JP2014195132A - 電気音響変換フィルム、フレキシブルディスプレイ、声帯マイクロフォンおよび楽器用センサー - Google Patents

電気音響変換フィルム、フレキシブルディスプレイ、声帯マイクロフォンおよび楽器用センサー Download PDF

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Abstract

【課題】可撓性、耐湿性および音響特性に優れ、かつ、変形されても安定した音声を出力可能で、フレキシブルディスプレイに一体化可能なフレキシブルスピーカ等を実現可能な電気音響変換フィルム、ならびに、この電気音響変換フィルムを用いるフレキシブルディスプレイ、声帯マイクロフォン、および、楽器用センサーを提供する。
【解決手段】常温で粘弾性を有する高分子材料からなる粘弾性マトリックス中に圧電体粒子を分散してなる高分子複合圧電体と、この高分子複合圧電体の両面に形成された薄膜電極とを有し、高分子材料の比誘電率が25℃において10未満であることにより、前記目的を達成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、スピーカやマイクロフォンなどの音響デバイス等に用いられる電気音響変換フィルムに関する。詳しくは、可撓性および音響特性に優れ、しかも、変形されても安定した音声の出力が可能で、フレキシブルディスプレイ等に好適に利用可能なフレキシブルスピーカ等を実現可能な電気音響変換フィルム、ならびに、この電気音響変換フィルムを用いる、フレキシブルディスプレイ、声帯マイクロフォン、および楽器用センサーに関する。
近年、プラスチック等の可撓性基板を用いたフレキシブルディスプレイに関する研究が進められている。
かかるフレキシブルディスプレイの基板としては、例えば、特許文献1において透明プラスチックフィルムにガスバリア層や透明導電層を積層したフレキシブルディスプレイ基板が開示されている。
フレキシブルディスプレイは、従来のガラス基板を用いたディスプレイと比較して、軽量性、薄さ、可撓性等において優位性を持っており、円柱等の曲面に備えることも可能である。また、丸めて収納することが可能であるため、大画面であっても携帯性を損なうことがなく、広告等の掲示用や、PDA(携帯情報端末)等の表示装置として注目されている。
このようなフレキシブルディスプレイを、テレビジョン受像機等のように画像と共に音声を再生する画像表示装置兼音声発生装置として使用する場合、音声を発生するための音響装置であるスピーカが必要である。
ここで、従来のスピーカ形状としては、漏斗状のいわゆるコーン型や、球面状のドーム型等が一般的である。しかしながら、これらのスピーカを上述のフレキシブルディスプレイに内蔵しようとすると、フレキシブルディスプレイの長所である軽量性や可撓性を損なう虞れがある。また、スピーカを外付けにした場合、持ち運び等が面倒であり、曲面状の壁に設置することが難しくなり美観を損ねる虞れもある。
このような中、軽量性や可撓性を損なうことなくフレキシブルディスプレイに一体化可能なスピーカとして、シート状で可撓性を有する圧電フィルムを採用することが、例えば、特許文献2に開示されている。
圧電フィルムとは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF:Poly VinyliDene Fluoride)の一軸延伸フィルムを高電圧で分極処理したもので、印加電圧に応答して伸縮する性質を有している。
圧電フィルムをスピーカとして採用するためには、フィルム面に沿った伸縮運動をフィルム面の振動に変換する必要がある。この伸縮運動から振動への変換は、圧電フィルムを湾曲させた状態で保持することにより達成され、これにより、圧電フィルムをスピーカとして機能させることが可能になる。
ところで、スピーカ用振動板の最低共振周波数f0は、下記式で与えられるのは周知である。ここで、sは振動系のスチフネス、mは質量である。
このとき、圧電フィルムの湾曲程度すなわち湾曲部の曲率半径が大きくなるほど機械的なスチフネスsが下がるため、最低共振周波数f0は小さくなる。すなわち、圧電フィルムの曲率半径によってスピーカの音質(音量、周波数特性)が変わることになる。
この問題を解決するため、特許文献2においては、圧電フィルムの湾曲度合いを計測するセンサーを備え、圧電フィルムの湾曲度合いに応じて、音声信号の周波数帯域別に振幅を所定量増減して補正することで安定した音声を出力可能にしている。
ところで、圧電フィルムからなるスピーカを一体化した、平面視形状が長方形のフレキシブルディスプレイを、携帯用として新聞や雑誌のように書類感覚で緩く撓めた状態で把持し、画面表示を縦横切り替えて使用する場合、画像表示面は縦方向のみならず横方向にも湾曲できることが好ましい。
ところが、一軸延伸されたPVDFからなる圧電フィルムは、その圧電特性に面内異方性があるため、同じ曲率でも曲げる方向によって音質が大きく異なってしまう。
更に、PVDFはコーン紙等の一般的なスピーカ用振動板に比べ損失正接が小さいため、共振が強く出やすく、起伏の激しい周波数特性となる。従って、曲率の変化に伴い最低共振周波数f0が変化した際の音質の変化量も大きくなってしまう。
以上のように、PVDF固有の課題によって、上述の特許文献2に開示された音質補正手段では、安定した音声を再生することが困難であった。
一方、圧電特性に面内異方性がない、シート状で可撓性を有する圧電材料としては、高分子マトリックス中に圧電セラミックスを分散させた高分子複合圧電体が挙げられる。
高分子複合圧電体の場合、圧電セラミックスは硬いが高分子マトリックスは柔らかいため、圧電セラミックスの振動が全体に伝わる前にエネルギーが吸収されてしまう可能性がある。これは力学的振動エネルギーの伝達効率といわれるもので、この伝達効率を良くするには、高分子複合圧電体を硬くする必要があり、そのためには圧電セラミックスをマトリックス中に体積分率で少なくとも40〜50%以上入れる必要がある。
例えば、非特許文献1には、圧電体であるPZTセラミックスの粉末を溶媒流延または熱間混練によりPVDFと混合させた高分子複合圧電体が、PVDFのしなやかさとPZTセラミックスの高い圧電特性とをある程度両立することが開示されている。
しかしながら、圧電特性、すなわち伝達効率を高めるためにPZTセラミックスの割合を増やすと硬く、脆くなるという機械的欠点が存在する。
この問題を解決するため、例えば非特許文献2には、PVDFにフッ素ゴムを添加することで可撓性を維持させる試みが開示されている。
この方法は、可撓性という観点では一定の効果が得られる。しかしながら、一般に、ゴムはヤング率が1〜10MPaと極めて小さいため、添加することで高分子複合圧電体の硬さが低下し、結果として振動エネルギーの伝達効率も低下してしまう。
このように、従来の高分子複合圧電体をスピーカ用振動板として用いる場合、可撓性を持たせようとすると、エネルギー効率の低下が避けられず、フレキシブルディスプレイ用スピーカとして十分な性能を発揮することができなかった。
特開2000−338901号公報 特開2008−294493号公報
北山豊樹、昭和46年電子情報通信学会総合全国大会講演論文集、366(1971) 白井誠一、野村博昭、大賀寿郎、山田武、大口信樹、電子情報通信学会技術研究報告、24、15(1980)
以上より、フレキシブルディスプレイ用のスピーカとして用いる高分子複合圧電体は、次の用件を具備したものであるのが好ましい。
(i) 可撓性
例えば、携帯用として新聞や雑誌のように書類感覚で緩く撓めた状態で把持する場合、絶えず外部から、数Hz以下の比較的ゆっくりとした、大きな曲げ変形を受けることになる。この時、高分子複合圧電体が硬いと、その分大きな曲げ応力が発生し、高分子マトリックスと圧電体粒子との界面で亀裂が発生し、やがて破壊に繋がる恐れがある。従って、高分子複合圧電体には適度な柔らかさが求められる。また、歪みエネルギーを熱として外部へ拡散できれば応力を緩和することができる。従って、高分子複合圧電体の損失正接が適度に大きいことが求められる。
(ii) 音質
スピーカは、20〜20kHzのオーディオ帯域の周波数で圧電体粒子を振動させ、その振動エネルギーによって振動板(高分子複合圧電体)全体が一体となって振動することで音が再生される。従って、振動エネルギーの伝達効率を高めるために高分子複合圧電体には適度な硬さが求められる。また、スピーカの周波数特性が平滑であれば、曲率の変化に伴い最低共振周波数fが変化した際の音質の変化量も小さくなる。従って、高分子複合圧電体の損失正接は適度に大きいことが求められる。
(iii) 耐湿性
また、高分子複合圧電体の高分子材料は吸湿すると伸縮する。そのため、吸湿性が高い高分子材料の場合は、環境変化や経時変化によって、性能が変化するおそれがある。一般的に、比誘電率が高い材料ほど吸湿する傾向にあるので、良好な耐湿性の確保等を考慮すると、高分子材料は、比誘電率が低いことが求められる。
以上をまとめると、フレキシブルディスプレイ用のスピーカとして用いる高分子複合圧電体は、20〜20kHzの振動に対しては硬く、数Hz以下の振動に対しては柔らかく振る舞うことが求められる。また、高分子複合圧電体の損失正接は、20kHz以下の全ての周波数の振動に対して、適度に大きいことが求められる。また、高分子材料の比誘電率は、比誘電率が25℃において10未満であることが求められる。
本発明は、上記課題に鑑みて創案されたもので、軽量性や可撓性を損なうことなくフレキシブルディスプレイに一体化可能なスピーカとして、常温付近で貯蔵弾性率(E’)に大きな周波数分散を有すると同時に損失正接(Tanδ)に極大値を有し、耐湿性が高い高分子複合圧電体からなる電気音響変換フィルム、ならびに、この電気音響変換フィルムを用いるフレキシブルディスプレイ、声帯マイクロフォン、および、楽器用センサーを提供することを目的とする。
この課題を解決するために、本発明者らは、常温付近で貯蔵弾性率E’に大きな周波数分散を有すると同時に損失正接Tanδに極大値を有し、比誘電率が低い粘弾性材料に着目し、これをマトリックス材に適用することを鋭意検討した。
その結果、20〜20kHzの振動に対しては硬く、数Hz以下の振動に対しては柔らかく振舞うことが可能で、更に20kHz以下の全ての周波数の振動に対して適度な損失正接を有し、比誘電率が25℃において10未満である高分子複合圧電体からなる電気音響変換フィルムの創案に至った。
すなわち、本発明の電気音響変換フィルムは、常温で粘弾性を有する高分子材料からなる粘弾性マトリックス中に圧電体粒子を分散してなる高分子複合圧電体と、高分子複合圧電体の両面に形成された薄膜電極と、を有し、高分子材料の比誘電率が25℃において10未満であることを特徴とする電気音響変換フィルムを提供する。
このような本発明の電気音響変換フィルムにおいて、高分子材料が、ポリ酢酸ビニル、ポリビニリデンクロライドコアクリルニトリル、ポリスチレン−ビニルポリイソプレンブロック共重合体、ポリビニルメチルケトン、および、ポリブチルメタクリレートの1以上であるのが好ましい。
また、薄膜電極の少なくとも1方の表面に機械的強度を付与するための保護層を有するのが好ましい。
また、高分子材料の周波数1Hzでのガラス転移温度が0〜50℃であるのが好ましい。
また、電気音響変換フィルムの動的粘弾性測定による周波数1Hzでの損失正接(Tanδ)が0.5以上となる極大値が0〜50℃の温度範囲に存在するのが好ましい。
また、電気音響変換フィルムの動的粘弾性測定による周波数1Hzでの貯蔵弾性率(E’)が、0℃において10〜30GPa、50℃において1〜10GPaであるのが好ましい。
また、電気音響変換フィルムの厚さと動的粘弾性測定による周波数1Hzでの貯蔵弾性率(E’)との積が、0℃において1.0×106〜2.0×106N/m、50℃において1.0×105〜1.0×106N/mであるのが好ましい。
また、電気音響変換フィルムの動的粘弾性測定から得られたマスターカーブにおいて、25℃、周波数1kHzでの損失正接(Tanδ)が0.05以上であるのが好ましい。
また、高分子材料の動的粘弾性測定による周波数1Hzでの損失正接(Tanδ)が0.5以上となる極大値が0〜50℃の温度範囲に存在するのが好ましい。
また、高分子材料の動的粘弾性測定による周波数1Hzでの貯蔵弾性率(E’)が、0℃において100MPa以上、50℃において10MPa以下であるのが好ましい。
また、高分子複合圧電体における圧電体粒子の体積分率が50%以上であるのが好ましい。
また、圧電体粒子が、ペロブスカイト型あるいはウルツ鉱型の結晶構造を有するセラミックス粒子であるのが好ましい。
また、セラミックス粒子が、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸ジルコン酸ランタン酸鉛、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、および、チタン酸バリウムとビスマスフェライトとの固溶体のいずれかであるのが好ましい。
また、保護層の厚さが高分子複合圧電体の厚さの2倍以下であるのが好ましい。
また、薄膜電極の厚さとヤング率との積が、保護層の厚さとヤング率との積を下回るのが好ましい。
また、保護層が、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイト、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、および、環状オレフィン系樹脂のいずれかによって形成されるのが好ましい。
また、薄膜電極が、銅、アルミ、金、銀、白金、および、酸化インジウムスズのいずれかによって形成されるのが好ましい。
また、本発明のフレキシブルディスプレイは、可撓性を有するフレキシブルディスプレイの画像表示面とは反対側の面に、本発明の電気音響変換フィルムを取り付けたことを特徴とするフレキシブルディスプレイを提供する。
また、本発明の声帯マイクロフォンは、本発明の電気音響変換フィルムをセンサーとして用いることを特徴とする声帯マイクロフォンを提供する。
さらに、本発明の楽器用センサーは、本発明の電気音響変換フィルムをセンサーとして用いることを特徴とする楽器用センサーを提供する。
本発明における、常温で粘弾性を有する高分子材料からなる粘弾性マトリックス中に圧電体粒子を分散してなる高分子複合圧電体と、この高分子複合圧電体の両面に形成された薄膜電極とを有し、高分子材料の比誘電率が25℃において10未満であることを特徴とする電気音響変換フィルムは、弾性率に大きな周波数分散を有しており、20〜20kHzの振動に対しては硬く、数Hz以下の振動に対しては柔らかく振舞うことが可能で、更に20kHz以下の全ての周波数の振動に対して適度な損失正接を有する。また、比誘電率が低いので耐湿性に優れる。
そのため、本発明の電気音響変換フィルムによれば、可撓性および音響特性に優れ、しかも、変形されても安定した音声の出力が可能で、耐湿性に優れ、フレキシブルディスプレイ等に好適に利用可能なフレキシブルスピーカ等を実現可能な電気音響変換フィルム、軽量性や可撓性を損なうことなく、フレキシブルディスプレイに一体化可能なフレキシブルなスピーカが実現できる。
また、このような本発明の電気音響変換フィルムを、可撓性を有するフレキシブルディスプレイ(可撓性を有する画像表示デバイス)に取り付けてなる本発明のフレキシブルディスプレイは、可撓性に優れ、また、手に持った状態や使用場所等による屈曲方向や屈曲の量によらず、安定した音声出力を行うことができる。
さらに、このような本発明の電気音響変換フィルムをセンサーとして用いる本発明の声帯用マイクおよび楽器用センサーは、可撓性に優れ、小型かつ簡易な構成で、使用場所等による屈曲方向や屈曲の量によらず、安定して、肉声および楽器の音を忠実に再現することができる。
本発明の電気音響変換フィルムの一例を示す概念図である。 (A)〜(E)は、図1に示す電気音響変換フィルムの製造方法の一例を示す概念図である。 (A)〜(C)は、本発明の電気音響変換フィルムを利用する圧電スピーカの一例を説明するための概念図である。 本発明の電気音響変換フィルムを利用する圧電スピーカの別の例を概念的に示す図である。 (A)〜(C)は、本発明の電気音響変換フィルムを利用する圧電スピーカの別の例を説明するための概念図である。 本発明のフレキシブルディスプレイの一例を概念的に示す図で、(A)は有機ELディスプレイ、(B)は電子ペーパ、(C)は液晶ディスプレイである。 一般的な声帯マイクロフォンの構成を概念的に示す図である。
以下、本発明の電気音響変換フィルム、フレキシブルディスプレイ、声帯マイクロフォン、および、楽器用センサーについて、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
図1に、本発明の電気音響変換フィルムの一例を概念的に示す。
図1に示す電気音響変換フィルム10(以下、変換フィルム10とする)は、基本的に、高分子複合圧電体からなる圧電体層12と、圧電体層12の一面に設けられる薄膜電極14および他面に設けられる薄膜電極16と、薄膜電極14の表面に設けられる保護層18および薄膜電極16の表面に設けられる保護層20と、を有して構成される。
このような変換フィルム10は、スピーカ、マイクロフォン、および、ギター等の楽器に用いられるピックアップなどの各種の音響デバイス(音響機器)において、電気信号に応じた振動による音の発生(再生)や、音による振動を電気信号に変換するために利用されるものである。
本発明の変換フィルム10において、圧電体層12は、前述のとおり、高分子複合圧電体からなるものである。
本発明において、圧電体層12を形成する高分子複合圧電体は、常温で粘弾性を有する高分子材料からなる粘弾性マトリックス24中に、圧電体粒子26を均一に分散したものである。また、好ましくは、圧電体層12は、分極処理されている。
なお、本明細書において、「常温」とは、0〜50℃程度の温度域を指す。
一般に、高分子固体は粘弾性緩和機構を有しており、温度上昇あるいは周波数の低下とともに大きなスケールの分子運動が貯蔵弾性率(ヤング率)の低下(緩和)あるいは損失弾性率の極大(吸収)として観測される。その中でも、非晶質領域の分子鎖のミクロブラウン運動によって引き起こされる緩和は、主分散と呼ばれ、非常に大きな緩和現象が見られる。この主分散が起きる温度がガラス転移点(Tg)であり、最も粘弾性緩和機構が顕著に現れる。
本発明は、高分子複合圧電体(圧電体層12)において、ガラス転移点が常温にある高分子材料、言い換えると、常温で粘弾性を有する高分子材料をマトリックスに用いることで、20〜20kHzの振動に対しては硬く、数Hz以下の遅い振動に対しては柔らかく振舞う高分子複合圧電体が実現する。特に、この振舞いが好適に発現する等の点で、周波数1Hzでのガラス転移温度が常温にある高分子材料を、高分子複合圧電体のマトリックスに用いるのが好ましい。
常温で粘弾性を有する高分子材料としては、公知の各種のものが利用可能である。好ましくは、常温において、動的粘弾性試験による周波数1Hzにおける損失正接Tanδの極大値が、0.5以上有る高分子材料を用いる。
これにより、高分子複合圧電体が外力によってゆっくりと曲げられた際に、最大曲げモーメント部における高分子マトリックス/圧電体粒子界面の応力集中が緩和され、高い可撓性が期待できる。
また、高分子材料は、動的粘弾性測定による周波数1Hzでの貯蔵弾性率(E’)が、0℃において100MPa以上、50℃において10MPa以下であることが好ましい。
これにより、高分子複合圧電体が外力によってゆっくりと曲げられた際に発生する曲げモーメントが低減できると同時に、20〜20kHzの音響振動に対しては硬く振る舞うことができる。
また、高分子材料は、比誘電率が25℃において10未満である。
一般に、水分子は極性を有するため、比誘電率が高い高分子材料は、水分を引き付けて、吸湿してしまう傾向がある。そのため、高分子材料は吸湿により伸縮したり、劣化して、圧電スピーカとしての性能が変化するおそれがある。従って、環境変化や経時変化による性能劣化を防止するために、良好な耐湿性の確保等を考慮すると、高分子材料は、比誘電率が25℃において10未満であることが求められる。
また、比誘電率が低く、耐湿性の高い高分子材料を用いることで、耐湿用の保護層を形成する必要がなくなるという利点もある。
このような条件を満たす高分子材料としては、ポリ酢酸ビニル、ポリビニリデンクロライドコアクリロニトリル、ポリスチレン−ビニルポリイソプレンブロック共重合体、ポリビニルメチルケトン、および、ポリブチルメタクリレート等が例示される。また、これらの高分子材料としては、ハイブラー5127(クラレ社製)などの市販品も、好適に利用可能である。
なお、これらの高分子材料は、1種のみを用いてもよく、複数種を併用(混合)して用いてもよい。
本発明において、粘弾性マトリックス24はポリ酢酸ビニル単体など、単体の粘弾性材料からなるものに限定はされない。
すなわち、粘弾性マトリックス24には、誘電特性や機械特性の調整等を目的として、ポリ酢酸ビニル等の粘弾性材料に加え、必要に応じて、その他の誘電性高分子材料を添加しても良い。
添加可能な誘電性高分子材料としては、一例として、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体及びポリフッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素系高分子、シアン化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体、シアノエチルセルロース、シアノエチルヒドロキシサッカロース、シアノエチルヒドロキシセルロース、シアノエチルヒドロキシプルラン、シアノエチルメタクリレート、シアノエチルアクリレート、シアノエチルヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルアミロース、シアノエチルヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルジヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルヒドロキシプロピルアミロース、シアノエチルポリアクリルアミド、シアノエチルポリアクリレート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリヒドロキシメチレン、シアノエチルグリシドールプルラン、シアノエチルサッカロース及びシアノエチルソルビトール等のシアノ基あるいはシアノエチル基を有するポリマー、ニトリルゴムやクロロプレンゴム等の合成ゴム等が例示される。
中でも、シアノエチル基を有する高分子材料は、好適に利用される。
また、圧電体層12の粘弾性マトリックス24において、添加される誘電性ポリマーは、1種に限定はされず、複数種を添加してもよい。
また、誘電性ポリマー以外にも、ガラス転移点Tgを調整する目的で、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、メタクリル樹脂、ポリブテン、イソブチレン、等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、マイカ、等の熱硬化性樹脂を添加しても良い。
更に、粘着性を向上する目的で、ロジンエステル、ロジン、テルペン、テルペンフェノール、石油樹脂、等の粘着付与剤を添加しても良い。
圧電体層12の粘弾性マトリックス24において、粘弾性材料以外のポリマーを添加する際の添加量には、特に限定は無いが、粘弾性マトリックス24に占める割合で30重量%以下とするのが好ましい。
これにより、粘弾性マトリックス24における粘弾性緩和機構を損なうことなく、添加する高分子材料の特性を発現できるため、高誘電率化、耐熱性の向上、耐湿性の向上、圧電体粒子26や電極層との密着性向上等の点で好ましい結果を得ることができる。
圧電体粒子26は、ペロブスカイト型或いはウルツ鉱型の結晶構造を有するセラミックス粒子からなるものである。
圧電体粒子26を構成するセラミックス粒子としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン酸鉛(PLZT)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、酸化亜鉛(ZnO)、および、チタン酸バリウムとビスマスフェライト(BiFe3)との固溶体(BFBT)等が例示される。
本発明において、圧電体粒子26の粒径には、特に限定は無い。しかしながら、本発明者の検討によれば、圧電体粒子26の粒径は、1〜10μmが好ましい。
圧電体粒子26の粒径を上記範囲とすることにより、高い圧電特性とフレキシビリティとを両立できる等の点で好ましい結果を得ることができる。
図1等においては、圧電体層12中の圧電体粒子26は、粘弾性マトリックス24中に、規則性を持って分散されているが、本発明は、これに限定はされない。
すなわち、圧電体層12中の圧電体粒子26は、好ましくは均一に分散されていれば、粘弾性マトリックス24中に不規則に分散されていてもよい。
本発明の変換フィルム10において、圧電体層12(高分子複合圧電体)中における粘弾性マトリックス24と圧電体粒子26との量比には、特に限定はないが。すなわち、粘弾性マトリックス24と圧電体粒子26との量比は、変換フィルム10のサイズ(面方向の大きさ)や厚さ、変換フィルム10の用途、変換フィルム10に要求される特性等に応じて、適宜、設定すればよい。
ここで、本発明者の検討によれば、圧電体層12中における圧電体粒子26の体積分率は、30〜70%が好ましく、特に、50%以上とするのが好ましく、従って、50〜70%とするのが、より好ましい。
粘弾性マトリックス24と圧電体粒子26との量比を上記範囲とすることにより、高い圧電特性とフレキシビリティとを両立できる等の点で好ましい結果を得ることができる。
また、本発明の変換フィルム10において、圧電体層12の厚さにも、特に限定はなく、変換フィルム10のサイズ、変換フィルム10の用途、変換フィルム10に要求される特性等に応じて、適宜、設定すればよい。
ここで、本発明者の検討によれば、圧電体層12の厚さは20〜200μm、特に、30〜100μmが好ましい。
圧電体層12の厚さを、上記範囲とすることにより、剛性の確保と適度な柔軟性との両立等の点で好ましい結果を得ることができる。
なお、圧電体層12は、分極処理(ポーリング)されているのが好ましいのは、前述のとおりである。分極処理に関しては、後に詳述する。
図1に示すように、本発明の変換フィルム10は、圧電体層12を薄膜電極14および16で挟持し、この積層体を保護層18および20で挟持してなる構成を有する。
変換フィルム10において、保護層18および20は、高分子複合圧電体に適度な剛性と機械的強度を付与する役目を担っている。すなわち、本発明の変換フィルム10において、粘弾性マトリックス24と圧電体粒子26とからなる高分子複合圧電体(圧電体層12)は、ゆっくりとした曲げ変形に対しては、非常に優れた可撓性を示す一方で、用途によっては、剛性や機械的強度が不足する場合がある。変換フィルム10は、それを補うために保護層18および20が設けられる。
保護層18および20には、特に限定はなく、各種のシート状物が利用可能であり、一例として、各種の樹脂フィルム(プラスチックフィルム)が好適に例示される。中でも、優れた機械的特性および耐熱性を有するなどの理由により、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイト(PPS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、トリアセチルセルロース(TAC)、および、環状オレフィン系樹脂が好適に利用される。
保護層18および20の厚さにも、特に、限定は無い。また、保護層18および20の厚さは、基本的に同じであるが、異なってもよい。
ここで、保護層18および20の剛性が高過ぎると、圧電体層12の伸縮を拘束するばかりか、可撓性も損なわれるため、機械的強度やシート状物としての良好なハンドリング性が要求される場合を除けば、保護層18および20は、薄いほど有利である。
ここで、本発明者の検討によれば、保護層18および20の厚さが、圧電体層12の厚さの2倍以下であれば、剛性の確保と適度な柔軟性との両立等の点で好ましい結果を得ることができる。
例えば、圧電体層12の厚さが50μmで保護層18および20がPETからなる場合、保護層18および20の厚さは、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、中でも25μm以下とするのが好ましい。
また、前述のとおり、本発明に利用される高分子材料は、比誘電率が低く、耐湿性に優れるため、耐湿用の保護層を形成する必要がない。そのため、保護層を薄く、あるいは、無くすこともでき、柔軟性を向上させることができる。
本発明の変換フィルム10において、圧電体層12と保護層18との間には薄膜電極14が、圧電体層12と保護層20との間には薄膜電極16が、それぞれ形成される。
薄膜電極14および16は、変換フィルム10に電界を印加するために設けられる。
本発明において、薄膜電極14および16の形成材料には、特に、限定はなく、各種の導電体が利用可能である。具体的には、炭素、パラジウム、鉄、錫、アルミニウム、ニッケル、白金、金、銀、銅、クロムおよびモリブデン等や、これらの合金、酸化インジウムスズ等が例示される。中でも、銅、アルミニウム、金、銀、白金、および、酸化インジウムスズのいずれかは、好適に例示される。
また、薄膜電極14および16の形成方法にも、特に限定はなく、真空蒸着やスパッタリング等の気相堆積法(真空成膜法)やめっきによる成膜や、上記材料で形成された箔を貼着する方法等、公知の方法が、各種、利用可能である。
中でも特に、変換フィルム10の可撓性が確保できる等の理由で、真空蒸着によって成膜された銅やアルミニウムの薄膜は、薄膜電極14および16として、好適に利用される。その中でも特に、真空蒸着による銅の薄膜は、好適に利用される。
薄膜電極14および16の厚さには、特に、限定は無い。また、薄膜電極14および16の厚さは、基本的に同じであるが、異なってもよい。
ここで、前述の保護層18および20と同様に、薄膜電極14および16の剛性が高過ぎると、圧電体層12の伸縮を拘束するばかりか、可撓性も損なわれるため、薄膜電極4および16は、電気抵抗が高くなり過ぎない範囲であれば、薄いほど有利である。
ここで、本発明者の検討によれば、薄膜電極14および16の厚さとヤング率との積が、保護層18および20の厚さとヤング率との積を下回れば、可撓性を大きく損なうことがないため、好適である。
例えば、保護層18および20がPET(ヤング率:約6.2GPa)で、薄膜電極14および16が銅(ヤング率:約130GPa)からなる組み合わせの場合、保護層18および20の厚さが25μmだとすると、薄膜電極14および16の厚さは、1.2μm以下が好ましく、0.3μm以下がより好ましく、中でも0.1μm以下とするのが好ましい。
また、薄膜電極14および/または薄膜電極16は、必ずしも、圧電体層12(保護層18および/または20)の全面に対応して形成される必要はない。
すなわち、薄膜電極14および薄膜電極16の少なくとも一方が、例えば圧電体層12よりも小さく、変換フィルム10の周辺部において、圧電体層12と保護膜とが、直接、接触するような構成でもよい。
あるいは、薄膜電極14および/または薄膜電極16が全面に形成された保護層18および/または20が、圧電体層12の全面に対応して形成される必要はない。この場合、圧電体層12と直接に接触する(第2の)保護層を別途、保護層18および/または20の表面側に設けるような構成としてもよい。
前述のように、本発明の変換フィルム10は、常温で粘弾性を有する粘弾性マトリックス24に圧電体粒子26を分散してなる圧電体層12(高分子複合圧電体)を、薄膜電極14および16で挟持し、さらに、この積層体を、保護層18および20を挟持してなる構成を有する。
このような本発明の変換フィルム10は、動的粘弾性測定による周波数1Hzでの損失正接(Tanδ)が0.5以上となる極大値が常温に存在するのが好ましい。
これにより、変換フィルム10が外部から数Hz以下の比較的ゆっくりとした、大きな曲げ変形を受けたとしても、歪みエネルギーを効果的に熱として外部へ拡散できるため、高分子マトリックスと圧電体粒子との界面で亀裂が発生するのを防ぐことができる。
また、本発明の変換フィルム10は、動的粘弾性測定による周波数1Hzでの貯蔵弾性率(E’)が、0℃において10〜30GPa、50℃において1〜10GPaであるのが好ましい。
これにより、常温で変換フィルム10が貯蔵弾性率(E’)に大きな周波数分散を有することができる。すなわち、20〜20kHzの振動に対しては硬く、数Hz以下の振動に対しては柔らかく振る舞うことができる。
また、本発明の変換フィルム10は、厚さと動的粘弾性測定による周波数1Hzでの貯蔵弾性率(E’)との積が、0℃において1.0×106〜2.0×106(1.0E+06〜2.0E+06)N/m、50℃において1.0×105〜1.0×106(1.0E+05〜1.0E+06)N/mであるのが好ましい。
これにより、変換フィルム10が可撓性および音響特性を損なわない範囲で、適度な剛性と機械的強度を備えることができる。
さらに、本発明の変換フィルム10は、動的粘弾性測定から得られたマスターカーブにおいて、25℃、周波数1kHzにおける損失正接(Tanδ)が0.05以上であるのが好ましい。
これにより、変換フィルム10を用いたスピーカの周波数特性が平滑になり、スピーカの曲率の変化に伴い最低共振周波数fが変化した際の音質の変化量も小さくできる。
次に、本発明の電気音響変換フィルムの製造方法の一例を、図2を参照して説明する。 まず、図2(A)に示すように、保護層18の上に薄膜電極14が形成されたシート状物10aを準備する。
このシート状物10aは、保護層18の表面に、真空蒸着、スパッタリング、めっき等によって薄膜電極14として銅薄膜等を形成して、作製すればよい。
保護層18が非常に薄く、ハンドリング性が悪い時などは、必要に応じて、セパレータ(仮支持体)付きの保護層18を用いても良い。尚、セパレータとしては、厚さ25〜100μmのPET等を用いることができる。なお、セパレータは、薄膜電極および保護層の熱圧着後に、取り除けばよい。
あるいは、保護層18の上に銅薄膜等が形成された、市販品をシート状物10aとして利用してもよい。
一方で、有機溶媒に、ポリ酢酸ビニル等の常温で粘弾性を有する高分子材料(以下、粘弾性材料とも言う)を溶解し、さらに、PZT粒子等の圧電体粒子26を添加し、攪拌して分散してなる塗料を調製する。有機溶媒には、特に限定はなく、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等の各種の有機溶媒が利用可能である。
シート状物10aを準備し、かつ、前記塗料を調製したら、この塗料をシート状物10aにキャスティング(塗布)して、有機溶媒を蒸発して乾燥する。これにより、図2(B)に示すように、保護層18の上に薄膜電極14を有し、薄膜電極14の上に圧電体層12を形成してなる積層体10bを作製する。
この塗料のキャスティング方法には、特に、限定はなく、スライドコータやドクターナイフ等の公知の方法(塗布装置)が、全て、利用可能である。
あるいは、粘弾性材料が加熱溶融可能な物であれば、粘弾性材料を加熱溶融して、これに圧電体粒子26を添加/分散してなる溶融物を作製し、押し出し成形等によって、図2(A)に示すシート状物の上にシート状に押し出し、冷却することにより、図2(B)に示すような、保護層18の上に薄膜電極14を有し、薄膜電極14の上に圧電体層12を形成してなる積層体10bを作製してもよい。
なお、前述のように、本発明の変換フィルム10において、粘弾性マトリックス24には、ポリ酢酸ビニル等の粘弾性材料以外にも、PVDF等の高分子圧電材料を添加しても良い。
粘弾性マトリックス24に、これらの高分子圧電材料を添加する際には、前記塗料に添加する高分子圧電材料を溶解すればよい。あるいは、前記加熱溶融した粘弾性材料に、添加する高分子圧電材料を添加して加熱溶融すればよい。
保護層18の上に薄膜電極14を有し、薄膜電極14の上に圧電体層12を形成してなる積層体10bを作製したら、好ましくは、圧電体層12の分極処理(ポーリング)を行う。
圧電体層12の分極処理の方法には、特に限定はなく、公知の方法が利用可能である。好ましい分極処理の方法として、図2(C)および(D)に示す方法が例示される。
この方法では、図2(C)および(D)に示すように、積層体10bの圧電体層12の上面12aの上に、間隔gを例えば1mm開けて、この上面12aに沿って移動可能な棒状あるいはワイヤー状のコロナ電極30を設ける。そして、このコロナ電極30と薄膜電極14とを直流電源32に接続する。
さらに、積層体10bを加熱保持する加熱手段、例えば、ホットプレートを用意する。
その上で、圧電体層12を、加熱手段によって、例えば、温度100℃に加熱保持した状態で、直流電源32から薄膜電極14とコロナ電極30との間に、数kV、例えば、6kVの直流電圧を印加してコロナ放電を生じさせる。さらに、間隔gを維持した状態で、圧電体層12の上面12aに沿って、コロナ電極30を移動(走査)して、圧電体層12の分極処理を行う。
このようなコロナ放電を利用する分極処理(以下、便宜的に、コロナポーリング処理とも言う)において、コロナ電極30の移動は、公知の棒状物の移動手段を用いればよい。
また、コロナポーリング処理では、コロナ電極30を移動する方法にも、限定はされない。すなわち、コロナ電極30を固定し、積層体10bを移動させる移動機構を設け、この積層体10bを移動させて分極処理をしてもよい。この積層体10bの移動も、公知のシート状物の移動手段を用いればよい。
さらに、コロナ電極30の数は、1本に限定はされず、複数本のコロナ電極30を用いて、コロナポーリング処理を行ってもよい。
また、分極処理は、コロナポーリング処理に限定はされず、分極処理を行う対象に、直接、直流電界を印加する、通常の電界ポーリングも利用可能である。但し、この通常の電界ポーリングを行う場合には、分極処理の前に、薄膜電極16を形成する必要が有る。
なお、この分極処理の前に、圧電体層12の表面を加熱ローラ等を用いて平滑化する、カレンダー処理を施してもよい。このカレンダー処理を施すことで、後述する熱圧着工程がスムーズに行える。
一方で、保護層20の上に薄膜電極16が形成されたシート状物10cを、準備する。このシート状物10cは、前述のシート状物10aと同様のものである。
このシート状物10cを、図2(E)に示すように、薄膜電極16を圧電体層12に向けて、圧電体層12の分極処理を終了した前記積層体10bに積層する。
さらに、この積層体10bとシート状物10cとの積層体を、保護層18および20を挟持するようにして、加熱プレス装置や加熱ローラ対等を用いて熱圧着して、図1に示すような、本発明の変換フィルム10を完成する。
このような本発明の変換フィルム10の製造は、カットシート状の前記シート状物を用いて製造を行っても良いが、好ましくは、ロール・トゥ・ロール(Roll to Roll 以下、RtoRともいう)を利用する。
周知のように、RtoRとは、長尺な原材料を巻回してなるロールから、原材料を引き出して、長手方向に搬送しつつ、成膜や表面処理等の各種の処理を行い、処理済の原材料を、再度、ロール状に巻回する製造方法である。
RtoRによって、前述の製造方法で変換フィルム10を製造する際には、長尺な保護層18の上に薄膜電極14が形成されたシート状物10aを巻回してなる第1のロール、および、長尺な保護層20の上に薄膜電極16が形成されたシート状物10cを巻回してなる第2のロールを用いる。
第1のロールおよび第2のロールは、全く、同じものでよい。
このロールから、前記シート状物10aを引き出して、長手方向に搬送しつつ、前述の粘弾性マトリックス24および圧電体粒子26を含有する塗料を塗布し、加熱等によって乾燥して、薄膜電極14の上に圧電体層12を形成し、前述の積層体10bとする。
次いで、前述のコロナポーリングを行って、圧電体層12の分極処理を行う。ここで、RtoRによって変換フィルム10を製造する際には、積層体10bを搬送しつつ、積層体10bの搬送方向と直交する方向に延在して固定した棒状のコロナ電極30によって、コロナポーリングによる圧電体層12の分極処理を行う。なお、この分極処置の前に、カレンダー処理を行ってもよいのは、前述のとおりである。
次いで、第2のロールからシート状物10cを引き出し、このシート状物10cおよび積層体を搬送しつつ、貼り合わせローラ等を用いる公知の方法で、前述のように、薄膜電極16を圧電体層12に向けて、積層体10bの上にシート状物10cを積層する。
その後、加熱ローラ対によって保護層18および20を挟持搬送することで熱圧着して、本発明の変換フィルム10を完成し、この変換フィルム10を、ロール状に巻回する。
なお、以上の例は、RtoRによって、シート状物(積層体)を、1回だけ、長手方向に搬送して、本発明の変換フィルム10を作製しているが、これに限定はされない。
例えば、前記積層体を形成し、コロナポーリングを行った後に、一度、ロール状に、この積層体を巻回した積層体ロールとする。次いで、この積層体ロールから積層体を引き出して、長手方向に搬送しつつ、前述のように、保護層20の上に薄膜電極16が形成されたシート状物の積層を行って、変換フィルム10を完成し、この変換フィルム10を、ロール状に巻回してもよい。
あるいは、RtoRによる作製にも限定はされず、枚葉式で作製してもよい。
図3(A)および図3(B)に、本発明の変換フィルム10を利用する、平板型の圧電スピーカの一例の概念図を示す。なお、図3においては、(B)が、変換フィルム10の振動方向(音の放射方向)から見た図であり、(A)は、(B)に対して直交方向から見た図3(B)のa−a線断面図である。
この圧電スピーカ40は、圧電体層12と、圧電体層12の両面に設けられる薄膜電極14および16と、両薄膜電極の表面に設けられる保護層18および20とからなる、前述の本発明の変換フィルム10を電気信号を振動エネルギーに変換するスピーカ用振動板として用いる、平板型の圧電スピーカである。
なお、圧電スピーカ40(および後述する圧電スピーカ50)は、共に、マイクロフォンやセンサーとして使用することも可能である。
図示例の圧電スピーカ40は、基本的に、前記変換フィルム10(圧電フィルム)と、ケース42と、粘弾性支持体46と、枠体48とを有して構成される。
ケース42は、プラスチック等で形成される、一面が開放する薄い正四角筒状の筐体である。なお、本発明の振動体を利用する圧電スピーカにおいて、ケース42(すなわち圧電スピーカ)は、四角筒状に限定はされず、円筒状や底面が長方形の四角筒状等の各種の形状の筐体が利用可能である。
また、枠体48は、中央に貫通孔を有する、ケース42の上端面(開放面側)と同様の形状を有する板材である。
さらに、粘弾性支持体46は、適度な粘性と弾性を有し、変換フィルム10を支持すると共に、圧電フィルムのどの場所でも一定の機械的バイアスを与えることによって、変換フィルムの伸縮運動を無駄なく前後運動(フィルムの面に垂直な方向の運動)に変換させるためのものである。一例として、羊毛のフェルト、レーヨンやPETを含んだ羊毛のフェルトなどの不織布、グラスウール、或いはポリウレタンなどの発泡材料(発泡プラスチック)、紙を複数枚重ねたもの、塗料等が例示される。図示例において、粘弾性支持体46は、ケース42の底面よりも、若干、大きい底面形状を有する四角柱状である。なお、粘弾性支持体46の比重には、特に限定はなく、粘弾性支持体の種類に応じて、適宜、選択すればよい。一例として、粘弾性支持体としてフェルトを用いた場合には、比重は、50〜500kg/cm3が好ましく、100〜300kg/cm3がより好ましい。また、粘弾性支持体としてグラスウールを用いた場合には、比重は、20〜100kg/cm3が好ましい。
圧電スピーカ40においては、このケース42の中に粘弾性支持体46を収容して、変換フィルム10によってケース42および粘弾性支持体46を覆い、変換フィルム10の周辺を枠体48によってケース42の上端面に押圧した状態で、枠体48をケース42に固定して、構成される。
なお、ケース42への枠体の固定方法には、特に限定はなく、ビスやボルトナットを用いる方法、固定用の治具を用いる方法等、公知の方法が、各種、利用可能である。
ここで、この圧電スピーカ40においては、粘弾性支持体46は、高さ(厚さ)がケース42の内面の高さよりも厚い、四角柱状である。すなわち、図3(C)に模式的に示すように、変換フィルム10および枠体48が固定される前の状態では、粘弾性支持体46は、ケース42の上面よりも突出した状態となっている。
そのため、圧電スピーカ40では、粘弾性支持体46の周辺部では、粘弾性支持体46が変換フィルム10によって下方に押圧されて厚さが薄くなった状態で、保持される。また、同じく粘弾性支持体46の周辺部において、変換フィルム10の曲率が急激に変動し、変換フィルム10に、粘弾性支持体46の周辺に向かって低くなる立上がり部40aが形成される。さらに、変換フィルム10の中央領域は四角柱状の粘弾性支持体46に押圧されて、(略)平面状になっている。
また、この際においては、変換フィルム10の面方向において、粘弾性支持体46の全面を押圧して、全面的に厚さが薄くなるようにするのが好ましい。
なお、本発明の変換フィルム10を利用する圧電スピーカにおいて、変換フィルム10による粘弾性支持体46の押圧力には、特に限定はないが平面部(平坦部)における面圧で0.02〜0.2MPa程度とするのが好ましい。
立上がり部40aの角度(中央の平面部に対する傾斜角度(平均の傾斜角度))にも、特に限定はないが、変換フィルム10の十分な上下運動が可能になる等の点で、10〜90°程度とするのが好ましい。
変換フィルム10の高低差(図示例では、枠体48の底面に最も低い所と最も遠い所との距離の差)にも、特に限定はないが、薄型の平面スピーカが得られる、変換フィルム10の十分な上下運動が可能になる等の点で、1〜10mm程度とするのが好ましい。
加えて、粘弾性支持体46の厚さにも、特に限定は無いが、押圧される前の厚さが、1〜50mmであるのが好ましい。
このような圧電スピーカ40において、圧電体層12への電圧印加によって、変換フィルム10が面内方向に伸長すると、この伸長分を吸収するために、変換フィルム10の立上がり部40aが、立ち上がる方向(変換フィルム10の面方向に対する角度が90°に近くなる方向)に僅かに角度を変える。その結果、平面状の部分を有する変換フィルム10は、上方(音の放射方向)に移動する。
逆に、圧電体層12への電圧印加によって、変換フィルム10が面内方向に収縮すると、この収縮分を吸収するために、変換フィルム10の立上がり部40aが、倒れる方向(平面に近くなる方向)に僅かに角度を変える。その結果、平面状の部分を有する変換フィルム10は、下方に移動する。
圧電スピーカ40は、この変換フィルム10の振動によって、音を発生する。
変換フィルム10の立上がり部40aにおいて、粘弾性支持体46は枠体48に近づくほど厚さ方向に圧縮された状態になるが、静的粘弾性効果(応力緩和)によって、圧電フィルムのどの場所でも機械的バイアスを一定に保つことができる。これにより、圧電フィルムの伸縮運動が無駄なく前後運動へと変換されるため、薄型、かつ、十分な音量が得られ、音響特性に優れる平面状の圧電スピーカを得ることができる。
図示例の圧電スピーカ40は、枠体48によって、変換フィルム10の周辺全域をケース42(すなわち、粘弾性支持体46)に押し付けているが、本発明は、これに限定されない。
すなわち、本発明の変換フィルム10を利用する圧電スピーカは、枠体48を有さずに、例えばケース42の4箇所の角において、ビスやボルトナット、治具などによって、変換フィルム10を枠体48の上面に押圧/固定してなる構成も利用可能である。
また、ケース42と変換フィルム10との間には、Oリング等を介在させてもよい。このような構成を有することにより、ダンパ効果を持たせることができ、変換フィルム10の振動がケース42に伝達されることを防止して、より優れた音響特性を得ることができる。
また、本発明の変換フィルム10を利用する圧電スピーカは、粘弾性支持体46を収容するケース42を有さなくても良い。
すなわち、図4の圧電スピーカ50の断面図で、その一例を概念的に示すように、剛性を有する支持板52の上に粘弾性支持体46を載置し、粘弾性支持体46を覆って変換フィルム10を載せ、先と同様の枠体48を周辺部に載置する。次いで、ビス54によって枠体48を支持板52に固定することにより、枠体48と一緒に粘弾性支持体46を押圧して、粘弾性支持体46の周辺部を薄くし、かつ、変換フィルム10の傾斜部を形成した構成も、利用可能である。
このようなケース42を有さない構成でも、枠体48を用いずに、ビス等によって粘弾性支持体46を押圧して薄くした状態として、保持してもよい。
さらに、本発明の変換フィルム10を利用する圧電スピーカは、周辺を押圧する構成にも限定はされず、例えば、粘弾性支持体46と変換フィルム10の積層体の中央を、何らかの手段によって押圧して、粘弾性支持体46を薄くした状態で保持してなる構成も利用可能である。
すなわち、本発明の変換フィルム10を利用する圧電スピーカは、粘弾性支持体46が変換フィルム10によって押圧されて厚さが薄くなった状態を保持し、かつ、この押圧/保持によって、変換フィルム10の曲率が急激に変動し、変換フィルム10に立上がり部40aが形成された構成であれば、各種の構成が利用可能である。
あるいは、変換フィルム10に樹脂フィルムを貼り付けて張力を付与する(保持する)構成としてもよい。樹脂フィルムで保持する構成とし、湾曲させた状態で保持できるようにすることでフレキシブルなスピーカとすることができる。
図3および図4に示す圧電スピーカは、粘弾性支持体46を利用しているが、本発明の変換フィルム10を利用する圧電スピーカは、この構成に限定はされない。
例えば、図5(C)に示す圧電スピーカ56が例示される。
この圧電スピーカ56は、まず、図5(A)に示すように、同様のケース42として気密性を有する物を用い、ケース42内に空気を導入するパイプ42aを設ける。
このケース42の開放側の端部上面にOリング57を設け、ケース42の開放面を閉塞するように、変換フィルム10で覆う。
次いで、図5(B)に示すように、ケース42の外周と略同一の内周を有する、略L字状の断面を有する枠体状の押さえ蓋58を、ケース42の外周に嵌合する(図5(B)および(C)においては、Oリング57は省略)。
これにより、変換フィルム10をケース42押圧して固定し、変換フィルム10によって、ケース42の内部を気密に閉塞する。
さらに、図5(C)に示すように、パイプ42aからケース42内(ケース42と変換フィルム10とによる閉空間)に空気を導入して、変換フィルム10に圧力を掛けて、凸状に膨らました状態で、保持して、圧電スピーカ56とする。
ケース42内の圧力には、限定はなく、変換フィルム10が外方に凸状に膨らむ、大気圧以上であれば良い。
なお、パイプ42aは、固定されていても、着脱自在にしてもよい。パイプ42aを取り外す際には、パイプの着脱部を気密に閉塞するのは、当然である。
本発明のフレキシブルディスプレイは、前述の本発明の変換フィルム10(電気音響変換フィルム)をスピーカとして用いる、可撓性を有するシート状の画像表示装置である。
具体的には、可撓性を有する有機EL表示デバイス、可撓性を有する液晶表示デバイス、可撓性を有する電子ペーパ等の、可撓性を有するシート状の表示デバイスの裏面(画像表示面と反対側の面)に、本発明の変換フィルム10をスピーカとして取り付けた、スピーカ搭載型のフレキシブルディスプレイである。
なお、本発明のフレキシブルディスプレイは、カラーディスプレイであってもモノクロディスプレイであってもよい。
前述のように、本発明の変換フィルム10は、柔軟性および可撓性に優れ、しかも、面内に異方性が無い。そのため、本発明の変換フィルム10は、どの方向に屈曲させても音質の変化が少なく、しかも、曲率の変化に対する音質変化も少ない。
従って、このような本発明の振動フィルム10を、可撓性を有する画像表示デバイスに取り付けてなる本発明のスピーカ搭載型のフレキシブルディスプレイは、可撓性に優れ、しかも、手に持った状態等による湾曲の方向や湾曲量によらず(すなわち、任意の変形に好適に対応して)、安定した音質の音声出力を行うことができる。
図6(A)に、本発明のフレキシブルディスプレイを、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイに利用した一例を概念的に示す。
図6(A)に示す有機ELディスプレイ60は、可撓性を有するシート状の有機EL表示デバイス62の裏面に、本発明の変換フィルム10を取り付けてなる、スピーカ搭載型の有機ELフレキシブルディスプレイである。
本発明のフレキシブルディスプレイにおいて、有機EL表示デバイス62等の可撓性を有するシート状の画像表示デバイスの裏面に、本発明の変換フィルム10を取り付ける方法には、限定はない。すなわち、シート状物同士を、面を向かい合わせて取り付ける(貼り合わせる)公知の方法が、全て利用可能である。
一例として、接着剤で貼り付ける方法、熱融着で貼り付ける方法、両面テープを用いる方法、粘着テープを用いる方法、略C字状のクランプなどの積層した複数のシート状物を端部や端辺で挟持する治具を用いる方法、リベットなどの積層した複数のシート状物を面内(画像表示面を除く)で挟持する治具を用いる方法、積層した複数のシート状物の両面から保護フィルム(少なくとも画像表示側は透明)等で挟持する方法、これらを併用する方法等が例示される。
なお、接着剤等を用いて表示デバイスと変換フィルム10とを貼り付ける際には、全面的に貼り付けても、端部の全周のみを貼り付けても、四隅と中央部等の適宜設定された場所で点状に貼り付けても、これらを併用してもよい。
有機ELディスプレイ60において、変換フィルム10は、高分子複合圧電体からなる圧電体層12と、圧電体層12の一面に設けられる薄膜電極14および他面に設けられる薄膜電極16と、薄膜電極14の表面に設けられる保護層18および薄膜電極16の表面に設けられる保護層20と、を有して構成される、前述の本発明の(電気音響)変換フィルム10である。
他方、有機EL表示デバイス62は、公知の可撓性を有するシート状の有機EL表示デバイス(有機ELディスプレイパネル)である。
すなわち、有機EL表示デバイス62は、一例として、プラスチックフィルム等の基板64の上に、TFT等のスイッチング回路を有する画素電極が形成された陽極68を有し、陽極68の上に有機EL材料を用いる発光層70を有し、発光層70の上にITO(酸化インジウム錫)等からなる透明な陰極72を有し、陰極72の上に透明なプラスチック等で形成された透明基板74を有して構成される。
また、陽極68と発光層70との間には、正孔注入層や正孔輸送層を有してもよく、さらに、発光層70と陰極72との間には、電子輸送層や電子注入層を有してもよい。さらに、透明基板74の上には、ガスバリアフィルム等の保護フィルムを有してもよい。
なお、図示は省略するが、変換フィルム10の薄膜電極14および薄膜電極16には、変換フィルム10すなわちスピーカを駆動するための配線が接続される。さらに、陽極68および陰極72には、有機EL表示デバイス62を駆動するための配線が接続される。
この点に関しては、後述する電子ペーパ78および液晶ディスプレイ94等に関しても、同様である。
図6(B)に、本発明のフレキシブルディスプレイを、電子ペーパに利用した一例を概念的に示す。
図6(B)に示す電子ペーパ78は、可撓性を有するシート状の電子ペーパデバイス80の裏面に、本発明の変換フィルム10を取り付けてなる、スピーカ搭載型の電子ペーパである。
電子ペーパ78において、変換フィルム10は、前述の物と同様である。
他方、電子ペーパデバイス80は、公知の可撓性を有する電子ペーパである。すなわち、一例として、電子ペーパデバイス80は、プラスチックフィルム等の基板82の上に、TFT等のスイッチング回路を有する画素電極が形成された下部電極84を有し、下部電極84の上に正もしくは負に帯電した白および黒の顔料を内包するマイクロカプセル86aを配列した表示層86を有し、表示層86の上にITO等からなる透明な上部電極90を有し、上部電極90の上に透明なプラスチック等で形成された透明基板92を有して構成される。
なお、図6(B)に示す例は、本発明のフレキシブルディスプレイを、マイクロカプセルを用いる電気泳動方式の電子ペーパに利用した例であるが、本発明は、これに限定はされない。
すなわち、本発明のフレキシブルディスプレイには、マイクロカプセルを用いない電気泳動方式、電気泳動方式、酸化還元反応等を利用する化学変化方式、電子粉粒体方式、エレクトロウェッティング方式、液晶方式等、可撓性を有するシート状のものであれば、公知の電子ペーパが、全て、利用可能である。
図6(C)に、本発明のフレキシブルディスプレイを、液晶ディスプレイに利用した一例を概念的に示す。
図6(C)に示す液晶ディスプレイ94は、可撓性を有するシート状の液晶ディスプレイデバイス96の裏面に、本発明の変換フィルム10を取り付けてなる、スピーカ搭載型の液晶フレキシブルディスプレイである。
液晶ディスプレイ94において、変換フィルム10は、前述の物と同様である。
他方、液晶ディスプレイデバイス96は、公知の可撓性を有するシート状の液晶ディスプレイデバイス(液晶ディスプレイパネル)である。すなわち、一例として、液晶ディスプレイデバイス96は、可撓性を有するエッジライトタイプの導光板98、および、この導光板98の端部からバックライトを入射する光源100を有する。液晶ディスプレイデバイス96は、一例として、導光板98の上に、偏光子102を有し、偏光子102の上に透明な下部基板104を有し、下部基板104の上にTFT等のスイッチング回路を有する画素電極が形成された透明な下部電極106を有し、下部電極106の上に液晶層108を有し、液晶層108の上にITO等からなる透明な上部電極110を有し、上部電極110の上に透明な上部基板112を有し、上部基板112の上に偏光子114を有し、偏光子114の上に保護フィルム116を有して構成される。
なお、本発明のフレキシブルディスプレイは、有機ELディスプレイ、電子ペーパおよび液晶ディスプレイに限定はされず、可撓性を有するシート状の表示デバイス(表示パネル)であれば、各種の表示デバイスを用いた画像表示装置が利用可能である。
常温で粘弾性を有する高分子マトリックスに圧電体粒子を分散してなる圧電体層12と、圧電体層12の表面に設けられる薄膜電極14および薄膜電極16とを有し、高分子マトリックスの比誘電率が25℃において10未満である、本発明の変換フィルム10は、圧電体層12が、振動エネルギーを電気信号に変換する性能も有する。
そのため、本発明の変換フィルム10は、これを利用して、マイクロフォンや楽器用センサー(ピックアップ)にも、好適に利用可能である。
一例として、声帯マイクロフォンが好適に例示される。
図7に、一般的な声帯マイクロフォンの一例を概念的に示す。
図7に示すように、従来の一般的な声帯マイクロフォン120は、PZT等の圧電体セラミックス126を黄銅板等の金属板128の上に積層し、この積層体の下面に弾性を有するクッション130を、上面にスプリング132を、それぞれ取り付けて、ケース124内に支持し、ケース内から信号線136および136を引き出してなる、複雑な構成を有する。
これに対し、本発明の変換フィルム10を、音声信号を電気信号に変換するセンサーとして用いる本発明の声帯マイクロフォンは、例えば、変換フィルム10に貼り付け手段を設け、かつ、圧電体層12(薄膜電極14および薄膜電極16)が出力する電気信号を取り出す信号線を設けるだけの簡易な構成で、声帯マイクロフォンを構成できる。
また、このような構成有する本発明の声帯マイクロフォンは、変換フィルム10を声帯付近に貼り付けるだけで、声帯マイクロフォンとして作用する。
また、図7に示すような、圧電体セラミックス126と金属板128とを利用する従来の声帯マイクロフォンは、損失正接が非常に小さいため、共振が非常に強く出やすく、起伏の激しい周波数特性となるため、金属的な音色になりがちである。
これに対して、前述のように、本発明の変換フィルム10は、可撓性および音響特性に優れ、かつ、変形時に音質変化が小さいため、複雑な曲面を有する人の咽喉部に貼り付けることが可能であり、低音から高音まで、忠実に再現することができる。
すなわち、本発明によれば、肉声に極めて近い音声信号を出力可能で、装着感を感じさせない、簡易な構成で、超軽量かつ省スペースな声帯マイクロフォンを実現できる。
なお、本発明の声帯マイクロフォンにおいて、声帯付近への変換フィルム10の貼り付け方法には、特に限定はなく、公知のシート状物の貼り付け方法が、各種、利用可能である。
また、変換フィルム10を、直接、声帯付近に貼り付けるのではなく、変換フィルム10を、極薄いケースや袋体に収容して、声帯付近に貼り付けるようにしてもよい。
また、本発明の変換フィルム10を、音声信号を電気信号に変換するセンサーとして用いる本発明の楽器用センサーは、例えば、変換フィルム10に貼り付け手段を設け、かつ、圧電体層12(薄膜電極14および薄膜電極16)が出力する電気信号を取り出す信号線を設けるだけの簡易な構成で、楽器用センサーを構成することができる。
また、このような構成有する本発明の楽器用センサーは、変換フィルム10を楽器の筐体面に貼り付けるだけで、ピックアップとして作用する。
前述の声帯マイクロフォンと同様、本発明の変換フィルム10は、薄く、かつ、柔軟性に富むので、本発明の楽器用センサーは、可撓性および音響特性に優れ、かつ、変形時に音質変化が小さいため、複雑な曲面を有する楽器の筐体面に貼り付けることが可能であり、低音から高音まで、楽器の音を忠実に再現することができる。
しかも、本発明の楽器用センサーは、振動する楽器の筐体面に対する機械的な拘束も殆ど無いため、ピックアップを取り付けることによる楽器の原音への影響も、最小限に押さえることができる。
先の声帯マイクロフォンと同様、本発明の楽器用センサーにおいて、楽器への貼り付け方法には、特に限定はなく、公知のシート状物の貼着方法が、各種、利用可能である。また、本発明の楽器用センサーは、変換フィルム10を、極薄いケースや袋体に収容して、楽器に貼り付けるようにしてもよい。
以上、本発明の電気音響変換フィルム、フレキシブルディスプレイ、声帯マイクロフォンおよび楽器用センサーについて詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明についてより詳細に説明する。
[実施例1]
前述の図2に示す方法によって、図1に示す本発明の変換フィルム10を作製した。
まず、下記の組成比で、ポリ酢酸ビニル(Aldrich社製)をジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した。その後、この溶液に、乾燥後のPZT粒子の体積分率が60%になるよう、下記の組成比で添加して、プロペラミキサー(回転数2000rpm)で分散させて、圧電体層12を形成するための塗料を調製した。
・PZT粒子・・・・・・・・・・・200質量部
・ポリ酢酸ビニル・・・・・・・・・20質量部
・DMF・・・・・・・・・・・・・80質量部
なお、PZT粒子は、市販のPZT原料粉を1000〜1200℃で焼結した後、これを平均粒径5μmになるように解砕および分級処理したものを用いた。
また、ポリ酢酸ビニルのガラス転移温度(Tg)は、30℃である。また、動的粘弾性試験により損失正接Tanδを測定したところ、25℃、1Hzにおいて0.8である。
一方、厚さ4μmのPETフィルムに、厚さ0.1μmの銅薄膜を真空蒸着してなるシート状物10aおよび10cを用意した。すなわち、本例においては、薄膜電極14および16は、厚さ0.1mの銅蒸着薄膜であり、保護層18および20は厚さ4μmのPETフィルムとなる。
尚、プロセス中、良好なハンドリングを得るために、PETフィルムには厚さ50μmのセパレータ(仮支持体 PET)付きのものを用い、薄膜電極および保護層の熱圧着後に、各保護層のセパレータを取り除いた。
このシート状物10aの薄膜電極14(銅蒸着薄膜)の上に、スライドコータを用いて、先に調製した圧電体層12を形成するための塗料を塗布した。なお、塗料は、乾燥後の塗膜の膜厚が40μmになるように、塗布した。
次いで、シート状物10aの上に塗料を塗布した物を、120℃のホットプレート上で加熱乾燥することでDMFを蒸発させた。これにより、PET製の保護層18の上に銅製の薄膜電極14を有し、その上に、厚さが40μmの圧電体層12(圧電層)を形成してなる積層体10bを作製した。
この積層体10bの圧電体層12を、図2(C)および(D)に示す前述のコロナポーリングによって、分極処理した。なお、分極処理は、圧電体層12の温度を100℃として、薄膜電極14とコロナ電極30との間に6kVの直流電圧を印加してコロナ放電を生じさせて、行った。
分極処理を行った積層体10bの上に、薄膜電極16(銅薄膜側)を圧電体層12に向けてシート状物10cを積層した。
次いで、積層体10bとシート状物10cとの積層体を、ラミネータ装置を用いて120℃で熱圧着することで、圧電体層12と薄膜電極14および16とを接着して、変換フィルム10を作製した。
[可撓性試験]
作製した変換フィルム10から、1cm×15cmの短冊状試験片を作製した。
これを曲率半径r=0.5cmになるように丸めては元の状態に戻すことを10回繰り返した後、電気特性(静電容量および誘電損失)ならびに外観の変化を調べた。
電気特性および外観に変化が見られない場合は○、電気特性に変化は見られないものの折り目等の跡が残った場合は△、電気特性に変化が見られた場合は×とした。
その結果を表1に示す。
[比誘電率測定試験]
作製した変換フィルム10から、2cm×4cmの短冊状試験片を作製した。
この試験片の比誘電率εrを、LCRメータにより測定した。測定条件を以下に示す。
測定温度:25℃
測定周波数:1kHz
比誘電率εrの測定結果を表1に示す。
[耐湿性試験]
作製した変換フィルム10から、2cm×4cmの短冊状試験片を作製した。
これを湿度90%、温度50%の環境下に1時間放置した後、電気特性(静電容量および誘電損失)ならびに外観の変化を調べた。
電気特性および外観に変化が見られない場合は○、電気特性に変化は見られないものの折り目等の跡が残った場合は△、電気特性に変化が見られた場合は×とした。
その結果を表1に示す。
[実施例2]
粘弾性マトリックス24として、ポリスチレン−ビニルポリイソプレンブロック共重合体(ハイブラー5127 株式会社クラレ製)を用い、溶剤としてトルエンを用いた以外は、実施例1と同様にして変換フィルム10を作製した。その後、この溶液に、PZT粒子を乾燥後のPZT粒子の体積分率が60%になるよう、下記の組成比で添加して、プロペラミキサー(回転数2000rpm)で分散させて、圧電体層12を形成するための塗料を調製した。
・PZT粒子・・・・・・・・・・・300質量部
・ハイブラー5127・・・・・・・・・30質量部
・トルエン・・・・・・・・・・・・70質量部
ポリスチレン−ビニルポリイソプレンブロック共重合体のガラス転移温度(Tg)は、25℃である。また、損失正接Tanδを測定したところ、25℃、1Hzにおいて1.2であった。
作製した変換フィルム10に関して、可撓性試験および比誘電率測定試験、そして耐湿性試験を実施例1と同様に実施した。
その結果を表1に示す。
[実施例3]
粘弾性マトリックス24として、ポリスチレン−ビニルポリイソプレンブロック共重合体(ハイブラー5127 株式会社クラレ製)とポリブテン(クラレ社製)とを70:30の割合で混合したものを用いた以外は、実施例2と同様に溶剤としてトルエンを用いて乾燥後のPZT粒子の体積分率が60%になるよう、変換フィルム10を作製した。
ポリスチレン−ビニルポリイソプレンブロック共重合体とポリブテンとの混合物のガラス転移温度(Tg)は、10℃である。また、損失正接Tanδを測定したところ、25℃、1Hzにおいて1.8であった。
作製した変換フィルム10に関して、可撓性試験および比誘電率測定試験、そして耐湿性試験を実施例1と同様に実施した。
その結果を表1に示す。
[実施例4]
粘弾性マトリックス24として、ポリビニルメチルケトン(Aldrich社製)を用いた以外は、実施例1と同様に溶剤としてDMFを用いて乾燥後のPZT粒子の体積分率が60%になるよう、変換フィルム10を作製した。
ポリビニルメチルケトンのガラス転移温度(Tg)は、28℃である。また、損失正接Tanδを測定したところ、25℃、1Hzにおいて0.9であった。
作製した変換フィルム10に関して、可撓性試験および比誘電率測定試験、そして耐湿性試験を実施例1と同様に実施した。
その結果を表1に示す。
[実施例5]
粘弾性マトリックス24として、ポリブチルメタクリレート(Aldrich社製)を用いた以外は、実施例1と同様に溶剤としてDMFを用いて乾燥後のPZT粒子の体積分率が60%になるよう、変換フィルム10を作製した。
ポリブチルメタクリレートのガラス転移温度(Tg)は、35℃である。また、損失正接Tanδを測定したところ、25℃、1Hzにおいて0.6であった。
作製した変換フィルム10に関して、可撓性試験および比誘電率測定試験、そして耐湿性試験を実施例1と同様に実施した。
その結果を表1に示す。
[比較例1]
粘弾性マトリックス24として、常温で粘弾性を有さないポリエチルメタクリレート(Aldrich社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして溶剤としてDMFを用いて乾燥後のPZT粒子の体積分率が60%になるよう、変換フィルム10を作製した。
ポリウレタンのガラス転移温度(Tg)は、65℃である。また、損失正接Tanδを測定したところ、25℃、1Hzにおいて0.6である。
作製した変換フィルム10に関して、可撓性試験および比誘電率測定試験、そして耐湿性試験を実施例1と同様に実施した。
その結果を表1に示す。
[比較例2]
粘弾性マトリックス24として、常温で粘弾性を有さないシアノエチル化プルラン(信越化学社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして溶剤としてDMFを用いて乾燥後のPZT粒子の体積分率が60%になるよう、変換フィルム10を作製した。
シアノエチル化プルランのガラス転移温度(Tg)は、120℃である。また、損失正接Tanδを測定したところ、25℃、1Hzにおいて0.06であった。
作製した変換フィルム10に関して、可撓性試験および比誘電率測定試験、そして耐湿性試験を実施例1と同様に実施した。
その結果を表1に示す。
表1より、常温で粘弾性を有する高分子材料をマトリックスに用いた実施例1〜5は、粘弾性を有さない高分子材料をマトリックスに用いた比較例1、2に比べて非常に優れた可撓性を有していることが分かる。
また、比誘電率が10未満の高分子材料をマトリックスに用いた実施例1〜5は、比誘電率が10以上の高分子材料をマトリックスに用いた比較例2に比べて優れた耐湿性を有していることが分かる。
以上の結果より、本発明の効果は、明らかである。
10 電気音響変換フィルム
12 圧電体層
14,16 薄膜電極
18,20 保護層
24 粘弾性マトリックス
26 圧電体粒子
30 コロナ電極
32 直流電源
40,50,56 圧電スピーカ
42 ケース
46 粘弾性支持体
48 枠体
52 支持板
54 ビス
57 Oリング
58 押さえ蓋
60 有機ELディスプレイ
62 有機EL表示デバイス
64,82,104 基板
68 陽極
70 発光層
72 陰極
74,92 透明基板
84,106 下部電極
86 表示層
86a マイクロカプセル
90,110 上部電極
98 導光板
100 光源
102,114 偏光子
108 液晶層
112 上部基板
116 保護フィルム

Claims (20)

  1. 常温で粘弾性を有する高分子材料からなる粘弾性マトリックス中に圧電体粒子を分散してなる高分子複合圧電体と、前記高分子複合圧電体の両面に形成された薄膜電極と、を有し、
    前記高分子材料の比誘電率が25℃において10未満であることを特徴とする電気音響変換フィルム。
  2. 前記高分子材料が、ポリ酢酸ビニル、ポリビニリデンクロライドコアクリルニトリル、ポリスチレン−ビニルポリイソプレンブロック共重合体、ポリビニルメチルケトン、および、ポリブチルメタクリレートの1以上である請求項1に記載の電気音響変換フィルム。
  3. 前記薄膜電極の少なくとも1方の表面に機械的強度を付与するための保護層を有する請求項1または2に記載の電気音響変換フィルム。
  4. 前記高分子材料の周波数1Hzでのガラス転移温度が0〜50℃である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気音響変換フィルム。
  5. 前記電気音響変換フィルムの動的粘弾性測定による周波数1Hzでの損失正接(Tanδ)が0.5以上となる極大値が0〜50℃の温度範囲に存在する請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気音響変換フィルム。
  6. 前記電気音響変換フィルムの動的粘弾性測定による周波数1Hzでの貯蔵弾性率(E’)が、0℃において10〜30GPa、50℃において1〜10GPaである請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気音響変換フィルム。
  7. 前記電気音響変換フィルムの厚さと動的粘弾性測定による周波数1Hzでの貯蔵弾性率(E’)との積が、0℃において1.0×106〜2.0×106N/m、50℃において1.0×105〜1.0×106N/mである請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気音響変換フィルム。
  8. 前記電気音響変換フィルムの動的粘弾性測定から得られたマスターカーブにおいて、25℃、周波数1kHzでの損失正接(Tanδ)が0.05以上である請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気音響変換フィルム。
  9. 前記高分子材料の動的粘弾性測定による周波数1Hzでの損失正接(Tanδ)が0.5以上となる極大値が0〜50℃の温度範囲に存在する請求項1〜8のいずれか1項に記載の電気音響変換フィルム。
  10. 前記高分子材料の動的粘弾性測定による周波数1Hzでの貯蔵弾性率(E’)が、0℃において100MPa以上、50℃において10MPa以下である請求項1〜9のいずれか1項に記載の電気音響変換フィルム。
  11. 前記高分子複合圧電体における圧電体粒子の体積分率が50%以上である請求項1〜10のいずれか1項に記載の電気音響変換フィルム。
  12. 前記圧電体粒子が、ペロブスカイト型あるいはウルツ鉱型の結晶構造を有するセラミックス粒子である請求項1〜11のいずれか1項に記載の電気音響変換フィルム。
  13. 前記セラミックス粒子が、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸ジルコン酸ランタン酸鉛、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、および、チタン酸バリウムとビスマスフェライトとの固溶体のいずれかである請求項12に記載の電気音響変換フィルム。
  14. 前記保護層の厚さが前記高分子複合圧電体の厚さの2倍以下である請求項3〜13のいずれか1項に記載の電気音響変換フィルム。
  15. 前記薄膜電極の厚さとヤング率との積が、前記保護層の厚さとヤング率との積を下回る請求項1〜14のいずれか1項に記載の電気音響変換フィルム。
  16. 前記保護層が、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイト、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、および、環状オレフィン系樹脂のいずれかによって形成される請求項3〜15のいずれか1項に記載の電気音響変換フィルム。
  17. 前記薄膜電極が、銅、アルミ、金、銀、白金、および、酸化インジウムスズのいずれかによって形成される請求項1〜16のいずれか1項に記載の電気音響変換フィルム。
  18. 可撓性を有するフレキシブルディスプレイの画像表示面とは反対側の面に、請求項1〜17のいずれか1項に記載の電気音響変換フィルムを取り付けたことを特徴とするフレキシブルディスプレイ。
  19. 請求項1〜17のいずれか1項に記載の電気音響変換フィルムをセンサーとして用いることを特徴とする声帯マイクロフォン。
  20. 請求項1〜17のいずれか1項に記載の電気音響変換フィルムをセンサーとして用いることを特徴とする楽器用センサー。
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