JP2014188639A - ワーク押さえ機構及びワーク押さえ機構を有するルーター加工装置並びに当該ルーター加工装置による加工方法 - Google Patents

ワーク押さえ機構及びワーク押さえ機構を有するルーター加工装置並びに当該ルーター加工装置による加工方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2014188639A
JP2014188639A JP2013068069A JP2013068069A JP2014188639A JP 2014188639 A JP2014188639 A JP 2014188639A JP 2013068069 A JP2013068069 A JP 2013068069A JP 2013068069 A JP2013068069 A JP 2013068069A JP 2014188639 A JP2014188639 A JP 2014188639A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
tool
workpiece
processing
machining
hole
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2013068069A
Other languages
English (en)
Inventor
Kunio Arai
邦男 荒井
Yasuhiko Kanetani
保彦 金谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ofuna Enterprise Japan Co Ltd
Original Assignee
Ofuna Enterprise Japan Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ofuna Enterprise Japan Co Ltd filed Critical Ofuna Enterprise Japan Co Ltd
Priority to JP2013068069A priority Critical patent/JP2014188639A/ja
Publication of JP2014188639A publication Critical patent/JP2014188639A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Abstract

【課題】スピンドルの作動によって発生する切粉を確実に回収するとともに、加工部直近のワークを確実に押圧して、ワークの加工品質を向上させるとともに、工具寿命を延伸させる。
【解決手段】排気ダクト16を有するワーク押さえ機構Aにおいて、第1のエア噴射ノズル22からの、ワーク加工部近傍に対する高速の第1の噴射エア流18の吹き付けによって、ワーク加工部において発生した切粉が吹き飛ばされて排気ダクト16から確実に回収されるとともに、工具3とその周辺の切粉に生ずる熱を除去することにより、工具の寿命を延伸させることができる。また、該ワーク押さえ機構Aを有するルーター加工装置の使用に際しては、最初に一定長以上の開始孔46を形成するものである。
【選択図】図1

Description

本願発明は、加工用スピンドルの組み込まれたルーター加工装置もしくは穴明け装置におけるワーク押さえ機構、及び当該ワーク押さえ機構を有するルーター加工装置もしくは穴明け装置、並びに当該ルーター加工装置による、加工品質及び加工効率の向上並びに工具寿命の伸張を図るワークの加工方法に関するものである。
尚、本明細書においては、穴明け加工とは加工用スピンドルの工具をドリルとしてシート状の加工対象物に対してドリル径の穴明けを行う加工のことであり、穴明け装置とは、その穴明け加工を行う装置のことである。また、ルーター加工装置とは、加工用スピンドルを使用して前記穴明け加工以外のパターン加工等の加工を加工対象物に対して行う加工装置のことである。そして、パターン加工とは、穴明け加工による穴以外の、指定された形状に加工対象物の内側をくりぬきパターン孔を形成することであり、パターン孔とはその指定されたくりぬき形状を言う。
従来、薄いシート状の加工対象物、たとえば厚さ0.03mm以上の単体の有機材料、無機材料、金属材料等からなる加工対象物、あるいはプリント配線板のような有機材料、無機材料、金属材料等の複合材料からなる熱硬化前または熱硬化後の加工対象物に、パターン加工、外形加工、ザグリ加工または穴明け加工する場合、それらシート状の加工対象物を重ねてワーク本体とし、必要に応じてその上下を当板と下板とによって挟持してワークを形成し、その形成されたワークに対して所定の加工をすることから、生産性を向上させるためには、その重ねる枚数を増やすとともに加工速度を高める必要がある。しかし、その加工によって生じた切粉が工具(カッターやドリル)の刃面や工具の切粉排出溝に融着して、切刃による正常な切削加工が行われなくなり、ワーク本体の加工部すなわち重ねられた個々の加工対象物の加工面の品質が低下すると同時に、工具交換が頻繁に必要となって、加工コストが高くなることが課題となっていた。
特に熱硬化前のプリプレグの場合、ガラス繊維布にエポキシ樹脂を含浸させた熱可塑性状態であり、軟化温度が100℃以下であるため、重ねた状態で加工した場合、加工熱(工具刃面のせん断または圧縮破壊熱)によりワークの加工部自体と加工によって生じた切粉の双方が軟化・溶融し易い状況にある。そして、溶融した切粉は工具の刃面に融着して、正常な切削を阻害することとなる。その結果、工具と加工部との摩擦量が増大し、刃面上の温度上昇が加速される。また、プリプレグは熱伝導率が低く温度拡散速度が低いため、加工部では加工熱の蓄積量が飛躍的に増大して温度上昇が加速され、溶融し易くなる。その結果、工具の刃面と加工部壁面(すなわち個々のプリプレグの加工端面)双方が熱的悪循環(熱暴走状態)に陥り、工具への重度の切粉融着、また加工部壁面の溶融が発生することとなる。そして工具に重度の切粉融着が一旦発生するとその除去は不可能であり、工具自体を交換する必要があるため、タイムロスを招来して加工効率が低下するとともに、加工コストも増大することとなる。一方、プリプレグは弾性がなく、切粉回収バキュームによる負圧によって変形し易いため、加工部に近い位置で押えないと、重ねられたプリプレグが浮き上がってその重ねの間に隙間が生じて切粉が侵入し易くなり、2次的な加工部壁面の品質劣化要因となっていた。(尚、原因の如何に関わらず、加工対象物の加工部壁面に生ずる微細な凹凸を「加工面粗さ」、溶融した部分の巾を「溶融巾」と言う。)
このように、特に加工対象物がプリプレグの場合、それを重ねたワーク本体を加工すると、工具刃面の切粉融着および加工部の溶融が著しい上、プリプレグに弾性がないため、切粉回収用の集塵バキューム及び工具の切削推力によって重ねられた個々のプリプレグが浮き上がり、ワーク内に隙間が生じ、その隙間に切粉が侵入して正常な切削加工が行われなくなるという悪循環に陥り、加工部の品質を一層低下させるという課題があることから、プリプレグ効率的な加工の障壁となっていた。
例えば、図15に示すβは従来のルーター加工装置であり、その構造を説明する。図15に示す101はスピンドルであり、102はスピンドル101のロータシャフト、103は工具であって、切刃を有するカッターであり、108は樹脂製のリングであって、工具103に圧入装着され、スピンドル101が工具103を把持する際に、加工テーブル(図示せず)に対する垂直方向(以下、「Z方向」と言う。)の位置を一定に保持するものである。104は後述のワーク押さえ機構Bの下面に装着された可撓性のリングブラシ117によって形成される加工部キャビティであり、その中央部において該スピンドル101によるワーク本体105に対する加工が行われる。ここでワーク本体105は、例えば厚さ0.03mm以上のプリント配線板用の基材を複数枚重ねたものであり、ロータシャフト102にコレット(図示せず)により把持された工具103を各加工用に適したものに取り替えることにより、加工部キャビティ104内において、必要に応じて切削加工、溝加工、ザグリ加工あるいは穴明け加工等が行われる。なお、ワーク本体105は当板106および下板107と複数のピン(図省略)により一体となってワーク105’を形成しており、該ワーク105’が後述の台板109に固定された状態で加工が行われる。109はワーク105’加工時に加工テーブル(図示せず)を傷つけることのないよう、加工テーブル上に設置された台板であり、加工による切粉が排出され易いよう、予め加工パターンと同じルートで切粉排出部110が形成されている。ワーク105’に対する加工によって生じた切粉は、後述のバキュームダクト115により、切粉排出部110およびワーク加工済部111から、ワーク105’上面側へのエア流118(図中矢印)によって、キャビティ104外部に排出される。111はワーク105’がスピンドル101に対して+Xと矢印で表示された方向へ相対移動して形成されたワーク加工済部である。
また、スピンドル101は、Z方向へ移動可能とするZ軸駆動機構(図示せず)の移動部112に固定される一方、ワーク押さえ機構Bのワーク押さえ本体116は1対のガイドロッド114により1対のエアシリンダ113と連絡し、該1対のエアシリンダ113が前記移動部112に係合されていることから、スピンドル101がその軸心方向(図15における上下方向(Z軸方向)であり、「U」もしくは「D」で方向を示す。尚、Z方向と一致する。)に移動自在、且つ停止自在となるとともに、ワーク押さえ機構Bもスピンドル101と同期してあるいは別に、その軸心方向に移動自在且つ停止自在となっている。すなわち、移動部112の作動によって、スピンドル101が「D」方向に駆動された場合、ワーク押さえ機構Bもスピンドル101と一体となって「D」方向に駆動し、後述のリングブラシ117がワ−ク105’表面に到達した後も、さらにスピンドル101が「D」方向に駆動し続けることによってワ−ク105’の加工が行われても、ワーク押さえ機構Bは一定の力でワ−ク105’を押えるようになっている。そして、ワーク押さえ本体116の底面には加工部キャビティ104を形成する可撓性のリングブラシ117が着脱自在に係合されている。通常、該リングブラシ117は直径2乃至2.5mmの歯ブラシ状のブラシ束を、隣接ピッチ約3乃至4mmで設置したものであり、リングブラシ117先端部でリング巾Wは約30mm、リング内径dは約20mmに設定されている。115はワーク押さえ機構Bに設けられる排気用のバキュームダクトであり、バキューム集塵装置(図示せず)によって、スピンドル101によるワーク105’の加工によって生じた切粉を吸引して回収する。118はそのバキュームダクト115方向に流れるエア流であり、併せてそのエアの流れに乗った切粉の流れ状態および流れ方向をも示すものである。
尚、同様のものは後記特許文献1にも記載されている。
このように、リングブラシ117を使用する従来例においては、スピンドル101によるワーク105’に対する加工によって生じた切粉を、リングブラシ117によって集めるとともに、それをバキューム集塵装置による負圧によってバキュームダクト115へ回収して、工具103やワーク本体105に切粉が付着しないようにし、また、同時に該リングブラシ117によってワーク105’を押圧してワーク本体105’が浮き上がらないようにしていた。
そして、従来のルーター加工装置βによる具体的なパターン加工の加工方法として、図16及び図17に説明するような方法が採られていた。
すなわち、図16は加工対象物に対して四隅にアールを有する略長方形のパターン孔Qを形成する際の、従来例のワーク押え機構Bを有するルーター加工装置βによる上面視方向からみた加工工程模式図であり、図17は、該従来例のルーター加工装置βの加工状況の模式図であって、図17(a)は図16(a)の側面視方向からの穴あけ状況、図17(b)は図16(b)の側面視方向からのルート加工開始直後の状況、図17(c)は図17(b)の上面視をそれぞれ示している。
先ず、図16(a)は、当板106、ワーク本体105、下板107で形成されるワーク105’に、切粉排出部110に到達する貫通孔を形成する貫通孔形成工程であり、P1’はパターン孔Q内の加工開始時点すなわち貫通孔形成開始時点における工具(ここではカッター)103の軸心位置であって、ルート加工開始時点の軸心位置でもある。そして、工具103内の矢印は工具103の回転方向を示し、工具103の外に描かれた円周は、工具103の回転角方向の発熱範囲を示すための指示線であり、Lha’は後述するように発熱範囲である。
図16(b)は、ワーク本体105に工具径と同幅の孔(ルートr・1)を形成するルート加工工程(尚、ルート加工とは、工具としてカッターが使用され、1つの工程によって,その工具径と加工によって形成された孔幅とが等しい加工である。図16ではルートr・1がルート加工工程による加工位置である。)である。P1’はルート加工開始時点における工具103の軸心位置であり、P2’はルート加工終了且つシフト粗加工開始時点における工具103の軸心位置である。
図16(c)は、ルート加工に引き続いて、ワーク105’に仕上げ加工のための仕上げシロ47(例えば300μm)を残して、製品仕様であるパターン孔Qよりも1回り小さなパターン孔を形成するシフト粗加工工程である(尚シフト粗加工において行われる加工はシフト加工であり、シフト加工とは、工具としてカッターが使用され、先に形成された孔と一部重合することから、その工具径よりもその加工によって新たに形成された孔幅が狭い加工である。)。ルートr・2乃至r・10は、シフト粗加工工程が渦巻き状に行われることを示している。そして、P3’はルートr・10のシフト粗加工終了且つ仕上げ加工移行時点における工具103の軸心位置である。尚、ルート加工においては、回転する工具103によるワーク105’に対して加工が行われることによる発熱範囲と、加工進行方向後方の、加工が行われない切粉排出範囲(すなわちワーク105’と接することがなく冷却範囲となる。)との長さが等しくなるのに対し、シフト粗加工は発熱範囲より冷却範囲の長さが長くなる。そのため、ルート加工工程としてのルート加工のなされるルートr・1は、パターン孔Qの長尺方向に直線状に形成され、シフト粗加工工程としてシフト粗加工のなされるルートr・2は、ルートr・1に対してパターン孔Qの短尺方向に屈曲しており、以下、ルートr・3はルートr・1とは逆方向に再度直線状に形成され、ルートr・4はルートr・2とは逆方向に屈曲するというようにして、パターン孔Qの仕上げシロ47を残した状態までシフト粗加工工程としてのシフト粗加工によりワーク105’が切削加工される。尚、加工工程におけるルートは前述のように直線と屈曲を繰り返すことから、1個のパターン孔を形成するまでに要するルート加工工程とシフト粗加工工程における直線状の加工と屈曲しての加工との回数を合計して、ルート数と言う。
図16(d)は、シフト粗加工工程において残された仕上げシロ47を除去して、製品仕様として要求される加工面粗さを形成する仕上げ加工工程を示している。P4’は仕上げ加工の加工開始時点における工具103の軸心位置であり、ルートr・1’乃至r・4’へと加工が進展し、工具103の軸心位置はP4’へ戻って来る。
以上のような加工工程によりパターン加工がなされることから、各加工工程において、それぞれ以下のような問題点があり、加工品質及び加工効率並びに加工コストの面で問題があった。
すなわち、図16(a)に示す貫通孔形成工程においては、(a)に示すLha’は工具103が実質的にワーク105’に対して加工を行っている円周方向の範囲、すなわち工具刃面に加工によって生じた切粉が蓄積されて加工部が温度上昇する範囲(発熱範囲という)であるところ、貫通孔形成工程時の発熱範囲は全周となる。そのため、工具103は発熱した切粉およびワーク105’加工部壁面と接触状態にあるため、熱伝導により工具刃面の温度が上昇し、ワーク本体105’の加工部の温度も時間とともに上昇することとなる。その際、加工部の発熱量は切削除去量すなわち工具切込み量(=切込み速度/工具回転数)、および工具103とワーク105’の接触長/時間と比例関係にあるため、切込み深さが深くなるほど、また、工具回転数が高くなるほどワーク本体105’の加工部の温度が上昇することとなる。
そのため、貫通孔形成工程において該温度上昇を抑える手段として、図17(a)に示すように、一回の切込みにおいて切粉とワーク本体105’の加工部が軟化溶融しない切込み深さZn’を設定するとともに、加工可能な範囲でできるだけ低いスピンドル回転数を設定し、更に、一回の切込み深さZn’まで穴明けした後、工具103先端を当板106表面から一定の距離ZM’上昇させた位置まで引き上げて、切粉を振り払い冷却し、再度その一回の切込み深さZn’だけ穴明けを行う工程を繰り返すというステップ加工法が採用されて来た(尚、1個の貫通孔を形成するために必要となる切込み回数を「切込みステップ数」と言う。)。しかし、特にプリプレグのシートを加工対象物とする場合、現在、仕様として最低でも200μm以下の加工面粗さおよび溶融巾が要求されることから、許容されるコストとの関係からもプリプレグのシートを20枚重ねてワーク本体として加工するのが限度であるが、その際でも、貫通孔形成工程における貫通孔形成加工においては、スピンドル101の工具103の回転数は10乃至15krpmであり、切込速度が1mm/s以下、一回の切込深さZn’が約0.2mm以下に制約されるため加工時間が長くなり、第1の生産性低下要因となっていた。
次に、図16(b)に示すルート加工工程においては、Lhb’は加工進行方向前方に生ずる、回転する工具103がワーク105’を加工する際の摩擦による発熱範囲であり、Lcb’は加工進行方向後方の、加工が行われない切粉排出範囲(すなわち摩擦の生じない冷却範囲となる。)であって、ルート加工の場合は発熱範囲と冷却範囲は同じ長さであり、ワーク本体105の加工部は同じ周期で温度上昇と冷却を繰り返すことになる。そのため工具103の回転数が高くなると、冷却範囲の周期(1/工具回転数)が短くなって冷却が十分に行われないため、工具103の回転数が多くなるほどワーク本体105の加工部の温度は上昇することとなる。また、ワーク本体105の加工部の発熱量は切削量すなわち加工速度とも比例関係にあるため、加工速度が速くなるほどワーク本体105の加工部の温度が上昇することなる。その一方で、図17(b)に示すようにルート加工の開始によって、工具103が+Xとされる矢印方向にワーク105’に対して相対移動して生じるワーク加工済部111の空間をエア流118が流れるものの、その流速は低く、積極的に工具103を冷却する効果は低いものであった。
そのため、ルート加工工程においては、温度上昇を抑える手段として、切粉時間とワーク本体105の加工部が軟化溶融しない低速回転数および加工速度を適用して、加工部の温度上昇を押えて来た。しかしここでも、プリプレグのシートを20枚重ねてワーク本体105としてルート加工を行う際、スピンドル101の工具103の回転数は10乃至15krpmであり、加工速度も2mm/s以下に制約されるため加工が長くなり、第2の生産性低下要因となっていた。
次に、図16(c)に示すシフト粗加工工程においては、Lhc’は加工進行方向前方に生ずる、回転する工具103がワーク105’を加工する際の摩擦による発熱範囲であり、Lcc’は加工進行方向後方の、加工が行われない切粉排出範囲(すなわち摩擦の生じない冷却範囲となる。)である。そしてSrはシフト粗加工のルートシフト量(シフト量)であって、シフト粗加工工程においては、実質的にこの幅の範囲で加工が行われる。
シフト粗加工工程においては発熱範囲は冷却範囲よりも短く、ワーク本体105の加工部の温度上昇はルート加工工程よりも少ないものの、発熱範囲Lhc’はルートシフト量Srの大小に比例している。ところで、前述のように仕上げ加工後の加工対象物の加工面粗さを少なくとも200μm以下とすることが製品仕様として求められていることから、シフト粗加工工程における該加工面粗さを300μm以下に維持する必要があるところ、プリプレグのシートを20枚重ねてワーク本体105としてシフト粗加工を行う場合、該加工面の粗さを300μm以下に維持するためには、ルートシフト量Srは0.4mm以下に、また加工速度も2mm/s以下に制約される。しかも、通常シフト粗加工長(ルートr・2乃至r・10)は長いため、その加工速度では加工時間が長くかかることとなって、第3の生産性低下要因となっていた。
次に、図16(d)に示す仕上げ加工工程においては、前記シフト粗加工工程と同様に、Lhd’は加工進行方向前方に生ずる、回転する工具103がワーク105’を加工する際の摩擦による発熱範囲であり、Lcd’ は加工進行方向後方の、加工が行われない切粉排出範囲(すなわち摩擦の生じない冷却範囲となる。)である。そしてSfは仕上げ加工のシフト量であって、仕上げ加工工程においては、実質的にこの幅の範囲で加工が行われる。
前記シフト粗加工工程と比較して、シフト量Sfはルートシフト量Srより小さいことから、仕上げ加工工程においては、ワーク本体105の加工部の温度上昇はシフト粗加工工程におけるよりも少なくはなるものの、前述の通り、仕上げ加工後の加工対象物の加工面の粗さを200μm以下とすることが製品仕様として求められていることから、プリプレグのシートを20枚重ねてワーク本体105として仕上げ加工を行う場合、加工速度が2乃至5mm/s(パターン孔Qの幅が広い場合には、5mm/s程度まで加工速度を上げて加工できるが、パターン孔Qの幅が狭い場合には、切粉の排出性が悪いことから、加工速度を2mm/sまで下げて加工する必要がある。)以下に制約されるため、加工時間が長くかかることとなって、第4の生産性低下要因となっていた。
ところで、これらの生産性低下要因を詳細に検討すると、その主たる原因は以下の3つであることが判った。すなわち、
第1の要因は、ワーク押え機構B自体の切粉除去性能にある。従来のバキュームダクト115による負圧集塵方式の場合、吸入圧力が0.18MPa、口径50mmのダクトの場合、最大吸入流量は約6?/minであり、エア流118の流速が50m/s以下と低く、該エアのもつ運動エネルギーが小さいことから、加工時のエア流118による工具103刃面上の切粉除去効果が少なく、加工対象物の重ね枚数が多くなると加工工程における切粉の発生量が増大して、一旦工具103の刃面と切粉排出溝に切粉が融着すると、正常な切削(鋭利な切刃による切削)が行われなくなる。そして、一旦正常な切削がなされなくなると、工具103の刃面とワーク105’の加工部との摩擦による加工熱の発生が飛躍的に増える熱的悪循環(熱暴走状態)に陥るためである。
第2の要因は、ワーク押え機構Bのワーク押え性能にある。すなわち、リングブラシ117が当板106を介してワーク本体105を加圧した状態で、スピンドル101とワーク105’が相対移動して加工が行われるが、所定のパターン孔Q通りに正確に加工するために、リングブラシ117の押圧力によるワーク105’の変形を避けねばならないことから、リングブラシ117による加圧力を約3kg以下の低い値に設定する必要がある。その一方で、リングブラシ117は可撓性を有することから、工具交換スペースとして直径約20mm程度の大きなキャビティ104が必要となり、キャビティ中央の加工部に近い位置ではワーク105’を押えられないため、加工中に切粉を集塵するバキューム(負圧)によって当板106とワーク本体105が吸上げられて、ワーク本体105を形成する重ねられた加工対象物間や、ワーク本体105と当板106あるいは下板107間に隙間が生じ、高温化した切粉が該隙間に侵入してワーク105’の加工部に融着して、前記同様の熱的悪循環に陥るためである。
第3の要因は、積極的な冷却という視点の欠如である。すなわち、従来のバキュームダクト115による負圧集塵方式においては、切粉を吸い上げて除去するということに主眼が置かれ、回転する工具103やワーク105’の加工部を積極的に冷却するという視点を欠いていた。そのため、加工開始位置での貫通孔形成工程、またその後の各工程においても、工具103及びワーク105’の加工部を積極的に冷却することがなく、加工速度を上げると熱的悪循環に陥り易い状況となっていた。
実公平4ー10992号公報
解決しようとする課題は、切粉が確実に回収できず、また、加工部直近のワークを確実に押圧できず、ワーク本体の加工品質や生産効率を向上できないとともに、工具寿命が短く、生産コストの低減ができないという問題であり、特に加工対象物がプリプレグのような融点の低い材料である場合にはそれらの問題点が顕著に生じ、プリプレグ加工の低コストでの本格的実用化が困難であったという問題である。
本発明は、上記生産性低下要因の原因を分析し、従来のバキュームによる負圧を利用して集塵するという負圧集塵方式とは逆の発想により、最終的な集塵のための負圧集塵方式は残したまま、工具外周近傍に対して高速のエアを吹き付けて、第1に加工により生じた切粉を吹き飛ばし、第2に同時に工具や加工面を冷却し、第3にワークの加工部近傍を押圧することによって、ワークの中に切粉の侵入する隙間を作らせず、それらの作用によって、ワークの加工部の溶融や回転する工具自体への切粉の融着を防止して加工品質を向上させるというものである。そして更に、本発明にかかるルーター加工装置を使用して、より効率よく且つ低コストで加工する方法を提供するものである。そのため、従来パターン加工工程は、前述のように貫通孔形成工程、ルート加工工程、シフト粗加工工程、仕上げ加工工程(ルート加工工程、シフト粗加工工程、仕上げ加工工程の個々あるいはそれらを併せて「切削工程」と言う。)という順番で進行していたものを、単に工具径と同径の穴を明けるのではなく、一定の長さを有した開始孔を一定の方法によって形成した上で、切削加工を行うこととしたものである。
本願発明は、加工用スピンドルの組み込まれたルーター加工装置もしくは穴明け装置における、排気ダクトを有して、該スピンドルの軸心と平行方向に移動自在、且つワークに対して押圧自在となるワーク押さえ機構であって、加工用スピンドルに把持された工具の外周近傍のワーク表面に対して高速のエアを吹き付ける第1のエア噴射ノズルを有する第1のエア噴射機構を設け、該第1のエア噴射ノズルが、平面視において、少なくとも加工用スピンドル先端に把持された工具を中心とする直線上に1対設けられてなることを主要な特徴とするものである。
すなわち、第1の特徴として、第1のエア噴射ノズルが、平面視において、少なくとも加工用スピンドル先端に把持された工具を中心とする直線上に1対設けられてなるものである。
これにより、切粉は発生した瞬間にそのワークの加工部から吹き飛ばされて舞い上がり、排気ダクトに回収される一方、そのワークの加工部近傍に対して高速のエアが吹き付けられてワークが押圧されることから、ワークやワーク本体を構成する加工対象物がスピンドルの作動やバキュームの負圧によって巻き上げられて変形することがなく、ワーク本体の加工品質を向上させることができる。また、回転する工具に対しても高速のエアが吹き付けられることによって、付着した切粉が吹き飛ばされるだけでなく、加工において発生する熱が冷却されることから、工具への切粉の融着を防止して、工具寿命を延伸することができるものである。更に、簡単な構成であって製造コストの上昇を招来せず、工具交換や加工位置移動も容易且つ迅速に行うことができ、生産性を向上させることができるものである。特にこのワーク押さえ機構によって、プリプレグのような融点の低い材料に対する低コスト且つ効率のよい加工を可能とするものである。
第1の特徴を踏まえて、第2の特徴として、第1のエア噴射ノズル毎にエアを噴射及び停止自在とする機構を設けてなるものである。
これにより、エア噴射量を適宜調節することができ、エア消費量を削減して加工コストを抑制することができる。
第1及び第2の特徴を踏まえて、第3の特徴として、第1のエア噴射ノズルから噴射されるエアを超音速としてなるものである。
これにより、切粉の回収並びに加工において発生する熱の除去をより確実にして、ワーク本体の加工品質をより一層向上することができるだけでなく、工具寿命をより一層長期化することができるものである。
第1乃至第3の特徴を踏まえて、第4の特徴として、第1のエア噴射機構を構成するエア供給通路の径を、それに続く第1のエア噴射ノズルの径の10倍以上としてなるものである。
これにより、エア供給通路の径とエア噴射ノズルの径との比によって生ずる断熱膨張効果を利用して、室温状態且つ機械的に容易に作出しうる程度の高圧エアで、超音速且つ室温より低温のエアを容易に作出することができ、加工コストの一層の低減を図ることができる。
第1乃至第4の特徴を踏まえて、第5の特徴として、ワークに向けて高速のエアを吹き付ける第2のエア噴射機構を有し、該第2のエア噴射機構を構成する第2のエア噴射ノズルをワーク対向面に複数設けて、そのワークに吹き付けるエアにより形成されるエア層を介してワーク押さえ部を形成してなるものである。
これにより、第2のエア噴射ノズルから噴射されるエアの圧力によってワークとの間に高圧のエア層が形成され、非接触にてより広い範囲で安定的に、しかも移動自在にワークを押さえることができ、ワークの加工品質を向上させることができる。
第5の特徴を踏まえて、第6の特徴として、平面視において、ワーク押さえ機構の底面を円形とし、ワーク押さえ機構を構成するワーク押さえ部を環状に設けてその内側に加工用スピンドルの工具が作動する加工部キャビティを設けるとともに、ワーク押さえ部の外側に環状にブラシを設けて、ワーク押さえ部との間に第2のキャビティを設け、該第2のキャビティに面して複数の換気孔を設けてなるものである。
ワーク押さえ機構の底面を円形としてワーク押さえ部を環状とすることにより、ワークの押さえを均一化して、スピンドルの作動中にワークとスピンドルとが平面上をどのように相対移動しても安定したワーク押さえができ、しかも、第2のキャビティを設けて、そこに換気孔が設けられていることから、切粉の回収がより確実となるものである。
第1乃至第6の特徴を踏まえて、第7の特徴として、ルーター加工装置もしくは穴明け装置として、以上のいずれかのワーク押さえ機構を有する装置である。
加工対象物の加工に際してこれらの装置を使用すれば、前記各作用・効果を得ることができる。
第8の特徴として、前記第7の特徴を有するルーター加工装置を用いた長尺方向長さが4mmを超えるパターン孔を形成するパターン加工の加工方法であって、工具となるカッターを作動させて、第1に、ワーク本体を貫通するとともに、平面視において4mm以上且つ当該パターン孔の長尺方向長さより短い長さの直線状の開始孔をワークのパターン孔形成位置内に穿つ開始孔穿孔工程を行い、第2に、該開始孔の長尺方向先端部にカッターがワーク本体を貫通した状態から、ワークの切削加工を行う切削加工工程を行うものであって、開始孔穿孔工程として
1.ワーク表面よりも高い開始位置から工具が下降して、ワーク本体表面に浅穴を形成する穿孔工程。
2.穿孔工程に連続して、当該浅穴の深さを保持した状態で、工具とワークが所定の開始孔の長さから工具径を減じた距離だけ直線的に相対移動する移動加工工程。
3.移動加工工程に連続して、工具が開始位置へ戻る工具戻り工程。
を複数回採るものである。
これにより、加工中においても工具が確実に冷却されることから、加工速度を上げても工具の刃面やワークの加工部に切粉が融着せず、熱的悪循環(熱暴走状態)が抑制されることから、生産効率を向上させ、且つ、製造コストを低減することができるとともに、加工品質を向上させることができる。
前記第8の特徴を踏まえた第9の特徴として、開始孔穿孔工程として、
1.ワーク表面よりも高い開始位置から工具が下降して、ワーク本体表面に浅穴を形成する第1穿孔工程。
2.第1穿孔工程に連続して、当該浅穴の深さを保持した状態で、工具とワークが所定の開始孔の長さから工具径を減じた距離だけ直線的に相対移動する第1移動加工工程。
3.第1移動加工工程に連続して、当該相対移動した位置から開始位置と同じ高さまで戻る第1工具上昇工程。
4.第1工具上昇工程に連続して、当該上昇位置から工具が下降して、前記2の相対移動した位置に、更に浅穴を形成する第2穿孔工程。
5.第2穿孔工程に連続して、第2穿孔工程により穿たれた浅穴の深さを保持した状態で、工具とワークが所定の開始孔の長さから工具径を減じた距離だけ移動加工工程と逆方向に相対移動する第2移動加工工程。
6.第2移動加工工程に連続して、当該逆方向に相対移動した位置から開始位置まで戻る第2工具上昇工程。
を複数回採るものである。
これにより、加工効率をより一層向上することができる。
第10の特徴として、前記第7の特徴を有するルーター加工装置を用いた、長尺方向長さが4mm以下のパターン孔を形成するパターン加工の加工方法であって、工具となるカッターを作動させて、少なくとも、ワーク本体を貫通するとともに、平面視において当該パターン孔の長尺方向長さと等しい長さの直線状の開始孔をワークのパターン孔形成位置内に穿つ開始孔穿孔工程を有し、該開始孔穿孔工程として下記AあるいはBのいずれかの加工工程を複数回採るものである。

1.ワーク表面よりも高い開始位置から工具が下降して、ワーク本体表面に浅穴を形成する穿孔工程。
2.穿孔工程に連続して、当該浅穴の深さを保持した状態で、工具とワークが所定の開始孔の長さから工具径を減じた距離だけ直線的に相対移動する移動加工工程。
3.移動加工工程に連続して、工具が開始位置へ戻る工具戻り工程。

1.ワーク表面よりも高い開始位置から工具が下降して、ワーク本体表面に浅穴を形成する第1穿孔工程。
2.第1穿孔工程に連続して、当該浅穴の深さを保持した状態で、工具とワークが所定の開始孔の長さから工具径を減じた距離だけ直線的に相対移動する第1移動加工工程。
3.第1移動加工工程に連続して、当該相対移動した位置から開始位置と同じ高さまで戻る第1工具上昇工程。
4.第1工具上昇工程に連続して、当該上昇位置から工具が下降して、前記2の相対移動した位置に、更に浅穴を形成する第2穿孔工程。
5.第2穿孔工程に連続して、第2穿孔工程により穿たれた浅穴の深さを保持した状態で、工具とワークが所定の開始孔の長さから工具径を減じた距離だけ第1移動加工工程と逆方向に相対移動する第2移動加工工程。
6.第2移動加工工程に連続して、当該逆方向に相対移動した位置から開始位置まで戻る第2工具上昇工程。
これにより、パターンが小さい場合も、確実に生産効率を向上させ、且つ、製造コストを低減することができるとともに、加工品質を向上させることができる。
前記第8乃至第10の特徴を踏まえて、第11の特徴として、ワーク本体がプリプレグのシートの重ね層からなり、開始孔穿孔工程における各浅穴の深さを0.5mm以下としてなるものである。
これにより、ワーク本体がプリプレグの重ね層からなっている場合にも、穿孔工程において工具に切粉が融着することがなく、確実に生産効率を向上させ、且つ、製造コストを低減することができるとともに、加工品質を向上させることができる。
本願発明にかかる、加工用スピンドルの組み込まれたルーター加工装置もしくは穴明け装置における、該スピンドルの軸心と平行方向に移動自在となるワーク押え機構は、スピンドルによる全ての加工作業に万能に使用できる上、ワークの押さえはもとより、切粉の回収並びに加工において発生する熱の除去をより確実にして、ワークの加工効率及び加工品質を向上させることができるだけでなく、プリプレグ加工の低コストでの本格的実用化を可能とし、また、工具寿命を延伸することができるという優れた効果を有するものである。更には、その作動におけるコスト低減をも図ることができるものである。そして、そのワーク押さえ機構を有するルーター加工装置もしくは穴明け装置は、当然にそれらワーク押さえ機構の有する効果を保持しているものである。また、本願発明にかかるルーター加工装置において、本願発明にかかる加工方法を採れば、より一層、加工効率及び加工品質を向上させることができ、また加工コストを低減することができるという優れた効果を有するものである。
図1は本願発明にかかるルーター加工装置の第1の実施例を示す模式的正面図である。尚、ワーク押さえ機構部分は模式的縦断面図となっている。 図2は、本願発明の第1の実施例である図1に記載されたルーター加工装置における、ワーク押さえ機構部分の拡大模式的縦断面図である。 図3は、本願発明の第1の実施例である図2に記載されたワーク押さえ機構の、模式的底面図である。 図4は、本願発明の第2の実施例である、第1のエア噴射機構における第1のエア噴射ノズルを2連としたワーク押さえ機構の、ワーク押さえ機構部分の拡大模式的縦断面図である。 図5は、本願発明の第2の実施例である図4に記載されたワーク押さえ機構の、模式的底面図である。 図6(a)及び(b)は、それぞれ本願発明の第3の実施例である第2のエア噴射ノズルを有しないワーク押さえ機構の、各ワーク押さえ機構部分の拡大模式的縦断面図である。 図7は、本願発明の第1の実施例である図1に記載されたルーター加工装置における、本願発明にかかるパターン加工方法の工程である第4の実施例を示す平面視の模式図である。 図8は、本願発明の第4の実施例である図7に記載されたパターン加工方法の工程の内、開始孔穿孔工程(図7の(a)及び(b))の詳細を示す平面視の模式図である。 図9は、図8に記載された開始孔穿孔工程の、側面視の模式図である。 図10は、図7の(b)に記載の開始孔穿孔工程終了時点における第1のエア噴射ノズルからのエアの噴射状況を示す模式図である。 図11は、図4に記載した第1のエア噴射ノズルを2連とした第2の実施例における、図7の(b)に記載の開始孔穿孔工程終了時点における第1のエア噴射ノズルからのエアの噴射状況を示す側面視の模式図である。 図12は、図4に示す第1のエア噴射ノズルを2連とした第2の実施例であるルーター加工装置を使用して、プリプレグの重ね層をワーク本体とするワークに対してルート加工まで行った場合の、ルート加工の加工速度と加工対象物の加工部の面粗さとの関係を示す実験データである。 図13は、図4に示す第1のエア噴射ノズルを2連とした第2の実施例であるルーター加工装置を使用して、プリプレグの重ね層をワーク本体とするワークに対してシフト粗加工まで行なった場合の、シフト量と加工対象物の加工部の面粗さとの関係を示すデータである。 図14は、図4に示す第1のエア噴射ノズルを2連とした第2の実施例であるルーター加工装置を使用して、プリプレグの重ね層をワーク本体とするワークに対して仕上げ加工まで行った場合の、仕上げ加工シフト量と加工対象物の加工部の面粗さとの関係を示す実験データである。 図15は、リングブラシを使用した従来例のワーク押さえ機構の作動状況を示す模式的正面図である。 図16は、従来例のワーク押さえ機構において使用される従来のパターン加工の工程を示す平面視の模式図である。 図17は、図16に示す従来のパターン加工の工程の一部を示す側面視の模式図である。
加工用スピンドルを作動させることによって発生する切粉を確実に回収するとともに、加工部直近のワークを確実に押圧して、ワーク本体の加工品質を向上させ、また、プリプレグ加工の低コストでの本格的実用化を可能にするとともに、工具寿命を延伸させるという目的を、ワーク加工部近傍に対して高速のエアを吹き付ける第1のエア噴射ノズルを有する第1のエア噴射機構を設けることで実現し、更には、それと併せて、ワークに向けて高速のエアを吹き付ける第2のエア噴射ノズルを有する第2のエア噴射機構を設け、該第2のエア噴射ノズルをワーク対向面に複数設けて、その噴射するエアによって形成されるエア層を介してワーク押さえ部を形成することで実現したものである。
図1において、α1は本願発明にかかるワーク押さえ機構Aを有するルーター加工装置であり、1はスピンドルであり、2はスピンドル1のロータシャフト、3は工具であって、切刃を有するカッターであり、9は樹脂製のリングであって、工具3に圧入装着され、スピンドル1が工具3を把持する際に、加工テーブル(図示せず)に対する垂直方向すなわちZ方向の位置を一定に保持するものである。4は後述のワーク押さえ機構Aの下面に形成されるワーク押さえ面15の内側に形成される加工部キャビティであり、その中央部において該スピンドル1によるワーク本体5に対する加工が行われる。ここでワーク本体5は、例えば厚さ0.03mm以上のプリント配線板用の基材を複数枚重ねたものであり、ロータシャフト2にコレット(図示せず)により把持された工具3を各加工用に適したものに取り替えることにより、加工部キャビティ4内において、必要に応じて切削加工、溝加工、ザグリ加工あるいは穴明け加工等が行われる。なお、ワーク本体5は当板6および下板7と複数のピン(図省略)により一体となってワーク5’を形成しており、該ワーク5’が加工テーブル(図示せず)に固定された状態で加工が行われる。ワーク5’に対する加工によって生じた切粉は、後述のバキュームダクト16により、エア流26に導かれて加工部キャビティ4外部に排出される。8はワーク5’がスピンドル1に対して+Xと矢印で表示された方向へ相対移動して形成されたワーク加工済部である。
Aは本願発明の実施例たるワーク押さえ機構であり、10はワーク押さえ本体であって、ワーク押さえ部11と互いに対向する面で密着して、後述する高圧エアが接合面から洩れないように、ネジ(図示せず)により接合されている。スピンドル1はZ方向へ移動可能とするZ軸駆動機構(図示せず)の移動部12に固定される一方、ワーク押さえ機構Aのワーク押さえ本体10は1対のガイドロッド14により1対のエアシリンダ13と連絡し、該1対のエアシリンダ13が前記移動部12に係合されていることから、スピンドル1がその軸心方向(図1における上下方向であり、「U」もしくは「D」で方向を示す。尚、Z方向と一致する。)に移動自在、且つ停止自在となるとともに、ワーク押さえ機構Aもスピンドル1と同期してあるいは別に、その軸心方向に移動自在且つ停止自在となっている。尚、この構成は従来の構成と異なるところはない。
そして、実際の使用に際しては、NC装置(図示せず)からの指令により、移動部12が矢印D方向に駆動され、ワーク押さえ部11のワーク押さえ面15がワーク5’に近接しても、後述するように第2のエア噴射ノズル36からのワーク5’表面に対する高速のエアの噴射によって、ワーク押え面15とそれに対向するワーク5’表面との間にエア層が形成され、ワーク押さえ面15は非接触にて一定の間隔をもってワーク5’を押圧することとなる。16は加工によって生じた切粉をバキューム(図示せず)で吸引して回収するための排気ダクトである。尚、ワーク押さえ面15の外径は50mm、内径は10mmに設定されている。
そして、17はエア供給源(図示せず)から電磁弁35を経てワーク押さえ機構Aのワーク押さえ本体10内に導かれた第1の高圧エアであり、18は第1の噴射エア流であって、後述するようにワーク押さえ面15の内側に形成される加工部キャビティ4内で、工具3を中心として縦横の方向にそれぞれ一直線上に、且つ工具から同一距離に4個設置された第1のエア噴射ノズル22から、工具3によってワーク5’が加工されるいわばワーク加工部の表面近傍に向かって、噴射角度を俯角45度として吹き付けられたものである。尚、この第1の噴射ノズル22をワーク押さえ部11内に設けていることから構造的な制約もあり、第1の噴射ノズル22のエア噴射角度は俯角30度から60度の範囲での設定となる。また、ワーク加工部は工具3外周と接触していることから、第1の噴射エア流18の向けられるワーク加工部の表面近傍とは、ワーク5’表面における工具3の外周近傍でもあるところ、その工具3の径長にも影響を受けるものの、近傍位置とは工具3の外周に接する位置を含めそこからせいぜい1mmの範囲内である。ところで、この噴射エア流18は、90度ずつの角度をもって4方向に設置された各第1のエア噴射ノズル22a、22b、22c、22dからそれぞれ噴射されるものであり、4方向からワーク5’と工具3との接点であるワーク加工部の近傍に向かって吹き付けられることから、確実に切粉を吹き飛ばすとともに、スピンドル1の作動によって工具3や切粉に生ずる熱を冷却することができる。19、20、21はそれぞれ、ワーク押さえ本体10内に設けた、第1の高圧エア17を第1のエア噴射ノズル22に導くためのエア供給通路である。すなわち、第1の高圧のエア17a乃至17dは、4箇所設けられた各エア供給通路19a乃至19dに導入され、それぞれのエア供給通路20及び21を介して、各第1のエア噴射ノズル22a乃至22dに導かれる。そして、第1のエア噴射ノズル22の径は0.3〜0.5mmが望ましく、ここでは0.40mmに設定されており、そのノズル22に直接連絡するエア供給通路21の径は、ワ−ク本体5の材種などの必要に応じてエアの流速やエアの温度を得るために、第1のエア噴射ノズル22のノズルの径よりも大きく設定する必要があり、ここでは10倍となっている。23はワーク押さえ本体10の下面に着脱可能に係合され、歯ブラシ状のブラシを全周にわたって環状に密集配置したリングブラシである。24はリングブラシ23とワーク押さえ部11により形成される第2のキャビティであり、25は該第2のキャビティ24内に飛散した切粉をエア流26に載せてバキューム(図示せず)で回収するために、ワーク押さえ本体10に設けられた窓である。
また、4個の第1のエア噴射ノズル22a乃至22dそれぞれに導入される第1の高圧エア17の供給路には電磁弁35が設置されており、ワーク本体5の材種やシート厚、更には加工種類や加工方向に応じて、各第1のエア噴射ノズル22a乃至22dの内、作動させるノズルの数や噴射されるエアの圧力を適宜選択することができるようになっている。例えば、ワーク5の表面に導体層がある場合やワーク5自体の厚さが厚い場合には、加工進行方向の未加工側(工具3とワーク5の相対移動の移動方向前側、すなわち工具3を挟んでワーク加工済部8側と逆側)にある第1のエア噴射ノズル22から工具3方向に向かう第1の噴射エア流18を電磁弁35の作動によって停止させ、加工進行方向の変動に応じて順次その停止させる第1の噴射エア流18を切り換えることにより、エア消費量の低減が可能となる。
尚、本実施例とは異なり、エア供給量の増加を問題としないのであれば、例えば第1の高圧エア17をワーク押さえ本体10内に導くエア供給通路19を1箇所とし、その代わりに、第1のエア噴射ノズル22a乃至22dに到るエア供給通路20を連絡させて、そこからそれぞれ4つのエア供給通路21を分岐させて構成してもよい。
一方、図2に示すように、ワーク押さえ機構Aのワーク押さえ本体10には、第1の高圧エア17とは別に第2の高圧エア27が導かれ、該第2の高圧エア27は、環状となるワーク押さえ部11のワーク押さえ面15に設けられた第2のエア噴射ノズル36から、ワーク5’表面に向けて噴射される。この第2のエア噴射ノズル36はノズル径が0.2mmであり、後述するように第1の噴射ノズル22の設置された4方向のそれぞれの延長線上においては各1個、また、該4方向とそれぞれ45度ずつ相違する位置においては2個1対として合計12個設けられる。これによって第2のエア噴射機構が構成される。そして、第2の高圧エア27はワーク押さえ本体10内に設けられたエア供給通路29、30から、環状のエア供給通路31を経由して、外側に配置された8個の第2のエア噴射ノズル36から第2の噴射エア流28として噴射されるとともに、別途、環状のエア供給通路31から放射状に設けられた水平エア供給通路32へと導かれて、水平エア供給通路32に設けられた内側の環状のエア供給通路33を経由して、内側に配置された4個の第2のエア噴射ノズル36から第2の噴射エア流28として噴射される。
尚、本実施例においては、第2のエア噴射ノズル36の数を外側8個、内側4個としたが、大きなワ−ク押え圧を必要としない場合には内側4個のみでも、第2の噴射エア流28によるワーク5’に対する押し圧として容易に5kg以上の押し圧を得ることが可能であり、その場合、ワーク押さえ部11の底面に段差を設ける等して、ワーク押さえ面15の外形を小さくすれば、より効率よくワーク5’を押圧することができる。
本実施例において、スピンドル1を作動させてワーク5’の加工を行うに際し、当該ワーク5’が薄いプリント配線板を重ねたものであった場合、第1のエア噴射ノズル22a乃至22dから第1の噴射エア流18を噴射させてその風圧によってワーク5’を押えている上、第2のエア噴射ノズル36から第2の噴射エア流28を噴射させてなる高圧のエア層によりワーク5’を押えており、ワーク5’を構成する各プリント配線板間に隙間を生じさせないようにして加工することにより、加工面の品質を確保することができる。
また、全ての第1のエア噴射ノズル22a乃至22dから第1の噴射エア流18を噴射させるのではなく、例えばコーナーを加工する場合や円周加工を行う場合には、電磁弁35によって、未加工側(進行方向前側)から工具3に向かう第1の噴射エア流18を順次停止させるとともに、逆に加工進行方向後側となれば再度第1の噴射エア流18を噴射させるというように、順次各第1のエア噴射ノズル22a乃至22dの作動を切り換えることにより、加工面の品質を確保しながら、加工に必要となるエア消費量の低減が可能となる。
ところで、第1のエア噴射ノズル22から噴射された第1の噴射エア流18の流速は、エア供給通路19,20,21の直径,とくに直近のエア供給通路21と第1の噴射ノズル22の直径の比に依存しており、本実施例に示すようにノズル径0.40mm、エア供給通路21の直径を第1のエア噴射ノズル22のノズルの直径の10倍として、例えば第1の高圧エア17のエア供給通路19への導入圧力を0.5Mpaとすると、ノズル当たりの流量は約6Lit/minとなり、各ノズルにおいて噴射速度約800m/sが得られる。この場合、風圧は32g/mmであるが、風力は表面状態により4乃至6gがえられることになるので、その風力により切粉を吹き飛ばし、また加工部の温度を下げて、ワーク本体5の加工部の溶融や工具3への切粉の融着を減少させることができる。またワ−ク5’表面の加工部近傍を4つのノズルの風力である16乃至24gの押し圧効果によりワ−ク5’の隙間を小さく押えることができる。
更に、第1のエア噴射ノズル22から噴射される第1の噴射エア流18の温度は直近のエア供給通路21と第1のエア噴射ノズル22の各直径の比に依存しており、エア供給通路21の径長を第1のエア噴射ノズル22のノズル直径の10倍にすると、第1の高圧エア17が室温で導入されても、断熱膨張効果により第1のエア噴射ノズル22から噴射される第1の噴射エア流18の温度は当該室温よりも20℃以上低下させることができる。
これによって、容易に入手しうる程度の高圧エアを第1の高圧エア17として使用しても、容易且つ低コストで超音速という低温のエアをワーク加工部近傍に吹き付けることができ、切粉を吹き飛ばし並びに工具3及び切粉の温度上昇を防止して、ワーク本体5の加工部の溶融や工具3への切粉の融着を減少させることができる。そのため、本実施例において前記従来例によるパターン加工の加工方法を採用した場合でも、従来よりも切削長を長くしても,工具3への切粉の付着は軽減され、従来と同等以上の品質の加工面を得ることができた。また、本実施例におけるワーク本体5としてBステージのプリプレグ(厚さ0.05mm)を25枚重ねたものを使用した場合も、通常の要求仕様である加工面粗さ200μm以下の品質を確保することができた。尚、第1のエア噴射ノズル22から噴射される第1の噴射エア流18はワーク5’を押圧するとともに、切粉を吹き飛ばしながら同時に工具3を冷却して、工具3への切粉の融着を防止するものでもあることから、超音速であることが望ましいものの、どのような融点を有する物が加工対象物とされるかによって、また、設定される工具3の回転数や加工速度によっても必要となる噴射速度は異なり、場合によっては200m/s程度でも工具3への切粉の融着を防止することができる。
一方、第2の高圧エア27の圧力を0.5MPaとすると、第2のエア噴射ノズル36の直径が0.2mm、ワーク押さえ面15の外径が50mm、内径が10mm、第2のエア噴射ノズル36の数が12個に設定されていることから、ワーク押え面15とワーク5’表面間に高圧のエア層(エアベアリング)が形成され、エアシリンダ13に押し圧を設定することによって約30乃至50μmのギャップを維持することができ、ワーク押さえ面15がワーク5’に非接触の状態で縦横方向に摺動自在でありながら、十分なワーク5’押さえが可能となる。
図4及び図5に示すものは本願発明の他の実施例であり、工具3近傍にエアを噴射する第1のエア噴射ノズル22を2連としたものである。以下、図2及び図3と異なる部分のみ説明する。すなわち、第1の高圧エア17は、各エア供給通路19及び20を介して拡幅されたエア供給通路21’に至り、該拡幅されたエア供給通路21’の他端に設けられた上部エア噴射ノズル36と下部エア噴射ノズル37の2連のノズルから第1の噴射エア流38、39がそれぞれ噴射される。尚、少なくとも工具3を中心として外側に配置される下部エア噴射ノズル37から噴射される第1の噴射エア流39は、工具3の近傍に向かって噴射され、両エア流38、39のワーク5’表面における吹き付け位置(工具3を中心として内側に配置される上部エア噴射ノズル36から噴射される第1の噴射エア流38が、工具3の先端がワーク5’表面に接触した状態で工具3自体に対して直接吹き付けられる場合には、工具3がないとした場合のそのエア流38のワーク5’表面への吹き付け位置)の、ワーク5’表面における中間点を当該ルーター加工装置α2の第1のエア噴射ノズルのエア吹き付け位置とする。尚、拡幅されたエア供給通路21’の直径は第1のエア噴射ノズル36、37の各ノズルの直径の10倍となっている。
一方、第2のエア噴射ノズル34は、前記第1の実施例の場合と同様に放射線状に外側に8個、内側に4個、合計12個設けられているが、前記第1の実施例の場合と異なり、内側の4個の第2のエア噴射ノズル34は環状のエア供給通路33によって連結されるのではなく、それぞれ、外側の第2のエア噴射ノズル34を連絡する環状のエア供給通路31から直接に水平エア供給通路32を介して第2の高圧エア27の供給を受け、第2の噴射エア流28を噴射する。
この第2の実施例において、各第1のエア噴射ノズル36、37の直径を0.40mmとし、第1の高圧エア17のエア供給通路19への導入圧力を0.5Mpaとすると、ノズル当たりのエアの流量は約6Lit/min、各ノズルにおいて噴射速度約800m/sがえられ、実施例1と同様に風力により切粉を吹き飛ばし、また工具3及び切粉の温度上昇を防止して、ワーク本体5の加工部の溶融や工具3への切粉の融着を減少させることができる。またワ−ク表面の加工部の風力が第1の実施例の2倍の32乃至48gに増えるので、その押し圧効果によりワ−ク5’内の隙間をより小さく押えることができる。
この第2の実施例においては、2連となる第1のエア噴射ノズル36、37から噴射される第1の噴射エア流38、39によって、風圧によるワーク5’表面に対する押し圧効果が第1の実施例の2倍に増える上、工具3近傍のワーク5’を確実に押圧できることから、薄いプリント基板を重ねたワーク本体5の加工面の品質をより確保し易くなる。
図6の(a)及び(b)に示すものは、ワーク押さえ機構に関する更に別の実施例であり、この2つの実施例においては、ワーク押さえ部には第2のエア噴射ノズルは設置されない。先ず図(a)に示すものは、ワーク押さえ本体10の下部に、底面視でドーナツ型の接触式のワーク押さえリング40を設けて、該リング40によってワーク5’を直接押圧するものであり、該ワーク押さえリング40の四方に切欠部41を設けて、そこにそれぞれエア供給通路42を設置して、その先端に第1エア噴射ノズル43をそれぞれ設けてなるものである。
また、図(b)に示すものは、図15に示す従来のリングブラシ117をワーク押さえとして利用するものであって、その四方に切欠部44を設けて、そこにそれぞれエア供給通路42を設置して、その先端に第1エア噴射ノズル43をそれぞれ設けてなるものである。
これらの構造をとることによって、ワーク5’に対する押圧の面では限度があるものの、工具3に対する切粉の融着防止には十分な効果を奏するものである。
以下には、実施例1及び2で説明したルーター加工装置α1あるいはα2を使用したパターン加工の加工方法を説明する。
先ず、図7乃至図9は実施例1記載のルーター加工装置α1を用いた請求項9記載の発明であるパターン加工の加工方法を示すものであり、ワーク本体5に対してパターン孔Rを形成するパターン加工の加工工程を示す。図7(a)は開始孔穿孔工程における穿孔工程とそれに連続する第1移動加工工程の開始状況を示す模式図であり、図7(b)は開始孔穿孔工程と、それに引き続き行なわれる切削加工工程の一部であるルート加工工程の開始状況を示す模式図であり、図7(c)は切削加工工程の一部であるシフト粗加工工程の加工中の状況を示す模式図であり、図7(d)は切削加工工程の一部である仕上げ加工工程の加工中の状況を示す模式図である。また、図8(a)乃至(d)及び(n)は、図7(a)及び(b)に対応する開始孔穿孔工程からルート加工工程開始時までの平面視における工程模式図であり、図9(a)乃至(d)及び(n)は図8(a)乃至(d)及び(n)にそれぞれ対応する側面視における工程模式図である。
図7(a)は、当板6、ワーク本体5、下板7で形成されるワーク5’に、浅穴45を形成する第1穿孔工程であり、P1は第1穿孔工程開始時点、及び第1移動加工工程開始時点並びに第2移動加工工程終了時点における2枚刃のカッターである工具3の各軸心位置である。そして、工具3の外に描かれた円周は、工具3の回転での加工による発熱範囲を示すための指示線であり、Lhaは後述するように発熱範囲である。
図7(b)は、第1移動加工工程及びそれに引き続くルート加工工程の開始状況を示し、P2は第1移動加工工程終了時点及び第2穿孔加工時点並びに第2移動加工開始時点におけるとともに、それら開始孔穿孔工程に引き続くルート加工工程の開始時点における工具3の各軸心位置である。46は開始孔穿孔工程により形成される開始孔であり、この長さは切粉を吹き飛ばし、また、工具3自体を冷却するためにも4mm以上必要であるが、この長さを長くすれば、後述のように生産効率が低下することから、必要最小限度の長さとすれば足りる。そして、工具3の外に描かれた円周は、工具3の回転での加工による発熱範囲を示すための指示線であり、Lcbは後述するように冷却範囲であり、Lhbは発熱範囲である。
図7(c)は、ルート加工工程に引き続く、ワーク5に仕上げ加工のための仕上げシロ47を残して、仕様として要求されたパターン孔Rよりも1回り小さな孔を形成するシフト粗加工工程である。r・1はルート加工のルートを示し、r・2乃至r・4はシフト粗加工の各ルートを示す。ルート加工のなされるルートr・1はパターン孔Rの長尺方向に直線状に形成されるものであり、シフト粗加工となるルートr・2乃至r・4は、発熱範囲Lhcが冷却範囲Lccよりも小さくなっている。
図7(d)は、仕上げシロ47を除去する仕上げ加工工程を示している。P3は仕上げ加工の加工開始時点における工具3の軸心位置であり、r・1’乃至r・4’は仕上げ加工のルートであって、工具3の軸心位置はP3へ戻って来る。
第1に、第1穿孔工程を説明すると、図7(a)に示すように穿孔工程を行う位置をパターン孔R内の適宜位置に位置決めする。その際、パターン加工全体の加工効率を考えれば、その工具3の軸心位置P1は、パターン孔Rの縦・横の比やルートシフト量Srを考慮してパターン孔R内で位置決めされる。そして、図9(a)に示すように、工具3がワーク5’表面よりも高い位置(ワーク5’表面からの距離をZMとし、ここではZM=0.5mmとした。尚、この距離は異なるパターン孔を加工する作業を開始するに当たって、工具3を一旦ワーク5’表面から退避させる距離よりも短い。)から回転しつつ下降し、ワーク5’表面から深さをZ1(ここではZ1=0.25mmとした。)とする浅穴45を形成する。
第2に、上記第1穿孔工程に引き続き、回転する工具3は深さZ1を保った状態で、当板6からワーク本体5を貫通して下板7に到る長さLEを4mm以上とする直線状の開始孔46を形成するために、回転する工具3とワーク5’が一定速度で相対移動し、浅穴45位置から長さがLE、深さがZ1の第1孔48を形成する第1移動加工工程が行われる。この時、開始孔46の長さLEは、第1のエア噴射ノズル22からの第1の噴射エア流18によって切粉を吹き飛ばすとともに工具3を冷却するに足りる長さとして4mm以上、また、直線的に形成される必要がある。すなわち、図9(n)に示すように、工具3の近傍に吹き付けられた第1の噴射エア流18は開始孔46が存在することによって、工具3に直接吹き付けることとなる。しかしその一方、開始孔46の長さLEを長く設定すると、開始孔穿孔工程に時間を要して、全体のパターン加工に要する時間が長時間となることから、実際上、開始孔46の長さも合理的な範囲として6mm程度までに限定されることとなる。そのためここでは開始孔の長さLEを5mmとして穿孔した。図7(b)に示すP2は、第1移動加工工程が終了した際の工具3の軸心位置であり、工具3は第1移動加工工程において、P1の位置から、開始孔46の長さLEから工具径長を減じた距離だけ移動したこととなる。
第3に、上記第1移動加工工程に引き続き第1工具上昇工程として、回転する工具3は軸心位置P2を変動させることなく、一旦そのままワーク5’表面からの距離をZMとする位置まで垂直に上昇させられる。工具3がワーク5’表面から離れることによって、工具3は冷却される。この時、工具3には第1の噴射エア流18は直接吹き付けなくなるものの、工具3自体が回転している上、その第1の噴射エア流18による低温の空気の激しい動きが工具3を冷却する。
第4に、第1工具上昇工程に引き続き、工具3はワーク5’表面からの距離をZMとする位置から回転しながら下降して、図9(b)に示すように、深さZ1となっている第1孔48内の軸心位置P2に重合するとともに、更に深さをZ2とする浅穴45を形成する第2穿孔工程が行われる。尚、Z2もZ1と同じく0.25mmに設定されており、以下穴の深さZnはいずれも0.25mmである。
第5に、第2穿孔工程に引き続き、回転する工具3は深さZ2を保った状態で、回転する工具3とワーク5’が一定速度で相対移動し、第1穿孔工程における工具3の軸心位置P1まで前記第1移動加工工程と逆方向に移動して、第1孔48を深さZ2に掘り下げた第2孔49を形成する第2移動加工工程を行う。
第6に、第2移動加工工程に引き続き第2工具上昇工程として、回転する工具3は軸心位置P1を変動させることなく、一旦そのままワーク5’表面からの距離をZMとする位置まで上昇させられる。第1工具上昇行程と同じく、工具3がワーク5’表面から離れることによって、工具3は冷却される。
以下、上記第1乃至第6の工程を繰り返して、ワーク本体5を貫通し、下板7に到る開始孔46を形成する。このように1回の穿孔工程によって、0.25mmずつ穿孔するとともに、複数回の移動加工工程を経ることにより、長さLE5mmの開始孔46を穿孔した(尚、開始孔穿孔工程において必要となる穿孔回数を「切込み工程数」という。)。
ワーク本体5に形成すべきパターン孔Rは、種々の大きさや形態があり、もしもそのパターン孔Rの長尺方向の長さが4mm超えるのであれば、前記開始孔穿孔工程に引き続いて、その直線状の開始孔46を延長する形で、従来の方法と同様にルート加工を行うこととなる。その際、工具3は当板6及びワーク本体5を貫通して、開始孔46の底となる下板7にまで到った状態で、第1移動加工工程後の工具3の軸心位置P2側となる開始孔46の端部から開始される。図7(c)に示す直線状のルートr・1がルート加工工程であり、屈曲する位置からはルートr・2となって、以後ルートr・2乃至r・4はシフト粗加工工程となる。尚、図7(c)では工具3の径長に対してパターン孔Rの短尺方向の幅が狭いことから、シフト粗加工工程はルートr・4までの一周未満で終了しているが、パターン孔Rの短尺方向の幅が広い場合には、従来例におけるシフト加工工程の説明図でもある図16(c)のルートr・2乃至r・10のように渦巻き状に何周もシフト粗加工を行うこととなる。そして、加工対象物の加工面の粗さを改善する必要があれば、必要に応じて仕上げ加工を行うこととなる。
一方、パターン孔Rの長尺方向の長さが4mm以下であれば、前記開始孔46の長さLEとして4mm以上であって、パターン孔Rの長尺方向長さより短い長さを確保できないため、そのパターン孔Rの長尺方向の長さと等しい長さで直線状の開始孔を、前記開始孔穿孔工程と同様の工程で形成し、それで所定のパターン孔Rが形成されるのであれば、それで加工自体は終了する。また、パターン孔Rの短尺方向への加工が必要であれば、シフト粗加工工程、更には場合によっては仕上げ加工工程に移行することとなる。
ところで、前記開始孔穿孔工程においては第1移動加工工程と第2移動加工工程を有して、それぞれ逆方向に往復の移動加工を行っているが、第1穿孔工程、第1移動加工工程までは同一として、その後、第1工具上昇工程までも同一とした上、工具3をその上昇した位置で横移動させて第1穿孔工程の開始位置へ戻し、そこから更に同一の工程を繰り返しても、あるいは第1移動加工工程終了後、第1工具上昇工程のように工具3の軸心位置P2を移動させることなく垂直に上昇させるのではなく、工具3がワーク5’に対して相対的に斜めに上昇して第1穿孔工程開始位置に戻り、そこから更に同一の工程を繰り返してもよい。これらの工程を採ると、開始孔穿孔工程における移動加工は往復の移動加工ではなく、一方方向のみの移動加工となる。
一方、開始孔穿孔工程に引き続く切削加工工程であるルート加工工程やシフト粗加工工程、仕上げ加工工程について付記すると、図7(b)に示すようにルート加工工程においては、ワーク5’に対して加工が行われることによる発熱範囲Lhbと、加工進行方向後方の、加工が行われずワーク5’と接することがない冷却範囲Lcbの範囲が等しいのに対し、シフト粗加工工程や仕上げ加工においてはシフト量Sr、Sfに応じてワーク5’の切削加工が行われていることから、図7(c)に示すようにシフト粗加工工程においては、発熱範囲Lhcが冷却範囲Lccよりも小さくなっている。しかも、図7(d)に示すように仕上げ加工工程においては、仕上げシフト量Sfがシフト粗加工工程のシフト量Srよりも更に小さくなっていることから、仕上げ加工工程における発熱範囲Lhdはより縮小し、逆に冷却範囲Lcdはより拡大している。
加工速度の増加が切粉の融着との間で相関関係を有していても、工具3は回転しており冷却されることで切粉の融着が防止されることから、その冷却範囲の拡大は加工速度の増加を可能とする。そのため、ルート加工工程(ルートr・1)における加工速度(工具3のワーク5’に対する相対移動速度)よりもシフト粗加工工程(ルートr・2乃至r・4)における加工速度を速くすることが可能であり、更に、シフト粗加工工程における加工速度よりも仕上げ加工工程(ルートr・1’乃至r・4’)における加工速度を速くすることができる。
また、これら図7(a)(b)(c)(d)に示す全加工工程における、ワーク5’の加工部および工具3刃面の温度上昇は、刃面によるワーク5’の圧縮やせん断破壊時の摩擦によっても生じる。したがって、刃面が摩耗した場合には、刃面の温度が局部的に増大して切粉融着が起こり易くなるが、実施例1や2に記載のルーター加工装置α1、α2を使用すれば第1の噴射エア流18が工具3の刃面や刃先の切粉除去および冷却を行うことから、刃面の摩耗による加工対象物に対する加工品質すなわち加工面粗さの低下や加工面の軟化・溶融を防止することができる。
それ故、従来のルーター加工装置βと比べて、加工品質を向上させつつ、加工速度も増加させ加工効率を向上させることができるものである。
先ず、本件実施例1に記載のルーター加工装置α1において、以下の設定の下で、下記ワーク5’に対してパターン加工の実験を行った。
すなわち、ワーク5’は、厚さ0.05mmのプリプレグ25枚重ねをワーク本体5とし、フェノール製当板6、フェノール製下板7を使用した。各厚さは以下の通りである。(図10参照)
ワーク本体厚 Tw : 1.25mm (0.05mm×25)、
当板厚 Te : 0.4mm、
下板切込み量 Td : 0.3mm、
総加工深さ H : 1.95mm、
一方、ルーター加工装置α1の設定は以下の通りである。(尚、複数の数値が記載されたものは、その複数の数値のそれぞれに設定を変化させて、実験したものである。これは以下の記載においても同様である。)
工具3(2枚刃カッター)径D : 2mm、1.5mm、1.0mm、
第1のエア噴射ノズル22からの第1の噴射エア流18の噴射速度V : 800m/s、600m/s、400m/s、200m/s、
第1のエア噴射ノズル22の数 : 2、 4、 8、
各第1のエア噴射ノズル22からの第1の噴射エア流18の流量 : 6Lit/min、4.6Lit/min、3Lit/min、1.6Lit/min、
第2のエア噴射ノズル36からの第2噴射エア流28によるワーク5押し圧 : 5kg、10kg、
第1のエア噴射ノズル22からのワーク5’表面への第1の噴射エア流18の吹き付け角度θ(俯角) : 30°、45°、60°、
第1のエア噴射ノズル22からのワーク5’表面への第1の噴射エア流18の吹き付け位置Px : 工具3外周から0mm、1mm、2mm、
穿孔工程における切込み深さZn : 0.2mm、0.25mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、
開始孔穿孔工程における切込み速度(穿孔速度) : 1mm/s、5mm/s、10mm/s、15mm/s、20mm/s、
穿孔工程開始位置且つ工具上昇工程における引上げ高さZM : 1mm、
開始孔46長さ LE : 3.5mm、4mm、4.5mm、5mm、
加工速度Va : 5mm/s、10mm/s、15mm/s、20mm/s、25mm/s、30mm/s、
工具回転数 : 10krpm、12.5krpm、15krpm、25krpm,30krpm,37.5krpm,45krpm,60krpm、
上記設定の下で、
第1に、穿孔工程における切込み深さZn、すなわち浅穴45の深さを0.2mmから0.5mmへ段階的に増加させるとともに、切込み速度や工具回転数その他の要素をそれぞれ変化させて、穿孔工程の加工を行った結果、0.5mmになると工具3に若干の切粉が付着しており、切込み深さは0.5mmが限界であることが判った。
第2に、開始孔46長さLEを5mmとして、開始孔穿孔工程における切込み速度、工具回転数、加工速度Vaその他の要素等をそれぞれ変化させて開始孔穿孔工程の加工を行った結果、いずれも工具3刃面への切粉融着やワーク5’加工部の溶融、下板7加工面での切粉残はなかった。
第3に、開始孔穿孔工程における切込み速度、工具回転数、加工速度Vaその他の要素等をそれぞれ変化させるとともに、前記開始孔46長さLEを3.5mmから5mmへ段階的に増加させ、更にその後、ルート加工を開始孔穿孔工程における加工速度と同じ速度で5mm行い、その時点における切粉の融着状況等を比較した。すると工具3径Dとも関連するが、開始孔46長さLEを3.5mmとするとワーク5’加工部の溶融、下板7加工面での切粉残りが若干生じ、開始孔41長さLEを4mm及び5mmとした場合には、工具3刃面への切粉融着がないことはもとより、ワーク5’加工部の溶融、下板7加工面での切粉残はなかった。このことから、開始孔穿孔工程に引き続きルート加工を行うのが通常であることから、開始孔46長さLEは4mm以上必要であることが判った。
第4に、第1のエア噴射ノズル22からの第1の噴射エア流18の吹き付け位置Pxを工具3外周から0mm、1mm及び2mmと変化させつつ、上記設定の範囲内で諸条件を変化させて開始孔穿孔工程を行ったところ、該エア流18の吹き付け位置Pxを工具3外周から2mmと設定した場合に、ワーク本体5加工部の溶融、下板7加工面での切粉残りが若干生じ、工具3外周から0mmあるいは1mmに設定した場合には、ワーク本体5加工部の溶融、下板7加工面での切粉残はなかった。このことから、第1のエア噴射ノズル22からの該エア流18の吹き付け位置Pxを工具3外周から1mmの範囲内とするのが適切であることが判った。
第5に、開始孔穿孔工程、ル−ト加工工程及びシフト粗加工工程においては、工具3の径に拘わらずその回転数を10乃至15krpmとすることが最も適正であり、また、仕上げ加工工程においては、工具3の径が1.0mmあるいは1.5mmの場合には工具3の回転数を45乃至60krpmし、また工具3の径が2.0mmの場合には30乃至45krpmとすることが最も適正であることが判った。
次に、実施例2に記載のルーター加工装置α2を使用した場合を説明する。該ルーター加工装置α2は、図11に示すように第1のエア噴射ノズルを上部エア噴射ノズル36と下部エア噴射ノズル37の2連としたものであり、両ノズル36、37からの第1の噴射エア流38、39は平行であり、また、該平行となるエア流38、39に対して直角方向に距離LNを1mmとして両ノズル36、37が設置されている。該ルーター加工装置α2を使用して、前記と同様のワーク5’に対して、以下の設定の下で開始孔穿孔工程及びルート加工工程を行った。
工具3(2枚刃カッター)径D : 2mm、
第1のエア噴射ノズル36、37からの第1の噴射エア流38、39の噴射速度V : 800m/s、
第1のエア噴射ノズル36、37の数 : 8(2×4)、
第1のエア噴射ノズル36、37からの第1の噴射エア流38、39の流量 : 6Lit/min、
第2のエア噴射ノズル34からの第2の噴射エア流28によるワーク5押し圧 : 10kg、
第1のエア噴射ノズル36、37からのワーク5’表面への第1の噴射エア流38、39の吹き付け角度θ(俯角) : 45°、
第1のエア噴射ノズル36、37からのワーク5’表面への第1の噴射エア流39、39の吹き付け位置Px : 工具3外周から0mm、
穿孔工程における切込み深さZn : 0.25mm、
切込み速度(穿孔速度) : 10mm/s、
穿孔工程開始位置且つ工具上昇工程における引上げ高さZM : 1mm、
開始孔46長さ LE : 5mm、
開始孔穿孔工程における加工速度 Va : 10mm/s、
開始孔穿孔工程における工具回転数 : 12.5krpm、
以上の設定の上で、更に、ルート加工工程の加工速度と工具回転数を以下の通り変化させて、図7(c)に示すように10mmのルート加工(ルートr・1)を行った。
ケース1
加工速度Vb : 5mm/s、10mm/s、15mm/s、20mm/s、25mm/s、30mm/s、
工具回転数Rs : 12.5krpm、
ケース2
加工速度Vb : 同上
工具回転数Rs : 25krpm、
ケース3
加工速度Vb : 同上
工具回転数Rs : 37.5krpm、
その結果、図12に示すグラフに記載のように、加工速度15mm/s以下の範囲では、いずれの工具回転数であっても、ワーク本体5の1枚目の加工面の粗さは50μm以下であり、25枚目でも加工面の粗さ125μm以下という結果が得られ、また、その際、いずれも工具3刃面への切粉の融着はみられなかった。現在、ワーク本体5の加工に際して要求される加工面の粗さは200μm以下であり、該ルーター加工装置α2においては、その実用限界値となる加工面の粗さは200μmに対して十分な余裕を持った数値を得ることができた。また、加工速度15mm/s以上の範囲では、いずれの工具回転数Rsにおいても工具3刃面への切粉の融着はみられないが、工具回転数Rsが37.5krpmになると、工具3への切粉付着が僅かであるがみられるとともに、ワーク本体5の1枚目の加工面の粗さは50μm以下で変わらないものの、加工速度が20mm/s以上では、25枚目の加工面の粗さが150μmに達した。また、工具回転数Rsが25krpmでは、同じくワーク本体5の1枚目の加工面粗さは50μm以下で変わらないものの、加工速度が25mm/s以上では25枚目の加工面の粗さが150μmに達した。しかし、それでも実用限界値である200μm以下であり、仕上げ加工の必要はないこととなる。以上の結果、実施例2に記載のルーター加工装置α2を使用して開始孔穿孔工程に引き続きルート加工工程を行った場合、ワーク本体5として25枚のプリプレグを重ねた上で、それを加工すると、重ねられた全部について、仕上げ加工を必要としない程度の加工品質を得ることができ、また、加工速度を向上させることができることが明かとなった。
ちなみに、従来のルーター加工装置βにおいては、ワーク本体5の形成としてプリプレグを20枚重ねて加工するのが加工限度であり、しかもその場合に工具に切粉の融着のない加工速度は2mm/sが限度であった。しかもその場合であっても、仕上げ加工前における加工部の面粗さが300μmに達したり、ワーク本体5の加工部が溶融したりすることもあり、加工品質が一定しなかった。
更に、上記実施例2記載のルート加工装置α2によるルート加工に引き続き、前記設定に下記の設定を付加あるいは変更した上で、同装置を使用して図7の(c)に示すようにシフト粗加工工程(ルートr・2乃至r・4)を行った。
加工速度Vc : 10mm/s、
工具回転数Rs : 12.5krpm、
ルートシフト量Sr : 0.6mm、0.8mm、1.0mm、1.2mm、1.4mm、1.6mm、1.8mm、
その結果、図13に示すグラフに記載のように、ルートシフト量Srが1.4mm以下の範囲で、ワーク本体5の1枚目の加工面の粗さは50μm以下であり、25枚目でも加工面の粗さ125μm以下という結果が得られ、またその際、いずれも工具3に切粉詰りや融着はみられず、ワーク本体5の加工部での溶融もみられなかった。一方、ルートシフト量Srを1.6mmとすると、ワーク本体5の1枚目の加工面の粗さは50μm以下で変わらないものの、25枚目の加工面の粗さは150μmとなり、更にルートシフト量Srを1.8mmとすると、25枚目の加工面の粗さは200μmとなった。その結果、前述のように現在ワーク本体5の加工に対して要求される加工面の粗さは200μm以下であって、実用においてはその加工面の粗さ200μmという数値に対して一定の余裕が必要であることから、ルートシフト量Srは1.6mm以下が実用における適正な範囲ということが判る。
ちなみに、従来のルーター加工装置βにおいては、シフト粗加工工程終了時点でワーク本体5の加工面の面粗さを200μm以下にするためには、シフト粗加工の加工速度は10mm/sに、またルートシフト量Srは0.4mm以下に制約されるため、上記の結果からすれば、ルートシフト量を4倍まで拡大できる上、加工速度も増大できることから、加工時間が大幅に短縮できることとなる。更に、工具3に切粉の詰まりや切粉の融着がなく、工具3自体の摩耗も大幅に減少することから、加工コストの低減も図ることができる。
前述のように、実施例2記載のルーター加工装置α2を使用してルート加工工程あるいはシフト粗加工工程を行った段階で、ワーク本体5の加工部の加工面粗さは、現在の要求される加工仕様としての面粗さ200μm以下となっているため、通常であればそれ以上の仕上げ加工工程を必要とないが、更に精度のよい内蔵製品の実装を可能とするために、下記の設定の下で行ったルート加工工程及びシフト粗加工工程の後に、下記の設定の下で仕上げ加工を行った。
ルート加工工程及びシフト粗加工工程の設定
加工速度Vb、Vc : 10mm/s、
工具回転数Rs : 12.5krpm、
シフト粗加工におけるルートシフト量Sr : 1.0mm、
仕上げ加工工程の設定
加工速度Vd : 5mm/s、
工具回転数Rs : 45krpm、
仕上げシフト量Sf : 0.025mm、0.05mm、0.075mm、0.100mm、0.125mm、0.15mm、
その結果、図14に示すグラフに記載のように、仕上げシフト量Sfが0.025乃至0.100mmの範囲では、ワーク本体5として重ねられたプリプレグの25枚目の加工面の粗さは、仕上げ加工前が125μmであったところ、仕上げシフト量Sfの増加に応じて小さくなり、仕上げシフト量Sfが0.100〜0.15mmの範囲では、重ねられたプリプレグの25枚目の加工面の粗さは50μm以下となることが判った(尚、いずれの場合においても、重ねられたプリプレグの1枚目の加工面の粗さは、既にシフト粗加工終了時点で50μm以下となっており、仕上げシフト量Sfが0.100〜0.15mmの範囲では、重ねられたプリプレグの1枚目から25枚目までの全てについて、加工面の粗さを50μm以下とすることができることになる。)。また、この仕上げ加工後においても、工具3の刃面に切粉詰りや融着はなく、また、ワーク本体5の加工部にも溶融はなかった。また、加工速度Vdが10mm/sの場合にも同様の結果がえられた。
従って、仕上げシフト量Sfを0.100〜0.15mmに設定すれば、パターン加工の加工精度を50μm以下の誤差の範囲にすることができ、精度のよい内蔵部品の実装が可能となる。
ところで、これらのパターン孔Rを加工するに際しては、工具3の四方に設置された第1のエア噴射ノズル36、37から第1の噴射エア流38、39を工具近傍に向けて吹き付けているが、電磁弁35を作動させて、加工の進行方向(すなわち、工具3とワーク5’の相対移動方向)が変化するのに応じて、その前後方向からのみ第1の噴射エア流38、39を吹き付けるようにしても、前記加工結果と有意差は認められなかった。
それ故、第1のエア噴射ノズル36、37の作動を加工の進行方向に応じて電磁弁35によって切り換えることにより、エア消費量を2分の1以下に低減させることができる。
そこで、下記記載のプリプレグ(厚さ0.05mm)を重ねたものをワーク本体5’として、

・第2実施例記載のルーター加工装置α2においては、
ワーク本体厚 Tw : 1.25mm (0.05mm×25枚)、
当板厚 Te : 0.4mm(フェノール製)、
下板切込み量 Td : 0.3mm(フェノール製)、
総加工深さ H : 1.95mm、
・従来のルーター加工装置βにおいては、
ワーク本体厚 Tw : 1.00mm (0.05mm×20枚)、
(従来のルーター加工装置βにおいては、仕上げ加工後の加工面粗さを200μm以下に仕上げるためには、プリプレグの重ね枚数を20枚以下とする必要があるため、ここでは20枚重ねとした。)
当板厚 Te : 0.4mm(フェノール製)、
下板厚 : 1.0mm(フェノール製)、
そのそれぞれに、下記2種類のパターン孔を、
パターン孔R1: 15mm×3.6mmの略長方形のパターン孔、
パターン孔R2: 15mm×3.4mmの略長方形のバターン孔、
従来のルーター加工装置βを用いて従来のパターン加工工程により形成するのに要する時間と、第2実施例記載のルーター加工装置α2を用いて実施例4に記載のパターン加工工程により形成するのに要する時間とを比較した。尚、いずれも工具3は2枚刃カッターで、直径は2mmとした。
そして、従来のルーター加工装置βを使用して、以下の設定でパターン孔R1のパターン加工を行った。

・貫通孔形成工程において、
切込み速度 : 1mm/s、
工具回転数Rsa’ : 12.5krpm、
切込み深さ : 0.2mm、
切込みステップ数 : 11
・ルート加工工程において、
加工速度Vb : 1mm/s、
工具回転数Rsb’ : 12.5Krpm、
ルート加工長 : 11.4mm、
・シフト粗加工工程において、
加工速度Vc : 2mm/s、
工具回転数Rsc’ : 12.5krpm、
ルートシフト量Sr’ : 0.35mm、
シフト粗加工長 : 54mm、
(パターン孔R1におけるル−ト数 : 9)
・仕上げ加工工程において、
加工速度Vd : 5mm/s、
工具回転数Rsd’ : 30krpm、
仕上げシフト量Sf’ : 0.10mm、
仕上げ加工長 : 29.2mm、
尚、これらの加工速度、工具回転数及び(ルート及び仕上げ)シフト量は、工具3への切粉の融着を阻止しつつ、仕上げ加工後の加工対象物たるブリプレグの加工面粗さを実用限界値である200μm以下とし、しかも最速で加工するための限界値である。
その結果、パターン加工工程の総所要時間は69.5秒であり、個々の工程に要した時間は以下の通りであった。
貫通孔形成工程 : 25.3秒、
ルート加工工程 : 11.4秒、
シフト粗加工工程 : 27秒、
仕上げ加工工程 : 5.8秒、
次に同じく従来のルーター加工装置βを使用して、以下の設定でパターン孔R2のパターン加工を行った。

シフト粗加工工程におけるルートシフト量Sr’を0.4mm(パターン孔R2のル−ト数 : 7)とする以外は、パターン孔R1を形成する場合と同じ。(このルートシフト量の変更は、パターン孔の短尺方向の変化に伴うものである。すなわち、パターン孔の短尺方向の寸法から仕上げシフト量の2倍を減じた寸法が短尺方向におけるルート加工工程及びシフト粗加工工程による加工寸法であり、ルートシフト量はルーター加工装置の作動を制御するNC装置によって事前に設定され、一連の加工工程においては、装置の作動を停止しない限り変更が不可能となっている。そのため、パターン孔を形成するに際しては、最も合理的な設定として、ルートシフト量の整数倍と工具径の合計が当該加工寸法となるようにルートシフト量が設定されることとなる。但し、200μm以下という仕様として要求される加工面粗さを従来のルーター加工装置βにおいて充足するためには、ルートシフト量は0.4mm以下に限定されることから、本件ではその範囲内でのパターン孔R1とパターン孔R2それぞれにおける最大のルートシフト量を設定したものである。また、ルートシフト量の変更によって、当然にルート数も変更となる。)
その結果、パターン加工の総所要時間は63.9秒であり、個々の工程に要した時間は以下の通りであった。
貫通孔形成工程 : 25.3秒、
ルート加工工程 : 12秒、
シフト粗加工工程 : 20.8秒、
仕上げ加工工程 : 5.8秒、
一方、実施例2に記載のルーター加工装置α2を使用して、以下の設定でパターン孔R1のパターン加工を行った。

第1のエア噴射ノズル36、37からの第1の噴射エア流38、39の噴射速度V : 各800m/s、
第1のエア噴射ノズル36、37の数 : 8(2×4)、
第1のエア噴射ノズル36、37からの第1の噴射エア流38、39の流量 : 60Lit/min 、
第2のエア噴射ノズル34からの第2の噴射エア流28によるワーク5’押し圧 : 10kg
第1のエア噴射ノズル36、37からのワーク5’表面への第1の噴射エア流 38、39の吹き付け角度θ(俯角) : 45°
第1のエア噴射ノズル36、37からのワーク5’表面への第1の噴射エア流38、39の吹き付け位置Px : 工具3外周から0mm、
上部エア噴射ノズル36と下部エア噴射ノズル37の距離LN : 1mm、
・開始孔穿孔工程において、
穿孔工程における切込み深さZn : 0.25mm、
穿孔工程における切込み速度 : 10mm/s、
穿孔工程開始位置且つ工具上昇工程における引上げ高さZM : 1mm、
開始孔46長さ LE : 5mm、
加工速度Va : 10mm/s、
工具回転数Rsa : 12.5krpm、
切込み工程数 : 8、
・ルート加工工程において、
加工速度Vb : 10mm/s、
工具回転数Rsb : 12.5Krpm、
ルート加工長 : 9.8mm、
・シフト粗加工工程において、
加工速度Vc : 10mm/s、
工具回転数Rsc : 12.5krpm、
ルートシフト量Sr : 1.4mm、
シフト粗加工長 : 15.6mm、
・仕上げ加工工程において、
加工速度Vd : 10mm/s、
工具回転数Rsd : 45krpm、
仕上げシフト量Sf : 0.10mm、
仕上げ加工長 : 29.2mm、
その結果、パターン加工の総所要時間は10.2秒であり、個々の工程に要した時間は以下の通りであった。
開始孔穿孔工程 : 4.7秒、
ルート加工工程 : 1.0秒、
シフト粗加工工程 : 1.6秒、
仕上げ加工工程 : 2.9秒、
次に同じく実施例2記載のルーター加工装置α2を使用して、以下の設定でパターン孔R2のパターン加工を行った。

シフト粗加工工程におけるシフト量Srを1.2mmとする以外は、パターン孔R1を形成する場合と同じ。(このシフト量の変更は、パターン孔の短尺方向の変更に伴うものである。)
その結果、パターン加工の総所要時間は10.1秒であり、個々の工程に要した時間は以下の通りであった。
穿孔工程 : 4.7秒、
ルート加工工程 : 1.0秒、
シフト粗加工工程 : 1.5秒、
仕上げ加工工程 : 2.9秒、
以上の結果から、実施例2記載のルーター加工装置α2を使用して実施例4記載の加工方法を適用すると、従来のルーター加工装置βを使用して従来の加工方法を適用した場合と、単純な総加工時間だけを比較しても、従来比で約6分1乃至7分の1に短縮されることとなる。しかも、ワーク本体5として重ねることができるプリプレグ枚数が、従来のルーター加工装置βにおいては20枚が限度であったものが、実施例2記載のルーター加工装置α2では25枚に増加しているという、重ね枚数の相違をも考慮に入れれば、生産効率は8倍前後に向上するものと言える。そして更に、ワーク本体5の加工面粗さの要求仕様が低い場合には、実施例2記載のルーター加工装置α2を使用して実施例4記載の加工方法を適用すれば、仕上げ加工工程を省略することもでき、更に生産効率を向上させることができる。
また、実施例2記載のルーター加工装置α2を使用して実施例4記載の加工方法を適用すれば、ルートシフト量を大きくとることが可能となることから、従来のルーター加工装置βを使用して従来の加工方法を適用した場合と、加工長がそれぞれ、パターン孔R1については約95mmから58mmに、パターン孔R2については約82mmから57mmにそれぞれ短縮することができる。そのため、前述と同様に重ね枚数の相違をも考慮に入れれば、実施例2記載のルーター加工装置α2と従来のルーター加工装置βとで、加工距離に応じてその工具に同一の摩耗が生じると仮定しても、その重ね枚数の相違を考慮に入れれば、工具コストは約50%低減されることとなる。実際には、実施例2記載のルーター加工装置α2を使用して実施例4記載の加工方法を適用すれば、工具の切粉詰まりや工具への切粉の融着の発生頻度は著しく低下していることから、工具コストの低減率は前記の数値よりも明かに大きくなる。
また、実施例1あるいは2記載のルーター加工装置α1、α2を使用すると、第1のエア噴射ノズル22、36、37からの第1の噴射エア流18、38、39が工具3に吹き付けて切粉を吹き飛ばし、工具3刃面への切粉の融着を防止するため(尚、一旦切粉が融着すると除去は不可能なため、融着量が加速度的に増加する。)、工具3自体が摩耗しても、ワーク本体5の加工面の品質が著しく劣化することがなく、実用的な加工品質を維持することが可能である。
更に、工具3として2枚刃カッターだけでなく、刃面に切粉詰まりを起こしやすいものの、比較的切刃当たりの切削負荷が小さく、工具寿命の長いダイア目カッターでも刃面の切粉詰りが解消されるので、工具3としてダイア目カッターを使用することによって加工コストを低減することができる。その分、工具交換回数を減少させて、加工に際しての工具交換時間を節約して、生産効率を向上させることができる。
ところで、実施例1あるいは2記載のルーター加工装置α1、α2を使用して、パターン加工を行なう場合、パターン孔Rの長尺方向の長さが4mm以下の場合には、そのパターン孔Rの位置内に、長尺方向に4mm以上であって、パターン孔Rの長尺方向長さより短い長さの開始孔46を設けることができない。そのためその場合には、当該パターン孔Rの長尺方向の長さと等しい長さの直線状の開始孔を設け、その後、必要に応じてシフト粗加工工程や仕上げ加工工程を行えばよい。この場合でも、従来のパターン加工の加工方法よりも迅速に加工を行うことができる上、工具3への切粉の融着を防止し、加工品質や加工効率を向上させることができる。
高速の噴射エアでワークの切粉を吹き飛ばし、また、工具の作動によって生ずる熱を低減させるとともに、ワークを押圧することから、スピンドルに限らず、自動制御で作動することによって切粉や熱を生ずる工作機械に広く使用できるものである。
1 スピンドル
2 ロータシャフト
3 工具
4 加工部キャビティ
5 ワーク本体
5’ ワーク
6 当板
7 下板
8 ワーク加工済部
9 リング
10 ワーク押さえ本体
11 ワーク押さえ部
12 移動部
13 エアシリンダ
14 ガイドロッド
15 ワーク押さえ面
16 排気ダクト
17、17a、17b、17c、17d、 第1の高圧エア
18 第1の噴射エア流
19、19a、19b、19c、19d、 エア供給通路
20 エア供給通路
21 エア供給通路
21’拡幅されたエア供給通路
22、22a、22b、22c、22d、 第1のエア噴射ノズル
23 リングブラシ
24 第2のキャビティ
25 窓
26 エア流
27 第2の高圧エア
28 第2の噴射エア流
29 エア供給通路
30 エア供給通路
31 環状のエア供給通路
32 水平エア供給通路
33 エア供給通路
34 第2のエア噴射ノズル
35 電磁弁
36 上部エア噴射ノズル
37 下部エア噴射ノズル
38 第1の噴射エア流
39 第1の噴射エア流
40 ワーク押さえリング
41 切欠部
42 エア供給通路
43 第1エア噴射ノズル
44 切欠部
45 浅穴
46 開始孔
47 仕上げシロ
48 第1孔
49 第2孔
101 スピンドル
102 ローターシャフト
103 工具
104 加工部キャビティ
105 ワーク本体
105’ ワーク
106 当板
107 下板
108 リング
109 台板
110 切粉排出部
111 ワーク加工済部
112 移動部
113 エアシリンダ
114 ガイドロッド
115 バキュームダクト
116 ワーク押さえ本体
117 リングブラシ
118 エア流
A ワーク押さえ機構
B (従来の)ワーク押さえ機構
α1 ルーター加工装置
α2 ルーター加工装置
β (従来の)ルーター加工装置
P1、P2、P3 軸心位置
P1’、P2’、P3’ 軸心位置
R パターン孔
Q パターン孔
一方、実施例2に記載のルーター加工装置α2を使用して、以下の設定でパターン孔R1のパターン加工を行った。

第1のエア噴射ノズル36、37からの第1の噴射エア流38、39の噴射速度V : 各800m/s、
第1のエア噴射ノズル36、37の数 : 8(2×4)、
第1のエア噴射ノズル36、37からの第1の噴射エア流38、39の流量 : 60Lit/min 、
第2のエア噴射ノズル34からの第2の噴射エア流28によるワーク5’押し圧 : 10kg
第1のエア噴射ノズル36、37からのワーク5’表面への第1の噴射エア流 38、39の吹き付け角度θ(俯角) : 45°
第1のエア噴射ノズル36、37からのワーク5’表面への第1の噴射エア流38、39の吹き付け位置Px : 工具3外周から0mm、
上部エア噴射ノズル36と下部エア噴射ノズル37の距離LN : 1mm、
・開始孔穿孔工程において、
穿孔工程における切込み深さZn : 0.25mm、
穿孔工程における切込み速度 : 10mm/s、
穿孔工程開始位置且つ工具上昇工程における引上げ高さZM : 1mm、
開始孔46長さ LE : 5mm、
加工速度Va : 10mm/s、
工具回転数Rsa : 12.5krpm、
切込み工程数 : 8、
・ルート加工工程において、
加工速度Vb : 10mm/s、
工具回転数Rsb : 12.5Krpm、
ルート加工長 : 9.8mm、
・シフト粗加工工程において、
加工速度Vc : 10mm/s、
工具回転数Rsc : 12.5krpm、
ルートシフト量Sr : 1.4mm、
シフト粗加工長 : 15.6mm、
・仕上げ加工工程において、
加工速度Vd : 10mm/s、
工具回転数Rsd : 45krpm、
仕上げシフト量Sf : 0.10mm、
仕上げ加工長 : 29.2mm、
その結果、パターン加工の総所要時間は11.1秒であり、個々の工程に要した時間は以下の通りであった。
開始孔穿孔工程 : 5.6秒
ルート加工工程 : 1.0秒、
シフト粗加工工程 : 1.6秒、
仕上げ加工工程 : 2.9秒、
次に同じく実施例2記載のルーター加工装置α2を使用して、以下の設定でパターン孔R2のパターン加工を行った。

シフト粗加工工程におけるシフト量Srを1.2mmとする以外は、パターン孔R1を形成する場合と同じ。(このシフト量の変更は、パターン孔の短尺方向の変更に伴うものである。)
その結果、パターン加工の総所要時間は11.0秒であり、個々の工程に要した時間は以下の通りであった。
開始孔穿孔工程 : 5.6秒
ルート加工工程 : 1.0秒、
シフト粗加工工程 : 1.5秒、
仕上げ加工工程 : 2.9秒、
以上の結果から、実施例2記載のルーター加工装置α2を使用して実施例4記載の加工方法を適用すると、従来のルーター加工装置βを使用して従来の加工方法を適用した場合と、単純な総加工時間だけを比較しても、従来比で約6分1に短縮されることとなる。しかも、ワーク本体5として重ねることができるプリプレグ枚数が、従来のルーター加工装置βにおいては20枚が限度であったものが、実施例2記載のルーター加工装置α2では25枚に増加しているという、重ね枚数の相違をも考慮に入れれば、生産効率は7.5倍前後に向上するものと言える。そして更に、ワーク本体5の加工面粗さの要求仕様が低い場合には、実施例2記載のルーター加工装置α2を使用して実施例4記載の加工方法を適用すれば、仕上げ加工工程を省略することもでき、更に生産効率を向上させることができる。

Claims (11)

  1. 加工用スピンドルの組み込まれたルーター加工装置もしくは穴明け装置における、排気ダクトを有して、該スピンドルの軸心と平行方向に移動自在、且つワークに対して押圧自在となるワーク押さえ機構であって、加工用スピンドルに把持された工具の外周近傍のワーク表面に対して高速のエアを吹き付ける第1のエア噴射ノズルを有する第1のエア噴射機構を設け、該第1のエア噴射ノズルが、平面視において、少なくとも加工用スピンドル先端に把持された工具を中心とする直線上に1対設けられてなるワーク押さえ機構。
  2. 各第1のエア噴射ノズル毎にエアを噴射及び停止自在とする機構を設けてなる請求項1記載のワーク押さえ機構。
  3. 第1のエア噴射ノズルから噴射されるエアを超音速としてなる請求項1あるいは請求項2のいずれかに記載のワーク押さえ機構。
  4. 第1のエア噴射機構を構成するエア供給通路の径を、それに続く第1のエア噴射ノズルの径の10倍以上としてなる、請求項1から請求項3のいずれかに記載のワーク押さえ機構。
  5. ワークに向けて高速のエアを吹き付ける第2のエア噴射機構を有し、該第2のエア噴射機構を構成する第2のエア噴射ノズルをワーク対向面に複数設けて、そのワークに吹き付けるエアにより形成されるエア層を介してワーク押さえ部を形成してなる請求項1から請求項4のいずれかに記載のワーク押さえ機構。
  6. 平面視において、ワーク押さえ機構の底面を円形とし、ワーク押さえ機構を構成するワーク押さえ部を環状に設けてその内側に加工用スピンドルの工具が作動する加工部キャビティを設けるとともに、ワーク押さえ部の外側に環状にブラシを設けて、ワーク押さえ部との間に第2のキャビティを設け、該第2のキャビティに面して複数の換気孔を設けてなる請求項5記載のワーク押さえ機構。
  7. 請求項1から請求項6のいずれかに記載のワーク押さえ機構を有するルーター加工装置もしくは穴明け装置。
  8. 請求項7記載のルーター加工装置を用いた、長尺方向長さが4mmを超えるパターン孔を形成するパターン加工の加工方法であって、工具となるカッターを作動させて、第1に、ワーク本体を貫通するとともに、平面視において4mm以上且つ当該パターン孔の長尺方向長さより短い長さの直線状の開始孔をワークのパターン孔形成位置内に穿つ開始孔穿孔工程を行い、第2に、該開始孔の長尺方向先端部にカッターがワーク本体を貫通した状態から、ワークの切削加工を行う切削加工工程を行うものであって、開始孔穿孔工程として下記加工工程を複数回採るパターン加工の加工方法。

    1.ワーク表面よりも高い開始位置から工具が下降して、ワーク本体表面に浅穴を形成する穿孔工程。
    2.穿孔工程に連続して、当該浅穴の深さを保持した状態で、工具とワークが所定の開始孔の長さから工具径を減じた距離だけ直線的に相対移動する移動加工工程。
    3.移動加工工程に連続して、工具が開始位置へ戻る工具戻り工程。
  9. 請求項8記載の開始孔穿孔工程に代えて、下記加工工程を複数回採るパターン加工の加工方法。

    1.ワーク表面よりも高い開始位置から工具が下降して、ワーク本体表面に浅穴を形成する第1穿孔工程。
    2.第1穿孔工程に連続して、当該浅穴の深さを保持した状態で、工具とワークが所定の開始孔の長さから工具径を減じた距離だけ直線的に相対移動する第1移動加工工程。
    3.第1移動加工工程に連続して、当該相対移動した位置から開始位置と同じ高さまで戻る第1工具上昇工程。
    4.第1工具上昇工程に連続して、当該上昇位置から工具が下降して、前記2の相対移動した位置に、更に浅穴を形成する第2穿孔工程。
    5.第2穿孔工程に連続して、第2穿孔工程により穿たれた浅穴の深さを保持した状態で、工具とワークが所定の開始孔の長さから工具径を減じた距離だけ第1移動加工工程と逆方向に相対移動する第2移動加工工程。
    6.第2移動加工工程に連続して、当該逆方向に相対移動した位置から開始位置まで戻る第2工具上昇工程。
  10. 請求項7記載のルーター加工装置を用いた、長尺方向長さが4mm以下のパターン孔を形成するパターン加工の加工方法であって、工具となるカッターを作動させて、少なくとも、ワーク本体を貫通するとともに、平面視において当該パターン孔の長尺方向長さと等しい長さの直線状の開始孔をワークのパターン孔形成位置内に穿つ開始孔穿孔工程を有し、該開始孔穿孔工程として下記AあるいはBのいずれかの加工工程を複数回採るパターン加工の加工方法。

    1.ワーク表面よりも高い開始位置から工具が下降して、ワーク本体表面に浅穴を形成する穿孔工程。
    2.穿孔工程に連続して、当該浅穴の深さを保持した状態で、工具とワークが所定の開始孔の長さから工具径を減じた距離だけ直線的に相対移動する移動加工工程。
    3.移動加工工程に連続して、工具が開始位置へ戻る工具戻り工程。

    1.ワーク表面よりも高い開始位置から工具が下降して、ワーク本体表面に浅穴を形成する第1穿孔工程。
    2.第1穿孔工程に連続して、当該浅穴の深さを保持した状態で、工具とワークが所定の開始孔の長さから工具径を減じた距離だけ直線的に相対移動する第1移動加工工程。
    3.第1移動加工工程に連続して、当該相対移動した位置から開始位置と同じ高さまで戻る第1工具上昇工程。
    4.第1工具上昇工程に連続して、当該上昇位置から工具が下降して、前記2の相対移動した位置に、更に浅穴を形成する第2穿孔工程。
    5.第2穿孔工程に連続して、第2穿孔工程により穿たれた浅穴の深さを保持した状態で、工具とワークが所定の開始孔の長さから工具径を減じた距離だけ第1移動加工工程と逆方向に相対移動する第2移動加工工程。
    6.第2移動加工工程に連続して、当該逆方向に相対移動した位置から開始位置まで戻る第2工具上昇工程。
  11. ワーク本体がプリプレグのシートの重ね層からなり、開始孔穿孔工程における各浅穴の深さを0.5mm以下としてなる請求項8から請求項10のいずれかに記載のパターン加工の加工方法。
JP2013068069A 2013-03-28 2013-03-28 ワーク押さえ機構及びワーク押さえ機構を有するルーター加工装置並びに当該ルーター加工装置による加工方法 Pending JP2014188639A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013068069A JP2014188639A (ja) 2013-03-28 2013-03-28 ワーク押さえ機構及びワーク押さえ機構を有するルーター加工装置並びに当該ルーター加工装置による加工方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013068069A JP2014188639A (ja) 2013-03-28 2013-03-28 ワーク押さえ機構及びワーク押さえ機構を有するルーター加工装置並びに当該ルーター加工装置による加工方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2014188639A true JP2014188639A (ja) 2014-10-06

Family

ID=51835500

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013068069A Pending JP2014188639A (ja) 2013-03-28 2013-03-28 ワーク押さえ機構及びワーク押さえ機構を有するルーター加工装置並びに当該ルーター加工装置による加工方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2014188639A (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN106862605A (zh) * 2017-02-17 2017-06-20 马艳 一种打孔设备
GB2546895A (en) * 2016-01-19 2017-08-02 Boeing Co Air cooled spindle exhaust air redirection system for enhanced machining byproduct recovery
KR102057411B1 (ko) * 2019-05-15 2019-12-18 이성근 공작기계용 냉각수 직분사 툴홀더
CN111230556A (zh) * 2020-02-10 2020-06-05 重庆玉带路工业科技有限公司 钢构件定长机构
CN111922453A (zh) * 2020-08-14 2020-11-13 韶关市志通达信息科技有限公司 一种大数据连接件润滑攻丝的自动同步装置及润滑方法

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH033713A (ja) * 1989-05-30 1991-01-09 Hitachi Seiko Ltd プリント基板穴明機及びこの穴明機におけるプリント基板押さえ方法
JPH07156038A (ja) * 1993-12-01 1995-06-20 Fuji Heavy Ind Ltd 工作機械の冷却集塵装置
JP2000210837A (ja) * 1999-01-25 2000-08-02 Yokogawa Kazuhiko 圧縮した気体を使った加工点冷却加工用ノズル
JP2004276230A (ja) * 2003-02-28 2004-10-07 Ebara Corp ミスト生成装置

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH033713A (ja) * 1989-05-30 1991-01-09 Hitachi Seiko Ltd プリント基板穴明機及びこの穴明機におけるプリント基板押さえ方法
JPH07156038A (ja) * 1993-12-01 1995-06-20 Fuji Heavy Ind Ltd 工作機械の冷却集塵装置
JP2000210837A (ja) * 1999-01-25 2000-08-02 Yokogawa Kazuhiko 圧縮した気体を使った加工点冷却加工用ノズル
JP2004276230A (ja) * 2003-02-28 2004-10-07 Ebara Corp ミスト生成装置

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
GB2546895A (en) * 2016-01-19 2017-08-02 Boeing Co Air cooled spindle exhaust air redirection system for enhanced machining byproduct recovery
US10040155B2 (en) 2016-01-19 2018-08-07 The Boeing Company Air cooled spindle exhaust air redirection system for enhanced machining byproduct recovery
GB2546895B (en) * 2016-01-19 2019-05-15 Boeing Co Air cooled spindle exhaust air redirection system for enhanced machining byproduct recovery
CN106862605A (zh) * 2017-02-17 2017-06-20 马艳 一种打孔设备
KR102057411B1 (ko) * 2019-05-15 2019-12-18 이성근 공작기계용 냉각수 직분사 툴홀더
WO2020231183A1 (ko) * 2019-05-15 2020-11-19 주식회사 탑툴링시스템즈 공작기계용 냉각수 직분사 툴홀더
CN112236263A (zh) * 2019-05-15 2021-01-15 塔普途灵系统有限公司 机床用冷却水直喷工具夹
CN111230556A (zh) * 2020-02-10 2020-06-05 重庆玉带路工业科技有限公司 钢构件定长机构
CN111922453A (zh) * 2020-08-14 2020-11-13 韶关市志通达信息科技有限公司 一种大数据连接件润滑攻丝的自动同步装置及润滑方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2014188639A (ja) ワーク押さえ機構及びワーク押さえ機構を有するルーター加工装置並びに当該ルーター加工装置による加工方法
US8714891B2 (en) Apparatus for making variable diameter holes in metal plates
JP6986851B2 (ja) 液体誘導レーザ加工および放電加工の組み合わせ
JP2905842B2 (ja) プリント基板穴明機及びこの穴明機におけるプリント基板押さえ方法
KR20170038112A (ko) 3차원 형상 조형물의 제조 방법 및 그 제조 장치
US9149909B2 (en) Stringer manufacturing method
JP2006281416A (ja) プリント基板の穴加工装置
CN107922867A (zh) 切削加工辅助润滑材料和切削加工方法
JP6435427B2 (ja) 複合加工機及びレーザ切断加工方法
CN101543938B (zh) 激光加工装置
Lau et al. A comparison between edivi wire-cut and laser cutting of carbon fibre composite materials
JP5272249B2 (ja) 曲線切断用メタルソーとその加工方法と加工装置
CN101462205B (zh) 非晶态合金带材的激光切割方法
JP6060433B2 (ja) 切削加工用ダイ及び切削加工方法
CN109048088B (zh) 一种长脉冲激光与等离子体射流复合加工微孔的方法及装置
CN106964855A (zh) 一种大幅值非对称轴向振动辅助电解线切割方法
KR102096735B1 (ko) 드릴 비트 및 구멍 형성 방법
CN106625102B (zh) 一种自动磨片装置及磨片方法
JP2000000735A (ja) プリント基板加工機のプレッシャフット
JP2008194845A (ja) ハニカム構造体成形用金型の製造方法及びそれに用いる溝加工装置
CN114939741A (zh) 涡轮叶片气膜冷却孔超声射流辅助飞秒激光旋切复合加工装备及方法
JP2005118849A (ja) レーザ加工装置
MX2010007582A (es) Metodo y aparato de elaboracion no giratoria de agujero por medio de fracturacion controlada.
JP2013051271A (ja) 保護膜形成装置およびレーザー加工機
JP2011051076A (ja) シート材の裁断装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150313

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20151217

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160105

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160222

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160329

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20160412

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20160412

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160517

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20161108