以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
本実施形態のシステム構成を図1に示す。なお、以下の実施形態では、警備契約先に急行する緊急対処員に事案情報を伝達する場合を例として説明する。
投射システム1においては、侵入異常や設備異常等の事案が発生したときに、事案管理装置2が当該事案に関連する事案情報を生成する。そして、事案管理装置2は、事案発生地点に急行させたい緊急対処員が所持する携帯通信端末4に事案情報を送信する。緊急対処員は、事案情報を受信すると事案発生地点に急行する。事案情報は、事案発生地点に急行する緊急対処員が携帯する携帯通信端末4を中継し、同対処員が携帯するプロジェクタ6にて当該事案情報を当該対処員の掌、事案発生地点の壁などに投射される。これにより、投射システム1は、緊急対処員がハンズフリーにて事案情報を確認しながら緊急対処業務を遂行することを可能にする。
携帯通信端末4とプロジェクタ6は、プロジェクタ6による事案情報の投射が正常に行える状態か否かを判定するために、事案情報の通信に備えて互いに当該通信が可能であるか否かを確認する試験通信を行い、確認した通信状態を携帯通信端末4及びプロジェクタ6を携帯している緊急対処員に報知する。
投射システム1において、携帯通信端末4は、広域通信網3を介して事案管理装置2及び地図情報生成装置7と通信可能に接続される。また、携帯通信端末4が近距離通信網5を介してプロジェクタ6と通信可能に接続される。さらに、携帯通信端末4は、グローバルポジショニングシステム(GPS)8からのGPS信号を受信する。
事案管理装置2は、監視員が常駐する警備センタなどの遠隔地に設置される。サーバ及び操作端末からなる装置である。
事案管理装置2は、侵入検知センサ、設備監視センサなどの監視機器の情報、監視機器の情報と対応付けて当該監視機器が設置された建物の情報を予め記憶している。さらに、事案管理装置2は、緊急対処員の情報、当該情報と対応付けて緊急対処員が携帯している携帯通信端末4のネットワークアドレスなどの端末情報を予め記憶している。
事案管理装置2は、警備契約先の監視機器から異常がある旨の信号を受信すると異常の発生を監視員に報知するとともに異常を検知した監視機器の情報、当該監視機器が設置された建物の情報、当該異常に対する対処が可能な対処員の情報を操作端末に表示して監視員に通知する。監視員が、これらの情報から事案発生地点に急行させる緊急対処員を決定して当該決定を操作端末から指示入力すると、サーバは、事案を一意に特定する事案ID、異常を検知した監視機器の情報、当該監視機器が設置された建物である事案発生地点の位置情報(目標位置)を含めた事案情報を当該対処員と対応付けられた携帯通信端末4宛てに送信する。事案発生地点の位置情報(目標位置)は、事案発生地点の緯度と経度、または住所である。
広域通信網3は、インターネット、公衆電話回線などの通信網である。広域通信網3は、携帯通信端末4と事案管理装置2、携帯通信端末4と地図情報生成装置7を接続する。広域通信網3と携帯通信端末4の間は無線接続である。
携帯通信端末4は、スマートフォン、携帯電話など、対処員が携帯可能な通信端末装置である。携帯通信端末4は、複数の緊急対処員がそれぞれ携帯する。携帯通信端末4は、事案管理装置2および地図情報生成装置7と広域通信網3を介した通信を行う。携帯通信端末4は、事案管理装置2から目標位置を含めた事案情報を受信する。また、携帯通信端末4は、地図情報生成装置7に現在位置と目標位置を送信し、地図情報生成装置7が算出した現在位置から目標位置までの経路を考慮した実距離を地図情報生成装置7から受信する。また、携帯通信端末4は、プロジェクタ6と近距離通信網5を介した通信を行い、事案管理装置2から受信した事案情報の画像データ(事案画像)をプロジェクタ6に送信する。
さらに、携帯通信端末4は、プロジェクタ6と試験通信を行ってプロジェクタ6との通信状態を判定し、通信状態を対処員に報知する。試験通信の実行に際し、GPS8からGPS信号を受信して自端末の現在位置を測位し、現在位置から目標位置までの距離を取得し、距離に応じて試験通信の頻度を制御する。この距離は、広域通信網3経由で地図情報生成装置7から実距離を受信することで取得する。
近距離通信網5は、ブルートゥースなどの近距離無線通信網である。近距離通信網5は、緊急対処員が携帯する携帯通信端末4と当該対処員が携帯するプロジェクタ6を接続する。なお、USBなどの有線通信網でもよい。
プロジェクタ6は、緊急対処員が胸ポケット或いは肩などに装着して携帯することが可能な小型のプロジェクタである。プロジェクタ6は、携帯通信端末4から近距離通信網5を介して受信した事案情報の画像データ(事案画像)を対処員の掌、事案発生地点の壁などに投射する。プロジェクタ6は、必要に応じて事案情報を正常に投射できる状態か否かを判定するために携帯通信端末4との通信状態を判定し、通信状態を対処員に報知する。
地図情報生成装置7は、事案管理装置2と同様に、警備センタ等の遠隔地に設置される装置である。地図情報生成装置7は、監視機器が設置された各建物及び道路情報を含めた地図データを記憶し、広域通信網3経由で携帯通信端末4から携帯通信端末4の現在位置と目標位置を受信すると、現在位置から目標位置までの経路を導出して、導出した経路の実距離を当該携帯通信端末4に送信する。
GPS8は、複数個のGPS衛星からなるシステムであり、これらのGPS衛星が地上へ向けてGPS信号を送信する。
次に、本実施形態の使用イメージの例を図2に示す。
図2(a)のように、緊急対処員9は、衣服(胸の部分)にプロジェクタ6、胸ポケットに携帯通信端末4を装着している。緊急対処員9が事案情報10を確認する際には、図2(a)のように、当該事案情報10から生成された事案画像の投射光11をプロジェクタ6から掌に投射する。すると、図2(b)のように、掌に事案画像(事案情報10)の投射像が表示され、緊急対処員9は、事案情報10を確認することができる。
図3は、携帯通信端末4とプロジェクタ6の構成を示した図である。
携帯通信端末4は、広域通信I/F40、近距離通信I/F42、GPS受信器43、音響出力部44、記憶部45、計時部46を備え、これらが制御部41に接続されている。また、これら各部に電力供給する電源部47を含む。
広域通信I/F40は、携帯通信端末4を広域通信網3に無線接続するインターフェース回路である。広域通信I/F40は、広域通信網3経由で受信した情報を制御部41に出力する。また、制御部41から入力された情報を広域通信網3に送出する。
制御部41は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor) 又はMCU(Micro Control Unit)等の演算装置である。制御部41は、事案情報処理部410、機器異常判定部411、現在位置検出部412の動作を記述したプログラムを記憶部45から読み出して実行することによりこれらの各部として機能する。
近距離通信I/F42は、携帯通信端末4を近距離通信網5に無線接続するインターフェース回路である。近距離通信I/F42は、近距離通信網5経由で受信した情報を制御部41に入力する。また、制御部41から入力された情報を近距離通信網5に送出する。
GPS受信器43は、GPS8からのGPS信号を受信し、受信したGPS信号を制御部41に出力するアンテナ回路である。
音響出力部44は、制御部41から入力された音響信号を再生して対処員に報知するヘッドフォン端子およびヘッドフォンである。スピーカーでもよい。
記憶部45は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ装置である。記憶部45は、各種プログラムや各種データを記憶し、制御部41との間でこれらを入出力する。各種データには、目標位置を含んだ事案情報10、現在位置が含まれる。
計時部46は、現在時刻を計時して制御部41に出力する回路である。
電源部47は、バッテリー、トランス、配線および起動スイッチからなる。電源部47は、携帯通信端末4の各部に電力を供給する。
事案情報処理部410は、受信した事案情報10を画像データに変換し、画像データに変換した事案情報10(事案画像)を含み宛先をプロジェクタ6に設定した信号を生成して近距離通信I/F42に出力する。また、事案情報処理部410は、受信した事案情報10に含まれる目標位置を、携帯通信端末4を所持する緊急対処員9の急行先として設定する。事案情報処理部410は、本発明の目標位置設定部として機能する。
機器異常判定部411は、プロジェクタ6が事案画像を正常に投射できる状態か否かを判定する。具体的には、プロジェクタ6と所定の試験実行間隔で試験通信を行って通信状態を判定する。機器異常判定部411は、プロジェクタ6宛ての試験パケット(試験信号)を生成して近距離通信I/F42に出力し、出力から予め定めた待ち時間内に当該試験信号に対するプロジェクタ6からの応答パケット(応答信号)を受信した場合に通信可能と判定する。機器異常判定部411は、待ち時間を越えても応答信号を受信しなかった場合は通信不能と判定し、所定の警告音データを音響出力部44に出力して対処員に通知する。待ち時間は、試験通信の試験実行間隔より短く設定する。例えば、500ミリ秒である。通信不能の要因はプロジェクタ6のバッテリー切れや電源の入れ忘れである。また、携帯通信端末4を操作した後の置き忘れも通信不能の要因となる。通信不能の通知を受けた緊急対処員は、電源を確認し、必要に応じてバッテリー交換や予備バッテリーの装着などリカバリ作業を行う。通信不能な状態は、機器異常状態であり、携帯通信端末4から事案画像をプロジェクタ6に入力不能な状態である。また、プロジェクタ6から各種情報(応答信号等)を携帯通信端末4に入力不能な状態である。つまり、プロジェクタ6による事案画像の投射が正常に行えない状態である。
ここで、機器異常判定部411は、電源部47のバッテリー残量を監視し、残量が所定以下となったときに機器異常状態と判定するようにしてもよい。また、プロジェクタ6から電源部66のバッテリー残量を信号にて受信し、残量が所定以下となったときに機器異常と判定してもよい。後述する機器異常判定部611にて同様の判定を行ってもよい。試験信号の送信は、携帯通信端末4とプロジェクタ6の相互で行う。そのために機器異常判定部411は、プロジェクタ6から試験信号を受信した場合は、プロジェクタ6宛ての応答信号を生成して近距離通信I/F42に出力する。
なお、試験信号の送信を相互に行う場合、同時の送信は無駄なバッテリー消費となる。そこで、携帯通信端末4とプロジェクタ6が交互に試験信号の送信を行う。そのために、機器異常判定部411は、プロジェクタ6宛ての試験信号及び応答信号に試験実行間隔を含ませて送信し、試験実行間隔をプロジェクタ6と共有する。
事案情報10の受信の頻度は、事案発生地点における対処業務中に最も高まる。このため、事案発生地点に到着するまでに試験通信による電力消費をできる限り抑制しておくことが望ましい。また、事案発生地点における対処業務中に、事案情報が受信不能な状態や投射不能な状態になり、リカバリ作業が生じると、ハンズフリーによる円滑な対処業務が阻害される。このため、事案発生地点に到着するまでには、プロジェクタ6が事案画像を正常に投射できる状態か否かを確認し、必要であればリカバリ作業を終えておくことが望ましい。
以上を考慮し、現在位置と事案発生地点との距離が所定距離以下になったときにそれ以前よりも頻度を高めて試験通信を行うようにする。また、機器異常判定部411は、現在位置と事案発生地点の距離が近いほど試験実行間隔を短く設定する。他の形態としては、機器異常判定部411は、事案発生前よりも事案発生後の方が試験通信の実行時間間隔(試験実行間隔)が短くなるように設定するようにしてもよい。さらには、事案発生前(待機中)は、試験通信を行わず、事案発生に伴って試験通信を行うようにしてもよい。また、バッテリー残量を用いて機器異常判定を行う場合は、バッテリー残量を確認する間隔を上記のようにすればよい。
なお、車両での移動中に通信不能が判定された場合、緊急対処員は、安全確保のために路側帯などに車両を一時停止させてリカバリ作業を行う。
本実施形態における具体的な試験実行間隔の設定は、以下の通りである。
まず、携帯通信端末4が事案情報を受信していない場合(待機中)、試験実行間隔を60秒に設定し、バッテリー消費を抑制する。携帯通信端末4が事案情報を受信した場合は、事案情報を受信していない場合よりも試験実行間隔を短くするが、現在位置から事案発生地点(目標位置)までの距離が第一距離より長い場合は、(所定の手前地点に到達するまでの移動中)30秒に設定する。第一距離は、例えば2.5kmである。これは、市街地の平均移動速度を30km/hと見積もって所要時間5分間を確保できる距離である。夜間の平均移動速度を35km/hと見積もり、日中は2.5km、夜間は3kmに切り替えてもよい。例えば日中は5時から21時、夜間は21時から5時である。
現在位置から目標位置までの距離が第一距離以下且つ第二距離より長い場合は、試験実行間隔を10秒間に設定する。第二距離は、例えば300mである。このように、現在位置と事案発生地点(目標位置)との距離が所定距離以下のときは当該距離より長いときよりも高い頻度で機器異常であるか否かを判定することで、必要に応じて車両を一時停止させて行うリカバリ作業の機会を確実に確保できる。現在位置から目標位置までの距離が第二距離以下の場合は、試験実行間隔を1秒間に設定する。これは、置き忘れの早期検知が目的である。ここで、第一距離、第二距離以下にそれぞれ到達したタイミングで試験通信を実行するようにしてもよい。このとき、この試験通信のタイミングに合わせて、実行間隔の変更を行うようにしてもよい。現在位置は、現在位置検出部412から入力される。目標位置は、事案情報処理部410にて事案情報10から抽出され、携帯通信端末4内に設定される。距離は、地図情報生成装置7から取得する。具体的には、機器異常判定部411は、地図情報生成装置7に現在位置と目標位置を送信し、現在位置から目標位置までの経路を考慮した実距離を地図情報生成装置7から受信する。ここで、近似的に、機器異常判定部411が現在位置と目標位置までの直線距離を算出してもよい。
現在位置検出部412は、GPS受信器43経由でGPS8から受信したGPS信号から携帯通信端末4の現在位置を算出し、機器異常判定部411に出力する。現在位置の情報は、緯度と経度の値である。
プロジェクタ6は、近距離通信I/F60、投射部62、記憶部63および計時部64を備え、これらが制御部61に接続されている。また、これら各部に電力供給する電源部66を含む。
近距離通信I/F60は、プロジェクタ6を近距離通信網5に無線接続するインターフェース回路である。近距離通信I/F60は、近距離通信網5経由で受信した情報を制御部61に出力する。また、制御部61から入力された情報を近距離通信網5に送出する。
制御部61は、CPU、DSP又はMCU等の演算装置である。制御部61は、事案情報処理部610、機器異常判定部611等の動作を記述したプログラムを記憶部63から読み出して実行することによりこれらの各部として機能する。
投射部62は、光源やミラーなどの光学部品とDMD(Digital Micromirror Device)デバイスなどの表示素子で構成される。投射部62は、制御部61から入力された画像データを投射する。
記憶部63は、ROM、RAM等のメモリ装置である。記憶部63は、各種プログラムや各種データを記憶し、制御部61との間でこれらを入出力する。各種データには、事案情報10の画像データ(事案画像)が含まれる。
計時部64は、現在時刻を計時して制御部61に出力する回路である。
投射停止スイッチ65は、ボタンとスイッチ回路である。投射停止スイッチ65は、投射部62が画像データを投射しているとき、対処員が投射停止を指示するために操作する。
電源部66は、バッテリー、トランス、配線および起動スイッチからなる。電源部66は、プロジェクタ6の各部に電力を供給する。
事案情報処理部610は、近距離通信I/F60を介して携帯通信端末4から受信した事案情報10の画像データ(事案画像)を投射部62に出力することで事案情報10を表示する。
機器異常判定部611は、携帯通信端末4と上記試験実行間隔で試験通信を行って通信状態を判定する。機器異常判定部611は、携帯通信端末4から試験信号を受信した場合、当該試験信号に対する応答信号を生成して近距離通信I/F60に出力する。また、試験信号から次回の試験通信までの試験実行間隔を抽出し、当該試験実行間隔の経過後に携帯通信端末4宛ての試験信号を生成して近距離通信I/F60に出力する。機器異常判定部611は、出力から予め定めた待ち時間内に当該試験信号に対する携帯通信端末4からの応答信号を受信した場合、通信可能と判定する。待ち時間は、例えば500ミリ秒とする。試験通信手段611は、待ち時間を越えても応答信号を受信しなかった場合は通信不能と判定し、投射部62に所定パターンでの点灯を指示して対処員に報知する。例えば、複数回の点滅などのパターンを指示する。
次に、本実施形態の動作について説明する。
携帯通信端末4の電源部47の起動スイッチがONに切り替えられると各部が起動する。制御部41の事案情報処理部410と機器異常判定部411は並列に動作する。
図4は、事案情報処理部410の動作を表すフローチャートである。
ステップS10〜S19の処理を所定サイクルで繰り返し実行する。
事案情報処理部410は、事案管理装置2からの新たな事案情報を広域通信I/F40が受信しているか確認する(S10)。受信していれば(S10にてYES)、当該事案情報10から事案発生地点の位置情報(目標位置)を抽出し、携帯通信端末4内に設定する(S11)。また、受信した事案情報10を投射するために当該事案情報10の内容を画像データ化して事案画像を生成する(S12)。例えば、事案情報10が文字列データの場合、各文字を既定の画像サイズにレイアウトした事案画像を生成する。画像データであれば既定の画像サイズに合わせて拡大・縮小する。そして、事案情報処理部410は、受信した事案情報10、抽出した目標位置、生成した事案画像を記憶部45に記憶させる。また、予め記憶部45に記憶させてある受信音データ(音声データ「事案情報を受信しました」など)を音響出力部44に出力する(S13)。音響出力部44は、受信音を再生して対処員に受信を通知する。
他方、当該サイクルにおいて新たな事案情報10の受信が無い場合(S10にてNO)、事案情報処理手段410は、ステップS11〜S13をスキップする。
次に、事案情報処理部410は、記憶部45を参照して通信成功フラグの有無を確認する(S14)。通信成功フラグについては後述する。記憶部45に通信成功フラグが無い場合、事案情報処理部410は、ステップS15〜S17をスキップする(S14にてNO)。記憶部45に通信成功フラグが有る場合(S14にてYES)、事案情報処理部410は、記憶部45に記憶されている通信状態(試験通信の結果)を確認する(S15)。通信状態が「通信可能」であれば(S15にてYES)、S16に進む。
S16は、携帯通信端末4を所持した緊急対処員の移動の有無に応じて、事案画像の送信有無を切り替える処理である。この処理は、緊急対処員が車両で移動中(あるいは、走って移動中)のときなど事案情報の視認により不安全な状況となり得るときは事案情報の投射を抑止することで対処業務の安全性を確保する目的で行われる。本実施形態にて、詳細には説明しないが、携帯通信端末4に加速度センサや速度センサを搭載し、加速度や移動速度が車両走行中に相当する値であるときに「移動中である」と判定するようにすればよい。車両走行中に相当する値でない場合には「移動中でない」とすればよい。移動判定は、事案情報処理部410にて行えばよいし、新たに別の構成を設けて行ってもよい。移動中でないと判定した場合(S16にてNO)、事案画像を近距離通信I/F42に出力し、プロジェクタ6に送信する(S17)。このとき、送信が完了した事案画像は、記憶部45から消去する。事案画像を消去すると通信成功フラグを立てる。事案画像を送信できなかった場合は、記憶部45の通信成功フラグを消去する。
他方、通信状態が通信不能である場合(S15にてNO)、事案情報処理部410は、ステップS16〜S17をスキップする。移動判定の結果、移動中と判定した場合(S16にてYES)、事案情報処理部410は、ステップS17をスキップする。
次に、事案情報処理部410は、事案管理装置2からの事案消去指示を広域通信I/F40が受信しているか確認する(S18)。事案消去指示は、対処員による事案の対処の終了報告に基づいて警備センタの監視員が事案管理装置2を操作して当該対処員が携帯する携帯通信端末4に送信する信号であり、当該信号に少なくとも消去を意味する所定コードと消去対象の事案情報10を特定する事案IDを含んでいる。事案消去指示を受信していれば記憶部45から該当する事案情報10を消去する(S19)。消去により事案情報10が0個になると、試験通信は、事案情報10を受信する前、つまり警備センタからの事案情報10を受信する前の試験実行間隔(例えば、60秒)にて行われるようになる。
図5、図6は機器異常判定部411の動作を表すフローチャートである。ステップS30〜S42の処理を試験通信の試験実行間隔の下限値である1秒間よりも短い所定サイクルで繰り返し実行する。
まず、機器異常判定部411は、試験実行間隔を設定する(S30)。図6を参照してこの設定処理を説明する。
図6において、まず、機器異常判定部411は、記憶部45を参照して事案情報10の有無を確認する(S300)。事案情報10が無ければ(S300にてNO)、試験実行間隔を60秒間に設定する(S301)。前回設定した試験実行間隔が60秒間でなければ、設定変更が分かるように、今回設定を前回設定と区別して記憶部45に記憶させる。設定後は処理を図5のステップS31へ進める。事案情報10があれば(S300にてYES)、計時部46から現在時刻を取得して記憶部45の測位時刻と比較する(S302)。現在時刻が測位時刻を越えていれば測位時刻が到来しているとして(S302にてYES)、GPS受信器43のGPS信号から現在位置を算出する(S303)。
次に、機器異常判定部411は、現在位置検出部412にて算出した現在位置と記憶部45に記憶している目標位置を含めた地図情報生成装置7宛ての距離要求信号を生成して、当該信号を広域通信I/F40に出力する(S304)。
次に、機器異常判定部411は、次回の測位時刻を算出して記憶部45に記憶させる(S305)。試験実行間隔が10秒、30秒の何れかであれば現サイクルの測位時刻に試験実行間隔を加えて次回の測位時刻を算出する。試験実行間隔が1秒であれば現サイクルの測位時刻に10秒を加えて次回の測位時刻を算出する。
他方、測位時刻が未だ到来していない場合(S302にてNO)、機器異常判定部411は、ステップS303〜305をスキップする。
次に、機器異常判定部411は、地図情報生成装置7からの距離信号を広域通信I/F40が受信しているか確認する(S306)。受信していれば(S306にてYES)、当該距離信号から距離の値を抽出するとともに(S307)、計時部46から現在時刻を取得する(S308)。そして、取得した距離と現在時刻に基づき試験実行間隔を設定する。距離が0.3km以下の場合(S309にてYES)、試験実行間隔を1秒間に設定する(S310)。前回設定した試験実行間隔が1秒間でなければ、設定変更が分かるように、今回設定を前回設定と区別して記憶部45に記憶させる。設定後は、処理を図5のステップS31へ進める。
距離が0.3kmより長い場合(S309にてNO)、機器異常判定部411は、ステップS311へ進む。現在時刻が日中を示す5時以降21時前であり且つ距離が2.5km以下である場合、又は、現在時刻が夜間を示す21時以降翌5時前であり且つ距離が3.0km以下である場合(S311にてYES)、試験実行間隔を10秒間に設定する(S312)。前回設定した試験実行間隔が10秒間でなければ、設定変更が分かるように、今回設定を前回設定と区別して記憶部45に記憶させる。設定後は処理を図5のステップS31へ進める。
現在時刻が日中を示し且つ距離が2.5kmより長い場合、及び現在時刻が夜間を示し且つ距離が3.0kmより長い場合(S311にてNO)、試験実行間隔を30秒間に設定する(S313)。前回設定した試験実行間隔が30秒間でなければ、設定変更が分かるように、今回設定を前回設定と区別して記憶部45に記憶させる。以上の処理を終えると処理を図5のステップS31へ進める。
再び図5を参照してステップS31以降を説明する。
図5において、機器異常判定部411は、記憶部45を参照して試験実行間隔が変更されたか確認する(S31)。変更されていれば(S31にてYES)、これに合わせて次回試験時刻を変更する(S32)。現在設定されている次回試験時刻から前回設定の試験実行間隔を2倍した時間を減じた時刻に今回設定の試験実行間隔を2倍した時間を加えた時刻を次回試験時刻として算出し、記憶部45の次回試験時刻を更新する。2倍とするのは携帯通信端末4とプロジェクタ6が交互に試験信号の送信を行うためである。
試験実行間隔が変更されていなければ(S31にてNO)、機器異常判定部411は、ステップS32をスキップする。
次に、機器異常判定部411は、計時部46から現在時刻を取得して記憶部45の試験時刻と比較する(S33)。現在時刻が試験時刻を越えていれば試験時刻が到来していると判定する(S33にてYES)。記憶部45の試験実行間隔を読み出して試験実行間隔を含ませたプロジェクタ6宛ての試験信号を生成し、近距離通信I/F42に出力する(S34)。このときの時刻を送信時刻として取得する。また、ステップS33にて用いた試験時刻にステップS34にて読み出した試験実行間隔を2倍した時間を加えた新たな次回試験時刻で記憶部45の次回試験時刻を更新する(S35)。2倍とするのは携帯通信端末4とプロジェクタ6が交互に試験信号の送信を行うためである。
試験信号の送信後、機器異常判定部411は、プロジェクタ6からの応答信号を近距離通信I/F42が受信しているかの確認(S36)及び現在時刻が送信時刻から待ち時間を過ぎてタイムアウトになっているかの確認(S37)を繰り返す。応答信号を受信した場合(S36にてYES)、プロジェクタ6との通信は可能であるとして記憶部45に通信可能を表す通信状態の識別符号を記憶させる(S38)。タイムアウトとなった場合(S37にてYES)、プロジェクタ6との通信が不能になっているとして記憶部45に通信不能を表す通信状態の識別符号を記憶させ(S39)、予め記憶部45に記憶させてある警告音データ(音声データ「プロジェクタと通信できません」など)を音響出力部44に出力する(S40)。音響出力部44は、警告音を再生して対処員に通信不能を報知する。音で報知することにより、図2のように携帯通信端末4が露出しない装着状態でも対処員に確実に報知できる。
現サイクルにて未だ試験時刻が到来していない場合(S33にてNO)、機器異常判定部411は、ステップS34〜S40をスキップする。
次に、機器異常判定部411は、プロジェクタ6からの試験信号を近距離通信I/F42が受信しているか確認する(S41)。受信している場合(S41にてYES)、記憶部45の試験実行間隔を読み出して試験実行間隔を含ませたプロジェクタ6宛ての応答信号を生成し、近距離通信I/F42に出力する(S42)。以上の処理を終えると、次のサイクルを実行するために処理をS30へ戻す。
プロジェクタ6の電源部66の起動スイッチがONに切り替えられると各部が起動する。その直後、制御部61は省電力のために投射部62への電力供給を遮断する。制御部61の事案情報処理部610と機器異常判定部611は並列に動作する。
事案情報処理部610の動作を説明する。
まず、事案情報処理部610は、携帯通信端末4からの事案画像を近距離通信I/F60が受信しているか確認する。受信している場合、投射部62への電力供給遮断を解除して当該事案画像を投射部62に出力する。これにより、投射部62により事案画像の投射像が対処員の掌または壁などに表示される。事案画像を受信していなければ、事案画像を投射部62に出力しない。
その後、事案情報処理部610は、投射停止スイッチ65の状態を確認する。投射停止操作を検出した場合、投射部62への電力供給を遮断して投射を停止させる。投射停止操作が検出されなかった場合は、事案画像を受信するまで待機する。
次に、機器異常判定部611の動作を説明する。図7は、機器異常判定部611の動作を表すフローチャートである。ステップS60〜S76の処理を試験通信の試験実行間隔の下限値である1秒間よりも短い所定サイクルで繰り返し実行する。
まず、機器異常判定部611は、携帯通信端末4からの試験信号を近距離通信I/F60が受信しているか確認する(S60)。受信している場合(S60にてYES)、携帯通信端末4宛ての応答信号を生成して近距離通信I/F60に出力する(S61)。
次に、試験信号から試験実行間隔を抽出し(S62)、記憶部63の試験実行間隔と比較する(S63)。異なる場合は試験実行間隔に変更があったと判定し(S63にてYES)、現在設定されている次回試験時刻から前回設定の試験実行間隔を2倍した時間を減じた時刻に今回設定の試験実行間隔を2倍した時間を加えた時刻を次回試験時刻として算出し、記憶部63の次回試験時刻を更新する(S64)。2倍とするのは携帯通信端末4とプロジェクタ6が交互に試験信号の送信を行うためである。
試験信号を受信していなければ(S60にてNO)、機器異常判定部611は、ステップS61〜S64をスキップする。
試験実行間隔に変更がなければ(S63にてNO)、機器異常判定部611は、ステップS64をスキップする。
次に、機器異常判定部611は、計時部64から現在時刻を取得して記憶部63の試験時刻と比較する(S65)。現在時刻が試験時刻を越えていれば、試験時刻が到来していると判定する(S65にてYES)。また、試験実行間隔を含ませた携帯通信端末4宛ての試験信号を生成して近距離通信I/F60に出力する(S66)。機器異常判定部611は、このときの時刻を送信時刻として取得する。次に、記憶部63の試験実行間隔を読み出し(S67)、ステップS65にて用いた試験時刻にステップS67にて読み出した試験実行間隔を2倍した時間を加えた新たな次回試験時刻で記憶部63の次回試験時刻を更新する(S68)。2倍とするのは携帯通信端末4とプロジェクタ6が交互に試験信号の送信を行うためである。
試験信号の送信後、機器異常判定部611は、携帯通信端末4からの応答信号を近距離通信I/F60が受信しているかの確認(S69)及び現在時刻が送信時刻から待ち時間を過ぎてタイムアウトになっているかの確認(S70)を繰り返す。
タイムアウトとなった場合(S70にてYES)、携帯通信端末4との通信が不能であるとして記憶部63に通信不能を表す通信状態の識別符号を記憶させ(S71)、予め記憶部63に記憶させてある警告パターンを投射部62に指示する(S72)。投射部62は、指示された警告パターン(点滅など)で光源を点灯させて対処員に通信不能を報知する。投射部62を利用して報知することにより、図2のような装着状態において対処員に確実に報知できる。また報知のために新たなコストが発生しない。応答信号を受信した場合(S69にてYES)、携帯通信端末4との通信は可能であるとして記憶部63に通信可能を表す通信状態の識別符号を記憶させる(S73)。
次に、応答信号から試験実行間隔を抽出し(S74)、記憶部63の試験実行間隔と比較する(S75)。異なる場合は、試験実行間隔に変更があったと判定し(S75にてYES)、現在設定されている次回試験時刻から前回設定の試験実行間隔を2倍した時間を減じた時刻に今回設定の試験実行間隔を2倍した時間を加えた時刻を次回試験時刻として算出し、記憶部63の次回試験時刻を更新する(S76)。2倍とするのは携帯通信端末4とプロジェクタ6が交互に試験信号の送信を行うためである。
現サイクルにて未だ試験時刻が到来していない場合(S65にてNO)、機器異常判定部611は、ステップS66〜S76をスキップする。
試験実行間隔に変更がない場合(S75にてNO)、機器異常判定部611は、ステップS76をスキップする。以上の処理を終えると次のサイクルを実行するために処理をS60へ戻す。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の変形が可能である。
例えば、事案管理装置2から受信する目標位置は、事案発生地点の住所とすることもできる。この場合、当該住所に対応する緯度、経度は地図情報生成装置7から取得する。すなわち、携帯通信端末4は、事案発生地点の住所を地図情報生成装置7に送信し、地図情報生成装置7は、地図データから当該住所の緯度、経度を検索して携帯通信端末4に返信する。また、目標位置の設定をする目標位置設定部は、事案管理装置2等の携帯通信端末4の外部に設けるようにしてもよい。また、事案情報処理部410を事案画像を生成する手段と、目標位置を設定する手段に分けてもよいし、それぞれを携帯通信端末4の外部に設けてもよい。この場合、携帯通信端末4は、必要な情報を受信して用いればよい。
また、現在位置検出部412は、地図情報生成装置7など携帯通信端末4の外部に設けてもよい。この場合、携帯通信端末4は、広域通信網3経由で外部装置にGPS信号を送信して外部装置が算出した現在位置を受信する。また、この構成の場合、携帯通信端末4から地図情報生成装置7に、一度の通信で現在位置の算出と距離の算出を同時に要求することもできる。この場合、地図情報生成装置7に目標位置設定部を設ければよい。
また、プロジェクタ6に音響出力部を設けて音により対処員に報知してもよい。これは、投射時以外は投射部62を筐体内に収納する構成とする場合に有効である。
また、本実施形態では、事案情報がない場合に試験実行間隔を60秒間に設定しているが、事案情報がない場合に試験を実行しない態様もあり得る。これは、試験実行間隔が無限大の場合と等価である。そして、事案情報がある場合であって、距離が0.3km以下となった時点で試験実行間隔を所定間隔、例えば1秒間に設定して試験を実行してもよい。距離が0.3km以下となった時点で1回だけ試験を実行し、通信不能状態か否かを判定するとともに、試験実行に伴う電力消費を最小限に抑える構成とすることも可能である。また、携帯通信端末4の現在位置を検出せずに、プロジェクタ6の現在位置を用いてもよい。この場合、プロジェクタ6に現在位置検出部412を設け、GPS信号を受信するようにすればよい。また、距離が所定距離(第一距離=2.5km)になるまでは、試験を実行せず、距離が第一距離以下になったときに試験を実行する態様もあり得る。この場合も距離が所定距離以下のときは所定距離より長いときよりも高い頻度で試験が実行されることになる。また、距離が所定距離(第一距離=2.5km)になるまでは1回だけ試験を実行し、距離が第一距離以下となったときに試験を実行し、さらに第二距離(300m)以下となったときに試験を実行する態様も可能である。この場合も距離が所定距離(第一距離)以下のときは所定距離(第一距離)より長いときよりも高い頻度で試験が実行されることになる。ここで、第三、第四の距離を予め設定し、各閾値を下回る毎に試験を実行するようにしてもよい。なお、これらの態様は全て、現在位置と目標位置との距離が短いほど高い頻度で試験が実行されることになるといえる。
また、本実施形態において、距離が所定距離以下となったときに試験実行の頻度を高くするのではなく、距離の代わりに事案発生地点に到達するまでの所要時間を評価し、この所要時間が所定時間以下となったときに試験実行の頻度を高くすることも可能であり、両者は技術的に等価であって本発明に含まれる。所要時間は、事案発生地点までの距離と平均移動速度に基づいて算出され、事案発生地点までの交通状況をさらに考慮して調整される。目的地までの所要時間の算出は、車両用ナビゲーション技術において公知である。また、距離を順次受信し、予め距離が短いほど試験の実行頻度が高くなるように複数の試験実行間隔を距離に対応させて設定しておき、受信した距離に応じて順次切り替えるようにしてもよい。具体的には、2.5km=10秒、2.0km=8秒、1.5km=6秒、1.0km=4秒等である。ここで、頻度を変える距離の間隔や、実行間隔の変更幅を予め設定しておき、距離が短いほど実行頻度が高くなるように、受信した距離に応じて実行間隔を自動的に設定するようにしてもよい。
さらに、携帯通信端末4とプロジェクタ6を一体化させたものでもよい。この場合、プロジェクタ6による投射が正常にできない状態を機器異常状態として判定し、自己診断するものであればよい。この態様においても、携帯通信端末4からプロジェクタ6への情報の入力が正常に行えない場合も機器異常状態に含まれる。機器異常状態の判定は、電池残量を監視し、残量が所定値以下になったら機器異常として通知するものでもよい。また、一体化した場合、機器異常監視の実行間隔や回数を変えることで機器異常判定の頻度を高くすればよい。