JP2014217632A - 生体内流路形成誘導材 - Google Patents

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伊藤  博
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Abstract

【課題】生体内に挿入した場合に、組織内を貫通する流路として機能する組織間隙腔の形成を人工的に誘発して、リンパ液等の組織液の流れを改善させることが可能な生体内流路形成誘導材を提供する。【解決手段】組織非接着性を持った表面を有する紐状物であり、生体内に挿入した場合に、表面と周囲組織との間に、その長手方向に沿って生体内流路が形成される生体内流路形成誘導材であり、例えば、人工リンパ管、人工尿管、人工卵管、人工唾液管、人工精管、人工涙管、人工脊髄液管、又は人工排液管の形成誘導材として使用される。【選択図】図1

Description

本発明は、生体内に挿入した場合に、その表面と周囲組織との間にリンパ液等の体液が流通しうる生体内流路が形成される生体内流路形成誘導材に関する。
身体の中には様々な種類の液体が流れており、ある種の液体は極めて少量であっても常に流れる必要があり、流れが阻害されるとトラブルが発生する。例えば、前眼房水は眼の隅角から眼球外に常に微量流れ出ている。しかし、前眼房水の流れが阻害されると眼圧が上昇して緑内障となる。血管のような大きな管のトラブルについてはパイパス手術等が施され、高い成果が得られている。しかし、前眼房水のような微量の体液の流れについては手術的な処置が不可能な場合が多い。
また、リンパ管閉塞によるリンパ浮腫は、リンパ節の切除後に発症することが多い。リンパ浮腫が発症すると長期間にわたって腕や脚が太くなるが、生命に直接的な影響がないこのような体液路障害は多くの場合放置されており、有効な治療手段は開発されていない。
腋窩リンパ節やソケイ部リンパ節が、外傷、手術、或いは放射線治療等で障害を受けた場合、リンパ管の閉塞や狭窄によって四肢にリンパ浮腫を生じさせることがある。リンパ浮腫の治療法としては、リンパ管を血管に吻合するリンパ管細静脈吻合術(lymphaticovenular anastomosis(以下、「LVA」と略す))がある。しかしながら、このLVAは特殊技術を持った外科医でなくては実施することができないのが実情である。
また、LVAを受けた患者及びLVAを受けなかった患者のいずれも、マッサージを受けることで浮腫の軽減を図っている。しかしながら、四肢から体幹部へのリンパ液路に障害を有するためにリンパ浮腫は次第に進行してしまい、マッサージの施行量に比例した浮腫軽減効果を得るのは困難である。さらに、弾性包帯や医療用ストッキングの着用による軽減措置も施されるが、十分な効果は得られていない(非特許文献1)。
なお、物理的な刺激等を与えることで、マッサージと同じ効果が得られることが知られている(特許文献1及び2)。また、リンパ壁の細胞によって管腔を形成するように作用する細胞誘導因子或いは細胞が生着しやすいマトリックスを用いて、リンパ管の形成を誘導する技術が開発されている(特許文献3)。
特表平11−501828号公報 特表2006−528889号公報 特開2003−180818号公報
「リンパ学」,Vol.35,No.1,p.51−55(2012)
しかしながら、特許文献1及び2において提案された方法では、リンパ液路自体が障害を受けているために完治することは困難である。また、特許文献3で提案された技術であっても、長期的に良好な成果は得られていない。
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、生体内に挿入した場合に、組織内を貫通する流路として機能する組織間隙腔の形成を人工的に誘発して、リンパ液等の組織液の流れを改善させることが可能な生体内流路形成誘導材を提供することにある。
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、組織非接着性等の特性を持った表面を有する紐状物を用いることによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、以下に示す生体内流路形成誘導材が提供される。
[1]組織非接着性を持った表面を有する紐状物であり、生体内に挿入した場合に、前記表面と周囲組織との間に、その長手方向に沿って生体内流路が形成される生体内流路形成誘導材。
[2]生体に対してステルス性を有する前記[1]に記載の生体内流路形成誘導材。
[3]生体内に挿入した場合に、周囲組織が実質的にカプセル化しない前記[1]又は[2]に記載の生体内流路形成誘導材。
[4]生体内に挿入した場合に、周囲組織の表面が細胞によって実質的に被覆されない前記[1]〜[3]のいずれかに記載の生体内流路形成誘導材。
[5]前記表面が、細胞非接着性、線維素非接着性、ファイブロネクチン非接着性、及びタンパク質非吸着性のいずれかの特性をさらに持つ前記[1]〜[4]のいずれかに記載の生体内流路形成誘導材。
[6]紐状物本体と、前記紐状物本体の表面に固定されたプラスミン剤、抗トロンビン剤、抗凝固剤、血栓溶解剤、ヘパリン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、保湿剤、及び保水剤からなる群より選択される少なくとも一種とを備える前記[1]〜[5]のいずれかに記載の生体内流路形成誘導材。
[7]管、繊維製物、中空糸、又は割管である前記[1]〜[6]のいずれかに記載の生体内流路形成誘導材。
[8]多孔質である前記[1]〜[7]のいずれかに記載の生体内流路形成誘導材。
[9]人工リンパ管、人工尿管、人工卵管、人工唾液管、人工精管、人工涙管、人工脊髄液管、又は人工排液管の形成誘導材として使用される前記[1]〜[8]のいずれかに記載の生体内流路形成誘導材。
本発明の生体内流路形成誘導材は、生体内に挿入した場合に、組織内を貫通する流路として機能する組織間隙腔の形成を人工的に誘発して、リンパ液等の組織液の流れを改善させることが可能なものである。このため、本発明の生体内流路形成誘導材を、例えば、リンパ浮腫の状態にある組織を含む生体内に挿入すれば、人工リンパ管として機能しうる組織間隙腔の形成を誘発し、リンパ液の流れを改善させることができる。なお、マッサージ等の処置を併用することによってリンパ浮腫等の症状を軽減させることができる。
本発明の一実施形態である生体内流路形成誘導材をリンパ浮腫組織内に挿入した場合の例を示す顕微鏡写真である。 実施例1で作製した生体内流路形成誘導材(ヘパリン化紐状物)を用いて処置したイヌのX線写真である。 実施例1で作製した生体内流路形成誘導材(ヘパリン化紐状物)を用いて処置したイヌのX線写真(図2の部分拡大写真)である。 比較例1のポリウレタンチューブ(紐状物)を用いて処置したイヌのX線写真である。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の生体内流路形成誘導材は、組織非接着性を持った表面を有する紐状物であり、生体内に挿入した場合に、表面と周囲組織との間に、その長手方向に沿って生体内流路が形成されるものである。以下、その詳細について説明する。
本発明の生体内流路形成誘導材は、例えば、リンパ浮腫を発症した組織内に組織非接着性の紐状物を挿入すると、紐状物と周囲組織との間に紐状物の長手方向に沿って間隙が形成されること、及び紐状物が生体にとってステルス性を有するものであれば紐状物の周囲がカプセル化されないことを見出し、完成されたものである。ここで、ステルス性とは、生体内においてその存在が生理的に認識されない特性をいい、生体内で細胞が異物と認識することなく共存しうる性質を意味する。
生体内では、一般的に、毒性を有しないが細胞に貪食されない(又は貪食されにくい)異物が埋入された場合、その周囲をカプセル組織で取り囲む異物処理が行われる。例えば、医療材料として多用されているシリコーンチューブは、異物反応が生じない。このため、シリコーンチューブを生体内に挿入すると、シリコーンチューブを取り囲むように線維芽細胞が集まり、細胞線維性の瘢痕組織様のカプセル組織が形成される。これにより、生体はシリコーンチューブを隔離した状態とする。
シリコーンチューブとカプセル組織との間には隙間が形成される。しかしながら、カプセル組織がしっかりしているため、周囲に存在するリンパ液等の組織液はシリコーンチューブに近づくことができず、リンパ液はシリコーンチューブとカプセル組織との間に形成される間隙に入り込むことができない。このため、一般的なシリコーンチューブを生体内に挿入しても、組織内を貫通する流路として機能しうる組織間隙腔の形成を誘発することはない。
これに対して、本発明の生体内流路形成誘導材は、細胞毒性や異物反応を示さないだけでなく、生体に対するステルス性を有するため、生体内に存在させた場合であっても認識されにくいといった特性を有する。このため、生体内に挿入された場合であっても、その周囲に瘢痕組織様のカプセル組織が実質的に形成されることがない。したがって、本発明の生体内流路形成誘導材は、生体内に挿入した場合であっても周囲組織が実質的にカプセル化することなく存在する。例えば、本発明の生体内流路形成誘導材を、リンパ浮腫を発症した組織内に挿入した場合には、組織液内に浮かんだ状態となる。このとき、生体内流路形成誘導材(紐状物)の長手方向に沿ってリンパ液等の生体内流路として機能しうる間隙が形成されるので、マッサージ等の圧力を付与すれば間隙内をリンパ液が流れることになる。このようにリンパ路等の生体内流路の形成が誘導される仕組み(生体内流路形成誘導)は、従来存在していなかった。
生体内に挿入されたステルス性を有する紐状物の周囲組織は実質的にカプセル化しないため、周囲組織の表面に細胞が敷き詰められて被覆されるような状態にはならない。一方、特許文献3には、生体組織内に紐状物を挿入することによって細胞が露出した組織管を形成させ、形成された管を血管として活用する技術が提案されている。特許文献3に記載の技術と、本発明とを対比すると、生体組織内に紐状物が挿入される点において類似するが、本発明においては紐状物の周囲組織を実質的にカプセル化させない点において、周囲に細胞が露出した組織管を意図的に形成しようとする特許文献3に記載の技術と相違する。
特許文献3に記載されているような周囲に細胞が露出した組織管が形成されると、間隙が確保される一方で、その間隙はリンパ浮腫状態等の周囲の組織から隔絶されることになるため、リンパ液等の組織液を間隙内に呼び込むことは困難になる。これに対して、本発明の生体内流路形成誘導材を生体内に挿入した場合には、周囲組織が実質的にカプセル化しないために、紐状物の長手方向のいずれの位置においても形成される間隙はリンパ浮腫状態等の周囲の組織と繋がることになる。このため、周囲に溢れているリンパ液等の組織液は、紐状物の長手方向のいずれの位置からでも容易に間隙に流れ込むことができる。
本発明の生体内流路形成誘導材は紐状物であり、その太さは0.01〜5mmであることが好ましい。また、本発明の生体内流路形成誘導材の長さは、10〜1000mmであることが好ましい。生体内流路形成誘導材は、管、繊維からなる糸や紐等の繊維製物、中空糸、又は割管であってもよい。なお、紐状物の表面積が広くなれば、紐状物の長手方向に沿って形成される間隙も広がるために好ましい。また、紐状物が、繊維からなる組紐、撚り紐、又は帯であれば、表面積が広くなるために好ましく、また、組織非接着性物質を固定して被覆する等、その表面に組織非接着性を持たせやすくなるために好ましい。
本発明の生体内流路形成誘導材の形状が管状であれば、管の外表面と周囲組織との間に間隙が形成されるとともに、管の内側もリンパ液等の組織液の流路として活用可能となるために好ましい。さらに、微細な孔が多数形成された中空糸は、怒張したリンパ管内に挿入することも可能になる等、リンパ液等の組織液の流路を確保するのにより効果的である。
紐状物が生体に対するステルス性を有するか否かについては、動物実験を行うことで確認することができる。家兎又はイヌの皮下組織内に滅菌した紐状物を無菌清潔状態で挿入して経過を観察する。3週間経過後に周囲組織を含めて紐状物を取り出し、紐状物を含んだまま周囲組織をホルマリンで固定した後、樹脂包埋する。ガラスナイフで作製した切片をヘマトキシリンエオジン染色又はメイギームザ染色して組織切片を作製し、40〜200倍の倍率で光学顕微鏡観察することで容易に判別することができる。なお、ラットは人工物挿入に対する組織反応が低いので、動物実験には家兎又はイヌを使用することが好適である。
採取した周囲組織をホルマリンで固定する際には、生理的な浸透圧のバッファー液を使用することが好ましい。また、包埋にはパラフィンを使用しないことが好ましい。パラフィンを使用すると、包埋過程で組織を40℃以上に加熱する必要があり、熱で組織が収縮して紐状物と周囲組織との間に亀裂が入る可能性があるためである。このため、加熱工程を要しない親水性の樹脂で包埋することが好ましい。樹脂包埋に好適に用いられる親水性の樹脂の具体例としては、Heraeus Kulzer GmbH,Wehrheim製の組織検査用包埋樹脂(商品名「Technovit7100」)等を挙げることができる。なお、ガラスナイフを使用して作製する切片の厚みは、3μm程度とすればよい。
紐状物が生体に対するステルス性を有する場合、紐状物の周囲には結合組織の厚い層が形成されず、機械的刺激が結合組織形成を促すことがあっても、線維芽細胞層は50層未満であり、コラーゲン線維層は50ミクロン未満である。すなわち、紐状物が生体に対するステルス性を有するのであれば、機械的刺激に対する単純な生体反応のみが生ずる。
例えば、生体内に挿入したシリコーンチューブの周囲には結合組織層が形成される。組織切片を作製して観察すると、線維芽細胞層は50層以上であり、線維芽細胞の周囲に層をなして重なったコラーゲン線維層の厚みは50μm以上となる。シリコーンチューブに面するコラーゲン線維層の最内層には、細胞も露出することがある。
紐状物の周囲に形成される結合組織層を上述の手法に従って観察した場合、形成される線維芽細胞層が、好ましくは50層未満、さらに好ましくは30層以下であれば、その紐状物は生体に対するステルス性を有すると判断することができる。周囲組織と紐状物との間に形成される間隙の幅がどの程度であればリンパ液等の流路として機能するか否かについては、上述の手法で作製した組織片を顕微鏡観察することで判断することができる。なお、組織片を作製する際には、その長手方向軸と直交するように紐状物を切断すればよい。10μm以上の幅を有する間隙が紐状物の周囲の少なくとも一部に形成されていれば、リンパ液等の組織液が流通しうる。リンパ液が生理的に流通しうるリンパ管の太さは詳細には明らかにされていない。但し、毛細血管の場合、10μm以上の太さであれば血液が通過しうることを考慮すると、リンパ管についても血管と同様に10μm以上の太さであればよいと推測される。また、マッサージ等によって圧力差が生ずれば、リンパ液等の組織液は間隙をより移動しやすくなると考えられる。
図1は、本発明の一実施形態である生体内流路形成誘導材をリンパ浮腫組織内に挿入した場合の例を示す顕微鏡写真である。図1においては、紐状物である生体内流路形成誘導材1をその長手方向軸と直交するように切断した断面が示されている。図1に示すように、リンパ浮腫組織内に挿入された生体内流路形成誘導材1の周囲には線維芽細胞2の層が形成されている。また、線維芽細胞2の層の周囲には膠原繊維(コラーゲン線維)3の層が形成されているとともに、生体内流路形成誘導材1の長手方向に沿って連続した長い間隙4が形成されている。リンパ液等の組織液は、形成された間隙4内を流通することができる。
本発明の生体内流路形成誘導材は、周囲組織との接着を防ぐことで紐状物の長手方向に沿って生体内流路として機能しうる間隙を形成する。このため、本発明の生体内流路形成誘導材の表面は、細胞非接着性、線維素非接着性、ファイブロネクチン非接着性、及びタンパク質非吸着性のいずれかの特性をさらに持つことが好ましい。具体的には、本発明の生体内流路形成誘導材は、紐状物本体と、紐状物本体の表面に固定されたプラスミン剤、抗トロンビン剤、抗凝固剤、血栓溶解剤、ヘパリン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、保湿剤、及び保水剤からなる群より選択される少なくとも一種とを備えることが好ましい。さらには、紐状物本体の表面にポリエチレングリコールをグラフト重合させる、紐状物本体の表面をポリアクリルアミドで被覆する、或いは紐状物本体の表面にトロンボモジュリン、組織プラスミノーゲンアクティベーター、又はヘパリン等を固定化することで、細胞、組織、タンパク質、及びファイブロネクチン等が付着しにくくなる。
紐状物本体の材質は、生体内留置が可能であるとともに細胞毒性を有しない医療材料であれば特別に限定されない。紐状物本体の表面を上述の薬剤や物質等で被覆する、或いは紐状物本体に上述の薬剤や物質等を含有させて徐放出させること等により、組織や細胞の接着がより有効に抑制されてステルス性が発揮される。
紐状物本体の材質としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、セルロース、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、塩化ビニール、ポリウレタン、セルローストリアセテート、ポリメチルメタクリレート、ポリスルフォン系樹脂、シルク、ポリビニルアルコール、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の生体内非吸収性材料を用いることが好ましい。なお、機械的刺激によってステルス性が低下する可能性もあるので、紐状物本体は可能な限り生体組織に近い柔軟性を有することが好ましい。
また、ポリグラクチン、ポリグリコース酸、ポリジオキ酸、ポリ乳酸、ポリグリコネート、アルギン酸、及びこれらのいずれかを構成単位として含む共重合体からなる群より選択される生体内吸収性材料を紐状物本体の材質として使用することも可能である。但し、生体内吸収性材料を使用する場合には、これらの材料が分解吸収される際に集まった無数のマクロファージが多量の細胞成長因子を放出し、それによって周囲が瘢痕組織化する可能性がある。このため、徐々に分解吸収されるような工夫と材料選択をすることが好ましい。なお、LVAに際して、本発明の生体内流路形成誘導材を毛細静脈とリンパ管に貫通させた後に吻合することにより、縫合を容易にすることができる。さらには、リンパ液の流路も形成されるので、LVAの成功率を高めることができる。
本発明の生体内流路形成誘導材は多孔質であってもよい。多孔質である場合における孔のサイズは30μm以下であることが好ましい。生体内流路形成誘導材がこのような径の孔を有する多孔質であると、細胞が入りにくく、かつ、リンパ液等の組織液が流れやすくなる。特に、中空糸である場合には、組織液が管の途中からでも流れ得るために好ましい。
以上、本発明の生体内流路形成誘導材を人工リンパ管の形成誘導材として使用される場合を中心に説明した。但し、本発明の生体内流路形成誘導材は、人工リンパ管の形成誘導材としてだけでなく、例えば、人工尿管、人工卵管、人工唾液管、人工精管、人工涙管、人工脊髄液管、又は人工排液管の形成誘導材としても好適に使用することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
<実施例1−1>
特開昭63−119773号公報及び特公平6−24592号公報に記載された、4級アンモニウム塩を有する塩基性化合物とヘパリンとのイオン結合複合体を調製する手法に準じ、外径2mmのポリウレタンチューブの表面(外周面)にヘパリンを固定してヘパリン化紐状物を作製した。作製したヘパリン化紐状物(長さ20cm)を、皮下組織内を貫通させるようにイヌの膝関節部から臍部にかけて埋入した。3週間経過後に膝関節部皮下組織内に造影剤を注入してマッサージを行った後、X線写真を撮影した。撮影したX線写真を図2及び3に示す。図2及び3に示すように、膝関節部から臍部付近までヘパリン化紐状物を伝って造影剤5が流れていた。このように、本来なら造影されないポリウレタンチューブが、周囲に造影剤が流れ込んだことにより観察可能となったことが分かる。以上より、リンパ液等の組織液が紐状物の表面を伝って流れること、及びヘパリン化紐状物がリンパ路の形成を誘導したことが明らかである。
<実施例1−2>
実施例1−1で作製したヘパリン化紐状物を家兎の背部皮下組織内に埋入し、3週間経過後に周囲組織とともにヘパリン化紐状物を取り出した。ヘパリン化紐状物を含んだまま周囲組織をバッファーホルマリン液で固定し、組織検査用包埋樹脂(商品名「Technovit7100」、Heraeus Kulzer GmbH,Wehrheim製)を用いて樹脂包埋した。ガラスナイフで作製した切片をヘマトキシリンエオジン染色及びメイギームザ染色して組織切片を作製し、40〜200倍の倍率で光学顕微鏡観察した。その結果、ヘパリン化紐状物は周囲組織内でカプセル化されることなく存在しており、周囲組織がヘパリン化紐状物と接する表面には細胞が敷き詰められていないことが分かった。また、周囲組織とヘパリン化紐状物の表面は接着しておらず、20〜30μm幅の間隙が存在していることが確認された。
<実施例1−3>
実施例1−1においてイヌの皮下組織内に埋入したヘパリン化紐状物を周囲組織とともに取り出した。次いで、前述の実施例1−2と同様の手法で組織切片を作製し、光学顕微鏡で観察した。その結果、ヘパリン化紐状物の表面は周囲組織と接着しておらず、20〜30μm幅の間隙が存在していることが確認された。以上より、ヘパリン化したポリウレタンチューブは、その周囲に細胞が入り込んだ結合組織からなるカプセルを形成することなく生体内でステルス性を発揮して生体内に存在するとともに、リンパ液の流通が可能な程度の幅を有する間隙が形成されることが確認された。
<比較例1−1>
外径2mm及び長さ20cmのポリウレタンチューブ(紐状物)を、ヘパリン化処置を施すことなく、そのまま実施例1−1と同様にして皮下組織内を貫通させるようにイヌの膝関節部から臍部にかけて埋入した。3週間経過後に膝関節部皮下組織内に造影剤を注入してマッサージを行った後、X線写真を撮影した。撮影したX線写真を図4に示す。図4に示すように、紐状物を伝って造影剤が流れることはなく、造影剤が入り込まない帯状部分6が紐状物の周囲に認められた。造影剤が入り込まない帯状部分6は、ポリウレタンチューブがカプセルに覆われており、周囲組織から隔絶されていることを示している。
<比較例1−2>
比較例1−1においてイヌの皮下組織内に埋入した紐状物を周囲組織とともに取り出した。次いで、前述の実施例1−2と同様の手法で組織切片を作製し、光学顕微鏡で観察した。その結果、紐状物の周囲には線維芽細胞が無数に集まり、コラーゲン線維を多く含んだ結合組織層からなる厚み約300μmのカプセルが形成されていることが分かった。なお、結合組織層には細胞壊死等の所見は認められず、ポリウレタンチューブは細胞毒性等の異物反応を生じさせないことは明らかであった。また、結合組織層はポリウレタンチューブに密接しており、両者の間には隙間が存在しなかった。以上より、ヘパリン化処置を施していないポリウレタンチューブは、リンパ路の形成を誘導する能力を有しないことが明らかである。
<比較例1−3>
比較例1−1で用いた紐状物を家兎の背部皮下組織内に埋入し、3週間経過後に周囲組織とともに紐状物を取り出した。次いで、前述の実施例1−2と同様の手法で組織切片を作製し、光学顕微鏡で観察した。その結果、比較例1−2と同様に、紐状物の周囲には結合組織層からなる厚み約300μmのカプセルが形成されていることが分かった。また、結合組織層はポリウレタンチューブに密接しており、両者の間には隙間が存在しなかった。
<実施例2−1>
ポリエステルマルチフィラメント1−0号縫合糸に1%のアルギン酸溶液を塗布した後、5%アルミニウム溶液に入れてアルギン酸を不溶化させてゲル紐を作製した。作製したゲル紐(長さ20cm)を、実施例1−1と同様にして皮下組織内を貫通させるようにイヌの膝関節部から臍部にかけて埋入した。3週間経過後に膝関節部皮下組織内に造影剤を注入してマッサージを行った後、X線写真を撮影した。その結果、実施例1−1と同様に、膝関節部から臍部付近までゲル紐を伝って造影剤が流れていることが分かった。
<実施例2−2>
実施例2−1で作製したゲル紐を家兎の背部皮下組織内に埋入し、3週間経過後に周囲組織とともにゲル紐を取り出した。次いで、前述の実施例1−2と同様の手法で組織切片を作製し、光学顕微鏡で観察した。その結果、実施例1−2と同様に、ゲル紐は周囲組織内でカプセル化されることなく存在していることが分かった。また、周囲組織とゲル紐の表面は接着しておらず、20〜30μm幅の間隙が存在していることが確認された。
<実施例2−3>
実施例2−1においてイヌの皮下組織内に埋入したゲル紐を周囲組織とともに取り出した。次いで、前述の実施例1−2と同様の手法で組織切片を作製し、光学顕微鏡で観察した。その結果、ゲル紐の表面は周囲組織と接着しておらず、20〜30μm幅の間隙が存在していることが確認された。以上より、アルギン酸のヒドロゲルで被覆したポリエステル縫合糸は、その周囲に細胞が入り込んだ結合組織からなるカプセルを形成することなく生体内でステルス性を発揮して生体内に存在するとともに、リンパ液の流通が可能な程度の幅を有する間隙が形成されることが確認された。
<実施例3−1>
ポリエステルマルチフィラメント1−0号縫合糸に1%のポリビニルアルコール溶液を塗布した後、−80℃で凍結してポリビニルアルコールを不溶化させてゲル紐を作製した。作製したゲル紐(長さ20cm)を、実施例1−1と同様にして皮下組織内を貫通させるようにイヌの膝関節部から臍部にかけて埋入した。3週間経過後に膝関節部皮下組織内に造影剤を注入してマッサージを行った後、X線写真を撮影した。その結果、実施例1−1と同様に、膝関節部から臍部付近までゲル紐を伝って造影剤が流れていることが分かった。
<実施例3−2>
実施例3−1で作製したゲル紐を家兎の背部皮下組織内に埋入し、3週間経過後に周囲組織とともにゲル紐を取り出した。次いで、前述の実施例1−2と同様の手法で組織切片を作製し、光学顕微鏡で観察した。その結果、実施例1−2と同様に、ゲル紐は周囲組織内でカプセル化されることなく存在していることが分かった。また、周囲組織とゲル紐の表面は接着しておらず、20〜30μm幅の間隙が存在していることが確認された。
<実施例3−3>
実施例3−1においてイヌの皮下組織内に埋入したゲル紐を周囲組織とともに取り出した。次いで、前述の実施例1−2と同様の手法で組織切片を作製し、光学顕微鏡で観察した。その結果、ゲル紐の表面は周囲組織と接着しておらず、20〜30μm幅の間隙が存在していることが確認された。以上より、ポリビニルアルコールのゲルで被覆したポリエステル縫合糸は、その周囲に細胞が入り込んだ結合組織からなるカプセルを形成することなく生体内でステルス性を発揮して生体内に存在するとともに、リンパ液の流通が可能な程度の幅を有する間隙が形成されることが確認された。
<比較例2−1>
長さ20cmのポリエステルマルチフィラメントの1−0号縫合糸(紐状物)を、アルギン酸のヒドロゲル及びポリビニルアルコールのゲルのいずれでも被覆することなく、そのまま実施例3−1と同様にして皮下組織内を貫通させるようにイヌの膝関節部から臍部にかけて埋入した。3週間経過後に膝関節部皮下組織内に造影剤を注入してマッサージを行った後、X線写真を撮影した。その結果、紐状物を伝って造影剤が流れないことが分かった。また、造影剤が入り込まない帯状部分が紐状物の周囲に認められた。
<比較例2−2>
比較例2−1においてイヌの皮下組織内に埋入した紐状物を周囲組織とともに取り出した。次いで、前述の実施例1−2と同様の手法で組織切片を作製し、光学顕微鏡で観察した。その結果、紐状物の周囲には線維芽細胞が無数に集まり、コラーゲン線維を多く含んだ結合組織層からなる厚み約100μmのカプセルが形成されていることが分かった。なお、結合組織層には細胞壊死等の所見は認められず、ポリエステル縫合糸は細胞毒性等の異物反応を生じさせないことは明らかであった。また、結合組織層はポリエステル縫合糸に密接しており、両者の間には隙間が存在しなかった。以上より、アルギン酸のヒドロゲル及びポリビニルアルコールのゲルのいずれでも被覆していないポリエステル縫合糸は、リンパ路の形成を誘導する能力を有しないことが明らかである。
<比較例2−3>
比較例2−1で用いた紐状物を家兎の背部皮下組織内に埋入し、3週間経過後に周囲組織とともに紐状物を取り出した。次いで、前述の実施例1−2と同様の手法で組織切片を作製し、光学顕微鏡で観察した。その結果、比較例2−1と同様に、紐状物の周囲には結合組織層からなる厚み約100μmのカプセルが形成されていることが分かった。また、結合組織層はポリエステル縫合糸に密接しており、両者の間には隙間が存在しなかった。
<実施例4−1>
特開平10−316759号公報に記載された重合方法に準じ、外径2mmの軟質塩化ビニルチューブの表面(外周面)に長鎖のポリエチレングリコールをグラフト重合して紐状物を作製した。作製した紐状物(長さ20cm)を、実施例1−1と同様にして皮下組織内を貫通させるようにイヌの膝関節部から臍部にかけて埋入した。3週間経過後に膝関節部皮下組織内に造影剤を注入してマッサージを行った後、X線写真を撮影した。その結果、実施例1−1と同様に、膝関節部から臍部付近まで紐状物を伝って造影剤が流れていることが分かった。
<実施例4−2>
実施例4−1で作製した紐状物を家兎の背部皮下組織内に埋入し、3週間経過後に周囲組織とともにゲル紐を取り出した。次いで、前述の実施例1−2と同様の手法で組織切片を作製し、光学顕微鏡で観察した。その結果、実施例1−2と同様に、紐状物は周囲組織内でカプセル化されることなく存在していることが分かった。また、周囲組織と紐状物の表面は接着しておらず、20〜30μm幅の間隙が存在していることが確認された。
<実施例4−3>
実施例4−1においてイヌの皮下組織内に埋入した紐状物を周囲組織とともに取り出した。次いで、前述の実施例1−2と同様の手法で組織切片を作製し、光学顕微鏡で観察した。その結果、紐状物の表面は周囲組織と接着しておらず、20〜30μm幅の間隙が存在していることが確認された。以上より、ポリエチレングリコールをグラフト重合した軟質塩化ビニルチューブは、その周囲に細胞が入り込んだ結合組織からなるカプセルを形成することなく生体内でステルス性を発揮して生体内に存在するとともに、リンパ液の流通が可能な程度の幅を有する間隙が形成されることが確認された。
<比較例3−1>
長さ20cmの軟質塩化ビニルチューブ(紐状物)を、その表面(外周面)に長鎖のポリエチレングリコールをグラフト重合させることなく、そのまま実施例4−1と同様にして皮下組織内を貫通させるようにイヌの膝関節部から臍部にかけて埋入した。3週間経過後に膝関節部皮下組織内に造影剤を注入してマッサージを行った後、X線写真を撮影した。その結果、紐状物を伝って造影剤が流れないことが分かった。また、造影剤が入り込まない帯状部分が紐状物の周囲に認められた。
<比較例3−2>
比較例3−1においてイヌの皮下組織内に埋入した紐状物を周囲組織とともに取り出した。次いで、前述の実施例1−2と同様の手法で組織切片を作製し、光学顕微鏡で観察した。その結果、紐状物の周囲には線維芽細胞が無数に集まり、コラーゲン線維を多く含んだ結合組織層からなる厚み約100μmのカプセルが形成されていることが分かった。なお、結合組織層には細胞壊死等の所見は認められず、軟質塩化ビニルチューブは細胞毒性等の異物反応を生じさせないことは明らかであった。また、結合組織層は軟質塩化ビニルチューブに密接しており、両者の間には隙間が存在しなかった。以上より、長鎖のポリエチレングリコールをグラフト重合させていない軟質塩化ビニルチューブは、リンパ路の形成を誘導する能力を有しないことが明らかである。
<比較例3−3>
比較例3−1で用いた紐状物を家兎の背部皮下組織内に埋入し、3週間経過後に周囲組織とともに紐状物を取り出した。次いで、前述の実施例1−2と同様の手法で組織切片を作製し、光学顕微鏡で観察した。その結果、比較例3−1と同様に、紐状物の周囲には結合組織層からなる厚み約100μmのカプセルが形成されていることが分かった。また、結合組織層は軟質塩化ビニルチューブに密接しており、両者の間には隙間が存在しなかった。
<実施例5−1>
外径0.3mmのセルロース製中空糸を0.05%ヒアルロン酸水溶液に浸漬した後、自然乾燥させた。次いで、1%カルシウム溶液に浸漬し、配位結合によってヒアルロン酸を不溶化させてヒアルロン酸被覆中空糸を作製した。作製したヒアルロン酸被覆中空糸(長さ20cm)を、実施例1−1と同様にして皮下組織内を貫通させるようにイヌの膝関節部から臍部にかけて埋入した。3週間経過後に膝関節部皮下組織内に造影剤を注入してマッサージを行った後、X線写真を撮影した。その結果、実施例1−1と同様に、膝関節部から臍部付近までヒアルロン酸被覆中空糸を伝って造影剤が流れていることが分かった。
<実施例5−2>
実施例5−1で作製したヒアルロン酸被覆中空糸を家兎の背部皮下組織内に埋入し、3週間経過後に周囲組織とともにヒアルロン酸被覆中空糸を取り出した。次いで、前述の実施例1−2と同様の手法で組織切片を作製し、光学顕微鏡で観察した。その結果、実施例1−2と同様に、ヒアルロン酸被覆中空糸は周囲組織内でカプセル化されることなく存在していることが分かった。また、周囲組織とヒアルロン酸被覆中空糸の表面は接着しておらず、20〜30μm幅の間隙が存在していることが確認された。
<実施例5−3>
実施例5−1においてイヌの皮下組織内に埋入したヒアルロン酸被覆中空糸を周囲組織とともに取り出した。次いで、前述の実施例1−2と同様の手法で組織切片を作製し、光学顕微鏡で観察した。その結果、ヒアルロン酸被覆中空糸の表面は周囲組織と接着しておらず、20〜30μm幅の間隙が存在していることが確認された。以上より、ヒアルロン酸被覆中空糸は、その周囲に細胞が入り込んだ結合組織からなるカプセルを形成することなく生体内でステルス性を発揮して生体内に存在するとともに、リンパ液の流通が可能な程度の幅を有する間隙が形成されることが確認された。
<比較例4−1>
外径0.3mm及び長さ20cmのセルロース製中空糸(紐状物)を、ヒアルロン酸で被覆することなく、そのまま実施例5−1と同様にして皮下組織内を貫通させるようにイヌの膝関節部から臍部にかけて埋入した。3週間経過後に膝関節部皮下組織内に造影剤を注入してマッサージを行った後、X線写真を撮影した。その結果、紐状物を伝って造影剤が流れないことが分かった。また、造影剤が入り込まない帯状部分が紐状物の周囲に認められた。
<比較例4−2>
比較例4−1においてイヌの皮下組織内に埋入した紐状物を周囲組織とともに取り出した。次いで、前述の実施例1−2と同様の手法で組織切片を作製し、光学顕微鏡で観察した。その結果、紐状物の周囲には線維芽細胞が無数に集まり、コラーゲン線維を多く含んだ結合組織層からなる厚み約100μmのカプセルが形成されていることが分かった。なお、結合組織層には細胞壊死等の所見は認められず、セルロース製中空糸は細胞毒性等の異物反応を生じさせないことは明らかであった。また、結合組織層はセルロース製中空糸に密接しており、両者の間には隙間が存在しなかった。以上より、ヒアルロン酸で被覆していないセルロース製中空糸は、リンパ路の形成を誘導する能力を有しないことが明らかである。
<比較例4−3>
比較例4−1で用いた紐状物を家兎の背部皮下組織内に埋入し、3週間経過後に周囲組織とともに紐状物を取り出した。次いで、前述の実施例1−2と同様の手法で組織切片を作製し、光学顕微鏡で観察した。その結果、比較例4−1と同様に、紐状物の周囲には結合組織層からなる厚み約100μmのカプセルが形成されていることが分かった。また、結合組織層はセルロース製中空糸に密接しており、両者の間には隙間が存在しなかった。
<実施例6−1>
プラズマ処理した外径0.3mmのセルロース製中空糸の表面(外周面)と内面(内周面)に、実施例1−1と同様の手法によりヘパリンを固定してヘパリン化中空糸を作製した。なお、可能な限り薄ヘパリン層が形成されるように心がけるとともに、中空糸の内部にもヘパリンを流してヘパリンを固定化した。一方、イヌのソケイ部を切開し、リンパ節を可能な限り切除した。1ヶ月後、下肢に浮腫が生じたイヌを実験動物モデルとして使用した。このイヌの足指付近の皮下組織内にメチレンブルー液を注射した後にソケイ部を開いたところ、メチレンブルーに染色された太さ約0.3mmのリンパ管が認められた。顕微鏡を使用し、作製したヘパリン化中空糸の一方の末端をリンパ管内に挿入するとともに、他方の末端を皮下組織内を通じて臍部まで埋入した。3日経過後に臍部のヘパリン化中空糸を観察したところ、ヘパリン化中空糸の内側と外側のいずれもメチレンブルーで青く染まっていることが判明した。すなわち、リンパ液にメチレンブルーが混入していることから、リンパ液が中空糸の内側と外側のいずれにも流通したことが明らかとなった。以上より、中空糸のような管構造を有する紐状物を用いれば、管の内側と外側のいずれにもリンパ路が形成されうることが判明した。
<実施例6−2>
実施例6−1においてイヌの皮下組織内に埋入したヘパリン化中空糸を周囲組織とともに取り出した。次いで、前述の実施例1−2と同様の手法で組織切片を作製し、光学顕微鏡で観察した。その結果、ヘパリン化中空糸の表面は周囲組織と接着しておらず、20〜30μm幅の間隙が存在していることが確認された。
<比較例5−1>
外径0.3mmのセルロース製中空糸を、ヘパリン化することなくそのまま実施例6−1と同様にしてイヌの体内に埋入した。3日経過後に臍部の中空糸を観察したところ、中空糸の内側と外側のいずれにも青く染まったリンパ液が流れていないことが判明した。以上より、ヘパリン化していないセルロース製中空糸は生体内でステルス性を発揮せず、その内側と外側のいずれにもリンパ路を形成しないことが明らかとなった。
<実施例6−3>
イヌの口腔粘膜から耳下腺を実施例6−1で作製したセルロース製のヘパリン化中空糸で貫通させるとともに、ヘパリン化中空糸の両末端を口腔内に露出するように放置した。さらに、口腔内へと通じる耳下腺の管を結紮し、口腔内に唾液が出ないようにした。3週間経過後に検査したところ、ヘパリン化中空糸の周囲を伝って唾液が口腔内へと流れており、ヘパリン化中空糸の周囲が唾液の流路となっていることが判明した。なお、唾液腺の萎縮は認められなかった。
<実施例6−4>
実施例6−3においてイヌの口腔内に配置したヘパリン化中空糸を、唾液が流れる部位の周囲組織とともに取り出した。次いで、前述の実施例1−2と同様の手法で組織切片を作製し、光学顕微鏡で観察した。その結果、ヘパリン化中空糸は周囲組織内でカプセル化されることなく存在していることが分かった。また、周囲組織とヘパリン化中空糸の表面は接着しておらず、20〜30μm幅の間隙が存在していることが確認された。
<比較例5−2>
外径0.3mmのセルロース製中空糸を、ヘパリン化することなくそのまま実施例6−3と同様にしてイヌの口腔内に配置した。その結果、セルロース製中空糸は瘢痕組織に取り囲まれ、セルロース製中空糸の周囲には唾液が流れないことが判明した。また、唾液腺も萎縮していた。以上より、ヘパリン化していないセルロース製中空糸は生体内でステルス性を発揮せず、その内側と外側のいずれにも唾液の流路を形成しないことが明らかとなった。
<実施例6−5>
兎の尿管を膀胱に流入する直前で結紮し、尿管末端の切断端を背部皮下組織内に解放のまま留置した。実施例6−1で作製したセルロース製のヘパリン化中空糸の一方の末端を尿管内に挿入するとともに、他方の末端を皮下組織から皮膚外に誘導してそのまま放置した。3週間観察したところ、尿はヘパリン化中空糸の周囲を伝って背部の皮膚外へと流れており、中空糸の周囲が尿の流通する経路となっていることが判明した。なお、腎臓の萎縮は認められなかった。
<実施例6−6>
実施例6−5において兎の体内に配置したヘパリン化中空糸を、尿が流れる部位の周囲組織とともに取り出した。次いで、前述の実施例1−2と同様の手法で組織切片を作製し、光学顕微鏡で観察した。その結果、ヘパリン化中空糸は周囲組織内でカプセル化されることなく存在していることが分かった。また、周囲組織とヘパリン化中空糸の表面は接着しておらず、20〜30μm幅の間隙が存在していることが確認された。
<比較例5−3>
外径0.3mmのセルロース製中空糸を、ヘパリン化することなくそのまま実施例6−5と同様にして兎の体内に配置した。その結果、セルロース製中空糸は瘢痕組織に取り囲まれるとともに、尿管の切断端も瘢痕組織に取り囲まれて閉塞してしまい、中空糸の周囲には尿が流れなかったことが判明した。また、腎臓が水腎化していた。以上より、ヘパリン化していないセルロース製中空糸は生体内でステルス性を発揮せず、その内側と外側のいずれにも尿の流路を形成しないことが明らかとなった。
本発明の生体内流路形成誘導材は、例えば、人工リンパ管、人工尿管、人工卵管、人工唾液管、人工精管、人工涙管、人工脊髄液管、及び人工排液管等の生体内流路の形成を誘導するための材料として有用である。
1:生体内流路形成誘導材
2:線維芽細胞
3:膠原繊維
4:間隙
5:造影剤
6:造影剤が入り込まない帯状部分

Claims (9)

  1. 組織非接着性を持った表面を有する紐状物であり、
    生体内に挿入した場合に、前記表面と周囲組織との間に、その長手方向に沿って生体内流路が形成される生体内流路形成誘導材。
  2. 生体に対してステルス性を有する請求項1に記載の生体内流路形成誘導材。
  3. 生体内に挿入した場合に、周囲組織が実質的にカプセル化しない請求項1又は2に記載の生体内流路形成誘導材。
  4. 生体内に挿入した場合に、周囲組織の表面が細胞によって実質的に被覆されない請求項1〜3のいずれか一項に記載の生体内流路形成誘導材。
  5. 前記表面が、細胞非接着性、線維素非接着性、ファイブロネクチン非接着性、及びタンパク質非吸着性のいずれかの特性をさらに持つ請求項1〜4のいずれか一項に記載の生体内流路形成誘導材。
  6. 紐状物本体と、前記紐状物本体の表面に固定されたプラスミン剤、抗トロンビン剤、抗凝固剤、血栓溶解剤、ヘパリン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、保湿剤、及び保水剤からなる群より選択される少なくとも一種とを備える請求項1〜5のいずれか一項に記載の生体内流路形成誘導材。
  7. 管、繊維製物、中空糸、又は割管である請求項1〜6のいずれか一項に記載の生体内流路形成誘導材。
  8. 多孔質である請求項1〜7のいずれか一項に記載の生体内流路形成誘導材。
  9. 人工リンパ管、人工尿管、人工卵管、人工唾液管、人工精管、人工涙管、人工脊髄液管、又は人工排液管の形成誘導材として使用される請求項1〜8のいずれか一項に記載の生体内流路形成誘導材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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