JP2014227303A - 反射防止性を有するガラスの製造方法、および反射防止性を有するガラス - Google Patents

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Abstract

【課題】反射防止性を安定に維持することが可能な反射防止性ガラスの製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウムを含み、反射防止性を有するガラスの製造方法であって、(a)アルミニウムを含む高温のガラス基板を、フッ化水素を含む処理ガスに暴露するステップと、(b)フッ酸およびフッ酸以外の第2の酸を含む溶液により、前記ガラス基板をエッチング処理するステップと、を有することを特徴とする製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、反射防止性を有するガラスの製造方法、および反射防止性を有するガラスに関する。
例えば、建材用ガラス、自動車用ガラス、ディスプレイ用ガラス、光学素子、太陽電池用ガラス、ショーウィンドウガラス、光学ガラス、およびメガネレンズなど、各種ガラス製品において、高い光透過性が要求される場合がある。このような場合、反射防止性を有するガラス基板が使用される。
そのような反射防止性を有するガラス基板(反射防止性ガラス基板)は、例えば、蒸着法またはスパッタ法等により、ガラス基板の表面に反射防止膜を形成することにより構成することができる。
また、最近では、ガラス基板にフッ化水素のようなフッ素化剤を接触させて、ガラス基板の表面をエッチング処理する方法が開示されている(特許文献1)。この方法では、処理後のガラス基板の表面に微細な凹凸が形成されるため、ガラス基板に反射防止性を付与することができる。
国際公開第2008/156177号
前述のように、特許文献1には、ガラス基板にフッ化水素のようなフッ素化剤を接触させて、ガラス基板の表面をエッチング処理し、反射防止性ガラス基板を製造する方法が開示されている。
しかしながら、本願発明者等によれば、アルミニウムを含むガラス基板に対して、特許文献1に記載のような処理を実施して反射防止性を発現させた場合、ガラス基板の反射防止性が時間とともに低下する現象が見出されている。
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、本発明では、反射防止性を安定に維持することが可能な反射防止性ガラスの製造方法を提供することを目的とする。また、本発明では、反射防止性を安定に維持することが可能な反射防止性ガラスを提供することを目的とする。
本発明では、アルミニウムを含み、反射防止性を有するガラスの製造方法であって、
(a)アルミニウムを含む高温のガラス基板を、フッ化水素を含む処理ガスに暴露するステップと、
(b)フッ酸およびフッ酸以外の第2の酸を含む溶液により、前記ガラス基板をエッチング処理するステップと、
を有することを特徴とする製造方法が提供される。
ここで、本発明による製造方法は、
前記(a)のステップの後、さらに、
(c)前記ガラス基板を化学強化処理するステップ
を有しても良い。
また、本発明による製造方法において、前記(b)のステップは、室温で実施されても良い。
また、本発明による製造方法において、前記溶液中のフッ酸と第2の酸の重量比(第2の酸/フッ酸)は、0.1〜2.0の範囲であっても良い。
また、本発明による製造方法において、前記第2の酸は、塩酸であっても良い。
また、本発明による製造方法では、前記(a)のステップにおいて、前記高温は、500℃〜1000℃の範囲であっても良い。
また、本発明による製造方法において、前記(b)のステップは、1秒〜600秒の範囲で実施されても良い。
また、本発明による製造方法において、前記ガラス基板は、0.1モル%〜25モル%のAlを含んでも良い。
また、本発明による製造方法において、前記ガラス基板は、アルミノシリケートガラスであっても良い。
さらに、本発明では、アルミニウムを含み、反射防止性を有するガラスであって、
当該ガラスの表面には、フッ素原子が存在し、該フッ素原子の濃度は、前記表面からの深さ方向に沿って減少し、
前記表面は、1または2以上の孔を有し、
前記表面におけるアルミニウムとシリコンの含有比(Al(mol%)/Si(mol%))Rと、当該ガラスの前記表面から深さ方向の位置におけるアルミニウムとシリコンの含有比(Al(mol%)/Si(mol%))Rは、
≦R
の関係を満たすことを特徴とする反射防止性を有するガラスが提供される。
ここで、本発明による反射防止性を有するガラスにおいて、前記孔内には、実質的にフッ化アルミン酸塩が充填されていなくても良い。
また、本発明による反射防止性を有するガラスにおいて、前記表面における前記フッ素原子の濃度は、0.1wt%以上であっても良い。
また、本発明による反射防止性を有するガラスにおいて、前記RおよびRは、さらに、R≦1.2*Rの関係を満たしても良い。
また、本発明による反射防止性を有するガラスにおいて、前記孔の少なくとも一つは、当該ガラスの厚さ方向の断面が略半円状、略半楕円状、略鍵穴状、および略三角形状のいずれかであっても良い。
また、本発明による反射防止性を有するガラスにおいて、前記孔の少なくとも一つは、深さが20nm〜1000nmの範囲であっても良い。
また、本発明による反射防止性を有するガラスは、0.1モル%〜25モル%のAlを含んでも良い。
また、本発明による反射防止性を有するガラスは、アルミノシリケートガラスであっても良い。
また、本発明による反射防止性を有するガラスにおいて、前記表面は、化学強化処理されていても良い。
本発明では、反射防止性を安定に維持することが可能な反射防止性ガラスの製造方法を提供することができる。また、本発明では、反射防止性を安定に維持することが可能な反射防止性ガラスを提供することができる。
本発明の一実施例による反射防止性ガラスの製造方法のフローを概略的に示した図である。 本発明の一実施例による反射防止性ガラスの製造方法の一工程に使用され得る処理装置の一例を概略的に示した図である。 第1の処理後のガラス基板の断面の一例を模式的に示した図である。 第2の処理後のガラス基板の断面の一例を模式的に示した図である。 本発明の一実施例による反射防止性ガラスの断面の一例を模式的に示した図である。 本発明の一実施例による反射防止性ガラスの第1の表面に形成される孔の断面形態の一例を模式的に示した図である。 第1の反射防止性ガラスの第1の表面におけるフッ素原子(F)濃度の深さ方向プロファイルの一例を示したグラフである。 例11に係るガラスの断面の一部を示した図である。
以下、本発明について詳しく説明する。
前述のように、特許文献1には、反射防止性ガラスを製造するため、ガラス基板にフッ化水素(HF)のようなフッ素化剤を接触させて、ガラス基板の表面をエッチング処理し、ガラス基板の表面に微細な凹凸を形成する方法が開示されている。
しかしながら、本願発明者らは、アルミニウムを含むガラス基板に対して、特許文献1に記載のような処理を実施して反射防止性を発現させた場合、以下のような問題が生じることを見出した:
(i)処理後のガラス基板は、初期には良好な反射防止性を有するものの、長期安定性には問題がある。すなわち、反射防止性は、ガラス基板の使用とともに低下していく傾向にある。
(ii)処理後のガラス基板に対して、例えば化学強化処理等の後処理を実施した場合、反射防止性が低下してしまう。
なお、アルミニウムを含むガラス基板に対して、特許文献1に記載の処理を適用した場合にこのような問題が生じる原因として、以下のことが考えられる。
アルミニウムを含むガラス基板に対して、フッ化水素(HF)ガスによるエッチング処理を実施した場合、ガラス基板の表面がエッチングされ、該表面に、多数の微細な孔が形成される。ただし、ガラス基板に含まれるアルミニウムは、エッチング処理によっては溶解除去されない。すなわち、ガラス基板に含まれるアルミニウムは、フッ化水素(HF)との反応により、フッ化アルミン酸塩(例えばフッ化アルミン酸ナトリウム、フッ化アルミン酸カリウムなど)等の反応生成物を形成する。この反応生成物は、エッチング処理後に、ガラス基板の表面に形成された各孔内および孔周縁部に残留する。
ここで、孔内および孔周縁部に残留した反応生成物は、ガラス基板自身に比べて屈折率が低い。このため、ガラス基板の表面にこのような反応生成物が存在すると、光学的には、空気/ガラス基板の界面に低屈折率層が存在するような状態となる。従って、このような反応生成物の存在により、ガラス基板に低反射特性が発現される。
このように、アルミニウムを含むガラス基板の場合、特許文献1に記載の処理によって発現する低反射特性は、主として、孔内に残留した反応生成物の効果によるものであると言うことができる。
しかしながら、この反応生成物は、単に孔内および孔周縁部に物理的に配置された状態にあるため、ガラス基板の使用期間中に、比較的容易に消失する傾向にある。従って、ガラス基板の使用期間中に、孔内および孔周縁部に存在する反応生成物が徐々に減少していくことにともない、ガラス基板の反射防止性が低下するものと考えられる。
また、この反応生成物は、塩酸などの酸性溶液によって容易に溶解する傾向にある。このため、ガラス基板に対して化学強化処理等の溶液を用いた処理を実施した場合、孔内および孔周縁部の反応生成物が溶解する結果、ガラス基板の反射防止性が低下するものと考えられる。
本願発明者らは、以上のような考察を元に、アルミニウムを含むガラスにおける反射防止性の長期安定性の改善、およびアルミニウムを含むガラスにおける後処理後の反射防止性の低下の抑制を達成するため、鋭意研究開発を実施してきた。その結果、低反射特性の発現を、反応生成物であるフッ化アルミン酸塩に依存しない構成とすることにより、ガラスの反射防止性を安定に維持できることを見出し、本願第1発明に至った。
すなわち、本願第1発明では、アルミニウムを含み、反射防止性を有するガラスの製造方法であって、
(a)アルミニウムを含む高温のガラス基板を、フッ化水素を含む処理ガスに暴露するステップと、
(b)フッ酸およびフッ酸以外の第2の酸を含む溶液により、前記ガラス基板をエッチング処理するステップと、
を有することを特徴とする製造方法が提供される。
本願第1発明による製造方法では、最初の(a)のステップにおいて孔内および孔周縁部に生成したフッ化アルミン酸塩は、次の(b)のステップにより、溶解除去される。このため、(b)のステップ後に、特に孔の内部にはフッ化アルミン酸塩は実質的に残留しない。また、本願第1発明による製造方法では、(b)のステップにより、最初の(a)のステップにおいて生じた各微細な孔が選択的にエッチングされ、各孔の寸法が大きくなる。従って、本願第1発明による製造方法では、孔の存在によって低反射特性発現効果を高めることができる。
このように、本発明による製造方法では、フッ化アルミン酸塩の存在による低反射特性発現効果を利用するのではなく、ガラスの表面に形成された、内部に実質的にフッ化アルミン酸塩を含まない孔により、低反射特性を実現する。このような孔は、ガラスの使用中に変化することは少なく、また、ガラスに対して、溶液を用いた後処理を実施した後も、変化し難い。
このため、本願第1発明による製造方法では、長期にわたって安定的に反射防止性を維持することが可能なガラスを提供することができる。また、本願第1発明による製造方法では、化学強化処理等の後処理後にも、依然として反射防止性を発揮することが可能なガラスを提供することができる。
また、本願第2発明では、アルミニウムを含み、反射防止性を有するガラスであって、
当該ガラスの表面には、フッ素原子が存在し、該フッ素原子の濃度は、前記表面からの深さ方向に沿って減少し、
前記表面は、1または2以上の孔を有し、
前記表面におけるアルミニウムとシリコンの含有比(Al(mol%)/Si(mol%))Rと、当該ガラスの前記表面から深さ方向の位置におけるアルミニウムとシリコンの含有比(Al(mol%)/Si(mol%))Rは、
≦R
の関係を満たすことを特徴とする反射防止性を有するガラスが提供される。
このような反射防止性ガラスでは、フッ化アルミン酸塩の存在による低反射特性発現効果を利用するのではなく、ガラスの表面に形成された、内部に実質的にフッ化アルミン酸塩を含まない孔により、低反射特性を実現する。このため、本願第2発明によるガラスは、長期にわたって安定に反射防止性を維持することができる。また、本願第2発明によるガラスでは、化学強化処理等の後処理後にも、依然として反射防止性を発揮することができる。
(本願第1発明の一実施例による反射防止性ガラスの製造方法について)
次に、図1を参照して、本願第1発明の一実施例による反射防止性ガラスの製造方法(「第1の反射防止性ガラスの製造方法」という)について説明する。
図1には、第1の反射防止性ガラスの製造方法のフローの一例を模式的に示す。
図1に示すように、第1の反射防止性ガラスの製造方法は、
(a)アルミニウムを含む高温のガラス基板を、フッ化水素を含む処理ガスに暴露するステップ(ステップS110)と、
(b)フッ酸およびフッ酸以外の第2の酸を含む溶液により、前記ガラス基板をエッチング処理するステップ(ステップS120)と、
を有する。
以下、各ステップについて詳しく説明する。
(ステップS110)
まず、アルミニウムを含むガラス基板が準備される。また、高温環境下で、このガラス基板を、フッ化水素を含む処理ガスに暴露する処理(以下、「第1の処理」とも称する)が実施される。
使用されるガラス基板の組成は、アルミニウムを含む限り特に限られず、ガラス基板は、例えば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムシリケートガラス、ボレートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、およびホウケイ酸ガラス等であっても良い。ガラス基板に含まれるAlの量は、例えば、0.1モル%〜25モル%の範囲であっても良い。
ガラス基板の厚さは、2mm以下であることが好ましく、例えば、0.1mm〜1.2mmの範囲であっても良い。
第1の処理において使用されるフッ化水素を含む処理ガスは、フッ化水素ガスの他、キャリアガスおよび/または希釈ガスを含んでも良い。キャリアガスおよび/または希釈ガスは、例えば、窒素ガスやアルゴンガス等を含んでも良い。
また、第1の処理の際のガラス基板の温度は、例えば、ガラス転移温度をTgとしたとき、(Tg−200)℃〜(Tg+300)℃の範囲とすることが好ましく、(Tg−200)℃〜(Tg+250)℃の範囲がより好ましい。さらに、Tg℃〜Tg+200℃の範囲が好ましい。ガラス基板の温度は、例えば、500℃〜1000℃の範囲であっても良く、600℃〜800℃の範囲であることが好ましい。上記範囲であれば、第1の処理の際にフッ素元素がガラス基板の表面から内部に向かって深くまで拡散され、反射防止性が発揮されやすい。
一方、第1の処理の時間は、例えば、1秒〜120秒の範囲であっても良い。
このステップS110により、ガラス基板の表面には、nmオーダーの微細な孔が形成される。
また、このステップS110により、ガラス基板の表面から内部に向かって、フッ素原子(F)が拡散、進入する。フッ素原子(F)の拡散領域(表面からの深さ)は、例えば、1μm〜20μmの範囲である。
第1の処理は、例えば、フロートバス中で実施しても良い。
ここで、図2を参照して、第1の処理の具体的な一例について説明する。
図2には、第1の処理に使用される処理装置の一構成例を示す。図2に示すように、この処理装置100は、ガラス基板150にフッ化水素ガスを含む処理ガスを供給するインジェクタ110を備える。ガラス基板150は、水平に(矢印F1の方向に)搬送される。インジェクタ110は、ガラス基板150の上方に配置される。
インジェクタ110は、処理ガスの流通路となる複数のスリット115、120、および125を有する。すなわち、インジェクタ110は、中央部分に鉛直方向(Z方向)に沿って設けられた第1のスリット115と、該第1のスリットを取り囲むように、鉛直方向(Z方向)に沿って設けられた第2のスリット120と、該第2のスリット120を取り囲むように、鉛直方向(Z方向)に沿って設けられた第3のスリット125とを備える。
第1のスリット115の一端(上部)は、フッ化水素ガス源(図示されていない)およびキャリアガス源(図示されていない)に接続されており、第1のスリット115の他端(下部)は、ガラス基板150の方に配向される。同様に、第2のスリット120の一端(上部)は、希釈ガス源(図示されていない)に接続されており、第2のスリット120の他端(下部)は、ガラス基板150の方に配向される。第3のスリット125の一端(上部)は、排気系(図示されていない)に接続されており、第3のスリット125の他端(下部)は、ガラス基板150の方に配向される。
なお、インジェクタ110の底面とガラス基板150の間の距離は、50mm以下であることが好ましい。この距離を50mm以下とすることにより、処理ガスが未利用のまま、大気中に拡散することが抑制され、所望の量の処理ガスを確実にガラス基板150の表面に到達させることができる。一方、ガラス基板150との距離が短すぎると、ガラス基板150とインジェクタ110が接触する可能性が高まる。
このように構成された処理装置100を使用して、ガラス基板150に対して第1の処理を実施する場合、まず、フッ化水素ガス源(図示されていない)から、第1のスリット115を介して、矢印F2の方向に、フッ化水素ガスが供給される。また、希釈ガス源(図示されていない)から、第2のスリット120を介して、矢印F3の方向に、窒素等の希釈ガスが供給される。なお、第1のスリット115には、フッ化水素ガスに加えて、窒素などのキャリアガスを同時に供給しても良い。
ここで、ガラス基板150は、矢印F1の方向に移動している。このため、ガラス基板150がインジェクタ110の下側を通過する際に、ガラス基板150は、第1のスリット115および第2のスリット120から供給された処理ガスに接触する。これにより、ガラス基板150の表面が処理される。
なお、ガラス基板150の表面に供給された処理ガスは、矢印F4に沿って水平方向(X方向)に移動してガラス基板150の処理に使用された後、矢印F5のように移動して、排気系に接続された第3のスリット125を介して、処理装置100の外部に排出される。
ここで、ガラス基板150への処理ガスの供給速度(流速)や、ガラス基板150のインジェクタ110の通過時間は、特に限られない。処理ガスの供給速度は、例えば、10cm/秒〜200cm/秒の範囲であっても良い。また、ガラス基板150のインジェクタ110の通過時間(図2の距離Tを通過する時間)は、1秒〜120秒の範囲であり、3秒〜60秒の範囲であることが好ましく、3秒〜30秒の範囲であることがより好ましい。
このように、処理装置100を使用することにより、搬送状態のガラス基板150に対して、第1の処理を実施することができる。
なお、図2に示した処理装置100は、単なる一例に過ぎず、その他の処理装置を使用して、第1の処理を実施しても良い。
図3には、第1の処理後のガラス基板の断面の一例を模式的に示す。
図3に示すように、ガラス基板150の表面202には、微細なnmオーダーの孔210が多数形成されている。
なお、この段階では、各孔210内に、反応生成物として、フッ化アルミン酸塩215が存在することに留意する必要がある。
(ステップS120)
次に、前述のステップS110における第1の処理が完了したガラス基板に対して、フッ酸およびフッ酸以外の第2の酸を含む溶液により、エッチング処理が実施される(以下、「第2の処理」とも称する)。
第2の処理は、例えば、ガラス基板をエッチング溶液中に浸漬することにより実施される。エッチング溶液は、例えば、水溶液であっても良い。
第2の酸は、塩酸、硝酸、硫酸、ホウ酸、および/またはリン酸を含んでも良く、特にフッ化アルミン酸塩を効率的に溶解できることから、塩酸を含むことが好ましい。
ここで、エッチング溶液に含まれるフッ酸の濃度は、これに限られるものではないが、例えば、0.001wt%〜25wt%の範囲であり、0.01wt%〜10wt%の範囲であることが好ましい。
また、第2の酸の濃度は、これに限られるものではないが、例えば、0.001wt%〜50wt%の範囲であり、0.01wt%〜20wt%の範囲であることが好ましい。
エッチング溶液に含まれるフッ酸と第2の酸の割合(第2の酸/フッ酸)(質量比)は、例えば、0.1〜20の範囲であっても良く、0.5〜5の範囲であることが、エッチングによりフッ化アルミン酸塩を効率的に溶解し、また孔を所望の形状に制御できることから、好ましい。
なお、第2の処理を実施する際の温度は、例えば、10℃〜50℃程度であり、15℃〜25℃の範囲であることが好ましい。第2の処理は、室温(25℃)で実施しても良い。
エッチング溶液の量は、特に限られないが、ガラス基板に対して十分な量のエッチング溶液を使用することが好ましい。例えば、ガラス基板の表面積50cm当たり、25ml以上の溶液を用いても良い。
第2の処理の時間、すなわちガラス基板のエッチング溶液中の浸漬時間は、ガラス基板の寸法によっても変化するが、例えば1秒〜10分程度である。エッチング処理時間は、プロセス効率の点で、10秒〜5分程度が好ましい。
第2の処理中に、ガラス基板に超音波による振動を加えても良い。あるいは、エッチング溶液をバブリングまたは撹拌した状態で、ガラス基板を処理しても良い。
第2の処理が完了した後、ガラス基板は、エッチング溶液から取り出され、例えば、水洗等により、エッチング溶液が速やかに除去される。その後、ガラス基板は、乾燥処理される。
図4には、第2の処理後のガラス基板の断面の一例を模式的に示す。
第2の処理によって、前述のステップS110によりガラス基板150の表面202に形成された孔210が選択的にエッチングされる。このため、図4に示すように、ガラス基板150の表面202には、より大きな寸法の孔220が形成される。また、第2の処理によって、孔210内に存在するフッ化アルミン酸塩215が溶解除去される。
これにより、ガラス基板150の表面202には、内部に実質的にフッ化アルミン酸塩が存在しない孔220が形成される。
以上のような工程を経て、反射防止性を有するガラスを製造することができる。また、以上の工程により、ガラスの透過性を0.1%以上向上させることができる。
前述のように、このガラスでは、反射防止性は、フッ化アルミン酸塩ではなく、表面の孔によって発現されることに留意する必要がある。従って、このような製造方法で製造されたガラスは、長期にわたって、反射防止性を維持することができる。
(ステップS130)
図1には示されていないが、ステップS120の後、ガラス基板に対して、化学強化処理を実施しても良い(ステップS130)。なお、このステップS130は、ステップS110とステップS120の間のタイミングで実施されても良い。
ここで、「化学強化処理(法)」とは、ガラス基板をアルカリ金属を含む溶融塩中に浸漬させ、ガラス基板の最表面に存在する原子径の小さなアルカリ金属(イオン)を、溶融塩中に存在する原子径の大きなアルカリ金属(イオン)と置換する技術の総称を言う。「化学強化処理(法)」では、処理されたガラス基板の表面には、元の原子よりも原子径の大きなアルカリ金属(イオン)が配置される。このため、ガラス基板の表面に圧縮応力層を形成することができ、これによりガラス基板の強度が向上する。
例えば、ガラス基板がナトリウム(Na)を含む場合、化学強化処理の際、このナトリウムは、溶融塩(例えば硝酸塩)中で、例えばカリウム(K)と置換される。あるいは、例えば、ガラス基板がリチウム(Li)を含む場合、化学強化処理の際、このリチウムは、溶融塩(例えば硝酸塩)中で、例えばナトリウム(Na)および/またはカリウム(K)と置換されても良い。
ガラス基板に対して実施される化学強化処理の条件は、特に限られない。
溶融塩の種類としては、例えば、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、塩化ナトリウム、および塩化カリウム等の、アルカリ金属硝酸塩、アルカリ金属硫酸塩、およびアルカリ金属塩化物塩などが挙げられる。これらの溶融塩は、単独で用いても、複数種を組み合わせて用いても良い。
処理温度(溶融塩の温度)は、使用される溶融塩の種類によっても異なるが、例えば、400℃〜500℃の範囲であっても良い。
これにより、表面に圧縮応力層が形成されたガラスを得ることができる。
ここで、前述のように、第1の反射防止性ガラスの製造方法で製造されたガラスでは、反射防止性は、フッ化アルミン酸塩ではなく、表面の孔によって発現される。従って、第1の反射防止性ガラスの製造方法で製造されたガラスに対して化学強化処理を実施しても、これにより、反射防止性が変化することはない。
従って、第1の反射防止性ガラスの製造方法で製造されたガラスは、化学強化処理等の後処理を実施しても、良好な反射防止性を維持することができる。
(本発明の一実施例による反射防止性ガラスについて)
次に、図5を参照して、本願第2発明の一実施例による反射防止性ガラス(以下、「第1の反射防止性ガラス」という)について説明する。
図5には、第1の反射防止性ガラスの断面の一例を模式的に示す。
図5に示すように、第1の反射防止性ガラス500は、第1の表面515および第2の表面520を有する。
第1の反射防止性ガラス500は、アルミニウムを含むガラスである限り、その組成は、特に限られない。第1の反射防止性ガラス500は、例えば、0.1モル%〜25モル%のAlを含有しても良い。
第1の反射防止性ガラス500は、例えば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムシリケートガラス、ボレートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、またはホウケイ酸ガラス等であっても良い。
第1の反射防止性ガラス500は、90%〜96%の範囲の透過率を有する。ここで、本願において、ガラスの透過率は、波長400nm〜1200nmの光をガラスに照射した際に、積分球で測定される平均透過率Taveを意味する。
第1の反射防止性ガラス500の第1の表面515には、複数の孔530が形成されており、隣接する孔530同士の間には、平坦部540が存在する。
なお、図5に示した第1の反射防止性ガラス500の断面形態は、単なる一例に過ぎないことに留意する必要がある。例えば、孔530の数は、一つ以上である限り特に限られない。また、孔530の断面形態は、必ずしも図5に示したような「半球状」である必要はない。また、例えば、第1の表面515における孔530の数が多い場合には、平坦部540がほとんど観察されない場合もある。
ここで、第1の反射防止性ガラス500では、孔530の内部に、フッ化アルミン酸塩が実質的に存在しないことに留意する必要がある。
また、図5からは明らかではないが、第1の反射防止性ガラス500の第1の表面515には、フッ素原子(F)が含有されている。
例えば、フッ素原子(F)は、第1のガラス500の第1の表面515から、第1のガラス500の内部方向に向かって徐々に減少するようなプロファイルで分布しても良い。
さらに、第1の反射防止性ガラス500は、第1の表面515におけるアルミニウム(Al)/シリコン(Si)比(mol比)が、第1の反射防止性ガラス500の深さ方向の内部におけるアルミニウム(Al)/シリコン(Si)比(mol比)と同等かより小さいという特徴を有する。
ここで、本願において、第1の表面515におけるAl/Si比をRとし、第1の反射防止性ガラス500の深さ方向の内部におけるAl/Si比を、Rと規定する。従って、R≦Rである。本願における第1の反射防止性ガラスの深さ方向の内部とは、ガラス表面から十分離れた場所を指す。例えば、ガラス表面から深さ方向に40μmの位置であっても良い。
前述のように、特許文献1に記載の方法では、HFガスによるエッチング処理後にガラス基板の各孔内に形成されるフッ化アルミン酸塩によって、低反射特性が発現される。従って、処理後のガラス基板の表面では、内部に比べてAl/Si比が高くなっている(すなわちR>R)。
これに対して、第1の反射防止性ガラス500では、フッ化水素を含む処理ガスによって生じたフッ化アルミン酸塩は、次の混酸溶液によるエッチング処理によって、溶解除去される。このため、処理後に、孔の内部およびその周縁部にフッ化アルミン酸塩は実質的に残留しない。その結果、第1の反射防止性ガラス500では、処理後のガラス基板の表面のAl/Si比Rと、内部のAl/Si比Rは、R≦Rとなる。
特に、第1の反射防止性ガラス500において、RおよびRは、R≦R≦1.2*Rの関係にあることが好ましい。R≦1.2*Rの範囲であれば、化学強化処理によって表面に圧縮応力が入りやすいため、割れにくく、さらに反射防止性能も含めガラスの特性が長期間に渡って維持される。
このように、第1の反射防止性ガラス500では、フッ化アルミン酸塩の存在による低反射特性発現効果を利用するのではなく、ガラスの表面に形成された、内部に実質的にフッ化アルミン酸塩を含まない孔により、低反射特性を実現する。
このため、第1の反射防止性ガラス500は、長期にわたって安定に反射防止性を維持することができる。また、本願第2発明によるガラスでは、化学強化処理等の後処理後にも、依然として反射防止性を発揮することができる。
(本発明の一実施例による透明部材の詳細について)
次に、図面を参照して、図5に示したような本発明の一実施例による第1の反射防止性ガラス500の仕様等について、より詳細に説明する。
第1の反射防止性ガラス500は、板状または箔状の形状であっても良い。板状または箔状の第1の反射防止性ガラス500の厚さは、例えば、0.1mm〜2mmの範囲であっても良い。第1の反射防止性ガラス500の少なくとも一部(例えば第1の表面515)は、化学強化処理されていても良い。
第1の反射防止性ガラス500の第1の表面515に形成される孔530の形態は、特に限られない。
例えば、孔530において、開口の形態(孔530を第1の表面515の上部から見たときの形態)は、特に限られず、開口は、略円形、略楕円形、または略矩形状であっても良い。
また、孔530は、第1の反射防止性ガラス500の厚さ方向に平行な方向の断面が略半球状であっても良い。ここで、「略半球状」という用語には、球または楕円球を正確に半分に切断した形態の他、略球または略楕円球を、中心を通らないように切断することにより得られる形態も含まれる。
あるいは、孔530は、第1の反射防止性ガラス500の厚さ方向に平行な方向の断面が略鍵穴状であっても良い。特に略鍵穴状であれば、開口部からごみ等の侵入が抑制され、反射防止性が維持されやすい。その他にも、孔530の断面は、各種形態を取り得る。
図6には、第1の反射防止性ガラス500の第1の表面515に形成される孔530の断面形態の一例を模式的に示す。
図6に示すように、本願では、孔530の開口の寸法をRで表し、孔530の深さをdで表すことにする。なお、開口の寸法Rは、開口の最大寸法を表す。例えば、開口が略円形の場合、Rは円の直径であり、開口が略楕円形の場合、Rは長軸の長さであり、開口が略矩形状(略台形形状を含む)の場合、Rは、最大の対角線長さである。従って、以降寸法Rを、「最大寸法」Rと称する。
また、最大寸法Rに対する深さdの比を、アスペクト比A(A=d/R)として規定する。
ここで、孔530の平均最大寸法Rは、例えば、20nm〜2000nmの範囲であり、50nm〜800nmの範囲であることが好ましい。また、孔530の平均深さdは、例えば、20nm〜1000nmの範囲であり、35nm〜200nmの範囲であることが好ましい。さらに、孔530のアスペクト比Aは、例えば、0.1〜3.0の範囲の範囲であり、0.2〜0.7の範囲であることが好ましく、0.3〜0.6の範囲がより好ましい。アスペクト比が上記範囲であれば、例えば、孔に水が入った場合でも蒸発等で水が孔の外に逃げやすく、反射防止性が維持されやすい。
また、第1の表面515における孔530の面積率Sは、例えば、5%〜100%の範囲の範囲であり、30%〜90%であることが好ましい。30%以上であれば反射防止性が十分発揮され、一方90%以下であれば、摩擦等により孔形状が破壊されにくい。ここで、面積率Sは、第1の表面515の所定の面積の領域に占める孔530の面積の割合(%表示)を意味する。従って、面積率S=100%とは、図5における平坦部540が、実質的に存在しないことを意味する。
さらに、前述のように、第1の反射防止性ガラス500の第1の表面515には、フッ素原子(F)が含有されている。
第1の表面515におけるフッ素原子(F)の含有量は、例えば、0.1wt%〜0.4wt%の範囲であっても良く、0.14wt%〜0.35wt%であっても良い。なお、このような表面のフッ素原子(F)の含有量は、例えば、蛍光X線分析法により測定することができる。
図7には、第1の反射防止性ガラス500の第1の表面515におけるフッ素原子(F)濃度の深さ方向プロファイルの一例を示す。このグラフは、第1の反射防止性ガラス500の第1の表面515におけるSIMS分析によって得られたものである。
図7の例では、フッ素原子(F)は、第1の反射防止性ガラス500の第1の表面515から、深さ約10μmの範囲まで、徐々に減少するようなプロファイルで分布していることがわかる。ちなみに、この第1の反射防止性ガラス500の場合、最表面におけるフッ素原子(F)の含有量は、約0.2wt%である。
フッ素原子(F)は、図7に示すような濃度プロファイル、すなわち第1の反射防止性ガラス500の第1の表面515から、第1のガラス500の内部方向に向かって徐々に減少するようなプロファイルで、分布しても良い。
次に、本発明の実施例について説明する。
以下の方法により、反射防止性ガラスを製造し、その特性を評価した。
(例1)
前述の図1に示した反射防止性ガラスの製造方法、すなわちステップS110(第1の処理)およびステップS120(第2の処理)を実施することにより、例1に係るガラスを製造した。
ガラス基板には、アルミノシリケートガラス(約50mm×約50mm×約0.7mm)を使用した。ガラス基板は、モル%表示で、64.3%のSiO、8.0%のAl、12.5%のNaO、4.0%のKO、10.5%のMgO、0.1%のCaO、0.1%のSrO、0.1%のBaO、および0.5%のZrOを含む。
また、第1の処理の際には、前述の図2に示した処理装置100を使用した。
処理ガスには、窒素ガスとフッ化水素(HF)ガスの混合ガスを使用した。処理ガス中のフッ化水素(HF)ガスの濃度は、1.2vol%とした。処理ガスの供給速度は、60cm/秒とした。処理温度(処理の際のガラス基板温度)は、750℃とした。また、処理時間(ガラス基板のインジェクタの通過時間)は、3秒とした。
さらに、第2の処理として、得られたガラス基板を、混酸水溶液中でエッチング処理した。
混酸水溶液は、フッ酸および塩酸を含む。混酸水溶液中のフッ酸濃度は、1wt%とし、混酸水溶液中の塩酸濃度は、0.7wt%とした。また、エッチング時間は、30秒とし、混酸水溶液の温度は、25℃とした。エッチング処理は、混酸水溶液でガラス基板を揺動させた状態で実施した。
ガラス基板を混酸水溶液中に完全に浸漬し、30秒経過後、ガラス基板を取り出し、水洗、乾燥した。
これにより、例1に係るガラスが得られた。
(例2〜例16)
例1と同様の方法により、例2〜例16に係るガラスを製造した。ただし、例2〜例16では、第1の処理における条件の一部、および/または第2の処理における条件の一部を、例1で使用した条件と変更した。
例1〜例16に係るガラスの製造条件を、まとめて表1に示した。
なお、表1に示されていない条件は、例1〜例16において、同一とした。
(例17)
例1で準備したものと同じガラス基板に対して、第1の処理および第2の処理を行わず、例17に係るガラスとした。
(例18)
例13で準備したものと同じガラス基板に対して、第1の処理のみを実施し、例18に係るガラスを製造した。なお、第1の処理の条件は、例13と同様とした。
(例19)
例13と同様の方法により、例19に係るガラスを製造した。ただし、例19では、第2の処理において、混酸は使用せず、0.2wt%の濃度のフッ酸を含む水溶液を使用した。その他の条件は、例13と同様である。
例17〜例19に係るガラスの製造条件を、まとめて前述の表1に示した。
(評価)
次に、例1〜例19に係るガラスを用いて、以下に示す各種評価を実施した。
(孔の評価)
電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、各ガラスの表面および断面を観察した。なお、例1〜例16および例18〜例19に係るガラスにおいて、観察対象表面は、第1の処理の際に、処理ガスが吹き付けられた処理面(以下、「処理表面」と称する)とした。一方、例17に係るガラスでは、両表面の間で処理の差はないため、一方の表面を観察対象表面とした。以降、例17に係るガラスの場合も、観察対象表面を「処理表面」と称する。
各例に係るガラスに対して、孔の深さdおよび孔の開口寸法Rを測定した。ここで、孔の深さdおよび孔の開口寸法Rは、いずれもSEMからの平均値(任意の孔100個)である。
各ガラスにおいて得られた孔の寸法測定結果を、前述の表1の評価結果の欄(孔の深さdおよび開口寸法Rの欄)にまとめて示した。
図8には、参考のため、例11に係るガラスの処理表面の断面SEM写真の一例を示す。この図から、例11に係るガラスの処理表面には、断面が鍵穴状の孔が多数形成されていることがわかる。
例1〜例10および例12〜例16に係るガラスの処理表面においても、このような孔が多数観察された。なお、孔の数は、第1の処理における処理温度が低いほど、多くなる傾向にあった。
これに対して、例17に係るガラスの処理表面には、孔は認められなかった。また、例18に係るガラスの処理表面には、例1〜例16に係るガラスに比べて、孔の深さdおよび孔の開口寸法Rがより微細な孔が多数観測された。さらに、例19に係るガラスの処理表面には、例18に係るガラス表面の孔よりも大きな孔が観察された。
例1〜例16に係るガラスに形成された孔は、内部が空洞であった。これに対して、例18および例19に係るガラスに形成された孔は、内部に反応生成物が充填されていることが認められた。
(フッ素濃度分析)
次に、例1〜例19に係るガラスを用いて、処理表面のフッ素濃度を分析した。フッ素濃度は、蛍光X線分析装置(ZSX PrimusII;Rigaku社製)により測定した。
各ガラスにおいて得られた結果を、前述の表1の評価結果の欄(表面F濃度の欄)にまとめて示した。
この結果から、例1〜例16に係るガラスの処理表面には、少なくとも0.14wt%以上のフッ素原子が含有されていることが確認された。一方、例17に係るガラス板では、フッ素原子の濃度は、検出限界値以下であった。なお、例18〜例19に係るガラスの処理表面からは、いずれも約0.35wt%のフッ素原子が検出された。
例1〜例16に係るガラスの処理表面を約50μm程度研磨してから、同様の測定を実施した。その結果、いずれのガラスにおいても、研磨表面には、フッ素原子が含まれていないことが確認された(フッ素原子濃度は、検出限界以下であった)。この結果から、例1〜例16に係るガラスにおいて、フッ素原子は、処理表面の表面近傍にのみ含有されていることがわかった。
(透過率測定)
例1〜例19に係るガラスを用いて、透過率の評価を行った。
透過率は、以下のようにして測定した。
紫外可視分光光度計(V−670:日本分光社製)を用い、試料を積分球に密着させ、試料の低反射処理面から測定光を入射し、波長400〜1200nm以上の波長範囲で、測定波長間隔は2nm以下の条件で透過率を測定した。
得られた測定結果から、400nm〜1200nmにおける透過率の相加平均を求め、これを例1に係るガラスの平均透過率Tave(%)とした。
測定の結果、例1〜例16に係るガラスの平均透過率Taveは、いずれも91.8%以上であった。ここで、第1の処理および第2の処理のいずれも実施していない、各例のガラスのベースとなる例17に係るガラスの平均透過率Taveは、91.7%であった。従って、第1の処理および第2の処理を実施することにより、ガラスに反射防止性が付与され、ガラスの透過性が向上することが確認された。
各ガラスにおいて得られた平均透過率Taveの値、および各ガラスにおいて得られた、例17に係るガラスの透過率Taveとの差ΔTを、前述の表1の評価結果の欄(TaveおよびΔTの欄)にまとめて示した。
(Al/Si比)
次に、例1〜例19に係るガラスを用いて、処理表面のAl/Si比R(モル比)、およびガラス内部のAl/Si比R(モル比)を測定した。
測定には、SEM(SU−6600;日立製作所製)およびEDX(NORAN System 6;Thermo Fisher社製)を加速電圧5kVの条件で使用した。なお、各ガラスにおいて、ガラス内部のAl/Si比Rは、処理表面から深さ〜40μmの位置を目標として測定した。
得られたRおよびRの値から、両者の比R/Rを求めた。各ガラスにおいて得られた比R/Rを、前述の表1の評価結果の欄(比R/Rの欄)にまとめて示した。
表1から、例1〜例16に係るガラスでは、比R/Rは、いずれも1より大きく1.2より小さかったのに対して、例18および例19に係るガラスでは、比R/Rは、それぞれ、0.74および0.80であり、1を大きく下回ることがわかった。
このことから、第2の処理を実施していない例18に係るガラス、および第2の処理において、混酸を使用しなかった例19に係るガラスでは、孔内にフッ化アルミン酸塩が残留しているものと推察される。これに対して、例1〜例16に係るガラスでは、孔内には、フッ化アルミン酸塩はほとんど含まれていないものと考えられる。
(耐久性評価試験)
次に、例1〜例19に係るガラスを用いて、耐久性評価試験を実施した。
耐久性評価試験は、以下のように実施した。
羊毛フェルトと、100mm角程度に切り出たガラスを準備した。反射防止処理を施した面を上にしてガラスを配置し、処理面の上に羊毛フェルトを載せた。ガラスが滑らないように固定し、フェルトに1kgの荷重(200g/cm)を上からかけ、ガラスと接触させた状態のまま、羊毛フェルトを1000回往復させた。
例1〜例19に係るガラスの試験結果を、前述の表1の評価結果の欄(耐久性試験結果の欄)にまとめて示した。なお、表1において、○は、ガラスが耐久性試験後に依然として良好な透過率を示したことを表し、×は、耐久性試験後にガラスの透過率が大きく低下したことを表す。
この試験結果から、例18および例19に係るガラスでは、試験後に透過率が大きく低下するのに対して、例1〜例16に係るガラスでは、試験後も良好な透過率が維持されることがわかった。
(耐溶液性評価試験)
次に、例1〜例19に係るガラスを用いて、耐溶液性評価試験を実施した。
耐溶液性評価試験は、以下のように実施した。
ガラスを耐圧容器に入れて、温度が135℃、相対湿度が85%の状態で9時間保持した。
例1〜例19に係るガラスの試験結果を、前述の表1の評価結果の欄(耐溶液性試験結果の欄)にまとめて示した。なお、表1において、○は、ガラスが耐溶液性評価試験後に依然として良好な透過率を示したことを表し、×は、耐溶液性評価試験後にガラスの透過率が大きく低下したことを表す。
この試験結果から、例18および例19に係るガラスでは、試験後に透過率が大きく低下するのに対して、例1〜例16に係るガラスでは、試験後も良好な透過率が維持されることがわかった。
このように、例1〜例16に係るガラスでは、製造後に有意な低反射特性が得られるとともに、耐久性評価試験後および耐溶液性評価試験後にも、透過率がほとんど変化しないことが確認された。
本発明は、例えば、高い光透過性を有するガラス製品、例えば、建材用ガラス、自動車用ガラス、ディスプレイ用ガラス、光学素子、太陽電池用ガラス、ショーウィンドウガラス、光学ガラス、およびメガネレンズ等に利用することができる。
100 処理装置
110 インジェクタ
115 第1のスリット
120 第2のスリット
125 第3のスリット
150 ガラス基板
202 表面
210 孔
215 フッ化アルミン酸塩
220 孔
500 第1のガラス
515 第1の表面
520 第2の表面
530 孔
540 平坦部

Claims (18)

  1. アルミニウムを含み、反射防止性を有するガラスの製造方法であって、
    (a)アルミニウムを含む高温のガラス基板を、フッ化水素を含む処理ガスに暴露するステップと、
    (b)フッ酸およびフッ酸以外の第2の酸を含む溶液により、前記ガラス基板をエッチング処理するステップと、
    を有することを特徴とする製造方法。
  2. 前記(a)のステップの後、さらに、
    (c)前記ガラス基板を化学強化処理するステップ
    を有することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記(b)のステップは、室温で実施されることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記溶液中のフッ酸と第2の酸の重量比(第2の酸/フッ酸)は、0.1〜2.0の範囲であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の製造方法。
  5. 前記第2の酸は、塩酸であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の製造方法。
  6. 前記(a)のステップにおいて、前記高温は、500℃〜1000℃の範囲であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の製造方法。
  7. 前記(b)のステップは、1秒〜600秒の範囲で実施されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の製造方法。
  8. 前記ガラス基板は、0.1モル%〜25モル%のAlを含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一つに記載の製造方法。
  9. 前記ガラス基板は、アルミノシリケートガラスであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一つに記載の製造方法。
  10. アルミニウムを含み、反射防止性を有するガラスであって、
    当該ガラスの表面には、フッ素原子が存在し、該フッ素原子の濃度は、前記表面からの深さ方向に沿って減少し、
    前記表面は、1または2以上の孔を有し、
    前記表面におけるアルミニウムとシリコンの含有比(Al(mol%)/Si(mol%))Rと、当該ガラスの前記表面から深さ方向の位置におけるアルミニウムとシリコンの含有比(Al(mol%)/Si(mol%))Rは、
    ≦R
    の関係を満たすことを特徴とする反射防止性を有するガラス。
  11. 前記孔内には、実質的にフッ化アルミン酸塩が充填されていないことを特徴とする請求項10に記載の反射防止性を有するガラス。
  12. 前記表面における前記フッ素原子の濃度は、0.1wt%以上であることを特徴とする請求項10または11に記載の反射防止性を有するガラス。
  13. 前記RおよびRが、さらにR≦1.2*Rの関係を満たすことを特徴とする請求項10乃至12のいずれか一つに記載の反射防止性を有するガラス。
  14. 前記孔の少なくとも一つは、当該ガラスの厚さ方向の断面が略半円状、略半楕円状、略鍵穴状、および略三角形状のいずれかであることを特徴とする請求項10乃至13のいずれか一つに記載の反射防止性を有するガラス。
  15. 前記孔の少なくとも一つは、深さが20nm〜1000nmの範囲であることを特徴とする請求項10乃至14のいずれか一つに記載の反射防止性を有するガラス。
  16. 当該ガラスは、0.1モル%〜25モル%のAlを含むことを特徴とする請求項10乃至15のいずれか一つに記載の反射防止性を有するガラス。
  17. 当該ガラスは、アルミノシリケートガラスであることを特徴とする請求項16に記載の反射防止性を有するガラス。
  18. 前記表面は、化学強化処理されていることを特徴とする請求項10乃至17のいずれか一つに記載の反射防止性を有するガラス。
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