JP2014214039A - 炭素多孔体及びその製造方法 - Google Patents

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直文 木村
浩 高波
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浩 高波
三尚 角田
Mitsunao Tsunoda
三尚 角田
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Abstract

【課題】カサ密度を大きくしなくても十分高い圧縮強度を持つとともに、開気孔率が高く目詰まりもしにくい炭素多孔体を提供すること。
【解決手段】フェノール樹脂、フラン樹脂及びジビニルベンゼン樹脂から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂、並びに溶媒を含む樹脂含有溶液を、ウレタンフォームに含浸する工程;
樹脂含有溶液を含浸させたウレタンフォームを30〜180℃の温度条件下で減圧することにより、該ウレタンフォームからの溶媒除去と樹脂の硬化とを行う工程;及び
600〜1200℃の温度で、硬化樹脂を含むウレタンフォームを炭素化する工程、
を含む、硬質炭素多孔体の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、炭素多孔体及びその製造方法に関する。
炭素多孔体は、その耐熱性、熱伝導性、電気伝導度性、透過性、耐食性などの特性に応じて、断熱材、高温耐食フィルターなど、様々な用途において用いられている。
これまで、炭素多孔体の製造方法として、重合体フォームを炭化する方法や、樹脂発泡体に樹脂含有溶液を含浸した後に硬化、炭化する方法などが知られている。例えば、特許文献1には、フラン樹脂をポリウレタン樹脂糸条体に浸透させた後、糸状体の表面からフラン樹脂を取り除くことにより、炭化時にひび割れが生じない炭素多孔体を得ることが記載されている。また、特許文献2には、連続気孔を有すると共にポリカルボジイミド樹脂が含浸した樹脂発泡体を炭化することにより炭素多孔体を得ることが記載されている。
しかしながら、特許文献1の方法により得られた炭素多孔体は、浸透による糸状体の膨潤を抑制するために、糸状体単独の重量の約6倍までしか浸透させることができず、糸状体表面のフラン樹脂は炭素化前に取り除かれてしまうため、カサ密度が0.03〜0.08g/cm3未満と非常に小さく、十分な強度を持たないという問題を有する。特許文献2の方法により得られた炭素多孔体は、連続気孔を有するにもかかわらず開気孔率が55〜76%と低く、目詰まりしやすいという問題を有する。
したがって、カサ密度を大きくしなくても十分高い圧縮強度を持つとともに、目詰まりもしにくい炭素多孔体に対する大きな需要が存在する。
特開昭51−109327号公報 特開平6−32677号公報
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、カサ密度を大きくしなくても十分高い圧縮強度を持つとともに、目詰まりしにくい炭素多孔体を提供することを目的とする。
<1> フェノール樹脂、フラン樹脂及びジビニルベンゼン樹脂から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂、並びに溶媒を含む樹脂含有溶液を、ウレタンフォームに含浸する工程;
樹脂含有溶液を含浸させたウレタンフォームを30〜180℃の温度条件下で減圧することにより、該ウレタンフォームからの溶媒除去と樹脂の硬化とを行う工程;及び
600〜1200℃の温度で、硬化樹脂を含むウレタンフォームを炭素化する工程、
を含む、硬質炭素多孔体の製造方法。
<2> ウレタンフォームが、セル膜を除去したウレタンフォームである、上記<1>に記載の製造方法。
<3> 熱硬化性樹脂がフェノール樹脂である、上記<1>又は<2>に記載の製造方法。
<4> 樹脂含有溶液が硬化剤を更に含む、上記<1>〜<3>のいずれかに記載の製造方法。
<5> 樹脂含有溶液が炭素繊維を更に含む、上記<1>〜<4>のいずれかに記載の製造方法。
<6> カサ密度が0.05〜0.27g/cm3
開気孔率が85〜98体積%、
熱伝導率が2.0W/mK以下、
圧縮強度が1.0〜10.0N/mm2、及び
圧縮強度をカサ密度で除した値である比強度が、3.0〜50.0kN・m/kgである、硬質炭素多孔体。
本発明によれば、カサ密度を大きくしなくても十分高い圧縮強度を持つとともに、目詰まりもしにくい炭素多孔体を得ることができる。
実施例1の炭素多孔体表面のCT画像 実施例1の炭素多孔体表面の走査型電子顕微鏡写真 実施例2の炭素多孔体表面のCT画像 実施例2の炭素多孔体表面の走査型電子顕微鏡写真
<<炭素多孔体の製造方法>>
本発明の第1の態様は、「フェノール樹脂、フラン樹脂及びジビニルベンゼン樹脂から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂、並びに溶媒を含む樹脂含有溶液を、ウレタンフォームに含浸する工程;樹脂含有溶液を含浸させたウレタンフォームを30〜180℃の温度条件下で減圧することにより、該ウレタンフォームからの溶媒除去と樹脂の硬化とを行う工程;及び600〜1200℃の温度で、硬化樹脂を含むウレタンフォームを炭素化する工程、を含む、硬質炭素多孔体の製造方法」である。
本明細書及び特許請求の範囲において、硬質の炭素とは、炭素六角網面が積層した結晶子の、積層が乱雑で大きさが小さく配向性が低い炭素材料を意味する。一方、軟質の炭素とは、炭素六角網面が積層した結晶子の、積層が規則的で大きさが大きく配向性が高い炭素材料を意味する。
<(1)ウレタンフォームの調製工程>
ウレタンフォーム(発泡ポリウレタン)を用意する。ウレタンフォームは市販のものであってもよく、従来公知の方法に従い製造してもよい。
ウレタンフォームはその後の工程に用いる前に、鋸などを用いて任意の形状を加工してもよい。加工すべき形状に特に制限はなく、求められている炭素多孔体の形状に合わせた形状とすればよい。
本明細書及び特許請求の範囲において、セル膜とは、ウレタンフォームの各気泡を形成する壁を意味する。
ポリウレタンフォームは、セル膜が除去されていることが好ましい。セル膜を除去した構造を有するウレタンフォームを用いることにより、炭素多孔体における流体の通過性を向上させることができる。セル膜を除去する方法としては、発泡体内に爆発性ガスを充填し、ガスを爆発させることでセル膜を消失させる方法(爆発法)や、セル膜をアルカリ溶液で加水分解する方法、セル膜をオゾンを用いて除去する方法などが挙げられる。もちろん、その他の方法によりセル膜を除去してもよい。これらの方法を用いることにより、隣接する2つのセルの間に存在するセル膜が除去され、複数の気泡が網目状に連続した構造が得られる。具体的なセル膜除去方法としては、特開昭62−205137号公報を参照することができる。
<(2)樹脂含有溶液の調製工程>
次に、ウレタンフォームに含浸する樹脂含有溶液を調製する。樹脂含有溶液は、フェノール樹脂、フラン樹脂及びジビニルベンゼン樹脂から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂、並びに溶媒を含み、溶媒中に樹脂を加え混合することにより調製することができる。
(熱硬化性樹脂)
樹脂含有溶液中の樹脂は、フェノール樹脂、フラン樹脂及びジビニルベンゼン樹脂から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂である。これらの樹脂は、炭素化処理後に硬質炭素となるため好ましい。なかでも、炭素化処理後に残炭率が高く且つ硬質炭素となることから、フェノール樹脂が特に好ましい。
フェノール樹脂としては、フェノールとアルデヒド(好ましくはホルムアルデヒド)とを酸性触媒の存在下で反応させることにより得られるノボラック樹脂や、フェノールとアルデヒド(好ましくはホルムアルデヒド)とを塩基性触媒の存在下で反応させることにより得られるレゾール樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂は、樹脂含有溶液中に20〜80質量%含むことが好ましく、30〜75質量%含むことがより好ましく、40〜70質量%含むことがさらにより好ましい。熱硬化性樹脂の割合が上記範囲内であると、樹脂含有溶液の粘度が適度な範囲にあるため、均一に含浸させやすくなる。また、硬化工程での溶媒除去も短時間に行うことができる。
(溶媒)
樹脂含有溶液中に含まれる溶媒としては、ウレタンフォームを溶解せず且つ前記樹脂成分を溶解するものであれば特に限定されない。例えば、アルコール、ケトン、エーテルなどを用いることが出来る。なかでも、アルコールが好ましく、炭素数1〜5のアルコールがより好ましく、メタノール又はエタノールが特に好ましい。
樹脂含有溶液中に含まれる溶媒の量は、樹脂含有溶液から熱硬化性樹脂並びに任意成分としての硬化剤及びその他の成分を除いた残部であってよく、例えば、溶媒は、樹脂含有溶液中に20〜80質量%含まれていてもよく、25〜70質量%含まれていてもよく、30〜60質量%含まれていてもよい。
(硬化剤)
樹脂含有溶液には、樹脂を硬化させるために硬化剤を添加してもよい。硬化剤としては、塩酸(好ましくは濃塩酸(塩化水素37質量%の水溶液))、芳香族スルホン酸、トリクロロ酢酸、ヘキサメチレンテトラミン、過酸化ベンゾイルなどが挙げられる。
硬化剤は、熱硬化性樹脂100質量%に対して0〜20.0質量%含むことが好ましく、0〜15.0質量%含むことがより好ましく、0〜10.0質量%含むことさらにより好ましく、0〜5.0質量%含むことが特に好ましい。また、硬化剤を必須成分とする場合には、熱硬化性樹脂100質量%に対する硬化剤の量(下限値)は、0.1質量%であってもよく、0.5質量%であってもよく、1.0質量%であってもよい。
硬化剤の量が上記範囲内であると、短時間に硬化を行うことができるため、炭素多孔体の均一性が向上する。
(その他の成分)
樹脂含有溶液には、上記成分の他に、任意成分として炭素繊維(カーボンナノファイバー)を添加してもよい。炭素繊維としては、昭和電工(株)製の気相法炭素繊維VGCF(登録商標)などが挙げられる。
炭素繊維は、熱硬化性樹脂100質量%に対して0〜10質量%の量で含まれることが好ましく、0〜5質量%の量で含まれることがより好ましい。また、炭素繊維を必須成分とする場合には、熱硬化性樹脂100質量%に対する炭素繊維の量(下限値)は、0.1質量%であってもよく、0.5質量%であってもよく、1.0質量%であってもよい。
炭素繊維を該範囲内で含むことにより、開気孔率を下げることなく炭素多孔体の強度をさらに向上させることができる。
<(3)含浸工程>
次に、樹脂含有溶液をウレタンフォームに含浸する。含浸工程は、大気圧(約100kPa)下で行ってもよいが、30kPa以下の減圧下で含浸することが好ましい。また、含浸時の温度は、樹脂の硬化が起こらない温度であれば特に制限はない。例えば、10〜30℃、好ましくは15〜25℃で行うことができる。
熱硬化性樹脂は、ウレタンフォームの質量の約2倍〜約30倍の質量をウレタンフォームに含浸することが好ましく、約4倍〜約20倍の質量をウレタンフォームに含浸することがより好ましく、約10〜20倍の質量をウレタンフォームに含浸することがさらにより好ましい。
<(4)硬化工程>
次に、硬化工程において、樹脂含有溶液を含浸したウレタンフォームを、30〜180℃の温度条件下で減圧することにより、好ましくは30kPa以下の圧力まで減圧することにより、樹脂の硬化と、樹脂含有溶液を含浸させたウレタンフォームからの溶媒除去とを行う。
硬化工程は、樹脂の硬化により樹脂含有溶液の流動性がなくなるまで行うことが好ましい。樹脂含有溶液の流動性は、粘度及びウレタンフォームの下面に樹脂含有溶液が重力で移動することで判断できる。
本発明では、樹脂含有溶液を含浸したウレタンフォームを30〜180℃の温度条件下で減圧することにより、溶媒の除去と樹脂の硬化をまとめて行う。これにより、従来よりも多くの樹脂をウレタンフォームの表面付近や気泡内から骨格内部に浸透させることが可能となる。そのため、均一な内部構造を有する炭素多孔体を得ることができる。
硬化工程は、30〜180℃の温度条件で行われる。温度条件は60〜140℃であることが好ましい。上記温度範囲内であると、ウレタンフォーム骨格内への樹脂の浸透が促進される。また、短時間で樹脂を硬化させることができる。
硬化時間は特に制限はなく、減圧条件、温度条件、ウレタンフォームのサイズや含浸量などに合わせて適宜調節すればよい。例えば、1時間〜2日間、又は2時間〜20時間であってもよい。
従来の方法、例えば、特許文献1の方法では、ウレタンフォーム骨格表面の樹脂は炭素化前に取り除かれてしまい、炭素多孔体の強度には関与しない。これに対し、本発明では、熱によって樹脂がウレタンフォーム骨格内に浸透していく作用と、減圧によってウレタンフォーム表面付近の溶媒が除去されることにより、該表面付近の樹脂がウレタンフォームに浸透しやすくなる作用とが協調的且つ相乗的に働くため、ウレタンフォーム骨格内部に至るまで樹脂が十分且つ均一に浸透し、強度の高い炭素多孔体を得ることができる。
<(5)硬化補完工程>
硬化工程後、好ましくは60〜300℃、より好ましくは70〜200℃で好ましくは1〜24時間、より好ましくは3〜15時間加熱し、樹脂を完全に硬化させる。硬化工程で既に樹脂の硬化が完了している場合には、本工程を省略してもよい。
硬化補完工程の温度は、低いと樹脂の硬化及び溶媒の除去が充分に進行せず、炭素化工程で割れが発生する確率が高まる。高いと樹脂が酸化燃焼してしまい、炭素多孔体が得られない。
時間は、短いと硬化が完了せず、炭素化工程で割れが発生する確率が高まる。長い分には上限はないが、硬化完了後も硬化補完工程を続けることになり、経済的でない。
<(6)炭素化工程>
硬化工程後、硬化樹脂を骨格内に有するウレタンフォームを高温で加熱し炭素化する。この炭素化工程により、該ウレタンフォームを構成するポリウレタンは二酸化炭素などのガス状生成物に熱分解される一方で、ポリウレタンフォーム骨格内に含まれる樹脂は、その多くが硬質の炭素となるため、硬質の炭素からなる炭素多孔体が得られる。
炭素化は不活性雰囲気下で行うことが好ましい。不活性雰囲気は、例えば、ウレタンフォームを含む空間内を不活性ガスで充填することにより達成することができる。不活性ガスとしては、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガスなどが挙げられる。
炭素化温度は500〜1500℃であることが好ましく、600〜1200℃であることがより好ましく、700〜1000℃であることがさらにより好ましい。
炭素化温度が低いと、炭素多孔体に不純物が多く含まれるため強度、耐熱性、耐食性などが低いものとなる。炭素化温度が高いと、炭素が結晶性に富むものとなるため熱伝導率が高くなる。
また、炭素化時間は、炭素化温度によっても異なるが、通常、30分〜5時間であることが好ましく、1〜3時間であることがより好ましい。
<<炭素多孔体>>
本発明の第2の態様は、カサ密度が0.05〜0.27g/cm3、開気孔率が85〜98体積%、熱伝導率が2.0W/mK以下、圧縮強度が1.0〜10.0N/mm2以上、及び圧縮強度をカサ密度で除した値である比強度が3.0〜50.0である、硬質炭素多孔体である。
本発明の炭素多孔体は、例えば、上記第1の態様の製造方法により得ることができる。
(カサ密度)
本明細書及び特許請求の範囲において、カサ密度とは、単位体積あたりの質量を意味する。
本発明の炭素多孔体のカサ密度は、0.05〜0.27g/cm3であり、0.08〜0.25g/cm3であることが好ましく、0.10〜0.25g/cm3であることがより好ましく、0.13〜0.25g/cm3であることがさらにより好ましく、0.18〜0.25g/cm3であることが特に好ましい。
(開気孔率)
本明細書及び特許請求の範囲において、炭素多孔体の開気孔率とは、炭素多孔体の単位体積あたりに気孔(空隙)が占める体積の割合を意味する。
本発明の炭素多孔体の開気孔率は、85〜98%であり、85〜95%であることが好ましい。
開気孔率が上記範囲内であると、目詰まりの起こりにくい炭素多孔体を得ることができる。
(熱伝導率)
本明細書及び特許請求の範囲において、熱伝導率とは、単位時間に単位面積を通過する熱量と温度勾配との比例定数を意味する。
本発明の炭素多孔体の熱伝導率は、2.0W/mK以下であり、0.001〜1.0W/mKであることが好ましく、0.01〜0.5W/mKであることがより好ましく、0.01〜0.2W/mKであることがさらにより好ましく、0.03〜0.15W/mKであることが特に好ましい。
熱伝導率が上記範囲内であると、断熱材や熱防御材として好適に用いることができる。
(圧縮強度)
本明細書及び特許請求の範囲において、圧縮強度とは、試験片の軸方向に圧縮荷重を加えたとき、試験片が耐えることが出来る最大荷重を試験前の試験片の荷重方向に垂直な断面積で除した値を意味する。
本発明の炭素多孔体の圧縮強度は、使用時に表面が破壊されない十分な強度である1.0〜10.0N/mm2以上であり、1.0〜5.0N/mm2であることが好ましく、1.2〜3.0N/mm2であることがより好ましく、1.3〜2.0N/mm2であることがさらにより好ましい。
(圧縮強度/カサ密度)
本発明の炭素多孔体は、カサ密度に対する圧縮強度の比(圧縮強度(N/mm2)/カサ密度(g/cm3))(以下、比強度と呼ぶ。)が、3.0〜50.0kN・m/kgである。該比は、4.0〜20.0kN・m/kgであることが好ましく、5.0〜15.0kN・m/kgであることがより好ましく、6.0〜12.0kN・m/kgであることが特に好ましい。比強度が上記範囲内であると、カサ密度が低くとも十分な強度を有し、軽量且つ堅強であるため、特にロケットなどに使用される熱防御材として好適に用いることができる。
(曲げ強度)
本明細書及び特許請求の範囲において、曲げ強度とは、試験片を一定距離に配置された2支点上に置き、支点間の中央の1点に荷重を加えて折れたときの最大曲げ応力を意味する。
本発明の炭素多孔体の曲げ強度は、使用時に破壊されない十分な強度である0.3〜5.0N/mm2以上であることが好ましく、0.5〜3.0N/mm2であることがより好ましく、1.0〜2.0N/mm2であることがさらにより好ましく、1.3〜1.8N/mm2であることがより好ましい。
(結晶性)
本明細書及び特許請求の範囲において、結晶性とは、炭素材料を構成する炭素六角網面の積層の規則性を意味し、粉末X線回折法における炭素網面層の平均面間隔(d002)から判定することができる。一般に、炭素網面層の平均面間隔が0.343nm以上であると硬質の炭素とされ、0.343nm未満であると軟質の炭素とされる。本発明では、平均面間隔が0.343nm以上である炭素多孔体を硬質炭素多孔体と呼ぶ。
本発明の炭素多孔体は、平均面間隔が、0.343nm以上の硬質炭素多孔体である。平均面間隔は、0.350nm以上であることが好ましく、0.350〜0.450nmであることがより好ましく、0.380〜0.400nmがさらにより好ましい。
<用途>
従来の炭素多孔体は、強度の高い堅牢な骨格を追求するあまり、比較的カサ密度が大きくなってしまい、重いものが多く、目詰まりの問題も有していた。また、熱伝導率も高かった。
一方、本発明の炭素多孔体は、炭素分布や気泡分布にムラがなく、均一性の高い構造を有する。また、開気孔率も非常に高い。そのため、適度なカサ密度で十分な強度を有するとともに、流体の通過性が高い。さらに、本発明の炭素多孔体は、硬質であり熱伝導率が小さい。
したがって、本発明の炭素多孔体は、耐熱材として好適に用いることができる。耐熱材の例としては、粘度の高い液体を含浸させて作られる熱防御材(アブレータ)が挙げられ、ロケットなどに使用される。また、本発明の炭素多孔体は、断熱材やフィルター(耐食性フィルター)としても好適に用いることができる。さらには、電極としても好適に用いることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの説明内容に限定されるものではない。
実施例1〜2において、ウレタンフォームに含浸する樹脂の量を変えて、炭素多孔体を製造した。
[実施例1]
公知の技術によりセル膜が除去された構造を有するウレタンフォーム(150mm×150mm×80mm)を用意した。ウレタンフォームの質量の4倍の質量の樹脂含有溶液を、50質量%のフェノール樹脂(レゾール型)、1.38質量%の濃塩酸(塩化水素37質量%の水溶液)、及びメタノール溶媒を混合し調製した。30kPa以下の圧力で真空引きすることにより、樹脂含有溶液をウレタンフォームに含浸した。含浸後のウレタンフォームを100℃で加熱しつつ、30kPa以下の圧力で真空引きを行うことで樹脂含有溶液の流動性がなくなるまで硬化した(4時間)。その後、100℃に12時間保つことでフェノール樹脂を完全に硬化し、900℃で2時間加熱することで炭素化した。
[実施例2]
公知の技術によりセル膜が除去された構造を有するウレタンフォーム(150mm×150mm×100mm)を用意した。ウレタンフォームの質量の16倍の質量の樹脂含有溶液を、65質量%のフェノール樹脂(レゾール型)、1.38質量%の濃塩酸(塩化水素37質量%の水溶液)、及びメタノール溶媒を混合し調製した。30kPa以下の圧力で真空引きすることにより、樹脂含有溶液をウレタンフォームに含浸した。含浸後のウレタンフォームを100℃で加熱しつつ、30kPa以下の圧力で真空引きを行うことで樹脂含有溶液の流動性がなくなるまで硬化した(8時間)。その後、100℃に12時間保つことでフェノール樹脂を完全に硬化し、900℃で2時間加熱することで炭素化した。
実施例1〜2の炭素多孔体のカサ密度、開気孔率、熱伝導率、圧縮強度、非強度(すなわち、圧縮強度(N/mm2)/カサ密度(g/cm3))、曲げ強度を測定した。また、X線CT画像により実施例1〜2の炭素多孔体の分布均一性を評価し、走査型電子顕微鏡(SEM)画像により表面観察を行った。それぞれの測定方法は下記の通りである。
(1)カサ密度・開気孔率
測定法:JIS R1634真空法に基づく、水を使用したアルキメデス法
使用機器:弊社保有機器
(2)熱伝導率
測定法:非定常熱線法…JIS R2618による測定
使用機器:京都電子工業(株) QTM−D3
(3)圧縮強度
測定法:JISR1608のサンプル形状を変更して測定(測定方法はJIS1608と同じ)
サンプル形状:10×10×15(mm)
クロスヘッド速度:0.5mm/min
測定数:3個
使用機器:(株)島津製作所 AG−20KND
(4)曲げ強度
・測定法:JISR1601のサンプル形状、スパン間距離、クロスヘッド速度を変更して測定(測定方法はJIS1601と同じ)
サンプル形状:60×30×5(mm)
スパン間距離:45(mm)
クロスヘッド速度:0.3mm/min
測定数:3個
使用機器:(株)島津製作所 AG−20KND
(5)均一性評価
測定法:X線CT法
使用機器:コムスキャンテクノ(株) ScanXmate-D130S/D150S
(6)表面観察
測定法: SEM観察(観察倍率×50倍)
使用機器:日立ハイテクノロジー(株) S−3400N
(7)カーボン結晶性
測定法: 粉末X線回折図形からの炭素d002面間隔の算出
使用機器:スペクトリス社
全自動X線回折装置 X’Pert PRO MPD
その結果を表1に示す。
表1から判るように、実施例1〜2の炭素多孔体は、カサ密度が0.11〜0.20g/cm3と適度であり、圧縮強度は1.02〜1.52N/mm2であった。また、比強度は7.6kN・m/kg以上と非常に大きく、カサ密度の割に圧縮強度が高いことが判った。開気孔率(体積%)は88%以上と高く、通気性に優れていると言える。また、熱伝導率は0.08以下と低く、断熱材として有用であると考えられる。
また、実施例1、2により得られた炭素多孔体のX線CT画像をそれぞれ図1、3に示す。図1、3から、本発明の炭素多孔体が、炭素分布や気泡分布の均一な構造であることが判る。また、走査型電子顕微鏡(SEM)画像(倍率はCT画像の100倍)をそれぞれ図2、4に示す。図2、4から、炭素多孔体においてもセル膜が除去されており、通気性に優れることが判る。
次に、脱溶媒工程中の温度を80℃、100℃、120℃と変えて、炭素多孔体を製造した(実施例3〜5)。
[実施例3]
公知の技術によりセル膜が除去された構造を有するウレタンフォーム(150mm×150mm×100mm)を用意した。ウレタンフォームの質量の12倍の質量の樹脂含有溶液を、65質量%のフェノール樹脂(レゾール型)、1.38質量%の濃塩酸(塩化水素37質量%の水溶液)、及びメタノール溶媒を混合し調製した。30kPa以下の圧力で真空引きすることにより、樹脂含有溶液をウレタンフォームに含浸した。含浸後のウレタンフォームを80℃で加熱しつつ、30kPa以下の圧力で真空引きを行うことで樹脂含有溶液の流動性がなくなるまで硬化した(16時間)。その後、80℃に12時間保つことでフェノール樹脂を完全に硬化し、900℃で2時間加熱することで炭素化した。
[実施例4]
公知の技術によりセル膜が除去された構造を有するウレタンフォーム(150mm×150mm×100mm)を用意した。ウレタンフォームの質量の12倍の質量の樹脂含有溶液を、65質量%のフェノール樹脂(レゾール型)、1.38質量%の濃塩酸(塩化水素37質量%の水溶液)、及びメタノール溶媒を混合し調製した。30kPa以下の圧力で真空引きすることにより、樹脂含有溶液をウレタンフォームに含浸した。含浸後のウレタンフォームを100℃で加熱しつつ、30kPa以下の圧力で真空引きを行うことで樹脂含有溶液の流動性がなくなるまで硬化した(8時間)。その後、100℃に12時間保つことでフェノール樹脂を完全に硬化し、900℃で2時間加熱することで炭素化した。
[実施例5]
公知の技術によりセル膜が除去された構造を有するウレタンフォーム(150mm×150mm×100mm)を用意した。ウレタンフォームの質量の12倍の質量の樹脂含有溶液を、65質量%のフェノール樹脂(レゾール型)、1.38質量%の濃塩酸(塩化水素37質量%の水溶液)、及びメタノール溶媒を混合し調製した。30kPa以下の圧力で真空引きすることにより、樹脂含有溶液をウレタンフォームに含浸した。含浸後のウレタンフォームを120℃で加熱しつつ、30kPa以下の圧力で真空引きを行うことで樹脂含有溶液の流動性がなくなるまで硬化した(3時間)。その後、120℃に12時間保つことでフェノール樹脂を完全に硬化し、900℃で2時間加熱することで炭素化した。
実施例3〜5の炭素多孔体のカサ密度を表2に示す。
表2に示すように、硬化処理時の加熱温度を変えても、硬化時間を調節することにより、本発明の炭素多孔性を製造できることが判った。
また、実施例3の炭素多孔体のカーボン結晶性を調べたところ、炭素網面層の平均面間隔は0.390nmであった。この結果から、本発明の製造方法により得られる炭素多孔体は、硬質の炭素からなる炭素多孔体であることが判る。
本発明によれば、カサ密度を大きくしなくても十分高い圧縮強度を持つとともに、目詰まりもしにくい炭素多孔体を得ることができる。したがって、産業上、極めて有用である。

Claims (6)

  1. フェノール樹脂、フラン樹脂及びジビニルベンゼン樹脂から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂、並びに溶媒を含む樹脂含有溶液を、ウレタンフォームに含浸する工程;
    樹脂含有溶液を含浸させたウレタンフォームを30〜180℃の温度条件下で減圧することにより、該ウレタンフォームからの溶媒除去と樹脂の硬化とを行う工程;及び
    600〜1200℃の温度で、硬化樹脂を含むウレタンフォームを炭素化する工程、
    を含む、硬質炭素多孔体の製造方法。
  2. ウレタンフォームが、セル膜を除去したウレタンフォームである、請求項1に記載の製造方法。
  3. 熱硬化性樹脂がフェノール樹脂である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 樹脂含有溶液が硬化剤を更に含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 樹脂含有溶液が炭素繊維を更に含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. カサ密度が0.05〜0.27g/cm3
    開気孔率が85〜98体積%、
    熱伝導率が2.0W/mK以下、
    圧縮強度が1.0〜10.0N/mm2、及び
    圧縮強度をカサ密度で除した値である比強度が、3.0〜50.0kN・m/kgである、硬質炭素多孔体。
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