JP2014224920A - 反射防止フィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】反射率が低く、かつ傷が付きにくく、ロール加工が可能な反射防止フィルムの製造方法を提供することである。
【解決手段】反射防止フィルム10の製造方法は、ハードコート樹脂12a及び無機微粒子12bを含むハードコート層12が形成されたフィルム11にエキシマー光を照射することで、ハードコート層12の表層のハードコート樹脂12aを分解して微細凹凸構造を形成するものとする。
【選択図】図1

Description

本発明は、反射防止フィルムの製造方法に関する。
太陽光発電パネルにおける太陽光の反射防止、液晶表示装置をはじめとする表示装置における反射防止などに反射防止フィルムが用いられている。近年、スマートフォンやタブレット端末等の中小型の表示装置にはタッチパネルが備えられており、タッチパネルを導入するために反射防止フィルムが必要となる場合がある。
例えば、スマートフォンは一般的にサイズが小型であるため、表示装置とタッチパネルとを光学弾性樹脂や光学シートで貼り合わせることで透過率の向上、いわゆる視認性の向上を実現している。一方、タブレット端末は一般的にサイズが中型であるため、表示装置とタッチパネルとを貼り合わせることが困難である。具体的には、貼り合わせ面積が大きいため、貼り合わせ時に気泡が混入するという問題がある。
この対策として、タブレット端末等の中型の装置では、表示装置とタッチパネルとの間に空隙を設け、表示装置及びタッチパネルの空気と接する面に反射防止フィルムを設けた構成が採用されている。反射防止フィルムを設けることにより、透過率の低下を抑制している反面、反射防止フィルムが積層構造であることによって、見る角度により反射率や色みの変化が著しいという問題が生じ、視認性が向上しているとは言い難い。
そこで、モスアイフィルムに代表される無反射構造体が注目されている。例えば、特許文献1には、アルミニウム原型の表面に陽極酸化によって微細凹凸構造を有するアルミナが形成された鋳型が開示されている。そして、この鋳型と透明シートとの間に樹脂を充填して離型することで微細凹凸構造を有するシートを製造することが開示されている。
また特許文献2には、透明フィルムの片面に規則的な微細凹凸構造層を設けた反射防止フィルムの微細凹凸構造面に、光触媒微粒子が断続的に固着されている構成が開示されている。
また特許文献3には、基板と微小粒子とからなる反射防止フィルムにおいて、微小粒子を基板に埋没させるとともに、微小粒子の表面の一部を基板の表面から突出させることで、表面に微細凹凸を有する反射防止フィルムを形成することを開示している。
また特許文献4には、プラズマで樹脂の表面をエッチングすることで表面の反射を低減する技術が開示されている。
国際公開第WO2008/001847号パンフレット 特開2010−284843号公報 特開2012−145748号公報 特表2012−514238号公報
しかしながら、特許文献1では、安定生産のために鋳型の寿命を考慮し、鋳型からの樹脂の離型性も考慮すると、使用できる樹脂が限られるという問題がある。また、微細凹凸構造の凸部が樹脂で形成されているため傷が付きやすいという問題もある。
また特許文献2では、ディップコート等で光触媒微粒子を形成しており、光触媒微粒子が微細凹凸構造に脱落することで、反射率が上がるという問題がある。
また特許文献3では、微小粒子を溶剤に分散させた塗工液を、溶剤に可溶な基板に塗工して基板の表面を溶解させて微小粒子を埋没させているが、基板を構成する樹脂の溶解状況によってオリゴマーが発生したり、樹脂自体の表面が荒れて白濁するという問題がある。
また特許文献4では、プラズマ処理のために大掛かりな真空装置が必要であったり、フィルムをロール加工することが難しく継ぎ目が発生するという問題がある。
本発明の目的は、前記の事情に鑑み、反射率が低く、かつ傷が付きにくく、ロール加工が可能な反射防止フィルムの製造方法を提供することにある。
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
1.ハードコート樹脂及び無機微粒子を含むハードコート層が形成されたフィルムにエキシマー光を照射することで、前記ハードコート層の表層のハードコート樹脂を分解して微細凹凸構造を形成する反射防止フィルムの製造方法。
2.前記無機微粒子の粒径が150nm以下であることを特徴とする前記1に記載の反射防止フィルムの製造方法。
3.前記無機微粒子の含有量が前記ハードコート層の全固形分の35〜65wt%であることを特徴とする前記1又は2に記載の反射防止フィルムの製造方法。
4.前記フィルムの面内位相差Roが0〜5nmであることを特徴とする前記1〜3の何れかに記載の反射防止フィルムの製造方法。
5.前記フィルムの面内位相差Roが70〜160nmであることを特徴とする前記1〜3の何れかに記載の反射防止フィルムの製造方法。
本発明によれば、ハードコート層にエキシマー光を照射することにより、ハードコート層の表層のハードコート樹脂は分解されるが、ハードコート層の表層の無機微粒子は分解されずに残る。その結果、ハードコート層の表層に無機微粒子が突出した微細凹凸構造が形成される。この微細凹凸構造により、反射防止機能が付与される。また、ハードコート層の表層に硬い無機微粒子が突出しているので、傷が付きにくい。さらに、この反射防止フィルムは、エキシマー光の照射を含めてロール・トゥ・ロールでの生産が可能であるので、ロール状の反射防止フィルムを製造することができる。
本発明の一実施形態の反射防止フィルムの構成を示す断面図である。 本発明の一実施形態のエキシマー光を照射する前の反射防止フィルムの構成を示す断面図である。
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、本明細書において、数値範囲をA〜Bと表記した場合、その数値範囲に下限Aおよび上限Bの値は含まれるものとする。
〔反射防止フィルムの構成〕
図1に示すように、反射防止フィルム10は、ハードコート樹脂12a及び無機微粒子12bを含むハードコート層12がフィルム11上に形成されたものである。ハードコート層12の表層は、無機微粒子12bが突出して微細凹凸構造を形成している。この微細凹凸構造はエキシマー光を照射することで形成されている。
本明細書における微細凹凸構造とは、ナノスケールの凹凸を意味し、例えば、凹凸の高さ(深さ)及び間隔(幅)が1〜500nmであることを指す。そして、より高い反射防止機能を実現するためには、凹凸の高さが200nm以下であることが好ましい。
図2は、エキシマー光を照射する前の反射防止フィルム10の構成を示す断面図である。この状態では、ハードコート層12の表層はハードコート樹脂12aで覆われており平坦である。そして、図2の反射防止フィルム10のハードコート層12へエキシマー光を照射することで、ハードコート層12の表層のハードコート樹脂12aは分解されるが、ハードコート層12の表層の無機微粒子12bは分解されずに残る。その結果、図1に示したように、ハードコート層12の表層に無機微粒子12bが突出した微細凹凸構造が形成される。
この微細凹凸構造により、反射防止機能が付与される。また、ハードコート層12の表層に硬い無機微粒子12bが突出しているので、傷が付きにくい。これは、表示装置とタッチパネルとを組み付ける工程などで互いに擦れて傷が付くことを防止するのに有効である。さらに、この反射防止フィルム10は、エキシマー光の照射を含めてロール・トゥ・ロールでの生産が可能であるので、ロール状の反射防止フィルム10を製造することができる。
ここで、無機微粒子12bの含有量はハードコート層12の全固形分の35〜65wt%であることが好ましい。また、フィルム11の面内位相差Roが0〜5nmであるか、70〜160nmであることが好ましい。
〔各層の詳細について〕
以下、反射防止フィルムを構成する各層の詳細について説明する。
(ハードコート層)
〈ハードコート樹脂〉
ハードコート樹脂は、活性線硬化樹脂であることが機械的膜強度(耐擦傷性、鉛筆硬度)に優れる点から好ましい。すなわち、紫外線や電子線のような活性線(活性エネルギー線ともいう。)照射により、架橋反応を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層である。活性線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて活性線硬化樹脂層が形成される。活性線硬化樹脂としては、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が特に機械的膜強度(耐擦傷性、鉛筆硬度)に優れる点から好ましい。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリレート系樹脂、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられ、中でも紫外線硬化型アクリレート系樹脂又は紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂が好ましい。
紫外線硬化型アクリレート系樹脂としては、多官能アクリレートが好ましい。該多官能アクリレートとしては、ペンタエリスリトール多官能アクリレート、ジペンタエリスリトール多官能アクリレート、ペンタエリスリトール多官能メタクリレート、及びジペンタエリスリトール多官能メタクリレートよりなる群から選ばれることが好ましい。ここで、多官能アクリレートとは、分子中に2個以上のアクリロイルオキシ基又はメタクロイルオキシ基を有する化合物である。多官能アクリレートのモノマーとしては、例えばエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセリントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ペンタグリセロールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体等が好ましく挙げられる。
紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂としては、例えば、アルコール、ポリオール、及び/又はヒドロキシ基含有アクリレート等のヒドロキシ基含有化合物類とイソシアネート類を反応させたり、又は必要によって、これらの反応によって得られたポリウレタン化合物を(メタ)アクリル酸でエステル化して得られる。より具体的には、ポリイソシアネートと1分子中に1つのヒドロキシ基及び1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレートとの付加反応物である。ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環式炭化水素に結合したイソシアネート基を2個有する化合物(以下、脂環族ジイソシアネートと略す。)、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族炭化水素に結合したイソシアネート基を2個有する化合物(以下、脂肪族ジイソシアネートと略す。)フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。これらポリイソシアネートは、単独で用いることも、2種以上を併用することもでき、好ましくは脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートである。中でも、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。1分子中に1つのヒドロキシ基及び1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の多価ヒドロキシ基含有化合物のポリアクリレート類が挙げられ、これらのポリアクリレート類とε−カプロラクトンとの付加物、これらのポリアクリレート類とアルキレンオキサイドとの付加物、エポキシアクリレート類などが挙げられる。1分子中に1つのヒドロキシ基及び1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレートは、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
また、1分子中に1つのヒドロキシ基及び1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレートのうち、1分子中に1つのヒドロキシ基及び3〜5つの(メタ)アクリロイル基を有するアクリレートが好ましい。このようなアクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。
紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂の具体的商品としては、日本合成化学工業株式会社製、紫光UV−1700B、同UV−6300B、同UV−7600B、同UV−7630B、同UV−7640B、共栄社化学株式会社製、UA−306H、UA−306T、UA−306I、UA−510H、新中村化学工業式会社製、NKオリゴ UA−1100H、NKオリゴ UA−53H、NKオリゴ UA−33H、NKオリゴ UA−15HAなどが挙げられる。
活性線硬化型樹脂の粘度は、樹脂をディスパーにて撹拌混合し25℃の条件にてB型粘度計を用いて粘度測定を行うことができる。また、単官能アクリレートを用いても良い。
単官能アクリレートとしては、イソボロニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソオクチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどが挙げられる。このような単官能アクリレートは、日本化成工業株式会社、新中村化学工業株式会社、大阪有機化学工業株式会社等から入手できる。
単官能アクリレートを用いる場合には、多官能アクリレートと単官能アクリレートの含有質量比で、多官能アクリレート:単官能アクリレート=80:20〜98:2の範囲で含有することが好ましい。
〈光重合開始剤〉
また、ハードコート層には活性線硬化樹脂の硬化促進のため、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤量としては、質量比で、光重合開始剤:活性線硬化樹脂=20:100〜0.01:100の範囲で含有することが好ましい。光重合開始剤としては、具体的には、アルキルフェノン系、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及び、これらの誘導体を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
このような光重合開始剤は市販品を用いてもよく、例えば、BASFジャパン(株)製のイルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア651などが好ましい例示として挙げられる。
〈導電剤〉
ハードコート層には、帯電防止性を付与するために導電剤が含まれていても良い。好ましい導電剤としては、金属酸化物粒子又はπ共役系導電性ポリマーが挙げられる。また、イオン液体も導電性化合物として好ましく用いられる。
〈レベリング剤〉
ハードコート層には、表面を平滑にするためにレベリング剤が含まれている。レベリング剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アニオン界面活性剤、及びフッ素−シロキサングラフト化合物、フッ素系化合物、アクリル共重合物などを用いることができる。
シリコーン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性シリコーンなどを挙げることができ、上記信越化学工業社製のKFシリーズなどを挙げることができる。アクリル共重合物としては、ビックケミー・ジャパン社製のBYK−350、BYK−352などの市販品化合物を挙げることができる。フッ素系界面活性剤としては、DIC株式会社製のメガファック RSシリーズ、メガファックF−444メガファックF−556などを挙げることができる。フッ素−シロキサングラフト化合物とは、少なくともフッ素系樹脂に、シロキサン及び/又はオルガノシロキサン単体を含むポリシロキサン及び/又はオルガノポリシロキサンをグラフト化させて得られる共重合体の化合物をいう。このようなフッ素−シロキサングラフト化合物は、後述の実施例に記載されているような方法で調製することができる。あるいは、市販品としては、富士化成工業株式会社製のZX−022H、ZX−007C、ZX−049、ZX−047−D等を挙げることができる。またフッ素系化合物としては、ダイキン工業株式会社製のオプツールDSX、オプツールDACなどを挙げることができる。これら成分は、ハードコート組成物中の固形分成分に対し、0.005質量部以上、5質量部以下の範囲で添加することが好ましい。
〈無機微粒子〉
ハードコート層には、反射防止機能を付与するために無機微粒子が含まれている。無機微粒子としては、金属酸化物が中心となり、SiO2、CeO2、ZrO2、TiO2などを用いることができる。
ハードコート層にエキシマー光を照射することで、ハードコート層の表層のハードコート樹脂が分解され、ハードコート層の表層の無機微粒子が分解されずに残る。その結果、ハードコート層の表層に無機微粒子が突出した微細凹凸構造が形成される。この微細凹凸構造により、反射防止機能が発現される。また、ハードコート層の表層に硬い無機微粒子が突出しているので、傷が付きにくい。
無機微粒子の粒径は、10nm〜200nmであることが好ましい。10nm未満の場合は、非常に扱いにくくなり、200nmを越える場合は,散乱光が増えることでヘイズが上昇してしまうからである。そして、特に好ましくは、粒径が150nm以下の場合である。
無機微粒子の含有量はハードコート層の全固形分の35〜65wt%であることが好ましい。35wt%未満では粒子間距離が長いので反射防止効果が小さくなる。一方、65wt%を越えると密度が高いため透過率が低下する。
〈紫外線吸収剤〉
ハードコート層は、紫外線吸収剤をさらに含有しても良い。紫外線吸収剤の含有量としては質量比で、紫外線吸収剤:ハードコート樹脂=0.01:100〜10:100の範囲で含有することが好ましい。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することため、耐久性を向上させるができる。紫外線吸収剤は、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。紫外線吸収剤の具体例としては特に限定されないが、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
より具体的には、例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等を用いることができる。これらは、市販品を用いてもよく、例えば、BASFジャパン社製のチヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等のチヌビン類を好ましく使用できる。
好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などである。
この他、1,3,5トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特にポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、市販品であるBASFジャパン社製のTINUVIN 109(オクチル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートの混合物)、TINUVIN 928(2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール)などを用いることができる。トリアジン系紫外線吸収剤としては、市販品であるBASFジャパン社製のTINUVIN 400(2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルとオキシランとの反応生成物)、TINUVIN 460(2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3−5−トリアジン)、TINUVIN 405(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと(2−エチルヘキシル)−グリシド酸エステルの反応生成物)などを用いることができる。
〈溶剤〉
ハードコート層は、上記したハードコート層を形成する成分を、基材となるフィルムを膨潤又は一部溶解をする溶剤で希釈してハードコート層組成物として、以下の方法でフィルム上に塗布、乾燥、硬化してハードコート層を設けることが好ましい。
溶剤としては、ケトン(メチルエチルケトン、アセトンなど)及び/又は酢酸エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、アルコール(エタノール、メタノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどが好ましい。ハードコート層の塗布量はウェット膜厚として0.1〜40μmの範囲が適当で、好ましくは0.5〜30μmの範囲である。また、ドライ膜厚としては平均膜厚0.01〜20μmの範囲、好ましくは0.5〜10μmの範囲である。より好ましくは、0.5〜5μmの範囲である。
ハードコート層の塗布方法は、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、及びインクジェット法等の公知の方法を用いることができる。
〈ハードコート層形成方法〉
ハードコート層組成物塗布後、乾燥し、活性線を照射して硬化(UV硬化処理ともいう。)し、更に必要に応じて、UV硬化処理後に加熱処理しても良い。UV硬化処理後の加熱処理温度としては80℃以上が好ましく、更に好ましくは100℃以上であり、特に好ましくは120℃以上である。このような高温でUV硬化処理後の加熱処理を行うことで、膜強度に優れたハードコート層を得ることができる。
乾燥は、減率乾燥区間の温度を90℃以上の高温処理で行うことが好ましい。更に好ましくは、減率乾燥区間の温度は90℃以上、125℃以下である。
一般に乾燥プロセスは、乾燥が始まると、乾燥速度が一定の状態から徐々に減少する状態へと変化していくことが知られており、乾燥速度が一定の区間を恒率乾燥区間、乾燥速度が減少していく区間を減率乾燥区間と呼ぶ。恒率乾燥区間においては流入する熱量は全て塗膜表面の溶媒蒸発に費やされており、塗膜表面の溶媒が少なくなると蒸発面が表面から内部に移動して減率乾燥区間に入る。これ以降は塗膜表面の温度が上昇し熱風温度に近づいていくため、活性線硬化型樹脂組成物の温度が上昇し、樹脂粘度が低下して流動性が増すと考えられる。
UV硬化処理の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常50〜1000mJ/cm2の範囲、好ましくは50〜300mJ/cm2の範囲である。また、UV硬化処理では酸素による反応阻害を防止するため、酸素除去(例えば、窒素パージなどの不活性ガスによる置換)を行うこともできる。酸素濃度の除去量を調整することで、表面の硬化状態を制御できる。活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックローラー上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、又は2軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性の優れたフィルムを得ることができる。
次に、ハードコート層を硬化させた後、エキシマー光を照射する。エキシマー光は、ハードコート層の表層のハードコート樹脂を分解する。その結果、ハードコート層の表層には無機微粒子が分解されずに残る。
照射するエキシマー光の波長は150nm〜240nmであることが好ましい。波長が短すぎるとハードコート樹脂を劣化させてしまい、波長が長すぎるとハードコート樹脂を分解することができないからである。このような波長の光源としては、例えば、キセノンランプを用いることができる。また、ハードコート樹脂を分解するだけのエネルギーを与えるために、エキシマー光を照射する際の積算光量としては3550mJ/cm2以上であることが好ましい。
キセノンランプに用いられるXeは希ガスであり、希ガスの原子は化学的に結合して分子を作らないため、不活性ガスと呼ばれる。しかし、放電等によりエネルギーを得た希ガスの原子(励起原子)は他の原子と結合して分子を作ることができる。Xeの場合は、
e+Xe→e+Xe*
Xe*+Xe+Xe→Xe2 *+Xe
となり、励起されたエキシマー分子であるXe2 *が基底状態に遷移するときに172nmのエキシマー光を発光する。
エキシマー光を得るには、誘電体バリア放電を用いる方法が知られている。誘電体バリア放電とは、両電極間に誘電体(エキシマーランプの場合は透明石英)を介してガス空間を配し、電極に数10kHzの高周波高電圧を印加することによりガス空間に生じる雷に似た非常に細いmicro dischargeと呼ばれる放電である。
また、効率よくエキシマー光を得る方法としては、誘電体バリア放電以外には無電極電界放電も知られている。無電極電界放電とは、容量性結合による放電であり、別名RF放電とも呼ばれる。ランプと電極及びその配置は、基本的には誘電体バリア放電と同じでよいが、両極間に印加される高周波は数MHzで点灯される。無電極電界放電はこのように空間的にまた時間的に一様な放電が得られる。
そして、キセノンランプは、波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから発光効率に優れている。この172nmという高いエネルギーによって、短時間でハードコート層の表層のハードコート樹脂を分解することができる。
また、エキシマーランプは光の発生効率が高いため、低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、光による温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域で単一波長のエネルギーを照射するため、照射対象物の表面温度の上昇が抑えられる特徴を有する。このため、熱の影響を受けやすい樹脂フィルムへの照射にも適している。
なお、エキシマー光を照射するタイミングとしては、上記ではハードコート樹脂の硬化後としたが、硬化前や半硬化した状態で照射してもよい。
(フィルム)
本実施形態で用いるフィルムとしては単層又は多層フィルムを用いることができる。また、本実施形態で用いるフィルムは未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。強度向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。フィルムに用いる材料としては、光学的に透明な樹脂であれば特に限定はなく、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂などを用いることができる。中でも、耐熱性を考慮して、セルロース系樹脂を用いることが好ましい。
本実施形態の反射防止フィルムを液晶表示装置に適用する場合、面内方向位相差(リタデーション)Roと厚み方向位相差(リタデーション)Rtが両方とも小さいことが好ましい。なぜなら、液晶表示装置において、液晶の駆動方式としては、IPS(In-Plane Switching)方式、TN(Twisted Nematic)方式、VA(Vertical Alignment)方式などがあるが、IPS方式は、TN方式やVA方式に比べて視野角性能に優れているという特徴がある。このため、IPS方式の場合は、フィルムにおける位相差がほとんどゼロであることが望ましい(位相差がゼロに近いほうが視認性を向上させることができる)。したがって、フィルムの面内位相差Roが0〜5nmであり、厚み方向の位相差Rtが−10〜10nmであることが望ましい。
また、本実施形態の反射防止フィルムに液晶表示装置等で必要とされるλ/4位相差層としての機能を付与する場合、フィルムの面内位相差Roが70〜160nmであることが好ましい。λ/4位相差層は、所定の光の波長(通常、可視光領域)に対して、フィルムの面内位相差が約1/4となるフィルムをいう。λ/4位相差層は、可視光の波長の範囲においてほぼ完全な円偏光を得るため、可視光の波長の範囲において概ね波長の1/4の位相差を有する広帯域λ/4位相差フィルムであることが好ましい。
フィルムの面内位相差Roが70〜160nmの範囲を超える場合、波長550nmにおける位相差が概ね1/4波長とならず、このようなフィルムを用いて長尺円偏光板を作製して例えば有機ELディスプレイに適用した場合に、室内照明の映り込みなどが激しく、明所では黒色が表現できなくなる傾向がある。
また、偏光板の視認側にフィルムの面内位相差Roが70〜160nmの範囲のフィルムを配置すると、偏光サングラスをかけた状態に置いても真っ黒にならずに、視認性が確保される。
一方、厚み方向の位相差Rtは、60〜200nmの範囲内であることが好ましく、70〜150nmの範囲内であることがより好ましく、70〜100nmの範囲内であることがさらに好ましい。Rtが60〜200nmの範囲を超える場合、大画面で斜めから見たときの色相が劣化してしまう傾向がある。
本実施形態のリタデーションRoおよびRtは、それぞれ以下の式で表される。なお、位相差の値は、たとえばAxometrcs社製のAxoscanを用いて、23℃、55%RHの環境下で、各波長での複屈折率を測定することにより算出することができる。
Ro=(nx−ny)×d
Rt={(nx+ny)/2−nz}×d
ただし、式中、nx、ny、nzは、それぞれ23℃、55%RHの環境下で測定した、550nmにおける屈折率であり、nxはフィルムの面内の最大の屈折率(遅相軸方向の屈折率)であり、nyはフィルム面内で遅相軸に直交する方向の屈折率であり、nzはフィルム面内に垂直な厚さ方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。
また、リタデーションRoおよびRtは、以下の方法によっても求めることができる。
1)フィルムを、23℃55%RHで調湿する。調湿後の樹脂層の平均屈折率を、アッベ屈折計にて測定する。
2)調湿後のフィルムに、フィルム法線方向から測定波長590nmの光を入射させたときのRoを、KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)にて測定する。
3)KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)により、フィルム法線方向に対してθの角度(入射角(θ))から測定波長590nmの光を入射させたときのリタデーション値R(θ)を測定する。θは、好ましくは30°〜50°としうる。
4)測定されたRoおよびR(θ)と、前述の平均屈折率と膜厚とから、KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)により、nx、nyおよびnzを算出して、測定波長590nmでのRtを算出する。リタデーションの測定は、23℃55%RH条件下で例えば12時間程度調質処理を行った後に行うことができる。
〈セルロース系樹脂〉
フィルムに用いるセルロース系樹脂としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルセルロースなどのセルロースエーテル類と、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース(DAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、硝酸セルロース等のセルロースエステル類が挙げられるが、好ましくはセルロースエステル類である。あるいは、特開2002−179701号公報の段落番号[0010]〜[0027]記載の芳香族カルボン酸エステルが用いられ、特に特開2002−17979号公報の段落番号[0028]〜[0036]のセルロースアシレートが好ましく用いられる。
セルロース系樹脂の原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることができる。また、これらから得られたセルロース系樹脂は、それぞれを単独あるいは任意の割合で混合使用することができるが、綿花リンターを50質量%以上使用することが好ましい。
セルロースエステルの分子量が大きいと弾性率が大きくなるが、分子量を上げ過ぎるとセルロースエステルの溶解液の粘度が高くなり過ぎるため生産性が低下する。セルロースエステルの分子量は数平均分子量で70000〜200000のものが好ましく、100000〜200000のものが更に好ましい。本実施形態で用いるセルロースエステルは、重量平均分子量をMwとし、数平均分子量をMnとして、Mw/Mn比が1.4〜3.0であることが好ましく、更に好ましくは1.4〜2.3である。
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定することができるので、これを用いて数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を算出し、その比を計算することができる。なお、測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1,000,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
セルロースエステルの総アシル基置換度は1.0〜2.9のものが好ましく用いられ、更に好ましくは1.5〜2.9である。総アシル基置換度はASTM−D817−96に準じて測定することができる。
〈添加剤〉
本実施形態のフィルムには、フィルムに加工性・柔軟性・防湿性を付与する可塑剤、紫外線吸収機能を付与する紫外線吸収剤、フィルムに滑り性を付与する微粒子(マット剤)、フィルムの劣化を防止する酸化防止剤等を含有させてもよい。
《可塑剤》
用いられる可塑剤しては特に限定はないが、フィルムにヘイズを発生させたり、フィルムからブリードアウトや揮発が生じないように、フィルムをタッチパネル等に貼着する際に用いる接着剤と相互作用可能である官能基を有していることが好ましい。
このような官能基としては、水酸基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、カルボン酸残基、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルホン酸残基、ホスホニル基、ホスホン酸残基等が挙げられるが、好ましくはカルボニル基、エステル基、ホスホニル基である。
このような可塑剤の例として、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、カルボン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などを好ましく用いることができる。特に好ましくは、多価アルコールエステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤等の非リン酸エステル系可塑剤である。
多価アルコールエステルは、2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。
《紫外線吸収剤》
本実施形態のフィルムには、紫外線吸収剤を含有させてもよい。なお、フィルム上に紫外線吸収機能を持つ層を形成してもよい。
紫外線吸収機能のある紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばトリアジン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。また、特開平6−148430号公報に記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。
《マット剤》
本実施形態のフィルムには、滑り性を付与するためにマット剤等の微粒子を添加することができる。微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
無機化合物の例としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化錫等の微粒子が挙げられる。この中では、ケイ素原子を含有する化合物であることが好ましく、特に二酸化ケイ素微粒子が好ましい。二酸化ケイ素微粒子としては、例えばアエロジル(株)製のAEROSIL 200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、R805、OX50、TT600などが挙げられる。
有機化合物の例としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素化合物樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
《酸化防止剤》
酸化防止剤は、劣化防止剤ともいわれる。高湿高温の状態に置かれた場合には、光学フィルムの劣化が起こる場合がある。酸化防止剤は、例えば、光学フィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等により光学フィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、光学フィルム中に含有させるのが好ましい。
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
〔実施例〕
以下、本発明の具体例を実施例として説明する。また、本発明との比較のため、比較例についても併せて説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下での説明において、「部」あるいは「%」の表示は、特に断りがない限り、「質量部」あるいは「質量%」を表すものとする。
<ハードコート層組成物A>
下記の比率で材料を混合し、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層組成物Aを調製した。
(活性線硬化樹脂)
ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(NKエステルA−TMM−3L、新中村化学工業(株)製) 55質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート(A−TMPT、新中村化学工業(株)製) 45質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 6質量部
(レベリング剤)
フッ素−シロキサングラフト化合物(35質量%) 2質量部
(無機微粒子)
シリカ微粒子(日産化学工業(株)製、IPAST(L)、平均粒径40nm、コロイダルシリカ、固形分30%液) 60質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20質量部
酢酸メチル 30質量部
メチルエチルケトン 70質量部
〈フッ素−シロキサングラフト化合物の調製〉
上記のフッ素−シロキサングラフト化合物は下記の材料を用い、下記のようにラジカル重合性フッ素樹脂を合成してから調製した。
ラジカル重合性フッ素樹脂(A):セフラルコートCF−803(ヒドロキシ基価60、数平均分子量15000;セントラル硝子(株)製)
片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B):サイラプレーンFM−0721(数平均分子量5000;チッソ(株)製)
ラジカル重合開始剤:パーブチルO(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート;日本油脂(株)製)
硬化剤:スミジュールN3200(ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット型プレポリマー;住化バイエルウレタン(株)製)
《ラジカル重合性フッ素樹脂の合成》
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、上記セフラルコートCF−803(1554質量部)、キシレン(233質量部)、及び2−イソシアナトエチルメタクリレート(6.3質量部)を入れ、乾燥窒素雰囲気下で80℃に加熱した。80℃で2時間反応し、サンプリング物の赤外吸収スペクトルによりイソシアネートの吸収が消失したことを確認した後、反応混合物を取り出し、ウレタン結合を介して50質量%のラジカル重合性フッ素樹脂を得た。
《フッ素−シロキサングラフト化合物の調製》
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、上記合成したラジカル重合性フッ素樹脂(26.1質量部)、キシレン(19.5質量部)、酢酸n−ブチル(16.3質量部)、メチルメタクリレート(2.4質量部)、n−ブチルメタクリレート(1.8質量部)、ラウリルメタクリレート(1.8質量部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(1.8質量部)、上記FM−0721(5.2質量部)、及びパーブチルO(0.1質量部)を入れ、窒素雰囲気中で90℃まで加熱した後、90℃で2時間保持した。パーブチルO(0.1部)を追加し、さらに90℃で5時間保持することによって、重量平均分子量が171000である35質量%フッ素−シロキサングラフト化合物の溶液を得た。重量平均分子量はGPCにより求めた。また、フッ素−シロキサングラフト化合物の質量%は、HPLC(液体クロマトグラフィー)により求めた。
<ハードコート層組成物B>
無機微粒子として平均粒径40nmのZrO微粒子(日産化学製)を用いた以外は、上記のハードコート組成物Aと同様にしてハードコート層組成物Bを得た。
<基材フィルム>
厚み100μmのノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加した樹脂(ノルボルネン系樹脂)を含有する高分子フィルム(日本ゼオン(株)製 商品名「ゼオノアフィルム ZF−14−100」を基材フィルム1として用意した。
また、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂を用いた基材フィルムとして、商品名KC4UAW、厚み40μm、コニカミノルタ社製を基材フィルム2とした。
<実施例1>
上記の基材フィルム1上に、上記のハードコート層組成物Aを押し出しコーターを用いて塗布し、恒率乾燥区間温度50℃、減率乾燥区間温度50℃で乾燥の後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cm2で、照射量を0.2J/cm2として塗布層を硬化させ、ドライ膜厚2.5μmのハードコート層を形成した。続いて(株)エム・ディ・コム製エキシマー照射装置(MECL−M−1−200)を用いて下記の条件でハードコート層にエキシマー光を照射し、ロール状に巻き取って実施例1の反射防止フィルムを作製した。
(エキシマー光照射条件)
ランプ封入ガス:Xe
波長:172nm
エキシマー光強度:130mW/cm2(172nm)
試料と光源の距離:2mm
照射装置内の酸素濃度:0.3%(窒素パージ)
積算光量:3550mJ/cm2
<実施例2>
ハードコート層組成物Aの代わりにハードコート層組成物Bを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2の反射防止フィルムを得た。
<比較例1>
純度99.99%のアルミニウム板表面に、500nm周期で突起が規則的に配列した構造を持つSiC製モールドを押し付け、表面に微細な凹凸パターンを形成した。このテクスチャリング処理を施したアルミニウム板を、0.1Mの濃度に調整したリン酸水溶液中で、浴温0℃において直流200Vの条件下で5秒間陽極酸化を行い、さらに10wt%リン酸水溶液、浴温30℃に20分間浸漬する操作を5回繰り返し、テーパー形状の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナを得た。得られた陽極酸化ポーラスアルミナの表面にイオンビームスパッタを用いてNiを50nmコートし導通層を形成した。この試料の表面にNiを厚さ300μm電析した後、ポーラスアルミナの層および地金アルミニウムを溶解除去することでテーパー形状ピラーアレーを有するNiモールドを得た。作製したNiモールドは、あらかじめ、0.1wt%“オプツール”(:フッ素系化合物)溶液に浸漬して離型処理を施した。作製したモールドに、ハードコート組成物Aを塗工し、上記の基材フィルム2を被せて、UV硬化し、比較例1の反射防止フィルムを得た。
<比較例2>
エキシマー光を照射する代わりにプラズマ処理を行った以外は、実施例1と同様にして比較例2の反射防止フィルムを得た。プラズマ処理の条件は以下の通りである。
(プラズマ処理条件)
米国特許第5,888,594号(Davidら)に記載のプラズマ処理システムを、一部の修正を伴って使用した。ドラム電極の幅を14.5インチ(36.8cm)に増加し、プラズマシステム内の2つの区画間の分離を取り除くことで、全排気がターボ分子ポンプによって実施されるようにした。したがって、プラズマプロセスで従来実施される動作圧力よりもはるかに低い動作圧力で操作した。サンプルは、処理時間180秒で酸素プラズマによって処理した。
<実施例及び比較例の評価>
実施例及び比較例の反射防止フィルムについて、スチールウール試験による耐擦傷性の評価、スチールウール試験前後の視感反射率の評価、ヘイズの評価を行った。その結果をロール加工の可否、生産性、傷の付きやすさ、継ぎ目の有無とともに表1に示す。
Figure 2014224920
スチールウール試験の手法及び耐擦傷性の評価基準は以下の通りである。各実施例及び比較例の反射防止フィルムについて、ハードコート層の表面を500g/cm2の荷重を掛けたスチールウール(日本スチールウール(株)製、#0000)で10往復させて、傷の発生有無を目視にて観察した。
(評価基準)
○:5本未満の傷がある
△:5本以上10本未満の傷がある
×:10本以上の傷がある
スチールウール試験前後の視感反射率の測定方法及び評価基準は以下の通りである。各実施例及び比較例の反射防止フィルムについて、上記のスチールウール試験前後で、分光光度計(株式会社島津製作所製 MPC−2200)を用い、反射防止フィルムの測定裏面に黒テープ(ニチバン株式会社製ビニールテープVT−50)を貼った状態で反射率を測定した。
(評価基準)
○:スチールウール試験前後での反射率変化が5%未満である
×:スチールウール試験前後での反射率変化が5%以上である
ヘイズの測定及び評価基準は以下の通りである。各実施例及び比較例の反射防止フィルムについて、JIS K 7136(2000)に準じて、ヘイズメーター(日本電色社製、NDH−2000)を用いてヘイズ値を測定した。ヘイズは表示装置に用いた場合の視認性の観点から5%未満であることが好ましい。
(評価基準)
○:ヘイズが5%未満である
×:ヘイズが5%以上である
表1より、ハードコート層組成物が異なる実施例1、2では、全ての項目が○になっているので、ハードコート層組成物A、Bの違いによって優位差はないことがわかる。実施例1、2の反射防止フィルムは、エキシマー光によりハードコート層の表層のハードコート樹脂が分解され、無機微粒子が分解されずに残るため微細凹凸構造が形成され、この構造により反射防止機能が付与される。また、ハードコート層の表層に硬い無機微粒子が突出しているので、傷が付きにくく、耐擦傷性に優れる。また、エキシマー光の照射を含めてロール・トゥ・ロールでの生産が可能であるので生産性が良く、ロール状の反射防止フィルムを継ぎ目なく製造することができる。
このように、実施例1、2によれば、反射率が低く、かつ傷が付きにくく、ロール加工が可能な反射防止フィルムを実現している。
これに対して比較例1は、鋳型によって成型するため生産性が良いとはいえない。また、耐擦傷性の評価で10本以上の傷が見られ、反射率の変化も大きい。これは、微細凹凸構造の凸部が樹脂で形成されているため無機微粒子に比べて傷が付きやすいためであると考えられる。
また比較例2は、耐擦傷性、反射率変化、ヘイズの評価に問題はないが、プラズマ処理のために大掛かりな真空装置が必要であったり、フィルムをロール加工することが難しく継ぎ目が発生し、生産性も悪いという問題がある。
なお、実施例1、2及び比較例2において、基材フィルム1の代わりに基材フィルム2を用いた場合においても同様の効果が確認された。
本発明の反射防止フィルムは、液晶表示装置をはじめとする表示装置における反射防止に用いることができる。また本発明の反射防止フィルムは、スマートフォンやタブレット端末等の中小型の表示装置がタッチパネルを備える場合に、タッチパネルと表示装置の界面の反射防止に用いることができる。
10 反射防止フィルム
11 フィルム
12 ハードコート層
12a ハードコート樹脂
12b 無機微粒子

Claims (5)

  1. ハードコート樹脂及び無機微粒子を含むハードコート層が形成されたフィルムにエキシマー光を照射することで、前記ハードコート層の表層のハードコート樹脂を分解して微細凹凸構造を形成する反射防止フィルムの製造方法。
  2. 前記無機微粒子の粒径が150nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルムの製造方法。
  3. 前記無機微粒子の含有量が前記ハードコート層の全固形分の35〜65wt%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の反射防止フィルムの製造方法。
  4. 前記フィルムの面内位相差Roが0〜5nmであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の反射防止フィルムの製造方法。
  5. 前記フィルムの面内位相差Roが70〜160nmであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の反射防止フィルムの製造方法。
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