JP2014227341A - 放射線治療時の消化管における副作用的障害抑制剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】放射線被ばくによる障害(副作用)を軽減することのできる放射線防護剤を提供する。
【解決手段】コーン油、ゴマ油、綿実油及び菜種油からなる群より選択される少なくとも1種の油と還元型補酵素Q10を含む放射線防護剤。
【選択図】なし
【解決手段】コーン油、ゴマ油、綿実油及び菜種油からなる群より選択される少なくとも1種の油と還元型補酵素Q10を含む放射線防護剤。
【選択図】なし
Description
本発明は、放射線防護剤、特に、放射線治療時の消化管における副作用的障害抑制剤に関する。
肝臓や膵臓、腎臓など悪性腫瘍が高頻度に発生する実質臓器は、腹部領域に位置しており、消化管である十二指腸や小腸などはそれらに近接しているが、十二指腸や小腸などの腸管は放射線照射に対しての耐用線量が極めて低い。したがって、実質臓器の腫瘍に対して根治線量の放射線を処方した場合には、それら近接する消化管において、放射線障害の急性期・亜急性期症状を回避することが困難な場合が多く、消化管出血や消化管穿孔など重篤な副作用に繋がる危険性を有している。
放射線治療の分野で放射線防護剤としての研究がされてきた物質に、システイン、システアミンなどのチオール(SH)基を有した化合物があるが、毒性が強いことなどから実用化には至っていない。また、米国で唯一承認されている放射線防護剤にアミフォスティンがあるが、システインやシステアミンよりは弱いながらも副作用があるため、広く臨床で使用されるには至っていない(非特許文献1)。
一方、細胞分化/増殖を調節するための成分と、抗酸化剤を併用する、イオン化放射線によって引き起こされた放射線障害の予防、軽減方法が報告されている。しかしながら、実際には、特定の成分の組み合わせによる局所投与でのわずかな効果が確認されているに過ぎず、還元型補酵素Q10は記載されていない(特許文献1)。
原子力災害時における薬剤による放射線防護策に係る調査(平成21年度内閣府科学技術基礎調査等委託)報告書 独立行政法人 放射線医学総合研究所
本発明は、上記の点を鑑み、放射線障害、特に、放射線治療時に正常な状態の消化管に生じる障害(副作用)を軽減することのできる放射線防護剤を提供することを目的とする。
本発明者等が上記課題を解決するために鋭意研究した結果、還元型補酵素Q10と特定の油、具体的にはコーン油、ゴマ油、綿実油、菜種油の何れかを組み合わせて放射線照射時に摂取することにより、放射線照射に伴う障害(副作用)が軽減されることを見出した。
すなわち、本発明は、コーン油、ゴマ油、綿実油及び菜種油からなる群の何れかの1種の油と、還元型補酵素Q10を含む、放射線防護剤に関する。特に、コーン油、ゴマ油、綿実油及び菜種油からなる群より選択される少なくとも1種の油と還元型補酵素Q10を含む、放射線治療時の消化管における副作用的障害抑制剤に関する。
油はコーン油であることが好ましい。
油の含有率は15重量%以上であることが好ましい。
本発明の放射線防護剤を摂取することにより、放射線障害、特に、放射線照射時に消化管に生じる障害が軽減されるため、消化管の周囲にある悪性腫瘍の治療に必要な線量の放射線を照射することが可能となる。
以下、実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。本発明の範囲は、実施形態および実施例によって限定されるものではない。
本発明にかかる放射線防護剤は、還元型補酵素Q10に加えて、コーン油、ゴマ油、綿実油、菜種油のうち何れか1種以上の油を含有する。
放射線防護剤とは、放射線被ばくによる障害を予防又は抑制する作用を有するものを意味する。より具体的には、放射線治療時の消化管における副作用的障害の抑制剤である。放射線治療時の消化管における副作用的障害としては、腹部不快感、下痢、狭窄、出血、穿孔、食欲低下等を挙げることができる。
本発明で用いられる還元型補酵素Q10は、化学合成品、発酵品、天然物からの抽出物など、形態を問わず使用することができる。例えば還元型補酵素Q10を含有する微生物(細菌、酵母など)そのもの、あるいはその粗精製物でもよく、また、これらから還元型補酵素Q10を精製したものでもよく、精製の程度も制限されない。補酵素Q10には、酸化型と還元型が存在するが、本発明にかかる放射線防護剤は、還元型補酵素Q10と酸化型補酵素Q10との混合物を含有してもよい。還元型補酵素Q10と酸化型補酵素Q10の混合物の場合、それらの混合割合は特に制限されないが、効果を確実に得る観点からは、還元型補酵素Q10の割合が高いことが望ましい。具体的には、総補酵素Q10量(すなわち、酸化型補酵素Q10と還元型補酵素Q10の合計量)に対する還元型補酵素Q10の割合が、50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることがさらに好ましく、90重量%以上であることがとりわけ好ましく、95重量%以上であることが特に好ましい。その上限は特に限定されないが、混合物の場合は99.5重量%以下が好ましく、もちろん還元型補酵素Q10のみ、つまりは総補酵素Q10量に対する還元型補酵素Q10の割合が、100重量%であってもかまわない。
本発明にかかる放射線防護剤において、還元型補酵素Q10と併用される油は、コーン油、ゴマ油、綿実油、菜種油の何れか1種、あるいは2種以上を混合して使用できる。中でも、コーン油が特に好ましい。
本発明で用いられるコーン油は特に制限されることがなく、トウモロコシの胚芽を原料とした油脂であればよい。
本発明で用いられるゴマ油は特に制限されることがなく、ゴマの種子を原料とした油脂であればよい。
本発明で用いられる綿実油は特に制限されることがなく、ワタの種子を原料とした油脂であればよい。
本発明で用いられる菜種油は特に制限されることがなく、アブラナの種子を原料とした油脂であればよい。
本発明で用いられるゴマ油は特に制限されることがなく、ゴマの種子を原料とした油脂であればよい。
本発明で用いられる綿実油は特に制限されることがなく、ワタの種子を原料とした油脂であればよい。
本発明で用いられる菜種油は特に制限されることがなく、アブラナの種子を原料とした油脂であればよい。
本発明の放射線防護剤には、還元型補酵素Q10および上記4種の油の他に、種々の添加剤を加えることができる。添加剤として加えることができる油脂としては、例えば大豆油、サフラワー油、オリーブ油、胚芽油、ヒマワリ油、牛脂、イワシ油などの動植物油、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む油脂などの加工油脂などが挙げられる。添加剤として加えることができる乳化剤としては、たとえば、グリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、レシチン類などが挙げられる。尚、グリセリン脂肪酸エステル類とは、グリセリン脂肪酸モノエステル(モノグリセリド)、グリセリン脂肪酸有機酸エステル(有機酸モノグリセリド)、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどである。また、レシチン類とは、植物レシチン、卵黄レシチン、分別レシチン、酵素処理レシチン、酵素分解レシチン、酵素修飾レシチンなどである。さらに、添加剤として、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトールなどの多価アルコール、乳糖、澱粉、結晶セルロースなどの賦形剤、および甘味料、着色料、香料などを加えることができる。
本発明の放射線防護剤は、さらにビタミン類を含有しても良い。ビタミン類としては、例えばビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKが挙げられる。
本発明の放射線防護剤の形態は特に限定されないが、油状物またはスラリーなどの流動性のある形態が好ましく、これをそのまま、あるいはソフトカプセルに封入するなどして摂取しうる。
また、本発明の放射線防護剤は、さらに水分を含んでも良く、その場合、乳化形態とすることも出来る。
本発明の放射線防護剤における還元型補酵素Q10の割合は1重量%以上であるであることが好ましく、2重量%以上であることがより好ましく、5重量%以上であることがさらに好ましい。その上限としては特に限定されないが、併用する油の量を十分に確保する観点から、還元型補酵素Q10の割合が50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましく、30重量%以下であることがさらに好ましく、20重量%以下であることが特に好ましく、10重量%以下であってもかまわない。
本発明の放射線防護剤における、コーン油、ゴマ油、綿実油、菜種油などの油の割合は、5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、15重量%以上であることがさらに好ましく、20重量%以上であることがさらにより好ましく、30重量%以上であることが特に好ましく、50重量%以上であることがもっとも好ましい。またその上限は特に限定されないが、油の割合として、通常99重量%以下であり、98重量%以下であることが好ましく、95重量%以下であることがより好ましいが、90重量%以下あるいは80重量%以下であってもかまわない。
本発明にかかる放射線防護剤の投与方法は特に制限されないが、経静脈投与、腹腔内投与、注腸投与、経口投与などが好ましく、経口投与が特に好ましい。
本発明の放射線防護剤を摂取する時期は、特に制限されないが、放射線照射の直前、あるいは照射後速やかに、摂取するのがより効果的である。具体的には、放射線照射前20時間以内が好ましく、放射線照射前8時間以内がより好ましく、放射線照射前6時間以内がさらに好ましく、放射線照射前4時間以内がさらにより好ましく、放射線照射前2時間以内が特に好ましく、放射線照射1時間前に少なくとも1回の投与が行われるのがもっとも好ましい。また放射線照射後であれば、放射線照射後2日以内に摂取するのが好ましく、放射線照射後1日以内がより好ましく、放射線照射後2時間以内がさらに好ましい。なお、本発明の放射線防護剤の摂取は複数回行われても良く、例えば放射線照射の2日前から放射線照射後1週間程度の期間、継続的に摂取することも出来る。その場合でも、放射線照射前20時間〜放射線照射後の1日後迄の期間に少なくとも1回の摂取を行うのが好ましい。
通常、還元型補酵素Q10のソフトカプセル製剤等を経口摂取した場合に、補酵素Q10の血漿中濃度の顕著な上昇がみられるのは、摂取後4時間から8時間付近の時間帯である。本発明の放射線防護剤は、経口摂取してから1時間後の、血漿中補酵素Q10濃度が殆ど上昇していない時期にも、放射線による副作用的障害を抑制しうることから、血漿中の補酵素Q10による酸化ストレスの低減とは別のメカニズムによるものと推察される。
以下に実施例をあげて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
10週齢のC57BL/6Jマウス(体重:約25g、1群を7匹として3群を設定)の腹部にX線を照射(13Gy)し、30日の生存率を測定した。第1群は対照として、X線照射だけを行った。第2群には、0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)水溶液に還元型補酵素Q10を懸濁した液(還元型補酵素Q10濃度:30mg/mL)をX線照射の2日前、1日前および1時間前にそれぞれ10mL/kg体重の用量で経口投与した。第3群には、還元型補酵素Q10のコーン油溶液(還元型補酵素Q10濃度:60mg/mL、コーン油含有率93.4重量%)をX線照射の2日前、1日前および1時間前にそれぞれ5mL/kg体重の用量で経口投与した。30日生存率を表1に示した。
10週齢のC57BL/6Jマウス(体重:約25g、1群を7匹として3群を設定)の腹部にX線を照射(13Gy)し、30日の生存率を測定した。第1群は対照として、X線照射だけを行った。第2群には、0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)水溶液に還元型補酵素Q10を懸濁した液(還元型補酵素Q10濃度:30mg/mL)をX線照射の2日前、1日前および1時間前にそれぞれ10mL/kg体重の用量で経口投与した。第3群には、還元型補酵素Q10のコーン油溶液(還元型補酵素Q10濃度:60mg/mL、コーン油含有率93.4重量%)をX線照射の2日前、1日前および1時間前にそれぞれ5mL/kg体重の用量で経口投与した。30日生存率を表1に示した。
(実施例2)
10週齢のC57BL/6Jマウス(体重:約25g、1群を10匹として3群を設定)の腹部にX線を照射(13Gy)し、30日の生存率を測定した。第1群は対照として、X線照射だけを行った。第2群には、0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)水溶液に還元型補酵素Q10を懸濁した液(還元型補酵素Q10濃度:30mg/mL)をX線照射の24時間後、48時間後および72時間後にそれぞれ10mL/kg体重の用量で経口投与した。第3群には、還元型補酵素Q10のコーン油溶液(還元型補酵素Q10濃度:60mg/mL、コーン油含有率93.4重量%)をX線照射の24時間後、48時間後および72時間後にそれぞれ5mL/kg体重の用量で経口投与した。30日生存率を表2に示した。
10週齢のC57BL/6Jマウス(体重:約25g、1群を10匹として3群を設定)の腹部にX線を照射(13Gy)し、30日の生存率を測定した。第1群は対照として、X線照射だけを行った。第2群には、0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)水溶液に還元型補酵素Q10を懸濁した液(還元型補酵素Q10濃度:30mg/mL)をX線照射の24時間後、48時間後および72時間後にそれぞれ10mL/kg体重の用量で経口投与した。第3群には、還元型補酵素Q10のコーン油溶液(還元型補酵素Q10濃度:60mg/mL、コーン油含有率93.4重量%)をX線照射の24時間後、48時間後および72時間後にそれぞれ5mL/kg体重の用量で経口投与した。30日生存率を表2に示した。
(実施例3)
10週齢のC57BL/6Jマウス(体重:約25g)の腹部にX線を照射(13Gy)し、30日の生存率を測定した。第1群は対照として、6匹のマウスにX線照射だけを行った。第2群には、12匹のマウスに還元型補酵素Q10のコーン油溶液(還元型補酵素Q10濃度:60mg/mL、コーン油含有率93.4重量%)をX線照射の2日前、1日前および1時間前にそれぞれ5mL/kg体重の用量で経口投与した。30日生存率を表3に示した。
10週齢のC57BL/6Jマウス(体重:約25g)の腹部にX線を照射(13Gy)し、30日の生存率を測定した。第1群は対照として、6匹のマウスにX線照射だけを行った。第2群には、12匹のマウスに還元型補酵素Q10のコーン油溶液(還元型補酵素Q10濃度:60mg/mL、コーン油含有率93.4重量%)をX線照射の2日前、1日前および1時間前にそれぞれ5mL/kg体重の用量で経口投与した。30日生存率を表3に示した。
(実施例4)
10週齢のC57BL/6Jマウス(体重:約25g)の腹部にX線を照射(13Gy)し、30日の生存率を測定した。第1群の6匹のマウスには、還元型補酵素Q10のコーン油溶液(還元型補酵素Q10濃度:60mg/mL、コーン油含有率93.4重量%)をX線照射の2日前、1日前にそれぞれ5mL/kg体重の用量で経口投与した。第2群の8匹のマウスには、還元型補酵素Q10のコーン油溶液(還元型補酵素Q10濃度:60mg/mL、コーン油含有率93.4重量%)をX線照射の1時間前に5mL/kg体重の用量で経口投与した。30日生存率を表4に示した。
10週齢のC57BL/6Jマウス(体重:約25g)の腹部にX線を照射(13Gy)し、30日の生存率を測定した。第1群の6匹のマウスには、還元型補酵素Q10のコーン油溶液(還元型補酵素Q10濃度:60mg/mL、コーン油含有率93.4重量%)をX線照射の2日前、1日前にそれぞれ5mL/kg体重の用量で経口投与した。第2群の8匹のマウスには、還元型補酵素Q10のコーン油溶液(還元型補酵素Q10濃度:60mg/mL、コーン油含有率93.4重量%)をX線照射の1時間前に5mL/kg体重の用量で経口投与した。30日生存率を表4に示した。
これらの実施例から明らかなように、本発明の放射線防護剤は、放射線照射時に生じる障害に対する予防又は抑制において、優れた効果を有することが示された。
Claims (4)
- コーン油、ゴマ油、綿実油及び菜種油からなる群より選択される少なくとも1種の油と還元型補酵素Q10を含む、放射線防護剤。
- 油がコーン油である請求項1記載の放射線防護剤。
- 油の含有率が15重量%以上である請求項1又は2記載の放射線防護剤。
- コーン油、ゴマ油、綿実油及び菜種油からなる群より選択される少なくとも1種の油と還元型補酵素Q10を含む、放射線治療時の消化管における副作用的障害抑制剤。
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JP2013105409A JP2014227341A (ja) | 2013-05-17 | 2013-05-17 | 放射線治療時の消化管における副作用的障害抑制剤 |
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