into pathways of mutagenesis and repair. Annu. Rev. Microbiol. 50:625-643.)。具体的には、DNA複製時の校正機能を担うDNAポリメラーゼεサブユニットをコードするdnaQの機能を欠損させることにより行う。当該操作により目的の微生物にミューテーター形質が生じ、ゲノム上に複製エラーによる自然突然変異が高頻度に生じる。
bll4572遺伝子の破壊カセットの構築に用いるベクターとしては、種々のプラスミドべクター、ファージベクターなどが使用可能であるが、微生物菌体内で複製可能であり、適当な薬剤耐性マーカーと特定の制限酵素切断部位を有し、菌体内のコピー数の高いプラスミドベクターを使用するのが望ましい。具体的には、根粒菌を宿主とするベクターとしては、pKS800、pLAFR1、pRK290などを例示することができる。
本発明において、N2O還元能の強化とは、野生型の根粒菌と比較してN2Oの還元能が増強されていることを示し、例えば、野生型の根粒菌と比較してN2Oの還元活性が2倍以上、より好ましくは3倍以上であることを示す。
N 2 O還元能強化株の作製方法
本発明は、N2O雰囲気下で根粒菌を培養する工程を含む、N2O還元能強化株の作製方法を提供する。
培地としては、HM(HEPES MES-salts)液体培地(Cole et al. Antimicrob.Agents Chemother. 1973(4):248-253.)、HMM液体培地(Sameshima-Saito et al. Symbiotic Bradyrhizobium japonicum reduces N2O surrounding the soybean root system via nitrous oxide reductase. Appl. Environ. Microbiol. 2006(72):2526-2532.)、AG培地(Sadowsky et al. Appl. Environ. Microbiol. 1987(53):2624-2630)、YEM(Yeast extract Mannitol)培地等を用いることができる。
本発明において、N2O雰囲気下とは、根粒菌の培養液が接する気相のN2O濃度を、大気中のN2O濃度よりも高い状態、好ましくは3〜5%、より好ましくは5〜30%とすることを意味する。より具体的には、気相をN2ガスに好ましくは3〜5%、より好ましくは5〜30%のN2Oを混合したもので置換した状態で培養することが好ましい。上記N2ガスにN2Oを添加した気体には、本発明の効果が毀損されない範囲で、少量のその他の気体を含んでいてもよい。
本発明の方法において、培養温度は特に限定されず、例えば、15〜35℃、より好ましくは25〜30℃の範囲で適宜設定することができる。培養時間も特に限定されず、例えば、24時間〜14日、5日〜7日の範囲で適宜設定できる。培養後数日経過すると、培養液中の菌体数が頭打ちになるため、適宜、培養液の一部を新たな培地に植継ぐ操作を行う。植継ぎ回数も特に限定されないが、例えば、1〜20回、好ましくは5〜10回の範囲で適宜設定することができる。培養の規模も特に限定されないが、例えば、培養に用いる細胞懸濁液の体積として、例えば、1 ml 以上、より好ましくは、500 ml 以上、さらに好ましくは1l 以上の範囲で適宜設定できる。また、培養に用いる細胞懸濁液の体積の上限も特に限定されず、例えば、100000 l以下、10000 l以下、1000 l以下、100 l以下、5 l以下、2 l以下等、適宜設定することができる。当該方法によれば、N2Oを唯一の電子受容体とする培養条件で培養することで、ベクターを用いた遺伝子組換えを行わなくても、集積培養によりbll4572変異株を取得できることが期待される。ベクター等を使用した遺伝子組換え技術を用いなくても自然突然変異を利用することによって作製することができれば、野外での使用の容易性の観点から非常に有用である。
本発明に係るN2O還元能強化株の作製方法は、上記培養工程に供した根粒菌のbll4572遺伝子における欠損の有無を測定する工程をさらに含んでいてもよい。また、本発明の方法はさらに、bll4572遺伝子における欠損を有する株を選択する工程を含んでいてもよい。
N 2 Oの除去方法
本発明は、ダイズの種子に上記根粒菌を添加する工程を含む、N2Oの除去方法を提供する。根粒菌の添加方法としては、ダイズ種子の播種前にあらかじめ根粒菌を接種したノーキュライド種子としておいても、播種時に根粒菌を接種してもよい。また、根粒菌の接種方法としては、キャリア(ピートモス等)に根粒菌の培養液を浸したものを種子と混合する方法等が挙げられる。
根粒菌の添加量としては、特に限定されないが、例えば、ダイズ種子に対し、105〜1010細胞、より好ましくは107〜109細胞の範囲で設定することができる。
N 2 O還元能強化株の作製方法
Itakura et al. Appl. Environ. Microbaiol. 2008に記載しているように不均衡変異導入法の理論に基づき、塩基置換により変異させたUSDA110のdnaQ遺伝子をpKS800にクローニングした変異誘発プラスミドpKQ2をUSDA110に接合導入し、独立した複数のUSDA110(pKQ2)集団を作製した。それぞれのUSDA110 (pKQ2)集団をHMM培地5 mlに接種しN2O呼吸選択圧条件下(5% N2O)で30oCで一週間培養し、培養液50 μlを新しいHMM培地5 mlに植継ぐことで、1週間毎に植継ぎ培養を繰り返した。その結果、G集団では植継ぎ6回目で、K集団では植継ぎ8回目N2O還元活性が見られた。そこで、N2OR活性の上昇したG及びK集団から、pKQ2の除かれたNos強化株を単離するため、それぞれの細胞集団をダイズに接種し、形成された根粒からpKQ2の薬剤耐性標識であるテトラサイクリンに対して感受性のシングルコロニーを単離した。得られた単離株のN2O還元能を測定した結果、G集団からはG2, G4, G9の3株が、K集団からはK2の1株が、それぞれN2O還元能強化株として取得された。
本実施例において、上記方法で得られた株をNos強化株菌体と示すこともある。
Nos強化株のゲノム解析
約1週間培養したBradyrhizobium japonicum Nos強化株菌体からAquaPure Genomic DNA Isolation Kit (Bio Rad)を用いて全DNA抽出を行った。シーケンスはGenome Analyser IIx (Illumina, San Diego, CA, USA)を用い、ペアードエンド法により行なった。得られた配列情報をBurrows-Wheeler Aligner (BWA)を用いて、USDA110のゲノム配列情報(NC_004463)に対しアライメントを行なった。アライメントされた配列の90%以上で変異が見られた場合に、Nos強化株の染色体上の変異とした。結果を図2に示す。図2中、○及び◇が遺伝子変異を示す。図2に示すように、G2、G4、G9では、blr0200, blr3482, bll4572, bll6026の4つの遺伝子が共通して変異していた。また、G2、G4及びG9における遺伝子の変異数は、50、30及び24だった。また、K2のbll4572遺伝子のシーケンスを行なった結果、bll4572遺伝子に変異が見られたことから、Nos強化株ではいずれもbll4572に変異を有していることが分かる。また、G2、G4及びG9におけるbll4572の変異は、302位のTのGへの置換であり、K2におけるbll4572の変異は、701位のGの欠失であった。
bll4572遺伝子(nasS)変異株の作製
Nos強化株のbll4572遺伝子に生じていた変異を再現するため、Bradyrhizobium japonicum USDA110のbll4572遺伝子の281塩基目のシトシンを部位特異的変異導入法によりアデニンに置換し、変異株C281A-nasSを作製した。
N 2 O還元活性測定
Bradyrhizobium japonicumの培養菌体をHMM培地で109 cells/mlに調製し、細胞懸濁液5 mlを125 ml容バイアルに入れ密閉した。気相をN2で置換した後N2Oを0.1%添加し30oCでインキュベーションを行なった。気相中のN2O濃度をGC-17Aガスクロマトグラフ(Shimazu, Kyoto, Japan )を用いて経時的に測定した。検出器は63Ni電子捕獲型検出器、カラムはCP-PoraBOND Q-capillaryカラム (internal diameter, 0.32mm; length, 25m; Varian, Palo Alto, CA)を用いた。N2O還元活性はN2O濃度の減少から算出した。細胞中のタンパク質濃度は、BioRadプロテインアッセイ(BioRad, Munich, Germany)を用いて概算した。
脱窒遺伝子プロモーター活性測定
Bradyrhizobium japonicum USDA110のnapA, nirK, norCおよびnosZプロモーター領域をlacZレポータープラスミドpSUP3535にクローニングし、各プロモーター領域とlacZレポーター遺伝子の転写融合体を構築した。それぞれのプラスミドをBradyrhizobium japonicum に導入し、脱窒遺伝子プロモーターとlacZ遺伝子との転写融合株を作製した。プロモーター活性の測定は、それぞれのBradyrhizobium japonicum転写融合株を好気及び嫌気条件下でHMM培地で培養し、β-ガラクトシダーゼ活性を測定した。
硝酸還元活性測定
Bradyrhizobium japonicumを好気及び嫌気条件下でHMM培地を用い30oCで48時間培養した。培養後の菌体に10 mM KNO3を添加し、Methyl viologen (MV)を用いた比色定量法により生成されたNO2 -を測定し、硝酸還元活性を求めた。
結果・考察
N2O還元活性測定の結果を表1に示す。
不均衡進化法により得られたNos強化株では全ての株でbll4572遺伝子に変異が生じていた。そこで、bll4572遺伝子の変異がN2OR活性上昇の原因であるかを明らかにするため、部位特異的変異導入法により野生株USDA110のbll4572遺伝子にのみ変異を導入した変異株C281A-nasSを作製した。C281A-nasSおよびNos強化株のN2OR活性を測定した結果、C281A-nasSはNos強化株と同様に野生株USDA110よりも高いN2OR活性を示した。
また脱窒遺伝子のプロモーター活性を測定した結果、C281A-nasSは、napA, nosZプロモーター活性の上昇およびnirKプロモーター活性の低下がみられた(下記表2)。
C281A-nasSでnapAプロモーター活性の上昇が見られたため、napAにコードされる硝酸還元遺伝子の活性を測定した結果、C281A-nasSで硝酸還元活性の上昇が見られた(下記表3)。
以上の結果より、Nos強化株のN2OR活性上昇の原因がbll4572遺伝子の変異であることを突き止めた。bll4572遺伝子の相同遺伝子nasSはPseudomonas属細菌やParacoccus属細菌などでは、nasTと同化系硝酸還元酵素遺伝子を制御する二成分制御系NasSTを形成しており、nasSは細胞内で硝酸と結合するセンサータンパク質、nasTはアンチターミネーション型転写制御タンパク質をコードしていることが報告されている。Bradyrhizobium japonicumにおいても、bll4572遺伝子の上流にはnasT相同遺伝子bll4573が存在するため、同様の二成分制御系を構成していると考えられる。しかし、これまでBradyrhizobium japonicumでのnasSTの研究例はなく、他の微生物も含め異化反応である脱窒遺伝子の転写に関与しているという報告もない。C281A-nasSではnosZのプロモーター活性だけでなくnapAプロモーター活性も上昇していたことから、bll4572, bll4573遺伝子は新規の細胞内の硝酸を感知するnap, nos遺伝子の転写制御因子であると考えられる。Nos強化株ではbll4572に変異が生じ機能が失われたため、nosZプロモーター活性が上昇し、N2O還元活性が高まったと考えられる。
前述のように、本発明によれば、N2O還元能が強化された新規の根粒菌を得ることができる。N2Oはオゾン層破壊効果を有するため、その削減が所望されている。また、本発明の根粒菌変異株は、ベクター等を使用した遺伝子組換え技術を用いたいわゆる遺伝子組換え微生物としてでなくても、野外での使用が可能な自然突然変異を利用して作製した変異株として得ることができる。さらに、環境中の多様な根粒菌やN2O雰囲気下の培養等からbll4572遺伝子およびその相同遺伝子(アミノ酸相同性20%以上)の変異を指標に、機能欠損が生じているような変異を有する菌株(N2O還元能の高い菌株)を選抜することも可能となるため、産業上非常に有用である。

Claims (2)

  1. bll4572遺伝子に欠損を有する根粒菌。
  2. ダイズの種子に請求項1に記載の根粒菌を添加する工程を含む、N2Oの除去方法。
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