JP2014220156A - 燃料電池システムの制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】バッテリーの暖機を実施する際に酸化剤供給機の作動音を変動を抑制できる燃料電池システムの制御装置を提供する。
【解決手段】燃料電池10と、バッテリー13と、酸化剤供給機21と、酸化剤供給機21から燃料電池10へ供給する酸化剤をバイパスさせるバイパス通路200と、バイパス流量調整機210とを備えた燃料電池システムを制御する装置において、所定のSOC範囲となるように、バッテリー13の充放電を行う充放電量制御手段と、バッテリー13の充放電量を考慮して燃料電池10の要求発電量を決定する要求発電量設定手段と、要求発電量に基づいて酸化剤を供給する酸化剤供給量制御手段とを備え、バッテリー13暖機時において、酸化剤供給量制御手段は、所定量の酸化剤が供給されるように酸化剤供給機21を制御するとともに、要求発電量に基づいてバイパス流量調整機210を制御する。
【選択図】図11

Description

この発明は、燃料電池システムを制御する装置に関する。
燃料電池スタックとバッテリーとの出力によって補機を駆動する燃料電池システムが知られている。バッテリーは、低温状態では、本来の性能を発揮できない。そこで特許文献1では、燃料電池スタックの発電電力を上げることでバッテリーを充電するとともに、燃料電池スタックの発電電力を下げることでバッテリーを放電させることを繰り返して、バッテリーを早期に暖機する。
WO2008/047944
前述した従来システムでは、燃料電池スタックの発電電力を上げ下げするために、酸化剤供給機(エアコンプレッサー)の回転速度を制御して、燃料電池スタックに供給する空気量を調整する。
しかしながら、このようにしては、酸化剤供給機の作動音が変動し、乗員が耳障りに感じて違和感を覚えることがある。
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされた。本発明の目的は、バッテリーの暖機を実施する際に酸化剤供給機の作動音を変動を抑制できる燃料電池システムの制御装置を提供することである。
本発明は以下のような解決手段によって前記課題を解決する。
本発明による燃料電池システムの制御装置のひとつの態様は、燃料電池と、バッテリーと、酸化剤供給機と、酸化剤供給機から燃料電池へ供給する酸化剤をバイパスさせるバイパス通路と、バイパス流量調整機とを備えた燃料電池システムを制御する装置である。そして、所定のSOC範囲となるように、前記バッテリーの充放電を行う充放電量制御手段と、前記バッテリーの充放電量を考慮して前記燃料電池の要求発電量を決定する要求発電量設定手段と、前記要求発電量に基づいて酸化剤を供給する酸化剤供給量制御手段とを備える。そして、バッテリー暖機時において、前記酸化剤供給量制御手段は、所定量の酸化剤が供給されるように前記酸化剤供給機を制御するとともに、前記要求発電量に基づいて前記バイパス流量調整機を制御する。
この態様によれば、バッテリーの暖機制御が実施され燃料電池の要求発電量が変動したとしても、酸化剤供給機はバッテリーの暖機時は要求発電量によらず所定流量の酸化剤が酸化剤供給機から供給されるので、流量変化に伴う酸化剤供給機の変動音が抑制できる。また、燃料電池が要求するよりも余剰の酸化剤流量を供給することになるが、余剰分はバイパス流量調整機により調整されるので、不要な酸化剤の燃料電池への供給も抑制できる。
本発明の実施形態、本発明の利点については、添付された図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
図1は、本発明による制御装置の第1実施形態を適用可能な基本的な燃料電池システムを示す図である。 図2は、バッテリーの充電率SOCと燃料電池スタックの発電電力との相関図である。 図3は、本発明による燃料電池システムの制御装置のコントローラーが実行する制御フローチャートである。 図4は、燃料電池スタックに供給する空気量を演算する機能をブロック図として表したものである。 図5は、バッテリー暖機運転のサブルーチンを示す図である。 図6は、バッテリー暖機運転のサブルーチンの実行結果を示す図である。 図7は、バッテリー充電率に対するバッテリーの内部抵抗についてバッテリー温度ごとに示す図である。 図8は、ある温度におけるバッテリー充電率に対するバッテリーの内部抵抗の特性を示す図である。 図9は、バッテリー暖機運転におけるブリード空気量を演算する機能をブロック図として表したものである。 図10は、第1実施形態のバッテリー暖機運転における作動を説明する図である。 図11は、第1実施形態のバッテリー暖機運転における作動を説明するタイムチャートである。 図12は、第2実施形態のバッテリー暖機運転における作動を説明するタイムチャートである。 図13は、第3実施形態のバッテリー暖機運転におけるブリード空気量を演算する機能をブロック図として表したものである。 図14は、第4実施形態の充電目標電力を演算する機能をブロック図として表したものである。
(第1実施形態)
図1は、本発明による制御装置の第1実施形態を適用可能な基本的な燃料電池システムを示す図である。
最初に図1を参照して、本発明による燃料電池システムの制御装置を適用する基本的なシステムについて説明する。
燃料電池スタック10は、電解質膜が適度な湿潤状態に維持されつつ反応ガス(カソードガスO2、アノードガスH2)が供給されて発電する。そのようにするために、燃料電池スタック10には、カソードライン20と、アノードライン30と、冷却水循環ライン40と、が接続される。なお燃料電池スタック10の発電電流は、電流センサー101で検出される。燃料電池スタック10の発電電圧は、電圧センサー102で検出される。
カソードライン20には、燃料電池スタック10に供給されるカソードガス(酸化剤)O2が流れる。カソードライン20には、コンプレッサー21と、WRD(Water Recovery Device)22と、カソード調圧弁23と、が設けられる。またカソードライン20には、ブリードライン200が並設される。ブリードライン200は、コンプレッサー21よりも下流であってWRD22よりも上流のカソードライン20から分岐して、カソード調圧弁23よりも下流のカソードライン20に合流する。このような構成なので、コンプレッサー21で送風された空気の一部がブリードライン200に流れて、燃料電池スタック10を迂回する。ブリードライン200には、ブリード弁210が設けられる。
コンプレッサー21は、本実施形態では、たとえば遠心式のターボコンプレッサーである。コンプレッサー21は、燃料電池スタック10やWRD22よりも上流のカソードライン20に配置される。コンプレッサー21は、モーターMによって駆動される。コンプレッサー21は、カソードライン20を流れるカソードガスO2の流量を調整する。カソードガスO2の流量は、コンプレッサー21の回転速度によって調整される。
WRD22は、燃料電池スタック10に導入される空気を加湿する。WRD22は、加湿対象となるガスが流れる被加湿部と、加湿源となる水含有ガスが流れる加湿部と、を含む。被加湿部には、コンプレッサー21によって導入された空気が流れる。加湿部には、燃料電池スタック10を通流して水を含有しているガスが流れる。
カソード調圧弁23は、燃料電池スタック10よりも下流のカソードライン20に設けられる。カソード調圧弁23は、カソードライン20を流れるカソードガスO2の圧力を調整する。カソードガスO2の圧力は、カソード調圧弁23の開度によって調整される。
コンプレッサー21よりも上流のカソードライン20を流れるカソードガスO2の圧力P1は、カソード圧力センサー201で検出される。このカソード圧力センサー201は、コンプレッサー21よりも上流に設けられる。
カソードライン20を流れるカソードガスO2の流量Qは、カソード流量センサー202で検出される。このカソード流量センサー202は、コンプレッサー21よりも下流であってWRD22よりも上流に設けられる。
カソードライン20を流れるカソードガスO2の圧力P2は、カソード圧力センサー203で検出される。このカソード圧力センサー203は、コンプレッサー21よりも下流であってWRD22よりも上流に設けられる。さらに図1では、カソード圧力センサー203は、カソード流量センサー202の下流に位置する。
ブリード弁210は、ブリードライン200に設けられる。ブリード弁210は、ブリードライン200を流れるカソードガスO2の流量を調整する。カソードガスO2の流量は、ブリード弁210の開度によって調整される。
アノードライン30には、燃料電池スタック10に供給されるアノードガスH2が流れる。アノードライン30には、ボンベ31と、アノード調圧弁32と、アノードポンプ33と、パージ弁34と、が設けられる。
ボンベ31には、アノードガスH2が高圧状態で貯蔵されている。ボンベ31は、アノードライン30の最上流に設けられる。
アノード調圧弁32は、ボンベ31の下流に設けられる。アノード調圧弁32は、ボンベ31から新たにアノードライン30に供給するアノードガスH2の圧力を調整する。アノードガスH2の圧力は、アノード調圧弁32の開度によって調整される。
アノードポンプ33は、アノード調圧弁32の下流に位置する。アノードポンプ33は、アノード調圧弁32で調圧されたアノードガスH2を燃料電池スタック10に送る。
パージ弁34は、燃料電池スタック10の下流に設けられる。パージ弁34が開くと、アノードガスH2がパージされる。
アノードライン30を流れるアノードガスH2の圧力は、アノード圧力センサー301で検出される。このアノード圧力センサー301は、アノードポンプ33よりも下流であって燃料電池スタック10よりも上流に設けられる。
冷却水循環ライン40には、燃料電池スタック10に供給される冷却水が流れる。冷却水循環ライン40には、ラジエーター41と、三方弁42と、ウォーターポンプ43と、が設けられる。また冷却水循環ライン40には、バイパスライン400が並設される。バイパスライン400は、ラジエーター41よりも上流の冷却水循環ライン40から分岐し、ラジエーター41よりも下流の冷却水循環ライン40に合流する。このためバイパスライン400を流れる冷却水は、ラジエーター41をバイパスする。
ラジエーター41は、冷却水を冷却する。ラジエーター41には、クーリングファン410が設けられている。
三方弁42は、バイパスライン400と冷却水循環ライン40との合流部分に位置する。三方弁42は、開度に応じて、ラジエーター側のラインを流れる冷却水の流量と、バイパスラインを流れる冷却水の流量と、を調整する。これによって冷却水の温度が調整される。
ウォーターポンプ43は、三方弁42の下流に位置する。ウォーターポンプ43は、三方弁42を流れた冷却水を燃料電池スタック10に送る。
冷却水循環ライン40を流れる冷却水の温度は、水温センサー401で検出される。この水温センサー401は、バイパスライン400が分岐する部分よりも上流に設けられる。
コントローラーは、電流センサー101、電圧センサー102、カソード圧力センサー201、カソード流量センサー202、カソード圧力センサー203、アノード圧力センサー301、水温センサー401の信号を入力する。そして、信号を出力して、コンプレッサー21、カソード調圧弁23、ブリード弁210、アノード調圧弁32、アノードポンプ33、パージ弁34、三方弁42、ウォーターポンプ43の作動を制御する。
このような構成によって、燃料電池スタック10は、適温に維持されることで、電解質膜が適度な湿潤状態に維持されて、反応ガス(カソードガスO2、アノードガスH2)が供給されて発電する。燃料電池スタック10は、DC/DCコンバーター11を介して走行モーター12、バッテリー13、負荷14に接続される。
バッテリー13の充電率SOCが小さいときには、燃料電池スタック10は、走行モーター12、バッテリー13及び負荷14に電力を供給する。これによって走行モーター12及び負荷14が駆動されるとともに、バッテリー13が充電される。
バッテリー13の充電率SOCが大きいときには、バッテリー13は、単独で又は燃料電池スタック10とともに、走行モーター12や負荷14に電力を供給する。これによって走行モーター12及び負荷14が駆動される。
図2は、バッテリーの充電率SOCと燃料電池スタックの発電電力との相関図である。
上述のように、バッテリー13は、充電率SOCの大小に応じて、燃料電池スタック10から供給された電力によって充電され、又は補機(走行モーター12や負荷14)に電力を供給(放電)する。すなわちバッテリー13の充電率SOCが管理充電率よりも大きいときにはバッテリー13が放電するように燃料電池スタックの電力が低められ、バッテリー13の充電率SOCが管理充電率よりも小さいときにはバッテリー13が充電されるように燃料電池スタックの電力が高められる。
しかしながら、図2に示されるように、バッテリー13が低温状態では、常温状態に比較して充電能力が低いので、燃料電池スタック10の発電電力を、常温状態に比較して低く抑える必要がある。また放電能力が低いので、燃料電池スタック10の発電電力を、常温状態に比較して大きくする必要がある。
したがって、バッテリー13の暖機を早期に完了して常温状態にすることが望ましい。
バッテリー13を暖機するには、バッテリー13の充電放電を繰り返す必要がある。バッテリー13を充電するには燃料電池スタック10の発電電力を上げ、バッテリー13を放電させるには燃料電池スタック10の発電電力を下げる必要がある。
そして、燃料電池スタック10の発電電力を調整するには、カソードライン20を流れて燃料電池スタック10に供給される空気の流量を変動させる必要がある。このとき、コンプレッサーから供給される流量を制御するために、コンプレッサー21の回転速度を変動させては、コンプレッサー21の作動音が変動し、乗員が耳障りに感じて違和感を覚えることがある。
そこで本実施形態では、コンプレッサー21の回転速度が変動しないようにしつつ燃料電池スタック10の発電電力を調整する。
以下では具体的な手法について説明する。
図3は、本発明による燃料電池システムの制御装置のコントローラーが実行する制御フローチャートである。なおコントローラーは、微小時間(たとえば10ミリ秒)ごとにこのフローチャートを繰り返し実行する。
ステップS1においてコントローラーは、燃料電池スタック10に供給する空気量を演算する。具体的な内容は後述する。
ステップS2においてコントローラーは、バッテリー13の温度を検出する。この温度は、バッテリー13に温度センサーを取り付けて直接検出してもよいし、気温や放置時間に基づいて推定(間接的に検出)してもよい。
ステップS3においてコントローラーは、バッテリー13の暖機が必要であるか否かを判定する。具体的には、バッテリー13の温度が、暖機の必要性を判定するための閾値(所定温度)よりも低いか否かを判定する。コントローラーは、判定結果が肯であればステップS4へ処理を移行し、判定結果が否であればステップS5へ処理を移行する。なお、暖機の必要性を判定するための閾値(所定温度)は、予め実験と通じて設定しておけばよい。
ステップS4においてコントローラーは、バッテリーの暖機運転を実行する。具体的な内容は後述する。
ステップS5においてコントローラーは、通常運転を実行する。なお通常運転は、一般的な運転であるので、詳細な説明は省略される。
図4は、燃料電池スタックに供給する空気量を演算する機能をブロック図として表したものである。
なお以下のブロック図に示される各ブロックは、コントローラーの各機能を仮想ユニットとして示すものであり、各ブロックは物理的な存在を意味しない。
ブロックB101は、シフトレンジ、アクセルペダル操作量及び車速に基づいて、走行電力を演算する。具体的には、予め準備された複数のマップのなかから現在のシフトレンジに対応したマップが選択される。そしてそのマップにアクセルペダル操作量及び車速が適用されて、走行に必要な燃料電池スタックの発電電力(走行電力)が演算される。
ブロックB102は、バッテリー充電率SOCに基づいて要求される燃料電池スタック10の発電電力を演算する。
ブロックB103は、補機負荷の消費電力、ブロックB101で演算された走行電力及びブロックB102で演算された発電電力を加算して、目標発電電力を求める。
ブロックB104は、ブロックB103で演算された目標発電電力に基づいて燃料電池スタック10に供給する空気量を演算する。
以上のようにして、フローチャートのステップS1における処理が実行される。
図5は、バッテリー暖機運転のサブルーチンを示す図である。
ステップS41においてコントローラーは、バッテリー充電率が第1管理充電率よりも小であるか否かを判定する。コントローラーは、判定結果が否であればステップS42へ処理を移行し、判定結果が肯であればステップS45へ処理を移行する。
ステップS42においてコントローラーは、バッテリー充電率が第2管理充電率よりも大であるか否かを判定する。コントローラーは、判定結果が否であればステップS43へ処理を移行し、判定結果が肯であればステップS44へ処理を移行する。なお第1管理充電率及び第2管理充電率の詳細については、後述する。
ステップS43においてコントローラーは、現在放電モードであるか否かを判定する。コントローラーは、判定結果が肯であればステップS44へ処理を移行し、判定結果が否であればステップS45へ処理を移行する。
ステップS44においてコントローラーは、放電モードを実行する。
ステップS45においてコントローラーは、充電モードを実行する。
図6は、バッテリー暖機運転のサブルーチンの実行結果を示す図である。
なお図5のフローチャートとの対応が分かりやすくなるように、図5のステップ番号を併記する。
バッテリー充電率SOCが、第1管理SOCよりも大であるが第2管理SOCよりも小であって、現在放電モードであるとする。
バッテリー充電率SOCが下がって第1管理SOCよりも小になったら、ステップS41→S45が処理され、充電モードが実行される。バッテリー充電率SOCが第1管理SOCよりも小である間は、ステップS41→S45が処理され、充電モードが実行される。
バッテリー充電率SOCが上がって、第1管理SOCよりも大になっても第2管理SOCよりも小であるときは、ステップS41→S42→S43→S45が処理され、充電モードが継続される。
バッテリー充電率SOCが第2管理SOCよりも大になったら、ステップS41→S42→S44が処理され、放電モードが実行される。
バッテリー充電率SOCが下がって、第2管理SOCよりも小になっても第1管理SOCよりも大であるときは、ステップS41→S42→S43→S44が処理され、放電モードが継続される。
バッテリー暖機運転では、以上が実行される。
図7はバッテリー充電率に対するバッテリーの内部抵抗についてバッテリー温度ごとに示す図であり、図7(A)は放電時を示し、図7(B)は充電時を示す。
放電時のバッテリー充電率SOCに対するバッテリーの内部抵抗は、図7(A)に示されるように、バッテリー充電率SOCが小さいほど、バッテリーの内部抵抗が大きくなる。またバッテリー充電率SOCが同一である場合で比較すると、温度が低温であるほど、バッテリーの内部抵抗が大きくなる。
充電時のバッテリー充電率SOCに対するバッテリーの内部抵抗は、図7(B)に示されるように、バッテリー充電率SOCが大きいほど、バッテリーの内部抵抗が大きくなる。またバッテリー充電率SOCが同一である場合で比較すると、温度が低温であるほど、バッテリーの内部抵抗が大きくなる。
このようにバッテリーは、放電時と充電時とで内部抵抗が相違するという特性がある。
図8は、ある温度におけるバッテリー充電率に対するバッテリーの内部抵抗の特性を示す図である。
なお左上がりの実線は、バッテリー温度が低いとき(暖機が必要)の放電時の特性を示す。右上がりの実線は、バッテリー温度が低いとき(暖機が必要)の充電時の特性を示す。左上がりの破線は、バッテリー温度が常温(暖機が不要)での放電時の特性を示す。右上がりの破線は、バッテリー温度が常温(暖機が不要)での充電時の特性を示す。
上述のように、バッテリーは、放電時と充電時とで内部抵抗が相違するという特性がある。暖機が完了した後の通常運転では、充電能力よりも放電能力を重視して、放電時の内部抵抗ができるだけ小さくなるように、大きめの管理SOCが設定されることが多い。このように設定されれば、バッテリーが放電しやすくなる。ただし、管理SOCが大き過ぎれば、バッテリーを充電しにくくなる。そこで、両者のバランスで管理SOCが設定される。
これに対して、本実施形態では、バッテリーの放電時の内部抵抗と充電時の内部抵抗がほぼ同じになるように、暖機運転での管理SOCを設定する。このようにする理由は、以下である。すなわち、仮に、通常運転での管理SOCのまま暖機運転する場合を考える。バッテリーの内部抵抗が大きい方が、発熱しやすいので、バッテリーの暖機には好適であるようにも思える。ところが、通常運転での管理SOCのまま充電しようとしても、内部抵抗がAという非常に高い値になるので、非常に高い電圧をかけなければ、バッテリーを充電できない。しかしながら、電圧は、バッテリー保護システムの機能によって制限されるので、あまり高い電圧をかけることはできない。
これに対して、本実施形態では、上述のように、バッテリーの放電時の内部抵抗と充電時の内部抵抗がほぼ同じになるように、暖機運転での管理SOCを設定する。
このようにすることで、充電時の内部抵抗は、通常運転での管理SOCのまま充電する場合の内部抵抗Aよりも低くなる。したがって、あまり高くない電圧でバッテリーを充電することができる。
また放電時の内部抵抗は、通常運転での管理SOCのまま充電する場合の内部抵抗Bよりも高くなる。したがって、放電時にも発熱しやすくなり、暖機が促進される。なお放電時の内部抵抗が高くなりすぎると、補機に供給すべき電力が不足する可能性がある。そこで、この点を考慮すると、バッテリーの放電時の内部抵抗は、充電時の内部抵抗とほぼ同じである程度が好ましいと言うことが発明者らの知見である。
このように、バッテリーの放電時の内部抵抗と充電時の内部抵抗がほぼ同じになるように暖機運転での管理SOCを設定して、充電放電を繰り返すことで、充放電電力の実行値が向上し、暖機効率が高まるのである。
このように、本実施形態では、暖機運転での管理SOC(第1管理SOC及び第2管理SOC)を、通常運転での管理SOC(第1管理SOC及び第2管理SOC)よりも小さく設定することで、暖機効率が高まるのである。
特に、暖機運転での管理SOC(第1管理SOC及び第2管理SOC)を、バッテリーの放電時の内部抵抗と充電時の内部抵抗がほぼ同じになるように設定することで、放電時の内部抵抗が高くなりすぎることなく、バランスよく暖機効率を高めることができる。
なお暖機が完了した後は、放電時の内部抵抗が充電時の内部抵抗よりも小さい通常運転での管理SOCに変更される。これによって充電能力よりも放電能力が優先されることとなり、バッテリーの放電能力が高まるのである。
図9は、バッテリー暖機運転におけるブリード空気量を演算する機能をブロック図として表したものである。
ブロックB401は、モードに応じた燃料電池スタック10への供給空気量をコンプレッサー21の下限流量から減算する。コンプレッサー21は、供給流量が過小になると、サージするおそれがある。コンプレッサー21の下限流量とは、そのような事態を生じさせない最低流量である。燃料電池スタック10に供給する空気量がコンプレッサー21の下限流量よりも多ければ、ブロックB401は、負値を出力する。燃料電池スタック10に供給する空気量が少なく、コンプレッサー21の下限流量を下回っていれば、ブロックB401は、正値を出力する。
ブロックB402は、ブロックB401の出力結果が正値であれば、そのまま出力し、負値であればゼロを出力する。
ブロックB403は、モードに応じた燃料電池スタック10への供給空気量から、発電で消費される流量を減算する。これによって燃料電池スタック10で発電に消費されることなく排出される空気量が出力される。
ブロックB404は、燃料電池スタック10で発電に消費されることなく排出される空気量を、希釈要求空気量から減算する。パージ弁34が開くと、アノードガスH2が排出される。このアノードガスH2を希釈するのに必要な空気量が希釈要求空気量である。燃料電池スタック10で発電に消費されることなく排出される空気量が、希釈要求空気量よりも多ければブロックB404は、負値を出力する。燃料電池スタック10で発電に消費されることなく排出される空気量が、希釈要求空気量よりも少なければブロックB404は、正値を出力する。
ブロックB405は、ブロックB404の出力結果が正値であれば、そのまま出力し、負値であればゼロを出力する。
ブロックB406は、モードに応じた燃料電池スタック10への供給空気量を、バッテリー暖機運転時にコンプレッサー21が供給する空気量から減算する。なおバッテリー暖機運転時にコンプレッサー21が供給する空気量は、燃料電池スタック10に供給する空気量よりも大きな一定値であり、ブロックB406は、正値を出力する。
ブロックB407は、通常は、ブロックB406の出力結果が正値であるので、そのまま出力する。ただし、何らかの異常があって、万一、ブロックB406から負値が出力されていれば、ブロックB407は、ゼロを出力する。
ブロックB408は、ブロックB402の出力とブロックB405の出力とブロックB407の出力とを比較し、最も大きいものをブリード空気量として出力する。
図10は、第1実施形態のバッテリー暖機運転における作動を説明する図である。
バッテリー暖機運転では、コンプレッサー21から一定の暖機運転空気量が供給される。この暖機運転空気量は、放電モード、充電モードにかかわらず、一定値である。
そして、燃料電池スタックの目標発電電力を発電するのに必要な流量(FCスタック供給空気量)を越える余剰の空気がブリードラインに流される。すなわち、燃料電池スタックに供給される空気量は、ブリード空気量の多少によって調整される。
図11は、第1実施形態のバッテリー暖機運転における作動を説明するタイムチャートである。
上述のように、燃料電池システムでは、バッテリー13の暖機を早期に完了すべく、バッテリー13の充電放電を繰り返す。バッテリー13を充電するには燃料電池スタック10の発電電力を上げ、バッテリー13を放電させるには燃料電池スタック10の発電電力を下げる必要がある。
このとき、コンプレッサーから供給される流量を制御するために、コンプレッサー21の回転速度を変動させては、コンプレッサー21の作動音が変動し、乗員が耳障りに感じて違和感を覚えることがある。
そこで、本実施形態では、一定量の音振モード空気量をコンプレッサー21から供給するようにした。すなわちコンプレッサー21の回転速度を一定に維持するようにしたのである。そしてブリード空気量を調整することで、燃料電池スタックに供給する空気量を調整するようにしたのである。
このようにすることで、本実施形態では、コンプレッサー21の回転速度を一定に維持されるので、コンプレッサー21の作動音が変動せず、乗員に違和感を感じさせないのである。
また本実施形態では、バッテリー充電率が第1管理値よりも小さければ放電モードから充電モードに切り替え、バッテリー充電率が第2管理値よりも大きければ充電モードから放電モードに切り替える。このようにしたので、モードが頻繁に変わりすぎてしまうことを防止できるのである。
(第2実施形態)
図12は、第2実施形態のバッテリー暖機運転における作動を説明するタイムチャートである。
ブリード弁の作動が非常に迅速であれば、第1実施形態の図11に示されるようにブリード空気流量及び燃料電池スタックへの供給空気流量を瞬時に切り替えることができる。
しかしながら、ブリード弁がある程度の作動時間を要するときには、この点を考慮する必要がある。この点を考慮することなく、燃料電池スタックに対する要求発電電力を上げてしまうと、反応ガス(カソードガスO2、アノードガスH2)が不足した状態に陥る可能性がある。これはスタベーションと呼ばれる状態であり、電解質膜を劣化させてしまうおそれがある。
そこで本実施形態では、放電モードから充電モードに切り替えるときには(すなわち燃料電池スタックに対する要求発電電力が上がるときには)、ブリード弁の応答時間よりも、充電モード時間が長くなるように、SOCヒス幅(すなわち第1管理SOCと第2管理SOCとの差)を設定する。そして、ブリード弁がスタック側に変わってから燃料電池スタックに対する要求発電電力を上げるようにする。
このようにすることで、燃料電池スタックのスタベーション状態を回避することができる。
なお充電モードから放電モードに切り替えるときには(すなわち燃料電池スタックに対する要求発電電力が下がるときには)、スタベーションにはならない。そこでこのときには、バッテリーの暖機を優先してすぐに燃料電池スタックに対する要求発電電力を下げてもよい。ただしブリード弁の応答速度が遅い分、余計に空気が燃料電池スタックに供給されるので、電解質膜の湿潤状態などを考慮して適宜決めればよい。
(第3実施形態)
図13は、第3実施形態のバッテリー暖機運転におけるブリード空気量を演算する機能をブロック図として表したものである。
第1実施形態では、バッテリー暖機運転においては、常に一定量の空気をコンプレッサー21から供給した。これに対して本実施形態では、ブロックB4001においてバッテリー温度に応じてコンプレッサー21が供給する空気量を変更する。具体的には、バッテリー温度が低いほどコンプレッサー21が供給する空気量を増やす。
そしてブロックB406は、ブロックB4001で設定された空気量から、モードに応じた燃料電池スタック10への供給空気量を減算する。それ以外のブロックは、第1実施形態(図9)と同様である。これによってブリード空気量が出力される。なお上述のようにバッテリー温度が低いほどコンプレッサー21が供給する空気量が増やされているので、その分ブリード空気量も増やされる。
このようにすることで、バッテリー温度が低いほどコンプレッサー21が供給する空気量が多くなる。この結果、コンプレッサー21によって消費される電力が多くなる。するとバッテリーの放電許容電力が増加するので、充電放電の電力実行値を増加させることができる。これによってバッテリーの暖機時間を短縮できるのである。
またコンプレッサー21が供給する空気量が多くなる分、ブリード空気量も増やす。これによって過剰な空気が燃料電池スタック10に供給されることを回避できるのである。
(第4実施形態)
図14は、第4実施形態の充電目標電力を演算する機能をブロック図として表したものである。
本実施形態では、バッテリーの温度が低いほど、充電目標電力を低く設定する。具体的には以下のようにして充電目標電力を設定する。
ブロックB701は、バッテリー充電率SOC及びバッテリー温度に応じてバッテリー充電可能電力を演算する。なおバッテリー充電可能電力は、バッテリー充電率SOCが小さいほど大きく、かつバッテリー温度が高いほど大きく演算される。
ブロックB702は、バッテリー温度に基づいて補正係数を演算する。なお補正係数は、バッテリー温度が低いほど小さく演算される。
ブロックB703は、バッテリー充電可能電力に補正係数を乗算して充電目標電力を演算する。
充電目標電力を低く設定すれば、バッテリー充電時に電圧が過上昇することを防止できる。これによって、より確実に過電圧を回避しつつ、バッテリーを暖機できる。また充電目標電力を低く設定することで、バッテリーの充電放電サイクルを短くでき、多くのサイクルを実行できる。したがって、バッテリーの温度が低いほど、充電目標電力を低く設定することで、バッテリーに過大な負荷をかけることなく、暖機を促進できるのである。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
たとえば、上記実施形態においては、バッテリー充電率が第1管理値よりも小さければ放電モードから充電モードに切り替え、バッテリー充電率が第2管理値よりも大きければ充電モードから放電モードに切り替える。すなわち、充電モード放電モードを切り替える基準値(管理値)は、2つであった。しかしながら、第1管理値及び第2管理値を同一として1つの管理値に基づいて充電モード放電モードを切り替えてもよい。このようにしても相応の効果は得られる。
また上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。
10 燃料電池スタック(燃料電池)
11 DC/DCコンバーター
12 走行モーター(補機)
13 バッテリー
14 負荷(補機)
20 カソードライン
21 コンプレッサー(酸化剤供給機)
22 WRD(Water Recovery Device)
23 カソード調圧弁
200 ブリード通路(バイパス通路)
210 ブリード弁(バイパス流量調整機)

Claims (9)

  1. 燃料電池と、バッテリーと、酸化剤供給機と、酸化剤供給機から燃料電池へ供給する酸化剤をバイパスさせるバイパス通路と、バイパス流量調整機とを備えた燃料電池システムを制御する装置において、
    所定のSOC範囲となるように、前記バッテリーの充放電を行う充放電量制御手段と、
    前記バッテリーの充放電量を考慮して前記燃料電池の要求発電量を決定する要求発電量設定手段と、
    前記要求発電量に基づいて酸化剤を供給する酸化剤供給量制御手段とを備え、
    バッテリー暖機時において、
    前記酸化剤供給量制御手段は、所定量の酸化剤が供給されるように前記酸化剤供給機を制御するとともに、前記要求発電量に基づいて前記バイパス流量調整機を制御する、
    燃料電池システムの制御装置。
  2. 請求項1に記載の燃料電池システムの制御装置において、
    前記酸化剤供給量制御手段は、バッテリー暖機時に、前記バッテリーの充電率が管理値よりも小さいときにはバイパス流量を大きくし、バッテリーの充電率が管理値よりも大きいときにはバイパス流量を小さくする、
    燃料電池システムの制御装置。
  3. 請求項2に記載の燃料電池システムの制御装置において、
    前記管理値は、バッテリーを暖機する必要がある場合には、バッテリーを暖機する必要がない場合よりも小さい、
    燃料電池システムの制御装置。
  4. 請求項3に記載の燃料電池システムの制御装置において、
    前記管理値は、バッテリーの暖機完了後は、バッテリーの暖機中よりも大きな値に変更される、
    燃料電池システムの制御装置。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の燃料電池システムの制御装置において、
    前記酸化剤供給量制御手段は、バッテリー暖機時に、前記バッテリーの充電率が第1の管理値よりも小さいときにはバイパス流量を大きくし、バッテリーの充電率が、前記第1の管理値よりも大である第2の管理値よりも大きいときにはバイパス流量を小さくする、
    燃料電池システムの制御装置。
  6. 請求項5に記載の燃料電池システムの制御装置において、
    前記第1の管理値及び前記第2の管理値は、前記バッテリーの充電率が前記第1の管理値から前記第2の管理値まで変化する時間が前記バイパス流量調整機の応答時間よりも長くなるように、設定される、
    燃料電池システムの制御装置。
  7. 請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の燃料電池システムの制御装置において、
    前記酸化剤供給量制御手段は、前記バッテリーの温度が低いほど、多量の酸化剤が供給されるように前記酸化剤供給機を制御する、
    燃料電池システムの制御装置。
  8. 請求項7に記載の燃料電池システムの制御装置において、
    前記酸化剤供給量制御手段は、前記バッテリーの温度が低いほど、バイパス流量を大きくする、
    燃料電池システムの制御装置。
  9. 請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の燃料電池システムの制御装置において、
    前記バッテリーの温度が低いほど、バッテリーの充電目標電力を小さく設定する設定部をさらに備える、
    燃料電池システムの制御装置。
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