JP2014209919A - ホルマリン固定組織からの種々の生体分子の並行抽出 - Google Patents
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Abstract
【課題】ホルマリン固定組織からの種々の生体分子の並行抽出の提供。
【解決手段】本発明は、本発明による方法を用いて異なる生体分子、特に核酸およびタンパク質を同じ固定生物学的サンプルから並行して単離/抽出し、単離された生体分子を定量および分析する方法と、固定サンプルから異なる生体分子を並行して単離/抽出するためのキットとに関する。本発明はまた、疾病の診断、疾病の予後診断、疾病の処置の決定、および疾病の処置のモニタリングのための、前記キットの使用に関する。本発明はさらに、本発明の方法により単離された生体分子を定量および分析すること、固定サンプルから様々な生体分子を並行して単離/抽出するためのキット、および疾患の診断、予後診断、疾患の療法の決定および疾患の治療のモニタリングのために前記キットを使用することを含む。
【選択図】なし
【解決手段】本発明は、本発明による方法を用いて異なる生体分子、特に核酸およびタンパク質を同じ固定生物学的サンプルから並行して単離/抽出し、単離された生体分子を定量および分析する方法と、固定サンプルから異なる生体分子を並行して単離/抽出するためのキットとに関する。本発明はまた、疾病の診断、疾病の予後診断、疾病の処置の決定、および疾病の処置のモニタリングのための、前記キットの使用に関する。本発明はさらに、本発明の方法により単離された生体分子を定量および分析すること、固定サンプルから様々な生体分子を並行して単離/抽出するためのキット、および疾患の診断、予後診断、疾患の療法の決定および疾患の治療のモニタリングのために前記キットを使用することを含む。
【選択図】なし
Description
本発明は、様々な生体分子、特に核酸およびタンパク質を同じ固定生物学的サンプルから並行して単離/抽出する方法に関する。本発明はさらに、本発明の方法により単離された生体分子を定量および分析すること、固定サンプルから様々な生体分子を並行して単離/抽出するためのキット、および疾患の診断、予後診断、疾患の療法の決定および疾患の治療のモニタリングのために前記キットを使用することを含む。
近年、たとえば健常組織と病変組織との識別など将来の病理組織学的検査に備えてホルマリンで組織固定することは一般に行われている。ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織は数十年にわたり収集されており、無数の診断研究の源である。前記組織は、治療前/後/中の疾患の様々な段階のほとんどの器官、および他の様々なものの組織である。FFPE組織には形状が非常によく保持されるという利点がある。しかしながら、組織をホルマリンで固定すると細胞内に高分子の強い架橋が起こるため、従来のアプローチでは、数十年にわたり試され試験されてきたこの固定法により、病院または研究で非常に強く望まれている、ヒトまたは動物組織の1つのサンプルからの核酸およびタンパク質を並行抽出することはできていない。
1つのサンプルから様々な生体分子、たとえばタンパク質および核酸を並行して単離することは特に望ましいものである。第1に入手可能なサンプル材料は通常ごく少量に過ぎず、複数の精製を別々に行うには不十分である。第2にサンプル材料は不均一であり、たとえば一部の腫瘍細胞は健康な細胞に挟まれて存在している。この場合、サンプルを分割すると各分割サンプルが同じ種類の細胞を同じ量で含むとは限らないため、サンプルを分離または分割することは望ましくない。DNA、RNAおよびタンパク質などの生体分子を、たとえば、分割していないサンプルから並行して単離するのみであれば、調査対象の全生体分子(アナライト)は類似のサンプルに由来するため、相互に関連づけが行えるようになる。
現在、FFPE組織からの核酸分子の単離は一般に行われており、文献に網羅的に記載されている。そうした方法の例は、国際特許出願の、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4で確認することができるが、前記の各方法では、核酸の精製に、たとえば核酸分解酵素など、同時に存在するタンパク質を破壊するためプロテアーゼの使用が好まれる点が共通している。言うまでもなくこれらのアプローチを用いて、同じサンプルからのタンパク質の同時/並行精製または単離は不可能である。
特許文献5には、FFPE組織中に存在するタンパク質を標的としたタンパク質分解により、前記組織からのタンパク質分解性のペプチドフラグメントの調製が記載されている。これには、異なるバッファーで2つの組織サンプルを同時に処理し、前記サンプルのペプチドパターンを作製することが含まれる。同じサンプルからのタンパク質および核酸の同時/並行単離については記載されていない。
特許文献6では、試験対象のサンプルを最初に界面活性剤を含むバッファー中で煮沸し、次いで60℃超の温度でさらにインキュベートすれば、固定組織からのタンパク質の抽出が実質的に改善され得ることが明らかにされる。このようにサンプルを処理すれば、単離されたタンパク質をその後定量することができる。
特許文献7には、固定組織サンプルを好ましくは求核試薬を含む水溶液と接触させることにより、ホルマリン固定が原因の生体分子の架橋をより分解しやすくできる方法が記載されている。このように処理したサンプルはその後、タンパク質単離のための精製工程に使用しても、または核酸単離のための精製工程に使用してもよい。前記出願には、2種類の生体分子を同じサンプルから並行して/同時に単離する方法については記載されていない。
本発明の目的は、様々な生体分子を固定組織の1つのサンプルから採取し、適切な場合には固定組織の試験が可能な方法を提供することであった。
この目的は、架橋により固定された同じ生物学的出発材料から様々な種類の生体分子を並行精製する方法であって、
a)出発材料の前記架橋を分解する工程、
b)出発材料に存在する異なる生体分子を少なくとも1つの画分(A)および少なくとも1つの画分(B)に分離する工程および
c)工程b)の前記画分(A)および(B)の少なくとも1つから異なる生体分子を単離または検出する、あるいは、単離および検出する工程、を含む方法、
および前記方法を実施するためのキットによって達成される。好ましい実施形態は従属クレームに含まれる。
本発明は例えば、以下の工程を提供する:
(項目1)
架橋により固定された同じ生物学的出発材料から様々な種類の生体分子を並行精製する方法であって、
a)前記出発材料の前記架橋を分解する工程、
b)前記出発材料に存在する前記異なる生体分子を少なくとも1つの画分(A)および少なくとも1つの画分(B)に分離する工程および
c)工程b)の前記画分(A)および(B)の少なくとも1つから異なる生体分子を単離または検出/分析する、あるいは、単離および検出/分析する工程、
が行われる、方法。
(項目2)
前記出発材料の前記架橋は以下の工程:
(i)前記材料を好ましくは水性の溶液に移す工程、
(ii)前記材料を、前記溶液中、前記可溶性タンパク質を遊離するのに十分な温度でインキュベートする工程
(iii)その後さらに60℃を超える温度でインキュベートする工程
により、工程a)で分解される、項目1に記載の方法。
(項目3)
工程(i)で使用される前記溶液は界面活性剤を含み、タンパク質分解活性を有する化合物を含まないバッファーである、項目2に記載の方法。
(項目4)
工程(ii)における前記材料は前記溶液中で煮沸される、項目2または3に記載の方法。
(項目5)
工程b)において可溶性画分(A)および不溶性画分(B)への分離が行われる、項目1〜4のいずれかに記載の方法。
(項目6)
画分(A)と画分(B)との分離により、少なくとも前記出発材料から遊離可能な前記タンパク質が、少なくとも遊離可能な前記核酸から実質的に定量的に分離され、前記可溶性タンパク質は実質的に定量的に画分(A)中にある一方、前記可溶性核酸は実質的に定量的に画分(B)中にある、項目1〜5のいずれかに記載の方法。
(項目7)
工程c)による前記異なる生体分子の単離はタンパク質精製またはタンパク質単離の慣用される方法を用いて画分(A)からのタンパク質の精製/単離により行われ、前記不溶解性サンプル成分を破壊する少なくとも1つの追加処理、および/またはその後前記出発材料中になお残存している架橋を分解すること、さらに前記可溶性核酸を単離することを含むその後の工程d)により、画分(B)から核酸を単離する、項目1〜6のいずれかに記載の方法。
(項目8)
前記タンパク質の精製/単離はクロマトグラフィ法、電気泳動による分離、タンパク質結合材料への特異的結合、特異抗体を用いたタンパク質の捕捉または沈殿により行われ、前記核酸の単離は沈殿、核酸結合材料への結合、電気泳動またはクロマトグラフィにより実施される、項目1〜7のいずれかに記載の方法。
(項目9)
タンパク質の検出/分析は免疫学的方法、クロマトグラフィ法、シーケンシングまたは電気泳動によって行われ、前記核酸の検出/分析は特異的PCR、電気泳動、ハイブリダイゼーション法またはシーケンシングによって行われる、項目1〜8のいずれかに記載の方法。
(項目10)
項目1〜9のいずれかに記載の方法を実施するためのキットであって、少なくとも(1)前記出発材料の前記架橋を分解するための、プロテアーゼを含まない水性系、好ましくはバッファー系、(2)場合により前記溶液(1)に存在していてもよい界面活性剤、および(3)プロテアーゼを含む溶液またはプロテアーゼを含む、キット。
(項目11)
(4)少なくとも1種の核酸結合材料、(5)核酸を単離するための追加のバッファー、好ましくは結合バッファーおよび溶出バッファーをさらに含む、項目10に記載のキット。
(項目12)
前記水性系(1)は少なくとも1種の還元試薬、少なくとも1種の界面活性剤、および少なくとも1種の求核試薬を含むバッファーである、項目10または11に記載のキット。
(項目13)
生物学的サンプルに含まれる生体分子を分析および/または定量するための、項目10〜12のいずれかに記載のキットの使用。
(項目14)
ヒトの体外のサンプルまたは動物の体外のサンプルに基づき疾患の診断、疾患の予後診断、疾患に対する治療の決定、および疾患に対する治療のモニタリングを行うための、項目10〜12のいずれかに記載のキットの使用。
a)出発材料の前記架橋を分解する工程、
b)出発材料に存在する異なる生体分子を少なくとも1つの画分(A)および少なくとも1つの画分(B)に分離する工程および
c)工程b)の前記画分(A)および(B)の少なくとも1つから異なる生体分子を単離または検出する、あるいは、単離および検出する工程、を含む方法、
および前記方法を実施するためのキットによって達成される。好ましい実施形態は従属クレームに含まれる。
本発明は例えば、以下の工程を提供する:
(項目1)
架橋により固定された同じ生物学的出発材料から様々な種類の生体分子を並行精製する方法であって、
a)前記出発材料の前記架橋を分解する工程、
b)前記出発材料に存在する前記異なる生体分子を少なくとも1つの画分(A)および少なくとも1つの画分(B)に分離する工程および
c)工程b)の前記画分(A)および(B)の少なくとも1つから異なる生体分子を単離または検出/分析する、あるいは、単離および検出/分析する工程、
が行われる、方法。
(項目2)
前記出発材料の前記架橋は以下の工程:
(i)前記材料を好ましくは水性の溶液に移す工程、
(ii)前記材料を、前記溶液中、前記可溶性タンパク質を遊離するのに十分な温度でインキュベートする工程
(iii)その後さらに60℃を超える温度でインキュベートする工程
により、工程a)で分解される、項目1に記載の方法。
(項目3)
工程(i)で使用される前記溶液は界面活性剤を含み、タンパク質分解活性を有する化合物を含まないバッファーである、項目2に記載の方法。
(項目4)
工程(ii)における前記材料は前記溶液中で煮沸される、項目2または3に記載の方法。
(項目5)
工程b)において可溶性画分(A)および不溶性画分(B)への分離が行われる、項目1〜4のいずれかに記載の方法。
(項目6)
画分(A)と画分(B)との分離により、少なくとも前記出発材料から遊離可能な前記タンパク質が、少なくとも遊離可能な前記核酸から実質的に定量的に分離され、前記可溶性タンパク質は実質的に定量的に画分(A)中にある一方、前記可溶性核酸は実質的に定量的に画分(B)中にある、項目1〜5のいずれかに記載の方法。
(項目7)
工程c)による前記異なる生体分子の単離はタンパク質精製またはタンパク質単離の慣用される方法を用いて画分(A)からのタンパク質の精製/単離により行われ、前記不溶解性サンプル成分を破壊する少なくとも1つの追加処理、および/またはその後前記出発材料中になお残存している架橋を分解すること、さらに前記可溶性核酸を単離することを含むその後の工程d)により、画分(B)から核酸を単離する、項目1〜6のいずれかに記載の方法。
(項目8)
前記タンパク質の精製/単離はクロマトグラフィ法、電気泳動による分離、タンパク質結合材料への特異的結合、特異抗体を用いたタンパク質の捕捉または沈殿により行われ、前記核酸の単離は沈殿、核酸結合材料への結合、電気泳動またはクロマトグラフィにより実施される、項目1〜7のいずれかに記載の方法。
(項目9)
タンパク質の検出/分析は免疫学的方法、クロマトグラフィ法、シーケンシングまたは電気泳動によって行われ、前記核酸の検出/分析は特異的PCR、電気泳動、ハイブリダイゼーション法またはシーケンシングによって行われる、項目1〜8のいずれかに記載の方法。
(項目10)
項目1〜9のいずれかに記載の方法を実施するためのキットであって、少なくとも(1)前記出発材料の前記架橋を分解するための、プロテアーゼを含まない水性系、好ましくはバッファー系、(2)場合により前記溶液(1)に存在していてもよい界面活性剤、および(3)プロテアーゼを含む溶液またはプロテアーゼを含む、キット。
(項目11)
(4)少なくとも1種の核酸結合材料、(5)核酸を単離するための追加のバッファー、好ましくは結合バッファーおよび溶出バッファーをさらに含む、項目10に記載のキット。
(項目12)
前記水性系(1)は少なくとも1種の還元試薬、少なくとも1種の界面活性剤、および少なくとも1種の求核試薬を含むバッファーである、項目10または11に記載のキット。
(項目13)
生物学的サンプルに含まれる生体分子を分析および/または定量するための、項目10〜12のいずれかに記載のキットの使用。
(項目14)
ヒトの体外のサンプルまたは動物の体外のサンプルに基づき疾患の診断、疾患の予後診断、疾患に対する治療の決定、および疾患に対する治療のモニタリングを行うための、項目10〜12のいずれかに記載のキットの使用。
驚いたことに、公知の方法、特に国際公開第2006/122898号に記載の方法を、(a)プロテアーゼを含まないバッファーを使用し、(b)界面活性剤を使用し、(c)サンプルを煮沸し、その後60℃超で50秒を超えてインキュベートして行ったところ、ホルマリンが原因の組織中の架橋において、タンパク質の場合に限り前記架橋が十分に分解されることが分かった。したがって、タンパク質のみはこれまでに記載された方法で実質的に定量的に単離される一方、サンプルに同時に存在する核酸の方は遊離しないか、あるいは比較的多くの量が遊離されずに、サンプルの不溶解性画分に残存したままである。このことが、可溶性タンパク質画分から簡便な機械的回収工程、たとえば遠心分離または濾過により、そうした核酸を実質的に回収できるという発見につながった。このため、本発明によれば、同じ出発サンプルから「タンパク質状態」および「核酸状態」を相互に別々に記録することができる。その後既知の核酸単離方法、たとえばRNeasy FFPEおよびQIAamp FFPE(どちらもQiagen,Hilden,Germany)により核酸を不溶解性の回収画分(abgetrennten Fraktion)から単離すればよい。RNeasy FFPEおよびQIAamp FFPEは、不溶解性画分をさらに破壊するためのプロテアーゼ処理を行い、その後高温でのインキュベーション工程を行うものである。こうして2種類の生体分子が、1つのおよび同一のサンプルから1つの抽出工程で前分画されてから、相互に別々に単離されるため、さらに(その後の)分析方法に利用できるようになる。
生体分子という用語は、当業者に公知のすべての生体分子、たとえば天然核酸または合成核酸、たとえばサンプルに導入された核酸、直鎖状、分枝もしくは環状の一本鎖または二本鎖核酸、RNA、特にmRNA、siRNA、miRNA、snRNA、tRNA、hnRNAまたはリボザイム、ゲノムDNA、プラスミドDNAまたはオルガネラDNA、タンパク質、ペプチドおよび改変タンパク質、さらに感染原因(infektioesen Ursprungs)からの核酸、タンパク質およびペプチド、抗体、ホルモン、増殖因子、脂質、オリゴ糖、多糖類、プロテオグルカン(Proteoglukane)、代謝産物および薬物/薬剤が挙げられるが、これに限定されるものではない。
好適な生物学的サンプルは、固定に好適な任意の生物学的サンプルであり、たとえば、血液、精液、脳脊髄液、唾液、痰または尿などの細胞含有体液、白血球画分、バフィーコート、糞便、スワブ、穿刺液、皮膚の断片、生物そのものまたはその一部、臓器、臓器片、たとえば切片、生検標本、細針吸引物または組織切片の形態の、多細胞生物、好ましくは昆虫および哺乳動物、特にヒトの組織および組織の一部、たとえば接着細胞または浮遊細胞培養物の形態の単離された細胞、植物、植物の一部、植物組織または植物細胞、細菌、ウイルス、酵母および真菌が挙げられるが、これに限定されるものではない。使用してもよい特に好ましい出発材料は、ヒト組織の組織切片である。
生物学的サンプルは、当業者に公知の任意の固定液、特に酸、アルコール、アルデヒド、ケトンまたは他の有機物、特にグルタルアルデヒドまたはホルムアルデヒドなどで固定されていてもよいが、ホルムアルデヒドで固定した生物学的サンプルは特に好ましい。本発明の方法の特に好ましい実施形態によれば、ホルムアルデヒドで固定し、パラフィンに包埋した生物学的サンプルを使用する。
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織は、病変組織および健常組織の病理組織学的診断に世界中で日常的に利用されている。FFPE組織は形態が非常によく保持されるためである。しかしながら、DNA、RNAおよびタンパク質などの高分子は通常、この方法で固定した組織を用いてさらに十分に研究することができない。科学者の長い経験にもかかわらず、インタクトなタンパク質をFFPE組織から抽出する方法が確立したのは最近である:Beckerらは、臨床組織サンプルからのタンパク質の発現量の正確な定量について報告した(J Pathol.211:370−8,2007)。これにより臨床研究者は、FFPE組織のタンパク質を入手可能な臨床データと比較して定量的に分析できるようになった。
本発明の方法により単離された核酸およびタンパク質を分析および/または検出する方法は、当業者に公知の任意の分析方法で行えばよく、たとえばPCR、qPCR、RT−PCR、qRT−PCR、全ゲノム増幅(Whole Genome Amplification)などの増幅法、ゲル電気泳動、サザンブロッティング、ノーザンブロッティングなどのブロッティング技術、およびウエスタンブロッティング、免疫沈降またはアフィニティークロマトグラフィなどの免疫学的方法、マイクロアレイ解析、RFLP解析(制限酵素断片長多型解析(restriction fragment length polymorphism−analyse)、SAGE(連続遺伝子発現分析(serielle Analyse der Genexpression))、シーケンシング(sequencing)、SNP解析、変異解析、たとえば、メチル化パターンの解析などのエピジェネティック解析、タンパク質/抗体アレイ、免疫沈降、高速液体クロマトグラフィ(HPLC:high performance liquid chromatography)、高速タンパク質液体クロマトグラフィ(FPLC:fast protein liquid chromatography)、SELDIまたはSELDI−TOF、質量分析法、MALDI−TOF質量分析法、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA:enzyme−linked immunosorbent assay)、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE:polyacrylamide gelelektrophorese)、特に二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(二次元ゲル電気泳動)、比活性により酵素も検出されるキャピラリー電気泳動などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明には、たとえばFFPE組織から生体分子、好ましくはタンパク質およびゲノム(g)DNAまたはRNAなどの核酸を並行して単離する方法と、非常に少量のサンプル、たとえば臨床生検標本から行える高感度な定量法による生体分子の分析法とが記載される。
本発明によって並行単離するとは、同じサンプルから始めて(すなわち同一の出発材料から)、様々な種類の生体分子、たとえば核酸およびタンパク質の両方がそれぞれの場合において精製されることを意味する。この目的のため、ホルマリンによる架橋を分解する第1の工程後、たとえばタンパク質画分および核酸画分を相互に分離し、生体分子、好ましくはその特定の画分中の大部分を占める生体分子を前記画分の少なくとも1つから、好ましくは各画分から単離する。可溶性画分からタンパク質を、不溶性画分から核酸を単離するのが好ましい。画分から生体分子を分離した後に行うさらなる前記単離は同時に行っても、あるいは交互に行ってもよい。
本発明の単離方法は、同じ出発サンプルから核酸およびタンパク質を共に実質的に定量的に、かつ相互に別々に単離することを可能にする。たとえば、前記方法はまた、遺伝子の構造、配列およびメチル化状態および/または遺伝子の発現を組織中のタンパク質状態と比較できるようにする。
本明細書に記載の方法は、対象組織の複雑な構造および制御機構の観点から、たとえば診断上または治療上重要なマーカーをインビボで記録するために使用していてもよい。この種の重要なマーカーの一例に過ぎないが、腫瘍組織中のタンパク質発現およびDNA変異プロファイルに関する上皮増殖因子受容体(EGFR:epidermale Wachstumsfaktor−Rezeptor)を例として挙げることができる。
本方法は、臨床研究および基本原理に焦点をあわせた研究の両方に利用していてもよい。さらに重要なことは、ホルマリン固定材料から生体分子を単離する本明細書に記載の方法は、考えられる最良の形で毎日の臨床業務に組み込むことができる。これにより、実質的にこれまでより正確な診断方法および治療方法を利用することが可能になる。
本明細書に記載の本発明は、引き続く分析のための、組織サンプルなど固定された生物学的サンプルからのタンパク質と核酸との抽出の実質的な最適化を施すことに関し、この最適化は、特に前記タンパク質および核酸の定量を目的とした最適化であり、臨床環境と実験的研究とにおける現在のハイスループット法、たとえばプロテインアレイおよびリアルタイムPCR法に適合するものである。この方法は、たとえば様々な病期または進行度の疾患サンプルをサンプル中に存在する生体分子の分析および定量に容易に受け入れられるため、レトロスペクティブ解析も可能となる。
本方法は、同じ出発材料からインタクトなタンパク質および核酸を検出および定量することを可能にする。たとえば核、細胞質または細胞膜などまったく異なる細胞区画のタンパク質を確実に単離し、定量的に測定することができる。単離されたインタクトなタンパク質は希釈、すなわち段階希釈できるため、内部標準曲線を確立することができる。これにより、タンパク質の検出および定量が直線の範囲内にあることを保証できる。必要に応じて、使用した検出手段、たとえば抗体に交差反応がないこと(ウエスタンブロットにおいて正しいサイズの特異的な唯一のバンド)を保証するため、タンパク質を前もってウエ
スタンブロットにより試験してもよい。本明細書に記載の方法で単離され定量が可能なインタクトなタンパク質は、毎日の臨床業務で既に行われているものなどの免疫組織学的解析の結果を考えられる最良の形で補完する。これにより、インタクトなタンパク質を正確かつ高感度に定量し、固定組織においてタンパク質の細胞帰属(免疫組織化学)を行うことが可能になる。同時に、記録したタンパク質状態は、組織中での発現パターン、さもなければ、個々の発現遺伝子の量と比較できる。たとえば乳癌患者のHer2/neuなどの既知の疾患マーカーを、発現レベルでも翻訳レベルでも臨床的に精度よく測定できる。さらに、一般的な検出方法、たとえば質量分析法または定量PCRを用いて発現遺伝子および/または単離されたインタクトなタンパク質を解析することによって、健常組織と病変組織との比較する方法により新規な疾患マーカーを同定してもよい。本方法を用いて動物組織も同様に試験することができる。多くのヒト疾患、たとえば癌などでは動物モデルが既に利用可能である。試験対象の組織はホルマリンで固定しパラフィンに包埋してから病理組織学的に評価するのが一般的である。本方法を用いれば、たとえばプロテインアレイおよび定量PCRにより前記モデルの既知のおよび新規な疾患マーカーを正確かつ高感度で強力に定量することができる。
スタンブロットにより試験してもよい。本明細書に記載の方法で単離され定量が可能なインタクトなタンパク質は、毎日の臨床業務で既に行われているものなどの免疫組織学的解析の結果を考えられる最良の形で補完する。これにより、インタクトなタンパク質を正確かつ高感度に定量し、固定組織においてタンパク質の細胞帰属(免疫組織化学)を行うことが可能になる。同時に、記録したタンパク質状態は、組織中での発現パターン、さもなければ、個々の発現遺伝子の量と比較できる。たとえば乳癌患者のHer2/neuなどの既知の疾患マーカーを、発現レベルでも翻訳レベルでも臨床的に精度よく測定できる。さらに、一般的な検出方法、たとえば質量分析法または定量PCRを用いて発現遺伝子および/または単離されたインタクトなタンパク質を解析することによって、健常組織と病変組織との比較する方法により新規な疾患マーカーを同定してもよい。本方法を用いて動物組織も同様に試験することができる。多くのヒト疾患、たとえば癌などでは動物モデルが既に利用可能である。試験対象の組織はホルマリンで固定しパラフィンに包埋してから病理組織学的に評価するのが一般的である。本方法を用いれば、たとえばプロテインアレイおよび定量PCRにより前記モデルの既知のおよび新規な疾患マーカーを正確かつ高感度で強力に定量することができる。
本方法によれば、組織中に存在するタンパク質は、方法の初期工程で前記組織中に存在する核酸から実質的に定量的な様式で分離される。
本発明によれば、「実質的に定量的な様式で」という用語は、分離工程後に2種類の異なる画分が得られ、そのどちらも組織に元々存在する生体分子を含み、画分(A)は全可溶性タンパク質の(すなわち組織から回収可能な全タンパク質の)50%超を含むが、回収可能な全核酸を50%未満で含み、可溶性タンパク質の50%未満、核酸の50%超は分離工程後の他方の画分(B)に残存していることを意味する。分離工程後に画分(A)は組織から回収可能な全タンパク質の60%超、一層好ましくは70%超、さらに特に好ましくは75%超、とりわけ好ましくは少なくとも80%を含む一方、画分(B)は組織から回収可能な全核酸の60%超、一層好ましくは70%超、特に好ましくは75%超、とりわけ好ましくは少なくとも80%を含み、前記核酸は第1の分離工程後に組織の不溶性成分と結合状態であり得る。
本発明によれば、単離という用語は、前記生体分子の完全な精製または実質的な精製の必要なしに出発材料の他の成分から関連する生体分子を回収することを意味するものとする。したがって単離された生体分子とは、もはや元の天然の環境、たとえば細胞内には存在しないが、そこから回収されており、他の細胞成分が、そこから少なくとも一部が除去されている生体分子を意味する。このため、たとえば細胞を破壊した後に遠心分離により前記細胞の不溶性成分から可溶性成分を分離するのは、可溶性の細胞成分を単離する工程になる。
精製という用語は、それ以上の細胞成分から既に分離されている生体分子(単離された生体分子)を、夾雑物質の少なくとも一部を除去するため少なくとも1つの追加精製工程に付すことを意味する。たとえば可溶性タンパク質は、クロマトグラフィ法、さもなければ、他の可溶性細胞成分の透析により精製することができる。この文脈では、精製は、精製後の生体分子が如何なる種類の夾雑物質もまったく含まないことを意味することを想定していない。むしろ前記精製工程により、他の夾雑物質に対して前記生体分子の比率が上昇したときに生体分子は精製されたという。
「回収可能(herausloesbar)」または「溶解可能(loesbar)」という用語は、好適な方法により生体分子を単離することができることを意味する。この用語は、好適な処理により出発材料から単離可能な生体分子の種類(たとえばタンパク質または核酸)にも生体分子の量にも使用することができる。ここで留意すべきは、生体分子については依然として集合体内にあるが、すなわちまだ溶解されていないが、好適な方法により溶解し得る(たとえば膜タンパク質も)場合に、回収可能な生体分子ということができる。
以下に、本発明の方法の各工程についてより詳細に記載する。
使用する出発材料は、生体分子を含むどのような材料でもよいが、固定した出発材料を使用するのが好ましい。特に好ましいのは、ホルマリンで固定した組織、特にFFPE組織を使用することである。FFPE組織を使用する場合、好ましくは最初に脱パラフィンする。試験対象の組織部位は組織切片からミクロトーム切開または組織パンチにより手作業で切り取っても、あるいは、レーザー顕微解剖により切り取ってもよい。
最初に行うことが好ましい脱パラフィン(entparaffinierung)は、生体分子の達成可能な収量に著しい影響を与える場合がある。脱パラフィンは一般に生物学的サンプルの包埋に使用するパラフィンを除去する働きをする。概して前記パラフィンは第1に生体分子を溶解および分画する際に、第2に生体分子をさらに精製および分析する際に問題を起こす恐れがある。サンプルは通常、たとえばキシレンおよび/またはエタノールなどの有機溶媒中でのインキュベーションにより脱パラフィンする。このプロセスでは最初にサンプルをキシレン中で1回または複数回インキュベートし、次いで前記キシレンを100%濃度のエタノール中で1回または複数回のインキュベーションにより、適切な場合にはその後、希釈エタノール中で1回または複数回のインキュベーションにより除去するのが一般的である。あるいは、たとえばアルカン、特に好ましくはヘプタン、または他のアルコール、たとえばメタノールなど脱パラフィン用の他の有機溶媒を使用することも可能である。ヘプタンなどのアルカンを用い、アルコール、特に好ましくはメタノールを付加したインキュベーションによる脱パラフィンは、上記の方法により品質の高い生体分子が高収量で得られるため特に有利であることが立証されている。
第1に、本発明の方法の工程a)によれば、出発材料に存在する架橋、特に生体分子の架橋の少なくとも一部を溶解させる。
この目的のために好適な実施形態は、(i)出発材料を、適切な場合には脱パラフィン工程後、好ましくは界面活性剤を含み得、好都合にタンパク質分解活性を有する化合物を含まない水性系に移すことを含む。たとえば、タンパク質を確実にインタクトな状態に保つためにはトリプシンまたはプロテイナーゼKなどのプロテアーゼを使用すべきではない。たとえば、有利であると本明細書の以下に記載する物質を含む水溶液またはバッファーを使用してもよい。
たとえばバッファーなどの溶液中に存在する材料は、(ii)溶液中に存在する回収可能なタンパク質を遊離するのに十分な温度まで加熱し、好ましくは最初に材料を煮沸する(95℃〜100℃まで加熱する)。インキュベーション時間は、たとえば5分から40分までの幅があってもよい。設定する煮沸時間は、たとえばサンプルの大きさに依存する場合がある。
次いでサンプルは、(iii)60℃を超える温度(たとえば80℃)でインキュベートする。60℃超でのインキュベーション時間は、たとえば1時間から6時間までの幅があってもよい。60℃超でのインキュベーション時間は、好ましくは少なくとも20分であるが、好ましくは16時間未満すべきである。こうすれば十分な量のインタクトなタンパク質を溶解させ、その後たとえば直接検出、分析および/または定量を行うことができる。
本発明の方法の好ましい実施形態では、工程(i)で使用する水性系は水溶液、特にバッファーであってもよい。
本発明に好適なバッファーまたはバッファー系のpHは通常1.0〜12.0の範囲の特定のpH、好ましくはpH1.0〜9.0の範囲である。
水性系は好ましくは、少なくとも1種の還元試薬、好ましくはジチオスレイトール(DTT:dithiothreitol)を含む。本発明者らは、還元剤の使用、特にDDTを使用すると、単離されるインタクトなタンパク質の収量にとりわけ有利であることを見出した。この実施形態の特別な利点は、たとえばBioRad DC(登録商標)またはPierce製のBCA−Assay(登録商標)、など当業者に公知の市販のタンパク質定量アッセイにより、得られたライセートを特に良好に直接定量し、さらなる分析に使用できることである。サンプルは希釈しなくてもよい。これにより測定の不正確性を抑え、その後の分析(たとえばウエスタンブロット)で確実に等量のタンパク質を使用することができる。
また、バッファーは、1,4−ジチオ−DL−トレイトール、ジチオエリトリトール(DTE:dithioerythritol)、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP:tris(2−carboxyethyl)phosphin)またはモノエタノールアミン(MEA:monoethanolamin)などの還元試薬をさらに含んでもよい。
還元試薬は、0.05mM〜20mM、好ましくは0.1〜10mM、一層好ましくは0.5〜5mM、特に好ましくは0.5〜2mMの範囲の濃度で使用する。この範囲内で最も好適な濃度は、個々の場合に使用する試薬(単数または複数)に依存するが、DTTの特に好適な濃度は1mMである。
本発明の方法の界面活性剤は、当業者に公知で細胞溶解に好適などのような界面活性剤でもよいが、より具体的には使用する界面活性剤としては、アニオン性または非イオン性界面活性剤、好ましくは硫酸基を含む界面活性剤、特に好ましくはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、デオキシコール酸ナトリウム、3−[N−(3−コランアミドプロピル)−ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホナート(CHAPS)、トリトンX100、ノニデットP40またはトウィーン20がある。
界面活性剤の濃度は、たとえば約0.1〜10%としてもよい。濃度範囲は特に好ましくは約1〜5%の範囲である。
さらに、水性系は好ましくは少なくとも1種の求核試薬をさらに含んでもよい。この場合の好適な求核試薬は、電子をルイス酸の空の軌道(単数または複数)に移すことができる任意のルイス塩基である。前記ルイス塩基のうち特に好ましいのは、負電荷を持つか、負に分極しているか、または少なくとも1つの自由電子対を持つ少なくとも1つの官能基を有する試薬である。
負電荷を持つ官能基を有する化合物の例として、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルコキシド、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のシアン化物などがある。
負に分極した少なくとも1つの官能基を持つ試薬として、特にAlfredおよびRochowによる電気陰性度が少なくとも0.25、特に好ましくは少なくとも0.5、さらに好ましくは少なくとも1.0異なる2個の共有結合した原子を持つ少なくとも1つの官能基を有する試薬がある。
しかしながら、本発明による特に好ましい求核試薬は、1つまたは2つ、特に好ましくは1つの自由電子対(単数または複数)を含む少なくとも1つの官能基を有するもの、そうした化合物のうちやはり最も好ましいのは、下記構造Iの少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミノ基を有するものである。
式中、R1はC1〜C20炭化水素基、好ましくはC2〜C15炭化水素基、特に好ましくはC2〜C10炭化水素基、少なくとも1個のヘテロ原子を持つC1〜C20炭化水素基、好ましくは少なくとも1個のヘテロ原子を持つC2〜C15炭化水素基、特に好ましくは少なくとも1個のヘテロ原子を持つC2〜C10炭化水素基、または場合によりヘテロ原子置換芳香環系であり、R2はC1〜C20アルキル基、好ましくはC1〜C10アルキル基、特に好ましくはC1〜C2アルキル基、特にメチル基またはエチル基、C1〜C20ヒドロキシアルキル基、好ましくはC1〜C10ヒドロキシアルキル基、特に好ましくはC1〜C2ヒドロキシアルキル基、または水素原子であり、最も好ましいのは水素原子であり、R3はC1〜C20アルキル基、好ましくはC1〜C10アルキル基、特に好ましくはC1〜C2アルキル基、特にメチル基またはエチル基、C1〜C20ヒドロキシアルキル基、好ましくはC1〜C10ヒドロキシアルキル基、特に好ましくはC1〜C2ヒドロキシアルキル基、または水素原子であり、最も好ましいのは水素原子である。
本発明において特に好ましい、上述の構造Iの官能基を有する求核試薬は、特に構造Iの少なくとも1つの官能基を有する求核試薬であって、ラジカルR2およびR3の少なくとも1つ、最も好ましくはラジカルR2およびR3の両方が水素原子である求核試薬である。さらに、特に好ましいのは、構造Iの少なくとも1つの官能基を有する求核試薬であって、窒素原子がsp3混成であるラジカルR1、R2およびR3の原子にのみ共有結合している求核試薬である。さらに詳しくは、ラジカルR1、R2およびR3のどれも、ラジカルR1、R2およびR3全体にわたって窒素原子の自由電子対が非局在化できないようにすべきである。このため、たとえば構造IIを持つ前記ラジカルR1、R2およびR3はいずれも特に好ましくない。
本発明によって特に好ましい、構造Iの少なくとも1つの官能基を持つ求核試薬は、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、イソ−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−イソ−プロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ヘキサメチレンテトラミン、2−エチルヘキシルアミン、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、1,2−ジ−メトキシプロパンアミン、1−アミノペンタン、2−メチルオキシプロピルアミン、トリ(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、アミノカルボン酸、特にグリシンまたはヒスチジン、あるいはアミノグアニジンからなる群から選択され、このうち最も好ましいのはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノ−1,3−プロパンジオール、アミノグアニジンおよびトリ(ヒドロキシメチル)アミノメタンである。構造Iの少なくとも1つの官能基を持つ好ましい求核試薬としてさらに、アニリン、トルイジン、ナフチルアミン、ベンジルアミン、キシリデン、キシレンジアミン、ナフタレンジアミン、トルエンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルジアミン、フェニレンジアミン、2,4’−メチレンジアニリン、4,4’−メチレンジアニリン、スルホニルジアニリンおよびジメチルベンジルアミンからなる群から選択される芳香族アミンである。
求核試薬が構造Iの少なくとも1つの第1級アミノ基を持つ一実施形態によれば、前記求核試薬はC1〜C6アルキルアミン、C1〜C6アルキルジアミン、C1〜C6アルキルトリアミン、C1〜C15アミノアルコール、C1〜C15アミノジオールまたはC1〜C15アミノカルボン酸である。
さらなる実施形態によれば、求核試薬は、ピロール、ピリジン、キノリン、インドール、アザ−シクロペンタン、アザ−シクロヘキサン、モルホリン、ピペリジン、イミダゾールまたはこれらの化合物の誘導体を含む群から選択される窒素原子を含む複素環化合物であり、これらの化合物の誘導体とは好ましくは、上に列挙した化合物中の1個または複数個の炭素原子または窒素原子に水素原子ではなくC1〜C3アルキル基、特に好ましくはメチル基またはエチル基が結合している誘導体を意味する。
上に列挙した求核試薬のうち特に好ましいのは水溶性の求核試薬、特に温度25℃およびpH7の水に対する溶解度が少なくとも1g/l、好ましくは少なくとも10g/l、特に好ましくは少なくとも100g/lの求核試薬である。
上記の求核試薬を含む水性系は、純水、好ましくは脱イオン水をベースとしたものでも、さもなければ他の水性系、特にそれぞれの場合、水および有機溶媒の総重量を基にして水の量が好ましくは少なくとも50重量%、特に好ましくは少なくとも75重量%および最も好ましくは少なくとも90重量%である水とアルコールなどの有機溶媒との混合物、特に水とエタノールまたはメタノールとの混合物をベースとしたもの、生理食塩水、バッファー、特にたとえば0.1〜1000mmol/l、特に好ましくは1〜500mmol/lおよび最も好ましくは10〜200mmol/lの範囲の量のトリス、HEPES、PIPES、CAPS、CHES、AMP、AMPDまたはMOPSなどの当業者に公知のバッファー成分を含むバッファーをベースとしたもので、適切な場合にはこうしたバッファー成分がその構造に依存して求核試薬としても同時に使用できるものでもよい。さらにMEM培地およびDMEM培地などの栄養培地を水性系として使用することもできる。求核試薬を含む水溶液は好ましくは、水または対応する水性系と求核試薬とを単純に混合して調製する。
水溶液中の求核試薬の濃度は好ましくは、0.1〜10000mmol/l、特に好ましくは1〜5000mmol/l、特に好ましくは5〜2500mmol/lおよび最も好ましくは20〜1000mmol/lの範囲である。本発明の方法の特に有利な実施形態によれば、水溶液中の求核試薬の濃度は20mmol/l超、特に好ましくは50mmol/l超、最も好ましくは100mmol/l超である。
本発明によるタンパク質分解活性を有する化合物は、たとえばプロテアーゼ、特にプロテイナーゼK、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、ペプシン、プロナーゼおよびエンドプロテアーゼLys−Cのようなタンパク質分解活性酵素など任意のタンパク質分解化合物である。本発明によるタンパク質分解活性を有する化合物はさらに、たとえば臭化シアンなどタンパク質の分解に好適な非酵素物質である。
本発明の方法の工程b)では、出発材料中に存在する異なる生体分子を少なくとも1つの画分(A)および少なくとも1つの画分(B)に分離する工程を行う。
好ましくは、前記画分は少なくとも1つの可溶性画分(A)および少なくとも1つの不溶性画分(B)に分離する。可溶性成分および不溶性成分を含む全サンプルを少なくとも2つの画分に分離し、その後そこから異なる生体分子を単離または精製するか、またはその中から異なる生体分子を検出または分析することも可能ではあるが、好ましいのは、工程(a)後のサンプルを少なくとも1つの可溶性画分(A)および少なくとも1つの不溶性画分(B)に分離することである。
本発明の方法の工程(a)および(b)のこうした好ましい実施形態の1つの利点は、抽出/単離された、可溶性画分(A)中に存在する実質的にインタクトなタンパク質を工程(c)において追加の精製工程がなくても分析、定量、あるいは特に分画できるという事実である。さらに詳しくは、1つまたは複数の方法工程を用いて抽出タンパク質を分画することができる。一方、当然のことながら画分(A)中に存在するタンパク質を検出、分析または分画する前に他の可溶性細胞成分から精製したり、あるいは、個々のタンパク質を画分(A)中に存在する他のタンパク質から精製したりすることもできる。
好ましくは不溶性成分を含む画分(B)は、好ましくはその後の工程d)において不溶解性サンプル成分を破壊する追加処理、さらに適切な場合には、生体分子の架橋を分解する追加処理に付す。不溶性画分(B)中に依然として実質的に存在する回収可能な核酸は、この追加処理工程で単離することができる。
工程d)による処理に好適な方法は、たとえば国際出願の国際公開第2007/068764号、国際公開第2008/021419号、国際公開第2005/012523号または国際公開第2005/054466号に記載されているような方法、さもなければ市販のキット、たとえばRNeasy FFPE(登録商標)およびQIAamp FFPE(登録商標)(どちらもQiagen,Hilden,Germany)を用いて実施できる方法など固定組織から核酸を回収する任意の既知の方法である。後者の場合、画分(B)の不溶性成分を少なくとも1つの追加の加熱工程およびプロテアーゼによる処理に付す。前記プロテアーゼ処理を行うと溶解が効率的に行われるため、回収可能な核酸が遊離される。
核酸は、タンパク質の単離および場合によりタンパク質の精製とは別に単離および、場合により精製し、画分(A)および(B)はさらに同時だが相互に別々にあるいは交互に処理することができる。
タンパク質は、クロマトグラフィ法、電気泳動による分離、タンパク質結合材料への特異的結合、特異抗体を用いた「タンパク質の捕捉」または沈殿により精製/単離すればよい。
核酸はまた、単純な沈殿、前記核酸の核酸結合材料への結合、電気泳動またはクロマトグラフィまたは当業者によく知られている類似の好適な方法により画分(B)の追加の加熱工程およびプロテアーゼ処理の後に単離および精製してもよい。前記核酸の単離および精製は、本明細書に記載される方法に従い国際公開第2007/068764号または国際公開第2008/021419号に記載されているような方法、あるいはRNeasy FFPE(登録商標)またはQIAamp FFPE(登録商標)キット(どちらもQiagen,Hilden,Germany製)を用いるのが好ましい。
分析については好ましくは、上記の分析方法のいずれかにより行う。タンパク質は、好ましくはLowryまたはBCAによる方法、および他の定量方法により定量し、そのためには特にプロテインアレイを使用してもよい。核酸は、任意の好適な方法、たとえば定量PCR、規定の希釈物の260/280nmでの光学濃度測定、または所定の量の核酸を用いた比較電気泳動により定量する。
抽出タンパク質はさらに、トリプシン、キモトリプシン、プロテイナーゼK、パパイン、ペプシン、プロナーゼ、エンドプロテアーゼLysC、エンドプロテアーゼGlu−Cなどのタンパク質分解酵素、あるいはエンドグリコシダーゼH、N−グリコシダーゼF、ノイラミニダーゼ(neuroaminidase))またはホスファターゼなどのグリコシダーゼによって処理してもよい。
有利には、タンパク質は少なくとも1つの生化学的分析に使用することができる。好ましい生化学的分析の例は、マイクロアレイ、特にサンドイッチイムノアレイ、抗原捕捉アレイまたはダイレクトプロテインアレイなどのプロテインアレイである。
生化学的分析は好ましくは、1つまたは複数の診断的または臨床的に関連性のあるマーカータンパク質の決定のために使用してもよい。これには、たとえば少なくとも2つの生物学的サンプル由来のマーカータンパク質を相互に比較することを含んでもよい。したがって、たとえば病変したものを健常なものと識別することができる。さらに、少なくとも1つまたは複数の関連性のあるマーカーを分析するため高度なマルチプレックスを行うアッセイを実行することも可能である。
核酸は、以下に限定されるものではないが、任意の既知の分析方法、特に上記の方法に使用してもよい。
本発明は同様に、信頼性が高い方法を用いて組織などのホルマリン固定ヒトまたは動物の生物学的サンプルからインタクトなタンパク質および核酸の両方を高収量で単離するのに使用できるキットを提供することを含む。前記キットの成分としては、たとえば少なくとも(1)出発材料の架橋を分解する、プロテアーゼを含まない水性系、好ましくはバッファー系、(2)界面活性剤(これは場合により溶液(1)中に存在していてもよい)、および(3)プロテアーゼを含む溶液またはプロテアーゼがある。キットの別の成分として(4)少なくとも1種の核酸結合材料、(5)核酸を単離するための別の溶液またはバッファー、好ましくは結合バッファーおよび溶出バッファーであってよい。キットには、ホルマリン固定組織からタンパク質および核酸を単離するための詳細なプロトコルを入れておいてもよい。
キットに含まれる水性系(1)は、上記の考えられる成分をすべて含む上記の水性系に相当する。
以下の実施例は、本発明の方法から生じる利点を説明することを意図している。たとえば、薬剤Iressa(登録商標)は、最も多い肺癌の変異体である非小細胞肺癌(NSCLC:non small cell lung cancer)に罹患している患者の生存率を大きく改善しないことが明らかにされた。全体的にみると、このEGFR阻害剤は患者10人に1人しか効果がなかった。抗腫瘍形成性効果の効能は、女性、非喫煙者およびアジア系の患者に認められる。その理由は、これらの患者はEGFR遺伝子に遺伝的変異を有しており、Iressa(登録商標)に対して感受性があるためである。一方、この受容体の過剰発現は疾患にはわずかしか関与していないが、当該新薬剤の開発の間に重要な判断基準であった。好適なアッセイを用いれば、同じサンプルから実質的な損失なく上記の変異および発現を共に分析することができ、ひいては、どの患者がIressa(登録商標)による処置に応答するはずであるかを確認することができる。このため、DNAおよびタンパク質を別々に単離するためにそれぞれ比較的大きなサンプルを採取したり、あるいは2つのサンプルを採取したりする必要がなくなり得る。
今後ますます標的療法が増加するのに伴い、並行して対応する診断学を発展させる必要があるため、FFPE組織の抽出物からの核酸(特にDNA、RNA)およびタンパク質の並行解析が予測医学において重要な役割を果たす。そこで、前記分子を定量すること、すなわち個別の成分の発現レベルまたは翻訳率、さもなければ個別の成分の両パラメーターを決定すること、さらに遺伝子配列に関する修飾(変異、欠失)について後者を試験することは不可欠である。
(実施例1)
本発明の方法による生体分子の分離
本実験は、ラット肝臓由来のホルマリン固定パラフィン包埋組織サンプル(FFPEサンプル)を使用した。前記サンプルから厚さ約10μmの厚さの切片をミクロトームを用いて調製し、各サンプルから2つの切片を使用した。その後前記FFPE切片からのタンパク質およびDNA/RNAの単離では、QIAGEN製のRNeasy FFPEキット、QIAamp FFPEキット、Qproteome FFPEキットおよびAllprep DNA/RNA Miniキットの各成分を使用した。
本発明の方法による生体分子の分離
本実験は、ラット肝臓由来のホルマリン固定パラフィン包埋組織サンプル(FFPEサンプル)を使用した。前記サンプルから厚さ約10μmの厚さの切片をミクロトームを用いて調製し、各サンプルから2つの切片を使用した。その後前記FFPE切片からのタンパク質およびDNA/RNAの単離では、QIAGEN製のRNeasy FFPEキット、QIAamp FFPEキット、Qproteome FFPEキットおよびAllprep DNA/RNA Miniキットの各成分を使用した。
最初に慣用されるプロトコルに従って組織を脱パラフィンした。たとえば、サンプルをまずキシレン中で10分間インキュベートした。サンプルをペレット状にし上清を除去した後、前記キシレン処理を2回繰り返した。次いでサンプルをそれぞれ上記のように2回、100%エタノール、96%エタノールおよび70%エタノールで処理した。
こうして作製した脱パラフィンサンプルペレットをQIAGEN製のEXBバッファー100μlと混合し、100℃で20分間煮沸して全長タンパク質を遊離させた。次いでサンプルを80℃でさらに2時間インキュベートした。こうしてサンプルからタンパク質を遊離させ、ホルマリンによって生じた架橋を分解した。核酸はサンプルの前記本発明の処理により溶液中にまったく遊離しないか、あるいは遊離しても無視できる程度であり、たとえば14000×g、15分間の遠心分離により選択的にペレット状にすることができたのに対し、タンパク質の方は上清に可溶性のままで残り、これを除去して前記ペレットから分離した。さらにペレット状の核酸からは核酸と共に完全な不溶性成分も回収されたが、こうした成分は、その後のDNAおよびRNAの精製に影響を与えなかった。
2つの画分における様々な生体分子、タンパク質および核酸の存在について確認するため、処理サンプルの遠心分離後にまず上清を回収し、その後の分析およびワークアップのためにペレットと別に使用した。3つのサンプルを使用して画分中の生体分子の分布を調査した。サンプル1では上清およびペレットからタンパク質を単離し、サンプル2では上清およびペレットからDNAを単離し、サンプル3を使用して上清およびペレットからRNAを単離した。
サンプル1の上清は追加処理を行わずに使用してその中に存在するタンパク質を分析した。
第2のサンプルからDNAを単離するため、上清を200μlのカオトロピック溶解バッファー、たとえばQIAGEN製のバッファーRBCと混合し、混合物を、たとえばQIAGEN製のAllprep DNAカラムのシリカ膜に接触させ、10000rpmで1分間の遠心分離により膜に通した。カオトロピック試薬を加えると、DNAをシリカ膜に結合できるが、RNAは結合できない状態が得られる。次いで前記シリカ膜を、500μlのグアニジン塩含有洗浄用バッファーAW1、その後500μlのアルコール含有洗浄用バッファーAW2、および500μlの100%エタノールを通して洗浄した。膜を14000rpmで5分間の遠心分離により乾燥させた。1分のインキュベーション後、30μlのDNA溶出バッファー、たとえばQIAGEN製のATEを加えて遠心分離によりDNAを溶出した。
同様に、上清を200μlのカオトロピック溶解バッファー、たとえばQIAGEN製のバッファー RBCと混合し、前記混合物を、たとえばQIAGEN製のAllprep DNAカラムのシリカ膜に接触させ、これを10000rpmで1分間の遠心分離により膜に通して第3のサンプルからRNAを単離した。前記混合物の組成はRNAではなく前記シリカ膜に結合したDNAであるため、前記RNAはカラムの流れ液中にある。RNAの結合条件を調整するため、前記流れ液をエタノールと混合してから、たとえばQIAGEN製のRNeasy MinEluteカラムのシリカ膜に再び接触させ、10000rpmで1分間の遠心分離により膜に通した。次いでシリカ膜を500μlのグアニジン塩含有洗浄用バッファーRW1、その後500μlのアルコール含有洗浄用バッファーRW2を通して洗浄した。14000rpmで5分間の遠心分離により膜を乾燥させた。RNAは、1分のインキュベーション後、30μlの水を加えて遠心分離により溶出した。
本発明により処理されたサンプルの遠心分離により得られた3つのサンプルのペレット画分をさらにタンパク質(サンプル1)、DNA(サンプル2)およびRNA(サンプル3)の単離に使用した。
タンパク質を単離するため、たとえば界面活性剤を含む哺乳動物タンパク質溶解バッファーなどの好適なタンパク質溶解バッファーにサンプル1のペレットを溶解させ、その後の分析に使用した。
DNAを単離するため、サンプル2のペレットを、たとえばQIAGEN製の180μlの界面活性剤含有バッファーATLなど慣用されるDNA溶解バッファーと混合した。ペレットは前の処理によりまだ溶解されていない成分しか含んでいなかったため、前記不溶解性成分を同様に溶解するため、たとえば20μlのプロテイナーゼKなどのプロテアーゼによる溶解をさらに行った。56℃で1時間インキュベートし、続いて90℃で10分間インキュベートした後、ライセートをカオトロープ(chaotrop)含有結合バッファー、たとえばQIAGEN製のバッファーALと混合し、混合物を、たとえばQIAGEN製のQIAamp Miniカラムのシリカ膜に接触させ、10000rpmで1分間の遠心分離により膜に通した。シリカ膜を上記のように洗浄用バッファーAW1、AW2および100%エタノールを通して洗浄し、膜を乾燥させ、DNAを溶出した。
RNAを単離するため、サンプル3のペレットを、たとえばQIAGEN製の150μlの界面活性剤含有バッファーPKDおよび10μlのプロテイナーゼKなど慣用されるRNA溶解バッファーと混合した。56℃で1時間インキュベートし、続いて80℃で15分間インキュベートした後、ライセートをカオトロープ含有結合バッファー、たとえばQIAGEN製のバッファーRBCと混合し、混合物を、たとえばQIAGEN製のRNeasy MinEluteカラムのシリカ膜に接触させ、10000rpmで1分間の遠心分離により膜に通した。シリカ膜を上記のように洗浄用バッファーRW1およびRW2を通して洗浄し、膜を乾燥させ、RNAを溶出した。
このようにして2つの画分、上清およびペレットから単離されたタンパク質および核酸の分布を決定するため、好適な方法を用いて両画分の生体分子を定量した。存在したタンパク質の収量を、製造業者(Pierce)の情報に従ってBCAアッセイを使用して測定した。DNAおよびRNAの収量および純度をそれぞれ260/280nmの吸光度を測定して決定した。複数回の測定の収量平均を表1に示す。
この結果から、本発明の方法を用いると生体分子が下流の精製の前に明確に分画されることが実証される。本タンパク質は圧倒的に多くが上清に存在する一方、核酸はペレット画分にあった。
(実施例2)
本発明の方法により分画された生体分子のゲル解析。
本発明の方法により分画された生体分子のゲル解析。
実施例1に記載の方法によりペレット画分および上清画分から単離されたDNA、RNAおよびタンパク質をさらにゲル解析により分析した。
2つの画分から単離された等容量のタンパク質を、SDSポリアクリルアミドゲルを使用し、その後クーマシーで染色する慣用される方法により分析した。この場合、タンパク質は上清画分のみで目視可能であったのに対して、ペレット画分ではタンパク質はまったく目視できなかった。
2つの画分から単離された等容量の核酸を、TAEアガロースゲルでの慣用される方法により分画し、エチジウムブロミドで染色した。結果を図1に示す。エチジウムブロミドで染色したゲルは、すべての場合で画分および対照において断片化DNAまたはRNAを示し、これは一定のサイズ範囲にわたり分布する明るい「スメア」により確認することができる。FFPEサンプルから単離できる核酸は、サンプルの固定、包埋および保存の間に前記核酸が既に分解されていたため常に断片化された。ペレット画分にはそれぞれ関連する上清画分に比べて非常に多くのDNAとRNAとが共に含まれていたこともはっきりと目視できる。
(実施例3)
本発明の方法により分画されたRNAのリアルタイムRT−PCR分析
核酸の単離だけでなく増幅による分析に対する本発明の方法の効果を調査するため、実施例1に記載の方法によりペレット画分および上清画分から単離されたRNAを使用してさらにリアルタイム定量RT−PCRによる分析を行った。
本発明の方法により分画されたRNAのリアルタイムRT−PCR分析
核酸の単離だけでなく増幅による分析に対する本発明の方法の効果を調査するため、実施例1に記載の方法によりペレット画分および上清画分から単離されたRNAを使用してさらにリアルタイム定量RT−PCRによる分析を行った。
いずれの場合にも単離されたRNAを使用してmadH7転写物のアンプリコンを2回ずつ検出した。溶出物をいずれの場合も水で1:5に希釈し、5μlの前記溶液をリアルタイムPCRに使用した。たとえばQIAGEN製のQuantiTect SYBRGreen RT−PCRキットなどリアルタイムRT−PCRに好適なマスターミックスを用いて製造者の情報に従って全容量25μlにおいて増幅を行った。増幅は、たとえばABI製の7700など好適なリアルタイム増幅装置で行った。2回ずつの測定の平均および標準偏差を、測定したct値から決定した。結果を表2に示す。
この結果から、本発明の方法により特にペレット画分から単離されたRNAが、増幅分析に十分適していることが実証される。この結果からはさらに、RNAの大部分がペレット画分にあるのに対し、上清で検出できるのはごくわずかな割合であったことも確認される。
要約すると、収量測定およびその後のタンパク質および核酸の分析により、本発明の方法を使用した場合、下流の精製の前に生体分子が明確に分画されることが確認される。タンパク質は圧倒的に多くが上清に存在する一方、核酸はペレット画分にある。
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- 本願明細書に記載された発明。
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