ところで、近年、航空機用ガスタービンエンジンの小型化及び軽量化の要請が強く、その対策として、ガイド流路の軸長を短くして、遠心圧縮機の軸長、換言すれば、航空機用ガスタービンエンジンの軸長を短くすることが考えられる。一方、ガイド流路の軸長を短くすると、ディフューザ流路の入口側からガイド流路の出口側までの流路長さ(主流の流れ方向に沿った長さ)が短くなって、ガイド流路の出口側、換言すれば、燃焼器の入口側における圧縮空気(圧縮空気の流れ)の減速状態及び整流状態が悪化する。そのため、燃焼器の燃焼効率が低下して、航空機用ガスタービンエンジンのエンジン効率の低下を招くことになる。つまり、先行技術に係る遠心圧縮機にあっては、航空機用ガスタービンエンジンのエンジン効率を維持しつつ、航空機用ガスタービンエンジンの小型化及び軽量化を図ることが困難であるという問題がある。
なお、前述の問題は、航空機用ガスタービンエンジンにおける最終段の圧縮機として用いられる遠心圧縮機だけでなく、発電用ガスタービンエンジン等のガスタービンエンジンにおける最終段の圧縮機として用いられる遠心圧縮機においても同様に生じるものである。
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な遠心圧縮機等を提供することを目的とする。
本発明の第1の特徴は、ガスタービンエンジンにおける最終段の圧縮機として用いられ、遠心力を利用して空気を圧縮する遠心圧縮機において、内側にシュラウド(収容壁)を有し、前記ガスタービンエンジンのエンジン軸心と同心状に位置する圧縮機ケースと、前記圧縮機ケース内に回転可能に設けられ、ハブ面が軸方向の一方側から放射方向(径方向の外側)に向かって延びた圧縮機ディスク、及び前記圧縮機ディスクのハブ面に周方向に間隔を置いて一体的に設けられかつ先端縁が前記圧縮機ケースの前記シュラウドに沿うように延びた複数の圧縮機動翼を備え、前記ガスタービンエンジンにおけるタービンからの回転力によって回転する圧縮機インペラと、を具備し、前記圧縮機インペラの出口側(直下流側)に圧縮空気(圧縮した空気)を減速させて昇圧する環状のディフューザ流路が形成され、前記ディフューザ流路の下流側に昇圧した圧縮空気を前記ガスタービンエンジンにおける燃焼器へ案内(導入)する環状のガイド流路が形成され、前記ガイド流路内に昇圧した圧縮空気を整流する複数のガイドベーンが周方向に間隔を置いて設けられ、前記圧縮機インペラの出口の手前側から前記ディフューザ流路の出口側までのエリア(所定のエリア)が径方向に対して軸方向の一方側へ傾斜するように構成されたことを要旨とする。
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「設けられ」とは、直接的に設けられたことの他に、別部材を介して間接的に設けられたことを含む意であって、「一体的に設けられ」とは、一体形成されたことを含む意である。また、「軸方向」とは、ガスタービンエンジンの軸方向、換言すれば、圧縮機インペラの軸方向のことをいい、「径方向」とは、ガスタービンエンジンの径方向、換言すれば、圧縮機インペラの径方向のことをいう。更に、「下流側」とは、主流の流れ方向から見て下流側のことをいう。
第1の特徴によると、前記タービンからの回転力によって前記圧縮機インペラを回転させることにより、前記圧縮機ケース内に取入れた空気を圧縮することができる。一方、圧縮された圧縮空気は、前記ディフューザ流路によって昇圧され、複数の前記ガイドベーンによって整流されつつ前記ガイド流路から前記燃焼器へ供給(案内)される。
前記エリアが径方向に対して軸方向の一方側へ傾斜するように構成されているため、前記ディフューザ流路の入口から前記ガイド流路の出口までの流路長さ(主流の流れ方向に沿った長さ)を十分に確保しつつ、前記エリアの傾斜に応じた長さだけ、前記遠心圧縮機の軸長を短くすることができる。これにより、前記ガイド流路の出口側、換言すれば、前記燃焼器の入口側における圧縮空気(圧縮空気の流れ)の減速状態及び整流状態を良好に保ちつつ、前記ガスタービンエンジンの軸長を短くすることができる。
前記遠心圧縮機が前記ガスタービンエンジンにおける最終段の圧縮機として用いられ、前段の圧縮機(1段目の圧縮機、2段目の圧縮機等)に比較して、比速度が低く、流路面積が小さくなっているため、前記エリアが径方向に対して軸方向の一方側へ傾斜しても、前記圧縮機インペラ内及び前記ディフューザ流路内において二次流れ又は剥離等が発生し難く、前記遠心圧縮機の圧縮性能を維持することができる。
本発明の第2の特徴は、ガスタービンエンジンにおいて、第1の特徴からなる遠心圧縮機を具備したことを特徴とする。
第2の特徴によると、第1の特徴による作用と同様の作用を奏する。
本発明によれば、前記遠心圧縮機の圧縮性能を維持した上で、前記燃焼器の入口側における圧縮空気の減速状態及び整流状態を良好に保ちつつ、前記ガスタービンエンジンの軸長を短くできるため、前記ガスタービンエンジンのエンジン効率を維持しつつ、前記ガスタービンエンジンの小型化及び軽量化を図ることができる。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る航空機用ガスタービンエンジンにおける遠心圧縮機の周辺の構成、及び本発明の実施形態に係る航空機用ガスタービンエンジンにおける遠心圧縮機の構成等について順次説明する。なお、図面に示すとおり、「FF」は、前方向、「FR」は、後方向である。
図2に示すように、本発明の実施形態に係る航空機用ガスタービンエンジン1は、燃料と圧縮空気(空気)Aとの混合気を燃焼させて、燃焼ガスGを生成する燃焼器3を装備している。そして、燃焼器3の構成について簡単に説明すると、次のようになる。
燃焼器3は、中空環状の燃焼器ケース5を具備しており、この燃焼器ケース5は、航空機用ガスタービンエンジン1のエンジン軸心1cと同心状に位置している。また、燃焼器ケース5内には、中空環状の燃焼器ライナ7が同心状に設けられており、この燃焼器ライナ7内には、燃料を燃焼させるための環状の燃焼室9が形成されている。
燃焼器ライナ7の前部(隔壁部)には、燃料を燃焼室9内に向かって噴射する複数(1つのみ図示)の燃料噴射弁11が周方向に間隔を置いて設けられている。また、各燃料噴射弁11には、燃料を供給するための燃料配管13が接続されており、各燃料配管13は、燃焼器ケース5の外側へ突出してある。そして、燃焼器ライナ7の前部における各燃料噴射弁11の周りには、圧縮空気Aを旋回流として燃焼室9内に導入するスワラ15が設けられている。更に、燃焼器ケース5には、燃料に着火(点火)する複数(1つのみ図示)の点火栓17が周方向に間隔を置いて設けられており、各点火栓17の先端部は、燃焼室9内に位置してある。なお、図示は省略するが、燃焼器ライナ7には、二次空気としての圧縮空気Aを導入するための複数の二次空気導入孔が貫通形成されている。
燃焼器3の後側(主流の流れ方向から見て下流側)には、燃焼ガスGの膨張によって回転力を発生させる高圧タービン19が配設されている。そして、燃焼器3の構成について簡単に説明すると、次のようになる。
高圧タービン19は、筒状の高圧タービンケース21を具備しており、この高圧タービンケース21は、エンジン軸心1cと同心状に位置している。また、高圧タービンケース21内には、燃焼器3からの燃焼ガスGを整流する高圧タービンステータ23が設けられており、この高圧タービンステータ23は、周方向に等間隔に並んだ複数(1つのみ図示)の高圧タービン静翼25を備えている。更に、高圧タービンケース21内における高圧タービンステータ23の後側には、高圧タービンロータ27がエンジン軸心1c周りに回転可能に設けられており、この高圧タービンロータ27は、周方向に等間隔に並んだ複数(1つのみ図示)の高圧タービン動翼29を備えている。
なお、図示は省略するが、高圧タービン19の後側には、燃焼ガスGの膨張によって回転力を発生させる低圧タービンが配設されている。
燃焼器3の前側(主流の流れ方向から見て上流側)には、遠心力を利用して空気Aを圧縮する遠心圧縮機31が配設されており、この遠心圧縮機31は、航空機用ガスタービンエンジン1の最終段の圧縮機として用いられるものである。そして、遠心圧縮機31の構成について簡単に説明すると、次のようになる。
遠心圧縮機31は、圧縮機ケース33を具備しており、この圧縮機ケース33は、エンジン軸心1cと同心状に位置してあって、燃焼器ケース5に接続されている。また、圧縮機ケース33は、内側にシュラウド(収容壁)35sを有した圧縮機ケース本体35と、この圧縮機ケース本体35の周り(外側)に設けられた中空環状のアウターフレーム37と、圧縮機ケース本体35の前部とアウターフレーム37の前部との間に連結するように設けられたサポート部材39とを備えている。
圧縮機ケース本体35内には、圧縮機インペラ41がエンジン軸心1c周りに回転可能に設けられており、この圧縮機インペラ41は、高圧タービン19からの回転力によって回転するものである。また、圧縮機インペラ41は、高圧タービンロータ27に中空の高圧タービン軸43を介して一体的に連結した圧縮機ディスク45を備えており、この圧縮機ディスク45のハブ面45hは、軸方向(航空機用ガスタービンエンジン1の軸方向)ADの一方側(前方向)から放射方向へ延びている。更に、圧縮機ディスク45のハブ面45hには、軸長の異なる2種類の圧縮機動翼47,49が周方向に交互に一体的に設けられており、各圧縮機動翼47(49)の先端縁47t(49t)は、圧縮機ケース本体35のシュラウド35sに沿うように延びている。なお、圧縮機ディスク45のハブ面45hに軸長の異なる2種類の圧縮機動翼47,49が一体的に設けられる代わりに、軸長の同じ複数の圧縮機動翼(図示省略)が周方向に間隔を置いて一体的に設けられるようにしても構わない。
圧縮機ケース本体35内における圧縮機インペラ41の入口側(直上流側)には、空気を圧縮機ケース33内に取入れるための空気取入口51が形成されている。そして、アウターフレーム37内における圧縮機インペラ41の出口側(直下流側)には、圧縮空気Aを減速させて昇圧する環状のディフューザ流路53が形成されており、このディフューザ流路53内には、圧縮空気Aを整流する複数のディフューザベーン55が周方向に間隔を置いて設けられている。また、アウターフレーム37内におけるディフューザ流路53の下流側には、昇圧した圧縮空気Aを燃焼器ケース5内へ案内する環状のガイド流路57が軸方向ADに対して平行に形成されており、このガイド流路57内には、昇圧した圧縮空気を整流する複数のガイドベーン59が周方向に間隔を置いて設けられている。更に、アウターフレーム37内におけるディフューザ流路53とガイド流路57との間には、曲がり流路61が形成されている。なお、遠心圧縮機31の構成から複数のディフューザベーン55を省略したり、ガイド流路57を軸方向ADに対して傾斜させたりしても構わない。
そして、本発明の実施形態に係る遠心圧縮機31にあっては、圧縮機インペラ41の出口の手前側からディフューザ流路53の出口側までのエリア(所定のエリア)63が径方向RDに対して軸方向ADの一方側へ傾斜するように構成されている。また、所定のエリア63の径方向RDに対する傾斜角θは、35度以下に設定されている。傾斜角θが35度を超えると、圧縮機インペラ41の出口の手前側における圧縮機ケース本体35のシュラウド35s付近に剥離が生じ易くなるからである。
なお、図示は省略するが、遠心圧縮機31の前側には、遠心圧縮機31によって空気Aを圧縮(高圧圧縮)する前に、空気Aを圧縮(低圧圧縮)する前段の圧縮機(1段目の軸流圧縮機、2段目の軸流圧縮機等)が配設されており、前段の圧縮機における複数の圧縮機ロータは、低圧タービンからの回転力によって回転するようになっている。
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
図示省略のスタータ装置の作動によってガイド流路57から燃焼器ケース5内へ圧縮空気Aが供給され、複数のスワラ15から燃焼室9内に導入される。また、複数の燃料噴射弁11によって燃料が燃焼室9内に向かって噴射され、複数の点火栓17によって混合気中の燃料に着火する。すると、燃焼室9で混合気を燃焼させて、燃焼ガスGを生成し、その燃焼ガスGの膨張によって高圧タービン19及び低圧タービンに回転力を発生させて、圧縮機インペラ41及び前段の圧縮機における複数の圧縮機ロータをそれぞれ回転させることができる。これにより、前段の圧縮機によって空気Aを圧縮(低圧圧縮)して、空気取入口51から取入れた圧縮された空気Aを更に圧縮(高圧圧縮)することができる。
一方、圧縮された圧縮空気Aは、複数のディフューザベーン55によって整流されつつディフューザ流路53によって昇圧され、複数のガイドベーン59によって整流されつつガイド流路57から燃焼器ケース5内へ供給(案内)される。なお、圧縮された圧縮空気Aが燃焼器ケース5内へ供給された後は、前述のように、燃焼器3、高圧タービン19、低圧タービン、前段の圧縮機、及び遠心圧縮機31を連続して稼働させる。
前述の作用の他に、所定のエリア63が径方向RDに対して軸方向ADの一方側へ傾斜するように構成されているため、図3に示すように、ディフューザ流路53の入口からガイド流路57の出口までの流路長さ(主流の流れ方向に沿った長さ)を十分に確保しつつ、所定のエリア63の傾斜に応じた分の長さΔLだけ、遠心圧縮機31の軸長を短くすることができる。これにより、ガイド流路57の出口側、換言すれば、燃焼器3の入口側における圧縮空気A(圧縮空気Aの流れ)の減速状態及び整流状態を良好に保ちつつ、航空機用ガスタービンエンジン1の軸長を短くすることができる。なお、図3において二点鎖線で描かれた圧縮機ケース33、ディフューザ流路53、ガイド流路57等は、所定のエリア63が径方向RDに対して傾斜していない状態を示している。
遠心圧縮機31が航空機用ガスタービンエンジン1における最終段の圧縮機として用いられ、前段の圧縮機に比較して、比速度が低く、流路面積が小さくなっているため、所定のエリア63が径方向RDに対して軸方向ADの一方側へ傾斜しても、圧縮機インペラ41内及びディフューザ流路53内において二次流れ又は剥離等が発生し難く、遠心圧縮機31の圧縮性能を維持することができる。
従って、本発明の実施形態によれば、遠心圧縮機31の圧縮性能を維持した上で、燃焼器3の入口側における圧縮空気Aの減速状態及び整流状態を良好に保ちつつ、航空機用ガスタービンエンジン1の軸長を短くできるため、航空機用ガスタービンエンジン1のエンジン効率を維持しつつ、航空機用ガスタービンエンジンの小型化及び軽量化を図ることができる。
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、例えば航空機用ガスタービンエンジン1に適用した技術的思想を発電用ガスタービンエンジン等の別のガスタービンエンジン(図示省略)に適用する等、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。