以下、本発明の光導波路および電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<光導波路>
まず、本発明の光導波路の実施形態について説明する。
図1は、本発明の光導波路の実施形態のコア層を示す平面図、図2は、本発明の光導波路の実施形態のうちの一部を示す斜視図、図3は、図2に示す光導波路の幅方向におけるモノマーの濃度分布cと屈折率分布nとを示す図である。
図2に示す光導波路1は、帯状をなし、光信号を伝送し得る部材であり、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12が下方からこの順で積層されてなるものである。
また、コア層13は、図1に示すように、平面視において並列に設けられた4本のコア部14と、各コア部14にそれぞれ隣接して併設され(すなわち、コア層13においてコア部14同士の隙間を埋めるように設けられ)、コア部14より屈折率の低い側面クラッド部15と、を有している。
以下、光導波路1の各部の構成について順次詳述する。
(コア層)
コア層13には、図1に示すように、4本のコア部14およびそれらに併設された側面クラッド部15が形成されている。これにより、各コア部14は、それぞれクラッド部(側面クラッド部15および各クラッド層11、12)で囲まれることとなる。その結果、各コア部14には信号光が閉じ込められ、その信号光を伝搬することができる。
後に詳述するが、コア層13は、ポリマーと、ポリマーより屈折率が低いモノマーと、を含むコア層形成層に対して部分的に活性放射線を照射することにより、照射領域に向かって非照射領域からモノマーが移動し、これにより照射領域と非照射領域との間に生じる屈折率差に基づいて形成されている。すなわち、活性放射線の照射により、コア層形成層の照射領域の屈折率は、非照射領域に対して低くなり、コア層形成層中に屈折率差が形成される。すなわち、コア部14と側面クラッド部15とが形成されることにより、コア層13が得られる。換言すれば、コア層13中には、ポリマー中に分散したモノマーまたはその重合物の濃度差(図3に示すモノマーの濃度分布c)に起因して屈折率分布が形成されており、コア部14および側面クラッド部15は、その屈折率分布に基づいて形作られる。したがって、コア層13の構造は実質的に一体構造であるといえる。
このようなコア層13は機械的強度に優れたものとなり、例えばコア部14と側面クラッド部15とが個別に形成された構造になっている場合に比べて、コア部14と側面クラッド部15との界面において剥離等が生じる可能性を低く抑えることができる。その結果、光導波路1は、例えばロールツウロール工程のような大量生産に適したプロセスが適用可能となり、生産性の高いものとなる。
さらには、ポリマー中に分散したモノマーまたはその反応物の濃度は、コア層13中において連続的に(徐々に)変化しているため、この点からもコア層13の構造の一体性がより高くなっている。このため、コア層13では曲げ剛性等の機械的特性の均一化が図られており、例えば光導波路1を湾曲操作したとき、均等な曲率半径での湾曲が可能である等、光導波路1は取り扱い性が良好なものとなる。加えて、湾曲操作における耐屈曲性、すなわち急激に折れ曲がる等して復元不能になり難い特性に優れた光導波路1が得られる。
上述したようなモノマーの移動に伴って屈折率分布が形成されるという製造履歴を経ているため、屈折率分布の最適化にあたっては、モノマーの移動をいかに制御するかが重要である。その一方、形成しようとするコア部14の形状によっては、モノマーの移動が不適切になり、コア層13において最適な屈折率分布を形成することができない場合も想定される。特に、コア部14同士の間隔を狭めて高密度化を図ろうとした場合、屈折率分布が不適切な形状になると、伝送効率が低下したりコア部14同士の間で混信が発生したりするおそれがある。
そこで、本発明者は、コア層13において最適な屈折率分布を形成し、これにより伝送効率を特に高め得る構成について鋭意検討を重ねた。そして、このような製造履歴を経て得られるコア層13においては、コア部14の形状、具体的にはコア部14の幅と隣り合うコア部14の間隔が屈折率分布を大きく左右する因子になり得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明では、コア層13を平面視したときのコア部14の幅をL[μm]とし、隣り合うコア部14の間隔をS[μm]としたとき、L/Sが0.15〜4となるようコア層13を構成する。このようなコア層13では、モノマーの移動量が最適化されるため、コア層13において最適な屈折率分布が形成される。最適化の具体例としては、コア部14と側面クラッド部15との間の屈折率差を特に大きくすることが挙げられる。このようにしてコア層13の屈折率分布を最適化することにより、コア部14において十分な光量の信号光を伝送することができる。L/Sが前記範囲内であれば、コア部14を極めて高密度に配置することができる。このため、信号の混信や伝送効率の低下が抑制されたコア部14が、より多く形成された多チャンネルのコア層13が得られる。その結果、高速、大容量で、かつ高品質な光通信を行い得る光導波路1が得られる。
また、L/Sは、好ましくは0.2〜3程度とされ、より好ましくは0.25〜1.5程度とされる。
なお、L/Sが前記下限値を下回ると、光導波路1におけるコア部14の配設密度が低下し、光導波路1において多チャンネル化や高速化が困難になったり、あるいは、コア部14の幅が著しく狭くなるため、伝送効率が低下したりすることが考えられる。また、側面クラッド部15の幅に対してコア部14の割合が小さ過ぎるため、コア層13の製造段階において、側面クラッド部15に対応する照射領域の面積が相対的に極めて大きくなる。このため、多量のモノマーが移動することとなり、飽和して移動し切れなくなったモノマーによって屈折率分布が目的の形状から逸脱する。その結果、コア層13に形成される屈折率分布が不適切な形状となって、伝送効率が低下したり、信号の混信を招いたりすることとなる。一方、L/Sが前記上限値を上回ると、側面クラッド部15の幅に対してコア部14の割合が大き過ぎるため、コア層13の製造段階において、側面クラッド部15に対応する照射領域の面積が相対的に極めて小さくなる。このため、十分な量のモノマーを移動させることができなくなって、モノマーの移動に伴う屈折率差の形成が不十分になるため、やはり屈折率分布が目的の形状から逸脱してしまう。その結果、コア層13に形成される屈折率分布が不適切な形状となり、伝送効率が低下したり、信号の混信を招いたりすることとなる。
また、隣り合うコア部14の間隔Sは、好ましくは10〜250μmとされ、より好ましくは20〜180μmとされる。隣り合うコア部14の間隔Sを前記範囲内に設定することにより、コア部14が極めて高密度に配設された光導波路1が得られる。このような光導波路1は、小さなサイズのものであっても、多くの情報を伝送し得るものとなる。このため、光導波路1の小型化や多チャンネル化をより一層図ることができる。
一方、コア部14の高さH(コア層13の厚さ)は、特に限定されないが、10〜200μm程度であるのが好ましく、15〜150μm程度であるのがより好ましい。活性放射線はコア層13の厚さ方向に減衰し(酸発生剤に吸収され)つつ伝搬するため、高さHが大きいとコア層の上下方向に露光量ばらつきが発生し、面内の屈折率分布形状の最適化が困難になるおそれがある。そのため、コア部14の高さを前記範囲内に設定することにより、光導波路1の伝送効率の低下を抑えつつコア部14の高密度化を図ることができる。その結果、光導波路1の伝送容量の増大を図ることができる。
なお、隣り合うコア部14の間隔Sおよびコア部14の高さHは、H/Sが0.1〜10という関係を満足するよう設定されるのが好ましく、0.5〜2という関係を満足するよう設定されるのがより好ましい。H/Sが前記関係を満足することにより、屈折率分布の最適化にあたって、モノマーの移動をより適切に制御することができる。すなわち、コア層形成層に活性放射線を照射する際の照射領域の大きさ、すなわち移動するモノマーの量に関わる要素である間隔Sと、コア層形成層に活性放射線を照射する際の照射領域の深さ、すなわちモノマーの面内移動のばらつきに関わる要素である高さHと、が所定の範囲内に収まっていることで、コア層形成層において適切なモノマーの移動が生起され、結果的に形成される屈折率分布の形状を最適化することができると考えられる。
したがって、H/Sが前記下限値未満である場合には、高さHおよび間隔Sの絶対値にもよるが、モノマーが移動し難くなると考えられるため、十分な屈折率差が形成されず、屈折率分布の最適化が困難になるおそれがある。一方、H/Sが前記上限値を上回る場合には、高さHおよび間隔Sの絶対値にもよるが、コア層形成層における活性放射線の照射領域が小さくなり、十分な量のモノマーを移動させることができず、やはり屈折率分布の最適化が困難になるおそれがある。
一方、コア部14の幅Lおよびコア部14の高さHは、L/Hが0.3〜3という関係を満足するよう設定されるのが好ましく、0.5〜2という関係を満足するよう設定されるのがより好ましい。L/Hが前記関係を満足することにより、H/Sの場合と同様、屈折率分布の最適化にあたって、モノマーの移動をより適切に制御することができる。すなわち、コア層形成層に活性放射線を照射する際の非照射領域の大きさ、すなわちモノマーの移動先の受け入れ許容量に関わる要素である幅Lと、モノマーの面内移動のばらつきに関わる要素である高さHと、が所定の範囲内に収まっていることで、コア層形成層において適切なモノマーの移動が生起され、結果的に形成される屈折率分布の形状を最適化することができると考えられる。
したがって、L/Hが前記下限値未満である場合には、幅Lおよび高さHの絶対値にもよるが、モノマーの移動先の受け入れ許容量が小さくなるため、移動したモノマーがすぐに飽和状態となり、移動し切れなかったモノマーによって屈折率分布が目的の形状から逸脱し、屈折率分布の最適化が困難になるおそれがある。一方、L/Hが前記上限値を上回る場合には、幅Lおよび高さHの絶対値にもよるが、モノマーが移動し難くなると考えられるため、十分な屈折率差が形成されず、屈折率分布の最適化が困難になるおそれがある。
なお、コア部14の幅L、隣り合うコア部14の間隔Sおよびコア部14の高さHは、それぞれ社団法人 日本電子回路工業会によるJPCA規格「光導波路を用いた光配線板の寸法測定方法(JPCA−PE02−05−02S)」に記載された方法のうち、NFP法(JIS C 6822準拠)により測定される。
また、コア部14の屈折率の最大値をnA、側面クラッド部15の屈折率の最小値をnBとしたとき、光導波路1は(nA 2−nB 2)1/2が0.12以上という条件を満足する。このような光導波路1は、開口数NAが十分に大きいものとなるため、他の光学部品との接続に際して互いの位置ずれに対する許容性が大きいものとなる。また、(nA 2−nB 2)1/2は、好ましくは0.4以下とされる。(nA 2−nB 2)1/2が前記下限値を下回ると、開口数NAが小さくなるため、他の光学部品との接続に際して互いの位置ずれに対する許容性が小さくなる。一方、(nA 2−nB 2)1/2が前記上限値を上回ると、コア部14の幅Lや隣り合うコア部14の間隔Sによっては、開口数NAが大きくなり過ぎるため、光結合損失が大きくなるおそれがある。
なお、(nA 2−nB 2)1/2は、より好ましくは0.15〜0.35程度とされ、さらに好ましくは0.18〜0.3程度とされる。
以上のように、本発明者は、ポリマー中においてモノマーを移動させて屈折率差を形成するプロセスを経て製造された光導波路であって、このコア部14の幅Lと間隔SについてL/Sが所定の条件を満足するとともに、(nA 2−nB 2)1/2が所定の条件を満足するよう構成することによって、伝送効率および他の光学部品との光結合効率が高く、多チャンネル化および高密度化が容易な光導波路1が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。このような光導波路1は、多チャンネル化および高密度化が可能である上に、伝送効率および他の光学部品との光結合効率が高いものとなるため、大容量の信号を高速で送受信可能なものとなる。
また、後に詳述するが、光導波路1のコア部14の幅方向における屈折率分布は、モノマーが移動することによって形成されるモノマーの濃度勾配に基づくものであるため、屈折率が連続的に変化したいわゆるグレーデッドインデックス(GI)型の分布になっている。GI型の分布であれば、屈折率の高い領域に信号光が集まった状態で伝搬する確率が高くなるため、伝送効率が高くなる。
具体的には、コア部14の幅方向における屈折率分布nは、側面クラッド部15の屈折率よりも高い分布であれば特に限定されないが、図3に示すように、コア部14の幅の中心部から縁部に向かって屈折率が徐々に低下する分布を含んでいるのが好ましい。このような光導波路1では、伝搬する光をコア部14の中心部に閉じ込める作用が強いため、伝送効率が高くなるとともに、光をコア部14に入射するときの光結合効率やコア部14から出射した光を他の光学部品に入射させる際の光結合効率を高めることができる。したがって、光導波路1は伝送効率および他の光学部品との光結合効率が高いものとなる。
なお、上述したように、コア部14の幅方向における屈折率分布nは、モノマーまたはその重合物の濃度が徐々に変化している濃度分布cに基づいて形成されている。したがって、コア部14では、図3に示すように、その幅の中心部から縁部に向かってモノマーまたはその重合物の濃度が徐々に変化している。このような濃度分布cは、後に詳述するが、ポリマー中においてモノマーが拡散移動したことにより形成されたものであるため、その濃度分布cは自ずと連続的な濃度変化を伴うものとなる。このため、前述したようなコア層13の構造の一体性や機械的特性の均一性等がより高くなる。
一方、側面クラッド部15の幅方向における屈折率分布nは、コア部14の屈折率よりも低い分布であれば特に限定されないが、図3に示すように、側面クラッド部15の幅の中心部から縁部に向かって屈折率が徐々に低下する分布を含んでいるのが好ましい。このような光導波路1では、側面クラッド部15の幅の中心部がわずかな光伝送性を有することとなるため、コア部14から側面クラッド部15へと漏れ出た光を側面クラッド部15の中心部に閉じ込めることができる。これにより、コア部14から漏れ出た光が他のコア部14へ波及し混信するクロストークを抑制することができる。
なお、コア部14は、平面視で直線状であっても曲線状であってもよい。また、コア部14は、途中で交差していたり、分岐していたりしていてもよい。
また、コア部14の横断面形状は特に限定されず、例えば、真円、楕円形、長円形等の円形、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形であってもよいが、四角形(矩形状)であることにより、コア部14を形成し易い利点がある。
上述したようなコア層13の構成材料(主材料)は、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料等を用いることができる。なお、樹脂材料は、異なる組成のものを組み合わせた複合材料であってもよい。
また、これらの中でも特に(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、およびポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、(メタ)アクリル系樹脂またはエポキシ系樹脂がより好ましい。これらの樹脂材料は、光の透過性が高いことから、特に伝送損失の小さい光導波路1が得られる。
(クラッド層)
一方、クラッド層11、12は、コア層13の下部および上部に位置する。
クラッド層11、12の平均厚さは、コア層13の平均厚さの0.05〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.1〜1.25倍程度であるのがより好ましい。具体的には、クラッド層11、12の平均厚さは、それぞれ1〜200μm程度であるのが好ましく、3〜100μm程度であるのがより好ましく、5〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路1が必要以上に厚膜化するのを防止しつつ、クラッド部としての機能が確保される。
また、クラッド層11、12の構成材料としては、例えば、前述したコア層13の構成材料と同様の材料を用いることができるが、特に(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、およびポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましく、(メタ)アクリル系樹脂またはエポキシ系樹脂がより好ましい。
また、光導波路1の横断面の厚さ方向の屈折率分布についても、特に限定されず、例えばSI型、GI型の分布が挙げられる。
光導波路1中に形成されるコア部14の数は、特に限定されないが、2〜100本程度であるのが好ましく、2〜50本程度であるのがより好ましい。なお、コア部14の数が多い場合は、必要に応じて、光導波路1を多層化してもよい。具体的には、図2に示す光導波路1の上に、さらにコア層とクラッド層とを交互に重ねることにより多層化することができる。
また、必要に応じて、光導波路1の下面には支持フィルムが、上面にはカバーフィルムが、それぞれ必要に応じて設けられていてもよい。
支持フィルムおよびカバーフィルムの構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料が挙げられる。
また、支持フィルムおよびカバーフィルムの平均厚さは、特に限定されないが、5〜500μm程度であるのが好ましく、10〜400μm程度であるのがより好ましい。これにより、支持フィルムおよびカバーフィルムは、適度な剛性を有するものとなるため、光導波路1を確実に支持するとともに、外力や外部環境から光導波路1を確実に保護することができる。
<光導波路の製造方法>
次に、上述した第1実施形態に係る光導波路1を製造する方法の一例について説明する。
光導波路1は、クラッド層11を形成するための組成物、コア層13を形成するための組成物、およびクラッド層12を形成するための組成物を、順次成膜して製造する方法、各組成物を用いてクラッド層11、コア層13およびクラッド層12をそれぞれ形成した後、積層する方法、3種の組成物を同時に押出成形して積層体を製造する方法等により製造されるが、以下の説明では、積層する方法について説明する。
図4は、図2に示す光導波路1の製造方法を説明するための図である。なお、以下の説明では、図4中の上側を「上」、下側を「下」という。また、図4(d)には、光導波路1の幅方向におけるモノマーの濃度分布cと屈折率分布nとを示す図を併せて示している。
光導波路1の製造方法では、[1]基板30上にコア層形成層3を得る工程と、[2]コア層形成層3の一部に活性放射線Rを照射してコア層13を得る工程と、[3]コア層13を介してクラッド層11およびクラッド層12を積層し、光導波路1を得る工程と、を有する。
以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、基板30上に、ポリマー21とこのポリマー21より屈折率が高いモノマー22と、を含むコア層形成層3を用意する。このコア層形成層3では、図4(a)に示すように、ポリマー21からなるマトリックス中に、モノマー22等が均一に分散している。
基板30には、例えば、シリコン基板、水晶基板、ガラス基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板、ポリイミド基板等が用いられる。
(ポリマー)
ポリマー21としては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体等として)用いることができる。
これらの中でも、ポリマー21としては、特に(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、およびポリオレフィン系樹脂からなる群から選択された少なくとも1種を主とするものが好ましい。これらの樹脂を主とするポリマー21を用いることにより、優れた伝送効率を有する光導波路1が得られる。
なお、ポリマー21としては、上述したように優れた光透過性を有し、さらに優れた耐熱性を有するものが好ましく用いられる。また、ポリマー21には、後述するモノマー22と相溶性を有するもの、さらに、その中でも後述するようにモノマー22が反応(重合反応や架橋反応)可能であり、モノマー22が反応した後においても十分な透明性を有するものが好適に用いられる。
ここで、「相溶性を有する」とは、モノマー22が少なくとも混和して、活性放射線Rを照射する時に、相分離によって放射線を反射させる等の影響を及ぼさない状態であればよい。
以下、ポリマー21についてさらに詳述する。
((アクリル系ポリマー))
(メタ)アクリル系ポリマーは、アクリル酸、アクリル酸エステルのようなアクリル酸系モノマー、メタクリル酸、メタクリル酸エステルのようなメタクリル酸系モノマー、またはこれらの誘導体(例えば、アルコキシ誘導体、カプロラクトン誘導体等)を原料モノマーとして、この原料モノマーを重合してなるポリマー(樹脂およびゴムを含む。)である。
したがって、(メタ)アクリル系ポリマーとしては、上記原料モノマーの1種を重合してなるホモポリマー、上記原料モノマーの異なる2種以上を重合してなるコポリマー、上記原料モノマーと他の原料モノマーとを重合してなるコポリマー等が挙げられる。
かかる原料モノマーとしては、例えば、単官能(メタ)アクリレート、2官能(メタ)アクリレート、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのような脂肪族(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレートのような脂環式(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレート、p−クミルフェニル(メタ)アクリレート、o−ビフェニル(メタ)アクリレート、1−ナフチル(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(o−フェニルフェノキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(1−ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(2−ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレートのような芳香族(メタ)アクリレート、2−テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N−カルバゾールのような複素環式(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレートのような脂肪族(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレートのような脂環式(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAFジ(メタ)アクリレート、フルオレン型ジ(メタ)アクリレートのような芳香族(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレートのような複素環式(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートのような脂肪族(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートのような複素環式(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、上記原料モノマーと重合させる他の原料モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル等が挙げられ、上記原料モノマーとしてアクリル酸(メタクリル酸)系モノマーを選択した場合には、これらを重合することにより、アクリルゴムが得られる。
また、上記原料モノマーとしては、例えば、MMAモノマー(クラレ製または三菱レイヨン製)、アクリレートモノマー(ダイセル・サイテック製)、ブレンマー(日油製)、アクリル酸エステルモノマー(日本触媒製)、光硬化性モノマー・オリゴマー(新中村化学工業製)等が挙げられる。
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、特に限定されないが、ポリスチレン換算において1×104〜3×105程度であることが好ましく、3×104〜2×105程度であることがより好ましい。かかる重量平均分子量の(メタ)アクリル系ポリマーを用いることにより、後述するモノマー22との相溶性が高くなるとともに、コア層13の強度や可撓性の向上を図ることができる。その結果、ポリマー21中においてモノマー22を必要かつ十分な速度と距離で移動させることができ、目的とする屈折率分布を確実に形成することができる。
また、光導波路1では、モノマー22の濃度分布によって屈折率分布を形成するだけでなく、ポリマー21の構造変化によっても屈折率分布を形成することができる。例えば、(メタ)アクリル系ポリマーを、主鎖と、後述する活性放射線Rにより主鎖から離脱する離脱性基とを有する化学構造に設計する。かかる化学構造を有する(メタ)アクリル系ポリマーにおいては、活性放射線Rの照射により、離脱性基を主鎖から離脱させることができ、その屈折率が変化する。その結果、モノマー22の濃度分布による屈折率変化と相まって、屈折率の変化量をより細かく制御することができる。
このような離脱性基としては、例えば、分子構造中に、−O−構造、−Si−アリール構造および−O−Si−構造のうちの少なくとも1つを有するものが挙げられる。かかる離脱性基は、活性放射線Rの作用によって主鎖から容易に離脱するが、カチオンの作用を利用すれば、さらに切断が促進される。
このうち、離脱により(メタ)アクリル系ポリマーの屈折率に低下を生じさせる離脱性基としては、−Si−ジフェニル構造および−O−Si−ジフェニル構造の少なくとも一方が好ましい。
また、別の離脱性基としては、例えば、末端にアセトフェノン構造を有する置換基が挙げられる。この離脱性基は、活性放射線Rの作用によって主鎖から容易に離脱するが、フリーラジカルの作用を利用すれば、さらに切断が促進される。
離脱性基の量は、特に限定されないが、(メタ)アクリル系ポリマー全質量に対して10〜80質量%であるのが好ましく、20〜60質量%であるのがより好ましい。離脱性基の量が前記範囲内であると、屈折率変調機能(屈折率差を変化させる効果)に優れた(メタ)アクリル系ポリマーとすることができるとともに、形成されるコア層13の可撓性の向上を図ることもできる。
かかる離脱性基を有する(メタ)アクリル系ポリマーは、前述した原料モノマーと、この原料モノマーに離脱性基を導入したモノマーとを重合することにより、容易に得ることができる。
さらに、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系ポリマーを用いることもできる。
この(メタ)アクリル系ポリマーを得る場合、原料モノマーには、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、α−プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、α−ブチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、α−エチル−6,7−エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルブチル(メタ)アクリレート等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記原料モノマーとしては、例えば、EBECRYL(ダイセル・サイテック製)、デナコールアクリレート(ナガセケムテックス製)、ネオポール(日本ユピカ製)等を用いることができる。さらに、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系ポリマーとしては、例えば、ブレンマー(日油製)等を用いることができる。
また、フッ素含有(メタ)アクリル系ポリマーも用いることができる。このポリマーを得るための原料モノマーとしては、例えば、ダイキン工業製 METHACRYLATES CAS No.1799−84−4(2−(perfluorobutyl)ethyl methacrylate)、ユニマテック製 ケミノックス等を用いることができる。
さらには、マレイミド変性アクリル系ポリマーも用いることができる。このポリマーとしては、例えば、アロンタック(東亞合成製)等を用いることができ、また、原料モノマーとしては、例えば、アロニックス(東亞合成製)等を用いることができる。
この他に、(メタ)アクリル系ポリマーとして、スミペックスMHF(住友化学製)、シリコーングラフト(メタ)アクリル系ポリマーとして、サイマックUS−352(東亞合成製)、UV硬化型(メタ)アクリル系ポリマーとして、8KX−018C(大成ファインケミカル製)を使用することができる。
また、原料モノマーには、末端アクリルポリエーテルとして、デナコールアクリレートDA−931(ナガセケムテックス製)、末端メタクリルシリコーンオイルとして、BY167−152C(東レ・ダウコーニング製)、水性アクリレートとして、RD−180(互応化学工業製)、ビスフェノールAジアクリレートとして、ABE−300、フルオレンジアクリレートとして、A−BPEF(以上、新中村化学工業製)、ウレタンアクリレートとして、MiramerHR−3700(東洋ケミカルズ製)、ベンジル(メタ)アクリレート(日立化成工業製)等を使用することができる。
((エポキシ系ポリマー))
エポキシ系ポリマーは、ノルボルネン系エポキシモノマー、ケイ素含有エポキシモノマー、脂環式エポキシモノマー、ビスフェノール型エポキシモノマー、フッ素化エポキシモノマー、脂肪族エポキシモノマー、ナフタレン環含有エポキシモノマー、芳香環含有エポキシモノマー等のエポキシモノマーまたはこれらの誘導体を原料モノマーとして、この原料モノマーを重合してなるポリマー(樹脂およびゴムを含む。)である。
したがって、エポキシ系ポリマーとしては、上記原料モノマーの1種を重合してなるホモポリマー、上記原料モノマーの異なる2種以上を重合してなるコポリマー、上記原料モノマーと他の原料モノマーとを重合してなるコポリマー等が挙げられる。
このような原料モノマーのうち、ノルボルネン系エポキシモノマーとしては、例えば、下記式(1)で表わされるものが挙げられる。
なお、式(1)で表される化合物は、エポキシノルボルネンであり、このような化合物としては、例えば、プロメラス社製 EpNBを使用することができる。この他、ジシクロペンタジエン型エポキシモノマーとして、DIC製 HP−7200HHHを使用することができる。
また、ケイ素含有エポキシモノマーとしては、例えば、下記式(2)または式(3)で表わされるものが挙げられる。
なお、式(2)で表される化合物は、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランであり、この化合物としては、例えば、東レ・ダウコーニング社製 Z−6040を使用することができる。また、式(3)で表される化合物は、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランであり、この化合物としては、例えば、東京化成製 E0327を使用することができる。この他、東レ・ダウコーニング社製 SF8413、BY16−839、SF8421を使用することができる。
さらに、脂環式エポキシモノマーとしては、例えば、下記式(4)〜式(6)で表わされるものが挙げられる。
なお、式(4)で表される化合物は、3、4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’、4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートであり、この化合物としては、例えば、ダイセル化学社製 セロキサイド2021Pを使用することができる。また、式(5)で表される化合物は、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサンであり、この化合物としては、例えば、ダイセル化学社製 セロキサイド2000を使用することができる。さらに、式(6)で表される化合物は、1,2:8,9ジエポキシリモネンであり、この化合物としては、例えば、(ダイセル化学社製 セロキサイド3000)を使用することができる。この他、ダイセル化学社製 セロキサイド2081を使用することもできる。
また、ビスフェノール型エポキシモノマーとしては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、下記式(7)で表わされるものが挙げられる。
なお、式(7)で表される化合物としては、具体的には、例えば、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル(式(7)中、n=1、R1〜R6がすべて水素原子のもの)、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル(式(7)中、n=0、R1〜R6がすべて水素原子のもの)等が挙げられる。この他、ビスA型エポキシモノマーとして、新日鐵化学製 YD−128S、YD−020G、水添ビスA型エポキシモノマーとして、新日鐵化学製 ST−3000、ST−4000Dを使用することもできる。
さらに、フッ素化エポキシモノマーとしては、例えば、下記式(8)で表わされるものが挙げられる。この他、ダイキン工業製 EPOXIDES CAS No.74328−56−6(1,6−bis(2',3'−epoxypropyl)−perfluoro−n−hexane)、EPOXIDES CAS No.791−22−0(1,4−bis(2',3'−epoxypropyl)−perfluoro−n−butane)を使用することもできる。
また、脂肪族エポキシモノマーとしては、例えば、下記式(9)で表わされるものが挙げられる。この他、多官能脂肪族エポキシモノマーとして、ナガセケムテックス製 デナコールEX−850L、デナコールEX−216Lを使用することができる。
さらに、ナフタレン環含有エポキシモノマーとしては、例えば、下記式(10)で表わされるものが挙げられる。
[式(7)中、R
1〜R
4は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。また、R
5、R
6は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基である。さらに、各nは、それぞれ独立して、0〜10の整数を表わす。]
[式(10)中、Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはフェニル基を表わす。]
また、エポキシ系ポリマーまたは原料モノマーとしては、上記の他に、エピコート(ジャパンエポキシレジン製)、フェノキシ樹脂YPシリーズ、ノボラック型エポキシ樹脂YDCNシリーズ(以上、新日鐵化学製)、オグソールEG(大阪ガスケミカル製)、ビフェニル型エポキシ樹脂YX−4000H(三菱化学製)、リカレジン(新日本理化製)、シリコーン変性エポキシ(信越化学工業製または東レ・ダウコーニング製)、デナコール(ナガセケムテックス製)、フッ素化エポキシ(ダイキン工業製)、ARUFON UG−4000、4035、4040(東亞合成製)、アロンオキセタンOXT−213、221、211(東亞合成製)等を使用することができる。
なお、エポキシ系ポリマーを、上記原料モノマーと他の原料モノマーとを重合してなるコポリマーとする場合、他の原料モノマーとしては、上記原料モノマーと異なる種類のものであれば、特に限定されない。
エポキシ系ポリマーの重量平均分子量は、特に限定されないが、ポリスチレン換算において1×104〜3×105程度であることが好ましく、3×104〜2×105程度であることがより好ましい。かかる重量平均分子量のエポキシ系ポリマーを用いることにより、後述するモノマー22との相溶性が高くなるとともに、コア層13の強度や可撓性の向上を図ることができる。その結果、ポリマー21中においてモノマー22を必要かつ十分な速度と距離で移動させることができ、目的とする屈折率分布を確実に形成することができる。
また、光導波路1では、モノマー22の濃度分布によって屈折率分布を形成するだけでなく、ポリマー21の構造変化によっても屈折率分布を形成することができる。例えば、エポキシ系ポリマーを、主鎖と、後述する活性放射線Rにより主鎖から離脱する離脱性基とを有する化学構造に設計する。かかる化学構造を有するエポキシ系ポリマーにおいては、活性放射線Rの照射により、離脱性基を主鎖から離脱させることができ、その屈折率が変化する。その結果、モノマー22の濃度分布による屈折率変化と相まって、屈折率の変化量をより細かく制御することができる。
このような離脱性基としては、例えば、分子構造中に、−O−構造、−Si−アリール構造および−O−Si−構造のうちの少なくとも1つを有するものが挙げられる。かかる離脱性基は、活性放射線Rの作用によって主鎖から容易に離脱するが、カチオンの作用を利用すれば、さらに切断が促進される。
このうち、離脱によりエポキシ系ポリマーの屈折率に低下を生じさせる離脱性基としては、−Si−ジフェニル構造および−O−Si−ジフェニル構造の少なくとも一方が好ましい。
また、別の離脱性基としては、例えば、末端にアセトフェノン構造を有する置換基が挙げられる。この離脱性基は、活性放射線Rの作用によって主鎖から容易に離脱するが、フリーラジカルの作用を利用すれば、さらに切断が促進される。
離脱性基の量は、特に限定されないが、エポキシ系ポリマー全質量に対して10〜80質量%であるのが好ましく、20〜60質量%であるのがより好ましい。離脱性基の量が前記範囲内であると、屈折率変調機能(屈折率差を変化させる効果)に優れたエポキシ系ポリマーとすることができるとともに、形成されるコア層13の可撓性の向上を図ることもできる。
かかる離脱性基を有するエポキシ系ポリマーは、前述した原料モノマーと、この原料モノマーに離脱性基を導入したモノマーとを重合することにより、容易に得ることができる。
((シリコーン系ポリマー))
シリコーン系ポリマーとは、オルガノアルコキシシランまたはその誘導体を原料モノマーとして、この原料モノマーを重合(加水分解・縮合または縮合)してなるポリマー(樹脂およびゴムを含む。)である。
したがって、シリコーン系ポリマー(ポリオルガノシロキサン)としては、上記原料モノマーの1種を重合してなるホモポリマー、上記原料モノマーの異なる2種以上を重合してなるコポリマー、上記原料モノマーと他の原料モノマーとを重合してなるコポリマー等が挙げられる。
このように原料モノマー(シリコーンモノマー)として用いられるオルガノアルコキシシランとしては、特に限定されないが、例えば、下記式(11)で表わされるものが挙げられる。
[式(11)中、R
1、R
3は、それぞれ独立して、一価の有機基である。また、R
2は、アルキル基またはアルコキシアルキル基である。さらに、mは、0または1であり、nは、0〜3の整数を表わす。]
なお、式(11)中、R1、R3(一価の有機基)は、具体的には、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のようなアルキル基、ビニル基、アリル基のようなアルケニル基、フェニル基、トリル基のようなアリール基、ナフチル基、フェネチル基のようなアラルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基およびこれら有機基中の炭素原子の一部が窒素原子、酸素原子、珪素原子、硫黄原子、リン原子またはこれら原子を含む原子団等で置換されたものが挙げられる。
また、R2は、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のようなアルキル基、メトキシメチル基、エトキシメトキシ基、プロポキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、プロポキシエトキシ基、ブトキシエトキシ基のようなアルコキシアルキル基が挙げられる。
以上のような式(11)で表わされるオルガノアルコキシシランとしては、具体的には、例えば、イソプロピルトリメトキシシラン、ネオペンチルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、4−ビニルフェニルトリメトキシシラン、トリメチルシリルメチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、エチニルトリメトキシシラン、ジエチニルジメトキシシラン、4−ビニルフェニルトリエトキシシラン、トリメチルシリルメチルトリエトキシシラン、イソプロピルトリプロポキシシラン、シクロペンチルトリイソプロポキシシラン、ネオペンチルトリブトキシシラン、イソプロピルメチルジメトキシシラン、メチルネオペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、メチルシクロペンチルジメトキシシラン、アリルメチルジメトキシシラン、(4−クロロフェニル)メチルジメトキシシラン、エチルプロピルジメトキシシラン、エチルイソペンチルジメトキシシラン、エチルネオペンチルジメトキシシラン、エチルシクロペンチルジメトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、エチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、ブチルプロピルジメトキシシラン、sec−ブチルプロピルジメトキシシラン、ペンチルプロピルジメトキシシラン、ヘキシルプロピルジメトキシシラン、3−クロロプロピルプロピルジメトキシシラン、3−ブロモプロピルプロピルジメトキシシラン、イソプロピル−sec−ブチルジメトキシシラン、イソプロピルシクロペンチルジメトキシシラン、イソプロピルビニルジメトキシシラン、シクロペンチルイソブチルジメトキシシラン、ジヘキシルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ビス(トリメチルシリルメチル)ジメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルヘキシルジメトキシシラン、sec−ブチルメチルジエトキシシラン、エチルプロピルジエトキシシラン、エチル−tert−ブチルジエトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルブチルエトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、4−メトキシフェニルビニルジエトキシシラン、イソブチルジメチルメトキシシラン、tert−ブチルジメチルメトキシシラン、(4−クロロフェニル)ジメチルメトキシシラン、ジメチル−2−チエニルメトキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、トリブチルメトキシシラン、イソブチルジメチルエトキシシラン、アリルジメチルエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、フェニルジエチルエトキシシラン、ジプロピルイソブチルエトキシシラン、ジフェニルメチルエトキシシラン、アリルジメチルプロポキシシラン、トリエチルプロポキシシラン、ジフェニルメチルブトキシシラン、1,4−ビス(メチルジメトキシシリル)フェニレン、2−アミノエチルアミノメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
なお、シリコーン系ポリマーを、上記原料モノマー(オルガノアルコキシシラン)と他の原料モノマーとを重合してなるコポリマーとする場合、他の原料モノマーとしては、上記原料モノマーと異なる種類のものであれば、特に限定されない。
シリコーン系ポリマーの重量平均分子量は、特に限定されないが、ポリスチレン換算において1×104〜3×105程度であることが好ましく、3×104〜2×105程度であることがより好ましい。かかる重量平均分子量のシリコーン系ポリマーを用いることにより、後述するモノマー22との相溶性が高くなるとともに、コア層13の強度や可撓性の向上を図ることができる。その結果、ポリマー21中においてモノマー22を必要かつ十分な速度と距離で移動させることができ、目的とする屈折率分布を確実に形成することができる。
また、光導波路1では、モノマー22の濃度分布によって屈折率分布を形成するだけでなく、ポリマー21の構造変化によっても屈折率分布を形成することができる。シリコーン系ポリマーは、前述したように、オルガノアルコキシシランまたはその誘導体を加水分解・縮合または縮合してなるものであることから、その分子構造中に、−O−構造、−Si−アリール構造および−O−Si−構造のうちの少なくとも1つを有するものとなる。そのため、かかる構造を有する部分が、後述する活性放射線Rにより主鎖から離脱する離脱性基として機能し、この離脱性基の主鎖からの離脱により、その屈折率を変化させることができるため、かかる点からも、コア層形成層3の屈折率を変化させることができる。したがって、モノマー22の濃度分布による屈折率変化と相まって、屈折率の変化量をより細かく制御することができる。
なお、離脱によりシリコーン系ポリマーの屈折率に低下を生じさせる離脱性基としては、−Si−ジフェニル構造および−O−Si−ジフェニル構造の少なくとも一方が好ましい。
また、別の離脱性基としては、例えば、末端にアセトフェノン構造を有する置換基が挙げられる。この離脱性基は、活性放射線Rの作用によって主鎖から容易に離脱するが、フリーラジカルの作用を利用すれば、さらに切断が促進される。
離脱性基の量は、特に限定されないが、シリコーン系ポリマー全質量に対して10〜80質量%であるのが好ましく、20〜60質量%であるのがより好ましい。離脱性基の量が前記範囲内であると、屈折率変調機能(屈折率差を変化させる効果)に優れたシリコーン系ポリマーとすることができるとともに、形成されるコア層13の可撓性の向上を図ることもできる。
((ポリイミド系ポリマー))
ポリイミド系ポリマーとは、テトラカルボン酸無水物とジアミンとを反応させることにより得られるポリアミド酸を加熱・硬化(イミド化)させてなるポリイミド(オリゴマー)を含むポリマーである。
したがって、ポリイミド系ポリマーとしては、1種の上記ポリイミドを重合してなるホモポリマー、2種以上の上記ポリイミドを重合してなるブロックコポリマー、上記ポリイミドと他のオリゴマーとを重合してなるブロックコポリマー等が挙げられる。
このようなポリイミドを得るために用いられるテトラカルボン酸無水物およびジアミンとしては、特に限定されないが、例えば、以下のようなものが挙げられる。
すなわち、テトラカルボン酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物のような分子内にフッ素原子を含有しないものや、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)へキサフルオロプロパン二無水物、4,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物、(トリフルオロメチル)ビロメリット酸二無水物、ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ジ(ヘプタフルオロプロピル)ピロメリット酸二無水物のような分子内にフッ素原子を含有するもの等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ジアミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’―ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、ンのような分子内にフッ素原子を含有しないものや、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2−トリフルオロメチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2’−トリフルオロメチル−3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)−4−トリフルオロメチルベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)−5−トリフルオロメチルベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンのような分子内にフッ素原子を含有するもの等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、ポリイミド系ポリマーを、上記ポリイミド(オリゴマー)と他のオリゴマーとを重合してなるブロックコポリマーとする場合、他のオリゴマーとしては、上記ポリイミドと異なる種類のものであれば、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル系オリゴマー、エポキシ系オリゴマーおよびシリコーン系オリゴマー(オルガノシロキサンオリゴマー)のうちの少なくとも1種を用いることができる。
ポリイミド系ポリマーの重量平均分子量は、特に限定されないが、ポリスチレン換算において1×104〜1×106程度であることが好ましく、2×105〜4×105程度であることがより好ましい。かかる重量平均分子量のポリイミド系ポリマーを用いることにより、後述するモノマー22との相溶性が高くなるとともに、コア層13の強度や可撓性の向上を図ることができる。その結果、ポリマー21中においてモノマー22を必要かつ十分な速度と距離で移動させることができ、目的とする屈折率分布を確実に形成することができる。
また、光導波路1では、モノマー22の濃度分布によって屈折率分布を形成するだけでなく、ポリマー21の構造変化によっても屈折率分布を形成することができる。例えば、ポリイミド系ポリマーを、主鎖と、後述する活性放射線Rにより主鎖から離脱する離脱性基とを有する化学構造に設計する。かかる化学構造を有するポリイミド系ポリマーにおいては、活性放射線Rの照射により、離脱性基を主鎖から離脱させることができ、その屈折率が変化する。その結果、モノマー22の濃度分布による屈折率変化と相まって、屈折率の変化量をより細かく制御することができる。
このような離脱性基としては、例えば、分子構造中に、−O−構造、−Si−アリール構造および−O−Si−構造のうちの少なくとも1つを有するものが挙げられる。かかる離脱性基は、活性放射線Rの作用によって十分に分子構造が切断され、主鎖から容易に離脱するが、カチオンの作用を利用すれば、さらに切断が促進される。
このうち、離脱によりポリイミド系ポリマーの屈折率に低下を生じさせる離脱性基としては、−Si−ジフェニル構造および−O−Si−ジフェニル構造の少なくとも一方が好ましい。
また、別の離脱性基としては、例えば、末端にアセトフェノン構造を有する置換基が挙げられる。この離脱性基は、活性放射線Rの作用によって主鎖から容易に離脱するが、フリーラジカルの作用を利用すれば、さらに切断が促進される。
離脱性基の量は、特に限定されないが、ポリイミド系ポリマー全質量に対して10〜80質量%であるのが好ましく、20〜60質量%であるのがより好ましい。離脱性基の量が前記範囲内であると、屈折率変調機能(屈折率差を変化させる効果)に優れたポリイミド系ポリマーとすることができるとともに、形成されるコア層13の可撓性の向上を図ることもできる。
かかる離脱性基を有するポリイミド系ポリマーは、例えば、上記ポリイミド(オリゴマー)と他のオリゴマーとしてのオルガノシロキサンオリゴマーとを重合してなるブロックコポリマーとすることにより、容易に得ることができる。
((フッ素系ポリマー))
フッ素系ポリマーとは、その分子構造中にフッ素原子を含有する重合体であり、本発明では、脂肪族環構造、イミド環構造、トリアジン環構造、ベンゾオキサゾール構造および芳香族環構造のうちの少なくとも1種の環構造を有し、かかる構造中にフッ素原子を含有するものであるのが好ましく用いられる。これらの中でも、特に、脂肪族環構造を主鎖として有する重合体であるのが好ましい。
脂肪族環構造を主鎖として有する重合体(以下、「含フッ素脂肪族環構造重合体」ということもある。)は、フッ素原子を含有する環構造を備えるモノマーや、フッ素原子と2以上の重合性不飽和結合とを備えるモノマーを原料モノマーとして、この原料モノマーを重合することにより得ることができる。
したがって、含フッ素脂肪族環構造重合体としては、上記原料モノマーの1種を重合してなるホモポリマー、上記原料モノマーの異なる2種以上を重合してなるコポリマー、上記原料モノマーと他の原料モノマーとを重合してなるコポリマー等とすることができる。
なお、本明細書中において、含フッ素脂肪族環構造重合体とは、その主鎖が複数の脂肪族環構造で主に構成され、この脂肪族環構造を構成する炭素原子の1つ以上にフッ素原子またはフッ素原子を含む原子団が結合しているものをいう。
このような含フッ素脂肪族環構造重合体は、具体的には、例えば、下記式(12)〜(16)に挙げるような構成単位(繰り返し単位)を主鎖に備えるものが挙げられる。
[上記各式中、lは0〜5、mは0〜4、nは0〜1、l+m+nは1〜6、o、p、qは、それぞれ独立して、0〜5、o+p+qは1〜6であり、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、F、Cl、CF
3、C
2F
5、C
3F
7またはOCF
3であり、X
1およびX
2は、それぞれ独立して、FまたはClである。]
かかる構成の含フッ素脂肪族環構造重合体を得るために、フッ素原子を含有する環構造を備えるモノマー(単量体)としては、例えば、ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(2−メチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(2−エチル−2プロピル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(2,2−ジメチル−4メチル−1,3−ジオキソール)のようなジオキソール環員炭素に、フッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基のようなフッ素置換アルキル基が結合したペルフルオロジオキソール類を備えるものや、ペルフルオロ(4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソラン)、ペルフルオロ(2−メチル−1,4−ジオキシン)のような含フッ素脂環構造を備えるもの等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、フッ素原子と2以上の重合性不飽和結合とを備えるモノマー(単量体)としては、例えば、ペルフルオロ(3−オキサ−1,5−ヘキサジエン)、ペルフルオロ(3−オキサ−1,6−ヘプタジエン)、ペルフルオロ(4−メチル−3−オキサ−1,6−ヘプタジエン)、ペルフルオロ(4−クロロ−3−オキサ−1,6−ヘプタジエン)、ペルフルオロ(4−メトキシ−3−オキサ−1,6−ヘプタジエン)、ペルフルオロ(5−メチル−3−オキサ−1,6−ヘプタジエン)等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、含フッ素脂肪族環構造重合体は、上述したフッ素原子を含有する環構造を備えるモノマーと、フッ素原子と2以上の重合性不飽和結合とを備えるモノマーとの双方を原料モノマーとして用い、これらを共重合させてコポリマーすることによっても得ることができる。
さらに、含フッ素脂肪族環構造重合体を、上記原料モノマーと他の原料モノマーとを重合してなるコポリマーとする場合、他の原料モノマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)のようなラジカル重合性モノマー等を用いることができる。
フッ素系ポリマーの重量平均分子量は、特に限定されないが、ポリスチレン換算において1×104〜3×105程度であることが好ましく、3×104〜2×105程度であることがより好ましい。かかる重量平均分子量のフッ素系ポリマーを用いることにより、後述するモノマー22との相溶性が高くなるとともに、コア層13の強度や可撓性の向上を図ることができる。その結果、ポリマー21中においてモノマー22を必要かつ十分な速度と距離で移動させることができ、目的とする屈折率分布を確実に形成することができる。
また、光導波路1では、モノマー22の濃度分布によって屈折率分布を形成するだけでなく、ポリマー21の構造変化によっても屈折率分布を形成することができる。例えば、フッ素系ポリマーを、主鎖と、後述する活性放射線Rにより主鎖から離脱する離脱性基とを有する化学構造に設計する。かかる化学構造を有するフッ素系ポリマーにおいては、活性放射線Rの照射により、離脱性基を主鎖から離脱させることができ、その屈折率が変化する。その結果、モノマー22の濃度分布による屈折率変化と相まって、屈折率の変化量をより細かく制御することができる。
このような離脱性基としては、例えば、分子構造中に、−O−構造、−Si−アリール構造および−O−Si−構造のうちの少なくとも1つを有するものが挙げられる。かかる離脱性基は、活性放射線Rの作用によって主鎖から容易に離脱するが、カチオンの作用を利用すれば、さらに切断が促進される。
このうち、離脱によりフッ素系ポリマーの屈折率に低下を生じさせる離脱性基としては、−Si−ジフェニル構造および−O−Si−ジフェニル構造の少なくとも一方が好ましい。
また、別の離脱性基としては、例えば、末端にアセトフェノン構造を有する置換基が挙げられる。この離脱性基は、活性放射線Rの作用によって主鎖から容易に離脱するが、フリーラジカルの作用を利用すれば、さらに切断が促進される。
離脱性基の量は、特に限定されないが、フッ素系ポリマー全質量に対して10〜80質量%であるのが好ましく、20〜60質量%であるのがより好ましい。離脱性基の量が前記範囲内であると、屈折率変調機能(屈折率差を変化させる効果)に優れたフッ素系ポリマーとすることができるとともに、形成されるコア層13の可撓性の向上を図ることもできる。
なお、かかる離脱性基を有するフッ素系ポリマーは、前述した原料モノマーと、この原料モノマーに離脱性基を導入したモノマーとを重合することにより、容易に得ることができる。
((ポリオレフィン系ポリマー))
ポリオレフィン系ポリマーは、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−2−ブテン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンのようなモノオレフィン系モノマー、アレン、メチルアレン、ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、クロロプレン、1,5−ヘキサジエンのようなジエン系モノマー等を原料モノマーとして、この原料モノマーを重合してなるポリマー(樹脂およびゴムを含む。)である。
なお、ポリオレフィン系ポリマーとしては、上記原料モノマーの1種を重合してなるホモポリマー、上記原料モノマーの異なる2種以上を混合してなるコポリマー、上記原料モノマーと他の原料モノマーとを重合してなるコポリマー等が挙げられる。
また、上記原料モノマーと重合させる他の原料モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ブロモスチレンといった芳香族ビニル系モノマー、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸アリル、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、酢酸ブチル、酢酸ビニル、酢酸イソプロペニル、塩化ビニル、ビニルエーテル等のビニル系モノマーが挙げられる。
なお、上記原料モノマーを重合してなるポリマーとしては、例えば、ポリスチレン、スチレンーブタジエンコポリマー、酢酸ビニルまたはその加水分解物、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリブチラール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
一方、ポリオレフィン系ポリマーは、ノルボルネン系ポリマー、ベンゾシクロブテン系ポリマーのような環状オレフィン系ポリマーであってもよい。環状オレフィン系ポリマーとしては、例えば、特開2010−090328号公報に記載されたものが用いられる。環状オレフィン系ポリマーは、単独の繰り返し単位を有するもの(ホモポリマー)、2つ以上の繰り返し単位を有するもの(コポリマー)のいずれであってもよく、具体例としては、ヘキシルノルボルネンのホモポリマー、フェニルエチルノルボルネンのホモポリマー、ベンジルノルボルネンのホモポリマー、ヘキシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとベンジルノルボルネンとのコポリマー等が挙げられる。
また、他の原料モノマーとしては、活性放射線Rの照射により、一部が光異性化または光二量化する化学構造を有するモノマーであってもよい。かかる化学構造を有するポリオレフィン系ポリマーにおいては、活性放射線Rの照射により、光異性化または光二量化を生じ、その屈折率が変化する。その結果、モノマー22の濃度分布による屈折率変化と相まって、屈折率の変化量をより細かく制御することができる。なお、光異性化は、活性放射線の照射によりシス−トランス異性化や光Fries転位、脱炭酸を生じる現象であり、光二量化は、隣り合って存在する二重結合同士の間に結合が生じる現象である。
このような光異性化または光二量化する化学構造としては、例えば、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基、ホルマザン基のようなN=N基、マレイミド基、インデン基、クマリン基、シンナメート基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ−ル基、スチルバゾリウム基、シンナモイル基、ヘミチオインジゴ基、カルコン基のようなC=C基、芳香族シッフ塩基、芳香族ヒドラゾン構造のようなC=N基、ベンゾフェノン基、アントラキノン基等のようなC=O基、アリルエステル基のようなエステル基、アシルフェノール構造等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1つが用いられる。また、特に、アゾベンゼン基、マレイミド基、クマリン基、シンナモイル基、およびインデン基の少なくとも1つが好ましく用いられる。
また、上記化学構造を有する化合物としては、例えば、イミレックス(日本触媒製)、脂肪族ビスマレイミド(DMI製)、アロニックス(東亞合成製)、ビスマレイミド類(ケイ・アイ化成製)、メチルシンナメート(井上香料製造所)、パラメトキシケイ皮酸2エチルヘキシル等が挙げられる。
(モノマー)
モノマー(光重合性モノマー)22は、後述する活性放射線Rの照射により、照射領域31において反応して反応物を生成する。それとともにモノマー22は移動し、コア層形成層3の照射領域31と非照射領域32との間で屈折率差を生じさせる。
モノマー22の反応物としては、モノマー22がポリマー21中で重合して形成されたポリマー(重合体)、モノマー22がポリマー21同士を架橋してなる架橋構造、および、モノマー22がポリマー21から分岐するように重合した分岐構造のうちの少なくとも1つが挙げられる。
ところで、照射領域31と非照射領域32との間に生じる屈折率差は、ポリマー21の屈折率とモノマー22の屈折率との差に基づいて生じることから、モノマー22は、ポリマー21の屈折率との大小関係を考慮して選択される。
このようなモノマー22としては、分子構造中に重合可能な部位を有する化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ノルボルネン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、スチレン系モノマー、光二量化モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのモノマー22のうち、前述したポリマー21を製造するためのモノマーと同種のものを用いることにより、ポリマー21中にモノマー22をより均一に分散することができるので、モノマー22移動後の屈折率分布を制御し易い。
また、重合可能な部位としては、特に不飽和炭化水素が好ましく用いられる。不飽和炭化水素を含む化合物は、ラジカル重合やカチオン重合といった重合反応を生じ易く、本発明に用いられるモノマー22として好適である。
ここで、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマーとしては、ポリマー21の原料として挙げたモノマーと同様のものを用いることができる。
また、環状エーテル基の開環が起こり易いため、オキセタニル基およびエポキシ基のような環状エーテル基を有するモノマーまたはオリゴマーは、速やかに反応し得る。したがって、かかるモノマーを用いることにより、コア層13の形成時間の短縮、ひいては光導波路1の製造時間の短縮を図ることができる。
環状エーテル基を有するモノマーの分子量(重量平均分子量)またはオリゴマーの分子量(重量平均分子量)は、それぞれ100以上400以下であるのが好ましい。
また、ビニルエーテル系モノマーとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類またはシクロアルキルビニルエーテル類が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種を組み合わせて用いることができる。
さらに、光二量化モノマーとしては、前述した光二量化し得る化学構造を有するモノマーが挙げられ、具体的には、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2’−ビス−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種を組み合わせて用いることができる。
なお、これらのモノマー22と前述したポリマー21との組み合わせは、特に限定されず、いかなる組み合わせであってもよい。
さらに、モノマー22としては、上述した各種モノマー、すなわちアクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ノルボルネン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、スチレン系モノマー、光二量化モノマー等のモノマーが、同種・非同種のものを問わず2種以上併用されていてもよい。これらの組合せの中でも、オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマー、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーのうちの2種以上を併用するのが好ましい。
オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーは重合を開始する開始反応が遅いが、生長反応が速い。これに対し、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーは、重合を開始する開始反応が速いが、生長反応が遅い。そのため、オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーと、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとを併用することで、活性放射線Rを照射した際に、照射領域31と非照射領域32との間の屈折率差を確実に生じさせることができる。
オキセタニル基を有するモノマーとしては、例えば、アロンオキセタン(東亞合成製)を使用することができる。
また、モノマー22は、その少なくとも一部が上述したようにオリゴマー化していてもよい。
なお、オキセタニル基を有するモノマーおよびオリゴマーやエポキシ基を有するモノマーおよびオリゴマーとしては、例えば、特開2010−090328号公報に記載されたものが挙げられる。
これらのモノマー22の添加量は、ポリマー21の100質量部に対し、1質量部以上70質量部以下であることが好ましく、10質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。これにより、コア部14と側面クラッド部15との間の屈折率変調をより確実に起こすことができる。したがって、モノマー22の添加量が前記下限値を下回る場合、ポリマー21やモノマー22の組成によっては、十分な屈折率差が得られないおそれがある。一方、モノマー22の添加量が前記上限値を上回る場合、ポリマー21やモノマー22の組成によっては、照射領域31においてモノマー22やその反応物がすぐに飽和状態となり、モノマー22の移動速度が低下したり、屈折率分布がばらつくおそれがある。
(重合開始剤)
また、コア層形成層3は、必要に応じて重合開始剤を含んでいてもよい。なお、モノマー22の反応性が高い場合には、重合開始剤がなくても反応が進む場合もある。
重合開始剤は、活性放射線の照射に伴ってモノマー22に作用し、モノマー22の反応を促すものである。
用いる重合開始剤としては、モノマー22の重合反応または架橋反応の種類に応じて適宜選択される。例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、スチレン系モノマーには専らラジカル重合開始剤が、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマーには専らカチオン重合開始剤が好ましく用いられる。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類等が挙げられる。具体的には、イルガキュア651、イルガキュア184(以上、BASFジャパン製)等が挙げられる。
一方、カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩のようなルイス酸発生型のもの、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のようなブレンステッド酸発生型のもの等が挙げられる。具体的には、アデカオプトマーSP−170(ADEKA製)、サンエイドSI−100L(三新化学工業製)、Rhodorsil2074(ローディアジャパン製)等が挙げられる。
特に、モノマー22として環状エーテル基を有するモノマーを用いる場合には、以下のようなカチオン重合開始剤(光酸発生剤)が好ましく用いられる。
例えば、トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム−トリフルオロメタンスルホネートなどのスルホニウム塩類、p−ニトロフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのジアゾニウム塩類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、(トリキュミル)ヨードニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのヨードニウム塩類、キノンジアジド類、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタンなどのジアゾメタン類、1−フェニル−1−(4−メチルフェニル)スルホニルオキシ−1−ベンゾイルメタン、N−ヒドロキシナフタルイミド−トリフルオロメタンサルホネートなどのスルホン酸エステル類、ジフェニルジスルホンなどのジスルホン類、トリス(2,4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3.4−メチレンジオキシフェニル)−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどのトリアジン類等の化合物が挙げられる。なお、これらの光酸発生剤は、単独または複数を組み合わせて用いられる。
重合開始剤の含有量は、ポリマー21の100質量部に対し0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.02質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。これにより、コア層形成層3の光学特性や機械的特性を低下させることなく、モノマー22を速やかに反応させることができる。
(その他の添加剤)
コア層形成層3には、これらの他に、各種架橋剤が添加されていてもよい。例えば、(メタ)アクリル系モノマーの架橋には、水性(メタ)アクリレート用架橋剤としてカルボジライトV−02−L2(日清紡ケミカル製)を使用することができる。
また、コア層形成層3は、増感剤を含んでいてもよい。増感剤は、活性放射線Rに対する重合開始剤の感度を増大して、重合開始剤の活性化(反応または分解)に要する時間やエネルギーを減少させる機能や、重合開始剤の活性化に適する波長に活性放射線Rの波長を変化させる機能を有するものである。
具体的には、重合開始剤の感度や増感剤の吸収のピーク波長に応じて適宜選択されるが、9,10−ジブトキシアントラセン(CAS番号第76275−14−4番)のようなアントラセン類、キサントン類、アントラキノン類、フェナントレン類、クリセン類、ベンツピレン類、フルオラセン類(fluoranthenes)、ルブレン類、ピレン類、インダンスリーン類、チオキサンテン−9−オン類(thioxanthen−9−ones)等が挙げられ、これらを単独または混合物として用いることができる。
より具体的には、例えば、2−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、フェノチアジン(phenothiazine)またはこれらの混合物が挙げられる。
増感剤の含有量は、コア層形成層3中で、0.01質量%以上であるのが好ましく、0.5質量%以上であるのがより好ましく、1質量%以上であるのがさらに好ましい。なお、上限値は、5質量%以下であるのが好ましい。
なお、コア層形成層3は、この他に、触媒前駆体、助触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、フィラー、無機粒子、劣化防止剤、濡れ性改良剤、帯電防止剤等を含んでいてもよい。
このようなコア層形成層3は、原材料を含む組成物(ワニス)を、例えば図4(a)に示すような基板30上に塗布し、層状に成形後、乾燥させることにより形成される。
[2]次に、図4(b)に示すように、開口(窓)41が形成されたマスク4を介して、コア層形成層3に対し活性放射線Rを照射する。
露光方式は、マスクを用いたコンタクト露光およびプロキシミティ露光や直接描画方式等でもよい。
マスク4は、別体のもの(例えばプレート状、フィルム状のもの)でも、コア層形成層3上に例えば気相成膜法や塗布法により形成された膜状のものでもよい。
マスク4として好ましいものの例としては、石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスク、ステンシルマスク、気相成膜法(蒸着、スパッタリング等)により形成された金属薄膜等が挙げられるが、これらの中でもフォトマスクやステンシルマスクを用いるのが特に好ましい。これにより、微細なパターンを精度良く形成することができるとともに、ハンドリングがし易く、生産性の向上に有利であるからである。
なお、活性放射線Rとしてレーザー光のような指向性の高い光を用いる場合には、マスク4の使用を省略してもよい。
コア層形成層3に照射される活性放射線Rは、モノマー22を反応させ得るものであればよく、例えば、可視光、紫外線、赤外線、レーザー光の他、電子線やX線等を用いることもできる。
これらの中でも、活性放射線Rとしては、波長200〜450nmの範囲にピーク波長を有するものであるのが好ましい。これにより、モノマー22の反応を特に促進させ易く、かつ、ポリマー21の劣化を比較的少なく抑えることができる。
なお、活性放射線Rの照射量は、0.01〜9J/cm2程度であるのが好ましく、0.1〜6J/cm2程度であるのがより好ましく、0.2〜3J/cm2程度であるのがさらに好ましい。
コア層形成層3の照射領域31に対して選択的に活性放射線Rが照射されると、照射領域31においてモノマー22が重合する。モノマー22が重合すると、照射領域31におけるモノマー22の量が減少するため、それを補うようにして図4(c)に示すように、コア層形成層3の非照射領域32のモノマー22が照射領域31に移動する。その結果、コア層形成層3では、照射領域31のモノマー22およびその反応物の濃度が高まり、一方、非照射領域32ではモノマー22の濃度が低下する。
ここで、モノマー22は、その屈折率がポリマー21より低いため、上記のような濃度分布が形成されることによって、照射領域31の屈折率は非照射領域32に比べて低下することとなる。その結果、コア層形成層3には、照射領域31の屈折率が低く、非照射領域32の屈折率が高いという屈折率差が形成され、前述した屈折率分布が形成される。なお、上述したようなモノマー22の反応物の屈折率は、重合前のモノマー22の屈折率とほぼ同じ(屈折率差が0〜0.001程度)であるため、照射領域31では、モノマー22の重合が進むにつれ、モノマー22の量およびモノマー22の反応物の量に応じて屈折率が低下することとなる。
なお、モノマー22の移動は、照射領域31においてモノマー22が消費されることがきっかけとなって起こると考えられる。このため、非照射領域32全体のモノマー22が一斉に照射領域31に向かうのではなく、照射領域31に近い部分から徐々に移動が始まり、これを補うように次々と移動が連鎖すると考えられる。したがって、モノマー22の濃度分布は、必然的に緩やかな傾斜を伴うものとなる。さらに、コア層形成層3の屈折率分布には、図4(c)に示すように、照射領域31と非照射領域32との境界付近の屈折率が相対的に低下した低屈折率部と、非照射領域32の屈折率が相対的に上昇した高屈折率部と、が形成される。また、照射領域31の幅の中心部についても縁部より屈折率が高くなる。
また、ポリマー21が離脱性基を有している場合、活性放射線Rの照射に伴い、照射領域31において離脱性基が離脱する。これにより、照射領域31のポリマー21の屈折率が変化する。このため、上述したモノマー22の移動による屈折率変化と合わせて、コア層形成層3の屈折率分布をより細かく制御することができる。
なお、モノマー22が反応する波長(あるいは重合開始剤が反応する波長)と、離脱性基が離脱する波長とは異なる場合が多い。したがって、例えばモノマー22が反応する波長の活性放射線Rを先に照射し、次いで、照射領域を変えて離脱性基が離脱する波長を照射することにより、コア層形成層3の屈折率分布をさらに細かく制御することができる。
同様に、反応する波長が異なる複数のモノマー22を用いたり、反応する波長が異なる複数の重合開始剤を用いたりした場合でも、波長と照射領域を変えながら活性放射線Rを複数回照射することによって、コア層形成層3の屈折率分布をより細かく制御することができる。
なお、照射領域31では、活性放射線Rを一様な積算照射量分布になるよう照射するようにしてもよいが、所定の偏りを持った積算照射量分布になるよう照射してもよい。
照射領域31に対して積算照射量分布が一様になるように活性放射線Rを照射した場合、照射工程が簡単であるという利点の他に、モノマー22の移動を制御し易く、屈折率分布を目的とする形状に制御し易いという利点がある。この場合、モノマー22が自然な濃度勾配を伴って移動し易いため、より連続的な屈折率変化を生じさせることができる。なお、一様な積算照射量とは、照射領域31における積算照射量の最大と最小との差が平均値の10%以下であることをいう。
一方、照射領域31に対して所定の偏りを持った積算照射量分布になるように活性放射線Rを照射した場合、モノマー22の移動を制御する難易度は上がるものの、移動量や移動速度を細かく制御することができ、コア層形成層3の屈折率分布をさらに細かく制御することができる。
また、コア層形成層3中のモノマー22を移動させる際、コア層形成層3の乾燥条件を適宜変更することにより、モノマー22の移動量や移動速度を制御することができる。例えば、乾燥の程度を大きくすることにより、モノマー22の移動量を抑えることができる。
なお、ポリマー21のショアD硬度は、35〜95程度であるのが好ましく、40〜90程度であるのがより好ましく、45〜85程度であるのがさらに好ましい。このような硬度のポリマー21は、光導波路1に必要かつ十分な可撓性と抗折性とを付与しつつ、モノマー22を確実に拡散移動させ、十分な屈折率差の形成に寄与する。したがって、得られた光導波路1は、折り曲げ使用に適した十分な柔軟性と機械的強度とを備えるとともに、折り曲げた状態でも優れた光学特性を有するものとなる。
同様な理由から、ポリマー21のロックウェル硬度は、Mスケールで40〜125程度であるのが好ましく、50〜115程度であるのがより好ましく、60〜110程度であるのがさらに好ましい。
また、ポリマー21の軟化点は、90〜300℃であるのが好ましく、95〜280℃であるのがより好ましく、100〜260℃であるのがさらに好ましい。これにより、得られた光導波路1は、前述したような屈折率分布を確実に形成し、かつ形成された屈折率分布を長期にわたって確実に維持し得るとともに、折り曲げた状態で使用しても断線を防止し得る十分な機械的強度を備えたものとなる。したがって、光導波路1は、光学特性に優れた信頼性の高いものとなる。なお、ポリマー21の軟化点は、ポリマー21のガラス転移温度または融点であり、双方あるときは低い方を指す。
このようなポリマー21の物性は、必要かつ十分な屈折率分布を形成するにあたって重要である。すなわち、ポリマー21の硬度が低過ぎたり軟化点が低過ぎたりした場合、光導波路1のサイズや構成材料によっては、光導波路1の機械的特性が不十分となり、形状維持が困難であったり、取り扱い難いものになるおそれがある。一方、ポリマー21の硬度が高過ぎたり軟化点が高過ぎたりした場合、モノマー22の移動が不十分となり、必要かつ十分な屈折率分布を形成することができないおそれがある。
また、活性放射線Rの照射は、必要に応じて、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気のような不活性ガス雰囲気下で行うようにしてもよい。これにより、ポリマー21やモノマー22の酸化、変性を抑制することができ、より光学特性に優れた光導波路1を得ることができる。
なお、活性放射線Rとしてレーザーのように指向性の高い光を用いる場合には、マスク4の使用を省略することができる。
その後、必要に応じて、コア層形成層3に加熱処理を施す。この加熱処理において、モノマー22のさらなる移動が抑制される。
この加熱処理における加熱温度は、特に限定されないが、30〜180℃程度であるのが好ましく、40〜160℃程度であるのがより好ましい。
また、加熱時間は、加熱温度に応じて適宜設定されるが、0.05〜2時間程度であるのが好ましく、0.1〜1時間程度であるのがより好ましい。
以上のようにして、コア層形成層3に屈折率分布を形成し、コア層13が得られる。
なお、光導波路1に形成された屈折率分布は、例えば、(1)干渉顕微鏡(dual−beam interference microscope)を用いて屈折率依存の干渉縞を観測し、その干渉縞から屈折率分布を特定する方法、(2)屈折ニアフィールド法(Refracted Near Field method;RNF)等により特定することができる。このうち、屈折ニアフィールド法は、例えば特開平5−332880号公報に記載の測定条件を採用することができる。一方、干渉顕微鏡は、屈折率分布の特定を簡便に行い得る点で有用である。
また、光導波路1に形成された屈折率分布nは、モノマー22やその反応物の濃度と一定の相関関係を有していることから、モノマー22やその反応物の濃度分布を取得することによっても、その形状を間接的に特定することが可能である。モノマー22やその反応物の濃度の測定には、例えば、FT−IR、TOF−SIMSの線分析、面分析等を用いることができる。
[3]次いで、基板30からコア層13を剥離するとともに、剥離したコア層13を介してクラッド層11およびクラッド層12を積層する。これにより、光導波路1が得られる。
さらに、必要に応じて、光導波路1の下面に支持フィルムを積層するとともに、上面にカバーフィルムを積層するようにしてもよい。
なお、活性放射線Rを照射するコア層形成層3は、クラッド層を介して上述したようなコア層形成層3を複数層積層したものであってもよい。これにより、図2に示す光導波路1が得られる。
<電子機器>
上述したような本発明に係る光導波路は、他の光学部品との光結合効率に優れたものである。このため、本発明の光導波路を備えることにより、高品質の光通信を行い得る信頼性の高い電子機器(本発明の電子機器)が得られる。
本発明の光導波路を備える電子機器としては、例えば、携帯電話、ゲーム機、ルーター装置、WDM装置、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器類が挙げられる。これらの電子機器では、いずれも、例えばLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間で、大容量のデータを高速に伝送する必要がある。したがって、このような電子機器が本発明の光導波路を備えることにより、電気配線に特有なノイズ、信号劣化等の不具合が解消され、その性能の飛躍的な向上が期待できることから、電子機器の低コスト化に貢献することができる。
さらに、光導波路部分では、電気配線に比べて発熱量が大幅に削減される。このため、冷却に要する電力を削減することができ、電子機器全体の消費電力を削減することができる。
以上、本発明の光導波路および電子機器について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば光導波路には、任意の構成物が付加されていてもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.光導波路の製造
(実施例1)
(1)クラッド層形成用樹脂組成物の製造
ダイセル化学工業(株)製の脂環式エポキシ樹脂、セロキサイド2081 20g、(株)ADEKA製のカチオン重合開始剤、アデカオプトマーSP−170 0.6g、およびメチルイソブチルケトン80gを撹拌混合して溶液を調製した。
次いで、得られた溶液を0.2μm孔径のPTFEフィルターでろ過して清浄で無色透明なクラッド層形成用樹脂組成物を得た。
(2)感光性樹脂組成物の製造
エポキシ系ポリマーとして新日鐵化学(株)製のフェノキシ樹脂、YP−50S 20g、光重合性モノマーとしてダイセル化学工業(株)製のセロキサイド2021P 5g、および重合開始剤として(株)ADEKA製のアデカオプトマーSP−170 0.2gを、メチルイソブチルケトン80g中に投入し、撹拌溶解して溶液を調製した。
次いで、得られた溶液を0.2μm孔径のPTFEフィルターでろ過して清浄で無色透明な感光性樹脂組成物を得た。
(3)下側クラッド層の作製
クラッド層形成用樹脂組成物をドクターブレードにより厚さ25μmのポリイミドフィルム上に均一に塗布した後、50℃の乾燥機に10分間投入した。溶媒を完全に除去した後、UV露光機で全面に紫外線を照射し、塗布した樹脂組成物を硬化させた。これにより、厚さ10μmの無色透明な下側クラッド層を得た。なお、紫外線の積算光量は500mJ/cm2とした。
(4)コア層の作製
作製した下側クラッド層上に感光性樹脂組成物をドクターブレードにより均一に塗布した後、50℃の乾燥機に10分間投入した。溶媒を完全に除去して被膜とした後、得られた被膜上に、直線パターンが全面に描かれたフォトマスクを圧着した。そして、フォトマスク上から平行露光機により紫外線を照射した。なお、紫外線の積算光量は800mJ/cm2とした。
次いで、フォトマスクを取り去り、露光後の被膜を150℃のオーブンに30分間投入した。オーブンから取り出すと、被膜には鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。得られたコア層の厚さは50μm、コア部の本数は8本であった。また、導波路パターンのコア部の幅Lおよび間隔Sは、表1に示す通りである。
(5)上側クラッド層の作製
作製したコア層上に、(3)と同様にしてクラッド層形成用樹脂組成物を塗布し、厚さ10μmの無色透明な上側クラッド層を得た。以上のようにして長さ10cmの光導波路を得た。
(実施例2〜9)
製造条件を表1に示すように設定するとともに、コア部の幅L、および隣り合うコア部同士の間隔S(側面クラッド部の幅)がそれぞれ表1に示す値になるようにフォトマスクのパターンを設定するようにした以外は、それぞれ実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例10)
(1)(メタ)アクリル系ポリマーの合成
メタクリル酸メチル(MMA)20.0g、ベンジルメタクリレート(BzMA)30.0g、およびメチルイソブチルケトン450gをセパラブルフラスコに投入し、撹拌混合したのち、窒素ガスで置換してモノマー溶液を調製した。
一方、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.25gをメチルイソブチルケトン10gに溶解したのち、窒素ガスで置換して開始剤溶液を調製した。
そして、前記モノマー溶液を80℃に加熱した状態で撹拌しつつ、シリンジを用いて前記開始剤溶液を前記モノマー溶液に添加した。そのまま80℃で1時間撹拌したのちに冷却し、重合体溶液を調製した。その後、5Lのイソプロパノールをビーカーに準備し、攪拌機により常温下で撹拌しつつ、ビーカー内に前記重合体溶液を滴下した。滴下が完了してからも引き続き30分間撹拌し、その後沈殿したポリマーを取り出し、真空乾燥機にて減圧下60℃で8時間乾燥させた。これにより、アクリル系ポリマーA1を得た。
(2)クラッド層形成用樹脂組成物の製造
互応化学工業(株)製の水性アクリレート樹脂溶液RD−180 20g、イソプロパノール20g、および重合開始剤として日清紡ケミカル(株)カルボジライトV−02−L2 0.4gを撹拌混合して溶液を調製した。
次いで、得られた溶液を0.2μm孔径のPTFEフィルターでろ過して清浄で無色透明なクラッド層形成用樹脂組成物B1を得た。
(3)感光性樹脂組成物の製造
合成したアクリル系ポリマーA1 20gと、モノマーとしてメタクリル酸シクロヘキシル5gと、重合開始剤としてBASFジャパン(株)製イルガキュア651 0.4gを、メチルイソブチルケトン80g中に投入し、撹拌溶解し溶液を調製した。
次いで、得られた溶液を0.2μm孔径のPTFEフィルターでろ過して清浄で無色透明な感光性樹脂組成物C1を得た。
(4)下側クラッド層の作製
クラッド層形成用樹脂組成物B1をドクターブレードにより厚さ25μmのポリイミドフィルム上に均一に塗布した後、80℃の乾燥機に10分間投入した。溶媒を完全に除去した後、さらに150℃のオーブンに10分間投入し、硬化させて厚さ10μmの無色透明な下側クラッド層を得た。
(5)コア層の作製
作製した下側クラッド層上に感光性樹脂組成物C1をドクターブレードにより均一に塗布した後、50℃の乾燥機に10分間投入した。溶媒を完全に除去して被膜とした後、得られた被膜上に、ライン、スペースの直線パターンが全面に描かれたフォトマスクを圧着した。そして、フォトマスク上から平行露光機により紫外線を照射した。なお、紫外線の積算光量は700mJ/cm2とした。
次いで、フォトマスクを取り去り、150℃のオーブンに30分間投入した。オーブンから取り出すと、被膜には鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。導波路パターンのコア部の幅Lおよび間隔Sをそれぞれ表2に示す。また、得られたコア層の厚さは50μm、コア部の本数は8本とした。
(6)上側クラッド層の作製
作製したコア層上に、(4)と同様にしてクラッド層形成用樹脂組成物B1を塗布し、厚さ10μmの無色透明な上側クラッド層を得た。以上のようにして光導波路を得た。
(実施例11〜13)
製造条件を表2に示すように設定するとともに、コア部の幅L、および隣り合うコア部同士の間隔S(側面クラッド部の幅)がそれぞれ表2に示す値になるようにフォトマスクのパターンを設定するようにした以外は、それぞれ実施例10と同様にして光導波路を得た。
(実施例14)
(1)離脱性基を有するポリオレフィン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で満たされたグローブボックス中において、ヘキシルノルボルネン(HxNB)7.2g(40.1mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン12.9g(40.1mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gと酢酸エチル11gを加え、シリコン製のシーラーを被せて上部を密栓した。
次に、100mLバイアルビン中にNi触媒1.56g(3.2mmol)と脱水トルエン10mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
このNi触媒溶液1mLをシリンジで正確に計量し、上記2種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し室温で1時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
100mLビーカーに無水酢酸9.5g、過酸化水素水18g(濃度30%)、イオン交換水30gを加えて撹拌し、その場で過酢酸水溶液を調製した。次にこの水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌してNiの還元処理を行った。
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液を100mL加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層分離が行われた後で水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマー#1を得た。ポリマー#1の分子量分布は、GPC測定により、Mw=10万、Mn=4万であった。また、ポリマー#1中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルノルボルネン構造単位が50mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50mol%であった。
(2)コア層形成用組成物の製造
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(東亜合成製 CHOX、CAS#483303−25−9、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)2g、重合開始剤(光酸発生剤) RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(0.025g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層形成用組成物を得た。なお、ポリマー#1は、活性放射線の照射により離脱性基が離脱する機能を有しており、いわゆるフォトブリーチング現象が生じるものである。また、前記重合開始剤は、表3中においてPI 2074と表記する。
(3)クラッド層形成用組成物の製造
精製した上記ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位80mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位20mol%にそれぞれ変更したものを、前記ポリマー#1に代えて用いるようにした以外はコア層形成用組成物と同様にしてクラッド層形成用組成物を得た。
(4)下側クラッド層の作製
クラッド層形成用組成物をドクターブレードにより厚さ25μmのポリイミドフィルム上に均一に塗布した後、50℃の乾燥機に10分間投入した。溶媒を完全に除去した後、UV露光機で全面に紫外線を照射し、塗布した組成物を硬化させた。これにより、厚さ10μmの無色透明な下側クラッド層を得た。なお、紫外線の積算光量は500mJ/cm2とした。
(5)コア層の作製
作製した下側クラッド層上にコア層樹脂組成物をドクターブレードにより均一に塗布した後、50℃の乾燥機に10分間投入した。溶媒を完全に除去して被膜とした後、得られた被膜上に、ライン、スペースの直線パターンが全面に描かれたフォトマスクを圧着した。そして、フォトマスク上から平行露光機により紫外線を照射した。なお、紫外線の積算光量は1300mJ/cm2とした。
次いで、フォトマスクを取り去り、150℃のオーブンに30分間投入した。オーブンから取り出すと、被膜には鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。導波路パターンのコア部の幅Lおよび間隔Sをそれぞれ表3に示す。また、得られたコア層の厚さは50μm、コア部の本数は8本とした。
(6)上側クラッド層の作製
作製したコア層上に、(3)と同様にしてクラッド層形成用樹脂組成物を塗布し、厚さ10μmの無色透明な上側クラッド層を得た。以上のようにして光導波路を得た。
(実施例15、16)
製造条件を表3に示すように設定するとともに、コア部の幅L、および隣り合うコア部同士の間隔S(側面クラッド部の幅)がそれぞれ表3に示す値になるようにフォトマスクのパターンを設定するようにした以外は、それぞれ実施例14と同様にして光導波路を得た。
(比較例1〜3)
製造条件を表1に示すように設定するとともに、コア部の幅L、および隣り合うコア部同士の間隔S(側面クラッド部の幅)がそれぞれ表1に示す値になるようにフォトマスクのパターンを設定するようにした以外は、それぞれ実施例1と同様にして光導波路を得た。
(比較例4、5)
製造条件を表2に示すように設定するとともに、コア部の幅L、および隣り合うコア部同士の間隔S(側面クラッド部の幅)がそれぞれ表2に示す値になるようにフォトマスクのパターンを設定するようにした以外は、それぞれ実施例10と同様にして光導波路を得た。
(比較例6)
コア形成用組成物およびクラッド形成用組成物について、CHOXを添加せず、PI2074の添加量を0.01gとした以外は、実施例14と同様にして光導波路を得た。
以上の各実施例および各比較例で得られた光導波路の製造条件を表1〜3に示す。
2.光導波路の評価
2.1 光導波路の屈折率分布
得られた光導波路のコア層の横断面について、その厚さの中心線に沿って干渉顕微鏡により屈折率分布を測定し、コア層の幅方向の屈折率分布を得た。そして、得られた屈折率分布から、極大値(コア部における屈折率の最大値)と、極小値(側面クラッド部における屈折率の最小値)とを求めた。
また、併せて、屈折率分布の形状を評価した。その結果、各実施例および比較例1〜5で得られた光導波路における屈折率分布は、いずれも、複数の極小値および複数の極大値を有し、屈折率が連続的に変化したもの、いわゆるグレーデッドインデックス(GI)型の分布であった。
一方、比較例6で得られた光導波路における屈折率分布は、屈折率が一定の領域を含み、コア部に相当する領域と側面クラッド部に相当する領域との境界において屈折率が不連続的に変化している分布であった。したがって、この光導波路における屈折率分布は、いわゆるステップインデックス(SI)型の分布であるといえる。
また、コア部の屈折率の最大値をnAとし、前記側面クラッド部の屈折率の最小値をnBとしたとき、(nA 2−nB 2)1/2で定義される開口数NAを算出した。
以上の評価結果を表4〜6に示す。
2.2 光導波路の伝送損失
2.2.1 直線形状における伝送損失の測定
850nmVCSEL(面発光レーザー)より発せられた光を50μmφの光ファイバーを経由して、各実施例および各比較例で得られた光導波路に導入し、出射光を200μmφの光ファイバーで受光し、光の強度を測定した。なお、伝送損失の測定にはカットバック法を採用した。そして、光導波路の長さを横軸にとり、挿入損失を縦軸にとって測定値をプロットしたところ、測定値は直線上に並んだ。そこで、その直線の傾きから伝送損失を算出した。
2.2.2 曲線形状による損失増加の評価
各実施例および各比較例で得られた光導波路と同様にして、曲率半径10mmを含む曲線パターンのコア部を形成した光導波路を作製し、挿入損失を測定した。
そして、2.2.1で測定した直線のみのパターンにおける挿入損失と比較し、以下の評価基準に従って曲線パターンによる挿入損失の増加量を評価した。なお、曲線パターンによる挿入損失の増加量とは、直線のみのパターンにおける挿入損失との差分を指す。
<挿入損失の増加率の評価基準>
◎:曲線パターンによる挿入損失の増加量が0.2dB未満である。
○:曲線パターンによる挿入損失の増加量が0.2dB以上0.5dB未満である
△:曲線パターンによる挿入損失の増加量が0.5dB以上1.0dB未満である
×:曲線パターンによる挿入損失の増加量が1.0dB以上である
2.3 パルス信号の波形の保持性
得られた光導波路に対して、レーザーパルス光源からパルス幅1nsのパルス信号を入射し、出射光のパルス幅を測定した。
そして、測定した出射光のパルス幅について、比較例1で得られた光導波路(ステップインデックス型の光導波路)の測定値を1としたときの相対値を算出し、これを以下の評価基準にしたがって評価した。
<パルス幅の評価基準>
◎:パルス幅の相対値が0.5未満である
○:パルス幅の相対値が0.5以上0.8未満である
△:パルス幅の相対値が0.8以上1未満である
×:パルス幅の相対値が1以上である
以上、2.2および2.3の評価結果を表7〜9に示す。
表7〜9から明らかなように、各実施例で得られた光導波路では、各比較例で得られた光導波路に比べ、伝送損失およびパルス信号の鈍りがそれぞれ抑えられていることが認められた。なお、パルス信号の鈍りが抑制されたのは、各実施例で得られた光導波路が、滑らかな屈折率変化を伴うグレーデッドインデックス型の屈折率分布を有しているためであると考えられる。
以上のことから、本発明に係る光導波路は、コア部の間隔Sを相対的に狭くしたり、コア部の幅Lを相対的に広くした場合でも、伝送効率が高いものであり、また、開口数NAが大きいことから他の光学部品との光結合効率に優れるものであると認められる。したがって、本発明に係る光導波路は、多チャンネル化および高密度化が容易であり、高品質の光通信を行い得るものであると認められる。