JP2014214193A - 土壌改良材及び土壌改良方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】原位置環境で土壌を、従来の方法と比較して、高効率かつ低コストで改良することができる、土壌改良材を提供する。
【解決手段】樹木の樹皮部、樹皮部を粉砕した粉体、樹皮部を粉砕した繊維状体のうちの少なくとも1つを含む、樹皮材から成り、樹皮材が未発酵の状態で土壌に使用される、土壌改良材を構成する。
【選択図】図11

Description

本発明は、土壌に散布もしくは混入させて土壌を改良させる、土壌改良材及びその土壌改良材を用いる土壌改良方法に係わる。
(塩性アルカリ土壌の改良)
中国における不良土地は、全耕地(1億ha)の約1/3に当たる。その中でも、塩性アルカリ土壌は約670万haにも及び大きな課題を抱えている。そこで、中国政府は、この不良土壌の農地化を進めるために、2007年に国家プロジェクト「塩性アルカリ土壌高収益性技術開発及び技術普及」を立ち上げた。その結果、現在いくつかの有効な技術が開発され、塩類、アルカリ成分の溶脱を促進する耕作法や、障害を抑制する土壌管理法等の成果の一部は実用段階にある。
特に、アルカリ土壌は、pHが8以上を示すだけでなく、土壌中に大量に存在するアルカリ金属、アルカリ土類金属を主体とする塩基類が、そのまま遊離の塩類となっている状態にあり、地下水位が高くなった場所では、それらの塩類が上層に押し上げられ、土壌表面に緻密で硬いNa層として形成されるまでに至っている。その結果、透水性を悪化させるため、このNa層の除去が土壌改良のキーポイントとなっている。
これに関して、1995年〜1999年にかけて行われた、研究プロジェクトが提案した手法が、注目されている。即ち、脱硫石膏(石炭燃焼で発生する亜硫酸ガスを除去するために脱硫剤として使用した消石灰の副産物)をNa層と反応させて、Ca2+を供給すると同時にNaを奪い取ることによって、徐々にNa層を崩壊させ、排水性、通気性及び易耕性を回復させようとするものである(例えば、非特許文献1を参照)。
現在、この方法に代わる、より高効率、低コストによる、塩性アルカリ土壌の改良方法が見つけられていない。
(VOCによる汚染土壌の改良)
土壌汚染物質の中で、特に、PCE(テトラクロロエチレン)等のVOC(Volatile Organochlorine Compound;揮発性有機塩素化合物)が地表に流出すると、液体状態でありながら土壌中の空気を汚染し、徐々に地下内部に浸透し、地下水汚染を引き起こす。
PCEで代表される、VOCによる土壌汚染への対策技術に関しては、その汚染の程度に関わらず、これまでは掘削除去が主に選択されてきた。
しかし、この手法は、コスト面で高額であり、汚染土壌の搬出時の汚染拡散等の懸念もあった。
平成22年4月に施行された改正土壌汚染対策法によると、これまでの掘削除去に代わって、原位置で浄化ができるバイオレメディエーションや化学的酸化分解等による、より効果的な土壌汚染対策へと移行している。
VOCの原位置での除去技術のうち、バイオレメディエーション法が、最も低コストで浄化できるため、注目されている。
しかし、このバイオレメディエーション法は、浄化対策期間(工期)が数ヶ月から年単位に及ぶことや、浄化効率が30〜40%と低い点が、課題となっている。
これに対して、浄化効率の点で優位にある化学的酸化分解法は、ヒドロキシルラジカル(・OH)を発現させて、その強い酸化力でVOCを分解(脱塩素化)するため、期待される手法となっている。このヒドロキシルラジカルは、過酸化水素水に二価の鉄イオン(Fe2+)を含んだフェントン試薬を共存させることで発現させており、これを原位置での土壌浄化に適用させたのがフェントン工法で、既に10年以上前にオランダで実用化されたものである(例えば、特許文献1を参照)。
特許文献1では、キレート触媒を用いて、中性域において、フェントン反応を用いてVOCの分解を行っている。
(塩害土壌の改良)
津波や高潮による、海水の突発的な浸水による農地の塩性化は、多量の塩化ナトリウムによって引き起こされる。このような農地では、塩分濃度が高まり、土壌中の水と作物間の浸透圧差が大きく、作物は水を吸収しにくくなる。また、微粒な土壌で構成される粘土に多くのナトリウムイオンが吸着される結果となり、粘土団粒構造が崩壊し、分散した粘土粒が土壌間隙に蓄積し、土壌の透水性を悪化させる。
この脱塩対策として、特に強い津波によってもたらされた泥土が厚い場合には、その泥土を除去することが好ましいが、作業時間の増大と処理コスト高が大きいため、真水を注入することによって塩分濃度を希釈化し、塩分含有水の農地外排水あるいはナトリウムイオン含有水の土壌への透水化を期待しているのが現状である。
特許第3793084号明細書
学振未来 WG3-11、No.G-67、「着々と進む脱硫石こうによる中国アルカリ土壌改良」
塩性アルカリ土壌の改良について、非特許文献1の方法のNaとCa2+の置換(交換)反応は急激な反応ではなく、徐々に進行するため、リーチング(水を用いた土壌洗浄)を加えても、土壌の改良には最短でも数ヶ月〜年単位を必要とする。即ち、Na層から離脱したナトリウムが何らかの陰イオンと結合して塩を作ってしまうため、土壌内部へと浸透させるには相当の月数がかかる。加えて、この手法は、たとえ副産物としての脱硫石膏を使用しているというものの、高い施工コストとなっている。
さらに、NaとCa2+の置換(交換)反応は、pHを下げるための酸性物質の注入は行っていないため、pHを8以下に下げることは困難であり、またEC(電気伝導度)は抑制されず、逆に増加する点も問題になっている。
PCEによる汚染土壌の改良について、VOCは、液体でありながら揮発性があるので、ガスとして土壌中に存在する他に、液体は水よりも重く、低粘性で表面張力が小さいため、土壌中への残存は少なく、地下に垂直方向に浸透し、深部まで及ぶ。
そのため、特許文献1の方法では、過酸化水素水やフェントン試薬を土壌地下に噴射注入する、大がかりなプラントが必要となっている。
また、特許文献1の方法では、噴射注入された地中において、副産物として多量の水酸化鉄スラッジ(赤茶色の鉄さびの汚泥)が生成する。
現在、水酸化鉄スラッジの量を低減させて、二次汚染を食い止めようとする研究がやっと開始された状況であり、例えば、オゾンや紫外線を過酸化水素水と併用させる促進酸化法が提案されているが、この方法は、原位置にオゾンや紫外線の発生器を設置しなければならず、浄化対策期間は最短でも数ヶ月を要し、イニシャルコスト高と合わせて大きな課題を抱えている。
塩害土壌の改良について、真水を注入して塩分濃度を希釈化する方法では、大量の真水が必要となり、また上述したように、塩分含有水の排水処理、又は、土壌への透水化が必要となる。
上述した問題の解決のために、本発明においては、原位置環境で土壌を、従来の方法と比較して、高効率かつ低コストで改良することができる、土壌改良材及び土壌改良方法を提供するものである。
本発明の土壌改良材は、樹木の樹皮部(バーク部)、樹皮部を粉砕した粉体、樹皮部を粉砕した繊維状体のうちの少なくとも1つを含む、樹皮材(バーク材)から成り、樹皮材が未発酵の状態で、土壌に使用されるものである。
本発明の土壌改良方法は、樹木の樹皮部、樹皮部を粉砕した粉体、樹皮部を粉砕した繊維状体のうちの少なくとも1つを含む、樹皮材から成り、樹皮材が未発酵の状態である土壌改良材を使用して、塩性アルカリ土壌、揮発性有機塩素化合物による汚染土壌、海水による塩害土壌のうち、少なくとも1つを含む原位置環境において、土壌に土壌改良材を、散布及び混入のうちの少なくとも1つを含む方法で供給し、原位置環境で土壌を改良する。
本発明の土壌改良材及び土壌改良方法として、樹皮部を利用する樹木としては、針葉樹や広葉樹の各種樹木を使用することが可能である。そして、各国で自生もしくは栽培されている樹木を使用することができる。
特に、それぞれの国で、樹皮部の入手や、樹皮部と材部との分離が容易であるため、一般的に木材として利用されている樹木が好ましい。例えば、日本では、杉等の樹木を利用することができる。
樹木の種類によって樹皮部のイオン等の吸着性能に差異はあるが、同じ樹木の材部と比較すると、樹皮部は、良好な吸着性能を有すると考えられる。
本発明の土壌改良方法において、特に、塩性アルカリ土壌や海水による塩害土壌の改良を行う場合には、好ましくは、樹皮材に水素イオンを吸着させたものを、土壌改良材として使用する。
水素イオンを吸着させる樹皮材としては、樹皮部そのもの、樹皮部を粉砕した粉体、樹皮部を粉砕した繊維状体のうちの少なくとも1つを使用することができる。
本発明の土壌改良方法において、特に、揮発性有機塩素化合物による汚染土壌の改良を行う場合には、好ましくは、樹皮材に二価鉄イオン(Fe2+)と過酸化水素水、還元剤を混合したものを、土壌改良材として使用する。
上述の本発明によれば、原位置環境で土壌を改良することができ、従来の方法と比較して、高効率かつ低コストで改良することができる。
PCE分解のための実験装置を示す図である。 PCE注入開始後の経過時間に対するPCEガス濃度Cgの変化を示す図である。 A〜C 脱PCE処理期間の1日目で各土壌管から捕集された排液を十分に撹拌した状態を撮影した写真である。 D〜F 図3A〜図3Cの状態から1日間静置した状態を撮影した写真である。 A〜C 脱PCE処理期間の2日目で各土壌管から捕集された排液を十分に撹拌した状態を撮影した写真である。 A〜C 脱PCE処理期間の3日目で各土壌管から捕集された排液を十分に撹拌した状態を撮影した写真である。 1号機に注入した処理液(1)を撮影した写真である。 2号機に注入した処理液(2)を撮影した写真である。 3号機に注入した処理液(3)を撮影した写真である。 A、B 溶媒として井戸水を使用した処理液を撮影した写真である。 A、B 溶媒として井戸水を使用した処理液にオリジナルバークを添加したものを撮影した写真である。 No.1土壌の充填後からの経過日数に対する、11号土壌管からの排液のNaイオン濃度の変化を示す図である。 No.1土壌の充填後からの経過日数に対する、11号土壌管からの排液のpHの変化を示す図である。 No.2土壌の充填後からの経過日数に対する、21号土壌管及び22号土壌管からの排液のNaイオン濃度の変化を示す図である。 No.2土壌の充填後からの経過日数に対する、21号土壌管及び22号土壌管からの排液のpHの変化を示す図である。 No.2土壌の充填後からの経過日数に対する、21号土壌管及び22号土壌管からの排液量の変化を示す図である。 No.1土壌の11号土壌管処理土の15日目の発芽状況を示す写真である。 No.1土壌の12号土壌管処理土の15日目の発芽状況を示す写真である。 No.1土壌の11号土壌管処理土の25日目の発芽状況を示す写真である。 No.1土壌の12号土壌管処理土の25日目の発芽状況を示す写真である。 No.2土壌の21号土壌管処理土の15日目の発芽状況を示す写真である。 No.2土壌の22号土壌管処理土の15日目の発芽状況を示す写真である。 No.2土壌の21号土壌管処理土の25日目の発芽状況を示す写真である。 No.2土壌の22号土壌管処理土の25日目の発芽状況を示す写真である。
以下、発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態とする)について説明する。
(本発明の概要)
まず、本発明の概要について説明する。
本発明の土壌改良材は、杉等の樹木の樹皮部(バーク部)を使用して、樹皮材(バーク材)からなる土壌改良材を構成する。樹皮材は、樹皮部自体、樹皮部を粉砕した粉体、樹皮部を粉砕した繊維状体のうちの少なくとも1つを含む。
そして、本発明の土壌改良材は、樹皮材が未発酵の状態で土壌に使用されるものである。
また、本発明の土壌改良方法は、上述の本発明の土壌改良材を用いて、塩性アルカリ土壌、揮発性有機塩素化合物(VOC)による汚染土壌、並びに、海水による塩害土壌のうち、少なくとも1つを含む原位置環境において、土壌改良材を散布又は混入させることにより土壌に供給して、土壌の改良を行う。
本発明の土壌改良材及び土壌改良方法として、樹皮部を利用する樹木としては、前述したように、針葉樹や広葉樹の各種樹木を使用することが可能であり、各国で自生もしくは栽培されている樹木を使用することができる。
特に、樹皮部の入手や、樹皮部と材部との分離を容易に行うことができる、一般的に木材として利用されている樹木が好ましい。
例えば、杉は、日本国内で樹皮部の入手が容易であり、樹皮部と材部との分離も容易である。
例えば、杉の樹皮材を用いる場合には、樹皮部を粉砕した、粉体(平均粒径約10μm前後)、もしくは、繊維状体(厚さ約0.1mm以下、幅約2mm以下、長さ約30mm以下)を用いることが好ましい。
本発明の土壌改良材において、樹皮材にイオンが吸着されている構成や、イオンが吸着されている樹皮材とイオンが吸着されていない樹皮材を共に含む構成とすることが可能である。
樹皮材に吸着されているイオンとしては、例えば、水素イオンが挙げられる。水素イオンが吸着された樹皮材は、水素イオンと他の陽イオン(ナトリウムイオン等)とイオン交換させることができる。
イオンが吸着されていない樹皮材は、陽イオンを吸着する性質を有しており、例えば、二価の鉄イオン(Fe2+)、三価の鉄イオン(Fe3+)、ナトリウムイオン等を吸着することができる。また、イオンが吸着されていない樹皮材は、親水性を高める作用かあるため、土壌の透水性を向上することが可能になる。
(塩性アルカリ土壌や海水による塩害土壌の改良)
本発明の土壌改良方法において、特に、塩性アルカリ土壌や海水による塩害土壌の改良を行う場合には、樹皮材(樹皮部そのもの、樹皮部を粉砕した粉体、樹皮部を粉砕した繊維状体のうちの少なくとも1つ)に水素イオンを吸着させたものを、土壌改良材として使用することが好ましい。
本願の発明者らは、樹皮材が水素イオンに対する強い吸着力を有しており、それが土壌においてはNaとHの置換(交換)反応に優れており、また、樹皮材が土壌中から脱離させたNaを土壌中に流下させる浸透力にも優れている点に注目した。
さらに、樹皮材固有の弱酸性度(pH=5.6〜6.1)による中和力、加えて樹皮材が有機肥料にもなり、固い土壌を和らげる作用を担うため、非特許文献1に記載された方法と比較しても、高効率、低コストによる土壌改良が達成できる。
土壌改良の工期として、日本の場合、3ヶ月以内と規定する市町村が多いが、本発明による土壌改良方法は、その工期を満たす十分な施工期間に該当する。
ここで、塩性アルカリ土壌の改良に関する本発明の土壌改良方法の一実施の形態を説明する。
まず、樹皮材として、樹木の樹皮部を粉砕した粉体又は繊維状体を塩化水素水溶液に浸漬させた後に、乾燥させることによって、樹皮材に水素イオンを吸着させる。
塩性アルカリ土壌の原位置において、水素イオンを吸着させた樹皮材(粉体又は繊維状体)を、土壌1Lに対して少なくとも20gかそれ以上の割合で混ぜ、それを散布あるいはその土壌と混合させる。
より好ましくは、土壌30L(0.03m)に対して、投入する樹皮材を、少なくとも600gかそれ以上とする。農地として耕作する土壌の深さを0.3mと想定すれば、1mの広さの耕地に対して、少なくとも6kgかそれ以上を必要とする。
水素イオンを吸着させた樹皮材は、樹皮材に飽和するまで水素イオンを吸着させたものや、水素イオンで飽和していない程度に水素イオンを吸着させたものが挙げられる。
また、樹皮材に飽和するまで水素イオンを吸着させたものと、水素イオンが吸着されていない樹皮材(オリジナルバーク材)とを混合して使用することも可能である。これら2種類の樹皮材を混合すると、水素イオンとナトリウムイオンとのイオン交換性能と、オリジナルバーク材の親水性によるナトリウムイオンの透水性の向上効果とを共に得ることができる。そして、混合比率を変えることにより、土壌改良材全体の特性を調節することができる。この場合、上述した1mの広さの耕地当たり6kg以上の水素イオンを吸着させた樹皮材に、適切な量の無吸着の樹皮材を混合して使用する。
なお、雨による土壌への吸水が十分に期待される場所においては、樹皮材のみを土壌に混合させることが可能であるが、この場合、風などによってバーク粉体あるいはバーク繊維材が大気に飛散しないようにする必要がある。
また、土壌表面に緻密で硬いNa層が形成されるまでに至っている土壌に対して、樹皮材を混合させるには、固い土壌をも耕すことのできる、エンジン駆動式の耕運機が便利である。
次に、海水による塩害土壌の改良に関する本発明の土壌改良方法の一実施の形態を説明する。
この場合、塩害土壌の原位置において、水素イオンを吸着させた樹皮材(粉体又は繊維状体)を、土壌に散布又は混合する。混合する場合には、乾燥した水田、耕地、あるいは浸水している水田、耕地のそれぞれに適した耕運機等によって、樹皮材と土壌とを混合させる。
塩害土壌の場合には、上述した塩性アルカリ土壌よりも、土壌中のナトリウムイオンの濃度が低いので、樹皮材の1mの広さの農地に対して、水素イオンを吸着させた樹皮材を約100g以上使用する。
また、必要に応じて、1mの広さの農地当たり役100g以上の水素イオンを吸着させた樹皮材に、適切な量の無吸着の樹皮材を混合して使用する。
(揮発性有機塩素化合物による汚染土壌の改良)
また、本発明の土壌改良方法において、揮発性有機塩素化合物(VOC)による汚染土壌の改良を行う場合には、樹皮材(樹皮部そのもの、樹皮部を粉砕した粉体、樹皮部を粉砕した繊維状体のうちの少なくとも1つ)に二価鉄イオン(Fe2+)と過酸化水素水、還元剤を混合したものを、土壌改良材として使用することが好ましい。
このような方法によれば、特許文献1に記載された方法で必要となるプラントやユニットが不要になり、樹皮材を過酸化水素水等と共に、散布又は混入で汚染土壌に供給するのみで良い。従って、浄化対策期間は僅か7〜10日となり、数ヶ月以上を要する特許文献1の方法と比較して、浄化対策期間を大幅に短くすることができる。土壌改良材の土壌への混入は、例えば、耕運機にて土壌に混ぜ込めば良い。
また、本発明の土壌改良方法では、特許文献1の方法で使用していたpHの調整剤は不要であり、Fe3+をFe2+に移行させる還元剤を用いていることによってフェントン反応の促進及び持続を図ることができる。また、樹皮材によるFe3+の吸着によって水酸化鉄スラッジの生成を抑制することができる。さらに、Fe2+及びFe3+を吸着した樹皮材は、樹皮材自体の持つ親水性によって、土壌内部への浸透性を促進させることもできる。
ここで、VOCによる土壌汚染対策に関する本発明の土壌改良方法の一実施の形態を説明する。
まず、硫酸アンモニウム鉄(II)六水和物と6N(規定)塩酸との混合液によって、二価鉄イオンを発現させる。
次に、この二価鉄イオン水溶液に、ごく薄い過酸化水素水(3%)を混ぜ、フェントン反応を実現させる。このフェントン反応時において、新たに塩酸ヒドロキシルアミン水溶液を混合させ、酸化した三価鉄イオンを二価鉄イオンに還元する。これらの材料により、地下内部に浸透しながらラジカルの発生を持続させ、水酸化鉄スラッジの発生を極力抑え、PCE等のVOCを分解させることが可能になる。
さらに、上記の手法に加えて、オリジナルバーク材(イオンの吸着のない樹皮材)を水に混ぜて、その混合液を汚染土壌の地表において散布する。これにより、樹皮材混合液による三価鉄の吸着効果を発揮させて、水酸化鉄スラッジの発生を抑えることができる。
即ち、二価鉄イオン水溶液と、3%過酸化水素水と、塩酸ヒドロキシルアミン水溶液、及びオリジナルバーク材混合液を、汚染土壌の地表に散布するのみで、原位置でVOCの浄化を行うことができる。
なお、例えば杉のオリジナルバーク材を使用する場合の、混合液を構成する水溶液の好ましい濃度とオリジナルバーク材の好ましい量は、以下の通りである。
二価鉄イオン水溶液は、汚染土壌中の各VOCの水溶液濃度の5倍に相当する濃度とする。
オリジナルバーク材は、水1Lに対してオリジナルバーク材を10gかそれ以上混合した、バーク液とする。
そして、土壌30L(0.03m)に対して、混合液を5Lの割合として、混合液を土壌の表面に散布する。
これにより、水酸化鉄(III)によるスラッジの生成は抑制され、土壌中のVOCは分解される。
ところで、樹皮材を利用した土壌改良材として、「バーク堆肥」と呼ばれるものが生産、使用されている。
バーク堆肥は、樹木の樹皮部を粉砕したものに、栄養素や発酵補助剤を加えて、数ヶ月かけて発酵させることにより、作製されている。
バーク堆肥は、このように、樹皮材を発酵させるため、作製に数ヶ月を要する。これに対して、本発明では、樹皮部自体もしくは樹皮部を粉砕した樹皮材を、非発酵の状態で土壌改良材として使用するので、粉砕後にすぐ使用することが可能であり、作製に長期間を要しない。
また、バーク堆肥は、一般的な土壌で地力を改良するために使用されている。これに対して、本発明に係る土壌改良材は、塩やVOCによって汚染されていて植物の栽培に適さない土壌を改良するために使用するものであり、改良の対象とする土壌がバーク堆肥とは異なる。
なお、本発明の発明者らが先に出願した、特許出願(特許第5019291号明細書を参照)では、脱リグニン処理を行わない木質バイオマスが用いられているが、木質バイオマスの表面にドライの状態下で金属を吸着させるために、第1プラズマ照射工程として、酸素ガスを用いた低温プラズマ雰囲気にその木質バイオマスを約60分間放置して、その木質バイオマスの表面に金属イオンを吸着する官能基を担持させている。
これに対して、水素イオン並びに金属イオンを木質バイオマスに吸着させる本発明の方法は、そのイオンを含む溶液に木質バイオマスを浸漬させ、乾燥させて得ることを特著とするウェット法であり、プラズマは使用せず、使用する木質バイオマスは、先に出願した特許出願の方法によって作成された官能基付与木質バイオマスに限定されず、未処理(非プラズマ照射)の木質バイオマスそのものも使用可能である。
さらに本発明では、木質バイオマスとして、他の木質バイオマスと比べ、水素イオンや金属イオンの吸着に優れている、樹皮材(バーク材)に限定している。
<土壌管によるPCEの分解実験>
(実験の概要)
PCEが十分に吸着された垂直土壌管を用い、PCEの分解及び水酸化鉄スラッジの発生状況に及ぼす杉オリジナルバーク材混入による影響を調べるため、下記の3種類の処理液を準備した。
(1)二価鉄イオン水溶液+3%過酸化水素水+塩酸ヒドロキシルアミン水溶液+オリジナルバーク粉体混合液
(2)二価鉄イオン水溶液+3%過酸化水素水+塩酸ヒドロキシルアミン水溶液
(3)二価鉄イオン水溶液+3%過酸化水素水
ここで、二価鉄イオン水溶液は、100mLの蒸留水に硫酸アンモニウム鉄(II)六水和物0.7022gを入れ、さらに6N塩酸を0.2mL加えたもので、このとき1000ppmの二価鉄イオン水が100.2mL生成される。
(1)〜(3)の各処理法を3本の垂直土壌管で実施し、水酸化鉄スラッジの発生状況の違いを、土壌管下端からの排液の色から定性的に調べた。
(1)及び(2)に関しては、PCEが十分吸着された土壌管を用い、PCEが分解・除去されるまでの処理液量を日数の変化として定量的に調べた。
(実験装置の説明)
実験に使用した、PCE分解のための実験装置を、図1に示す。
図1に示すように、土壌管として、内径150mm、肉厚10mm、長さ1500mmの硬質ガラス管101を3本使用した。
また、土壌102として、それぞれの土壌管の硬質ガラス管101の内部に、市販の関東赤玉土(小粒)を約30L充填し、ほぼ満タンにした。
各土壌管を垂直に保持し、管の下端にはロート103を取り付けた。ロート103の下には土壌管からの排液を捕集する受け容器105を配置した。
このようにして、3本の土壌管(1号土壌管、2号土壌管、3号土壌管)を設置した。なお、以下、1号土壌管を「1号機」、2号土壌管を「2号機」、3号土壌管を「3号機」と称する。
(実験内容の説明)
そして、図1に示す実験装置を使用して、土壌管の上端から注入液104を注入し、土壌102内に浸透させて、土壌管の下端からロート103を介して滴下した注入液を受け容器105にて捕集した。
管内土壌の初期状態を設定するために、1日1回、1Lの水を土壌管の上端から注入した。その結果、約6日を要して、6Lの水の注入によって、土壌は上下一様に水を吸着し、土壌管の下端から水の滴下が認められた。
なお、水及び溶媒には、全て蒸留水を使用した。
次に、水中濃度Cw=10ppmのテトラクロロエチレン(PCE)1Lを、1日1回、1号機と2号機の各土壌管の上端から注入して、土壌管の上端をラップフィルムとアルミ箔で密閉した。
PCEを注入してから24時間経過後には、注入量とほぼ同量の1Lの液が受け容器105に捕集された。この捕集された液を、直ちにテトラクロロエチレン専用の検知管(GASTEC社製)でそのガス濃度Cgを測定した。このとき、捕集された液は、透明の澄んだ状態であった。
この1日1回のPCE1Lの注入及び捕集液の回収とPCEガス濃度の測定を継続して行った。その結果得られた、PCE注入開始後の経過時間(日数)に対するPCEガス濃度Cgの変化を、図2に示す。
なお、ガス濃度Cgと水中濃度Cwとの換算式は、鈴木喜計他(1989)「有機塩素化合物による地質汚染簡易調査法」公害と対策、p.25による、以下の式を用いた。

ここで、M:有機溶剤の分子量(PCE=165.8)
:検査する液の容量(L)(V=0.4L)
H:気液分配係数(ヘンリー数)温度Tの関数(0.3〜0.7)
:検査容器の気体の容積(L)(V=0.5L)
R:気体定数(0.082)
T:検査容器内の温度(℃)
上記の換算式からCgとCwの関係を求めると、温度によって大きく変化するが、
Cg=Cw×(40〜50)=10ppm×(40〜50)=400ppm〜500ppm
となる。このことは、10ppmの水中濃度のPCEをガス検知管で測定すれば、ガス濃度Cgは400ppm〜500ppmを示すはずであることを意味する。
しかしながら、図2によると、測定されたガス濃度はかなり低い値を示している。このことは、PCEは土壌中に相当量が吸着されていることを意味している。
図2によると、1号機と2号機で、ガス濃度の変化の割合が異なっている。これは、恐らくは、土壌内でのPCEの吸着割合に差があるものと考えられる。
しかしながら、両者とも、ある濃度で飽和し、その後、やや濃度が減少する傾向が見られる。この時点で両者とも、PCE(Cw=10ppm1L)の注入を止めて、約20日間の無処理の期間をおいた。この放置期間を設けた理由は、以下の通りである。
連続的に土壌にPCEを注入し続け(1号機では約40日間、2号機では約30日間)、その土壌からの排液PCE濃度がほぼ飽和状態に達したと言うことは、この土壌(関東小粒赤玉土30L)は、ある濃度のPCEを吸着・保持できる浄化能力(土壌吸着係数)を有していることを意味する。
土壌が吸着・保持能力を有しているといっても、PCEは揮発性物質であるため、水中からあるいは土壌中から蒸発して濃度が減少することが考えられる。
そこで、約20日間の無処理(液の注入無し)での放置期間を設けた。当然、この間は排液の滴下は生じない。
無処理放置期間後、今度は、1号機及び2号機に、1日1回、1Lの水のみの注入を開始し、排液中でのPCE濃度を測定し、土壌にどの程度PCEが吸着・保持されているかを調べた。このときのPCE濃度の測定結果も、図2に併せて示す。
図2によると、1Lの水のみの注入開始後、排液中のPCEの濃度は0ppmに近い低濃度から徐々に増加し、5日後には1号機の場合4ppm、2号機の場合は約7ppmまで上昇し、ほぼ定常値を示した。土壌は依然としてPCEを吸着・保持していることがわかる。
次に、この状態で、土壌中のPCEの完全除去を目的として、上記の処理液(1)と(2)の注入を実施した。
1号機においては、(1)の処理液、即ち、二価鉄イオン水溶液50ppm1Lと、3%過酸化水素水1Lと、塩酸ヒドロキシルアミン水溶液50ppm1Lと、バーク水1L(1Lの水にオリジナルバーク粉体10gを混入)の合計4Lの水溶液を注入した。
2号機においては、(2)の処理液、即ち、二価鉄イオン水溶液50ppm1Lと、3%過酸化水素水1Lと、塩酸ヒドロキシルアミン水溶液50ppm1Lと、水1Lの合計4Lの水溶液を注入した。
それぞれ処理液を1日1回注入して、24時間後の排液(約4L)のPCE濃度と排液の色を調べた。
ここで、二価鉄イオン水溶液濃度及び塩酸ヒドロキシルアミン水溶液濃度を、PCEの初期設定濃度の5倍に相当する50ppmに選定した。その理由は、これ以下の濃度ではPCEの完全除去に相当の時間を要すること、またこれ以上の濃度では確かに濃度とともにPCEの完全除去時間は短縮されるが、フェントン反応での副産物である水酸化鉄スラッジが増える、というトレードオフの関係にあるためである。
なお、過酸化水素濃度は、高い濃度のものを使用する必要はなく、好ましくは3%程度である。
図2の「脱PCE」の処理期間に示されるように、PCE濃度は急激に減少し、1号機、2号機ともに、4日目には0ppmを示した。
次に、比較対照として、1号機及び2号機への処理液の注入開始に合わせて、PCEを含有させていない3号機に、上記の処理液(3)、即ち、二価鉄イオン水溶液50ppm1L+3%過酸化水素水1L+水2Lの合計4Lの水溶液の注入を行った。
脱PCE処理4日目の土壌管(1号機、2号機、3号機)内の土壌(管の上部、管の中部、管の下部)を採取して、その土壌に含有されているPCE、pH及びFe2+の濃度を測定した。
ここで、PCEの測定法は、ガスクロマトグラフ質量分析法で行った。pHの測定は、ガラス電極法で行った。
Fe2+(二価鉄イオン)の濃度の測定は、フェナントロリン吸光光度法を試みたところ、ろ過の際に孔径0.45μmのメンブランフィルターを通したため、検出されなかった。そのため、簡易型のハンディ水質計、二価鉄イオン用AQ−103(柴田科学株式会社製)を用いて、Fe2+の濃度を測定した。
それぞれの濃度の測定結果を、表1に示す。
表1の結果から明らかなように、1号機、2号機、3号機とも、PCE、pH、Fe2+のいずれも局所の違いが生じており、PCEとFe2+については、管の下方につれて、それらの濃度は高く現れている。これは、PCE及びFe2+は、処理液と共に土壌中を流下し、一部は排液となって土壌から脱離するが、依然として土壌中に累積し含有保持されることを意味している。その結果として、pHに関しても局所で差が生じ、下方に向かってpHは小さく現れている。
3号機については、1号機や2号機と比べて、管の中部と下部での値が同じであることから、土壌中への処理液の浸透性とそれに伴う脱離作用が弱いものと考えられる。
続いて、1号機、2号機、3号機について、受け容器105で捕集した排液の色を比較した。
脱PCE処理期間の第1回目(1日目)で、各土壌管から捕集された排液(約4L)を、十分に撹拌した状態を撮影した写真(液撹拌)を、図3A〜図3Cに示し、その後1日間静置して沈殿物が容器の底に観察される状態を撮影した写真(液静置)を、図3D〜図3Fに示す。図3A及び図3Dは1号機、図3B及び図3Eは2号機、図3C及び図3Fは3号機からそれぞれ捕集された排液である。
液撹拌の状態では、図3Aに示す1号機よりも、図3Bに示す2号機の方がより濃い茶色を示し、図3Cに示す3号機はさらに一層濃い茶色を示していた。
液静置の状態では、図3Dに示す1号機で、底にバークの微粒体との反応によって生じたと思われる沈殿物が観察された。図3Eに示す2号機では、底に水酸化鉄スラッジの沈殿が観察された。図3Fに示す3号機では、土壌そのものの濁りも加わり、2号機よりも多くの沈殿物が観察された。
同様に、脱PCE処理期間の第2回目(2日目)で捕集された排液の液撹拌の状態を、図4A〜図4Cに示し、脱PCE処理期間の第3回目(3日目)で捕集された排液の液撹拌の状態を、図5A〜図5Cに示す。図4A及び図5Aは1号機、図4B及び図5Bは2号機、図4C及び図5Cは3号機からそれぞれ捕集された排液である。
図4A〜図4C及び図5A〜図5Cでも、図3A〜図3Cと同様の排液の色の違いが認められた。
以上の結果から、1号機での処理法が、最も水酸化鉄スラッジによる濁りとその沈殿量が少ないことが分かった。
ここで、脱PCE処理において、1号機に注入した処理液(1)を撮影した写真を図6に示し、2号機に注入した処理液(2)を撮影した写真を図7に示し、3号機に注入した処理液(3)を撮影した写真を図8に示す。
図6に示す処理液(1)は、前述したように、二価鉄イオン水溶液50ppm1Lと、3%過酸化水素水1Lと、塩酸ヒドロキシルアミン水溶液50ppm1Lと、バーク水1L(1Lの水にオリジナルバーク粉体10gを混入)で合計4Lとしたものである。なお、バーク水は1Lの水にオリジナルバーク粉体10gを混入し、撹拌後バークを金網で除去したものである。
図7に示す処理液(2)は、前述したように、二価鉄イオン水溶液50ppm1Lと、3%過酸化水素水1Lと、塩酸ヒドロキシルアミン水溶液50ppm1Lと、水1Lで合計4Lとしたものである。
図8に示す処理液(3)は、前述したように、二価鉄イオン水溶液50ppm1Lと、3%過酸化水素水1Lと、水2Lで合計4Lとしたものである。
図8に示した処理液(3)のような、二価鉄イオン水溶液と過酸化水素水との混合水溶液では、二価鉄イオン水溶液の濃度が高ければ高い程、過酸化水素水との反応、即ちフェントン反応において水酸化鉄スラッジが多量に生成して、赤茶色がより濃く現れる。
従って、フェントン反応においてヒドロキシラジカル(・OH)を発生させ、PCEを分解させる場合、過度の濃度の二価鉄イオン水溶液を用いることは、副産物である水酸化鉄スラッジを多量に生成させる結果となる。
図7に示す処理液(2)は、図8に示す処理液(3)よりも色が薄くなっている。即ち、塩酸ヒドロキシルアミン水溶液を加えることによって、酸化した三価鉄イオンが二価鉄イオンに還元され、水酸化鉄スラッジの発生が抑えられていることがわかる。
図6に示す処理液(1)は、杉オリジナルバーク粉体の混入によって、液の色としては3者のうちで最も濃い褐色を示している。しかし、この処理液を土壌に注入したところ、図3〜図5で示されたように、水酸化鉄スラッジの発生が極力抑えられた。
このことは、バークの微粒子(平均粒径約10μm前後)の表面に、三価鉄がイオン結合によって吸着され、水酸化鉄スラッジの生成が抑制されたものと考えられる。
ここで、処理液(1)〜(3)の二価鉄イオン濃度とpHの測定結果を、表2に示す。pHはガラス電極法で測定を行い、Fe2+(二価鉄イオン)濃度はフェナントロリン吸光光度計で測定を行った。
表2によれば、三価の鉄を二価の鉄に還元する塩酸ヒドロキシルアミン水溶液を添加した処理液(1)と処理液(2)は、添加しない処理液(3)と比べ、二価鉄イオン濃度が高く、約2倍を示している。
また、pHの数値によると、表2の処理液では酸性度が強いが、これらの処理液で処理された土壌は、表1で明らかなようにpH値はさほど低くはない。特に、オリジナルバーク粉体を含んだ処理液(1)を用いた1号機の上部土壌に関しては、pH=7と高く現れている。このことは、後述する表5によると、杉のバークのHの吸着率が大きく、酸性度を弱め、よりアルカリ性へと移行していることからも判断できる。
なお、本発明による土壌改良の手法について、二価鉄イオン水溶液の濃度の検討を行った結果、PCEの濃度の約5倍(PCE=10ppmならば、その5倍の50ppm)の二価鉄イオン水溶液の濃度が最適であることが判明した。
(溶媒の影響の検討)
前述した処理液(1)〜(3)では、溶媒として全て蒸留水を使用していた。
ここで、溶媒として井戸水を使用した場合の影響について調べた。
即ち、溶媒として井戸水(飲料水としては不向きな地下水)を使用して、二価鉄イオン濃度が50ppmの水溶液2Lを作製した。
作製した水溶液について、図3に示したと同様に、液撹拌状態と液静置状態で着色の状況を調べた。液撹拌状態で撮影した写真を図9Aに示し、液静置状態で撮影した写真を図9Bに示す。
図9A及び図9Bからわかるように、溶媒に井戸水を使用したことにより、蒸留水を使用した場合と比較して、着色が著しくなった。これは、井戸水に含まれる水酸化物イオンや塩素イオンによって、水酸化鉄(III)、即ち酸化微粒子(赤茶色)の沈殿物が徐々に生成されることに起因する。なお、図8に既に示したように、二価鉄イオン水溶液に過酸化水素水を混合すれば、直ちに水酸化鉄(III)の沈殿物が生成される。
汚染土壌の浄化の目的で二価鉄イオン水溶液を使用する際に、一般に水道水や井戸水が使用されるが、これらの水を使用すると、過酸化水素水を投入する前に既に水酸化鉄(III)が生成されることになる。
そこで、水道水や井戸水を溶媒に使用するときには、水酸化鉄(III)から鉄を吸着する物質として、杉等の樹木のオリジナルバーク材を添加することが望ましい。
ここで、図9A及び図9Bに示した水溶液に対して、1Lの水に杉のオリジナルバーク粉体や杉のオリジナルバーク繊維材を10g混合した溶液を添加して、オリジナルバーク材による鉄の吸着効果を調べた。オリジナルバーク粉体を添加したものを撮影した写真を図10Aに示し、オリジナルバーク繊維材を添加したものを撮影した写真を図10Bに示す。
図10A及び図10Bに示すように、いずれも、水酸化鉄(III)による着色が直ちに消滅し、バーク材による鉄の吸着効果が確認された。
(実施例1の結果のまとめ)
上述した実施例1の結果からわかるように、PCEで汚染された土壌を浄化するための処理水として、PCE濃度の5倍に相当する濃度の二価鉄イオン水溶液と、3%過酸化水素水と、塩酸ヒドロキシルアミン水溶液と、バーク水(水1Lに対してオリジナルバーク粉体10gかそれ以上)を、土壌の表面に散布することにより、水酸化鉄(III)によるスラッジの生成が抑制され、土壌中のPCEが分解される。
このとき、好ましくは、土壌30L(0.03m)に対して、処理水5L程度を土壌の表面に散布する。
また、オリジナルバーク粉体及びオリジナルバーク繊維材は、土壌中においてFeを吸着・保持する。
<オリジナルバーク材添加による二価鉄イオンの減少実験>
二価鉄イオン水溶液に、オリジナルバーク材を添加して、二価鉄イオンの吸着による減少の程度を調べた。
添加前の二価鉄イオン水溶液として、二価鉄イオンFe2+の濃度が48mg/Lの水溶液を用意した。
そして、この二価鉄イオン水溶液に、杉のオリジナルバーク繊維材を添加して、二価鉄イオン水溶液100mL当たりのオリジナルバーク繊維材の添加量がそれぞれ0.5g、1.0g、1.5gである、3種類の試料を作製した。
作製した各試料について、オリジナルバーク繊維材を添加して10分撹拌した後の二価鉄イオンFe2+の濃度を測定した。濃度の測定はフェナントロリン吸光光度法で行った。
各試料の濃度の測定結果と、測定結果から算出したFe2+の濃度の吸着率(減少率)を、表3に示す。
表3によれば、オリジナルバーク繊維材の添加量の増加と共に、二価鉄イオンの吸着率は増している。
二価鉄イオンの吸着に関して、オリジナルバーク材の量は、水1L中にオリジナルバーク材(バーク粉体あるいはバーク繊維材)は10gより多い方が好ましい。
<バーク材添加によるナトリウムイオン濃度の減少実験>
ナトリウムイオン水溶液に、オリジナルバーク材を添加して、ナトリウムイオンの吸着による減少の程度を調べた。
実施例1〜実施例2は、PCEで汚染された土壌の改良を想定していたが、この実施例3は、塩性アルカリ土壌や塩害を受けた土壌の改良を想定している。
添加前のナトリウムイオン水溶液として、ナトリウムイオンNaの濃度がそれぞれ、8.5mg/Lと8.3mg/Lである、2種類のNaOH水溶液を用意した。
そして、このナトリウムイオン水溶液に、杉のオリジナルバーク粉体を添加して、ナトリウムイオン水溶液(NaOH水溶液)450mL中へのオリジナルバーク粉体の添加量がそれぞれ1.5g、4.5gである、2種類の試料を作製した。
作製した各試料について、オリジナルバーク粉体を添加して10分撹拌した後のナトリウムイオンNaの濃度を測定した。Naの濃度の測定は、東亜ディーケーケー株式会社製のポータブルイオン・pH計(IM−32P)とナトリウムイオン電極NA−2011を用いて行った。
各試料の濃度の測定結果と、測定結果から算出したNaの濃度の吸着率を、表4に示す。
表3と表4とを比較すると、オリジナルバーク材によるナトリウムイオンの吸着率は、二価鉄イオンの吸着率よりも小さいことがわかる。
また、表4の結果から、バーク材の添加量が多い方がNaイオンの吸着率が高いため、バーク混合水溶液によるNaイオンの吸着を目的とした場合、バーク材の添加量は、水1L当たり10gよりも多い方が好ましい。
<各種高分子材料による水溶液中に含有する金属イオン及び水素イオンの吸着効果>
バーク材による金属イオン及び水素イオンの吸着効果を、各種高分子材料による金属イオン及び水素イオンの吸着効果と比較した。
(試料調整方法)
各種木材や各種高分子材料を使用して、金属イオン及び水素イオンの水溶液に投入し、それぞれの材料の金属イオン及び水素イオンの吸着効果を調べた。
木材としては、杉のバーク繊維材、杉のウッドチップ、杉のペレットを用意した。
高分子としては、PA(ポリアミド)樹脂、PC(ポリカーボネイト)樹脂、PE(ポリエチレン)樹脂、中空糸綿を用意した。
それぞれの木材及び高分子材料について、プラズマを照射した試料と、プラズマを照射していない試料とを用意した。
金属イオン水溶液としては、初期濃度が50ppmの二価鉄イオンFe2+水溶液と、初期濃度が3.5%(ナトリウムイオンNa濃度が約14000ppm)の食塩水を用い、水素イオン水溶液としては、蒸留水に希塩酸を加えて調整して約pH=2に調整した水溶液を用いた。
これらの金属イオン水溶液及び水素イオン水溶液、それぞれ100mLに、木材や高分子材料の各試料を10gの割合で投入し、10分振とう撹拌後30分、静置して、ろ過しない上澄み液を分析に供した。
各試料の金属イオン濃度(Fe2+、Na)及び水素イオン濃度(pH)を測定した。
Fe2+の濃度の測定は、ハンディ水質計、二価鉄イオン用AQ−103を用いて行った。Naの濃度の測定は、東亜ディーケーケー株式会社製のポータブルイオン・pH計(IM−32P)とナトリウムイオン電極NA−2011を用いて行った。pHの測定は、ガラス電極法で行った。各試料のイオン濃度の測定結果と、測定結果から求めた吸着率とを、表5に示す。
表5から明らかなように、オリジナルバーク繊維材(杉)による、二価鉄イオン、水素イオンの吸着率は非常に高い。
また、二価鉄イオンや水素イオンの吸着率は、プラズマ照射してバーク繊維材の表面に積極的に官能基を付与させた方が、プラズマ非照射の物よりも僅かに高く、これらのイオンに関しての吸着率では優位を示している。
また、ナトリウムイオンの吸着に関しては、他の高分子材と比べれば、やはりバーク繊維材が最も吸着が良いが、しかし、その吸着率は二価鉄イオンや水素イオンの場合と比べ1/3に減っている。
さらに、ナトリウムイオンの吸着に関しては、非プラズマ照射の方がプラズマ照射されたものよりも約2倍(1.86倍)も吸着率が高く現れている点が注目される。
このことによって、本発明で使用する木質バイオマスは、特許文献1の手法(木質バイオマスの表面にプラズマ照射し、積極的に木質バイオマスの表面に官能基を付与)によって作製された官能基付与木質バイオマスに限定されず、未処理(プラズマ非照射)の木質バイオマスも使用できる。
<Naを含有した土壌からのNaの脱離実験(垂直土壌管使用)>
垂直土壌管を使用して、Naを含有した土壌からのナトリウムイオンNaの脱離実験を行った。
(実験装置)
垂直土壌管には、実施例1の図1に示した硬質ガラス管101の代わりに、パイレックス(登録商標)製で、外径50mm、肉厚1mm、長さ750mmである管を用意した。
試験用土壌は、2種類を用意した。
1つは、初期ナトリウムイオン濃度が650ppm、pH=8.14、粒径が0.005〜0.0075mmのシルト(silt)状であり、これをNo.1土壌とした。
もう1つは、初期Naイオン濃度が72ppm、pH=8.11、粒径が0.005mm以下の粘土状であり、これをNo.2土壌とした。
(No.1土壌を用いたNaイオン脱離実験)
約1LのNo.1の土壌に対して、オリジナルバーク粉体20gとさらに水素イオンを吸着させたバーク粉体20gを均一に混ぜて、それを土壌管に充填して、11号土壌管(11号機)とした。
なお、水素イオンを吸着させたバーク粉体の作製方法は、以下の通りとした。
(1)初期Naイオン濃度が650ppmのNo.1土壌と同じ濃度の水素イオン濃度650ppmを作るため、市販の36%塩化水素(液体)を用いた。即ち、36%塩化水素(液体)55.77mLを1Lの純水に溶かすことによって、塩化水素濃度として23692.5ppm、pH=0.187、水素イオン濃度として650ppmの塩化水素水溶液が約1.056Lできる。
(2)この塩化水素水溶液1.056Lの中に、予め水洗浄して十分に乾燥させたバーク粉体100gを浸漬させて、約30分から60分間放置する。
(3)次に、液をしぼりながらバーク粉体を回収し、それを1日〜2日間、自然乾燥させることによって、水素イオンを吸着させたバーク粉体ができあがる。
約1LのNo.1の土壌に対して、オリジナルバーク粉体20gだけを均一に土壌に混ぜて、それを土壌管に充填して、12号土壌管(12号機)とした。
各土壌管に土壌を充填した後、充填時を含めて1日に1回の割合で、土壌管の上端部から純水を100mL注入して、24時間の間に土壌管の下端から滴下する排液を捕集した。そして、捕集した排液のpHとNaイオン濃度を調べた。
(No.2土壌を用いたNaイオン脱離実験)
約800mLのNo.2土壌に対して、酸素プラズマ照射処理したバーク粉体20gとさらに水素イオンを吸着させたバーク粉体20gを均一に土壌に混ぜて、それを土壌管に充填して、21号土壌管(21号機)とした。水素イオンを吸着させたバーク粉体は、No.1の土壌の場合と同じものを使用した。
約800mLのNo.2土壌に対して、プラズマを照射しないオリジナルのバーク粉体と、さらに21号土壌管と同様に水素イオンを吸着させたバーク粉体20gを混ぜて、それを土壌管に充填して、22号土壌管(22号機)とした。
各土壌管に土壌を充填した後、充填時を含めて1日に1回の割合で、土壌管の上端部から純水を100mL注入して、24時間の間に土壌管の下端から滴下する排液を捕集してそのpHとNaイオン濃度をNo.1土壌の場合と同様に測定した。なお、21号機及び22号機の排液量の比較を行った。
Na濃度は、ポータブルイオン・pH計(IM−32P)と電極NA−2011を使用して測定を行った。pHは、上記ポータブルイオン・pH計(IM−32P)とpH電極(GST−2739C)を使用して測定を行った。
(実施例5の結果及び考察)
No.1土壌について、土壌の充填後からの経過日数に対する11号土壌管からの排液のNaイオン濃度の変化を、図11に示す。図11において、経過日数0は、土壌を管に充填した時点を示す。
なお、12号土壌管(水素イオンを吸着させたバーク粉体は無し)については、経過日数4日でも排液が認められなかったため、即ち、毎回、管の上端から純水を注入したものの、土壌中での浸透性が悪く、土壌管上部に液柱として留まっていたため、測定ができなかった。このことからも、水素イオンを吸着させたバーク粉体の有無が、土壌内の水の浸透性に大きく影響していることがわかる。
図11から明らかなように、土壌中に含有されているNaイオンが脱離され、それが集積されて、排液中に放出されるため、経過日数とともにNaイオン濃度は減少することがわかる。純水注入による土壌処理後、即ち土壌管から土壌を取り出して、その土壌10gに対して、純水を100mL加えて、10分間撹拌、30分間静置させて測定したNaイオン濃度は、16.7ppmを示した。初期土壌のNaイオン濃度650ppmと比べると、顕著なNaイオンの脱離作用が確認された。
なお、12号土壌管から土壌を取り出して、その土壌10gに対して、純水を100mL加えて、10分間撹拌、30分間静置させて測定したNaイオン濃度は、123ppmを示し、初期土壌のNaイオン濃度650ppmに対して減っているものの、土壌からのNaイオンの脱離が十分行われていないことがわかる。
No.1土壌について、土壌の充填後からの経過日数に対する11号土壌管からの排液のpHの変化を、図12に示す。
図12より、経過日数と共にNaイオンが脱離して、その集積量が減少を示した図11の場合とは逆に、pHは明らかに上昇している。このことは、No.1土壌にはNaイオンと結合したOHイオン(塩基)が存在し、Naイオンの脱離と共に、そのOHイオンが増すことによって、pHが上昇するものと考えられる。この11号土壌管には水素イオンを吸着させたバーク粉体が土壌と共に混入されているが、このバークに吸着した水素イオンは土壌中のNaイオンとのイオン交換に供されるが脱離したOHイオンと反応してpHを下げるまでには至っていないものと考えられる。
土壌処理後、土壌管から土壌を取り出して、その土壌10gに対して、純水を100mL加えて、10分間撹拌、30分間静置させて測定したpHは7.51を示した。pHが8.14であった初期土壌と比べると、減少してはいるが大きな変化は認められない。
この結果から、脱離したOHイオンと反応させpHの上昇を抑えるためにも、土壌に混入させる水素イオンを吸着させたバーク粉体量を増やす必要がある。
次に、No.2土壌について、土壌の充填後からの経過日数に対する21号土壌管及び22号土壌管からの排液のNaイオン濃度の変化を、図13に示す。
21号土壌管及び22号土壌管は、共に水素イオンを吸着させたバーク粉体が混入されているが、前者には酸素プラズマ照射バーク粉体が混入されているのに対して、後者は非照射バーク粉体である点が異なる。しかし、図13によると、これによる両者の違いは顕著ではない。土壌処理後、土壌管から土壌を取り出して、その土壌10gに対して、純水を100mL加えて、10分間撹拌、30分間静置させて測定したNaイオン濃度は、21号土壌管の場合が3.6ppmであったのに対して、22号土壌管(非プラズマ照射バーク粉体使用)の方が更に低く2.9ppmを示した。初期土壌のNaイオン濃度72ppmと比べると、両管とも顕著なNaイオンの脱離作用が確認された。
No.2土壌について、土壌の充填後からの経過日数に対する21号及び22号土壌管からの排液のpHの変化を、図14に示す。図12に示したNo.1土壌の場合と同様に、pHは明らかに上昇している。
土壌処理後、土壌管から土壌を取り出して、その土壌10gに対して、純水を100mL加えて、10分間撹拌、30分間静置させて測定したpHは、21号土壌管の場合が8.66、22号土壌管の場合が8.43を示し、いずれも初期土壌のpH8.11よりも大きな値を示した。この結果から、No.1土壌と同様に、pHの上昇を抑えるためにも、土壌に混入させる水素イオンを吸着させたバーク粉体量を増やす必要があると思われる。
No.2土壌について、21号土壌管と22号土壌管からの排液量を比較して、図15に示す。
図15から、明らかに、21号土壌管の方が毎回の排液量は多い。このことは、水素イオンを吸着させたバーク粉体を土壌に混合させることに加え、酸素プラズマ照射バーク粉体を混入させた場合の方が、非照射バーク粉体を混入させた場合よりも、土壌中への水の浸透性とその流下速度が高いことを示している。
(処理土壌への播種とその後の発芽状況)
処理したNo.1土壌及びNo.2土壌に、それぞれトウモロコシとひまわりの種を蒔いて、発芽状況を観察した。
No.1土壌の11号土壌管処理土の15日目の発芽状況の写真を図16に示し、No.1土壌の12号土壌管処理土の15日目の発芽状況の写真を図17に示し、No.1土壌の11号土壌管処理土の25日目の発芽状況の写真を図18に示し、No.1土壌の12号土壌管処理土の25日目の発芽状況を図19に示す。
No.2土壌の21号土壌管処理土の15日目の発芽状況の写真を図20に示し、No.2土壌の22号土壌管処理土の15日目の発芽状況の写真を図21に示し、No.2土壌の21号土壌管処理土の25日目の発芽状況の写真を図22に示し、No.2土壌の22号土壌管処理土の25日目の発芽状況を図23に示す。
これらの結果から、No.2土壌の処理土壌の方が、No.1土壌の処理土壌よりも、発芽とその後の生育状況は良好である。
生育に最適なpHとして、トウモロコシが5.7〜7.5、ひまわりが5.0〜6.5であるとされている。
処理土壌のpH値がNo.1で11号土壌管処理の場合7.51、12号土壌管処理の場合7.73と両土壌管とも初期土壌の8.14よりは低く抑えることができた。しかし、No.2土壌に関しては、初期土壌のpH=8.11よりは更に高い値、21号土壌管の場合が8.66、22号土壌管では8.43を示した。
No.2の土壌が、No.1土壌よりもpHが高く現れているが、生育が良好であることを考えると、生育の決め手はpHよりもNaイオン濃度に左右され、その濃度の低い方が生育が良いとも考えられる。
25日以降の発育状況を、他の土壌に移植せず、同一の植木鉢(図16〜図23に示した鉢のサイズは内径80mm、深さ80mm)で観察を続けたが、鉢のサイズが小さく、根の広がりが十分ではなく、また注水とともに土壌が和らぐまでには至らず、むしろ固くなる傾向にあり、生育は徐々に衰えを示した。
このことからも、生育のためには、土壌中にしっかりと根を張ることが、最も重要であり、そのために固い土壌を柔らかく改良することが大切である。従って、まずは土壌中のNaイオン濃度を下げることであり、次に混ぜ込んだ多量のバーク粉体によって土壌間隙を保持させ、土壌改良が達成されるものと期待できる。
(実施例5のまとめ)
実施例5の上述した結果から、塩性アルカリ土壌の改良に当たって、その土壌の地下水位が高くない場合には、原位置において、以下の(1)〜(3)のようにすることが好ましいことがわかった。
(1)水素イオン吸着バーク粉体(塩化水素水溶液に浸漬させ、それを乾燥させたもの)を土壌30L(0.03m)に対して投入する量は、少なくとも600gかそれ以上であり、農地として耕作する土壌の深さを0.3mと想定すれば、1mの広さの耕地に対して、少なくとも6kgかそれ以上のバークを必要とする。
(2)上記の塩化水素水溶液の水素イオン濃度は土壌中のNaイオン濃度と同じか、それ以上が好ましい。
(3)上記塩化水素水溶液に浸漬させるバーク粉体の量は、その水溶液1Lに対して100gの割合が好ましい。
また、土壌の地下水位が高い場合には、原位置において、上記(1)〜(3)に加えて、以下の(4)のようにすることが好ましい。
(4)約1mの間隔で深さ1m、幅0.3mの溝(暗渠)を掘り、そこに杉バーク材を半分の深さ(0.5m)まで敷き詰め、埋設し、地下から上昇してくるNaイオン水、上から流下するNaイオン水を捕獲するバリアー層を作ることが好ましい。埋設するバークとしては、オリジナルバーク(塩化水素水溶液への浸漬は不要で、また酸素プラズマ照射などの処理を施さない外皮付きバーク繊維又は粉体)で良い。
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
101 硬質ガラス管、102 土壌、103 ロート、104 注入液、105 受け容器

Claims (9)

  1. 土壌の状態を改良するための土壌改良材であって、
    樹木の樹皮部、前記樹皮部を粉砕した粉体、前記樹皮部を粉砕した繊維状体のうちの少なくとも1つを含む、樹皮材から成り、
    前記樹皮材が未発酵の状態で、土壌に使用される
    土壌改良材。
  2. 前記樹皮材にイオンが吸着されている請求項1に記載の土壌改良材。
  3. イオンが吸着されている前記樹皮材と、イオンが吸着されていない前記樹皮材を共に含む、請求項1に記載の土壌改良材。
  4. 前記イオンが水素イオンである請求項2又は請求項3に記載の土壌改良材。
  5. 土壌の状態を改良する土壌改良方法であって、
    樹木の樹皮部、前記樹皮部を粉砕した粉体、前記樹皮部を粉砕した繊維状体のうちの少なくとも1つを含む、樹皮材から成り、前記樹皮材が未発酵の状態である土壌改良材を使用して、
    塩性アルカリ土壌、揮発性有機塩素化合物による汚染土壌、海水による塩害土壌のうち、少なくとも1つを含む原位置環境において、土壌に前記土壌改良材を、散布及び混入のうちの少なくとも1つを含む方法で供給し、前記原位置環境で前記土壌を改良する
    土壌改良方法。
  6. 前記揮発性有機塩素化合物による汚染土壌において、Fe2+水溶液と過酸化水素水からなるヒドロキシラジカル発生剤源に、Fe3+からFe2+へ還元させる還元剤と、前記樹皮材にイオンが吸着されていない前記土壌改良材を加えて、土壌に供給する請求項5に記載の土壌改良方法。
  7. 前記塩性アルカリ土壌及び前記海水による塩害土壌のうち、少なくとも1つを含む土壌において、水素イオンが吸着されている前記樹皮材を少なくとも前記土壌改良材として使用して、前記土壌改良材を土壌に供給する請求項5に記載の土壌改良方法。
  8. 水素イオンが吸着されている前記樹皮材と、水素イオンが吸着されていない前記樹皮材とを混合して前記土壌改良材として使用する請求項7に記載の土壌改良方法。
  9. 水素イオンを含む溶液に前記樹皮材を浸漬させて、乾燥させることにより、前記樹皮材に水素イオンを吸着させる、請求項7又は請求項8に記載の土壌改良方法。
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