JP2014211470A - 鏡筒一体成形レンズおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、光モジュールの気密封止に優れると共に、高品質である鏡筒一体成形レンズおよびその製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】レンズ6を保持する鏡筒5を有し、鏡筒5の内周に、鏡筒5の中心軸5a方向に延在する筒状内周面5bと、筒状内周面5bに突設される突部7とを有し、突部7に形成されるレンズ載置面5cを有する鏡筒一体成形レンズ1であって、レンズ載置面5cに、角部を持たない形状の凹部5eが設けられていることを特徴とする鏡筒一体成形レンズ1。【選択図】図2
Description
本発明は、レンズと鏡筒が一体成形される鏡筒一体成形レンズおよびその製造方法に係わり、特に発光素子を気密に封止する光モジュールに用いられる鏡筒一体成形レンズおよびその製造方法に関する。
従来、光通信などの分野において、光を出射する発光素子を収容し、発光素子の出射光を、平行光にする、あるいは光ファイバーなどに集光させる鏡筒一体成形レンズを備える光モジュールが知られている。その際、発光素子の出射部の酸化を防止するために、発光素子は、窒素などの不活性ガスが充填された光モジュール内に気密に封止されている。
このような光モジュールとして、例えば特許文献1に開示されるものがある。図8は、特許文献1に開示される鏡筒一体成形レンズの断面略図である。図9は、特許文献1に開示される光モジュールの断面略図である。
特許文献1に開示される鏡筒一体成形レンズ(光学部品)201は、図8に示すように、ステンレス鋼などにより形成される鏡筒(レンズホルダ)205の貫通孔の内周面に突部207が形成されており、この突部207にレンズ載置面(斜面)205cが形成されている。レンズ載置面205cは、その断面が直線傾斜、あるいは凸状または凹状にやや湾曲する傾斜面である。
特許文献1に開示される光モジュール(発光光学装置)210は、図9に示すように、基板211上に半導体レーザチップ212が固定されている。そして、半導体レーザチップ212が導通される導電性端子214、214が基板211に固定されている。基板211はカバー216に覆われ、カバー216にレンズ206と一体化された鏡筒205が固定されている。また、鏡筒205、カバー216、および基板211で囲まれた光モジュール210の内部に窒素などの不活性ガスが充填されて、半導体レーザチップ212が気密封止されている。
図10は、特許文献2に開示される鏡筒付レンズの断面略図である。特許文献2に開示される鏡筒付レンズ(レンズ保持装置)301は、図10に示すように、レンズ306が鏡筒(鏡枠)305に保持されて構成されている。鏡筒305の内周面305bに突設した突部(レンズ保持部)307が形成されている。突部307に備わるレンズ載置面(レンズ保持面)305cに、光軸を中心とした同心円状の凹部(溝)305eが3本形成されている。
レンズ306の外周部にフランジ317が形成され、このフランジ317に凹部305eに対応して凸状部分(凸条)306dが突設されている。凹部305eと凸状部分306dの間に接合剤(接着剤)318を塗布し、凹部305eに凸状部分306dを嵌合して、レンズ306は鏡筒305に接合されている。
特許文献1に開示される鏡筒一体成形レンズ201の製造方法について説明する。鏡筒205が、成形装置内に挿入され、レンズ素材が、図8に示すように、鏡筒205の内周面に突設される突部207に形成されるレンズ載置面205c上に設置される。鏡筒205の外周に設置される加熱部によって、鏡筒205およびレンズ素材が、レンズ素材の軟化点以上の温度に加熱される。そして、レンズ素材が、上型および下型により加圧され、球面または非球面の光学面を有するレンズ206が加圧成形される。
鏡筒一体成形レンズにおいては、鏡筒の熱膨張係数がレンズの熱膨張係数より大きくなるように、鏡筒およびレンズ素材の部材は選ばれている。そのため、軟化点以上の温度で鏡筒とレンズが一体成形された後、常用温度まで冷却される過程で、鏡筒はレンズよりも大きく収縮する。その結果、鏡筒はレンズを強固に保持することができる。ところが、鏡筒およびレンズ素材の熱膨張係数の差が大き過ぎると、鏡筒が大きく収縮してレンズを強く締め付ける。その結果、レンズに歪みやクラックが発生することがある。そのため、鏡筒の熱膨張係数はレンズの熱膨張係数より大きく設定されているが、レンズに歪みやクラックが発生しない程度に大きく設定されている。
一方で、レンズ素材であるガラス材料の熱膨張曲線には変曲点があり、この変曲点以上でガラス材料の熱膨張量が急激に増加することが知られている。この変曲点はガラス転移点であり、ガラス転移点以上において、ガラス材料の熱膨張係数は大きくなる。そのため、従来の鏡筒一体成形レンズ201において、ガラス転移点以上の温度で鏡筒とレンズが一体成形された後、ガラス転移点以上の冷却過程で、レンズの熱膨張係数が鏡筒の熱膨張係数より大きくなることがある。
以上のように鏡筒とレンズの冷却過程においては、ガラス転移点以上の温度領域で、レンズ206は鏡筒205よりも大きく収縮することがある。そのため、従来の鏡筒一体成形レンズ201においては、図8に示すように、レンズ206の収縮を抑える工夫がなされていないので、鏡筒205とレンズ206の接合面に剥離が生じることがある。
図9に示すように、鏡筒205とレンズ206の接合面に剥離が生じた鏡筒一体成形レンズ201を用いて、特許文献1に開示される光モジュール210が組み立てられると、鏡筒205とレンズ206の接合面の剥離した部分から、窒素などの不活性ガスが漏れ出し、空気が侵入することがある。そのため、特許文献1に開示される従来の光モジュール210においては、半導体レーザチップ212の出射部が酸化するという不具合を発生することがある。
特許文献2に開示される従来の鏡筒305を用いて、鏡筒305とレンズ素材を一体成形する場合を考えてみる。特許文献2に開示される鏡筒付レンズ301においては、図10に示すように、凹部305eは、角部305hを有し、幅寸法(L5)に対して深さ寸法(L4)が大きい。仮に、このような従来の鏡筒305とレンズ素材を使って、鏡筒一体成形レンズとして一体成形すると、ガラス転移点以上の加熱温度から常用温度までの冷却過程において、幅寸法(L5)に対して深さ寸法(L4)が大きいため、凹部305eに嵌合される凸状部分306dには、その機械的な強度に比べて大きな曲げモーメントが作用し、また、角部305hに当接する凸状部分306dに熱応力が集中加重する。そのため、凸状部分306dに歪みやクラックが発生することがある。
本発明の目的は、このような課題を顧みてなされたものであり、光モジュールの気密封止に優れると共に、高品質である鏡筒一体成形レンズおよびその製造方法を提供することである。
本発明の鏡筒一体成形レンズは、レンズを保持する鏡筒と、前記鏡筒の内周面に突設される突部と、前記突部に形成されるレンズ載置面と、を有する鏡筒一体成形レンズであって、前記レンズ載置面に、角部を持たない形状の凹部が設けられていることを特徴とする。
このような態様であれば、ガラス転移点以上の温度で鏡筒とレンズが一体成形された後、ガラス転移点以上の冷却過程で、レンズの熱膨張係数が鏡筒の熱膨張係数より大きくなっても、角部を持たない形状の凹部が、レンズの収縮を抑制する。よって、鏡筒とレンズとの接合面に剥離が発生することが抑制される。
また、レンズの収縮を抑制する凹部は角部を持たないので、レンズの軟化点以上の温度で鏡筒とレンズが一体成形された後、常用温度まで冷却される過程で、熱応力がレンズの特定箇所に集中加重することが抑制される。そのため、レンズに歪みやクラックが発生することが抑制されるので、高品質な鏡筒一体成形レンズが得られる。
よって、本発明によれば、光モジュールの気密封止に優れると共に、高品質である鏡筒一体成形レンズを提供することが可能である。
前記凹部が、前記内周面に連設されていることが好ましい。このような態様であれば、凹部と内周面との間にレンズ部分がないので、ガラス転移点以上の温度で鏡筒とレンズが一体成形された後、ガラス転移点以上の冷却過程で、レンズの収縮を更に抑えることが可能である。
前記レンズ載置面に連設すると共に傾斜して前記鏡筒の中心軸側に延出する傾斜面が、前記突部に形成されていることが好ましい。このような態様であれば、鏡筒とレンズ素材を一体成形する際に、レンズ素材が傾斜面に沿って凹部側に広がるので、更に安定的に凹部内にレンズ素材が充填される。よって、ガラス転移点以上の温度で鏡筒とレンズが一体成形された後、ガラス転移点以上の冷却過程で、レンズの収縮を更に抑えることが可能である。
前記鏡筒の中心軸に直交すると共に前記中心軸を中心とする円の法線方向における前記凹部の寸法が、前記中心軸に平行な方向における前記凹部の寸法より大きいことが好ましい。このような態様であれば、レンズの軟化点以上の温度から常用温度まで冷却される過程において、鏡筒の凹部に充填されたレンズの凸状部分の基部に作用する曲げモーメントに対して凸状部分の基部の機械的な強度を増すことができる。そのため、レンズに歪みやクラックが発生することを更に抑制することができる。
前記法線方向における前記凹部の寸法が、前記法線方向における前記レンズ載置面の寸法の1/3以上2/3以下であることが好ましい。このような態様であれば、鏡筒の凹部に充填されたレンズの凸状部分の機械的な強度が増すので、凸状部分に歪みやクラックなどが発生することを抑制できる。また、レンズの収縮を抑える鏡筒部分の機械的強度が増すので、ガラス転移点以上の温度で鏡筒とレンズが一体成形された後、ガラス転移点以上の冷却過程で、レンズの収縮を更に抑えることが可能である。
前記レンズ載置面が、前記鏡筒の中心軸に直交することが好ましい。レンズは、中心軸を中心とする円の法線方向に収縮するので、中心軸に直交するレンズ載置面に沿って収縮する。このレンズ載置面に、レンズの収縮を抑制する凹部を形成するので、レンズ載置面に沿うレンズの収縮を、更に効果的に抑制することが可能である。
本発明の鏡筒一体成形レンズの製造方法は、前記鏡筒内にレンズ素材を供給し、前記レンズ素材の軟化点以上に前記鏡筒および前記レンズ素材を加熱し、前記レンズ素材を前記レンズに加圧成形すると共に前記鏡筒と前記レンズとを一体的に結合することを特徴とする。
このような態様であれば、ガラス転移点以上の温度で鏡筒とレンズが一体成形された後、ガラス転移点以上の冷却過程で、レンズの熱膨張係数が鏡筒の熱膨張係数より大きくなっても、角部を持たない形状の凹部が、レンズの収縮を抑制する。よって、鏡筒とレンズとの接合面に剥離が発生することが抑制される。
また、レンズの収縮を抑制する凹部は角部を持たないので、レンズの軟化点以上の温度で鏡筒とレンズが一体成形され後、常用温度まで冷却される過程で、熱応力がレンズの特定箇所に集中加重することが抑制される。そのため、レンズに歪みやクラックが発生することが抑制されるので、高品質である鏡筒一体成形レンズが得られる。
よって、本発明によれば、光モジュールの気密封止に優れると共に、高品質である鏡筒一体成形レンズの製造方法を提供することが可能である。
よって、本発明によれば、光モジュールの気密封止に優れると共に、高品質である鏡筒一体成形レンズおよびその製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態の鏡筒一体成形レンズ、それを用いた光モジュール、およびその製造方法について図面を用いて詳細に説明する。なお、各図面の寸法は適宜変更して示している。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係わる鏡筒一体成形レンズの平面略図である。図2は、図1に示すA−A線に沿って切断し矢印方向から視る断面略図である。図3は、第1の実施形態に係わる光モジュールの断面略図である。図4は、第1の実施形態に係わる鏡筒一体成形レンズの製造方法の説明図である。図5は、第1の実施形態に係る鏡筒一体成形レンズの部分拡大断面略図である。
図1は、第1の実施形態に係わる鏡筒一体成形レンズの平面略図である。図2は、図1に示すA−A線に沿って切断し矢印方向から視る断面略図である。図3は、第1の実施形態に係わる光モジュールの断面略図である。図4は、第1の実施形態に係わる鏡筒一体成形レンズの製造方法の説明図である。図5は、第1の実施形態に係る鏡筒一体成形レンズの部分拡大断面略図である。
本実施形態の鏡筒一体成形レンズ1は、図1、図2に示すように、鏡筒5を有し、レンズ6が鏡筒5内に保持されている。鏡筒5は、平面視円形であり、貫通孔を有する円柱状に形成されている。鏡筒5は、回転中心であると共に貫通孔と同じ方向に延在する中心軸5aを有する。そして、鏡筒5は、中心軸5aに平行な方向に延在する内周面5bと、内周面5bに突設される突部7と、突部7に形成されると共にレンズ6を支持するレンズ載置面5cとを有する。また、本実施形態においては、レンズ載置面5cに連設すると共に傾斜して中心軸5a側に延出する傾斜面5dが、突部7に形成されている。
鏡筒5のレンズ載置面5cには、図1、図2に示すように、鋭い角部を持たない形状の凹部5eが、中心軸5aを中心として同心円状に設けられている。凹部5eは、本実施形態においては、内周面5bに連設するように形成されている。レンズ6は、図2に示すように、突部7のレンズ載置面5c上に載置され、内周面5bによって外周から支持されることにより、鏡筒5の貫通孔内に保持されている。なお、鋭い角部を持たない形状の凹部5eとは、例えば凹部5eの底面と側面の境界および凹部5eの上部とレンズ載置面5cに角部が形成されていない形状であり、それぞれの境界が曲面で連続的に変化する形状となっていることが好ましい。
本実施形態の鏡筒5は、図1に示すように、平面視円形であるとしたが、これに限定されるものではない。鏡筒は、平面視楕円、平面視矩形、あるいは平面視多角形であることも可能である。
本実施形態においては、鏡筒5は、ステンレス鋼などの金属から形成されており、例えばフェライト系のステンレス鋼から形成されている。レンズ6は、光学ガラス材料、例えば無鉛ガラス((株)オハラ製L−BAL35)から形成されている。
第1の実施形態に係わる光モジュール10においては、図3に示すように、発光素子である半導体レーザチップ12が、基板11の上面11aに絶縁性の接合剤13により固定されている。そして、半導体レーザチップ12に導通される導通性端子14、14が、絶縁性の接合剤15により基板11に固定されている。半導体レーザチップ12を覆うように、基板11の上面11aに鏡筒一体成形レンズ1が固定されている。この際、鏡筒一体成形レンズ1の鏡筒5の折り曲げフランジの底面5fと基板11の上面11aとを当接させ、両者を抵抗溶接などにより固着する。このとき、基板11と鏡筒一体成形レンズ1とで囲まれる空間には、窒素などの不活性ガスが充填されて、半導体レーザチップ12が気密に封止される。この不活性ガスは、半導体レーザチップ12の酸化を防止するためのものである。
特許文献1に開示される従来の光モジュール210は、図9に示すように、基板211をカバー216で覆い、カバー216にレンズ206と一体化された鏡筒205を固定することで構成されている。本実施形態に係る光モジュール10は、基板11に鏡筒一体成形レンズ1を固定することで構成されている。このように、本実施形態は、従来技術に比べて部品数が少なく安価な光モジュールを提供することができる。また、従来の光モジュールに比べて本実施形態に係る光モジュールの組み立ては簡便である。
また、従来の光モジュール210ではカバー216と鏡筒205とを固着して構成されるが、本実施形態に係る光モジュール10では一体ものである鏡筒5で構成される。そのため、従来の光モジュール210では、カバー216と鏡筒205との接合部にリークパスが生じることがあるが、本実施形態に係る光モジュール10ではそのようなことはない。よって、本実施形態に係る鏡筒一体成形レンズ1は、光モジュールの気密封止に優れる。
鏡筒一体成形レンズ1の製造方法について、図4を用いて説明する。まず、図4(a)に示す成形装置20を準備する。成形装置20において、符号21は下型、符号22は上型である。下型21内には入子23が、上型22内には入子24が設けられている。そして、下型21、上型22、入子23、24は、摺動自在に設けられている。入子23の上面と入子24の下面とは、凹非球面の光学転写面23a、24aである。そして、下型21および上型22の外側に、加熱部25が設けられている。
次に、図4(b)に示すように、鏡筒5およびレンズ素材6aが、成形装置20内に供給される。その際、鏡筒5は、下型21の上面凹部21a内に位置決めされて嵌合される。またレンズ素材6aが、鏡筒5の内周面から突設する突部7の上に設置されて位置決めされる。
次に、図4(c)に示すように、上型22が下降され、鏡筒5が,上型22および下型21に上下から挟まれて固定される。そして、鏡筒5の外側に設置される加熱部25によって鏡筒5が加熱され、さらにレンズ素材6aが軟化点以上、本実施形態においては、ガラス転移点以上の温度に加熱される。
次に、図4(d)に示すように、入子23および入子24が挟圧方向に駆動され、レンズ素材6aが各光学転写面23a、24aによって加圧され、非球面の光学面6b、6cを有するレンズ6に加圧成形される。その後、加熱部25が停止され、鏡筒5およびレンズ6は、冷却される。
次に、図4(e)に示すように、上型22、入子23、24がそれぞれ上下に駆動され、鏡筒一体成形レンズ1が離型される。
鏡筒一体成形レンズ1の製造方法において、入子23の上面と入子24の下面とは、凹非球面の光学転写面23a、24aであるとしたが、これに限定されるものではない。入子23の上面と入子24の下面とが、凹球面の光学転写面であることも可能である。
本実施形態においては、突部7には、図2に示すように、レンズ載置面5cに連設すると共に傾斜して、中心軸5a側に延出する傾斜面5dが形成されている。そのため、レンズ素材6aは、図4(d)に示す工程で、入子23および入子24によって加圧される際に、緩やかに傾斜する傾斜面5d(図2に図示)に沿って移動するので、均一性よく加圧成形されると共に、凹部5e(図2に図示)に容易に充填される。
また、本実施形態においては、鏡筒5の内周面5bが、図2に示すように、中心軸5aに平行に形成されている。そのため、入子24は、図4(d)に示す工程で、内周面5bに沿うように下降するので、安定的に精度よくレンズ6を加圧成形することができる。そのため、高品質である鏡筒一体成形レンズ1が得られる。
鏡筒5の熱膨張係数は、レンズ6の熱膨張係数より大きくなるように選ばれている。このように選ばれることで、鏡筒5は、ガラス転移点以上の加熱温度から常用温度に戻されると、レンズ6よりも大きく収縮する。その結果、鏡筒5は、レンズ6を締め付け強固に保持する。
ところが、鏡筒およびレンズ素材の熱膨張係数の差が大き過ぎると、鏡筒がレンズ素材より大きく収縮して、鏡筒のレンズを締め付ける熱応力が大きくなり過ぎる。その際、鏡筒のレンズを締め付ける熱応力によって、レンズに歪みやクラックなどが発生することがある。そのため、鏡筒5の熱膨張係数は、レンズ6の熱膨張係数より、レンズ6に歪みやクラックなどが発生しない程度に大きく設定される。
レンズ素材であるガラス材料の熱膨張曲線には変曲点があり、この変曲点以上でガラス材料の熱膨張量は急激に増加することが知られている。この変曲点はガラス転移点であり、ガラス転移点以上において、ガラス材料の熱膨張係数は大きくなる。そのため、ガラス転移点以上の加熱温度からガラス転移点までの冷却過程において、鏡筒5の熱膨張係数が、レンズ6の熱膨張係数より小さくなることがある。
本実施形態においては、鏡筒5のレンズ載置面5cに、図2に示すように、凹部5eが設けられている。そのため、ガラス転移点以上の加熱温度からガラス転移点までの冷却過程において、レンズ6が、鏡筒5よりも大きく収縮しようとしても、凹部5eがレンズ6の収縮を抑制する。よって、鏡筒5とレンズ6との接合面に剥離が発生することが抑制される。よって、本実施形態の鏡筒一体成形レンズ1を用いた光モジュール10においては、図3に示すように、半導体レーザチップ12が気密封止される。
従来の鏡筒305とレンズ素材を一体成形すると、図10に示すように、ガラス転移点以上の加熱温度から常用温度までの冷却過程において、凹部305eに角部305hがあるので、角部305hに当接する凸状部分306dに熱応力が集中加重することで、凸状部分306dに歪みやクラックなどが発生することがある。ところが、本実施形態の凹部5eは、図2に示すように、角部を持たない形状であるので、レンズ6の特定な箇所、すなわち凸状部分6d(図5に図示)に熱応力が集中加重することはない。よって、レンズ6に歪みやクラックが発生することが抑制されるので、高品質である鏡筒一体成形レンズ1が得られる。
よって、本実施形態によれば、光モジュールの気密封止に優れると共に、高品質である鏡筒一体成形レンズを提供することが可能である。
図10を参照して、特許文献2に開示される従来の鏡筒305とレンズ206を一体成形する場合を考える。鏡筒付レンズ301には、内周面305bと凹部305eとの間にレンズ部分306gがある。鏡筒305とレンズ206を一体成形する場合には接合剤318を用いないので、レンズ部分306gは、鏡筒305などにより収縮を抑制されるように支持されていないので、容易に収縮する。そのため、鏡筒305とレンズ306との接合面に剥離が発生することがある。
ところで、本実施形態においては、凹部5eが、図2に示すように、内周面5bに連設するように形成されているので、凹部5eは、レンズ6の最外周部において収縮を抑制する。そのため、レンズ全体の収縮が余すことなく抑制される。よって、本実施形態によれば、鏡筒5とレンズ6との接合面に剥離が発生することを更に効果的に抑制される。
ガラス転移点以上の加熱温度からガラス転移点までの冷却過程において、レンズは、鏡筒の中心軸を中心とする円の法線方向に収縮する。ところで、本実施形態においては、レンズ載置面5cが、図2に示すように、中心軸5aに直交するように形成されているので、レンズ6は、中心軸5aに直交するレンズ載置面5cに沿って収縮する。このレンズ載置面5cに、レンズ6の収縮を抑制する凹部5eが形成されているので、レンズ載置面5cに沿うレンズ6の収縮を、更に効果的に抑制することが可能である。
内周面5bは、図1に示すように、平面視で円であり、この円は、中心軸5a(図2に図示)に直交すると共に中心軸5aを中心とする円である。内周面5bが平面視でなす円の法線方向におけるレンズ載置面5cおよび凹部5eの寸法を、図5に示すように、それぞれL1、L2とする。中心軸5aに平行な方向における凹部5eの寸法を、図5に示すように、L3とする。
この際、本実施形態においては、L2はL3より大きく設けられ、L2はL1の1/3以上2/3以下に設けられている。
ガラス転移点以上の加熱温度から常用温度に戻される際、凹部5eに充填されたレンズ6の凸状部分6dには、鏡筒5から熱応力が加わる。その際、L3が大きいと、凸状部分6dのレンズ載置面5c側である基部6eに大きな曲げモーメントが作用する。この曲げモーメントにより凸状部分6dの基部6eに歪みやクラックなどが発生することを抑制するためには、L3は小さいことが好ましい。また、L2が大きいと、凸状部分6dの基部6eの機械的な強度が増す。
よって、本実施形態においては、L2をL3より大きく設けることにより、凸状部分6dの基部6eに作用する曲げモーメントに対して凸状部分6dの基部6eの機械的な強度を増すことにより、レンズ6に歪みやクラックが発生することを抑制している。
ガラス転移点以上の加熱温度からガラス転移点までの冷却過程において、突部7にはレンズ6から熱応力が作用する。その際、傾斜面5dと凹部5eの間の寸法が小さいと、この部分の突部7の機械的な強度が弱まり、突部7がレンズ6から作用する熱応力によって弾性変形することがある。そのため、本実施形態においては、L2をL1の2/3以下にすることにより、傾斜面5dと凹部5eの間に位置する突部7の機械的強度を増すことにより、傾斜面5dと凹部5eの間に位置する突部7の弾性変形を抑制している。その結果、本実施形態によれば、レンズ6の収縮が抑制され、鏡筒5とレンズ6との接合面に剥離が発生することを更に効果的に抑制する。
L2が小さくなり過ぎると、凸状部分6dの基部6eの機械的な強度が弱まり、凸状部分6dの基部6eに作用する曲げモーメントにより歪みやクラックなどが発生することがある。そのため、本実施形態においては、L2をL1の1/3以上にすることにより、凸状部分6dの基部6eに歪みやクラックなどが発生することを抑制している。
本実施形態に係る鏡筒一体成形レンズ1は、半導体レーザチップ12を収容する光モジュールに用いられるとしたが、これに限定されるものではない。鏡筒とレンズとの接合面に剥離があると、鏡筒一体成形レンズが搭載されるマイクロプロジェクタなどの光学装置の使用時や運搬時の振動などによりレンズが振動する。そして、レンズの振動により、光軸ずれ、レンズの破損、あるいはレンズの破損に伴うパーティクルなどが生じて、光学装置の光学性能が劣化することがある。そのため、本実施形態に係わる鏡筒一体成形レンズ1は、半導体レーザチップ12を収容しない光モジュールに対しても、高品質な光学性能を提供することが可能である。
<変形例>
第1の実施形態においては、図2に示すように、内周面5bは、中心軸5aに平行に形成されており、レンズ載置面5cは、中心軸5aに直交するように形成されているが、これに限定されるものではない。図6は、第1の実施形態の変形例に係わる鏡筒一体成形レンズの断面略図である。
第1の実施形態においては、図2に示すように、内周面5bは、中心軸5aに平行に形成されており、レンズ載置面5cは、中心軸5aに直交するように形成されているが、これに限定されるものではない。図6は、第1の実施形態の変形例に係わる鏡筒一体成形レンズの断面略図である。
本変形例の鏡筒一体成形レンズは、図6に示すように、内周面5bは、中心軸5aに対して非平行に、すなわち傾斜して形成されており、レンズ載置面5cは、中心軸5aに対して非直交に、すなわち傾斜して形成されている。
内周面5bが、図6に示すように中心軸5aに対して傾斜して形成されていると、図4(d)に示す工程において、入子24が、内周面5b内に挿入される許容度を増すことができる。
また、レンズ載置面5cが中心軸5aに対して傾斜して形成されていると、図6に示すように、レンズ載置面5cと傾斜面5dが連接して緩やかな傾斜面を形成する。そのため、レンズ素材6aは、図4(d)に示す工程において、入子23および入子24によって加圧される際に、緩やかに傾斜する傾斜面に沿って移動するので、均一性よく加圧成形されると共に、凹部5eに容易に充填される。
<第2の実施形態>
図7は、第2の実施形態に係わる鏡筒一体成形レンズの断面略図である。第1の実施形態の鏡筒一体成形レンズ1は、図1に示すように、角部を持たない形状の凹部5eが、内周面5bに連設するように形成されているが、これに限定されるものではない。本実施形態における鏡筒一体成形レンズ30においては、角部を持たない形状の凹部5eは、内周面5bに連設されていない。
図7は、第2の実施形態に係わる鏡筒一体成形レンズの断面略図である。第1の実施形態の鏡筒一体成形レンズ1は、図1に示すように、角部を持たない形状の凹部5eが、内周面5bに連設するように形成されているが、これに限定されるものではない。本実施形態における鏡筒一体成形レンズ30においては、角部を持たない形状の凹部5eは、内周面5bに連設されていない。
このような態様であれば、内周面5bと凹部5eとの間に隙間があるので、切削加工によって凹部5eを加工する際に、内周面5bを誤って切削することがない。よって、安定的に精度よく内周面5bを加工することが可能である。
1 鏡筒一体成形レンズ
5 鏡筒
5a 中心軸
5b 筒状内周面
5c レンズ載置面
5d 傾斜面
5e 凹部
5f 底面
6 レンズ
6a レンズ素材
6b、6c 光学面
6d 凸状部分
7 突部
10 光モジュール
11 基板
11a 上面
12 半導体レーザチップ
13、15 接合剤
14 導通性端子
20 成形装置
21 下型
21a 上面凹部
22 上型
23、24 入子
23a、24a 光学転写面
25 加熱部
5 鏡筒
5a 中心軸
5b 筒状内周面
5c レンズ載置面
5d 傾斜面
5e 凹部
5f 底面
6 レンズ
6a レンズ素材
6b、6c 光学面
6d 凸状部分
7 突部
10 光モジュール
11 基板
11a 上面
12 半導体レーザチップ
13、15 接合剤
14 導通性端子
20 成形装置
21 下型
21a 上面凹部
22 上型
23、24 入子
23a、24a 光学転写面
25 加熱部
Claims (7)
- レンズを保持する鏡筒と、前記鏡筒の内周面に突設される突部と、前記突部に形成されるレンズ載置面と、を有する鏡筒一体成形レンズであって、
前記レンズ載置面に、角部を持たない形状の凹部が設けられていることを特徴とする鏡筒一体成形レンズ。 - 前記凹部が、前記内周面に連設されていることを特徴とする請求項1に記載の鏡筒一体成形レンズ。
- 前記レンズ載置面に連設すると共に傾斜して前記鏡筒の中心軸側に延出する傾斜面が、前記突部に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鏡筒一体成形レンズ。
- 前記鏡筒の中心軸に直交すると共に前記中心軸を中心とする円の法線方向における前記凹部の寸法が、前記中心軸に平行な方向における前記凹部の寸法より大きいことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の鏡筒一体成形レンズ。
- 前記法線方向における前記凹部の寸法が、前記法線方向における前記レンズ載置面の寸法の1/3以上2/3以下であることを特徴とする請求項4に記載の鏡筒一体成形レンズ。
- 前記レンズ載置面が、前記鏡筒の中心軸に直交することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の鏡筒一体成形レンズ。
- 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の鏡筒一体成形レンズの製造方法であって、
前記鏡筒内にレンズ素材を供給し、前記レンズ素材の軟化点以上に前記鏡筒および前記レンズ素材を加熱し、前記レンズ素材を前記レンズに加圧成形すると共に前記鏡筒と前記レンズとを一体的に結合することを特徴とする鏡筒一体成形レンズの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013086385A JP2014211470A (ja) | 2013-04-17 | 2013-04-17 | 鏡筒一体成形レンズおよびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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Family Applications (1)
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JP (1) | JP2014211470A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016122692A (ja) * | 2014-12-24 | 2016-07-07 | 日亜化学工業株式会社 | 発光装置およびその製造方法 |
CN107561822A (zh) * | 2016-06-30 | 2018-01-09 | 佳能株式会社 | 光学部件、光学部件制造方法和相机 |
-
2013
- 2013-04-17 JP JP2013086385A patent/JP2014211470A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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