〔第1実施形態〕
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係るクローラ走行装置を、作業車の一例であるトラクタに適用した第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態で例示するトラクタは、車体フレーム1の前半部に原動部2を備え、車体フレーム1の後半部に搭乗空間を形成するキャビン3を配備している。そして、車体フレーム1における前部側の左右両側部に駆動可能で操舵可能な前輪4を配備し、車体フレーム1における後部側の左右両側部に駆動可能なクローラ走行装置5を配備することにより、4輪駆動型に構成している。
図1及び図2に示すように、車体フレーム1は、その後部側をトランスミッションケース(以下、T/Mケースと称する)6によって構成している。T/Mケース6は、その後部の左右両側部に、T/Mケース6の内部から左右に延出する左右の後車軸7を支持する後車軸ケース8を装備している。
図示は省略するが、車体フレーム1の後部には、ロータリ耕耘装置やプラウなどの作業装置の連結装備を可能にするリンク機構、リンク機構を介した作業装置の昇降操作を可能にする油圧式の昇降機構、及び、車体フレーム1の後部にロータリ耕耘装置などの駆動型の作業装置を連結した場合に作業装置への作業用動力の取り出しを可能にするPTO軸、などを装備している。
図1及び図2に示すように、左右のクローラ走行装置5は、前後向きのトラックフレーム10、ゴム製のクローラベルト11、クローラベルト11を駆動する駆動スプロケット12、駆動スプロケット12の前下方にてクローラベルト11を回動案内する前側遊輪13、駆動スプロケット12の後下方にてクローラベルト11を回動案内する後側遊輪14、及び、前側遊輪13と後側遊輪14との間にてクローラベルト11を回動案内する4つの転輪15、などを備えている。
左右のトラックフレーム10は、その前後中間部から車体フレーム1に向けて延出する連結部材16を装備している。連結部材16は、後車軸ケース8にボルト連結した支持部材17に、左右向きの支軸18を介して連結している。
図1〜3に示すように、左右のクローラベルト11は、硬度の高いゴム材からなる無端帯状のベルト本体19と、ベルト本体19よりも硬度の低いゴム材からなる複数のラグ20とを備えるように成形している。ベルト本体19には、複数の芯金21を周方向に一定ピッチで埋設し、かつ、その内周面の左右中央側箇所にて突出する複数の駆動用突出部22を、各芯金21の埋設箇所と同じ位置に位置するように、周方向に一定ピッチで整列形成している。複数のラグ20は、ベルト本体19の外周側に左右2列で周方向に一定ピッチで並ぶ状態に整列形成している。
左右の駆動スプロケット12は、対応する後車軸7にボルト連結した鋼板製で大径の回転ディスク23、及び、回転ディスク23の外周部にリング状にボルト連結した鋳造製の4つの分割スプロケット24、によって構成している。各分割スプロケット24は、回転ディスク23に対するボルト連結を可能にする板状の連結部24A、連結部24Aよりも左右幅の広い外周部24B、及び、外周部24Bから外向きに突出する複数の突出部24C、を有するように形成している。そして、各突出部24Cを、外周部24Bから左右に張り出す幅広に形成することにより、突出部形成箇所の断面形状がT字状になるように構成している。各突出部24Cは、駆動スプロケット12を構成した場合に、クローラベルト11において隣接する2つの駆動用突出部22の間に入り込むことが可能な一定ピッチで、駆動スプロケット12の周方向に整列配備した状態となるように配置設定している。そして、駆動スプロケット12の回転駆動に伴って、その回転方向上手側に位置する駆動用突出部22を押圧することにより、駆動スプロケット12の回転方向にクローラベルト11を回動させるように構成している。
つまり、左右の駆動スプロケット12は、各分割スプロケット24に形成した複数の突出部24Cにより、駆動スプロケット12の外周縁から外向きに突出する状態で、駆動スプロケット12の周方向に一定ピッチで整列形成した状態となる複数の駆動用押圧部25を構成している。そして、これらの駆動用押圧部25が、駆動スプロケット12の回転駆動に伴って、クローラベルト11の駆動用突出部22を駆動スプロケット12の回転方向に押圧するように構成している。
この構成から、左右の後車軸7とともに左右の駆動スプロケット12を前進方向に回転駆動すると、この回転駆動に伴って、左右の駆動スプロケット12の各駆動用押圧部25が対応するクローラベルト11の各駆動用突出部22を前進方向に押圧する。これにより、左右のクローラベルト11を前進方向に回動させることができ、車体を前進させることができる。逆に、左右の後車軸7とともに左右の駆動スプロケット12を後進方向に回転駆動すると、この駆動に伴って、左右の駆動スプロケット12の各駆動用押圧部25が対応するクローラベルト11の各駆動用突出部22を後進方向に押圧する。これにより、左右のクローラベルト11を後進方向に回動させることができ、車体を後進させることができる。
図1に示すように、左右の前側遊輪13は、前側遊輪13を前下方に突出付勢する付勢機構26を介してトラックフレーム10の前端部に装備することにより、駆動スプロケット12の前下方に配置している。又、クローラベルト11に形成した各駆動用突出部22の左右に隣接する左右の輪体27を備えた外転輪型に構成している。この構成により、クローラベルト11を緊張状態に維持するとともに、前側遊輪13に対するクローラベルト11の左右方向への位置ズレを防止している。
左右の後側遊輪14は、トラックフレーム10の後端部に装備することにより、駆動スプロケット12の後下方に配置している。又、クローラベルト11に形成した各駆動用突出部22の左右に隣接する左右の輪体28を備えた外転輪型に構成することにより、後側遊輪14に対するクローラベルト11の左右方向への位置ズレを防止している。
図1及び図2に示すように、左右の各転輪15は、トラックフレーム10の下部に前後方向に所定ピッチで装備することにより、前側遊輪13と後側遊輪14との間に配置している。又、クローラベルト11に形成した各駆動用突出部22の左右に隣接する左右の輪体29を備えた外転輪型に構成することにより、各転輪15に対するクローラベルト11の左右方向への位置ズレを防止している。
図2〜6に示すように、左右のクローラベルト11は、ベルト本体19の内周面側における各駆動用突出部22の間に、対応する駆動スプロケット12に備えた各駆動用押圧部25の係入を許容する係入部11Aを形成している。各係入部11Aは、クローラベルト11の左右方向視での形状が底窄まりの台形状になるように形成している。そして、それらの底壁部分11aに各駆動用押圧部25の突出端部分25aが接合するように形成している。
左右のクローラベルト11において、各芯金21は、ベルト本体19に左右向きの姿勢で埋設する芯金21の基部としての芯金本体21Aと、芯金本体21Aの左右中央側箇所からクローラベルト11の内周面側に突出する左右の芯金突起21Bとを備えるように形成している。そして、ベルト本体19に芯金本体21Aを埋設した状態では、左右の芯金突起21Bが、ベルト本体19の内周面から突出して、前側遊輪13と後側遊輪14と各転輪15とのそれぞれにおける左右の対応する輪体27〜29に隣接するように構成している。
各駆動用突出部22は、芯金21に備えた左右の芯金突起21Bと、左右の芯金突起21Bを覆うクローラベルト11の被覆部11Bとから構成している。そして、クローラベルト11の左右方向視での形状が略三角形状になるように形成している。又、それらの突出長さを、前側遊輪13を支持する付勢機構26の遊輪支持部(図示せず)と、後側遊輪14を支持するトラックフレーム10の遊輪支持部(図示せず)と、各転輪15を支持するトラックフレーム10の各転輪支持部10Aとのそれぞれに接触しない範囲で極力長くすることにより、クローラベルト11の前後の遊輪13,14及び転輪15に対する左右方向への位置ズレをより確実に防止できるようにしている。更に、前述したように、前側遊輪13と後側遊輪14と各転輪15とのそれぞれを外転輪型に構成したことにより、左右の芯金突起21Bの間に前後の遊輪13,14や各転輪15の通過を許容する空間を形成する必要がないことから、左右の芯金突起21Bの間を埋める突起間部分22Aを有するように構成している。これにより、各駆動用突出部22は、クローラベルト11の回動方向視での形状が略台形状になるように形成している。各駆動用突出部22の突起間部分22Aは、左右の芯金突起21Bの間を埋めるクローラベルト11の被覆部11Bにより構成している。
各駆動用突出部22の被覆部11Bは、ベルト本体19と同じ性質のゴム材を用いて、ベルト本体19と同じ硬度となるようにベルト本体19に一体形成している。各芯金21は、左右の芯金突起21Bがクローラベルト11のベルト本体19と駆動用突出部22(被覆部11B)とにわたるように、クローラベルト11に埋設している。つまり、各芯金21に備えた左右の芯金突起21Bにより、クローラベルト11におけるベルト本体19と各駆動用突出部22との境界部、及び、各駆動用突出部22を補強している。その結果、クローラベルト11における各駆動用突出部22の耐久性を向上させることができ、クローラ走行装置5の高馬力化を図り易くすることができる。
左右の駆動スプロケット12において、各駆動用押圧部25は、広い押圧面積を確保しながらクローラベルト11の各係入部11Aへの係入がスムーズに行われるように、駆動スプロケット12の回転方向視での形状が幅広で先窄まりの台形状になり、かつ、左右方向視での形状が幅狭で先窄まりの台形状になるように形成している。そして、駆動スプロケット12の回転方向に面する前後両面に、クローラベルト11の各駆動用突出部22に対してクローラベルト11の回動方向に押圧作用する台形状の押圧面25Aを備えるように形成している。各押圧面25Aは、各駆動用突出部22における左右の芯金突起21Bにわたる幅広の左右幅を有している。
左右のクローラベルト11において、各駆動用突出部22は、それらの前後の壁面22Bにおける基部側に、各駆動用押圧部25における押圧面25Aの左右幅方向及び突出方向の全域に連続して当接する台形状の面部分22aを有するように形成することにより、それらの前後の壁面22Bにおける左右幅方向の全長に亘る突出方向の長さが、各駆動用押圧部25における押圧面25Aの突出方向の長さ以上の長さを有するように形成している。これにより、各駆動用突出部22における前後の壁面22Bが、各駆動用押圧部25の押圧面25Aに対して、各押圧面25Aの全域を受け止めて押圧される被押圧面として機能するように構成している。
以上の構成から、左右の後車軸7とともに左右の駆動スプロケット12を前進方向又は後進方向に回転駆動すると、左右の駆動スプロケット12の各駆動用押圧部25が、左右のクローラベルト11における各駆動用突出部間の係入部11Aに次々と係入して、対応する駆動用突出部22を駆動スプロケット12の回転方向に押圧するようになる。一方、左右のクローラベルト11の各駆動用突出部22は、それらの前側又は後側の壁面22Bにおける基部側の面部分22aにより、左右の駆動スプロケット12の各駆動用押圧部25における前側又は後側の押圧面25Aの全域を受け止めるデッドスペースのない状態で、各駆動用押圧部25によって駆動スプロケット12の回転方向に押圧されるようになる。そして、各駆動用突出部22の内部に備えた左右の芯金突起21Bが、クローラベルト11の被覆部11Bを介した状態で、各駆動用押圧部25からの押圧作用を受けるようになる。
その結果、駆動スプロケット12の各駆動用押圧部25がクローラベルト11の各駆動用突出部22に当接する際の衝撃音の発生を抑制しながら、左右の駆動スプロケット12からの駆動力を、各駆動用突出部22の被押圧面22Bからクローラベルト11に埋設した各芯金21などを介して左右のクローラベルト11に効率良く伝えることができ、左右のクローラ走行装置5による推進力を高めることができる。又、重負荷牽引作業時における各駆動用突出部22の変形を抑制することができ、これにより、各駆動用押圧部25を各駆動用突出部22の間に位置する各係入部11Aにスムーズに係入させることができる。
更に、各駆動用突出部22が、ベルト本体19に埋設した芯金本体21Aから突出する左右の芯金突起21Bを有することにより、各駆動用突出部22に採用するゴム材として、ベルト本体19に採用するゴム材と同じ硬度のものを採用しながら、各駆動用突出部22の耐久性を向上させることができる。これにより、例えば各駆動用突出部22をゴム材のみで構成する場合のように、高い耐久性を得るために、各駆動用突出部22に採用するゴム材の硬度を、ベルト本体19に採用するゴム材の硬度よりも高くする必要がなく、又、その硬度差を得るための別加硫を不要にすることができる。つまり、コストの削減や製造の容易化を図りながら、各駆動用突出部22の耐久性を向上させることができる。
図示は省略するが、左右のクローラベルト11において、ベルト本体19における各芯金突起21Bの外周側箇所には補強用の複数のスチールコードを埋設している。
図2〜6に示すように、左右のクローラベルト11は、それらの各駆動用突出部22における一対の芯金突起21Bの間を埋める突起間部分22Aの突出方向の長さが、駆動スプロケット12における各駆動用押圧部25の突出方向の長さに対応する長さを有する状態で、一対の芯金突起21Bの突出方向の長さよりも短くなるように形成することにより、駆動用突出部22の突出端部位に凹入部分22Cを備えるように構成している。又、左右の駆動スプロケット12においては、各分割スプロケット24において連結部24Aよりも幅広で突出部24Cよりも幅狭に形成した外周部24Bが、各駆動用突出部22の凹入部分22Cに係入することにより、駆動スプロケット12に対するクローラベルト11の左右方向への位置ズレを防止するリング状の係入部分12Aとして機能するように構成している。
これにより、左右のクローラ走行装置5は、駆動スプロケット12からの駆動力によってクローラベルト11を駆動する場合に、クローラベルト11の各駆動用突出部22が、それらの各被押圧面22Bによって駆動スプロケット12の各駆動用押圧部25における押圧面25Aの全域を受け止める状態を得られるようにしながら、クローラベルト11における突起間部分22Aの突出方向での長さが不必要に長くなるのを防止することができる。これにより、左右のクローラ走行装置5におけるクローラベルト11の軽量化及びコストの削減を図ることができる。
そして、駆動スプロケット12の外周縁にリング状の係入部分12Aを備えることにより、クローラベルト11において各駆動用突出部22の突起間部分22Aが不必要に長くなるのを防止することによって得られる各駆動用突出部22の凹入部分22Cを有効利用して、駆動スプロケット12に対するクローラベルト11の左右方向への位置ズレを防止することができる。
〔第2実施形態〕
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係るクローラ走行装置を、作業車の一例であるトラクタに適用した第2実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、この第2実施形態は、前述した第1実施形態とクローラベルト11の構成が異なることから、クローラベルト11の構成についてのみ説明する。
図7〜9に示すように、左右のクローラベルト11は、硬度の高いゴム材からなる無端帯状のベルト本体19と、ベルト本体19よりも硬度の低いゴム材からなる複数のラグ20とを備えるように成形している。ベルト本体19には、複数の芯金21を周方向に一定ピッチで埋設し、かつ、その内周面の左右中央側箇所にて突出する複数の駆動用突出部22を、各芯金21の埋設箇所と同じ位置に位置するように、周方向に一定ピッチで整列形成している。複数のラグ20は、ベルト本体19の外周側に左右2列で周方向に一定ピッチで並ぶ状態に整列形成している。
各芯金21は、ベルト本体19に左右向きの姿勢で埋設する左右の芯金基部21C、左右の芯金基部21Cの左右内端箇所からクローラベルト11の内周面側に突出する左右の芯金突起21D、及び、駆動スプロケット12の各駆動用押圧部25と対向するように左右の芯金突起21Dの間においてクローラベルト11の内周面側に偏倚させた偏倚部21E、を備えるように形成している。そして、ベルト本体19に芯金基部21Cを埋設した状態では、左右の芯金突起21Dと偏倚部21Eとがベルト本体19の内周面から突出して、左右の芯金突起21Dが前側遊輪13と後側遊輪14と各転輪15とのそれぞれにおける左右の対応する輪体27〜29に隣接するように構成している。
各駆動用突出部22は、芯金21に備えた左右の芯金突起21Dと偏倚部21E、及び、左右の芯金突起21Dと偏倚部21Eとを覆うクローラベルト11の被覆部11Bによって構成している。そして、クローラベルト11の左右方向視での形状が略三角形状になるように形成している(図1及び図3参照)。又、それらの突出長さを、前側遊輪13を支持する付勢機構26の遊輪支持部(図示せず)と、後側遊輪14を支持するトラックフレーム10の遊輪支持部(図示せず)と、各転輪15を支持するトラックフレーム10の各転輪支持部10Aとのそれぞれに接触しない範囲で極力長くすることにより、クローラベルト11の前後の遊輪13,14及び転輪15に対する左右方向への位置ズレをより確実に防止できるようにしている(図1及び図2参照)。更に、前述したように、前側遊輪13と後側遊輪14と各転輪15とのそれぞれを外転輪型に構成したことにより、左右の芯金突起21Dの間に前後の遊輪13,14や各転輪15の通過を許容する空間を形成する必要がないことから、左右の芯金突起21Dの間を埋める突起間部分22Aを有するように構成している。これにより、各駆動用突出部22は、クローラベルト11の回動方向視での形状が略台形状になるように形成している。各駆動用突出部22の突起間部分22Aは、左右の芯金突起21Bの間に位置する偏倚部21Eと、左右の芯金突起21Bの間を埋めるクローラベルト11の被覆部11Bとから構成している。
各駆動用突出部22の被覆部11Bは、ベルト本体19と同じ性質のゴム材を用いて、ベルト本体19と同じ硬度となるようにベルト本体19に一体形成している。各芯金21は、左右の芯金突起21Dがクローラベルト11のベルト本体19と駆動用突出部22(被覆部11B)とにわたるように、又、偏倚部21Eが駆動用突出部22の内部において左右の芯金突起21Dにわたるように、クローラベルト11に埋設している。つまり、各芯金21に備えた左右の芯金突起21Dにより、クローラベルト11におけるベルト本体19と各駆動用突出部22との境界部を補強し、かつ、各芯金21に備えた左右の芯金突起21Dと偏倚部21Eにより各駆動用突出部22を補強している。その結果、クローラベルト11における各駆動用突出部22の耐久性を向上させることができ、クローラ走行装置5の高馬力化を図り易くすることができる。
左右のクローラベルト11において、各駆動用突出部22は、それらの前後の壁面22Bにおける芯金21の偏倚部21Eが位置する基部側に、各駆動用押圧部25における押圧面25Aの左右幅方向及び突出方向の全域に連続して当接する台形状の面部分22aを有するように形成することにより、それらの前後の壁面22Bにおける左右幅方向の全長に亘る突出方向の長さが、各駆動用押圧部25における押圧面25Aの突出方向の長さ以上の長さを有するように形成している。これにより、各駆動用突出部22における前後の壁面22Bが、各駆動用押圧部25の押圧面25Aに対して、各押圧面25Aの全域を受け止めて押圧される被押圧面として機能するように構成している。
以上の構成から、左右の後車軸7とともに左右の駆動スプロケット12を前進方向又は後進方向に回転駆動すると、左右の駆動スプロケット12の各駆動用押圧部25が、左右のクローラベルト11における各駆動用突出部間の係入部11Aに次々と係入して、対応する駆動用突出部22を駆動スプロケット12の回転方向に押圧するようになる。一方、左右のクローラベルト11の各駆動用突出部22は、それらの前側又は後側の壁面22Bにおける基部側の面部分22aにより、左右の駆動スプロケット12の各駆動用押圧部25における前側又は後側の押圧面25Aの全域を受け止めるデッドスペースのない状態で、かつ、内部に備えた芯金21の偏倚部21Eを中心にした適切な状態で、各駆動用押圧部25によって駆動スプロケット12の回転方向に押圧されるようになる。そして、各駆動用突出部22の内部に備えた左右の芯金突起21D及び偏倚部21Eが、クローラベルト11の被覆部11Bを介した状態で、各駆動用押圧部25からの押圧作用を受けるようになる。
その結果、駆動スプロケット12の各駆動用押圧部25がクローラベルト11の各駆動用突出部22に当接する際の衝撃音の発生を抑制しながら、左右の駆動スプロケット12からの駆動力を、各駆動用突出部22の被押圧面22Bからクローラベルト11に埋設した各芯金21などを介して左右のクローラベルト11に効率良く伝えることができ、左右のクローラ走行装置5による推進力を高めることができる。又、重負荷牽引作業時における各駆動用突出部22の変形を抑制することができ、これにより、各駆動用押圧部25を各駆動用突出部22の間に位置する各係入部11Aにスムーズに係入させることができる。
更に、各駆動用突出部22が、クローラベルト11に埋設した芯金21における左右の芯金突起21Dと偏倚部21Eとを有することにより、各駆動用突出部22に採用するゴム材として、ベルト本体19に採用するゴム材と同じ硬度のものを採用しながら、各駆動用突出部22の耐久性を向上させることができる。これにより、例えば各駆動用突出部22をゴム材のみで構成する場合のように、高い耐久性を得るために、各駆動用突出部22に採用するゴム材の硬度を、ベルト本体19に採用するゴム材の硬度よりも高くする必要がなく、又、その硬度差を得るための別加硫を不要にすることができる。つまり、コストの削減や製造の容易化を図りながら、各駆動用突出部22の耐久性を向上させることができる。
又、クローラベルト11に埋設する各芯金21が偏倚部21Eを有することにより、各クローラベルト11のベルト本体19において左右のラグ20を繋ぐ状態になる左右中央側部位19Aの厚みを大きくすることができる。これにより、偏倚部21Eを備えない場合に生じていた、左右中央側部位19Aにて大きい厚みを確保するためにベルト本体19の全体の厚みを大きくすることによる、クローラベルト11の不必要な重量化やコストの高騰などを防止することができる。
左右のクローラベルト11は、それらの各駆動用突出部22における一対の芯金突起21Dの間を埋める突起間部分22Aの突出方向の長さが、駆動スプロケット12における各駆動用押圧部25の突出方向の長さに対応する長さを有する状態で、一対の芯金突起21Dの突出方向の長さよりも短くなるように形成することにより、駆動用突出部22の突出端部位に凹入部分22Cを備えるように構成している。又、左右の駆動スプロケット12においては、各分割スプロケット24において連結部24Aよりも幅広で突出部24Cよりも幅狭に形成した外周部24Bが、各駆動用突出部22の凹入部分22Cに係入することにより、駆動スプロケット12に対するクローラベルト11の左右方向への位置ズレを防止するリング状の係入部分12Aとして機能するように構成している。
これにより、左右のクローラ走行装置5は、駆動スプロケット12からの駆動力によってクローラベルト11を駆動する場合に、クローラベルト11の各駆動用突出部22が、それらの各被押圧面22Bによって駆動スプロケット12の各駆動用押圧部25における押圧面25Aの全域を受け止める状態を得られるようにしながら、クローラベルト11における突起間部分22Aの突出方向での長さが不必要に長くなるのを防止することができる。これにより、左右のクローラ走行装置5におけるクローラベルト11の軽量化及びコストの削減を図ることができる。
そして、駆動スプロケット12の外周縁にリング状の係入部分12Aを備えることにより、クローラベルト11において各駆動用突出部22の突起間部分22Aが不必要に長くなるのを防止することによって得られる各駆動用突出部22の凹入部分22Cを有効利用して、駆動スプロケット12に対するクローラベルト11の左右方向への位置ズレを防止することができる。
〔第3実施形態〕
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係るクローラ走行装置を、作業車の一例であるトラクタに適用した第3実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、この第3実施形態は、前述した第1実施形態及び第2実施形態とクローラベルト11及び駆動スプロケット12の構成が異なることから、クローラベルト11及び駆動スプロケット12の構成についてのみ説明する。
図10〜13に示すように、左右のクローラベルト11は、硬度の高いゴム材からなる無端帯状のベルト本体19と、ベルト本体19よりも硬度の低いゴム材からなる複数のラグ20とを備えるように成形している。ベルト本体19には、複数の芯金21を周方向に一定ピッチで埋設し、かつ、その内周面の左右中央側箇所にて突出する複数の駆動用突出部22を、各芯金21の埋設箇所と同じ位置に位置するように、周方向に一定ピッチで整列形成している。複数のラグ20は、ベルト本体19の外周側に左右2列で周方向に一定ピッチで並ぶ状態に整列形成している。
左右のクローラベルト11において、各芯金21は、ベルト本体19に左右向きの姿勢で埋設する芯金21の基部としての芯金本体21Aと、芯金本体21Aの左右中央側箇所からクローラベルト11の内周面側に突出する左右の芯金突起21Bとを備えるように形成している。そして、ベルト本体19に芯金本体21Aを埋設した状態では、左右の芯金突起21Bが、ベルト本体19の内周面から突出して、前側遊輪13と後側遊輪14と各転輪15とのそれぞれにおける左右の対応する輪体27〜29に隣接するように構成している。
左右の駆動スプロケット12は、対応する後車軸7にボルト連結した鋼板製で大径の回転ディスク23、及び、回転ディスク23の外周部にリング状にボルト連結した鋳造製の4つの分割スプロケット24、によって構成している。各分割スプロケット24は、回転ディスク23に対するボルト連結を可能にする板状の連結部24Dと、連結部24Dの外周縁から外向きに突出する複数の突出部24Eとを有するように形成している。そして、各突出部24Eの突出端側を、連結部24Dから左右に張り出す幅広に形成することにより、突出部形成箇所の断面形状がT字状になるように構成している。各突出部24Eは、駆動スプロケット12を構成した場合に、クローラベルト11において隣接する2つの駆動用突出部22の間に入り込むことが可能な一定ピッチで、駆動スプロケット12の周方向に整列配備した状態となるように配置設定している。そして、駆動スプロケット12の回転駆動に伴って、その回転方向上手側に位置する駆動用突出部22を押圧することにより、駆動スプロケット12の回転方向にクローラベルト11を回動させるように構成している。
つまり、左右の駆動スプロケット12は、各分割スプロケット24に形成した複数の突出部24Eにより、駆動スプロケット12の外周縁から外向きに突出する状態で、駆動スプロケット12の周方向に一定ピッチで整列形成した状態となる複数の駆動用押圧部25を構成している。そして、これらの駆動用押圧部25が、駆動スプロケット12の回転駆動に伴って、クローラベルト11の駆動用突出部22を駆動スプロケット12の回転方向に押圧するように構成している。
左右のクローラベルト11は、ベルト本体19の内周面側における各駆動用突出部22の間に、各駆動用押圧部25の係入を許容する凹入部11Cを形成している。各凹入部11Cは、クローラベルト11の回動方向視での形状が幅広で底窄まりの台形状になり、かつ、クローラベルト11の左右方向視での形状が幅狭で底窄まりの台形状になるように形成している。又、それらの底壁部分11cが、ベルト本体19に埋設した各芯金21の芯金本体21Aとクローラベルト11の回動方向視において重合するように、それらの凹入深さを設定している。そして、それらの底壁部分11cに各駆動用押圧部25の突出端部分25aが接合するように形成している。又、それらの左右の側壁部分11dが、各駆動用押圧部25の左右の側端部分25bに当接することにより、駆動スプロケット12に対するクローラベルト11の左右方向への位置ズレを防止する当接部分として機能するように形成している。更に、それらの前後の壁面部分11eにより、各駆動用突出部22における前後の壁面22Bの基端側部分を形成するように構成している。
各駆動用突出部22は、芯金21に備えた左右の芯金突起21Bと、左右の芯金突起21Bを覆うクローラベルト11の被覆部11Bとから構成している。そして、クローラベルト11の左右方向視での形状が略三角形状になるように形成している(図1及び図3参照)。又、それらの突出長さを、前側遊輪13を支持する付勢機構26の遊輪支持部(図示せず)と、後側遊輪14を支持するトラックフレーム10の遊輪支持部(図示せず)と、各転輪15を支持するトラックフレーム10の各転輪支持部10Aとのそれぞれに接触しない範囲で極力長くすることにより、クローラベルト11の前後の遊輪13,14及び転輪15に対する左右方向への位置ズレをより確実に防止できるようにしている(図1及び図2参照)。更に、前述したように、前側遊輪13と後側遊輪14と各転輪15とのそれぞれを外転輪型に構成したことにより、左右の芯金突起21Bの間に前後の遊輪13,14や各転輪15の通過を許容する空間を形成する必要がないことから、左右の芯金突起21Bの間を埋める突起間部分22Aを有するように構成している。これにより、各駆動用突出部22は、ベルト本体19の内周面から突出する部分におけるクローラベルト11の回動方向視での形状が略台形状になるように形成している。各駆動用突出部22の突起間部分22Aは、左右の芯金突起21Bの間を埋めるクローラベルト11の被覆部11Bにより構成している。
各駆動用突出部22の被覆部11Bは、ベルト本体19と同じ性質のゴム材を用いて、ベルト本体19と同じ硬度となるようにベルト本体19に一体形成している。各芯金21は、左右の芯金突起21Bがクローラベルト11のベルト本体19と駆動用突出部22(被覆部11B)とにわたるように、クローラベルト11に埋設している。つまり、各芯金21に備えた左右の芯金突起21Bにより、クローラベルト11におけるベルト本体19と各駆動用突出部22との境界部、及び、各駆動用突出部22を補強している。その結果、クローラベルト11における各駆動用突出部22の耐久性を向上させることができ、クローラ走行装置5の高馬力化を図り易くすることができる。
左右の駆動スプロケット12において、各駆動用押圧部25は、広い押圧面積を確保しながらクローラベルト11の各凹入部11Cへの係入がスムーズに行われるように、駆動スプロケット12の回転方向視での形状が幅広で先窄まりの台形状になり、かつ、左右方向視での形状が幅狭で先窄まりの台形状になるように形成している。そして、駆動スプロケット12の回転方向に面する前後両面に、クローラベルト11の各駆動用突出部22に対してクローラベルト11の回動方向に押圧作用する台形状の押圧面25Aを備えるように形成している。各押圧面25Aは、各駆動用突出部22における左右の芯金突起21Bにわたる幅広の左右幅を有している。
左右のクローラベルト11において、各駆動用突出部22は、それらの前後の壁面22Bにおける基部側に、各駆動用押圧部25における押圧面25Aの左右幅方向及び突出方向の全域に連続して当接する台形状の面部分22aを有するように形成することにより、それらの前後の壁面22Bにおける左右幅方向の全長に亘る突出方向の長さが、各駆動用押圧部25における押圧面25Aの突出方向の長さ以上の長さを有するように形成している。これにより、各駆動用突出部22における前後の壁面22Bが、各駆動用押圧部25の押圧面25Aに対して、各押圧面25Aの全域を受け止めて押圧される被押圧面として機能するように構成している。
以上の構成から、左右の後車軸7とともに左右の駆動スプロケット12を前進方向又は後進方向に回転駆動すると、左右の駆動スプロケット12の各駆動用押圧部25が、左右のクローラベルト11における各駆動用突出部間の凹入部11Cに次々と係入して、対応する駆動用突出部22を駆動スプロケット12の回転方向に押圧するようになる。一方、左右のクローラベルト11の各駆動用突出部22は、それらの前側又は後側の壁面22Bにおける基部側の面部分22aにより、左右の駆動スプロケット12の各駆動用押圧部25における前側又は後側の押圧面25Aの全域を受け止めるデッドスペースのない状態で、各駆動用押圧部25によって駆動スプロケット12の回転方向に押圧されるようになる。そして、各駆動用突出部22の内部に備えた左右の芯金突起21Bが、クローラベルト11の被覆部11Bを介する状態で、各駆動用押圧部25からの押圧作用を受けるようになる。
その結果、駆動スプロケット12の各駆動用押圧部25がクローラベルト11の各駆動用突出部22に当接する際の衝撃音の発生を抑制しながら、左右の駆動スプロケット12からの駆動力を、各駆動用突出部22の被押圧面22Bからクローラベルト11に埋設した各芯金21などを介して左右のクローラベルト11に効率良く伝えることができ、左右のクローラ走行装置5による推進力を高めることができる。又、重負荷牽引作業時における各駆動用突出部22の変形を抑制することができ、これにより、各駆動用押圧部25を各駆動用突出部22の間に位置する各係入部11Aにスムーズに係入させることができる。
又、左右のクローラベルト11の各凹入部11Cに係入する各駆動用押圧部25の突出端部分25aが、ベルト本体19に埋設した各芯金21の芯金本体21Aとクローラベルト11の回動方向視において重合する状態になることから、各駆動用押圧部25による押圧作用を、ベルト本体19に埋設した各芯金21の芯金本体21Aにも及ぼすことができる。その結果、左右の駆動スプロケット12からの駆動力を左右のクローラベルト11に更に効率良く伝えることができ、左右のクローラ走行装置5による推進力を更に高めることができる。
更に、各駆動用突出部22が、ベルト本体19に埋設した芯金本体21Aから突出する左右の芯金突起21Bを有することにより、各駆動用突出部22に採用するゴム材として、ベルト本体19に採用するゴム材と同じ硬度のものを採用しながら、各駆動用突出部22の耐久性を向上させることができる。これにより、例えば各駆動用突出部22をゴム材のみで構成する場合のように、高い耐久性を得るために、各駆動用突出部22に採用するゴム材の硬度を、ベルト本体19に採用するゴム材の硬度よりも高くする必要がなく、又、その硬度差を得るための別加硫を不要にすることができる。つまり、コストの削減や製造の容易化を図りながら、各駆動用突出部22の耐久性を向上させることができる。
〔第4実施形態〕
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係るクローラ走行装置を、作業車の一例であるトラクタに適用した第4実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、この第4実施形態は、前述した第3実施形態とクローラベルト11の構成が異なることから、クローラベルト11の構成についてのみ説明する。
図14〜17に示すように、左右のクローラベルト11は、硬度の高いゴム材からなる無端帯状のベルト本体19と、ベルト本体19よりも硬度の低いゴム材からなる複数のラグ20とを備えるように成形している。ベルト本体19には、複数の芯金21を周方向に一定ピッチで埋設し、かつ、その内周面の左右中央側箇所にて突出する複数の駆動用突出部22を、各芯金21の埋設箇所と同じ位置に位置するように、周方向に一定ピッチで整列形成している。複数のラグ20は、ベルト本体19の外周側に左右2列で周方向に一定ピッチで並ぶ状態に整列形成している。
各芯金21は、ベルト本体19に左右向きの姿勢で埋設する左右の芯金基部21C、左右の芯金基部21Cの左右内端箇所からクローラベルト11の内周面側に突出する左右の芯金突起21D、及び、駆動スプロケット12の各駆動用押圧部25と対向するように左右の芯金突起21Dの間においてクローラベルト11の内周面側に偏倚させた偏倚部21E、を備えるように形成している。そして、ベルト本体19に芯金基部21Cを埋設した状態では、左右の芯金突起21Dと偏倚部21Eとがベルト本体19の内周面から突出して、左右の芯金突起21Dが前側遊輪13と後側遊輪14と各転輪15とのそれぞれにおける左右の対応する輪体27〜29に隣接するように構成している。
左右のクローラベルト11は、ベルト本体19の内周面側における各駆動用突出部22の間に、各駆動用押圧部25の係入を許容する凹入部11Cを形成している。各凹入部11Cは、クローラベルト11の回動方向視での形状が幅広で底窄まりの台形状になり、かつ、クローラベルト11の左右方向視での形状が幅狭で底窄まりの台形状になるように形成している。又、それらの底壁部分11cが、クローラベルト11に埋設した各芯金21における左右の芯金基部21Cと偏倚部21Eとの間に位置するように、それらの凹入深さを設定している。そして、それらの底壁部分11cに各駆動用押圧部25の突出端部分25aが接合するように形成している。又、それらの左右の側壁部分11dが、各駆動用押圧部25の左右の側端部分25bに当接することにより、駆動スプロケット12に対するクローラベルト11の左右方向への位置ズレを防止する当接部分として機能するように形成している。更に、それらの前後の壁面部分11eにより、各駆動用突出部22における前後の壁面22Bの基端側部分を形成するように構成している。
各駆動用突出部22は、芯金21に備えた左右の芯金突起21Dと偏倚部21E、及び、左右の芯金突起21Dと偏倚部21Eとを覆うクローラベルト11の被覆部11Bによって構成している。そして、クローラベルト11の左右方向視での形状が略三角形状になるように形成している(図1及び図3参照)。又、それらの突出長さを、前側遊輪13を支持する付勢機構26の遊輪支持部(図示せず)と、後側遊輪14を支持するトラックフレーム10の遊輪支持部(図示せず)と、各転輪15を支持するトラックフレーム10の各転輪支持部10Aとのそれぞれに接触しない範囲で極力長くすることにより、クローラベルト11の前後の遊輪13,14及び転輪15に対する左右方向への位置ズレをより確実に防止できるようにしている(図1及び図2参照)。更に、前述したように、前側遊輪13と後側遊輪14と各転輪15とのそれぞれを外転輪型に構成したことにより、左右の芯金突起21Dの間に前後の遊輪13,14や各転輪15の通過を許容する空間を形成する必要がないことから、左右の芯金突起21Dの間を埋める突起間部分22Aを有するように構成している。これにより、各駆動用突出部22は、ベルト本体19の内周面から突出する部分におけるクローラベルト11の回動方向視での形状が略台形状になるように形成している。各駆動用突出部22の突起間部分22Aは、左右の芯金突起21Bの間に位置する偏倚部21Eと、左右の芯金突起21Bの間を埋めるクローラベルト11の被覆部11Bとから構成している。
各駆動用突出部22の被覆部11Bは、ベルト本体19と同じ性質のゴム材を用いて、ベルト本体19と同じ硬度となるようにベルト本体19に一体形成している。各芯金21は、左右の芯金突起21Dがクローラベルト11のベルト本体19と駆動用突出部22(被覆部11B)とにわたるように、又、偏倚部21Eがクローラベルト11のベルト本体19と各駆動用突出部22との境界部に位置するように、クローラベルト11に埋設している。つまり、各芯金21に備えた左右の芯金突起21Dと偏倚部21Eにより、クローラベルト11におけるベルト本体19と各駆動用突出部22との境界部及び各駆動用突出部22を補強している。その結果、クローラベルト11における各駆動用突出部22の耐久性を向上させることができ、クローラ走行装置5の高馬力化を図り易くすることができる。
左右のクローラベルト11において、各駆動用突出部22は、それらの前後の壁面22Bにおける芯金21の偏倚部21Eが位置する基部側に、各駆動用押圧部25における押圧面25Aの左右幅方向及び突出方向の全域に連続して当接する台形状の面部分22aを有するように形成することにより、それらの前後の壁面22Bにおける左右幅方向の全長に亘る突出方向の長さが、各駆動用押圧部25における押圧面25Aの突出方向の長さ以上の長さを有するように形成している。これにより、各駆動用突出部22における前後の壁面22Bが、各駆動用押圧部25の押圧面25Aに対して、各押圧面25Aの全域を受け止めて押圧される被押圧面として機能するように構成している。
以上の構成から、左右の後車軸7とともに左右の駆動スプロケット12を前進方向又は後進方向に回転駆動すると、左右の駆動スプロケット12の各駆動用押圧部25が、左右のクローラベルト11における各駆動用突出部間の凹入部11Cに次々と係入して、対応する駆動用突出部22を駆動スプロケット12の回転方向に押圧するようになる。一方、左右のクローラベルト11の各駆動用突出部22は、それらの前側又は後側の壁面22Bにおける基部側の面部分22aにより、左右の駆動スプロケット12の各駆動用押圧部25における前側又は後側の押圧面25Aの全域を受け止めるデッドスペースのない状態で、かつ、内部に備えた芯金21の偏倚部21Eを中心にした適切な状態で、各駆動用押圧部25によって駆動スプロケット12の回転方向に押圧されるようになる。そして、各駆動用突出部22の内部に備えた左右の芯金突起21B及び偏倚部21Eが、クローラベルト11の被覆部11Bを介する状態で、各駆動用押圧部25からの押圧作用を受けるようになる。
その結果、駆動スプロケット12の各駆動用押圧部25がクローラベルト11の各駆動用突出部22に当接する際の衝撃音の発生を抑制しながら、左右の駆動スプロケット12からの駆動力を、各駆動用突出部22の被押圧面22Bからクローラベルト11に埋設した各芯金21などを介して左右のクローラベルト11に効率良く伝えることができ、左右のクローラ走行装置5による推進力を高めることができる。又、重負荷牽引作業時における各駆動用突出部22の変形を抑制することができ、これにより、各駆動用押圧部25を各駆動用突出部22の間に位置する各凹入部11Cにスムーズに係入させることができる。
更に、各駆動用突出部22が、クローラベルト11に埋設した芯金21における左右の芯金突起21Dと偏倚部21Eとを有することにより、各駆動用突出部22に採用するゴム材として、ベルト本体19に採用するゴム材と同じ硬度のものを採用しながら、各駆動用突出部22の耐久性を向上させることができる。これにより、例えば各駆動用突出部22をゴム材のみで構成する場合のように、高い耐久性を得るために、各駆動用突出部22に採用するゴム材の硬度を、ベルト本体19に採用するゴム材の硬度よりも高くする必要がなく、又、その硬度差を得るための別加硫を不要にすることができる。つまり、コストの削減や製造の容易化を図りながら、各駆動用突出部22の耐久性を向上させることができる。
又、クローラベルト11に埋設する各芯金21が偏倚部21Eを有することにより、各クローラベルト11のベルト本体19において左右のラグ20を繋ぐ状態になる左右中央側部位19Aの厚みを大きくすることができる。これにより、偏倚部21Eを備えない場合に生じていた、左右中央側部位19Aにて大きい厚みを確保するためにベルト本体19の全体の厚みを大きくすることによる、クローラベルト11の不必要な重量化やコストの高騰などを防止することができる。
〔別実施形態〕
〔1〕左右のクローラ走行装置5は、左右の前輪4に代えてトラクタなどの作業車における前部の左右に備えるように構成したものであってもよい。又、左右の前輪4及び左右の後輪に代えてトラクタなどの作業車の前後にわたる状態で作業車の左右に備えるように構成したものであってもよい。
〔2〕駆動スプロケット12に対するクローラベルト11の左右方向への位置ズレを防止する構造として、前述した第1実施形態及び第2実施形態においては、駆動スプロケット12の外周縁に備えたリング状の係入部分12Aと、クローラベルト11における各駆動用突出部22の突出端部位に備えた凹入部分22Cとから構成した構造(以下、第1構造と称する)を例示し、又、前述した第3実施形態及び第4実施形態においては、駆動スプロケット12に備えた各駆動用押圧部25と、クローラベルト11における各駆動用突出部22の間に形成した各凹入部11Cとから構成した構造(以下、第2構造と称する)を例示したが、第1構造又は第2構造だけではクローラベルト11の位置ズレ防止が不十分な場合には、第1構造と第2構造の双方を採用することにより、駆動スプロケット12に対するクローラベルト11の左右方向への位置ズレをより確実に防止するように構成してもよい。
〔3〕各芯金21は、例えば、各駆動用突出部22の左右幅の略全域にわたる幅広の左右幅を有する単一の芯金突起21Bを備えるように形成したものであってもよい。又、例えば、ベルト本体19に左右向きの姿勢で埋設する芯金本体21Aと、芯金本体21Aの左右中央側箇所からクローラベルト11の内周面側に突出する左右の芯金突起21Bと、左右の芯金突起21Dの間においてクローラベルト11の内周面側に偏倚させた偏倚部21Eとを備えるように形成したものであってもよい。更に、各芯金21には、金属製のものや硬質樹脂製のものなどを採用することができる。
〔4〕各クローラベルト11において、それらの内周面側における各駆動用突出部22の間に形成する各凹入部11Cは、例えば、それらの底壁部分11cが、クローラベルト11のベルト本体19に埋設した各芯金21の芯金本体21Aとクローラベルト11の回動方向視において重合しないように、それらの凹入深さを浅く設定したものであってもよい。又、例えば、それらの底壁部分11cが、クローラベルト11のベルト本体19に埋設した各芯金21の左右の芯金基部21Cとクローラベルト11の回動方向視において重合するように、それらの凹入深さを深く設定したものであってもよい。更に、例えば、それらの底壁部分11cが、クローラベルト11に埋設した各芯金21の偏倚部21Eにおけるベルト外周側の端部と、クローラベルト11の回動方向視において一致するように、それらの凹入深さを設定したものであってもよい。
〔5〕各駆動スプロケット12の構成は種々の変更が可能であり、例えば、回転ディスク23と3分割形状又は5分割形状などの分割スプロケット24とから構成してもよい。
〔6〕図18〜27に示すように、各駆動スプロケット12における各駆動用押圧部25の形状は種々の変更が可能である。例えば、各駆動用押圧部25の左右方向視での形状が、突出方向に長い楕円形(図18及び図23参照)、円形(図19及び図24参照)、略V字状(図20及び図25参照)、又は、略U字状(図21及び図26参照)、になるように各駆動用押圧部25を形成してもよい。又、各駆動用押圧部25における駆動スプロケット12の回転方向視での形状が、突出端側の左右中央箇所に凹入部分25cを有する形状(図22及び図27参照)になるように各駆動用押圧部25を形成してもよい。更に、図示は省略するが、各駆動用押圧部25の左右幅が各駆動用突出部22の左右幅よりも大きくなるように各駆動用押圧部25を形成してもよい。尚、図18〜22には、前述した第1実施形態及び第2実施形態にて例示した駆動スプロケット12において、各駆動用押圧部25の形状を変更したものを例示している。又、図23〜27には、前述した第3実施形態及び第4実施形態にて例示した駆動スプロケット12において、各駆動用押圧部25の形状を変更したものを例示している。
〔7〕後側遊輪14を、トラックフレーム10の後端部に、後側遊輪14を後下方に突出付勢する付勢機構26を介して装備してもよい。
〔8〕前述した各実施形態では、左右のトラックフレーム10に4つの各転輪15を変位不能に装備する構成を例示したが、例えば、前側2つの転輪15と、後側2つの転輪15とを、それぞれ天秤アームを介して天秤揺動可能にトラックフレーム10に装備して、各転輪15がサスペンションとしての機能を有するように構成してもよい。又、トラックフレーム10に3つ以下又は5つ以上の転輪15を備えるように構成してもよい。
〔9〕左右のクローラベルト11の各駆動用突出部22に形成する被押圧面22B(面部分22a)、及び、左右の駆動スプロケット12の各駆動用押圧部25に形成する押圧面25Aは、被押圧面22Bにおける左右幅方向の全長に亘る突出方向の長さが、押圧面25Aの突出方向の長さ以上の長さを有するように形成していれば、それらの形状などは種々の変更が可能である。例えば、被押圧面22Bと押圧面25Aとのそれぞれを矩形状に形成してもよく、又、被押圧面22Bと押圧面25Aとの一方を台形状に形成し、他方を矩形状に形成してもよい。尚、被押圧面22Bが押圧面25Aの全域を受け止めて押圧されるように構成することが好ましい。
〔10〕左右のクローラベルト11においては、ベルト本体19に採用するゴム材よりも硬度の高いゴム材を各被覆部11Bに採用して、各駆動用突出部22における被覆部11Bの硬度がベルト本体19の硬度よりも高くなるように構成してもよい。この構成は、クローラ走行装置5の高馬力化を図る場合に特に有効である。