JP2014198928A - 微細繊維状セルロース含有シートの製造方法 - Google Patents

微細繊維状セルロース含有シートの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】抄紙用ワイヤーを用いて微細繊維状セルロース含有シートを製造する方法において良好なシート剥離性を達成できる方法を提供すること。【解決手段】リグノセルロース原料を化学的処理及び解繊処理することにより得た平均繊維幅2〜50nmの微細繊維状セルロースを、少なくとも一方の面が疎水化されている基材からなる抄紙用ワイヤーで濾過する工程、及び濾過後に前記抄紙用ワイヤーから微細繊維状セルロース含有シートを剥離する工程を含む、微細繊維状セルロース含有シートの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、微細繊維状セルロース含有シートの製造方法に関する。より詳細には、本発明は、疎水化されたシートからなるワイヤーを用いて、平均繊維幅2〜50nmの微細繊維状セルロースを含有するシートを製造する方法に関する。
近年、石油資源の代替および環境意識の高まりから再生産可能な天然繊維の応用に注目が集まっている。天然繊維の中でもセルロース繊維、とりわけ木材由来のセルロース繊維(パルプ)は主に紙製品として幅広く使用されている。紙に使用されるセルロース繊維の幅は10〜50μmのものがほとんどである。このようなセルロース繊維から得られる紙(シート)は不透明であり、印刷用紙として幅広く利用されている。一方、セルロース繊維をレファイナーやニーダー、サンドグラインダーなどで処理(叩解、粉砕)し、セルロース繊維を微細化(ミクロフィブリル化)すると透明紙(グラシン紙等)が得られる。また、微細繊維状セルロースシートは空隙を含むため白く乱反射し、不透明性が高くなるが、微細繊維状セルロースシートに樹脂を含浸すると空隙が埋まるため、透明なシートが得られる。
特許文献1には、セルロースを含有する不織布(a)とセルロース以外の樹脂(b)とからなり、(a)成分が0.1重量%以上99重量%以下であり、(b)成分が1重量%以上99.9重量%以下であることを特徴とする複合体が記載されており、セルロースを含有する不織布(a)として、抄紙法によって得られた不織布を使用できることが記載されている。
微細繊維状セルロースの製造方法としては、特許文献2には、セルロース繊維をオゾン処理した後、水に分散し、得られたセルロース繊維の水系懸濁液を粉砕処理することを特徴とする、最大繊維幅1000nm以下の微細繊維状セルロースの製造方法が記載されている。また特許文献3には、四級アンモニウム基を含有する化合物でカチオン変性された繊維径の平均値が4〜200nmであるカチオン性ミクロフィブリル化植物繊維、並びにその製造方法が記載されている。
また、抄紙用ワイヤーとしては、特許文献4には、紙基材の少なくとも一方の面が、疎水化剤によって疎水化され且つ表面平滑度が50秒以上の疎水化平滑面とされているシートからなることを特徴とする微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーが記載されている。また、特許文献4には、この微細繊維状セルロース含有シート抄紙用ワイヤーを用いて微細繊維状セルロースおよび水を含む懸濁液を濾過・脱水して含水ウェブを得る搾水工程と、前記含水ウェブを乾燥する乾燥工程とを有する微細繊維状セルロース含有シートを製造する方法が記載されている。
特開2006−316253号公報 特開2010−254726号公報 特開2011−162608号公報 特開2012−117183号公報
抄紙用ワイヤーを用いて微細繊維状セルロースをシート化する場合、抄紙用ワイヤーからのシートの剥離性について問題があった。特に、微細繊維状セルロースを用いて連続シートを製造する場合、シートを破断させることなく、抄紙用ワイヤーからシートを剥離することは困難であった。本発明は、抄紙用ワイヤーを用いて微細繊維状セルロース含有シートを製造する方法において良好なシート剥離性を達成できる方法を提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、リグノセルロース原料を化学的処理及び解繊処理することにより得た平均繊維幅2〜50nmの微細繊維状セルロースを、少なくとも一方の面が疎水化されている基材からなる抄紙用ワイヤーで濾過することによって、前記濾過後に前記抄紙用ワイヤーから微細繊維状セルロース含有シートを良好に剥離できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1) リグノセルロース原料を化学的処理及び解繊処理することにより得た平均繊維幅2〜50nmの微細繊維状セルロースを、少なくとも一方の面が疎水化されている基材からなる抄紙用ワイヤーで濾過する工程、及び濾過後に前記抄紙用ワイヤーから微細繊維状セルロース含有シートを剥離する工程を含む、微細繊維状セルロース含有シートの製造方法。
(2) 前記微細繊維状セルロースの平均繊維幅が2nm以上10nm未満である、(1)に記載の微細繊維状セルロース含有シートの製造方法。
(3) 前記微細繊維状セルロースが、リグノセルロース原料を、構造中にリン原子を含有するオキソ酸、ポリオキソ酸又はそれらの塩から選ばれる少なくなくとも1種の化合物により処理する工程と、前記処理工程後のリグノセルロース原料を解繊処理することにより得た微細繊維状セルロースである、(1)又は(2)に記載の微細繊維状セルロース含有シートの製造方法。
(4) 構造中にリン原子を含有するオキソ酸、ポリオキソ酸又はそれらの塩から選ばれる少なくなくとも1種の化合物が、リン酸基を有する化合物である、(3)に記載の微細繊維状セルロース含有シートの製造方法。
(5) 前記抄紙用ワイヤーが、少なくとも一方の面が疎水化されている紙基材からなる、(1)から(4)の何れかに記載の微細繊維状セルロース含有シートの製造方法。
(6) 前記紙基材が片艶紙である、(5)に記載の微細繊維状セルロース含有シートの製造方法。
(7) 前記抄紙用ワイヤーから剥離した微細繊維状セルロース含有シートの全光線透過率が70%以上である、(1)から(6)の何れかに記載の微細繊維状セルロース含有シートの製造方法。
(8) 前記抄紙用ワイヤーから剥離した微細繊維状セルロース含有シートのヘイズが20%以下である、(1)から(7)の何れかに記載の微細繊維状セルロース含有シートの製造方法。
本発明によれば、平均繊維幅2〜50nmの微細繊維状セルロースを用いて抄紙用ワイヤーで濾過することによって抄紙する場合において、抄紙用ワイヤーからの微細繊維状セルロース含有シートの良好な剥離性を達成することができる。
図1は、実施例で使用した、微細繊維状セルロース含有連続シートの製造装置を示す。
12 抄紙用ワイヤー
13 供給タンク
13a 攪拌機
14 吸引手段
15 脱水セクション
16 送出リール
17 ガイドロール
18 ダイコーター
18a 開口部
18b ヘッド
20 乾燥セクション
21 第1ドライヤー
22 第2ドライヤー
23 含水ウェブ用ガイドロール
24 フェルト布
25 フェルト布用ガイドロール
26 局所排気区画
30 巻取セクション
31a,31b 分離ローラ
32 巻取りリール
33 回収リール
34 有機溶媒滴下装置
A 微細繊維状セルロース懸濁液
B 含水ウェブ
C 微細繊維状セルロース含有シート
以下、本発明について更に詳細に説明する。
<微細繊維状セルロース>
本発明で用いる微細繊維状セルロースは、リグノセルロース原料を化学的処理及び解繊処理することにより得た平均繊維幅2〜50nmの微細繊維状セルロースである。本発明の微細繊維状セルロースとは、通常製紙用途で用いるパルプ繊維よりもはるかに細いセルロース繊維あるいは棒状粒子である。微細繊維状セルロースは結晶部分を含むセルロース分子の集合体であり、その結晶構造はI型(平行鎖)である。微細繊維状セルロースの平均繊維幅は電子顕微鏡で観察して2nm〜50nmであり、より好ましくは2nm以上10nm未満である。微細繊維状セルロースの平均繊維幅が2nm未満であると、セルロース分子として水に溶解しているため、微細繊維状セルロースとしての物性(強度や剛性、寸法安定性)が発現しなくなる。一方、50nmを超えると高い透明性を達成することができない。ここで、微細繊維状セルロースがI型結晶構造をとっていることは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて、2θ=14〜17°付近と2θ=22〜23°付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。また、微細繊維状セルロースの電子顕微鏡観察による繊維幅の測定は以下のようにして行う。濃度0.05〜0.1質量%の微細繊維状セルロースの水系懸濁液を調製し、該懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅の広い繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維
が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上
の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を目視で読み取る。こうして少なくとも重なっていない表面部分の画像を3組以上観察し、各々の画像に対して、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を読み取る。このように少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。微細繊維状セルロースの平均繊維幅はこのように読み取った繊維幅の平均値である。
微細繊維状セルロースの繊維長は1μm〜1000μmが好ましく、5μm〜800μmがさらに好ましく、10μm〜600μmが特に好ましい。繊維長が1μm未満になると、微細繊維シートを形成し難くなる。1000μmを超えると微細繊維のスラリー粘度が非常に高くなり、扱いづらくなる。繊維長は、TEMやSEM、AFMの画像解析より求めることができる。
微細繊維状セルロースの軸比(繊維長/繊維幅)は100〜10000の範囲であることが好ましい。軸比が100未満であると微細繊維状セルロース含有シートを形成し難くなるおそれがある。軸比が10000を超えるとスラリー粘度が高くなり、好ましくない。
本発明においては、リグノセルロース原料を化学的処理及び解繊処理することによって得られる微細繊維状セルロースを使用する。
リグノセルロース原料としては、製紙用パルプ、コットンリンターやコットンリントなどの綿系パルプ、麻、麦わら、パガスなどの非木材系パルプ、ホヤや海草などから単離されるセルロースなどが挙げられる。これらの中でも、入手のしやすさという点で、製紙用パルプが好ましい。製紙用パルプとしては、広葉樹クラフトパルプ(晒クラフトパルプ(LBKP)、未晒クラフトパルプ(LUKP)、酸素漂白クラフトパルプ(LOKP)など)、針葉樹クラフトパルプ(晒クラフトパルプ(NBKP)、未晒クラフトパルプ(NUKP)、酸素漂白クラフトパルプ(NOKP)など)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ、楮、三椏、麻、ケナフ等を原料とする非木材パルプ、古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。これらの中でも、より入手しやすいことから、クラフトパルプ、脱墨パルプ、サルファイトパルプが好ましい。セルロース原料は1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
(化学的処理)
リグノセルロース原料の化学的処理の方法は、微細繊維状セルロースを得ることができる限り特に限定されないが、例えば、オゾン処理、酵素処理、又はセルロースと共有結合を形成し得る化合物による処理などが挙げられる。
オゾン処理の一例としては、特開2010−254726号公報に記載されている方法を挙げることができる。具体的には、セルロース繊維をオゾン処理した後、水に分散し、得られたセルロース繊維の水系懸濁液を粉砕処理する。
酵素処理の一例としては、特願2012−115411号(特願2012−115411号に記載の内容は全て本明細書中に引用されるものとする)に記載の方法を挙げることができる。具体的には、セルロース原料を、少なくとも酵素のEG活性とCBHI活性の比がO. 06以上の条件下で酵素で処理する方法である。
EG活性は下記のように測定し、定義される。
濃度1% (W/V) のカルボキシルメチルセルロース(CMCNa High viscosity; Cat No 150561, MP Biomedicals, lnc.)の基質溶液(濃度100mM、pH5.0の酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液含有)を調製した。測定用酵素を予め緩衝液(前記同様)で希釈(希釈倍率は下記酵素溶液の吸光度が下記グルコース標準液から得られた検量線に入ればよい)した。90μlの前記基質溶液に前記希釈して得られた酵素溶液10μlを添加し、37℃、30分間反応させた。
検量線を作成するために、イオン交換水(ブランク)、グルコース標準液(濃度0.5〜5.6mMからすくなくとも濃度が異なる標準液4点)を選択し、それぞれ100μlを用意し、37℃、30分間保温した。
前記反応後の酵素含有溶液、検量線用ブランクおよびグルコース標準液に、それぞれ300 μlのDNS発色液(1. 6質量%のNaOH、1質量%の3,5−ジニトロサリチル酸、30質量%の酒石酸カリウムナトリウム)を加えて、5分間煮沸し発色させた。発色後直ちに氷冷し、2mlのイオン交換水を加えてよく混合した。30分間静置した後、1時間以内に吸光度を測定した。
吸光度の測定は96穴マイクロウェルプレート(269620、NUNC社製)に20Oμlを分注し、マイクロプレートリーダー(infiniteM200、TECAN社製)を用い、540nmの吸光度を測定した。
ブランクの吸光度を差し引いた各グルコース標準液の吸光度とグルコース濃度を用い検量線を作成した。酵素溶液中のグルコース相当生成量は酵素溶液の吸光度からブランクの吸光度を引いてから検量線を用いて算出した(酵素溶液の吸光度が検量線に入らない場合は前記緩衝液で酵素を希釈する際の希釈倍率を変えて再測定を行う) 。 1分間にlμmoleのグルコース等量の還元糖を生成する酵素量を1単位と定義し、下記式からEG活性を求める。
EG活性=緩衝液で希釈して得られた酵素溶液1m1のグルコース相当生成量(μmole) /30分×希釈倍率
[福井作蔵, “生物化学実験法(還元糖の定量法)第二版”、学会出版センター、p.23〜24(1990年)参照]
CBHI活性は下記のように測定し、定義される。
96穴マイクロウェルプレート(269620、NUNC社製)に1. 25mMの4-Methyl-umberiferyl-cel1obioside (濃度125mM、pH5. 0の酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液に溶解した) 3 2μlを分注し、100mMのGlucono-l,5-Lactone 4μlを添加し、さらに、前記同様の緩衝液で希釈(希釈倍率は下記酵素溶液の蛍光発光度が下記標準液から得られた検量線に入ればよい)した測定用酵素液4μlを加え、37℃、30分間反応させた後、500mMのglycine-NaOH緩衝液(pH10.5)200μlを添加し、反応を停止させた。
前記同様の96穴マイクロウエルプレートに検量線の標準液として4-Methyl-umberiferon標準溶液40μ1 (濃度0〜50μMのすくなくとも濃度が異なる標準液4点)を分注し、37℃、30分間加温した後、500mMのglycine-NaOH緩衝液(pH10.5)200μlを添加した。
マイクロプレートリーダー(F1uoroskanAscentFL、ThermoーLabsystems社製)を用い、350nm (励起光460n皿)における蛍光発光度を測定した。標準液のデータから作成した検量線を用い、酵素溶液中の4-Methy1-umberiferon生成量を算出した(酵素溶液の蛍光発光度が検量線に入らない場合は希釈率を変えて再測定を行う) 。1分間に1μmo1の4-Methyl-umberiferonを生成する酵素の量を1単位とし、下記式からCBHI活性を求める。
CBHI活性=希釈後酵素溶液1m1の4-Methyl-umberiferon生成量(μmo1e)/30分×希釈倍率
セルロースと共有結合を形成し得る化合物による処理としては、特開2011−162608号公報に記載されている四級アンモニウム基を有する化合物による処理、特願2012−24457(特願2012−24457に記載の内容は全て本明細書中に引用されるものとする)に記載されているカルボン酸系化合物を使用する方法、並びに特願2011−252649(特願2011−252649に記載の内容は全て本明細書中に引用されるものとする)に記載されている「構造中にリン原子を含有するオキソ酸、ポリオキソ酸又はそれらの塩から選ばれる少なくなくとも1種の化合物」を使用する方法などを挙げることができる。
特開2011−162608号公報に記載されている四級アンモニウム基を有する化合物による処理は、セルロース繊維を含有する材料中の水酸基と四級アンモニウム基を有するカチオン化剤とを反応させて、該セルロース繊維を含有する材料をカチオン変性する方法である。
特願2012−24457に記載されているカルボン酸系化合物を使用する方法とは、2つ以上のカルボキシ基を有する化合物、2つ以上のカルボキシ基を有する化合物の酸無水物、およびそれらの誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種のカルボン酸系化合物により、セルロースを含む繊維原料を処理して、セルロースにカルボキシ基を導入するカルボキシ基導入工程と、前記カルボキシ基導入工程終了後に、カルボキシ基を導入したセルロースをアルカリ溶液で処理するアルカリ処理工程を含む方法である。
カルボン酸系化合物は、2つ以上のカルボキシ基を有する化合物、2つ以上のカルボキシ基を有する化合物の酸無水物、およびそれらの誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種である。2つ以上のカルボキシ基を有する化合物の中では、2つのカルボキシ基を有する化合物(ジカルボン酸化合物)が好ましい。
2つ以上のカルボキシ基を有する化合物としては、プロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(コハク酸)、ペンタン二酸(グルタル酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、2−メチルプロパン二酸、2−メチルブタン二酸、2メチルペンタン二酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2−ブテン二酸(マレイン酸、フマル酸)、2−ペンテン二酸、2,4−ヘキサジエン二酸、2−メチル−2−ブテン二酸、2−メチル−2ペンテン二酸、2−メチリデンブタン二酸(イタコン酸)、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸(フタル酸)、ベンゼン−1,3−ジカルボン酸(イソフタル酸)、ベンゼン−1,4−ジカルボン酸(テレフタル酸)、エタン二酸(シュウ酸)等のジカルボン酸化合物が挙げられる。
また、2つ以上のカルボキシ基を有する化合物の誘導体としては、2−ヒドロキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸(クエン酸)、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボ
ン酸(ピロメリット酸)等の前記ジカルボン酸化合物の誘導体が挙げられる。
2つ以上のカルボキシ基を有する化合物の酸無水物としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸、無水ピロメリット酸、無水1,2−シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸化合物や複数のカルボキシ基を含む化合物の酸無水物が挙げられる。
2つ以上のカルボキシ基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては、ジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等の、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が置換基(例えば、アルキル基、フェニル基等)で置換されたものが挙げられる。
カルボン酸系化合物による処理温度は、セルロースの熱分解温度の点から、250℃以下であることが好ましい。さらに、処理の際に水が含まれている場合には、80〜200℃にすることが好ましく、100〜170℃にすることがより好ましい。また、カルボン酸系化合物をガス化する場合には、カルボン酸系化合物の沸点以上あるいは昇華点以上の温度にすることが好ましい。カルボン酸系化合物が無水マレイン酸または無水コハク酸である場合には、100℃以上であることが好ましい。
アルカリ処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ溶液中に、カルボキシ基導入セルロースを浸漬する方法が挙げられる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。無機アルカリ化合物としては、アルカリ金属の水酸化物またはアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩またはアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属のリン酸塩またはアルカリ土類金属のリン酸塩が挙げられる。
特願2011−252649に記載されている「構造中にリン原子を含有するオキソ酸、ポリオキソ酸又はそれらの塩から選ばれる少なくなくとも1種の化合物」を使用する方法は、本発明の好ましい態様で使用する方法である。
構造中にリン原子を含有するオキソ酸、ポリオキソ酸又はそれらの塩から選ばれる少
なくとも1種の化合物(以下化合物Aと称す)によりリグノセルロース原料を処理する方法としては、リグノセルロース原料に化合物Aの粉末や水溶液を混合する方法、リグノセルロース原料のスラリーに化合物Aの水溶液を添加する方法等が挙げられる。
化合物Aはリン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸あるいはこれらのエステルが挙げられる。これらは塩の形を取っても構わない。上記の中でも、低コストであり、扱いやすく、またパルプ繊維のセルロースにリン酸基を導入して、解繊効率の向上が図れるなどの理由からリン酸基を有する化合物が好ましい。
リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸のナトリウム塩であるリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、更にリン酸のカリウム塩であるリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、更にリン酸のアンモニウム塩であるリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
これらのうち、リン酸基導入の効率が高く、下記解繊工程で解繊しやすく、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましい。特にリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムが好ましい。また、反応の均一性が高まり、且つリン酸基導入の効率が高くなることから前記リン酸系化合物は水溶液として用いることが望ましい。リン酸系化合物の水溶液のpHは、リン酸基導入の効率が高くなることから7以下であることが好ましいが、パルプ繊維の加水分解を抑える観点からpH3〜7が好ましい。
リグノセルロース原料に対する化合物Aの質量割合は、特に限定するものではないが、リグノセルロース原料100質量部に対して、化合物Aがリン元素量として0.2〜500質量部が好ましく、1〜400質量部がより好ましく、2〜200質量部が最も好ましい。化合物Aの割合が前記下限値以上であれば、微細繊維状セルロースの収率をより向上させることができる。しかし、前記上限値を超えても、収率向上の効果は頭打ちとなり、無駄に化合物Aを使用するだけである。
上記した化合物Aによる処理工程においては加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理温度は、セルロースの熱分解温度の点から、250℃以下であることが好ましい。また、セルロースの加水分解を抑える観点から、100〜170℃で加熱処理することが好ましい。さらに、加熱処理の際に水が含まれている間は130℃以下、好ましくは110℃以下で加熱し、水を除いた後、100〜170℃で加熱処理することが好ましい。
加熱装置はスラリーが保持する水分およびリン酸基などの付加で生じる水分を逐一系外に排出できる、送風方式のオーブン等が好ましい。これはリン酸エステル化の逆反応であるリン酸エステル結合の加水分解反応を抑制するためである。
本発明では、前記微細繊維状セルロースと微細繊維状セルロース以外の繊維を混合して用いることもできる。微細繊維状セルロース以外の繊維としては、例えば、無機繊維、有機繊維、合成繊維等、半合成繊維、再生繊維が挙げられる。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、岩石繊維、金属繊維等が挙げられるがこれらに限定されない。有機繊維としては、例えば、炭素繊維、キチン、キトサン等の天然物由来の繊維等が挙げられるがこれらに限定されない。合成繊維としては、例えば、ナイロン、ピニロン、ビニリデン、ポリエステル、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリウレタン、アクリル、ポリ塩化ビニル、アラミド等が挙げられるがこれらに限定されない。半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート、プロミックス等が挙げられるがこれらに限定されない。再生繊維としては、例えば、レーヨン、キュプラ、ポリノジックレーヨン、リヨセル、テンセル等が挙げられるがこれらに限定されない。前記微細繊維状セルロースと微細繊維状セルロース以外の繊維を混合して用いる場合、微細繊維状セルロース以外の繊維は、必要に応じて化学的処理、解繊処理等の処理を施すことができる。微細繊維状セルロース以外の繊維に化学的処理、解繊処理等の処理を施す場合、微細繊維状セルロース以外の繊維は、微細繊維状セルロースと混合してから化学的処理、解繊処理等の処理を施すこともできるし、微細繊維状セルロース以外の繊維に化学的処理、解繊処理等の処理を施してから微細繊維状セルロースと混合することもできる。微細繊維状セルロース以外の繊維を混合する場合、微細繊維状セルロースと微細繊維状セルロース以外の繊維の合計量における微細繊維状セルロース以外の繊維の添加量は特に限定されないが、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。特に好ましくは20質量%以下である。
(解繊処理)
解繊処理工程では、解繊処理装置を用いて、前記の化学的処理で得られたリグノセルロース原料を解繊処理して、微細繊維状セルロース懸濁液を得る。
解繊処理装置としては、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、ビーターなど、湿式粉砕する装置等を適宜使用することができるが、特にこれらに限定されない。
解繊処理の際には、化学的処理で得られたリグノセルロース原料を水と有機溶媒を単独または組み合わせて希釈してスラリー状にすることが好ましい。希釈後の固形分濃度は0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。希釈後の固形分濃度が前記下限値以上であれば、解繊処理の効率が向上し、前記上限値以下であれば、解繊処理装置内での閉塞を防止できる。
<抄紙用ワイヤー>
本発明では、微細繊維状セルロースを、少なくとも一方の面が疎水化されている基材からなる抄紙用ワイヤーで濾過する。
抄紙用ワイヤーを構成する基材の材料は特に限定されないが、好ましくは紙基材である。
抄紙用ワイヤーは、微細繊維状セルロース懸濁液を濾過脱水して微細繊維状セルロース含有シートを製造する際に使用されるものである。本発明では、基材の少なくとも一方の面が、疎水化剤によって疎水化されている。基材は、他方の面が平滑化されていない方が透水性を確保しやすい。また、基材の他方の面が疎水化されていない方が透水性を確保しやすい。したがって、基材の一方の面のみを疎水化平滑面とすることにより、より高い生産性で微細繊維状セルロース含有シートを製造できる。
(基材)
基材としては、例えば、片艶紙、上質紙、中質紙、コピー用紙、アート紙、コート紙、クラフト紙、板紙、白板紙、新聞用紙、更紙等の紙基材が挙げられる。紙基材の中でも、片艶紙を用い、その艶面を疎水化する面とすることが好ましい。ここで、片艶紙は、抄紙後の湿紙をヤンキードライヤーによって乾燥して得たものであり、一方の面が高光沢化された艶面にされている。また、艶面と反対側の面(更面)側は、艶面側よりも密度が低くなっている。したがって、艶面にて高い平滑性を得ながらも、充分な透気性を確保できるため、疎水化した艶面で微細繊維状セルロースを抄紙すれば、濾過速度を低下させずに面質がより良好な微細繊維状セルロース含有シートを容易に得ることができる。
紙基材は、パルプを含む紙料を抄紙機でまたは手抄きで抄造して得られる。パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプのいずれであってもよい。木材パルプの原料としては針葉樹や広葉樹が挙げられるが、紙基材の平滑性が高くなる点では、広葉樹を原料としたパルプを多く含むことが好ましい。また、パルプは、機械パルプ、化学パルプのいずれであってもよい。化学パルプとしては、クラフトパルプ(KP,蒸解液:NaOHとNa2S)、ポリサルファイドパルプ(SP,蒸解液:NaOHとNa2X)、ソーダパルプ(蒸解液:NaOH)、亜硫酸塩パルプ(蒸解液:Na2SO3)、炭酸ソーダパルプ(蒸解液:Na2CO3)、酸素ソーダパルプ(蒸解液:O2とNaOH)などがある。これらの中でも、クラフトパルプが平滑性やコストの面で好ましい。また、パルプは、未晒パルプであってもよいし、晒パルプであってもよい。また、パルプは未叩解パルプおよび叩解パルプのいずれでも構わないが、紙基材の平滑性が向上する点では、叩解パルプが好ましい。JIS P8121に従って測定された叩解パルプのカナダ標準濾水度は40〜450mlが好ましく、60〜400mlがより好ましく、80〜380mlが特に好ましい。叩解パルプのカナダ標準濾水度が前記下限値以上であれば、紙基材の透気度がより低くなり(透気性が高くなり)、微細繊維状セルロース懸濁液の脱水速度がより高くなり、前記上限値以下であれば、紙基材の平滑性がより高くなる。
紙料には、デンプンやポリアクリルアミドなどの紙力剤、ロジン系サイズ剤、アルケニルケテンダイマー系サイズ剤、ASA系サイズ剤、硫酸バンド、ワックスエマルジョンなどの添加剤が含まれてもよい。これらのうち、抄紙用ワイヤーの表面強度が高くなることから、紙力剤を含むことが好ましい。抄紙用ワイヤーの表面強度が高くなると、後述する微細繊維状セルロース含有シートの製造において微細繊維状セルロース含有シートの剥離性が高くなる。
また、抄紙用ワイヤーの耐水性が向上することから、サイズ剤またはワックスエマルジョンが好ましい。抄紙用ワイヤーの耐水性が高いと、微細繊維状セルロース含有シートの製造において微細繊維状セルロース懸濁液の濾過時間が短くなり、また、破れにくくなる。
抄造の際に使用される抄紙機としては、通常の抄紙で用いられる長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機のほか、これらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機が挙げられる。
紙基材の、疎水化される少なくとも一方の面の表面平滑度(王研式平滑度(JAPAN TAPPI 紙パルプ試験法,No.5−2:2000)で測定)は50秒以上であることが好ましく、150〜800秒であることがより好ましい。紙基材の、疎水化される少なくとも一方の面の表面平滑度が前記下限値以上であれば、後述する微細繊維状セルロース含有シートの製造において、面質が良好な微細繊維状セルロース含有シートを容易に得ることができ、表面平滑度が前記上限値以下であれば、微細繊維状セルロース含有シートの生産性低下が防止された抄紙用ワイヤーを容易に得ることができる。
紙基材の王研式透気度(JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.5−2:2000)は20〜500秒が好ましく、40〜300秒であることがより好ましい。紙基材の透気度が前記下限値以上であれば、微細繊維状セルロースをより捕捉でき、前記上限値以下であれば、微細繊維状セルロース含有シートの生産性低下が防止された抄紙用ワイヤーを容易に得ることができる。
紙基材の坪量は15〜300g/m2であることが好ましく、20〜200g/m2であることがより好ましい。紙基材の坪量が前記下限値以上であれば、充分に微細繊維状セルロースを捕捉できる抄紙用ワイヤーをより容易に得ることができ、紙基材の坪量が前記上限値以下であれば、微細繊維状セルロース含有シートの生産性低下が防止された抄紙用ワイヤーをより容易に得ることができる。
紙基材のうち、片艶紙の坪量は15〜300g/m2であることが好ましく、20〜200g/m2であることがより好ましい。片艶紙の坪量が前記下限値以上であれば、充分に微細繊維状セルロースを捕捉できる抄紙用ワイヤーをより容易に得ることができ、片艶紙の坪量が前記上限値以下であれば、微細繊維状セルロース含有シートの生産性低下が防止された抄紙用ワイヤーをより容易に得ることができる。
(疎水化剤)
抄紙用ワイヤーの疎水化は、疎水化剤により行うことができる。本発明で使用する疎水化剤は、水との親和性が低く、水に溶解しにくい又は混合しにくい物質である。具体的には、次のように測定した水の接触角が90°以上になる薬剤である。
・接触角の測定方法
コロナ処理したポリエチレンテレフタレートの表面に薬剤を1g/m2の塗工量で塗工し、塗工した薬剤の表面に蒸留水を滴下し、1分後に動的接触計により接触角を測定する。
疎水化剤は、ワイヤーの離型性をより高くできることから、シリコーン化合物、フッ素化合物、ポリオレフィンワックス、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸アルカリ塩、アクリル系重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、より剥離性に優れることから、シリコーン化合物がより好ましい。本明細書において、「シリコーン化合物」とは、ポリシロキサンのことである。
シリコーン化合物の中でも、特に剥離性に優れることから、直鎖状のジメチルポリシロキサンが好ましい。さらに、直鎖状のジメチルポリシロキサンの中でも、結晶性が低く、常温で固体とならないため、熱硬化性、活性エネルギー線硬化性(紫外線硬化性、電子線硬化性)のものが好ましい。熱硬化性のジメチルポリシロキサンとしては縮合型、付加反応型が挙げられる。
縮合型の熱硬化性ジメチルポリシロキサンとしては、両末端シラノール官能性長鎖ジメチルポリシロキサンと、メチルハイドロジェンポリシロキサンあるいはメチルメトキシポリシロキサンとを有機スズ系触媒の存在下で反応・縮合させるものが挙げられる。
付加反応型の熱硬化性ジメチルポリシロキサンとしては、ビニル基を有する直鎖状メチルビニルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンとを、白金系触媒の存在下で反応させるものが挙げられる。
また、熱硬化性ジメチルシロキサンとしては、トルエンやn−ヘキサンで希釈された溶剤タイプやエマルションタイプ、無溶剤タイプを使用できるが、ポットライフや片艶紙への塗工、含浸のしやすさ点から、エマルションタイプが好ましい。
活性エネルギー線硬化性のジメチルポリシロキサンとしては、アクリロイル基を有するジメチルポリシロキサンが挙げられる。
その他のシリコーン系化合物として、メルカプト基と不飽和二重結合を有するジメチルポリシロキサン系化合物、エポキシ基を有するジメチルポリシロキサン系化合物などが挙げられる。
フッ素化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
ポリオレフィンワックスとしては、パラフィンワックス、カルナバロウワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス等が挙げられる。
高級脂肪酸アミドとしては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、べへン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。
高級脂肪酸アルカリ塩類としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸カリウム、オレイン酸アンモニウム等が挙げられる。
アクリル系重合体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの単独重合体または共重合体、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと、スチレン、ブタジエン等の他のビニル系重合性モノマーとの共重合体が挙げられる。
上記化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化剤は、基材内の全体に含まれてもよいし、表面側(両面側又は片面側)に偏在していてもよい。少ない疎水化剤使用量で充分な剥離性が得られる点では、疎水化剤は、表面側に偏在することが好ましい。
(抄紙用ワイヤーの物性)
抄紙用ワイヤーの疎水化平滑面は、好ましくは、表面平滑度(王研式平滑度(JAPAN TAPPI 紙パルプ試験法,No.5−2:2000)で測定)が50秒以上である。また、疎水化平滑面の表面平滑度は、好ましくは150〜800秒、より好ましくは200〜700秒である。
疎水化平滑面の表面平滑度が前記下限値未満であると、後述する微細繊維状セルロース含有シートの製造において微細繊維状セルロース含有シートの剥離性が低くなり、面質が低下する。一方、表面平滑度が前記上限値を超えたものは、紙基材の表面に有する微細孔が繊維や疎水化剤によって塞がれており、微細繊維状セルロース懸濁液の脱水時間が長くなるおそれがある。
抄紙用ワイヤーの王研式透気度(JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.5−2:2000)は40〜300秒が好ましい。抄紙用ワイヤーの透気度が前記下限値以上であれば、微細繊維状セルロースをより捕捉でき、前記上限値以下であれば、透水性がより高くなり、後述する微細繊維状セルロース含有シートの製造における濾過時間をより短縮できる。
抄紙用ワイヤーの表面平滑度および透気度を前記範囲にするためには、紙基材の表面平滑性、疎水化剤の量を適宜選択すればよい。紙基材の表面平滑性が高い程、疎水化剤の量を多くする程、表面平滑度が高くなり、透気度が小さくなる。
また、抄紙用ワイヤー製造の際にカレンダー処理等の表面処理を施し、その処理条件を調整することにより、抄紙用ワイヤーの表面平滑度および透気度を調整することもできる。例えば、カレンダー圧力を高くする程、表面平滑度が高くなり、透気度が小さくなる。
抄紙用ワイヤーの坪量は15〜300g/m2であることが好ましく、20〜200g/m2であることがより好ましい。抄紙用ワイヤーの坪量が前記下限値以上であれば、充分な強度を確保でき、破断しにくくなる。一方、抄紙用ワイヤーの坪量が前記上限値以下であれば、充分な可撓性を確保でき、取り扱い性が向上する。
(抄紙用ワイヤーの製造方法)
上記抄紙用ワイヤーの製造方法は、基材の少なくとも一方の面を、疎水化剤により疎水化する疎水化工程を有する。疎水化方法としては、基材の少なくとも一方の面側に、疎水化剤および分散媒を含む塗料(以下、「疎水化剤塗料」という。)を塗工し、乾燥させる方法、サイズプレスのように紙基材に疎水化剤塗料を含浸させ、乾燥させる方法や紙基材を製造する湿紙の段階でその表面に疎水化剤塗料を塗布した後に乾燥させる方法が挙げられる。疎水化剤塗料に含まれる分散媒は、水、有機溶剤(例えば、炭化水素、アルコール、エーテル、ケトン等)、水と有機溶剤との混合物のいずれであってもよい。
疎水化剤塗料を塗工する場合、塗工装置としては、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、カーテンコーター、ダイコーター等が挙げられる。
疎水化剤の乾燥塗工量は0.1〜10g/m2であることが好ましく、0.1〜8g/m2であることがより好ましく、0.2〜5g/m2であることがさらに好ましい。塗工量が前記下限値以上であれば、微細繊維状セルロース含有シートを容易に剥離でき、塗工量が前記上限値以下であれば、効果が充分に得られ、コストアップを抑制できる。
基材として片艶紙を用いる場合には、艶面に疎水化剤塗料を塗工することが好ましい。片艶紙の艶面を疎水化すれば、面質をより良好にできる抄紙用ワイヤーを得ることができる。また、片艶紙の更面には疎水化剤を塗工せず、艶面のみを疎水化平滑面とすることが好ましい。艶面のみを疎水化平滑面にすることにより、透水性をより向上させることができる。
疎水化剤塗料の乾燥は、通常の熱風による加熱乾燥、赤外線照射による加熱乾燥、真空乾燥、自然乾燥を適用することができる。また、ある程度乾燥させた後に、ヤンキードライヤーで乾燥させてもよい。ヤンキードライヤーを用いて乾燥させることにより、ヤンキードライヤーに接触させた面の平滑性をより向上させることができる。
基材に疎水化剤塗料を塗工した後には、マシンカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダーを用いて仕上げ処理を施してもよい。仕上げ処理を施せば、抄紙用ワイヤーの平滑性が向上し、抄紙用ワイヤーを用いて得た微細繊維状セルロース含有シートの面質がより向上する。
基材の全体に疎水化剤塗料を含浸させる場合には、サイズプレスや疎水化剤塗料が入れられた槽に基材を浸漬する方法が挙げられる。この方法では、基材の表面から疎水化剤が浸透するため、両側の表面から疎水化できる。含浸時間を長くした場合には、基材全体に疎水化剤が含まれるようになるが、疎水化剤は表面側のみに含まれれば充分であるため、必ずしも含浸時間を長くする必要はない。
疎水化剤の含浸量は、基材100質量部に対して0.01〜10質量部とすることが好ましく、0.1〜5質量部とすることがより好ましい。含浸量が前記下限値以上であれば、微細繊維状セルロース含有シートを容易に剥離でき、含浸量が前記上限値以下であれば、効果が充分に得られ、コストアップを抑制できる。基材に疎水化剤塗料を含浸させた後にも、上記仕上げ処理を施してもよい。
基材を製造する湿紙段階で表面に疎水化剤を塗布した後に乾燥させる場合はサイズプレス方式が好ましく、その際の塗工量は、基材に疎水化剤塗料を塗布する方法と同様である。乾燥方法についても、基材に疎水化剤塗料を塗布する方法と同様であるが、艶面を疎水化平滑面とした片艶紙が容易に得られる点で、ヤンキードライヤーを用い、ヤンキードライヤーの周面に疎水化剤を塗布した面が接するように乾燥することができる。また、疎水化剤塗料塗布後には、基材に疎水化剤塗料を塗布する方法と同様に、カレンダーを用いた仕上げ処理を施してもよい。
<微細繊維状セルロース含有シートの製造方法>
本発明の微細繊維状セルロース含有シートの製造方法の一実施形態について説明する。本実施形態の微細繊維状セルロース含有シートの製造方法は、微細繊維状セルロース懸濁液を、上記抄紙用ワイヤーを用いて濾過し、脱水して含水ウェブを得る脱水工程と、含水ウェブを乾燥する乾燥工程とを有する。
(製造装置)
微細繊維状セルロース含有シートを製造するための装置としては、例えば、図1に示すような、脱水セクション15と、脱水セクション15の下流側に設けられた乾燥セクション20と、乾燥セクションの下流側に設けられた巻取セクション30とを具備する製造装置を用いることができる。
脱水セクション15は、抄紙用ワイヤー12を用いて微細繊維状セルロース懸濁液Aを搾水して含水ウェブB得るセクションである。脱水セクション15には、抄紙用ワイヤー12を疎水化平滑面が上を向くように繰り出す送出リール16、及び微細繊維状セルロース懸濁液Aから分散媒を強制的に搾水する吸引手段14が設けられている。吸引手段14は、抄紙用ワイヤー12の下方に配置され、その上面には真空ポンプ(図示せず)に接続された吸引孔(図示せず)が多数形成されている。
乾燥セクション20は、含水ウェブBを、ドライヤーを用いて乾燥して微細繊維状セルロース含有シートCを得るセクションである。乾燥セクション20には、フード26内に、シリンダードライヤーで構成された第1ドライヤー21および第2ドライヤー22と、第1ドライヤー21の外周に沿って配置されたフェルト布24とが設けられている。第1ドライヤー21は、第2ドライヤー22よりも上流側に配置されている。また、フェルト布24は無端状にされており、フェルト布用ガイドロール25によって、循環走行している。
乾燥セクション20では、含水ウェブBを、含水ウェブ用ガイドロール23によって移送するようになっている。具体的には、まず、含水ウェブBの微細繊維状セルロース懸濁液Aが塗布された面A(以下、「塗布面A」という。)が第1ドライヤー21の外周面に接し、含水ウェブBの微細繊維状セルロース懸濁液Aが塗布されなかった面B(以下、「非塗布面B」という。)がフェルト布24に接するように移送し、次いで、塗布面Aが第2ドライヤー22の外周面に接するようになっている。
巻取セクション30は、抄紙用ワイヤー12から微細繊維状セルロース含有シートCを分離し、これを巻き取るセクションである。巻取セクション30には、抄紙用ワイヤー12から微細繊維状セルロース含有シートCを分離する一対の分離ローラ31a,31bと、微細繊維状セルロース含有シートCを巻き取る巻取リール32と、使用済みの抄紙用ワイヤー12を巻き取って回収する回収リール33とが設けられている。分離ローラ31aは抄紙用ワイヤー12側に、分離ローラ31bは微細繊維状セルロース含有シートC側に配置されている。
(脱水工程)
脱水工程では、抄紙用ワイヤー12を送出リール16から繰り出し、抄紙用ワイヤー12の疎水化平滑面に微細繊維状セルロース懸濁液Aをヘッ18bから吐出する。吸引手段14により、抄紙用ワイヤー12上の微細繊維状セルロース懸濁液Aに含まれる分散媒を吸引し、脱水して、含水ウェブBを得る。脱水工程において、抄紙用ワイヤー12の走行張力が大きい場合には、抄紙用ワイヤー12が破断するおそれがあるため、通常の抄紙に使用されるワイヤーを抄紙用ワイヤー12の下に配置して抄紙用ワイヤー12を支持してもよい。
抄紙用ワイヤー12に微細繊維状セルロース懸濁液Aを供給する前には、予め抄紙用ワイヤー12に水を含浸させて湿潤状態にしてもよい。抄紙用ワイヤー12に微細繊維状セルロース懸濁液Aを吐出すると、ワイヤーの吸水により伸びてシワが発生することがあるが、予め湿潤状態にすれば、そのシワの発生を防止できる。
抄紙用ワイヤー12を湿潤状態にする手段としては、抄紙用ワイヤー12を水に浸漬させる水槽、水の塗工装置が挙げられる。水の塗工装置としては、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、カーテンコーター、ダイコーター等を使用することができる。
脱水工程にて抄紙用ワイヤー12に供給する微細繊維状セルロース懸濁液Aは、微細繊維状セルロースおよび水を含有する液である。
さらに、得られる微細繊維状セルロース含有シートCの多孔性を向上させるためには、微細繊維状セルロース懸濁液Aに有機溶媒を含有させるかまたは、脱水後の湿紙に有機溶媒を添加することが好ましい。
有機溶媒を混合する場合、水と有機溶媒との質量比率(水:有機溶媒)を100:10〜10:100にすることが好ましく、100:30〜30:100にすることがより好ましく、100:50〜50:100にすることがさらに好ましい。有機溶媒の混合量が前記下限値以上であれば、微細繊維状セルロース含有シートCの多孔性を充分に向上させることができ、前記上限値以下であれば、微細繊維状セルロース懸濁液Aの高粘度化を抑制できる。
有機溶媒を添加する場合、パルプ1質量部(乾燥重量)に対して0.1〜100質量部滴下させることが好ましく、1〜50質量部滴下することがさらに好ましい。有機溶媒の混合量が前記下限値以上であれば、微細繊維状セルロース含有シートCの多孔性を充分に向上させることができ、前記上限値以下であれば、有機溶媒の使用量を削減できる。
有機溶媒としては、例えば、ジプロビレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテルなどのグライム類、1,2−ブタンジオール 、1,6−ヘキサンジオールなどの2価アルコール類、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。これらの有機溶媒は2種以上を併用してもかまわない。
微細繊維状セルロース懸濁液Aの固形分濃度は0.05〜3.0質量%であることが好ましく、0.1〜2.0質量%であることがより好ましい。微細繊維状セルロース懸濁液Aの濃度が前記下限値以上であれば、搾水工程にて充分な生産効率を確保でき、前記上限値以下であれば、高粘度化を防ぎ、取り扱い性を向上させることができる。
(乾燥工程)
乾燥工程では、まず、抄紙用ワイヤー12の上面に載置した含水ウェブBを、加熱した第1ドライヤー21の外周面の約半周に、第1ドライヤー21の外周面に塗布面Aが接するように巻き掛けて、含水ウェブBに残留していた分散媒を蒸発させる。蒸発した分散媒は、抄紙用ワイヤー12の細孔を通ってフェルト布24から蒸発する。
次いで、含水ウェブBを、加熱した第2ドライヤー22の外周面の約3/4周に、第2ドライヤー22の外周面に塗布面Aが接するように巻き掛けて、含水ウェブBに残留していた分散媒を蒸発させる。
このように含水ウェブBを乾燥させて微細繊維状セルロース含有シートCを得る。
(巻取工程)
巻取工程では、抄紙用ワイヤー12および微細繊維状セルロース含有シートCを一対の分離ローラ31a,31bで挟み込むことにより、微細繊維状セルロース含有シートCを抄紙用ワイヤー12から分離させて一方の分離ローラ31bの表面に転移する。そして、分離ローラ31bの表面から微細繊維状セルロース含有シートCを引き離して、巻取りリール32により巻き取る。それと共に、使用した抄紙用ワイヤー12を回収リール33により巻き取る。
上記のように抄紙用ワイヤー12を用いることにより、微細繊維状セルロース含有シートを得ることができる。
上記微細繊維状セルロース含有シートの製造方法では、抄紙用ワイヤー12の疎水化平滑面に微細繊維状セルロース懸濁液Aを供給して抄紙するため、得られた微細繊維状セルロース含有シートCを抄紙用ワイヤー12から容易に剥離できる。そのため、得られた微細繊維状セルロース含有シートCの面質が良好になる。さらに、上記微細繊維状セルロース含有シートの製造方法では、上記抄紙用ワイヤー12を用いるため、微細繊維状セルロースを充分に捕捉でき、歩留まりが高くなる。その上、抄紙用ワイヤー12によれば、常に新しい抄紙用ワイヤー12によって微細繊維状セルロース懸濁液Aを容易に濾過することができるため、充分な生産性を確保できる。
(他の実施形態)
なお、本発明の微細繊維状セルロース含有シートの製造方法は、上記製造装置1を用いた製造方法でなくてもよく、例えば、上記製造装置1において抄紙用ワイヤー12を無端または有端のベルトの上に載せて移送してもよい。また、本発明の微細繊維状セルロース含有シートの製造方法では、一般の紙を製造する際に使用する抄紙機を容易に適用することができる。抄紙機としては、長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機のほか、これらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機を適用できる。また、微細繊維状セルロース含有シート製造は、手抄きで行っても構わない。
<微細繊維状セルロース含有シート>
本発明の方法で製造される微細繊維状セルロース含有シートの全光線透過率は、特に限定されないが、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
本発明の方法で製造される微細繊維状セルロース含有シートのヘイズは、特に限定されないが、好ましくは20%以下であり、より好ましくは15%以下であり、特に好ましくは12%以下である。
以下の実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(微細繊維状セルロース懸濁液A)
リン酸二水素ナトリウム二水和物265g、及びリン酸水素二ナトリウム197gを538gの水に溶解させ、リン酸系化合物の水溶液(以下、「リン酸化試薬」という。)を得た。
針葉樹晒クラフトパルプ(王子製紙社製、水分50質量%、JIS P8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)700ml)を含水率80質量%になるようイオン交換水で希釈し、パルプスラリーを得た。このパルプスラリー500gに前記リン酸化試薬210gを加え、105℃の送風乾燥機(ヤマト科学株式会社 DKM400)で時折混練しながら質量が恒量となるまで乾燥させた。ついで150℃の送風乾燥機で時折混練しながら1時間加熱処理して、セルロースにリン酸基を導入した。
次いで、リン酸基を導入したセルロースに5000mlのイオン交換水を加え、攪拌洗浄後、脱水した。脱水後のパルプを5000mlのイオン交換水で希釈し、攪拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液をpHが12〜13になるまで少しずつ添加して、パルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、5000mlのイオン交換水を加えて洗浄を行った。この脱水洗浄をさらに1回繰り返した。
洗浄脱水後に得られたパルプにイオン交換水を添加して、1.0質量%のパルプスラリーにした。このパルプスラリーを、高圧ホモジナイザー(NiroSoavi社「Panda Plus 2000」)に、操作圧力1200barで10回パスさせ、微細繊維状セルロース懸濁液Aを得た。微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、4.2nmであった。
(抄紙用ワイヤーA)
叩解処理して得た、JIS P8121にしたがって測定されたカナダ標準濾水度(以下、CSF)が350mlの広葉樹晒クラフトパルプを100質量部、サイズ剤(商品名:ファイブラン81K、日本エヌエスシー社製)0.05質量部、硫酸バンド0.45質量部、カチオン化澱粉0.5質量部、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂(紙力増強剤)0.4質量部、歩留向上剤少量よりなる紙料を長網で抄紙した。これにより得た湿紙を乾燥した後、カレンダー処理(線圧:100kg/cm)して、艶面の表面平滑度575秒、更面の表面平滑度7秒、透気度130秒、紙水分5.5%、坪量100g/mの片艶紙を得た。このようにして得た片艶紙の艶面に、シリコーン系疎水化剤KS3600(信越化学工業社製)100部と、硬化剤PL50T(信越化学工業社製)1部を、トルエン/酢酸エチルが3/1の混合溶媒に3質量%濃度になるように添加し攪拌したものをバーコーターで塗工量が2g/mになるように塗工し、100℃で乾燥させて艶面が疎水化処理された抄紙用ワイヤーAを得た。抄紙用ワイヤーAの艶面の表面平滑度は、650秒であった。
(抄紙用ワイヤーB)
叩解処理して得た、JIS P8121にしたがって測定されたカナダ標準濾水度(以下、CSF)が350mlの広葉樹晒クラフトパルプを100質量部、サイズ剤(商品名:ファイブラン81K、日本エヌエスシー社製)0.05質量部、硫酸バンド0.45質量部、カチオン化澱粉0.5質量部、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂(紙力増強剤)0.4質量部、歩留向上剤少量よりなる紙料を長網で抄紙し、抄紙用ワイヤーBを得た。
(実施例1)
図1に示す製造装置を用いて微細繊維状セルロース含有連続シートを製造した。なお、抄紙用ワイヤー12として抄紙用ワイヤーAを用いた。
すなわち、上記微細繊維状セルロース懸濁液Aを供給タンク13に収容し、攪拌機13aにより攪拌しながらダイヘッド18bに供給した。次いでダイコーター18の開口部18aから微細繊維状セルロース懸濁液Aを走行する抄紙用ワイヤー12の上面に供給し、吸引手段14により微細繊維状セルロース懸濁液中の水を吸引して含水ウェブBを得た。
次いで、含水ウェブBを乾燥セクション20に送り、第1ドライヤー21(設定温度80℃)および第2ドライヤー22(設定温度110℃)により乾燥して微細繊維状セルロース含有シートCを得た。
次いで、分離ローラ31a、31bによって抄紙用ワイヤー12と微細繊維状セルロース含有シートCとを剥離(分離)し、微細繊維状セルロース含有シートCを巻取リール32により巻き取り、抄紙用ワイヤー12を回収リール33により巻き取った。得られた微細繊維状セルロース含有シートCの剥離性、シート形成、全光線透過率、及びヘイズを下記の方法で評価した。結果を表1に示す。
<抄紙用ワイヤーからの剥離性>
微細繊維状セルロース含有シートの抄紙用ワイヤーからの剥離性を下記の判断基準で評価した。
○:シートを破断させることなく抄紙用ワイヤーから剥離できた場合
×:シートを破断させることなく抄紙用ワイヤーから剥離できなかった場合
<シート形成の評価>
シート形成について下記の判断基準で評価した。
○:抄紙用ワイヤー上に微細繊維状セルロース含有シートを形成できた。
×:微細繊維状セルロースが抄紙用ワイヤーから抜け落ちて微細繊維状セルロース含有シートを形成できなかった
<全光線透過率の測定>
得られた微細繊維状セルロース含有シートについて、JIS規格K7105に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、型番:HM−150)を用いて、JIS K7136に準じて全光線透過率を測定した。
<ヘイズの測定>
ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、型番:HM−150)を用いて、JIS K7136に準じてヘイズ値を測定した。
(比較例1)
抄紙用ワイヤー12として抄紙用ワイヤーBを用いた以外は実施例1と同様の方法で微細繊維状セルロース含有連続シートを製造した。結果を表1に示す。
(比較例2)
抄紙用ワイヤー12として635メッシュの平網ワイヤ(目開き:20μm)を用いた以外は実施例1と同様の方法で微細繊維状セルロース含有連続シートを製造した。結果を表1に示す。
Figure 2014198928
表1に示すように、実施例1の方法で製造した微細繊維状セルロース含有連続シートは、抄紙用ワイヤーからの剥離性及びシート形成が良好であり、また全光線透過率が高く、ヘイズが低く透明性が高かった。これに対し、比較例1では抄紙用ワイヤーからの剥離性が悪く、また比較例ではシート形成ができなかった。

Claims (8)

  1. リグノセルロース原料を化学的処理及び解繊処理することにより得た平均繊維幅2〜50nmの微細繊維状セルロースを、少なくとも一方の面が疎水化されている基材からなる抄紙用ワイヤーで濾過する工程、及び濾過後に前記抄紙用ワイヤーから微細繊維状セルロース含有シートを剥離する工程を含む、微細繊維状セルロース含有シートの製造方法。
  2. 前記微細繊維状セルロースの平均繊維幅が2nm以上10nm未満である、請求項1に記載の微細繊維状セルロース含有シートの製造方法。
  3. 前記微細繊維状セルロースが、リグノセルロース原料を、構造中にリン原子を含有するオキソ酸、ポリオキソ酸又はそれらの塩から選ばれる少なくなくとも1種の化合物により処理する工程と、前記処理工程後のリグノセルロース原料を解繊処理することにより得た微細繊維状セルロースである、請求項1又は2に記載の微細繊維状セルロース含有シートの製造方法。
  4. 構造中にリン原子を含有するオキソ酸、ポリオキソ酸又はそれらの塩から選ばれる少なくなくとも1種の化合物が、リン酸基を有する化合物である、請求項3に記載の微細繊維状セルロース含有シートの製造方法。
  5. 前記抄紙用ワイヤーが、少なくとも一方の面が疎水化されている紙基材からなる、請求項1から4の何れか1項に記載の微細繊維状セルロース含有シートの製造方法。
  6. 前記紙基材が片艶紙である、請求項5に記載の微細繊維状セルロース含有シートの製造方法。
  7. 前記抄紙用ワイヤーから剥離した微細繊維状セルロース含有シートの全光線透過率が70%以上である、請求項1から6の何れか1項に記載の微細繊維状セルロース含有シートの製造方法。
  8. 前記抄紙用ワイヤーから剥離した微細繊維状セルロース含有シートのヘイズが20%以下である、請求項1から7の何れか1項に記載の微細繊維状セルロース含有シートの製造方法。
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