JP2014206062A - サーモエレメント及びサーモスタット - Google Patents

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Abstract

【課題】熱応答性が良く、流動体の漏れの問題がなく、製造コストの安いサーモエレメントを得る。【解決手段】サーモエレメントは、底のあるケース(10)と、ケースに充填され温度変化により膨張収縮するパラフィンを含む熱膨張体(21)と、軸方向に移動するピストン(40)と、ピストンを摺動自在に保持するガイド部材(50)と、熱膨張体とピストンとの間に、変形自在な非圧縮性流動体(22)を蓄える流体室とを備える。熱膨張体の膨張収縮により、流体室内の非圧縮性流動体を介してピストンが軸方向に移動する。ケースは、底部(11)と、底部の外縁部から延びる円筒部(12)と、円筒部の上縁部から半径方向外側に延びるフランジ(13)とを有し、ケースのフランジの下に配置され、ケースより肉厚の厚いリング状の補強リング(15)を備える。【選択図】図3

Description

本発明は、温度変化によるパラフィンの膨張収縮を利用したサーモアクチュエータであるサーモエレメント及びこのようなサーモエレメントを使用したサーモスタットに関する。
自動車用エンジンを冷却する水冷式の冷却装置においては、エンジンに導入される冷却水の温度を制御できるように、ラジエータ側に循環させる冷却水量を調節する制御バルブとしてのサーモスタットが使用されている。サーモスタットは、冷却装置を構成する冷却水通路の一部に制御バルブを介装し、冷却水温度が低いときは、制御バルブを閉じてラジエータを経由せず、バイパス通路を経由して冷却水を循環させ、冷却水温度が高くなったときは、制御バルブを開いて、ラジエータを通して冷却水を循環させることで、冷却水の温度を所定の状態に制御するものである。
このようなサーモスタットには、冷却水のエンジン入口側に配置されて冷却水を制御する入口制御と、冷却水のエンジン出口側に配置されて冷却水を制御する出口制御とがある。
このようなサーモスタットには、温度センサとしてパラフィン等の熱膨張体を用いたサーモエレメントが用いられている。
サーモエレメントは、図1に示すダイアフラムタイプ、スリーブタイプ、その他がある。ダイアフラムタイプのサーモエレメントは、熱膨張体(パラフィン)をダイアフラムで密封し、熱膨張体が膨張すると、非圧縮性流動体を介してピストンを押し出す。
スリーブタイプのサーモエレメントは、熱膨張体をスリーブで密封し、熱膨張体が膨張すると、スリーブによりピストンを絞って押し出す。
図1に示すダイアフラムタイプのサーモエレメントは、底のある円筒形状のケース1の上端部に、円筒形のガイド部材5の下端部が固定されている。ケース1内に熱膨張体2が充填され、熱膨張体2の上端面は、弾性密封部材であるダイアフラム3により封止されている。ガイド部材5の基部の内面と、ダイアフラム3の上側との間には流体室が設けられ、流体室には流動体4が充填されている。流動体4は、非圧縮性で、流動性、潤滑性が良い非圧縮性流動体を用いる。ガイド部材5の上部のガイド筒部の内側のピストン摺動孔内には、流体室の上に、ラバーピストン7と、保護板8とを介して、ピストン6が摺動自在に設けられる。ピストン6の上部はピストン摺動孔の上に突き出している。ダイアフラムタイプのサーモエレメントは、熱膨張体2の熱膨張による体積変化を、流動体により、ピストン6の直線方向の移動に変換している。
環境温度が上昇すると熱膨張体2が膨張し、ダイアフラム3が上方に膨出し、ダイアフラム3の上方の流体室に封入された流動体4を押し上げる。流動体4は変形し摺動孔内に進入して、ラバーピストン7、保護板8を介して、ピストン6を上方へ押し上げる。温度が下降すると熱膨張体2が収縮し、ピストン6に印加された負荷(図示せず)によりピストン6が押し下げられる。こうして、温度変化によりピストン6がガイド部材5から上下方向へ出入する。
流動体は、サーモエレメントの組立て中に漏れないようにする必要がある。そのため従来は流動体として、シリコングリス、黒鉛、粘土を混合しペレット状にした混合体を用いていた。しかし、このような流動体は、構成成分を混合するとき気泡が入りやすく、気泡が入ると応答性が劣る。また、グリスが漏れ、ラバーピストンの劣化を助長するおそれがあった。
ダイアフラムタイプのサーモエレメントは構造が複雑で、流動体が漏洩しやすいという問題がある。そのため、シール部材として、ゴム製のラバーピストン7と、保護板8を使用している。ラバーピストン7は、ほぼ円柱形状であり、ピストン6と一体となって摺動しながらシールする。保護板8はフッ素樹脂製のものも用いられているが、シールする機能はない。
ラバーピストン7は、流動体4により下方から押上げられると、径方向に広がる力がかかり、ピストン摺動孔の内側に押し付けられ、ピストンの摺動抵抗が更に大きくなる。この流動体4がピストン6を押上げる力により、流動体4とピストン6との間に介在するラバーピストン7が拡径する力がかかり、摺動抵抗が大きくなることは、ダイアフラムタイプのサーモエレメントの大きい問題である。
また、ラバーピストン7は、ゴム製なので、磨耗しやすく、また劣化して固くなり、シール機能が低下するので、耐久性の点で十分ではなかった。
また、ケース1は、金属材料を切削加工により製造したもので、製造コストが高いという問題がある。
スリーブタイプのサーモエレメントは、円筒形のケース内にゴム製のスリーブを収容し、ケースとスリーブとの間に形成された密封室内に熱膨張体を充填し、スリーブ内に流動体を介してピストンを摺動自在に挿入してある。熱膨張体の膨張、収縮に伴い、ピストンの周囲に配置されたスリーブによりピストンを絞り出すことにより、ピストンを軸方向に動作させるようになっている。
スリーブタイプのサーモエレメントは、構造は簡単であるが、熱膨張体によりスリーブを押し潰してピストンを押出すので、応答性がよくない。また、スリーブは膨張収縮を繰り返し作動するので、ゴム製のスリーブは磨耗し、また劣化して硬化し応答性が低下し、サーモエレメントの機能が低下するおそれがある。
これまで、サーモレメントの流動体の漏洩、部品の磨耗、劣化等の対策として、サーモエレメントの構造、流動体の材質等さまざまな点から検討されてきた。
特許文献1は、ダイアフラムタイプのサーモエレメントの改良に関し、熱膨張体をケースに封入し、ケースに連結したガイド筒部に流動体を封入し、流動体の押圧によって移動部材(ピストン)が移動するサーモエレメントを開示する。
特許文献1は、流動体内にピストンを挿入し、ガイド筒部と移動部材の間をパッキングでシールしている。特許文献1は、このパッキングは、ガイド筒部当接部と、移動部材当接部との間に凹部を有し、パッキングが流動体の圧力を受けると、ガイド筒部当接部と移動部材当接部とが広がり、シール効果が増大するとしている。
しかし、特許文献1のパッキングは、ゴム製なので、流動体の圧力を受け、ガイド筒部当接部と移動部材当接部とが広がると、ピストンの摺動抵抗が大きくなる。また、ゴム製のパッキングは磨耗し、劣化するおそれがある。
また、サーモエレメントのケースとガイド筒部とは、金属材料を切削加工して製造していたので、製造コストが高いという問題がある。
サーモエレメントの製造コストを低減し、安価に製造できるようにするには、ケース又はガイド筒部を金属材料の板材を用いてプレスにより絞り加工するのが良い。ケースが薄い金属板だと、エンジンの冷却水からケース内の熱膨張体への熱伝導が良くなるという利点がある。
しかし、ケース又はガイド部材が薄い金属板製だと、ケースとガイド部材とのかしめ部分が変形しやすく、熱膨張体が漏れでるおそれがある。
特許文献2は、ケースとガイドの両方又はそれらの一方を、金属板からプレス加工により成形し、成形品の顎部に金属板より肉厚のシールリングを配置し、シールリングに顎部をかしめ付けるサーモエレメントを開示する。
ケース又はガイド部材が薄い金属板製なので、プレス加工により安価に製造することが出来る。ケースとガイド部材との結合部は、補強リングにより補強され、強固に結合されているので、ケースは内圧に耐えるとしている。
ケースの周縁(フランジ)の下側は補強リングに当接しているが、ケースの周縁の上側は、柔らかいゴム製のダイアフラムにより押えられている。そのため、熱膨張体が膨張してケースに内圧がかかると、ケースは膨張しようとし、ケースの周縁は、内方、下方への力を受け、補強リングに対してケースの周縁がずれ動く場合があり、流動体が漏れ出すおそれがある。そのため、流動体として漏れやすいオイル等を使用することは出来なかった。
図2は、本出願の発明者が、2013年2月8日に出願した特願2013−023294号(以下、「先願」という。)のサーモエレメントの縦断面図である。先願のサーモエレメントは、底部11のある円筒形のケース10と、ケース10の上部に係合するガイド部材50と、ケース10に封入された熱膨張体21と、熱膨張体21を封止するための弾性密封部材としてのダイアフラム30と、ダイアフラム30とガイド部材50との間に封入された流動体22と、ガイド部材50のガイド筒部に摺動自在に保持されるピストン40と、を備える。ダイアフラム30の上面とピストン40の下端部との間には、ダイアフラム30を保護するための保護板32が設けられる。ガイド部材50のガイド筒部上部には、ピストン40の外周部に密着するフッ素樹脂製のパッキン55が設けられる。
先願は、フッ素樹脂製のパッキン55をピストン40の外周部に設けることにより、ガイド部材50の上部とピストン40との間の密封性を改善している。
先願のガイド部材50は金属を切削加工により加工したものである。ケース10は薄い金属製で、ケース10のフランジ13の下にフランジ13を補強する補強リング15を配置している。ガイド部材50のフランジ51の下面に、ダイアフラム30の外周部とケース10のフランジ13と補強リング15を配置し、かしめ部51aをかしめている。こうして、ケース10のフランジ13と、ガイド部材50のフランジ51との間を封止する。
ケース10は補強リング15により補強されるので、薄い金属製のフランジ13は変形しにくい。ケース10は薄い金属製なので、熱膨張体21への熱伝導性は良好であり、プレス加工で製造することが出来、製造コストも安価である。
ケース10のフランジ13に凹部が形成され、この凹部は、補強リング15の溝に入り、固定される。そのため、特許文献2のサーモエレメントとは異なり、ケース10の内圧が高くなっても、ケース10のフランジ13が、内方にずれ動くおそれは少ない。
しかし、ケース10の内圧が高くなっても、ケース10のフランジ13が、補強リング15からずれ動かないように固定することについては、更に改善することが出来ると考えられる。
熱応答性が良く、流動体の漏れの問題がなく、製造コストの安いサーモエレメントが望まれていた。
更に、このようなサーモエレメントを使用したサーモスタットが求められていた。
特許第3225386号公報 特開2000‐162050号公報
本発明の目的は、熱応答性が良く、流動体の漏れの問題がなく、製造コストの安いサーモエレメントを提供することである。特に、薄い金属板をプレス成形したケースのフランジを補強リングで補強したサーモエレメントにおいて、ケースのフランジが補強リングからずれ動かないように固定したサーモエレメントを提供することである。
本発明の別の目的は、このようなサーモエレメントを使用したサーモスタットを提供することである。
本発明では、サーモエレメントのケースを薄い金属材料をプレス加工により成形し、ケースのフランジをリング状の補強リングで補強する。ケースのフランジが補強リングの上面に当接し、フランジの外周部から下方に延びる延長部を設け、延長部が補強リングの外周部を取り囲む。ケースのフランジの上面にゴム製のダイアフラムが当接しているが、ケースの内圧が高くなっても、ケースは補強リングからずれることはない。
本発明の1態様は、底のあるケースと、前記ケースに充填され温度変化により膨張収縮する熱膨張体と、前記ケース内に前記熱膨張体を密封する弾性密封部材と、軸方向に移動可能なピストンと、前記ケースの上部に固定され、前記ピストンを摺動自在に保持するピストン摺動孔を有するガイド部材と、を備え、前記弾性密封部材と前記ガイド部材と前記ピストンとの間に流体室が形成され、前記流体室に変形自在な非圧縮性の流動体が収容され、前記熱膨張体の膨張収縮により、前記流体室内の前記流動体を介して、前記ピストンが前記ガイド部材の前記ピストン摺動孔内を軸方向に移動するサーモエレメントであって、
前記ケースは、胴部と、前記胴部の上端部から半径方向外側に延びるフランジと、前記フランジの外周部から軸方向に下方に延びる延長部とを有し、
前記ケースの前記フランジの下に配置され、前記ケースより肉厚の厚いリング状の補強リングを備え、
前記ケースの前記フランジは前記補強リングの上面に当接し、前記延長部は前記補強リングの外周面に当接するサーモエレメントである。
補強リングによりケースのフランジが補強されるので、ケースは薄い金属材料で形成されているが、熱膨張体の膨張により変形するおそれはない。
ケースのフランジの上面にゴム製の弾性密封部材(ダイアフラム)が当接しているが、補強リングの上面と外周面は、ケースのフランジと延長部とで囲まれるので、ケースは補強リングからずれることはない。
前記ケースの胴部は、底部と、前記底部の外周部から延びる円筒部とからなり、前記フランジは前記円筒部の上端部から延びることが好ましい。
前記ケースは金属板をプレス加工することにより成形されることが好ましい。
金属板をプレス加工してケースを形成すると、安価に製造することが出来る。
前記ガイド部材は、前記ガイド部材のフランジの外縁部から軸方向に延びるかしめ部を有し、前記弾性密封部材の外周部と、前記ケースの前記フランジと、前記補強リングとは、前記ガイド部材のかしめ部を半径方向内方にかしめて固定されることが好ましい。
前記弾性密封部材の外周部に近い部分の下面には、円周方向に下側凸部が形成され、前記ケースの前記フランジには、前記弾性密封部材の前記下側凸部を受ける凹部が形成され、前記弾性密封部材の前記下側凸部は、前記ケースの前記フランジの前記凹部に配置されることが好ましい。
弾性密封部材の下側凸部が、ケースのフランジの凹部に入ると、ケースと弾性密封部材との間が密封され、熱膨張体が漏れ出るおそれが少ない。
前記補強リングの上面には、前記ケースの前記フランジの前記凹部を受ける溝が形成され、前記ケースの前記フランジの前記凹部は、前記補強リングの上面の前記溝に配置されることが好ましい。
前記弾性密封部材の上面の前記下側凸部に対応する部分に、上側凸部が形成され、
前記ガイド部材の前記フランジには、前記弾性密封部材の前記上側凸部を受ける溝が形成され、前記弾性密封部材の前記上側凸部は、前記ガイド部材の前記フランジの前記溝に配置されることが好ましい。
弾性密封部材の上側凸部がガイド部材のフランジの前記溝に入ると、ガイド部材と弾性密封部材との間が密封され、流動体が漏れ出るおそれが少ない。
前記ガイド部材の前記フランジの下面と、前記弾性密封部材の外周部の上面との間に、リング状のシールリングが配置されることが好ましい。
シールリングにより、弾性密封部材とガイド部材との間の密封性が更に向上し、流動体が漏れ出るおそれが更に小さくなる。
前記シールリングは、硬質ゴム製であることが好ましい。
前記弾性密封部材の上側の前記下側凸部に対応する部分に、上側凸部が形成され、
前記シールリングの下面には、前記弾性密封部材の前記上側凸部を受ける溝が形成され、前記弾性密封部材の前記上側凸部は、前記シールリングの下面の前記溝に配置されることが好ましい。
弾性密封部材の上側凸部は、シールリングの下面の溝に入り、密封性が更に向上し、流動体が漏れ出るおそれが更に小さくなる。
前記ガイド部材の上部の前記ピストン摺動孔の周りにパッキンを収容するためのパッキン溝が形成され、前記パッキン溝に、フッ素樹脂製で前記ピストンを挿入するための中央孔が形成された円筒形のパッキンが配置されることが好ましい。
ガイド部材の上部のピストン摺動孔の周りにパッキンを収容するためのパッキン溝が形成され、パッキン溝にフッ素樹脂製で円筒形のパッキンが配置されると、ガイド部材の上部で確実に封止することが出来、ピストンの摺動抵抗は大きくならず、流動体が漏れでるおそれはない。
前記ピストンには中心孔が形成されることが好ましい。
前記流動体はオイルであり、前記サーモエレメントを組立てた後、前記ピストンの前記中心孔を通って、前記オイルが注入され、前記中心孔の上端部は、サーモエレメントが組立てられた後に封止部材で封止されることが好ましい。
ピストンに中心孔が形成されていると、サーモエレメントを組立てた後、中心孔から液体状の流動体を注入することが出来、その後に中心孔の上端部を封止することが出来る。
そのため、オイル等の液体状で流動性の良い流動体を使用することが出来る。
本発明の別の態様は、サーモスタットであって、
サーモエレメントと、
前記サーモエレメントの底部を収容するための下部凹部が形成され、液体の流れる流路が形成された下フレームと、
前記下フレームに固定され、前記ピストンの上部の外周を摺動可能に支持するピストン孔を有する上フレームと、
前記ピストンと一体に結合された開閉弁と、
前記開閉弁が当接するため、前記下フレームに固定された弁座と、
前記サーモエレメントの前記開閉弁を前記下フレームに結合された前記弁座に押し付けるバネと、を備え、
前記サーモエレメントは、底のあるケースと、前記ケースに充填され温度変化により膨張収縮する熱膨張体と、前記ケース内に前記熱膨張体を密封する弾性密封部材と、軸方向に移動可能なピストンと、前記ケースの上部に固定され、前記ピストンを摺動自在に保持するピストン摺動孔を有するガイド部材と、を備え、前記弾性密封部材と前記ガイド部材と前記ピストンとの間に流体室が形成され、前記流体室に変形自在な非圧縮性の流動体が収容され、前記熱膨張体の膨張収縮により、前記流体室内の前記流動体を介して、前記ピストンが前記ガイド部材の前記ピストン摺動孔内を軸方向に移動するようになっていて、
前記ケースは、胴部と、前記胴部の上端部から半径方向外側に延びるフランジと、前記フランジの外周部から軸方向に下方に延びる延長部を有し、
前記ケースの前記フランジの下に配置され、前記ケースより肉厚の厚いリング状の補強リングを備え、前記延長部は、前記補強リングの外周部を覆うことを特徴とするサーモスタットである。
本発明によれば、熱応答性が良く、流動体の漏れの問題がなく、製造コストの安いサーモエレメントを提供することができる。特に、薄い金属板をプレス成形したケースのフランジを補強リングで補強したサーモエレメントにおいて、ケースのフランジが補強リングからずれ動かないように固定したサーモエレメントを提供することが出来る。
また、このようなサーモエレメントを使用したサーモスタットを提供することが出来る。
従来のダイアフラムタイプのサーモエレメントの縦断面図。 先願のサーモエレメントの縦断面図。 本発明の第1の実施形態のサーモエレメントの縦断面図。 図3のサーモエレメントのケースとガイド筒部との結合部の拡大断面図。 図3のサーモエレメントの高温時の縦断面図。 図3のサーモエレメントを使用したサーモスタットの縦断面図。 図7のサーモスタットの高温時の縦断面図。 本発明の第2の実施形態のサーモエレメントのケースとガイド筒部との結合部の拡大断面図。 本発明の第3の実施形態のサーモエレメントの縦断面図。 図9のサーモエレメントのケースとガイド筒部との結合部の拡大断面図。 本発明の第4の実施形態のサーモエレメントのケースとガイド筒部との結合部の拡大断面図。
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図3は、本発明の第1の実施形態のサーモエレメントの縦断面図である。本明細書では、図3の上方向、即ちピストンの頂部の方向を上方向として説明する。
本発明の実施形態のサーモエレメントは、図2に示す先願のサーモエレメントについて、ケース10とガイド部材50との間のかしめ構造を改良したものであり、図2のサーモエレメントと同じ部分については、同じ参照番号を用いて説明する。
サーモエレメントは、底部11のある円筒形のケース10と、ケース10のフランジ13を補強する補強リング15と、ケース10の上部に係合するガイド部材50と、ケース10に封入された熱膨張体21と、熱膨張体21を封止するための弾性密封部材としてのダイアフラム30と、ダイアフラム30とガイド部材50との間に封入された流動体22と、ガイド部材50のガイド筒部に摺動自在に保持されるピストン40と、を備える。更に、ダイアフラム30の上面とピストン40の下端部との間に設けられる保護板32と、ガイド部材50のガイド筒部53の上部で、ピストン40の外周部に設けられるパッキン55と、を備える。
図4は、ケース10のフランジ13と、ガイド部材50のかしめ部51aとの結合部の拡大断面図である。図3、4を参照すると、ケース10は、薄い金属板をプレス加工により絞り成形したものである。ケース10は胴部を有し、胴部は、円形の底部11と、底部11に隣接する円筒形の円筒部12とからなる。ケース10は、円筒部12の上端から半径方向に広がるフランジ13とを有する。フランジ13の上面には、ダイアフラム30の外周部の下側凸部31aを受ける凹部13aが形成されている。なお、凹部13aは、金属板をプレス加工により成形したものであり、上面が凹形状であり、下面は凸形状となっている。
ケース10は、フランジ13の外縁部から、下方へ延びる円筒形の延長部14を有する。延長部14は、補強リング15の外周面を取り囲む。延長部14の外径は、ガイド部材50のかしめ部51aの内径とほぼ等しく、かしめ部51aの内周に適合する。
ケース10の延長部14は、補強リング15を外周から保持する。そのため、ケース10の内圧が高まり、フランジ13に内方への力がかかっても、ケース10と補強リング15とがずれにくく、補強リング15により、ケース10を確実に補強することが出来る。
なお、ケース10は、底部11と円筒部12とに分かれている円筒形として示したが、底部11と円筒部12とに明確には分かれていず、底面から側面に緩やかにカーブする球面の一部のような形状でも良い。
ケース10のフランジ13の上面にダイアフラム30の外周部が配置される。ダイアフラム30は、中央部が凹状にへこんだほぼ円板状の形状である。外周部に近い部分には、円周方向に延びる他の部分より肉厚の厚い凸部が形成される。凸部は、ダイアフラム30の下側の下側凸部31aと、上側の下側凸部31aと反対側の上側凸部31bとからなる。下側凸部31aは、ケース10のフランジ13の凹部13aに入り、上側凸部31bはガイド部材50のフランジ51の溝51bに入り、ケース10とガイド部材50との間を密封できるようになっている。ダイアフラム30は、下側凸部31a、上側凸部31bから更に半径方向外側に延び、ダイアフラム30の外径は、ケース10のフランジ13の外径とほぼ等しく、かしめ部51aの内径とほぼ等しい。ダイアフラム30の外縁は、かしめ部51aの内周面まで延びる。ダイアフラム30がケース10のフランジ13、ガイド部材50のフランジ51の下面と接する半径方向長さは、図2のサーモエレメントと比較して長いので、流動体22の密封性は良好である。
ケース10の上部にガイド部材50が取り付けられる。ガイド部材50の下端部は、ケース10のフランジ13と延長部14にかしめるため、ケース10のフランジ13と延長部14より大径のフランジ51となっている。フランジ51は上下方向の肉厚が厚く、変形しにくくなっている。フランジ51の下面には、ダイアフラム30の外周部の上側凸部31bを受けるための溝51bが形成されている。
フランジ51の下部は、肉厚が薄く円筒形のかしめ部51aであり、かしめ部51aを半径方向内側に折り曲げて、ダイアフラム30の外周部と、ケース10のフランジ13及び延長部14と、補強リング15とを固定することができる。
ケース10のフランジ13の下側には、ケース10を補強するための補強リング15が配置される。補強リング15は、平らなリング状の部材である。補強リング15の上面には、ケース10のフランジ13の凹部13aを受ける溝15bが、円周方向に延びて形成されている。補強リング15の外径は、ケース10の延長部14の内径に適合し、延長部14の内側に配置することが出来る。
外部の冷却水の温度がケース10内の熱膨張体21に伝わりやすいように、ケース10の肉厚は薄くなっているが、ケース10のフランジ13と延長部14は、補強リング15により補強される。
補強リング15と、補強リング15の上のケース10のフランジ13及び延長部14と、フランジ13の上のダイアフラム30の外周部とは、ガイド部材50のかしめ部51aをかしめて固定される。こうして、ケース10とガイド部材50とは気密に一体化されている。延長部14が、補強リング15の外周面を覆うので、気密性は良好である。
図3に戻って、ガイド部材50のフランジ51の上は、上に向かって細くなる円錐台形の基部52であり、基部52内に流動体を封入することが出来る。基部52の上は、円筒形のガイド筒部53であり、ガイド筒部53の内側にピストン摺動孔57が形成されている。ピストン摺動孔57の内径はピストン40の外径Dsに適合し、ピストン摺動孔57の内側にピストン40を摺動自在に保持することが出来るようになっている。
ケース10には、パラフィンを含む熱膨張体21が充填され、熱膨張体21の上面は、ダイアフラム30により封止されている。ダイアフラム30は、弾性密封部材の一種である。ダイアフラム30は、中央部が凹状にへこんだほぼ円板状の形状である。ダイアフラム30は、下側凸部31a、上側凸部31bの円周方向外側まで延び、ダイアフラム30の外径は、ケース10のフランジ13の外径とほぼ等しい。
ガイド部材50の基部52の内面と、ダイアフラム30の上面との間には流動体22を蓄える流体室が設けられている。流体室には非圧縮性の流動体22が充填されている。流動体22は、熱膨張体21が膨張したとき、ピストン40を押し上げる。
従来は、流動体がサーモエレメントの組立て中に漏れないようにするため、流動体として、シリコングリス、黒鉛、粘土を混合したペレット状の混合体を用いていた。本発明では、流動体22として、流動性の良いオイル等の液体状の流動体を用いる。流動体22に用いるオイルは、エンジンオイル、シリコンオイル等の低粘度の潤滑性のある油が好ましい。低粘度のオイルは、気泡が入りにくく、応答性が優れている。
ダイアフラム30の中央部の上面とピストン40の下端部との間には、保護板32が配置されている。保護板32は、フッ素樹脂等の樹脂材料で作成される。保護板32は、ほぼ円板状の保護部33と、保護部33の中央部から上方に円柱状に延びる固定部34とを有する。
保護板32の保護部33の上面は中央部が高く外周部が低くなっていて、ピストン40の下端部を受ける。
保護板32の固定部34は、ピストン40の下部の一対の延長部47にはさまれている。固定部34の中心軸方向長さは、ピストン40の切欠き部46の軸方向長さより小さく、環境温度が低く、流動体22が収縮した状態で、ピストン40の下端部が、保護板32の保護部33に当接しているときも、流体室内の流動体22は切欠き部46を通って、ピストン40の中心孔44に連通している。
保護部33の下面は、ダイアフラム30の上面の形状に合うようにほぼ球面の一部の形状である。保護部33の下面は、ダイアフラム30の上面に支持されていて、特に結合はされてない。又は、保護部33の下面は、ダイアフラム30の上面に融着等により結合されていても良い。
保護板32は、ピストン40が図3の下方の位置にあるとき、保護板32と、ピストン40の下端部との相互の位置が移動しないように保持し、ダイアフラム30がピストン40の下端部により変形するのを防止する。
保護板32は、保護部33のみとし、円柱状に延びる固定部34はなくても良い。その場合、保護板32の保護部33に上面にピストン40の下端部が接することになる。
保護板32は任意であり、なくても良い。保護板32がない場合は、ピストン40の下端部は、ダイアフラム30の上面の中央部に直接当接する。そのため、ダイアフラム30の上面の中央部を厚くして、ダイアフラム30がピストン40の下端部により変形しにくくする。
ガイド筒部53の内側上部には、ピストン摺動孔57の内径より大きい内径のパッキン溝54が形成されている。
パッキン溝54には、ピストン40の外周部との間をシールするための円筒形のパッキン55と、パッキン55を保持するためパッキン55の上部に設けられる円筒形の保持部材56とがはめ込まれている。
パッキン55はフッ素樹脂で出来ている。パッキン55は、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))製であることが好ましい。パッキン55の外径は、パッキン溝54の内径に適合し、パッキン溝54の内径と等しいか、それより少し大きく、パッキン溝54の内周面とパッキン55の外周面との間を密封する。
パッキン55の中央孔59の内径はピストン40の外径と等しいかそれよりやや小さく、パッキン55の内周面とピストン40の外周面との間を密封する。このように、パッキン55は、ピストン40とガイド部材50のガイド筒部53との間を密封し、流体室内の流動体22が漏れないように保持する。
保持部材56は、ゴム製である。保持部材56の内径はピストン40の外径より少し大きく、ピストンとの間は少し隙間があく。保持部材56の外径は、パッキン溝54の内径より大きく、パッキン溝54に押し込んで適合する。保持部材56の外径は、パッキン55の外径より大きく、パッキン溝54内のパッキン55の上に配置され、パッキン55を支持し、パッキン溝54の内周面と、保持部材56の外周面との間をシールするものである。保持部材56は、保持部材56の内周面と、ピストン40の外周面との間をシールする機能はなく、ピストン40の摺動抵抗に影響を与えない。
パッキン55の厚さと保持部材56の厚さの合計は、パッキン溝54に収容できる厚さである。
パッキン55はフッ素樹脂で形成されているので、ピストン40の外周面との間の摺動抵抗は小さく、ピストン40は滑らかに摺動することが出来る。また、ピストン40の外周面とガイド部材50のガイド筒部53の内周面との間の密封性は良好で、流動体22がもれることはない。パッキン55は、パッキン溝54に配置され、ピストン40の外周面に接しているので、ピストン40が上方に移動しても、パッキン55が径方向に広がることはなく、ピストン40との摺動抵抗が増すことはない。また、耐摩耗性が良く、耐久性は良好である。
保持部材56は、径方向に圧縮されてパッキン溝54に押し込まれているので、保持部材56とパッキン溝54の内周面との間を確実にシールする。
第1の実施形態では、図1に示す従来のサーモエレメンに使用されるラバーピストン7と保護板8は設けない。
ピストン40は、金属製の円筒状の部材であり、パイプ形状の金属から形成され、軸方向中心部に中心孔44が形成されている。軸方向下部には、ピストン40の外周面から中心孔44まで切欠き部46が形成されている。切欠き部46は対向して一対形成されている。流動体22が、流体室から切欠き部46を通って中心孔44に出入りすることが出来るようになっている。ピストン40の下部の切欠き部46でない部分は、延長部47となっている。
ピストン40は、ガイド部材50のガイド筒部53のピストン摺動孔57に摺動自在に保持される。ピストン40の延長部47の下端部は、保護板32の保護部33で受けられている。保護板32の固定部34は、ピストン40の下部の対向する延長部47にはさまれる。延長部47の内周面は中心孔44と同じ半径の曲面であり、保護板32の固定部34を延長部47から外れないように保持する。
ピストン40の延長部47の下端部は、保護板32に接していることを示すため、図3では実線で示す。
ピストン40の上端部に配置される封止部材42は、円柱形の軸部42aと、軸部42aの一端に形成されたフランジ42bとを有する。軸部42aの外径は、ピストン40の中心孔44の内径に適合し、フランジ42bの外径は、ピストン40の外径とほぼ等しい。
サーモエレメントを組立てた後、ピストン40の中心孔44から流体室に流動体22を注入し、その後、ピストン40の中心孔44上端部を封止部材42で塞ぐことが出来る。
ピストン40の上端部と封止部材42とを固定する方法は、かしめ、溶接その他の方法を用いることが出来る。また、封止部材42を用いる以外に、ピストン40の上端部を潰して中心孔44を塞ぐこともできる。
ピストン40の中ほど外周部は、ガイド筒部53の上部に配置されたパッキン55により封止され、ピストン40が上下方向に移動しても、流動体22は漏れないようになっている。
ピストン40のガイド筒部53の上に出た部分の外周部にリング溝43が設けられている。後述するように、リング溝43には、リング45をはめ込むことが出来る。リング45は、後述するサーモスタットの開閉弁75の中央部を支持し、開閉弁75がピストン40と一体に上下方向に移動するように支持する。
サーモエレメントを組立てるには、補強リング15の内側にケース10の円筒部12を挿入し、ケース10の凹部13aが補強リング15の溝15bに入るように配置する。その上にダイアフラム30を置き、下側凸部31aが、ケース10の凹部13aに入りように配置する。ダイアフラム30の上に、保護板32を配置し、保護板32の固定部34がピストン40の中心孔44に入るようにピストン40を配置する。ガイド部材50のパッキン溝54にパッキン55と保持部材56とを入れておく。ピストン40の先端部をガイド部材50のガイド筒部53に通して、溝51bにダイアフラム30の上側凸部31aが入るようにする。かしめ部51aをかしめて、補強リング15とケース10とダイアフラム30とを固定する。
サーモエレメントを組立てる手順は、ここに述べた方法に限定されない。ケース10に補強リング15を先に取付けておくことも出来る。
このように、サーモエレメントを組立ててから、ピストン40の中心孔44から流動体22を注入する。こうすると、流動体としてオイル等の流動性の良い液体を用いることが出来る。また、注入する流動体22の量を容易に最適な量に調整することができる。
液体状の流動体は、気泡が入りにくいので、応答性が良い。しかし、従来のゴム製パッキンを使用する場合は、流動体としてオイルを用いると、オイルが漏れるおそれがある。
本発明の実施形態では、密封部材としてフッ素樹脂製のパッキン55を用い、流動体22として低粘度のオイルを用い、ピストン40の中心孔44から流動体22を注入する。
サーモエレメントを組立ててから、ピストン40の中心孔44からオイル等の液体状の流動体22を注入するので、液体状の流動体22を用いることが出来る。
フッ素樹脂製のパッキン55でシールするので、ピストンの摺動抵抗は小さく、オイル等の液体状の流動体22を用いても、パッキン55とピストン40の外周面との間から漏れるおそれはない。フッ素樹脂製のパッキン55は、ピストン40の外周面に接するので、流動体22が膨張してピストン40を押上げるとき、ピストン40の摺動抵抗が大きくならない。
また、ダイアフラム30は、かしめ部51aの内周面まで広がっているので、フランジ51と、ダイアフラム30との間からも、流動体22は漏れにくい。
図3は、環境温度が常温で、熱膨張体21が収縮し、ピストン40に印加されたスプリング80による負荷(図6)により開閉弁75が閉じたときの状態である。ピストン40の中心孔44の内部は、流動体22で満たされている。ピストン40の下端部は、保護板32の保護部33の上面に当接し、固定部34は、ピストン40の一対の延長部47ではさまれている。流体室内の流動体22は、ピストン40の切欠き部46を通って中心孔44の内部と連通している。
図5は、温度が上昇し、熱膨張体21が膨張し、流体室の流動体22が、ピストン40を押し上げた状態を示す。ピストン40の下端部は、ダイアフラム30上の保護板32の保護部33から離れる。延長部47の長さは十分長いので、ピストン40が上昇した状態でも、固定部34の上端部はピストン40の一対の延長部47から出ず、固定部34は一対の延長部47にはさまれている。そのため、ピストン40の延長部47の下端部と保護部33との位置は、ずれることはない。流動体22は、ピストン40の切欠き部46を通って中心孔44の内部と連通している。後述するように、このとき、開閉弁75はガイド部材50の上端から離れ、開弁している。
熱膨張体21が膨張し、ケース10の内圧が高くなると、ケース10の円筒部12には、膨張する力がかかり、フランジ13には内方へ下方へと引かれる力がかかる。フランジ13の上面はゴム製のダイアフラム30で押えられていて、ダイアフラム30ではフランジ13を動かないように固定することは難しい。ケース10のフランジ13と延長部14とが、補強リング15を抱き込むように保持しているので、フランジ13と延長部14とは補強リング15に対して強固に固定され、移動することはない。
図5の状態から、環境温度が下がると、熱膨張体21は収縮し、ピストン40に印加されたスプリング80によりピストン40は押し下げられ、保護板32の固定部34は、ピストン40の中心孔44の下部、即ち一対の延長部47ではさまれた空間に更に入る。ピストン40の下端部は、保護板32の保護部33の上面に当接する。サーモエレメントは、図3の状態に戻る。
サーモエレメントの使用中は、環境温度の変化により、図3と5の状態の間でピストン40が上下方向に移動する。
(サーモスタット)
図6は、図2のサーモエレメントを使用したサーモスタットの縦断面図である。サーモスタットは、前述したサーモエレメントの構成部品の他に、下フレーム60と、下フレーム60に一体に取付けられ、下フレーム60の上方に設けられた上フレーム65と、ピストン40と一体に移動する開閉弁75と、上フレーム65に対して開閉弁75を下方に押し付けるスプリング80とを備える。
下フレーム60の中央部は、サーモエレメントのケース10の底部11を受けるための下部凹部61である。下部凹部61の中央部は開口している。下フレーム60は、下部凹部61の外側を囲む底面部62と、底面部62に隣接し上方に広がる下部斜面部63を有する。下部斜面部63には開口部63aが形成され、開口部63aを通って冷却水が流れることが出来るようになっている。
下部斜面部63の上端部から、外周部64がフランジ状に横方向に広がって形成されている。下部斜面部63に隣接する外周部64の部分は、開閉弁75が当接する弁座70となっている。下フレーム60の外周部64に、上フレーム65を勘合するための勘合孔72が形成されている。
下フレーム60の外周部に上フレーム65が結合されている。上フレーム65は、図6の奥行き方向にある幅を有する部材で、下フレーム60の上側の一部を覆い、上フレーム65のない部分を冷却水が通過することが出来る。
図6に示すように、上フレーム65は、中心軸の両側に対向する2つの側面部66と、側面部66に隣接し、上方に向けて幅が狭まっていく2つの上部斜面部67と、2つの上部斜面部67の間の上部平面部68とを有する。側面部66の下端部に、勘合爪73を有し、勘合爪73を下フレームの勘合孔72に勘合させて、上フレーム65は下フレーム60に結合されている。上部平面部68の中心部は、下方に折れ曲がり、ピストン孔69が形成され、ピストン孔69にピストン40を摺動自在に保持することが出来る。
下フレーム60の外周部64の下部斜面部63に隣接する部分は、弁座70となっている。弁座70の上面は、開閉弁75の外周部76と当接する。
開閉弁75の外周部76には、ゴム焼付け部71が設けられている。ゴム焼付け部71は、弁座70に当接し、開閉弁75の外周部と密着し、開閉弁75を完全に閉じることが出来るようになっている。
開閉弁75の中心部には、ピストン孔77が形成されている。ピストン40は、ピストン孔77を貫通する。開閉弁75のピストン孔77の周りの部分は、ピストン40のリング溝43にはめ込まれたリング45の上面に当接し、ピストン40が上方へ移動すると、開閉弁75はピストン40に固定されたリング45に押上げられて、ピストン40と一体に移動するようになっている。
上フレーム65の上部平面部68の内面と、開閉弁75の外周部76の上面との間には、スプリング80が配置されている。スプリング80は、開閉弁75を弁座70に対して押圧し、環境温度が低いときは、開閉弁75が弁座70に押し付けられて、閉じるようにする。
図7は、環境温度が上昇し、熱膨張体21が膨張し、流体室の流動体22が、ピストン40を押し上げ、開閉弁75が開いた状態を示す。開閉弁75はガイド部材50の上端から離れ、ピストン40の下端部は、ダイアフラム30の上面に留まる保護板32から離れている。
図7の状態から、環境温度が下がると、熱膨張体21は収縮し、スプリング80により、開閉弁75を介してピストン40に印加された負荷により、ピストン40は押し下げられ、図6の状態に戻る。サーモスタットの使用中は、環境温度の変化により、図6と7の状態の間でピストン40が上下方向に移動し、開閉弁75が開閉する。
(第2の実施形態)
図8は本発明の第2の実施形態のサーモエレメントのケース10とガイド部材50との結合部の拡大断面図である。第1の実施形態では、ダイアフラム30の外周部の凸部は、下側凸部31aと、上側凸部31bからなる。第2の実施形態のダイアフラム30'は、下側凸部31aはあるが、上側凸部なく上面は平らになっている。ガイド部材50のフランジ51の下面には溝は設けられていず、平面であるフランジ51の下面がダイアフラムの外周部の上面に当接する。
第2の実施形態では、ダイアフラム30'の外周部がフランジ51の下面に当接する半径方向長さは長いので、ダイアフラム30の上側凸部がなくても、流動体の密封性は十分良好である。
(第3の実施形態)
図9は、本発明の第2の実施形態のサーモエレメントの縦断面図である。図10は、図9のサーモエレメントのケース10とガイド部材50との結合部の拡大断面図である。第2の実施形態のサーモエレメントについては、主に第1の実施形態のサーモエレメントと異なる点について説明する。
ケース10は、薄い金属製で、円形の底部11と、底部11に隣接する円筒形の円筒部12と、円筒部12の上端から半径方向に広がるフランジ13とを有する。フランジ13の上面には、ダイアフラム30の外周部の下側凸部31aを受ける凹部13aが形成されている。
ケース10は、フランジ13の外周部から、下方へ延びる延長部14を有する。延長部14は、補強リング15の外周面を覆う。
ケース10のフランジ13の下側には、ケース10を補強するための補強リング15が配置される。ケース10のフランジ13と延長部14とは、補強リング15により補強される。補強リング15は、平らなリング状の部材であり、外周部には、ケース10のフランジ13の凹部13aを受ける溝15bが形成されている。補強リング15の外周面は、ケース10の延長部14により覆われる。
ケース10のフランジ13の上面にダイアフラム30の外周部が配置される。ダイアフラム30の外周部に近い部分の下側には、円周に沿って他の部分より肉厚の厚い下側凸部31aが形成される。ダイアフラム30の上側の下側凸部31aに対応する部分には、上側凸部31bが形成される。
下側凸部31aは、ケース10のフランジ13の凹部13aに入り、上側凸部31bは、シールリング25の溝25bに入り、ケース10とガイド部材50との間を密封できるようになっている。ダイアフラム30は、下側凸部31a、上側凸部31bから更に半径方向外側に延びる。ダイアフラム30の外径は、ケース10のフランジ13の外径とほぼ等しく、かしめ部51aの内径とほぼ等しい。ダイアフラム30の外周は、かしめ部51aの内周面まで延び、シールリング25により密封される半径方向の長さは長いので、流動体22の密封性は良好である。
ダイアフラム30の外周部の上面で、ガイド部材50のフランジ51の下側にシールリング25が配置される。シールリング25は、硬質ゴム製のリング状の部材であり、下面の幅方向中央部には、ダイアフラム30の上側凸部31bを受ける溝25bが形成されている。
第3の実施形態では、補強リング15に加えて、シールリング25が設けられる。そのため、ケース10のフランジ13と、ダイアフラム30の外周部とを、補強リング15とシールリング25により挟んで保持するので、密封性が良好である。特に、ガイド部材50のフランジ51の下面と、ダイアフラム30の外周部との間の密封性が良好であり、この部分から流動体22が漏れでるおそれはない。
ケース10のフランジ13と延長部14とで、補強リング15の上面と外周面を取り囲むので、 また、ケース10が補強リング15からずれ動くことはない。
(第4の実施形態)
図11は本発明の第4の実施形態のサーモエレメントのケース10とガイド部材50との結合部の拡大断面図である。第3の実施形態では、ダイアフラム30の外周部の凸部は、下側凸部31aと上側凸部31bとからなっている。第4の実施形態のダイアフラム30'は、下側凸部31aはあるが、上側凸部はなく、上面は平らになっている。シールリング25'には溝は設けられていず、シールリング25'の平面である下面がダイアフラム30'の平らな外周部に当接する。
第4の実施形態は、シールリング25'があるので、ダイアフラム30'の上面の凸部がなくても、流動体の密封性は十分良好である。
第1〜4の実施形態として、本発明のサーモエレメントを自動車用サーモスタットに組付けた実施形態を説明したが、これに限定するものではなく、本発明のサーモエレメントを他の装置に組付けることもでき、その場合も同様の効果が得られる。
本発明の第1〜4の実施形態として、主にダイアフラムタイプのサーモエレメントについて説明したが、本発明はこれに限定されず、スリーブタイプ等他の種類のサーモエレメントでも、薄い金属板をプレス成形して製造したケースを用いるサーモエレメントに適用することが出来る。
1 ケース
2 熱膨張体
3 ダイアフラム
4 流動体
5 ガイド部材
6 ピストン
7 ラバーピストン
8 保護板
10 ケース
11 底
12 円筒部
13 フランジ
13a 凹部
14 延長部
15 補強リング
15b 溝
21 熱膨張体
22 流動体
25 シールリング
25b 溝
30 ダイアフラム
31a 下側凸部
31b 上側凸部
32 保護板
33 保護部
34 固定部
40 ピストン
42 封止部材
42a 軸部
42b フランジ
43 リング溝
44 中心孔
46 切欠き部
47 延長部
50 ガイド部材
51 フランジ
51a かしめ部
51b 溝
52 基部
53 ガイド筒部
54 パッキン溝
55 パッキン
56 保持部材
57 ピストン摺動孔
58 テーパ部
59 中央孔
60 下フレーム
61 下部凹部
62 底面部
62a 開口部
63 下部斜面部
64 外周部
65 上フレーム
66 側面部
67 上部斜面部
68 上部平面部
69 ピストン孔
70 弁座
71 ゴム焼付け部
72 勘合孔
73 勘合爪
75 開閉弁
76 外周部
77 ピストン孔
80 スプリング

Claims (10)

  1. 底のあるケースと、前記ケースに充填され温度変化により膨張収縮する熱膨張体と、前記ケース内に前記熱膨張体を密封する弾性密封部材と、軸方向に移動可能なピストンと、前記ケースの上部に固定され、前記ピストンを摺動自在に保持するピストン摺動孔を有するガイド部材と、を備え、前記弾性密封部材と前記ガイド部材と前記ピストンとの間に流体室が形成され、前記流体室に変形自在な非圧縮性の流動体が収容され、前記熱膨張体の膨張収縮により、前記流体室内の前記流動体を介して、前記ピストンが前記ガイド部材の前記ピストン摺動孔内を軸方向に移動するサーモエレメントであって、
    前記ケースは、胴部と、前記胴部の上端部から半径方向外側に延びるフランジと、前記フランジの外周部から軸方向に下方に延びる延長部とを有し、
    前記ケースの前記フランジの下に配置され、前記ケースより肉厚の厚いリング状の補強リングを備え、
    前記ケースの前記フランジは前記補強リングの上面に当接し、前記延長部は前記補強リングの外周面に当接することを特徴とするサーモエレメント。
  2. 請求項1に記載のサーモエレメントであって、
    前記ケースは金属板をプレス加工することにより成形されたサーモエレメント。
  3. 請求項1又は2に記載のサーモエレメントであって、
    前記弾性密封部材の外周部に近い部分の下面には、円周方向に下側凸部が形成され、
    前記ケースの前記フランジには、前記弾性密封部材の前記下側凸部を受ける凹部が形成され、前記弾性密封部材の前記下側凸部は、前記ケースの前記フランジの前記凹部に配置されるサーモエレメント。
  4. 請求項3に記載のサーモエレメントであって、
    前記補強リングの上面には、前記ケースの前記フランジの前記凹部を受ける溝が形成され、前記ケースの前記フランジの前記凹部は、前記補強リングの上面の前記溝に配置されるサーモエレメント。
  5. 請求項4に記載のサーモエレメントであって、
    前記弾性密封部材の上面の前記下側凸部に対応する部分に、上側凸部が形成され、
    前記ガイド部材の前記フランジには、前記弾性密封部材の前記上側凸部を受ける溝が形成され、前記弾性密封部材の前記上側凸部は、前記ガイド部材の前記フランジの前記溝に配置されるサーモエレメント。
  6. 請求項1乃至4の何れか1項に記載のサーモエレメントであって、
    前記ガイド部材の前記フランジの下面と、前記弾性密封部材の外周部の上面との間に、リング状のシールリングが配置されたサーモエレメント。
  7. 請求項6に記載のサーモエレメントであって、
    前記シールリングは硬質ゴム製であるサーモエレメント。
  8. 請求項6又は7に記載のサーモエレメントであって、
    前記弾性密封部材の上側の前記下側凸部に対応する部分に、上側凸部が形成され、
    前記シールリングの下面には、前記弾性密封部材の前記上側凸部を受ける溝が形成され、前記弾性密封部材の前記上側凸部は、前記シールリングの下面の前記溝に配置されるサーモエレメント。
  9. 請求項1乃至8の何れか1項に記載のサーモエレメントであって、
    前記ガイド部材の上部の前記ピストン摺動孔の周りにパッキンを収容するためのパッキン溝が形成され、前記パッキン溝に、フッ素樹脂製で前記ピストンを挿入するための中央孔が形成された円筒形のパッキンが配置されたサーモエレメント。
  10. サーモスタットであって、
    サーモエレメントと、
    前記サーモエレメントの底部を収容するための下部凹部が形成され、液体の流れる流路が形成された下フレームと、
    前記下フレームに固定され、前記ピストンの上部の外周を摺動可能に支持するピストン孔を有する上フレームと、
    前記ピストンと一体に結合された開閉弁と、
    前記開閉弁が当接するため、前記下フレームに固定された弁座と、
    前記サーモエレメントの前記開閉弁を前記下フレームに結合された前記弁座に押し付けるバネと、を備え、
    前記サーモエレメントは、底のあるケースと、前記ケースに充填され温度変化により膨張収縮する熱膨張体と、前記ケース内に前記熱膨張体を密封する弾性密封部材と、軸方向に移動可能なピストンと、前記ケースの上部に固定され、前記ピストンを摺動自在に保持するピストン摺動孔を有するガイド部材と、を備え、前記弾性密封部材と前記ガイド部材と前記ピストンとの間に流体室が形成され、前記流体室に変形自在な非圧縮性の流動体が収容され、前記熱膨張体の膨張収縮により、前記流体室内の前記流動体を介して、前記ピストンが前記ガイド部材の前記ピストン摺動孔内を軸方向に移動するようになっていて、
    前記ケースは、胴部と、前記胴部の上端部から半径方向外側に延びるフランジと、前記フランジの外周部から軸方向に下方に延びる延長部を有し、
    前記ケースの前記フランジの下に配置され、前記ケースより肉厚の厚いリング状の補強リングを備え、前記延長部は、前記補強リングの外周部を覆うことを特徴とするサーモスタット。
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