JP2014214649A - 多段圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡素な構成で、遠心圧縮機の前段に配置された軸流圧縮機又は斜流圧縮機におけるサージングの発生のおそれを低減することが可能な多段圧縮機を提供する。【解決手段】遠心圧縮機2のインペラ9の外周9aに配置されたディフューザ10の弦節比σを、3.0以下とする。これにより、ディフューザ10における圧力損失を抑制して流量を増加させ、遠心圧縮機2の前段に配置された軸流圧縮機3又は斜流圧縮機におけるサージングの発生のおそれを低減する。抽気のための専用の装置や、可変入口案内翼のための専用の装置を設けることなく、サージングの発生のおそれを低減することができるので、部品点数の増加や、重量の増加や、制御の複雑さを回避して、サージングの発生を抑制することができる。【選択図】図2
Description
本発明は、遠心圧縮機の前段に軸流圧縮機又は斜流圧縮機が配置された多段圧縮機に関する。
従来、軸心を中心に回転する動翼列を有する軸流圧縮機と、この軸流圧縮機の下流側に同軸に配置され軸心を中心に回転する遠心インペラを有する遠心圧縮機とを備える圧縮装置がある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献2に記載のガスタービンエンジンでは、遠心圧縮機の入口案内羽根の角度を所定の角度とすることで、サージングの発生を防止している。特許文献3に記載の遠心圧縮機では、ベーンレスディフューザ壁の一部を可動壁とすることで、流路幅の段差が大きくなることによる急拡大損失の発生を抑制している。特許文献4に記載の圧縮機では、低流量時において、ディフューザ上流側の壁面の間隔を狭めることでサージングを防止している。
遠心圧縮機の前段に配置された軸流圧縮機では、流量の少ない始動時などにおいて、サージングが発生し起動できないおそれがあり、抽気を行うことや、可変入口案内翼(Variable Inlet Guide Vane、VIGV)を設けて空気に予旋回を与えることで、サージングの発生を抑えることが考えられる。
サージングを回避するために抽気を行うと、一度昇圧した空気を無駄に捨てることになり、圧縮機の性能を低下させることになる。また、抽気のための専用の装置が増えると、スペースの増加や、部品点数の増加や、重量の増加につながる。さらに、抽気のための専用の装置を設置しても、通常の運転状態では利用されないので、使用しない状態を維持するために、抽気箇所を閉じるための可変機構やこの可変機構を制御するための制御系が必要となり、部品点数の増加や、重量の増加や、制御の複雑さなどにつながる。
可変入口案内翼を設けた場合には、設置スペースが増加するので、装置の小型化が困難であると共に重量が増加する。さらに、可変入口案内翼を可動させるための機構や制御系が必要であり、部品点数の増加や、重量の増加や、制御の複雑さなどにつながる。
そこで、部品点数の増加や、重量の増加や、制御の複雑さを回避しつつ、サージングの発生のおそれを低減することが求められている。本発明は、簡素な構成で、遠心圧縮機の前段に配置された軸流圧縮機又は斜流圧縮機におけるサージングの発生のおそれを低減することが可能な多段圧縮機を提供することを目的とする。
本発明の多段圧縮機は、回転軸回りに回転するインペラを備えた遠心圧縮機の前段に軸流圧縮機又は斜流圧縮機が配置された多段圧縮機であって、インペラの外周に沿って配置されたディフューザは、羽根有りのディフューザであり、当該ディフューザの弦節比が3.0以下であることを特徴としている。
この多段圧縮機によれば、遠心圧縮機のインペラの外周に配置されたディフューザの弦節比が、3.0以下であるので、ディフューザにおける圧力損失を抑制して流量を増加させ、遠心圧縮機の前段に配置された軸流圧縮機又は斜流圧縮機におけるサージングの発生のおそれを低減することができる。抽気のための専用の装置や、可変入口案内翼のための専用の装置を設けることなく、サージングの発生のおそれを低減することができるので、部品点数の増加や、重量の増加や、制御の複雑さを回避して、サージングの発生を抑制することができる。
本発明によれば、簡素な構成で、遠心圧縮機の前段に配置された軸流圧縮機又は斜流圧縮機におけるサージングの発生のおそれを低減することが可能な多段圧縮機を提供することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る多段圧縮機の実施形態について詳細に説明する。
図1に示されるように、多段圧縮機1には、遠心圧縮機2の前段に軸流圧縮機3が設けられている。多段圧縮機1は、例えば、航空機のガスタービンエンジンや、自動車のターボチャージャに利用可能である。なお、多段圧縮機1において内部流体の流れの上流側を前とし、内部流体の流れの下流側を後とする。
軸流圧縮機3は、複数の羽根板4が設けられて回転軸5回りに回転するロータ(回転子)6と、このロータ6の回転により圧縮されて後方へ排出された空気を案内するステータ7(固定子)とを備えている。軸流圧縮機3によって圧縮された空気は、後段の遠心圧縮機2に導入される。
遠心圧縮機2は、複数の動翼8が設けられ回転軸5回りに回転するインペラ9と、インペラ9の外周9aに沿って配置されたディフューザ10とを有する。回転軸5の軸線方向の前方から遠心圧縮機2内に流入した空気は、インペラ9の回転により圧縮されて、インペラ9の径方向の外方に向けて排出され、ディフューザ10に導入される。
ディフューザ10に導入された圧縮空気は、ディフューザ10の静翼11により案内されてディフューザ10の外周に配置された流路12内に流入する。圧縮空気の運動エネルギはディフューザ10によって圧縮空気の圧力エネルギに変換される。流路12は、回転軸5の径方向の外方に向く流れを、回転軸5の軸線方向の後方へ向ける。流路12の下流には、整流板13が設けられている。整流板13は、流路12内を流れる空気を整流して渦を解消する。流路12を通過した圧縮空気は、多段圧縮機1の後段に配置された燃焼室に導入される。燃焼室で発生した燃焼ガスは、燃焼室の下流のタービンの回転に用いられる。このタービンの回転軸は、軸流圧縮機3及び遠心圧縮機2の回転軸5と共通であり、タービンが回転することで、ロータ6及びインペラ9が回転する。
図2は、遠心圧縮機2のインペラ9及びディフューザ10を回転軸5の軸線方向の前方から示す正面図である。ディフューザ10の静翼11は、回転軸5の周方向に所定の間隔Pで配置されている。静翼11は、例えば、インペラ9の径方向に対して傾斜して配置され、径方向の外方に向けて凸である湾曲形状を有する。
ディフューザ10の弦節比σは例えば2.5である。弦節比σは、静翼11のインペラ9の周方向における配置間隔Pと、静翼11の翼弦長Cとの比率である。配置間隔Pは、静翼11の前縁の翼列線に沿った間隔である。前縁とは、上流側の先端の縁である。なお、ディフューザ10は、弦節比σが3.0以下であればよい。弦節比σは、下記式(1)によって表現することができる。
なお、弦節比σが3.0以下のディフューザを低弦節比のディフューザとし、弦節比σが3.0を超えるディフューザを高弦節比のディフューザとする。翼弦長Cが同じである場合には、配置間隔Pを大きくすることで、弦節比σを小さくすることができ、配置間隔Pを小さくすることで、弦節比σを大きくすることができる。配置間隔Pが同じである場合には、翼弦長Cを小さくすることで、弦節比σを小さくすることができ、翼弦長Cを大きくすることで、弦節比σを大きくすることができる。
図3は、インペラ9及び高弦節比のディフューザ14を回転軸5の軸線方向の前方から示す正面図である。高弦節比のディフューザ14は、弦節比σが例えば9.0の静翼15を備えている。
図4は、多段圧縮機1における流量と圧力比との関係を示すグラフである。図4では、横軸(X軸)に、多段圧縮機1の流量を示し、縦軸(Y軸)に圧力比を示している。図4に示すグラフは、多段圧縮機1について試験運転を行い、流量、入口圧及び出口圧を測定することにより作成可能である。図4において一点鎖線で示される直線L1及びX軸によって囲まれた領域は、サージングの発生を防止し運転可能な範囲Aを示している。この範囲A内の流量及び圧力比(出口圧/入口圧)であれば、多段圧縮機1が運転可能であることを示している。
図4において二点鎖線で示される直線L2は、遠心圧縮機2において、サージングが発生する運転条件の境界を示している。直線L2で示される運転条件を超える圧力比である場合には、遠心圧縮機2においてサージングが発生することを示している。直線L2は、右上がりの直線であり、運転条件が直線L2で示す境界を超えている場合には、流量を増加させることで、直線L2以下の運転条件に変更してサージングが発生しない運転条件とすることができる。
図4中の直線L1は、軸流圧縮機3において、サージングが発生する運転条件の境界を示している。直線L1で示される運転条件を超える圧力比である場合には、軸流圧縮機3においてサージングが発生することを示している。直線L1は、右上がりの直線であり、運転条件が直線L1で示す境界を越えている場合には、流量を増加させることで、直線L1以下の運転条件に変更してサージングが発生しない運転条件とすることができる。
図4において実線で示される直線L3は、図3に示される高弦節比のディフューザ14を備えた多段圧縮機の流量と圧力比の関係を示す作動ラインである。直線L3は、直線L1を超える運転条件であるため、軸流圧縮機3においてサージングが発生し運転が困難であることを示している。
図4において破線で示される直線L4は、図2に示される低弦節比のディフューザ10を備えた多段圧縮機1の流量と圧力比の関係を示す作動ラインである。直線L4は、運転可能な範囲A内であり、直線L1以下の運転条件であるため、軸流圧縮機3においてサージングの発生を抑制して運転を実行可能であることを示している。
直線L4は、直線L3より下方に存在し、直線L3よりも大きな傾きの直線であり、低弦節比のディフューザ10を備えた多段圧縮機1は、高弦節比のディフューザ14を備えた多段圧縮機と比較して、同一の圧力比の場合に流量が増えることを示している。なお、直線L3の大流量側の端部は、多段圧縮機1の定格時の流量と圧力比との関係を示している。
次に、低弦節比のディフューザ10に代えて、ベーンレスディフューザ16を備える場合について説明する。図5は、ベーンレスディフューザ16を回転軸5の軸線方向の前方から示す正面図である。ベーンレスディフューザ16は、弦節比が0であり、静翼が設けられていない翼無ディフューザである。
図6は、多段圧縮機における流量と圧力比との関係を示すグラフである。図6では、横軸(X軸)に、多段圧縮機の流量を示し、縦軸(Y軸)に圧力比を示している。
図6において破線で示される直線L5は、図5に示されるベーンレスディフューザ16を備えた多段圧縮機の流量と圧力比の関係を示す作動ラインである。直線L5は、運転可能な範囲A内であり、直線L1以下の運転条件であるため、軸流圧縮機3においてサージングの発生を抑制して運転を実行可能であることを示している。
直線L5は、直線L3より下方に存在し、直線L3よりも大きな傾きの直線であり、ベーンレスディフューザ16を備えた多段圧縮機は、高弦節比のディフューザ14を備えた多段圧縮機と比較して、同一の圧力比の場合に流量が増えることを示している。
また、直線L5は、図4に示される直線L4よりも大きい傾きの直線であり、ベーンレスディフューザ16を備えた多段圧縮機は、低弦節比のディフューザ10を備えた多段圧縮機1と比較して、同一の圧力比の場合に流量が増加することを示している。
次にこのように構成された多段圧縮機1の動作について説明する。
多段圧縮機1では、軸流圧縮機3のロータ6を回転させて軸流圧縮機3に吸入された大気を圧縮する。圧縮空気は後段の遠心圧縮機2に導入される。遠心圧縮機2は、インペラ9を回転させて遠心圧縮機2に吸入された圧縮空気をさらに圧縮する。遠心圧縮機2内の圧縮空気は、径方向の外方に向けて排出されてディフューザ10に導入される。ディフューザ10に導入された圧縮空気は、静翼11によって径方向の外方に案内される。圧縮空気の運動エネルギはディフューザ10によって圧力エネルギに変換される。このように運動エネルギが圧力エネルギに変換されて昇圧された圧縮空気は、流路12を通り、流れの向きが軸線方向の後方に向けられたのち、整流板13によって整流されて、多段圧縮機1外に排出される。
多段圧縮機1では、軸流圧縮機3のロータ6を回転させて軸流圧縮機3に吸入された大気を圧縮する。圧縮空気は後段の遠心圧縮機2に導入される。遠心圧縮機2は、インペラ9を回転させて遠心圧縮機2に吸入された圧縮空気をさらに圧縮する。遠心圧縮機2内の圧縮空気は、径方向の外方に向けて排出されてディフューザ10に導入される。ディフューザ10に導入された圧縮空気は、静翼11によって径方向の外方に案内される。圧縮空気の運動エネルギはディフューザ10によって圧力エネルギに変換される。このように運動エネルギが圧力エネルギに変換されて昇圧された圧縮空気は、流路12を通り、流れの向きが軸線方向の後方に向けられたのち、整流板13によって整流されて、多段圧縮機1外に排出される。
多段圧縮機1を備えたガスタービンエンジンでは、多段圧縮機1から排出され燃焼室内に導入された圧縮空気と、燃焼室内に噴射された燃料とが、混合されて混合ガスを生成する。燃焼室内での燃焼により発生した燃焼ガスは、燃焼室の下流から排出されて、燃焼室の下流のタービンに吹き付けられ、タービンを回転させると共に、推進力を発生させる。燃焼室の下流のタービンが回転することで、ロータ6及びインペラ9が回転し、多段圧縮機1での空気の圧縮が行われる。
多段圧縮機1によれば、遠心圧縮機2のインペラ9の外周9aに配置されたディフューザ10の弦節比が、3.0以下であるので、ディフューザ10における圧力損失を抑制し流量を増加させて、軸流圧縮機3におけるサージングの発生を防止することができる。抽気のための専用の装置や、可変入口案内翼のための専用の装置を設けることなく、サージングの発生を防止することができるので、部品点数の増加や、重量の増加や、制御の複雑さを回避して、サージングの発生を抑制することができる。
このような多段圧縮機1を備えたガスタービンエンジンによれば、小型化を図ると共に、重量の増加を抑えることが可能であり、起動時において、軸流圧縮機3におけるサージングの発生を抑制して、圧縮空気を確実に燃焼器に供給することができる。
図7は、多段圧縮機1における試験結果を示すものであり、流量と圧力比との関係を示している。横軸に空気流量(kg/s)を示し、縦軸に圧力比を示している。この圧力比は、多段圧縮機1の入口圧力に対する出口圧力の比率である。低弦節比(弦節比σ=2.5)の場合の値を三角の点で示し、高弦節比(弦節比σ=9.0)の場合を円形の点で示している。図7に示す通り、低弦節比のディフューザ10を備える場合には、低流量側での作動範囲が、高弦節比の場合と比較して広がっている。低弦節比のディフューザ10を備えた多段圧縮機1では、起動時などの低流量時において、軸流圧縮機3でのサージングの発生を抑えて、運転可能であることが確認できた。
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、下記のような種々の変形が可能である。
上記の実施形態では、遠心圧縮機2の前段に軸流圧縮機3を備える多段圧縮機1として説明しているが、軸流圧縮機3に代えて、斜流圧縮機を備える多段圧縮機でもよい。また、遠心圧縮機2を複数備える構成でもよい。
多段圧縮機1を備えるガスタービンエンジンは、火力発電所や、コージェネレーションシステムなど、その他の用途に使用することができる。
弦節比σは、3.0以下であればよく、例えば、2.5以下でもよい。
1…多段圧縮機、2…遠心圧縮機、3…軸流圧縮機、5…回転軸、9…インペラ、9a…外周、10…ディフューザ、11…静翼、14…ベーンレス(翼無)ディフューザ、P…配置間隔、C…翼弦長。
Claims (1)
- 回転軸回りに回転するインペラを備えた遠心圧縮機の前段に軸流圧縮機又は斜流圧縮機が配置された多段圧縮機であって、
前記インペラの外周に沿って配置されたディフューザは、羽根有りのディフューザであり、当該ディフューザの弦節比が3.0以下であることを特徴とする多段圧縮機。
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