JP2014185101A - 細胞の転移又は浸潤抑制剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】細胞の転移又は浸潤に対して阻害活性を有する細胞の転移又は浸潤抑制剤及び細胞の転移又は浸潤抑制用組成物を提供する。
【解決手段】配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む14〜22アミノ酸残基からなるポリペプチドを非ヒト哺乳動物に免疫して得られた抗体を有効成分とする細胞の転移又は浸潤抑制剤;前記抗体と、医薬的に許容可能な担体と、を含む、細胞の転移又は浸潤抑制用組成物。
【選択図】図2
【解決手段】配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む14〜22アミノ酸残基からなるポリペプチドを非ヒト哺乳動物に免疫して得られた抗体を有効成分とする細胞の転移又は浸潤抑制剤;前記抗体と、医薬的に許容可能な担体と、を含む、細胞の転移又は浸潤抑制用組成物。
【選択図】図2
Description
本発明は、細胞の転移又は浸潤抑制剤に関する。
腫瘍又は癌の治療法としては、化学療法、放射線治療法及び外科療法などが知られており、例えば癌の発症メカニズム等に基づいて種々の治療方法が開発されている。癌の転移や再発などの問題を解決し得る、より効果的な治療方法を目指して、未だに開発が続けられている。
特許文献1は、新規な癌転移関連遺伝子を同定し、このインビボにおける機能を阻害若しくは抑制する核酸を含む癌の転移抑制用組成物を開示している。
特許文献2は、癌細胞の遊走に関与し、癌の浸潤及び癌の転移を抑制することが推測されているリン酸化βカテニンを選択的に認識する抗体と、これを含む癌の治療剤や癌の診断剤等とを開示している。
特許文献1は、新規な癌転移関連遺伝子を同定し、このインビボにおける機能を阻害若しくは抑制する核酸を含む癌の転移抑制用組成物を開示している。
特許文献2は、癌細胞の遊走に関与し、癌の浸潤及び癌の転移を抑制することが推測されているリン酸化βカテニンを選択的に認識する抗体と、これを含む癌の治療剤や癌の診断剤等とを開示している。
一方、細胞の接着や脱離に関与するフィブロネクチンは、代表的な細胞外マトリックスタンパク質分子の一つで、ほとんど全ての組織に分布し、組織を構築する骨組みとしての役割のみならず、細胞膜上の接着分子に結合して、細胞機能調節のためのシグナル分子としても機能している。
フィブロネクチン分子を構成するポリペプチドは、I型、II型、III型の繰り返し配列から構成されている。なかでも、フィブロネクチン(FN)III型様リピート(FNIII)には、種々の機能が知られている。
例えば、FNIIIの作用として、インテグリン不活性化が挙げられ、この作用に基づいて悪性リンパ腫細胞の肝又は脾臓への転移抑制効果を示すことが報告されている(非特許文献1参照)。このほか、FNIIIの作用としては、細胞接着阻害活性(例えば、特許文献3)、細胞接着阻害活性に基づく癌の転移抑制作用(例えば、特許文献3及び特許文献4)、又は、細胞死誘導活性に基づく抗癌活性を増強する作用(例えば、特許文献5)などの作用が知られている。
フィブロネクチン分子を構成するポリペプチドは、I型、II型、III型の繰り返し配列から構成されている。なかでも、フィブロネクチン(FN)III型様リピート(FNIII)には、種々の機能が知られている。
例えば、FNIIIの作用として、インテグリン不活性化が挙げられ、この作用に基づいて悪性リンパ腫細胞の肝又は脾臓への転移抑制効果を示すことが報告されている(非特許文献1参照)。このほか、FNIIIの作用としては、細胞接着阻害活性(例えば、特許文献3)、細胞接着阻害活性に基づく癌の転移抑制作用(例えば、特許文献3及び特許文献4)、又は、細胞死誘導活性に基づく抗癌活性を増強する作用(例えば、特許文献5)などの作用が知られている。
Clin. Cancer Res., Vol.8, pp.24555-2462 (2002)
腫瘍又は癌の治療には、周囲の正常細胞に対する影響を抑えつつ腫瘍細胞の活性のみを選択的に阻害することが求められる。このため、腫瘍細胞の転移に対して効果的な阻害活性を示す転移抑制剤が必要となる。また、腫瘍細胞のみならず炎症性疾患でも、細胞の浸潤が生じる。炎症の拡大を抑制するためには、このような細胞の浸潤を抑制する浸潤(転移)抑制剤が必要となる。
本発明は、細胞の転移又は浸潤に対して阻害活性を有する細胞の転移又は浸潤抑制剤と、細胞の転移又は浸潤抑制用組成物を提供することを目的とする。
本発明は、細胞の転移又は浸潤に対して阻害活性を有する細胞の転移又は浸潤抑制剤と、細胞の転移又は浸潤抑制用組成物を提供することを目的とする。
本発明は以下のとおりである。
[1] 配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む14〜22アミノ酸残基からなるポリペプチドを非ヒト哺乳動物に免疫して得られた抗体を有効成分とする細胞の転移又は浸潤抑制剤。
[2] 前記細胞が腫瘍細胞である[1]に記載の細胞の転移又は浸潤抑制剤。
[3] 前記抗体がポリクローナル抗体である[1]又は[2]記載の細胞の転移又は浸潤抑制剤。
[4] 配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む14〜22アミノ酸残基からなるポリペプチドを非ヒト哺乳動物に免疫して得られた抗体と、医薬的に許容可能な担体と、を含む、細胞の転移又は浸潤抑制用組成物。
[5] 前記細胞が腫瘍細胞である[4]に記載の細胞の転移又は浸潤抑制用組成物。
[6] 前記抗体がポリクローナル抗体である[4]又は[5]記載の細胞の転移又は浸潤抑制用組成物。
[1] 配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む14〜22アミノ酸残基からなるポリペプチドを非ヒト哺乳動物に免疫して得られた抗体を有効成分とする細胞の転移又は浸潤抑制剤。
[2] 前記細胞が腫瘍細胞である[1]に記載の細胞の転移又は浸潤抑制剤。
[3] 前記抗体がポリクローナル抗体である[1]又は[2]記載の細胞の転移又は浸潤抑制剤。
[4] 配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む14〜22アミノ酸残基からなるポリペプチドを非ヒト哺乳動物に免疫して得られた抗体と、医薬的に許容可能な担体と、を含む、細胞の転移又は浸潤抑制用組成物。
[5] 前記細胞が腫瘍細胞である[4]に記載の細胞の転移又は浸潤抑制用組成物。
[6] 前記抗体がポリクローナル抗体である[4]又は[5]記載の細胞の転移又は浸潤抑制用組成物。
本発明によれば、細胞の転移又は浸潤を効果的に抑制する細胞転移又は浸潤抑制剤と、細胞の転移又は浸潤抑制用組成物とを提供することができる。
また本発明の細胞の転移又は浸潤抑制剤は、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む14〜22アミノ酸残基からなるポリペプチドを非ヒト哺乳動物に免疫して得られた抗体を有効成分とする。
また本発明の細胞の転移又は浸潤抑制用組成物は、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む14〜22アミノ酸残基からなるポリペプチドを非ヒト哺乳動物に免疫して得られた抗体と、医薬的に許容可能な担体と、を含む。
また本発明の細胞の転移又は浸潤抑制用組成物は、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む14〜22アミノ酸残基からなるポリペプチドを非ヒト哺乳動物に免疫して得られた抗体と、医薬的に許容可能な担体と、を含む。
即ち、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドは、ヒトフィブロネクチンの14番目のフィブロネクチンIII様反復配列(FNIII)の一つであるFNIII14(配列番号2)に含まれる配列である。配列番号2で示される全長のFNIII14のアミノ酸配列のうち、特に配列番号1で示される特定のアミノ酸配列からなるポリペプチドが、細胞に対して強い接着抑制作用を有し、細胞の転移又は浸潤に寄与していることが見いだされた。本発明は、この知見に基づき成されたものである。このことから、配列番号1で示される特定のアミノ酸配列を含むポリペプチドを投与すると、原発巣からのがん細胞の脱離、脱離したがん細胞の血管内への侵入、また、侵入したがん細胞の血管外への浸出、血管外に浸出したがん細胞の転移巣形成のための増殖といった一連の細胞の脱離と、脱離後の接着に関する活動が抑制されると推測される。
即ち、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む14〜22のアミノ酸残基からなるポリペプチドを非ヒト哺乳動物に免疫して得られた本発明にかかる抗体は、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを認識して結合し、細胞の転移又は浸潤を効果的に抑制することができる。このため、前記抗体を含む細胞転移又は浸潤抑制剤及び細胞転移又は浸潤抑制用組成物は、細胞転移又は浸潤の抑制効果を有することができる。
即ち、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む14〜22のアミノ酸残基からなるポリペプチドを非ヒト哺乳動物に免疫して得られた本発明にかかる抗体は、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを認識して結合し、細胞の転移又は浸潤を効果的に抑制することができる。このため、前記抗体を含む細胞転移又は浸潤抑制剤及び細胞転移又は浸潤抑制用組成物は、細胞転移又は浸潤の抑制効果を有することができる。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の効果が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
また、本発明において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本発明において、ポリペプチドを構成するアミノ酸配列のアミノ酸残基を、当技術分野で周知の一文字表記(例えば、グリシン残基の場合は「G」)又は三文字表記(例えば、グリシン残基の場合は「Gly」)を用いて表現する場合がある。
以下、本発明について説明する。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
また、本発明において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本発明において、ポリペプチドを構成するアミノ酸配列のアミノ酸残基を、当技術分野で周知の一文字表記(例えば、グリシン残基の場合は「G」)又は三文字表記(例えば、グリシン残基の場合は「Gly」)を用いて表現する場合がある。
以下、本発明について説明する。
本発明における抗体は、配列番号1(LEPGTEYTIYVIAL)で示されるアミノ酸配列を含む14〜22のアミノ酸残基からなるポリペプチド(以下、「標的ポリペプチド」という場合がある)を非ヒト哺乳動物に免疫して得られた抗体である。従って、前記抗FNIII14抗体は、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを認識し、結合する。なお、以下、特に断らない限り、前記標的ポリペプチドを免疫して得られた抗体を、抗FNIII14抗体という。
前記抗FNIII14抗体は、上述したように、FNIII14の部分ポリペプチドを認識する抗体である。FNIII14は、TEATITGLEPGTEYTIYVIAL(配列番号2)で示される21個のアミノ酸残基で構成されたポリペプチドであり、この21のアミノ酸残基のうち、14番目のチロシン(Y)からの8アミノ酸残基(YTIYVIAL:配列番号3)が活性中心であることは既に知られている。
前記免疫原である前記標的ポリペプチドは、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド又は配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのN末端又はC末端側に1個〜8個のアミノ酸残基が付加されたポリペプチドである。得られる抗体の活性の観点及び抗体の作製効率の観点から、前記標的ポリペプチドは、1個〜3個のアミノ酸残基が付加されたポリペプチドであることがより好ましく、2個のアミノ酸残基が付加されたポリペプチドであることが更に好ましい。
付加可能なアミノ酸残基としては、特に制限はないが、抗原性や安定性を高める作用を有するアミノ酸残基、キャリアタンパク質(ハプテン)を結合するためのリンカー機能を有するアミノ酸残基などを挙げることができる。このような付加的なアミノ酸残基としては、例えばシステイン残基、スレオニン残基又はリジン残基や、酸性アミノ酸残基又は塩基性アミノ酸残基等を挙げることができる。これらの付加的なアミノ酸残基は、前記標的ポリペプチドのアミノ酸配列において、配列番号1で示されるアミノ酸配列のC末端及びN末端の一方又は双方に存在することができる。
抗原性又は抗体の安定性の観点から、免疫原となる前記標的ポリペプチドは、システイン残基をC末端に有し、リジン残基をN末端に有するポリペプチドであることが好ましく、CLEPGTEYTIYVIALK(配列番号4)で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであることが特に好ましい。
抗原性又は抗体の安定性の観点から、免疫原となる前記標的ポリペプチドは、システイン残基をC末端に有し、リジン残基をN末端に有するポリペプチドであることが好ましく、CLEPGTEYTIYVIALK(配列番号4)で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであることが特に好ましい。
前記抗FNIII14抗体は、前記標的ポリペプチドに結合することができれば、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよい。
なお、本発明における「抗FNIII14抗体」との表現には、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドに対する結合能を有する限り、抗体断片も包含される。抗体断片としては、Fab、F(ab’)2、又はFvが挙げられる。
なお、本発明における「抗FNIII14抗体」との表現には、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドに対する結合能を有する限り、抗体断片も包含される。抗体断片としては、Fab、F(ab’)2、又はFvが挙げられる。
前記抗FNIII14抗体は、前記標的ポリペプチドを免疫原として非ヒト哺乳動物に投与すること(以下、免疫工程という)、及び、前記非ヒト哺乳動物から、前記免疫原として用いたポリペプチドを認識する抗体を得ること(以下、抗体取得工程という)、を含む製造方法により得られる。前記製造方法には、必要に応じて他の工程を含むことができる。
前記免疫工程において適用される前記標的ポリペプチドを非ヒト哺乳動物に投与する手法(免疫方法)、生成された抗体を非ヒト哺乳動物から回収する手法については、特に制限はなく、通常用いられる方法を適用することができる。また、前記非ヒト哺乳動物についても、抗体の作製において通常用いられる非ヒト哺乳動物であればよく、マウス、ウサギ、ヤギ等を用いることができる。
前記免疫原となるポリペプチドは、抗原性を高めるために公知のキャリアタンパク質との融合タンパク質として免疫に用いてもよい。このようなキャリアタンパク質としては、この目的で使用される公知の分子であれば特に制限なく使用することができ、例えば、オボアルブミン(OVA)、チログロブリン(TG)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、S−グルタチオントランスフェラーゼ(GST)、ウシ血清アルブミン(BSA)などを挙げることができる。
前記抗体取得工程では、免疫原として用いた標的ポリペプチドを認識する抗体を得る。目的とする抗体を得る手法としては、前記非ヒト哺乳動物において生成された抗体を含む体液(例えば、血清等)を、免疫原として用いた標的ポリペプチドに対する結合能に基づいてスクリーニングすること、又は目的とする抗体を産生する抗体産生細胞を、免疫原として用いた標的ポリペプチドに対する結合能に基づいてスクリーニングすることを含むものであれば、特に制限されない。またスクリーニングの前後において、必要に応じて、得られた抗体を常法により更に精製してもよい。抗体の精製手段としては、例えば、硫安沈殿、プロテインA、プロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、前記標的ポリペプチドをカップリングした担体を使用したアフィニティカラム等を挙げることができる。
その他、抗体を作製する場合に通常適用される手法はいずれも、特に制限なく、本発明における抗体の製造方法に適用可能である。
その他、抗体を作製する場合に通常適用される手法はいずれも、特に制限なく、本発明における抗体の製造方法に適用可能である。
本発明に係る抗FNIII14抗体がポリクローナル抗体の場合には、例えば、次のようにして得ることができる。
即ち、前記免疫原のポリペプチドを、非ヒト哺乳動物、例えばウサギ等の小動物に免疫して血清を得る。得られた血清から、免疫原として用いられた標的ポリペプチドに対する結合能に基づいてスクリーニングし、更に、上述した公知の抗体精製手段のいずれかを用いることによって本抗体を精製する。
即ち、前記免疫原のポリペプチドを、非ヒト哺乳動物、例えばウサギ等の小動物に免疫して血清を得る。得られた血清から、免疫原として用いられた標的ポリペプチドに対する結合能に基づいてスクリーニングし、更に、上述した公知の抗体精製手段のいずれかを用いることによって本抗体を精製する。
本発明に係る抗FNIII14抗体がモノクローナル抗体の場合には、例えば、次のようにして得ることができる。
即ち、前記免疫原のポリペプチドを、哺乳動物、例えばマウスなどの小動物に免疫を行い、その後、同マウスより脾臓を摘出し、これをすりつぶして細胞を分離する。得られた脾臓細胞と、所定のマウスミエローマ細胞とを、ポリエチレングリコールなどの試薬により融合させ、融合細胞(ハイブリドーマ)を形成する。得られたハイブリドーマの中から、前記標的ポリペプチドと結合する抗体を産生するクローンを、当該標的ポリペプチドに対する結合能に基づいて選択(スクリーニング)する。次いで選択したハイブリドーマをマウス腹腔内に移植し、その後、同マウスより腹水を回収する。前記腹水中のモノクローナル抗体を、上述した公知の抗体精製手段のいずれかを用いることによって本抗体を精製する。
即ち、前記免疫原のポリペプチドを、哺乳動物、例えばマウスなどの小動物に免疫を行い、その後、同マウスより脾臓を摘出し、これをすりつぶして細胞を分離する。得られた脾臓細胞と、所定のマウスミエローマ細胞とを、ポリエチレングリコールなどの試薬により融合させ、融合細胞(ハイブリドーマ)を形成する。得られたハイブリドーマの中から、前記標的ポリペプチドと結合する抗体を産生するクローンを、当該標的ポリペプチドに対する結合能に基づいて選択(スクリーニング)する。次いで選択したハイブリドーマをマウス腹腔内に移植し、その後、同マウスより腹水を回収する。前記腹水中のモノクローナル抗体を、上述した公知の抗体精製手段のいずれかを用いることによって本抗体を精製する。
本発明の細胞転移又は浸潤抑制剤は、前記FNIII14抗体を有効成分とするものである。本細胞転移又は浸潤抑制剤は、前記FNIII14抗体が、腫瘍細胞の転移や、インテグリンが関与する炎症性疾患における細胞の転移(浸潤)を効果的に抑制することができる。
ここで細胞の「転移」とは、腫瘍細胞が原発病変とは違う場所に到達し、そこで再び増殖し、同一種類の腫瘍を二次的に生じることを意味する。また、細胞の「浸潤」とは、炎症性細胞や腫瘍細胞が活動の場を広げ、隣接する領域、又は隣接する領域から更に周辺へと広がって行くことを意味する。ただし、「転移」と「浸潤」との文言は、本発明において「転移」として総称される場合がある。
ここで細胞の「転移」とは、腫瘍細胞が原発病変とは違う場所に到達し、そこで再び増殖し、同一種類の腫瘍を二次的に生じることを意味する。また、細胞の「浸潤」とは、炎症性細胞や腫瘍細胞が活動の場を広げ、隣接する領域、又は隣接する領域から更に周辺へと広がって行くことを意味する。ただし、「転移」と「浸潤」との文言は、本発明において「転移」として総称される場合がある。
本発明において、前記FNIII14抗体により腫瘍細胞の転移が抑制可能とされる腫瘍の種類としては、血球の癌、あるいは肉腫又は癌腫のいずれであってもよく、例えば、白血病、リンパ腫、乳癌、肺癌、胃癌、食道癌、卵巣癌、肝細胞癌、大腸癌、膵臓癌、頭頚部癌及び前立腺癌等の癌や、線維肉腫、骨肉腫等の肉腫類、悪性黒色腫、神経芽腫、或いは神経膠腫などを挙げることができるが、特に、浸潤を起こしやすい乳癌、肺癌、神経膠腫などに対して適用されることが好ましい。
本発明において、前記FNIII14抗体により細胞の転移(浸潤)が抑制可能な炎症性疾患としては、インテグリンが関与する炎症性疾患であればよく、例えば、慢性関節リウマチ、大腸炎等を挙げることができる。配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、インテグリンの活性化に寄与するものである。このため、前記抗FNIII14抗体によりインテグリンの活性化が抑制され、この結果、炎症部位の細胞の転移(浸潤)を抑制すると推測される。
本発明の細胞転移又は浸潤抑制剤は、経口的にまたは非経口的に全身あるいは局所的に投与することができる。例えば、点滴などの静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、坐薬、注腸、経口性腸溶剤などを選択することができ、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。また投与量についても患者の年齢、症状等により適宜選択することができる。
本発明の細胞の転移又は浸潤抑制用組成物は、前記FNIII14抗体と、医薬的に許容可能な担体を含み、必要に応じて、その他の添加物を含むことができる。前記医薬的に許容可能な担体は、投与経路に応じて適宜選択される。このような担体および添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などが挙げられる。使用される添加物は、剤形に応じて上記の中から適宜選択されるが、これらに限定されるものではない。
前記抗FNIII14抗体は、前記FNIII14抗体に他の物質を結合した融合型抗FNIII14抗体であってもよい。前記抗FNIII14抗体に融合可能な物質としては、例えば、ドキソルビシン、シスプラチン等の他の抗腫瘍剤を挙げることができる。これにより、前記抗FNIII14抗体による直接的な細胞転移又は浸潤抑制活性のみならず、融合された抗腫瘍剤による抗腫瘍効果も期待できる。
前記抗FNIII14抗体にこれらの他の抗腫瘍剤を融合する場合には、前記抗FNIII14抗体の活性を損なわない限りいずれの融合又は結合方法を適用してもよく、例えば、リンカーを介して共有結合することによって、或いは金属イオンとの配位結合などの当業界で既知の融合又は結合方法を適用して、前記抗FNIII14抗体の活性を損なわない部位、例えば抗体の定常域(C領域)などに、対象となる他の抗腫瘍剤を融合又は結合することができる。
前記抗FNIII14抗体にこれらの他の抗腫瘍剤を融合する場合には、前記抗FNIII14抗体の活性を損なわない限りいずれの融合又は結合方法を適用してもよく、例えば、リンカーを介して共有結合することによって、或いは金属イオンとの配位結合などの当業界で既知の融合又は結合方法を適用して、前記抗FNIII14抗体の活性を損なわない部位、例えば抗体の定常域(C領域)などに、対象となる他の抗腫瘍剤を融合又は結合することができる。
また、本発明は、腫瘍を有する患者に対して、本発明にかかる細胞転移又は浸潤抑制剤、或いは、細胞転移又は浸潤抑制用組成物を投与することを含む腫瘍の治療方法を含む。ここで、「治療」には、症状の改善であればよく、病巣の肥大抑制又は縮小、転移速度の緩和又は転移の停止も、確認できる範囲でこの用語に包含される。
患者への投与方法は、適用される薬剤の剤形や、患者の性別、年齢、症状等又はこれらの組み合わせによって異なるが、経口投与、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、坐薬、注腸、経口性腸溶剤を挙げることができ、これらの投与方法から患者の状態によって適宜選択すればよい。ある実施形態では、好ましくは静脈内注射とすることができる。
本発明の抗体の治療上有効用量は、症状の程度や患者の状態によって異なり、例えば、約0.1mg/kg体重〜約50mg/kg体重とすることができるが、これに限定されない。また、投与頻度は、例えば、毎日2回ないし1週間に1回の範囲とすることができるが、これに限定されない。
本発明の抗体の治療上有効用量は、症状の程度や患者の状態によって異なり、例えば、約0.1mg/kg体重〜約50mg/kg体重とすることができるが、これに限定されない。また、投与頻度は、例えば、毎日2回ないし1週間に1回の範囲とすることができるが、これに限定されない。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
<抗ヒトFNIII14抗体の作製>
アミノ酸配列CLEPGTEYTIYVIALK(配列番号4)からなるポリペプチドを、常法により合成した。合成したポリペプチドを、ハプテンとしてチログロブリンと融合し、得られた融合ポリペプチドを抗原ポリペプチド(免疫原)として用いた。免疫は家兎を用いた通常の方法に従って行った。得られた目的とする抗体を含む混合物を、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを結合したセファデックスビーズに対する結合能に基づいてスクリーニングを行った後に、常法により、抗体を精製した。
以上のようにして、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを認識するポリクローナル抗体(抗FNIII14抗体)を得た。
<抗ヒトFNIII14抗体の作製>
アミノ酸配列CLEPGTEYTIYVIALK(配列番号4)からなるポリペプチドを、常法により合成した。合成したポリペプチドを、ハプテンとしてチログロブリンと融合し、得られた融合ポリペプチドを抗原ポリペプチド(免疫原)として用いた。免疫は家兎を用いた通常の方法に従って行った。得られた目的とする抗体を含む混合物を、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを結合したセファデックスビーズに対する結合能に基づいてスクリーニングを行った後に、常法により、抗体を精製した。
以上のようにして、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを認識するポリクローナル抗体(抗FNIII14抗体)を得た。
<抗体活性の評価>
上記で得られた抗FNIII14抗体(以下、αFNIII14)の抗体活性を、配列番号2で示される全長のFNIII14によって誘導される細胞接着抑制の阻害作用を指標とし、以下のようにして評価した。
上記で得られた抗FNIII14抗体(以下、αFNIII14)の抗体活性を、配列番号2で示される全長のFNIII14によって誘導される細胞接着抑制の阻害作用を指標とし、以下のようにして評価した。
96ウェル細胞培養プレート(Corning社製)を0.5μg/mLの濃度のヒト由来血漿性フィブロネクチン(以下、「FN」とする。Fukaiらの方法で調製、Fukai et al.,J.Biol.Chem.,266,8807,1991)でコーティングした。また、ウシ血清アルブミン(BSA)を20μg/mLの濃度で同様に96ウェルプレートに添加して、BSAがコートされたウェルを作製した。
また、FNコート済みのウェルには、更に、最終濃度50μg/mLとなるように、全長のFNIII14を添加して、FN及び全長FNIII14双方コート済みウェルを作製した。
また、FNコート済みのウェルには、更に、最終濃度50μg/mLとなるように、全長のFNIII14を添加して、FN及び全長FNIII14双方コート済みウェルを作製した。
上記で得られたBSAコート済みウェル、FNコート済みウェル、及びFN及び全長FNIII14双方コート済みウェルのそれぞれに、無血清培地で2×105細胞/mlとなるように、A375SM細胞を懸濁して細胞懸濁液を調製した。この懸濁液100μL(2×104細胞)に、図1に示される最終濃度で、上記で得られた抗FNIII14抗体(20μg/mL)、抗ウサギIgG(20μg/mL)、FNIII14(配列番号1)を含むペプチド溶液(リン酸緩衝生理食塩水に最終濃度12.5μg/mL、25μg/mL又は50μg/mLとなるように溶解)をそれぞれ混合し、上記のプレートの各ウェルに添加した。なお、培地は、DMEM培地(GIBCO BRL社製)を使用した。
プレートを37℃、5v/v%CO2雰囲気下で1時間培養した。4%(v/v)ホルマリンと5質量%スクロースを含むPBS(−)溶液を100μL静かにウェルに加え、室温で1時間放置することで細胞を固定した。固定後、PBS中での非接着細胞を洗浄除去した後、あらかじめ決められた4視野内の細胞数を計測し接着細胞数とした。結果を図1に示す。*:FNIII14を含まない場合と比較してp<0.005、**:12.5μg/mlのFNIII14を添加した場合と比較してp<0.005。なお、図1において「in solution」とは、各濃度の遊離の全長FNIII14を添加したFNコート済みウェルであることを示し、「coated」とは、FN及び全長FNIII14双方コート済みウェルであることを示す。
図1に示されるように、FNIII14の存在によって細胞接着抑制(以下、「脱離」という場合がある)が誘導されて、付着細胞の数が減少する。この場合に、抗FNIII14抗体を添加することにより、付着細胞の数が増加し、FNIII14によって誘導される細胞接着抑制が阻害されることがわかった。
[実施例2]
<浸潤阻害活性評価>
以下に、実施例1で得られた抗FNIII14抗体の悪性黒色腫細胞の移動に対する抑制効果を、以下の傷つけアッセイによって確認した。
(1) 悪性黒色腫細胞株Mum2Bの移動・浸潤活性の確認
悪性黒色腫細胞株Mum2B及びMum2C(Seftor et al., Molecular determinants of human uveal melanoma invasion and metstasis. Clin Exp Metastasis 2002, 19(3): 233-246)を、FN(0.25μg/mL)で表面をコートし且つ各ウェルを横切るように直線を描画した48ウェルプレート(岩城ガラス社)の各ウェルに4.0×104細胞/500μLの密度で播種した。37℃、5%(v/v)CO2の条件下で、24時間培養し、単一細胞層を形成させた。
<浸潤阻害活性評価>
以下に、実施例1で得られた抗FNIII14抗体の悪性黒色腫細胞の移動に対する抑制効果を、以下の傷つけアッセイによって確認した。
(1) 悪性黒色腫細胞株Mum2Bの移動・浸潤活性の確認
悪性黒色腫細胞株Mum2B及びMum2C(Seftor et al., Molecular determinants of human uveal melanoma invasion and metstasis. Clin Exp Metastasis 2002, 19(3): 233-246)を、FN(0.25μg/mL)で表面をコートし且つ各ウェルを横切るように直線を描画した48ウェルプレート(岩城ガラス社)の各ウェルに4.0×104細胞/500μLの密度で播種した。37℃、5%(v/v)CO2の条件下で、24時間培養し、単一細胞層を形成させた。
その後、各ウェルの単一細胞層に、上記の直線に対して直行する方向に、100μL用ピペットチップを用いて線状にひっかいて単一細胞層に傷をつけて一部の細胞を取り除き、ライン上に無細胞領域を形成した。この無細胞領域の幅(前記直線に沿った長さ)Aを測定した。上清を吸引して無血清培地に交換して、更に、6時間培養した。傷つけ直後と、傷つけから6時間経過した後とで写真を撮影し、培養後の無細胞領域の幅A’を測定し、以下の式に基づく移動インデックス(%)に基づいて評価した。
移動インデックス(%)=[(A−A’)/A]×100
移動距離=A−A’
移動インデックス(%)=[(A−A’)/A]×100
移動距離=A−A’
その結果、Mum2Bは58%であり、Mum2Cは8%であった。従って、Mum2Bは移動・浸潤能の高い細胞株であることがわかった。
(2)抗FNIII14抗体によるMum2Bの移動・浸潤抑制評価
抗FNIII14抗体又は抗ウサギIgGを20μg/mLの濃度で各ウェルに添加した以外は、上記(1)と同様にして、FNコート済み48ウェルプレートを作製し、上記(1)と同様にしてMum2Bの傷つけアッセイを行った。
抗FNIII14抗体又は抗ウサギIgGを添加していないウェルプレートにおいて、移動した細胞の数を100%として、各ウェルにおける細胞の移動抑制を評価した。
その結果、抗ウサギIgGを添加したウェルではほぼ100%であったのに対して、抗FNIII14抗体を添加したウェルでは、9%であった。
従って、抗FNIII14抗体は、悪性黒色腫細胞株の移動・浸潤に対して阻害作用を有することがわかった。
抗FNIII14抗体又は抗ウサギIgGを20μg/mLの濃度で各ウェルに添加した以外は、上記(1)と同様にして、FNコート済み48ウェルプレートを作製し、上記(1)と同様にしてMum2Bの傷つけアッセイを行った。
抗FNIII14抗体又は抗ウサギIgGを添加していないウェルプレートにおいて、移動した細胞の数を100%として、各ウェルにおける細胞の移動抑制を評価した。
その結果、抗ウサギIgGを添加したウェルではほぼ100%であったのに対して、抗FNIII14抗体を添加したウェルでは、9%であった。
従って、抗FNIII14抗体は、悪性黒色腫細胞株の移動・浸潤に対して阻害作用を有することがわかった。
[実施例3]
<飢餓状態の正常細胞における脱離抑制活性評価>
次に、付着性の正常線維芽細胞株NIH3T3を飢餓状態にして、実施例1で得られた抗FNIII14抗体による細胞脱離抑制活性を評価した。なお、飢餓状態のNIH3T3細胞は、炎症性疾患において確認される細胞浸潤と同じ挙動を示すと考えられている。
NIH3T3細胞株を、FNでコート(0.25μg/mL)した96ウェルプレートの各ウェルに、4.0×104細胞/100μLの密度で播種した。次いで、抗ウサギIgG(20μg/mL)、抗HepII抗体(αHepII:20μg/mL)、又は実施例1で得られた抗FNIII14抗体(10μg/mL若しくは20μg/mL)を各ウェルに添加して、又は添加せずに、培養を2日間行った。なお抗HepII抗体は、フィブロネクチンのヘパリン結合ドメインII(12番目タイプIII繰り返し部分)に対する抗体FNH3−8である(タカラバイオ社から購入)。細胞の培養には、血清を含まない培地(例えばDMEM培地)を用いた。生細胞の評価は、Cell Couting Kit(和光純薬)を用いて行った。結果を図2に示す。*:0日目の結果に対してp<0.01、**:2日目の抗体なしの結果に対してp<0.05。
<飢餓状態の正常細胞における脱離抑制活性評価>
次に、付着性の正常線維芽細胞株NIH3T3を飢餓状態にして、実施例1で得られた抗FNIII14抗体による細胞脱離抑制活性を評価した。なお、飢餓状態のNIH3T3細胞は、炎症性疾患において確認される細胞浸潤と同じ挙動を示すと考えられている。
NIH3T3細胞株を、FNでコート(0.25μg/mL)した96ウェルプレートの各ウェルに、4.0×104細胞/100μLの密度で播種した。次いで、抗ウサギIgG(20μg/mL)、抗HepII抗体(αHepII:20μg/mL)、又は実施例1で得られた抗FNIII14抗体(10μg/mL若しくは20μg/mL)を各ウェルに添加して、又は添加せずに、培養を2日間行った。なお抗HepII抗体は、フィブロネクチンのヘパリン結合ドメインII(12番目タイプIII繰り返し部分)に対する抗体FNH3−8である(タカラバイオ社から購入)。細胞の培養には、血清を含まない培地(例えばDMEM培地)を用いた。生細胞の評価は、Cell Couting Kit(和光純薬)を用いて行った。結果を図2に示す。*:0日目の結果に対してp<0.01、**:2日目の抗体なしの結果に対してp<0.05。
図2に示されるように、飢餓状態の細胞は、脱離を生じて死滅(各種抗体が無添加の結果を参照)するところ、抗FNIII14抗体を添加したウェルでは、生細胞の数が、抗FNIII14抗体の濃度に依存して増加した。このことから、飢餓状態の細胞に対しても、前記抗FNIII14抗体に細胞の脱離を抑制する作用があることがわかった。
これに対して、抗FNIII14抗体の認識部位の近傍を認識する抗HepII抗体では、コントロール(抗ウサギIgGを添加したもの)と比較して、細胞の脱離を抑制する作用は認められなかった。
これに対して、抗FNIII14抗体の認識部位の近傍を認識する抗HepII抗体では、コントロール(抗ウサギIgGを添加したもの)と比較して、細胞の脱離を抑制する作用は認められなかった。
[実施例4]
<膜結合性タンパク質に対する活性評価>
eEF1Aは膜上に発現すると、FNIII14の接着抑制作用を媒介する膜受容体として働くことがわかる。そこで、飢餓状態での細胞の接着力低下における膜eEF1Aの発現量上昇の効果を以下のように確認した。
真核細胞翻訳伸長因子1A(Eukaryotic translation elongation factor 1A:eEF1A)を、NIH3T3細胞の膜表面に発現させ、抗FNIII14抗体のeEF1Aに対する活性を評価した。
(1)ヒトeEF1A発現細胞株及びヒトeEF1A発現抑制株の作製
ヒトeEF1AのcDNAを、U937細胞株のcDNAライブラリーから、2種のプライマー(5’-CTGCGCGAATTCAAATGGGAAAGGAAAAGACT-3’:配列番号5、5’-ATTAGGGCGGCCGCTCATTTAGCCTTCTGAGCTTT-3’:配列番号6)を用いて、通常の条件によるPCRを実施して得た。PCR産物をEcoRIとNotIを用いて切断し、得られた断片を、EcoRI-NotI で切断したpCMV-Myc Mammalian Expression Vector(Clontech)にてサブクローニングした。導入したcDNA配列を、3730xl DNA Analyzer (Applied Biosystems社)を用いて確認した。作製した組換えベクターを、LT-1 Transfection Reagent (TAKARA社)を用いて、NIH3T3細胞へトランスフェクションして、ヒトeEF1A過剰発現株及びその対照(コントロール)株を得た。
<膜結合性タンパク質に対する活性評価>
eEF1Aは膜上に発現すると、FNIII14の接着抑制作用を媒介する膜受容体として働くことがわかる。そこで、飢餓状態での細胞の接着力低下における膜eEF1Aの発現量上昇の効果を以下のように確認した。
真核細胞翻訳伸長因子1A(Eukaryotic translation elongation factor 1A:eEF1A)を、NIH3T3細胞の膜表面に発現させ、抗FNIII14抗体のeEF1Aに対する活性を評価した。
(1)ヒトeEF1A発現細胞株及びヒトeEF1A発現抑制株の作製
ヒトeEF1AのcDNAを、U937細胞株のcDNAライブラリーから、2種のプライマー(5’-CTGCGCGAATTCAAATGGGAAAGGAAAAGACT-3’:配列番号5、5’-ATTAGGGCGGCCGCTCATTTAGCCTTCTGAGCTTT-3’:配列番号6)を用いて、通常の条件によるPCRを実施して得た。PCR産物をEcoRIとNotIを用いて切断し、得られた断片を、EcoRI-NotI で切断したpCMV-Myc Mammalian Expression Vector(Clontech)にてサブクローニングした。導入したcDNA配列を、3730xl DNA Analyzer (Applied Biosystems社)を用いて確認した。作製した組換えベクターを、LT-1 Transfection Reagent (TAKARA社)を用いて、NIH3T3細胞へトランスフェクションして、ヒトeEF1A過剰発現株及びその対照(コントロール)株を得た。
eEF1A1のsiRNA(センス鎖:GGAUGUCUACAAAAUUGGUtt[配列番号7]、アンチセンス鎖: ACCAAUUUUGUAGACAUCCtg[配列番号8]) (GeneBankTM accession no. NM_001402) と、ネガティブコントロール用siRNA(SP−NEG)は、Ambion社より購入した。それぞれのsiRNAを、NIH3T3 Transfection Reagent (Altogen Biosystems)を用いてNIH3T3細胞へトランスフェクションして、ヒトeEF1A発現抑制株及びその対照(コントロール)株を得た。
cDNAを導入した細胞株と、siRNAを導入した細胞株は、それぞれトランスフェクションから48時間経過した後にアッセイに用いた。なお、それぞれの細胞株において、導入したヒトeEF1Aの細胞膜における発現については、FACScanにより確認した。
(2)細胞脱離抑制活性評価
上記(1)で得られたヒトeEF1A過剰発現株、ヒトeEF1A発現抑制株、及びそれぞれのコントロール株、NIH3T3にベクターのみを導入したベクター導入株、及び未導入NIH3T3株を、それぞれFNでコート(0.25μg/mL)した96ウェルプレートの各ウェルに、4.0×104細胞/100μLの密度で播種し、無血清培地を用いて24時間(1日)培養した。また、ヒトeEF1A過剰発現株を播種したウェルの一部に、実施例1で得られた抗FNIII14抗体(20μg/mL)を添加して、同様に無血清培地を用いて1日培養した。結果を図3及び図4に示す。図3及び図4において、*:コントロールの結果に対してp<0.01、**:コントロールのsiRNA導入株又はベクターのみ導入株の結果に対してp<0.01、***:抗体なしの結果に対してp<0.01。
上記(1)で得られたヒトeEF1A過剰発現株、ヒトeEF1A発現抑制株、及びそれぞれのコントロール株、NIH3T3にベクターのみを導入したベクター導入株、及び未導入NIH3T3株を、それぞれFNでコート(0.25μg/mL)した96ウェルプレートの各ウェルに、4.0×104細胞/100μLの密度で播種し、無血清培地を用いて24時間(1日)培養した。また、ヒトeEF1A過剰発現株を播種したウェルの一部に、実施例1で得られた抗FNIII14抗体(20μg/mL)を添加して、同様に無血清培地を用いて1日培養した。結果を図3及び図4に示す。図3及び図4において、*:コントロールの結果に対してp<0.01、**:コントロールのsiRNA導入株又はベクターのみ導入株の結果に対してp<0.01、***:抗体なしの結果に対してp<0.01。
図3及び図4に示されるように、ヒトeEF1Aの発現を抑制すると、飢餓状態のNIH3T3細胞株であってもウェル表面におけるFNIII14による接着力低下が生じず、細胞の死滅が抑制されることがわかった。このことから、eEF1Aが細胞接着力の低下に関与する因子であり、eEF1Aが膜に発現することによって細胞接着力低下が起こり、細胞の死滅が誘導されることがわかった。
一方で、図4に示されるように、eEF1A過剰発現株であっても、実施例1で得られた抗FNIII14抗体を添加することによって、細胞の死滅が抑制された。このことにより、実施例1で得られた抗FNIII14抗体は、フィブロネクチンから露出したFNIII14の作用を阻害し、その結果、その受容体である膜上のeEF1Aとの結合を阻害することがわかった。また、抗FNIII14抗体は、フィブロネクチンの一部であるFNIII14と結合するので、フィブロネクチンはeEF1Aと結合できないことがわかる。なお、eEF1Aは、細胞内の発現量の増加に伴って膜発現量も増加することがわかっている。
[実施例5]
抗FNIII14抗体のがん細胞の転移に対する阻害効果を、自然転移モデルを用いて以下のように確認した。
マウス乳がん細胞株4T1細胞を1×105個/50μLの濃度にPBSに懸濁して調製した細胞懸濁液を、雌性Balb/cマウス(6週齢、5匹)の左脚の足蹠部に注入して、がん細胞の移植を行った。移植後、8日、12日、15日、及び18日目に、抗ウサギIgG抗体又は抗FNIII14抗体を、100μg/100μL(PBS)の濃度で100μL、各マウスの腹腔内に投与した。細胞移植後21日目に、各マウスにネンブタール100μLを投与して麻酔した後、原発巣を足リンパ節ごと切除した。細胞移植後35日目に、各マウスを安楽死させて、肺を摘出し、ブアン固定液を用いて常法により組織を固定化し、最大径が1mm以上となる白抜けした結節の数を計測した。結果を表1に示す。表中、「Normal IgG投与群」とは、抗ウサギIgG抗体を投与した群を意味し、「Anti-FNIII14投与群」とは、抗FNIII14抗体を投与した群を意味する。No.1〜No.5は、それぞれの群のマウスの番号を意味する。
抗FNIII14抗体のがん細胞の転移に対する阻害効果を、自然転移モデルを用いて以下のように確認した。
マウス乳がん細胞株4T1細胞を1×105個/50μLの濃度にPBSに懸濁して調製した細胞懸濁液を、雌性Balb/cマウス(6週齢、5匹)の左脚の足蹠部に注入して、がん細胞の移植を行った。移植後、8日、12日、15日、及び18日目に、抗ウサギIgG抗体又は抗FNIII14抗体を、100μg/100μL(PBS)の濃度で100μL、各マウスの腹腔内に投与した。細胞移植後21日目に、各マウスにネンブタール100μLを投与して麻酔した後、原発巣を足リンパ節ごと切除した。細胞移植後35日目に、各マウスを安楽死させて、肺を摘出し、ブアン固定液を用いて常法により組織を固定化し、最大径が1mm以上となる白抜けした結節の数を計測した。結果を表1に示す。表中、「Normal IgG投与群」とは、抗ウサギIgG抗体を投与した群を意味し、「Anti-FNIII14投与群」とは、抗FNIII14抗体を投与した群を意味する。No.1〜No.5は、それぞれの群のマウスの番号を意味する。
表1に示されるように、乳がん細胞を移植後、原発巣を切除したマウスにおいて、抗FNIII14抗体を投与したマウスでは、抗マウスIgG抗体を投与した群と比較して結節数が有意に減少していた。このことから、抗FNIII14抗体が、自然転移モデルマウスにおいて乳がん細胞の転移を抑制したことがわかる。
これらのことから、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを免疫原として得られた抗FNIII14抗体は、細胞の脱離の抑制、即ち、細胞の転移又は浸潤の抑制作用を有することがわかった。
以上から、本発明の抗ヒト抗FNIII14抗体は、腫瘍細胞の転移又は浸潤を阻害し、腫瘍の悪性化を効果的に抑制できることがわかる。また腫瘍細胞の転移に限らず、広く細胞の転移又は浸潤を抑制できることがわかる。
Claims (6)
- 配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む14〜22アミノ酸残基からなるポリペプチドを非ヒト哺乳動物に免疫して得られた抗体を有効成分とする細胞の転移又は浸潤抑制剤。
- 前記細胞が腫瘍細胞である請求項1記載の細胞の転移又は浸潤抑制剤。
- 前記抗体がポリクローナル抗体である請求項1又は請求項2記載の細胞の転移又は浸潤抑制剤。
- 配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む14〜22アミノ酸残基からなるポリペプチドを非ヒト哺乳動物に免疫して得られた抗体と、医薬的に許容可能な担体と、を含む、細胞の転移又は浸潤抑制用組成物。
- 前記細胞が腫瘍細胞である請求項4記載の細胞の転移又は浸潤抑制用組成物。
- 前記抗体がポリクローナル抗体である請求項4又は請求項5記載の細胞の転移又は浸潤抑制用組成物。
Priority Applications (2)
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