本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムは単層構成であっても多層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
本発明において使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
ポリエステルの重合触媒としては、特に制限はなく、従来公知の化合物を使用することができ、例えば、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、マンガン化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等が挙げられる。この中でも、チタン化合物やゲルマニウム化合物は触媒活性が高く、少量で重合を行うことが可能であり、フィルム中に残留する金属量が少ないことから、フィルムの輝度が高くなるため好ましい。さらに、ゲルマニウム化合物は高価であることから、チタン化合物を用いることがより好ましい。
また、フィルムの耐候性の向上、カラーフィルター等に用いられる色素の劣化防止のために、ポリエステルフィルム中に紫外線吸収剤を含有させてもよい。紫外線吸収剤は、紫外線吸収能を有する化合物で、ポリエステルフィルムの製造工程で付加される熱に耐えうるものであれば特に限定されない。
紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤があるが、透明性の観点からは有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などが挙げられる。耐久性の観点からは環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系がより好ましい。また、紫外線吸収剤を2種類以上併用して用いることも可能である。
本発明のフィルムのポリエステル層中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することも可能であるが、透明性の観点から粒子を配合しないことも可能である。粒子を配合する場合、配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
また、粒子の平均粒径は、通常5μm以下、好ましくは0.01〜3μm、より好ましくは0.05〜2μmの範囲である。平均粒径が5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程において種々の表面機能層等を形成させる場合等に不具合が生じる場合がある。
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、通常5重量%以下、好ましくは0.0003〜3重量%の範囲である粒子が無い場合、あるいは少ない場合は、フィルムの透明性が高くなり、良好なフィルムとなるが、滑り性が不十分となる場合があるため、塗布層中に粒子を入れることにより、滑り性を向上させる等の工夫が必要な場合がある。また、粒子含有量が5重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。
これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10〜300μm、好ましくは20〜250μmの範囲である。
本発明のフィルムの製膜方法としては、通常知られている製膜法を採用でき、特に制限はない。例えば、二軸延伸ポリエステルフィルムを製造する場合、まず先に述べたポリエステル原料を押出機を用いて、ダイから溶融押し出しし、溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法や液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に、通常70〜170℃で、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍で延伸する。引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る方法が挙げられる。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
また、本発明においては積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルム製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
次に本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層の形成について説明する。塗布層に関しては、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよい。より好ましくはインラインコーティングにより形成されるものである。
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押出ししてから延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融、急冷して得られる未延伸シート、延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルム、熱固定後で巻上前のフィルムの何れかにコーティングする。以下に限定するものではないが、例えば逐次二軸延伸においては、特に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルムにコーティングした後に横方向に延伸する方法が優れている。かかる方法によれば、製膜と塗布層形成を同時に行うことができるため製造コスト上のメリットがあり、また、コーティング後に延伸を行うために、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。また、延伸前にフィルム上に塗布層を設けることにより、塗布層を基材フィルムと共に延伸することができ、それにより塗布層を基材フィルムに強固に密着させることができる。さらに、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造において、クリップ等によりフィルム端部を把持しつつ延伸することで、フィルムを縦および横方向に拘束することができ、熱固定工程において、しわ等が入らず平面性を維持したまま高温をかけることができる。それゆえ、塗布後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温とすることができるために、塗布層の造膜性が向上し、塗布層と基材フィルムをより強固に密着させることができ、さらには、強固な塗布層とすることができ、塗布層上に形成され得る各種の機能層との密着性や耐湿熱性等の性能を向上させることができる。
本発明においては、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、縮合多環式芳香族を有する化合物、アクリル樹脂および活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物を含有する塗布液から形成された塗布層を有することを必須の要件とするものである。
本発明においては、塗布層は屈折率の調整をする必要がある。干渉ムラが発生しにくい塗布層の最適な屈折率は、ポリエステルフィルムの屈折率と光拡散層あるいはスティッキング防止層等の表面機能層の屈折率の相乗平均付近になるように設計することが好ましい。例えば、ポリエステルフィルムの屈折率が1.65程度であり、光拡散層あるいはスティッキング防止層に使用される樹脂の屈折率が1.50程度である場合を考えると、これらの層の中間に位置する塗布層の理想的な屈折率としては、1.57程度となり、通常、易接着性を付与するために使用される塗布層成分としてのアクリル樹脂のみでは達成しにくい程度の高屈折率である。それゆえ、高めの屈折率調製が必要であり、なおかつ密着性の低下を防ぐことができる化合物設計が可能な縮合多環式芳香族を使用することで、干渉ムラがなく、密着性が良好な塗布層を形成する手法が有効的となる。
縮合多環式芳香族の具体例としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ナフタセン、ベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[a]フェナントレン、ピレン、ベンゾ[c]フェナントレン、ペリレンを有する化合物等が挙げられる。
縮合多環式芳香族をポリエステル樹脂に組み込む方法としては、例えば、縮合多環式芳香族に置換基として水酸基を2つあるいはそれ以上導入してジオール成分あるいは多価水酸基成分とするか、あるいはカルボン酸基を2つあるいはそれ以上導入してジカルボン酸成分あるいは多価カルボン酸成分として作成する方法がある。ポリエステル樹脂の安定性の観点から、縮合多環式芳香族にカルボン酸基を導入し、酸成分とすることが好ましい。また、積層ポリエステルフィルム製造工程において、着色がしにくいという点で、縮合多環式芳香族はナフタレン構造であることが好ましい。
ポリエステルフィルム上への塗布性を考慮すると、縮合多環式芳香族を有する化合物は、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の高分子化合物が好ましい。特にポリエステル樹脂にはより多くの縮合多環式芳香族を導入することができるためより好ましい。
縮合多環式芳香族をポリエステル樹脂に組み込む方法としては、例えば、縮合多環式芳香族に置換基として水酸基を2つあるいはそれ以上導入してジオール成分あるいは多価水酸基成分とするか、あるいはカルボン酸基を2つあるいはそれ以上導入してジカルボン酸成分あるいは多価カルボン酸成分として作成する方法がある。
積層ポリエステルフィルム製造工程において、着色がしにくいという点で、塗布層に含有する縮合多環式芳香族はナフタレン骨格を有する化合物が好ましい。また、塗布層上に形成する光拡散層あるいはスティッキング防止層との密着性や、透明性が良好であるという点で、ポリエステル構成成分としてナフタレン骨格を組み込んだ樹脂が好適に用いられる。当該ナフタレン骨格としては、代表的なものとして、1,5−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。
なお、縮合多環式芳香族には、水酸基やカルボン酸基以外にも、硫黄元素を含有する置換基、フェニル基等の芳香族置換基、ハロゲン元素基等を導入することにより、屈折率の向上が期待でき、塗布性や密着性の観点から、アルキル基、エステル基、アミド基等の置換基を導入してもよい。
本発明において、塗布層の屈折率の調整を補足的に行うために、縮合多環式芳香族を有する化合物以外の高屈折率材料を併用することも可能である。例えば、金属酸化物の微粒子、ビスフェノールA構造のような芳香族構造を多く含有する化合物、硫黄元素やハロゲン元素を含有する化合物等が挙げられる。
アクリル樹脂とは、アクリル系、メタアクリル系のモノマーに代表されるような、炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体いずれでも差し支えない。また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれる。例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体である。あるいは、ポリエステル溶液、またはポリエステル分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、または分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。また、密着性をより向上させるために、ヒドロキシル基、アミノ基を含有することも可能である。
上記炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、およびそれらの塩;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリル等のような種々の窒素含有化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のような種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビリデンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類が挙げられる。
塗布層の屈折率を上げるために、アクリル樹脂には密着性の特性を損なわない範囲で、硫黄化合物、芳香族化合物等を含有させることも可能である。また、光拡散層とスティッキング防止層等の表面機能層との密着性を向上させるために、水酸基、アミノ基、アミド基等の官能基を含有するアクリル樹脂を使用することが好ましい。
本発明で使用する活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物とは、前駆体であるイソシアネート系化合物のイソシアネート基を活性メチレン化合物で保護した構造を有する化合物ことであり、塗布層上に形成され得るハードコート層等の表面機能層との密着性や、塗布層の耐湿熱性を向上させる機能を有する。
活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物の前駆体であるイソシアネート系化合物としては、例えば、脂肪族系イソシアネート化合物、脂環族系イソシアネート化合物、芳香族系イソシアネート化合物等が挙げられる。これらイソシアネート系化合物はより高度に反応が可能で表面機能層との密着性を向上できるという観点において、複数個のイソシアネート基を有する化合物、すなわちポリイソシアネート化合物を用いて活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物とすることがより好ましい。
脂肪族系ポリイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物、リジントリイソシアネート、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)2−イソシアナトグルタレート、あるいはこれらイソシアネート化合物から誘導される化合物等を挙げることができる。その中でも工業的入手のしやすさからヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
脂環族系ポリイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート(、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、あるいはこれらイソシアネート化合物から誘導される化合物等を挙げることができる。その中でも、耐候性、工業的入手の容易さから、イソホロンジイソシアネートが好ましい。
芳香族系ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、あるいはこれらイソシアネート化合物から誘導される化合物等を挙げることができる。
これらのポリイソシアネート系化合物の中でも、脂肪族系ポリイソシアネート化合物および脂環族系ポリイソシアネート化合物が耐候性に優れるため、好ましい。さらに、脂肪族系ポリイソシアネート化合物の中では、脂肪族系ジイソシアネートから誘導される脂肪族系ポリイソシアネート化合物が好ましい。その中でも、特にヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。また、これらイソシアネート系化合物は、単独で使用してもいいし、2種以上を併用しても構わない。
本発明のフィルムにおける活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート系化合物のイソシアネート基を、活性メチレン系ブロック剤と反応させて合成することができる。
活性メチレン系ブロック剤としては、例えば、イソブタノイル酢酸エステル、n−プロパノイル酢酸エステル、n−ブタノイル酢酸エステル、n−ペンタノイル酢酸エステル、n−ヘキサノイル酢酸エステル、2−エチルヘプタノイル酢酸エステル、マロン酸エステル、アセト酢酸エステル、アセチルアセトン等を挙げることができる。その中でも、低温硬化性および水存在下の貯蔵安定性に優れるという点で、イソブタノイル酢酸エステル、n−プロパノイル酢酸エステル、n−ブタノイル酢酸エステル、n−ペンタノイル酢酸エステル、n−ヘキサノイル酢酸エステル、2−エチルヘプタノイル酢酸エステルが好ましく、より好ましくは、イソブタノイル酢酸エステル、n−プロパノイル酢酸エステル、n−ペンタノイル酢酸エステルであり、さらに好ましくは、イソブタノイル酢酸エステルである。より具体的には、イソブタノイル酢酸エステルとしては、例えば、イソブタノイル酢酸メチル、イソブタノイル酢酸エチル、イソブタノイル酢酸n−プロピル、イソブタノイル酢酸イソプロピル、イソブタノイル酢酸n−ブチル、イソブタノイル酢酸イソブチル、イソブタノイル酢酸t−ブチル、イソブタノイル酢酸n−ペンチル、イソブタノイル酢酸n−ヘキシル、イソブタノイル酢酸2−エチルヘキシル、イソブタノイル酢酸フェニル、イソブタノイル酢酸ベンジル等が挙げられる。その中でも、イソブタノイル酢酸メチル、イソブタノイル酢酸エチルが好ましい。n−プロパノイル酢酸エステルとしては、例えば、n−プロパノイル酢酸メチル、n−プロパノイル酢酸エチル、n−プロパノイル酢酸イソプロピル、n−プロパノイル酢酸n−ブチル、n−プロパノイル酢酸t−ブチル等が挙げられる。その中でも、n−プロパノイル酢酸メチル、n−プロパノイル酢酸エチルが好ましい。n−ペンタノイル酢酸エステルとしては、例えば、n−ペンタノイル酢酸メチル、n−ペンタノイル酢酸エチル、n−ペンタノイル酢酸イソプロピル、n−ペンタノイル酢酸n−ブチル、n−ペンタノイル酢酸t−ブチル等が挙げられる。その中でも、n−ペンタノイル酢酸メチル、n−ペンタノイル酢酸エチルが好ましい。
本発明のフィルムで用いる活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物においては、上記に示した活性メチレン系ブロック剤を単独で用いることもできるし、2種以上を併用して使用することもできる。併用する活性メチレン系ブロック剤としては、低温硬化性に優れるという点で、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチルが好ましい。
また、活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物は、既存のブロック剤、例えば、オキシム系、ピラゾール系、アルコール系、アルキルフェノール系、フェノール系、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾール系、尿素系、アミン系、イミン系、重亜硫酸塩ブロック剤等をブロック化反応時に併用して使用することもできる。併用する既存のブロック剤は、単独あるいは2種以上使用してもよい。
オキシム系ブロック剤としては、例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等が挙げられる。ピラゾール系ブロック剤としては、例えば、ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール等が挙げられる。アルコール系ブロック剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等が挙げられる。アルキルフェノール系ブロック剤としては、例えば、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、sec−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、n−ヘキシルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類、ジ−n−プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ−n−ブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール、ジ−sec−ブチルフェノール、ジ−n−オクチルフェノール、ジ−2−エチルヘキシルフェノール、ジ−n−ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類等が挙げられる。フェノール系ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等が挙げられる。メルカプタン系ブロック剤としては、例えば、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等が挙げられる。酸アミド系ブロック剤としては、例えば、アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等が挙げられる。酸イミド系ブロック剤としては、例えば、コハク酸イミド、マレイン酸イミド等が挙げられる。イミダゾール系ブロック剤としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール等が挙げられる。尿素系ブロック剤としては、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等が挙げられる。アミン系ブロック剤としては、例えば、ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジーn−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン等が挙げられる。イミン系ブロック剤としては、例えば、エチレンイミン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
本発明のフィルムで用いる活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物は、水系塗料における配合性を高めるため、親水性部位を含有することが好ましく、ブロックポリイソシアネート化合物に親水部位を付加する方法としては、例えば、前駆体であるポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と活性水素を有する親水性化合物を反応させる方法が挙げられる。
本発明のフィルムで用いる活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物に使用される活性水素を有する親水性化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール系化合物、カルボン酸含有化合物、スルホン酸含有化合物、アミン含有化合物等が挙げられる。これらの親水性化合物は、単独で用いてもいいし、2種以上を併用して用いてもよい。
ポリエチレングリコール系化合物としては、例えば、モノアルコキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンコポリマージオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンブロックポリマージオール等が挙げられ、その中でも、特にモノメトキシポリエチレングリコール、モノエトキシポリエチレングリコール等のモノアルコキシポリエチレングリコールが好ましい。
カルボン酸基含有化合物としては、モノヒドロキシカルボン酸あるいはジヒドロキシカルボン酸あるいはそれらの誘導体等が挙げられる。カルボン酸基含有化合物の中では、モノヒドロキシカルボン酸あるいはジヒドロキシカルボン酸が好ましく、さらに好ましくは、モノヒドロキシカルボン酸である。
カルボン酸含有化合物の具体例としては、例えば、ヒドロキシピバリン酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸あるいは、これらを開始剤としたポリカプロラクトンジオールやポリエーテルポリオール等の誘導体、およびそれらの塩が挙げられる。
スルホン酸基含有化合物としては、アミノエチルスルホン酸、エチレンジアミノ−プロピル−β−エチルスルホン酸、1,3−プロピレンジアミン−β−エチルスルホン酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、およびそれらの塩が挙げられる。
アミン含有化合物としては、水酸基含有アミノ化合物が挙げられる。具体的には、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等が挙げられる。
なお、本発明に用いる活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物は、乾燥過程や、製膜過程において、反応させて塗布層の性能を向上させる設計で用いている。できあがった塗布層中には、これら架橋剤の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
本発明における積層ポリエステルフィルムにおいて、塗布面上に光拡散層とスティッキング防止層等の表面機能層が積層されたときの密着性の向上や干渉ムラの低減、透明性の向上、塗布外観を良化させる等のために、各種ポリマーを併用することも可能である。
ポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル(ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。これらの中でも、光拡散層とスティッキング防止層等の表面機能層との密着性向上の観点から、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂がより好適に使用される。
さらに塗布層の形成には本発明の主旨を損なわない範囲において、活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物以外の架橋剤を併用することも可能である。活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物以外の架橋剤としては、種々公知の架橋剤が使用できるが、例えば、活性メチレンを使用しないイソシアネート系化合物、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド系化合物、シランカップリング化合物等が挙げられる。この中でも特に、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド系化合物は、活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物と併用することで、密着性が向上する場合があり、より好ましい形態となる場合がある。また、メラミン化合物は屈折率が高く、塗布層の屈折率調整としても有用な化合物である。
なお、これら架橋剤は、乾燥過程や、製膜過程において、反応させて塗布層の性能を向上させる設計で用いている。できあがった塗布層中には、これら架橋剤の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
また、塗布層の形成には、ブロッキング、滑り性改良を目的として粒子を併用することも可能である。その平均粒子径はフィルムの透明性の観点から1μm以下の範囲であり、好ましくは0.7μm以下、さらに好ましくは0.2μm以下の範囲である。また、固着性および滑り性の観点から、平均粒子径は好ましくは0.01μm以上の範囲、より好ましくは0.03μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上の範囲である。粒子としては、具体例としてはシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、有機粒子等が挙げられ、その中でもシリカが特に好ましい。
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、塗布層の形成には必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等を併用してもよい。
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層の形成に用いられうる縮合多環式芳香族を有する化合物は、その化合物中で縮合多環式芳香族の占める割合は、好ましくは5〜80重量%の範囲であり、より好ましくは10〜60重量%の範囲である。また、塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、縮合多環式芳香族を有する化合物の含有量は、通常は5〜80重量%の範囲、より好ましくは15〜60重量%の範囲、さらに好ましくは25〜50重量%の範囲である。これらの範囲で使用することにより、塗布層の屈折率の調整が容易となり、光拡散層やスティッキング防止層等の表面機能層を形成後の干渉ムラの軽減がしやすくなる。なお、縮合多環式芳香族の割合は、例えば、適当な溶剤または温水で塗布層を溶解抽出し、クロマトグラフィーで分取し、NMRやIRで構造を解析、さらに熱分解GC−MS(ガスクロマトグラフィー質量分析)や光学的な分析等で解析することにより求めることができる。
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、アクリル樹脂は、通常5〜80重量%の範囲、好ましくは10〜70重量%の範囲、さらに好ましくは15〜50重量%の範囲である。上記範囲を外れる場合は、光拡散層やスティッキング防止層等の表面機能層との密着性が低下する可能性が懸念される場合、光拡散層やスティッキング防止層等の表面機能層形成後の干渉ムラにより、視認性が良くない場合がある。
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物は、通常1〜80重量%の範囲、好ましくは5〜60重量%の範囲、より好ましくは10〜45重量%の範囲である。これらの範囲より外れる場合は、ハードコート層等の表面機能層との密着性が低下する可能性が懸念される場合や、塗布外観が悪化する場合がある。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、上述した塗布層を設けた面と反対側の面にも塗布層を設けることも可能である。例えば、光拡散層とスティッキング防止層等の表面機能層を形成する反対側にマイクロレンズ層、プリズム層、スティッキング防止層、光拡散層、ハードコート等の機能層を形成する場合に、当該機能層との密着性を向上させることが可能である。反対側の面に形成する塗布層の成分としては、従来公知のものを使用することができる。例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等のバインダーポリマー、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物等の架橋剤等が挙げられ、これらの材料を単独で用いてもよいし、複数種を併用して用いてもよい。また、上述してきたような縮合多環式芳香族を有する化合物、アクリル樹脂、および活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物を含有する塗布液から形成された塗布層(ポリエステルフィルムに両面同一の塗布層)であってもよい。
塗布層中の成分の分析は、例えば、TOF−SIMS、ESCA、蛍光X線等の表面分析によって行うことができる。
インラインコーティングによって塗布層を設ける場合は、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度が0.1〜50重量%程度を目安に調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて積層ポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
本発明における積層ポリエステルフィルムに関して、ポリエステルフィルム上に設けられる塗布層の膜厚は、通常0.04〜0.20μm、好ましくは0.07〜0.15μmの範囲である。膜厚が上記範囲より外れる場合は、表面機能層を形成後の干渉ムラにより、視認性が悪化する場合がある。
本発明の塗布層を形成する方法としては、例えば、グラビアコート、リバースロールコート、ダイコート、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、カーテンコート、ナイフコート、トランスファロールコート、スクイズコート、含浸コート、キスコート、スプレーコート、カレンダコート、押出コート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
本発明において、ポリエステルフィルム上に塗布層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、オフラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、80〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
一方、インラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、70〜280℃で3〜200秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
本発明における塗布層は干渉ムラの発生を抑制するために、屈折率の調整がされたものであり、その屈折率は基材のポリエステルフィルムと拡散層あるいはスティッキング防止層等の表面機能層の相乗平均付近に設計したものである。塗布層の屈折率と塗布層の反射率は密接な関係がある。本発明の範囲内における膜厚において、横軸に波長、縦軸に反射率を示すグラフを描き、反射率の極小値が波長400〜800nmの範囲に1つ現れる場合が好ましく、その極小値が同じ波長に現れるならば、極小値の反射率は、屈折率が高い場合は高い値となり、屈折率が低い場合は低い値となる。また、本発明においては、塗布層の材料設計が全く同じであっても極小値の波長範囲によって、極小値の反射率は異なる。具体的には、極小値の波長範囲が短波長領域に存在する場合と長波長領域に存在する場合を比較すると、長波長領域に存在する場合の方が反射率は低い値を示す。
本発明において良好な反射率とは、絶対反射率において、波長400nm以上550nm未満の範囲に極小値が存在する場合、その極小値の値が、好ましくは3.0〜4.5%、より好ましくは3.3〜4.0%、さらに好ましくは3.4〜3.9%の範囲であり、波長550nm以上750nm以下の範囲に極小値が存在する場合は、その極小値の値が、好ましくは2.8〜4.3%、より好ましくは3.1〜3.8%、さらに好ましくは3.2〜3.7%の範囲である。波長400nm以上750nm以下の間に極小値が無い場合、また、極小値の絶対反射率が上記の値を外れる場合は、光拡散層やスティッキング防止層等の表面機能層を形成後に干渉ムラが発生し、フィルムの視認性が低下する場合がある。
本発明の積層ポリエステルフィルムには、塗布層上に光拡散層、スティッキング防止層等の表面機能層を設けるものが一般的である。光拡散層は粒子とバインダーを含有してなるものである。
光拡散層に含有させる粒子としては、光を拡散するような性質を有するものであれば良く、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニル樹脂等の有機粒子や、シリカ、金属酸化物、硫酸バリウム等の無機粒子を使用することができる。中でも透明性が良好であるアクリル樹脂やアクリルウレタン樹脂が好適に用いられる。また、これら粒子の粒径は特に限定されるものではないが、平均粒径として1〜50μm、より好ましくは5〜15μmである。
光拡散層に含有させるバインダーは粒子を固定し光拡散性を発現させるために使用するものであり、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ樹脂、紫外線硬化型樹脂等が挙げられる。加工性を考慮するとポリオール化合物や紫外線硬化型樹脂等が好適に用いられ、例えば、アクリルポリオールやポリエステルポリオールあるいは各種の(メタ)アクリレートが挙げられる。特に、硬度が高くなるという観点において、熱硬化型樹脂より紫外線硬化型樹脂であることが好ましい。なお、本明細書における(メタ)アクリレートの表記は、アクリレートおよびメタクリレートを表す。
ポリオール化合物をバインダーとして用いた場合は、硬化剤としてイソシアネートを含有させると良い。イソシアネートを含有させることにより、より強固な架橋構造を形成することができ、光拡散層としての物性が向上する。また、バインダーとして紫外線硬化型樹脂を使用する場合は(メタ)アクリレート系樹脂が好ましく、光拡散層の硬度の向上に役立てることができる。
紫外線硬化性の(メタ)アクリレートは特に限定されるものでない。例えば、公知の活性エネルギー線硬化性の単官能(メタ)アクリレート、二官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートを一種類以上混合したもの、紫外線硬化性ハードコート用樹脂材として市販されているもの、あるいはこれら以外に本実施形態の目的を損なわない範囲において、その他の成分をさらに添加したものを用いることができる。
紫外線硬化性の単官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えばメチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、ジアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリール(メタ)アクリレート、フェニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート等のエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
紫外線硬化性の二官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ) アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール変性ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
紫外線硬化性の多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えばジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等のウレタンアクリレート等が挙げられる。
これら(メタ)アクリレートの中でも、高度な架橋構造を有する表面機能層を形成することができ、それゆえに硬度が高く傷が付きにくい等のメリットがあることから、より官能基数が多い材料を使用することが理想的で、二官能以上の(メタ)アクリレートが好ましく、また四官能以上の(メタ)アクリレートがより好ましい。
なお、上述の化合物は単独で用いても良いし、2種類以上併用しても良い。
紫外線硬化性の(メタ)アクリレートを含む組成物に含まれるその他の成分は特に限定されるものではない。例えば、無機又は有機の微粒子、重合開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤及びレベリング剤等が挙げられる。また、ウェットコーティング法において成膜後乾燥させる場合には、任意の量の溶媒を添加することができる。
光拡散層には光拡散の性能を阻害しない範囲内で、界面活性剤、微小無機充填剤、可塑剤、硬化剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、防錆剤等を含有していても良い。
光拡散層におけるバインダーと粒子の混合割合は、得ようとする光拡散性により適宜設定することができ、特に限定されないが、例えば、重量比で、バインダー/粒子が0.1〜50の範囲、より好ましくは0.5〜20の範囲である。
光拡散層を形成する方法としては、バインダーと粒子を含む塗布液を調製し、塗布・乾燥させることによる方法が挙げられる。塗布方法としては、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート、スプレーコート、スピンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。光拡散層の厚みは、特に限定されるものではないが、光拡散性、膜強度等を考慮して、1〜100μmの範囲、より好ましくは3〜30μmの範囲である。
光拡散層とは反対側の面にはスティッキング防止層が形成されることが好ましい。スティッキング防止層は光拡散層と同様な化合物と粒子を含有するもので、粒子の含有量は、光拡散性が目的ではないため、より小さい粒径で、より少ない量を含有させる方法が一般的である。形成方法も光拡散層と同様に塗布により形成でき、厚みは、特に限定されるものではないが、1〜10μmの範囲であることが好ましい。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
(1)ポリエステルの固有粘度の測定方法
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)平均粒径の測定方法
TEM(Hitachi製 H−7650、加速電圧100V)を使用して塗布層を観察し、粒子10個の粒径の平均値を平均粒径とした。
(3)塗布層の膜厚測定方法
塗布層の表面をRuO4で染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片をRuO4で染色し、塗布層断面をTEM(Hitachi製 H−7650、加速電圧100V)を用いて測定した。
(4)ポリエステルフィルムにおける塗布層表面からの絶対反射率の評価方法
ポリエステルフィルムの片面側の絶対反射率を測定するため、裏面からの反射を抑える目的で、あらかじめ、ポリエステルフィルムの測定裏面に黒テープ(ニチバン株式会社製ビニールテープVT―50)を貼り、分光光度計(日本分光株式会社製 紫外可視分光光度計 V−570 および自動絶対反射率測定装置 ARM−500N)を使用して同期モード、入射角5°、N偏光、レスポンス Fast、データ取区間隔1.0nm、バンド幅10nm、走査速度1000m/minで塗布層面を波長範囲400〜800nmの絶対反射率を測定し、その極小値における波長(ボトム波長)と反射率を評価した。
(5)干渉ムラの評価方法
光拡散層用塗布液として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート60重量部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート20重量部、光重合開始剤(商品名:イルガキュア184、チバスペシャルティケミカル製)5重量部、平均粒径15μmのアクリル樹脂粒子(積水化成品工業製 MBX−15)20部、メチルエチルケトン200重量部の混合塗液を乾燥膜厚が5μmになるように塗布し、紫外線を照射して硬化させ光拡散層を形成した。また、光拡散層とは反対面側にスティッキング防止層として、上記光拡散層用塗布液に用いた平均粒径15μmのアクリル樹脂粒子を、平均粒径5μmのアクリル樹脂粒子(積水化成品工業製 MBX−5)7部に変えて、厚さ3g/m2の層を形成した以外は同様な方法で、両面加工品を作成した。得られたフィルムに対して、光拡散層側に黒テープ(ニチバン株式会社製ビニールテープVT―50)を貼り付け、スティッキング防止層側から3波長光域型蛍光灯下で目視にて、干渉ムラを観察し、干渉ムラが確認できないものを◎、色が不明瞭な干渉ムラが確認されるものを○、色を判別できる干渉ムラが確認されるものを△、色を判別できる強い干渉ムラが確認され、白色蛍光灯下においても干渉ムラ確認されるものを×として評価した。通常の光拡散層の場合は、上記の光拡散層と同様に光拡散性が高いため、ほとんど干渉ムラは観察されない。ところが、光拡散性が低い光拡散層の場合は、干渉ムラが観察される可能性があるため、塗布層の屈折率調製がより重要となる。一方、スティッキング防止層は、光拡散層と同様、粒子とバインダーにより形成されているが、光拡散層に比べて、粒子の配合量が少なく、かつ膜厚が薄いのが一般的である。そのため、光拡散性が低くなり、干渉ムラが観察される場合があるので、塗布層の屈折率調製が非常に重要となる。
(6)密着性の評価方法
干渉ムラの評価方法と同様な方法により、積層ポリエステルフィルムの片面に光拡散層、他方面にスティッキング防止層を形成した。得られたフィルムに対して初期(密着性1)、および恒温恒湿槽中80℃、85%RHの環境下で100時間放置(密着性2)した後、光拡散層、およびスティッキング防止層各々に対して10×10のクロスカットをして、その上に18mm幅のテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)CT−18)を貼り付け、180度の剥離角度で急激にはがした後、剥離面を観察し、より剥離面積が大きい方に対して、剥離面積が0%ならば◎、0%を超え5%以下なら○、5%を超え20%以下ならば△、20%を超えるならば×とした。通常は、スティッキング防止層の方が、表面凹凸が少ないため、剥離するテープとの接着が良いので、光拡散層に比べて剥離面積が大きくなる傾向にある。
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部、エチルアシッドフォスフェートを生成ポリエステルに対して30ppm、触媒として酢酸マグネシウム・四水和物を生成ポリエステルに対して100ppmを窒素雰囲気下、260℃でエステル化反応をさせた。引き続いて、テトラブチルチタネートを生成ポリエステルに対して50ppm添加し、2時間30分かけて280℃まで昇温すると共に、絶対圧力0.3kPaまで減圧し、さらに80分、溶融重縮合させ、極限粘度0.63のポリエステル(A)を得た。
<ポリエステル(B)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部、触媒として酢酸マグネシウム・四水和物を生成ポリエステルに対して900ppmを窒素雰囲気下、225℃でエステル化反応をさせた。引き続いて、正リン酸を生成ポリエステルに対して3500ppm、二酸化ゲルマニウムを生成ポリエステルに対して70ppm添加し、2時間30分かけて280℃まで昇温すると共に、絶対圧力0.4kPaまで減圧し、さらに85分、溶融重縮合させ、極限粘度0.64のポリエステル(B)を得た。
<ポリエステル(C)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、溶融重合前に平均粒径2μmのシリカ粒子を0.3重量部添加する以外はポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(C)を得た。
塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。
(化合物例)
縮合多環式芳香族を有するポリエステル樹脂:(IA)
下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)2,6−ナフタレンジカルボン酸/5−ナトリウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ジエチレングリコール=92/8//80/20(モル%)
縮合多環式芳香族を有するポリエステル樹脂:(IB)
下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)2,6−ナフタレンジカルボン酸/テレフタル酸/5−ナトリウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ジエチレングリコール=78/15/7//90/10(モル%)
・アクリル樹脂:(II)
下記組成で重合したアクリル樹脂の水分散体
エチルアクリレート/n−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N−メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/21/10/2/2(重量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
・活性メチレンブロックポリイソシアネート:(III)
下記方法で合成したブロックポリイソシアネート
ヘキサメチレンジイソシアネート1000部を60℃で攪拌し、触媒としてテトラメチルアンモニウム・カプリエート0.1部を加えた。4時間後、リン酸0.2部を添加して反応を停止させ、イソシアヌレート型ポリイソシアネート組成物を得た。得られたイソシアヌレート型ポリイソシアネート組成物100部、数平均分子量400のメトキシポリエチレングリコール42.3部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート29.5部を仕込み、80℃で7時間保持した。その後反応液温度を60℃に保持し、イソブタノイル酢酸メチル35.8部、マロン酸ジエチル32.2部、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液0.88部を添加し、4時間保持した。n−ブタノール58.9部を添加し、反応液温度80℃で2時間保持し、その後、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート0.86部を添加して得られたブロックポリイソシアネート。
・ ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(IVA)
・ ヘキサメトキシメチロールメラミン(IVB)
・粒子:平均粒子径0.07μmのシリカ粒子(V)
実施例1:
ポリエステル(A)、(B)、(C)をそれぞれ91%、3%、6%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ97%、3%の割合で混合した混合原料を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1:18:1の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムの両面に、下記表1に示す塗布液1を塗布し、テンターに導き、横方向に120℃で4.0倍延伸し、225℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、塗布層の膜厚(乾燥後)が0.08μmの塗布層を有する厚さ125μmのポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムを評価したところ、塗布層の絶対反射率の極小値におけるボトム波長は530nmであり、その反射率は3.6%であり、光拡散層とスティッキング防止層等の表面機能層を形成後のフィルムには干渉ムラはなく、また密着性も良好であった。このフィルムの特性を下記表2に示す。
実施例2〜10:
実施例1において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムは表2に示すとおり、干渉ムラレベルも良好で、密着性も良好なものであった。
比較例1〜6:
実施例1において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がった積層ポリエステルフィルムを評価したところ、表2に示すとおり、明瞭な干渉ムラが観察できる場合や密着性が良くない場合が見られた。