JP2014182987A - 放電ギャップ充填用組成物および静電放電保護体 - Google Patents

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Abstract

【課題】様々な設計の電子回路基板に対して、自由な形状でかつ簡便にESD対策を図ることができ、かつ、放電時の作動性に優れ、小型化、低コスト化の可能な静電放電保護体を提供すること、およびそのような静電放電保護体の製造に用いることのできる放電ギャップ充填用組成物を提供すること、さらに該放電体製造時の生産性を上げるため、分散安定性に優れた放電ギャップ充填用組成物を提供すること
【解決手段】金属粉末(A)、バインダー成分(B)およびチタネート系化合物(C)を含む放電ギャップ充填用組成物を用いることにより、分散安定性が良好で、放電時の作動性に優れ、小型化、低コスト化の可能な静電放電保護体が得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、放電時の作動性に優れ、小型化、低コスト化の可能な静電放電保護体、およびこの静電放電保護体に用いられる放電ギャップ充填用組成物に関する。
帯電した導電性の物体(例えば人体)が他の導電性の物体(例えば電子機器)に接触し、あるいは充分に接近すると、激しい放電が発生する。この現象は静電放電(electro−static discharge、以下「ESD」とも記す。)と呼ばれ、電子機器の誤動作や損傷などの問題を引き起こし、あるいは爆発性雰囲気における爆発の引金となることなどがある。
ESDは、電気システムおよび集積回路が曝される破壊的で不可避な現象の一つである。電気的な観点から説明すると、ESDとは、数アンペアのピーク電流のある高電流が、10n秒から300n秒間継続する過渡的な高電流現象である。したがって、ESDが発生すると、数十n秒以内にほぼ数アンペアの電流を集積回路の外へ伝導しなければ、その集積回路は修復至難な損傷を被るか、不具合もしくは劣化を起こし、正常に機能しなくなる。
近年、電子部品や電子機器の軽量化、薄型化、小型化の流れが急速に進行している。それにともない、半導体の集積度やプリント配線基板への電子部品実装密度の上昇が著しくなり、過密に集積、あるいは実装された電子素子や信号線が、互いに極めて接近して存在することになった。さらに信号処理速度も高速化されてきた。その結果、高周波輻射ノイズが誘発されやすい状況となった。このような状況から、回路内のIC等をESDから保護する静電放電保護素子の開発が行われている。
従来、回路内のIC等をESDから保護する静電放電保護素子として、金属酸化物等の焼結体からなるバルク構造の素子があった(例えば特許文献1参照)。この素子は焼結体からなる積層型チップバリスタであり、積層体と一対の外部電極を備えている。バリスタは、印加電圧が、ある一定以上の値に達すると、それまで流れなかった電流が急に流れ出すという性質を持ち、静電放電に対して優れた抑止力をもつ。しかし、焼結体である積層型チップバリスタは、シート成型、内部電極印刷、シート積層等から成る複雑な製造プロセスが避けられず、かつ、実装工程中に層間剥離等の不具合の発生も起こりやすいという問題があった。
その他の、回路内のIC等をESDから保護する静電放電保護素子として放電型素子がある。放電型素子は、漏れ電流が小さく、原理的に簡単であり、故障しにくいという長所もある。また、放電電圧は、放電ギャップの幅によって調整することができる。また、封止構造とする場合はガスの圧力、ガスの種類に応じて放電ギャップの幅が決められる。実際に市販されている放電型素子としては、円柱状のセラミックス表面導体皮膜が形成され、レーザーなどによってその皮膜に放電ギャップを設け、これをガラス封管したものがある。この市販されているガラス封管した放電型素子は、静電放電保護特性が優れているものの、その形態が複雑であるために小型の表面実装用素子としてはサイズの点で限界があり、またコストを下げることが困難であるという問題があった。
さらには、配線上に直接放電ギャップを配線形成し、その放電ギャップの幅によって放電電圧を調整する方法が開示されている(例えば特許文献2〜4参照)。特許文献2には、放電ギャップの幅が4mmであることが例示され、特許文献3には、放電ギャップの幅が0.15mmであることが例示されている。また、特許文献4には、通常の電子素子の保護には放電ギャップとして5〜60μmが好ましく、静電放電により敏感なICやLSIの保護のためには、放電ギャップを1〜30μmとすることが好ましく、特に大きなパルス電圧部分だけを除去すればよいという用途には150μm程度まで大きくできることが開示されている。
しかし、放電ギャップ部分に保護がなければ、高電圧の印加で気中放電が起こったり、環境中の湿度やガスのために導体の表面に汚染が生じ放電電圧が変化したり、電極が設けられている基板の炭化により電極が短絡する可能性がある。
また、放電ギャップを有する静電放電保護体においては、通常の作動電圧、例えば一般的にはDC10V未満では、高い絶縁抵抗性を要求されるため、耐電圧性の絶縁性部材を電極対の放電ギャップに設けることが有効となる。放電ギャップの保護のために、放電ギャップに絶縁性部材として直接通常のレジスト類を充填してしまうと、放電電圧の大幅な上昇がおこり、実用的ではない。1〜2μm程度またはそれ以下の極めて狭い放電ギャップに通常のレジスト類を充填した場合は、放電電圧を下げることができるが、充填されたレジスト類に微小な劣化がおこったり、絶縁抵抗が低下したり、場合によっては導通してしまうという問題がある。
特許文献5には、絶縁基板に10〜50μmの放電ギャップを設けて、端部が対向した一対の電極パターンの間に、ZnOを主成分とし炭化珪素を含む機能膜を設ける保護素子が開示されている。この保護素子は、積層型チップバリスタと比較すると、簡単な構成であり、基板上の厚膜素子として製造できる利点がある。
しかし、これらのESD対策素子は、電子機器の進化にあわせて、実装面積の低減化をはかっているが、形態はあくまでも素子であるので、ハンダなどによって配線基板に実装する必要がある。そのため、電子機器において、設計の自由度が少なく、かつ、高さを含めて小型化に限界がある。
したがって、素子を固定するのではなく、小型化を含めた自由な形態で、必要な箇所に、かつ必要な面積分、ESD対策を講じることができるようにすることが望まれている。
一方、ESD保護材料として、樹脂組成物を用いることが開示されている(例えば特許文献6参照)。ここでの樹脂組成物は、絶縁バインダーの混合物からなる母材、10μm未満の平均粒子径を有する導電性粒子、および10μm未満の平均粒子径を有する半導体粒子を含むことを特徴としている。
また、ESD保護材料として、表面が絶縁性酸化皮膜で被覆されている導電性および半導体粒子の混合物が絶縁性バインダーによって結びつけられている組成物材料、粒子径範囲が規定された組成物材料、導電性粒子間の面間隔を規定した組成物材料などが開示されている(例えば、特許文献7参照)。
しかしながら、特許文献6、7に記載の方法では、薄膜で生産性を上げて塗布することが難しく、静電放電保護体の生産性に課題があった。
また、薄膜で生産性を上げようと、粘度を下げて塗布した場合に、粒子の沈降が発生し、塗布時の吐出が不安定になることがあった。
特開2005−353845号公報 特開平3−89588号公報 特開平5−67851号公報 特開平10−27668号公報 特開2007−266479号公報 特表2001−523040号公報 米国特許第4,726,991号明細書
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、様々な設計の電子回路基板等の電子機器に対して、自由な形状でかつ簡便にESD対策を図ることができ、かつ、放電時の作動性に優れ、小型化、良好な塗布性を示すことで低コスト化の可能な静電放電保護体を提供すること、およびそのような静電放電保護体の製造に用いることのできる放電ギャップ充填用組成物を提供すること、さらに該放電体製造時の生産性を上げるため、分散安定性に優れた放電ギャップ充填用組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記従来技術の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、金属粉末(A)、バインダー成分(B)およびチタネート系化合物(C)を含む放電ギャップ充填用組成物を用いることにより、放電時の作動性に優れ、小型化、低コスト化の可能な静電放電保護体が得られることを見出した。 すなわち、本発明は以下の事項に関する。
[1]
金属粉末(A)、バインダー成分(B)およびチタネート系化合物(C)を含む放電ギャップ充填用組成物。
[2]
前記チタネート系化合物(C)がリン原子を含む有機官能基を有することを特徴とする上記[1]に記載の放電ギャップ充填用組成物。
[3]
前記有機官能基が下記一般式(6)で示される基を含むことを特徴とする上記[2]に記載の放電ギャップ充填用組成物。
(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
[4]
前記金属粉末(A)が、マンガン、ニオブ、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、モリブデン、バナジウム、ニッケル、コバルト、クロム、マグネシウム、タングステン、チタンまたはアルミニウムであることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の放電ギャップ充填用組成物。
[5]
前記金属粉末(A)が酸化被膜を有することを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の放電ギャップ充填用組成物。
[6]
前記金属粉末(A)の表面に、下記一般式(1)で表される金属アルコキシドの加水分解生成物が付着していることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の放電ギャップ充填用組成物。
(式中、R1〜R4は夫々独立して炭素数1〜20のアルキル基を表し、Mは金属原子を表し、nは1〜40の整数である。)
[7]
前記一般式(1)におけるMで示される金属原子が、ケイ素、チタン、タンタル、ジルコニウムまたはハフニウムであることを特徴とする上記[6]に記載の放電ギャップ充填用組成物。
[8]
前記バインダー成分(B)が、熱硬化性化合物または活性エネルギー線硬化性化合物を含むことを特徴とする上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の放電ギャップ充填用組成物。
[9]
前記バインダー成分(B)が、熱硬化性ウレタン樹脂またはエポキシ化合物を含むことを特徴とする上記[1]〜[8]のいずれか一項に記載の放電ギャップ充填用組成物。
[10]
少なくとも2つの電極と、前記2つの電極間に放電ギャップとを有する静電放電保護体であって、上記[1]〜[9]のいずれか一項に記載の放電ギャップ充填用組成物を前記放電ギャップに充填して形成される放電ギャップ充填部材を有することを特徴とする静電放電保護体。
[11]
前記放電ギャップの幅が5μm以上1mm以下であることを特徴とする上記[10]に記載の静電放電保護体。
[12]
前記放電ギャップ充填部材の表面に保護層が形成されていることを特徴とする上記[11]に記載の静電放電保護体。
[13]
上記[11]または[12]に記載の静電放電保護体を有する電子回路基板。
[14]
上記[13]に記載の電子回路基板を有する電子機器。
本発明の放電ギャップ充填用組成物を用いれば、低コストで、放電時の作動性に優れ、小型の静電放電保護体を製造することができ、簡単に静電放電保護を実現することができる。さらに詳しくは、本発明は、分散安定性に優れた放電ギャップ充填用組成物を与えることで、静電放電保護体の製造時の生産性を上げ、低コスト化が可能となる。
また、本発明の放電ギャップ充填用組成物を用いれば、放電ギャップの幅を特定間隔に設定することで作動電圧の調整が可能であるので、作動電圧の調整精度に優れた静電放電保護体を得ることができる。
本発明の静電放電保護体は、必要な電極間に、必要とする作動電圧に応じた放電ギャップを形成し、その放電ギャップに前記放電ギャップ充填用組成物を充填し、固化または硬化させるといった方法により、自由な形状でかつ簡便に形成することができる。このため、本発明の静電放電保護体は、携帯電話をはじめとするデジタル機器、人の手が触れることが多く静電気が溜まりやすいモバイル機器等において好適に利用できる。
図1は、本発明に係る静電放電保護体の一具体例である静電放電保護体11の縦断面図である。 図2は、本発明に係る静電放電保護体の一具体例である静電放電保護体21の縦断面図である。 図3は、本発明に係る静電放電保護体の一具体例である静電放電保護体31の縦断面図である。 図4は、静電放電保護体のX線CT画像である。
以下、本発明を詳細に説明する。
<放電ギャップ充填用組成物>
本発明の放電ギャップ充填用組成物は、金属粉末(A)、バインダー成分(B)およびチタネート系化合物(C)を含むことを特徴としている。
本発明において、放電ギャップとは、一対の電極の間に形成される空間のことをいい、放電ギャップ充填用組成物とは、前記放電ギャップを充填するために用いる組成物のことをいう。また、静電放電保護体とは、放電ギャップを放電ギャップ充填用組成物で充填し硬化した物をいう。
[金属粉末(A)]
本発明に用いる金属粉末(A)としては、表面に酸化皮膜を有し、高充填して金属粉末(A)同士が隣り合っても、通常作動時の直流電圧、例えば3Vでは体積抵抗値が1×MΩ以上を示す金属粒子が好ましい。
金属の酸化物は、自由電子の動きが拘束されるために絶縁性になるが、イオン化しやすい金属ほど、酸化した時に強固な絶縁体となる。
ただし、金属酸化物のイオン半径と、その金属の原子半径が近い場合は、内部の酸化の進行を抑えることができ、いわゆる不動態になるので、本発明に用いる金属粒子として非常に好ましい。
このような金属粒子を形成する金属としては、マンガン、ニオブ、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、モリブデン、バナジウム、ニッケル、コバルト、クロム、マグネシウム、タングステン、チタンまたはアルミニウムが挙げられる。
放電ギャップ充填用組成物の経時安定性の観点から、金属粉末(A)は、比重が小さい元素の方が沈殿しにくいため、好ましくはマンガン、ニオブ、ニッケル、コバルト、クロムが選択され、より好ましくは、ジルコニウム、バナジウム、チタン、アルミニウムが選択され、さらに好ましくはバナジウム、チタン、アルミニウムが選択される。
金属粒子(A)の表面の酸化皮膜は自然酸化である場合、金属粒子製造の粉砕工程以降の保存状態で、静電放電保護体の際の放電時の作動性や耐電性にばらつきが出やすい。
工業的、安定的に優れた放電ギャップ充填用組成物にするために、金属粉末(A)の表面の一部あるいは全部に、金属アルコキシドの加水分解生成物を付着させると、適度な絶縁性、高い耐電性と安定した作動性を有すことができる。
前記金属アルコキシドは、下記一般式(1)で表されることが好ましい。このような金属アルコキシドであると、加水分解した際に金属酸化物の皮膜を形成させることが容易となる傾向がある。
(Mは金属原子であり、Oは酸素原子であり、R1〜R4はそれぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基であり、nは1〜40の整数である。)
Mで示される金属原子としては、水単独または、水および加水分解触媒と反応して加水分解生成物を形成し得るものであれば、特に制限はない。金属原子としては、マグネシウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、チタン、ジルコニム、ハフニウム、タンタル、ニオブが挙げられ、中でもケイ素、チタン、ジルコニウム、タンタルまたはハフニウムが好ましく、より好ましくはケイ素、チタン、タンタルまたはハフニウムであり、特にケイ素がさらにより好ましい。
ケイ素のアルコキシドは、空気中の湿気などで加水分解しにくく、加水分解速度を制御しやすいため、ケイ素のアルコキシドの加水分解生成物を金属粉末(A)における一次粒子の表面に付着させると、製造安定性がより高くなる傾向がある。
前記一般式(1)中、R1〜R4は、通常、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜5のアルキル基である。このようなアルキル基としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル及びn−ドデシルが挙げられる。中でも、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル及びn−ペンチルがより好ましく、エチル、n−プロピル、n−ブチルがさらに好ましい。
前記アルキル基の分子量が大きいと、前記一般式(1)で表される金属アルコキシドの加水分解が穏やかになる一方で、前記アルキル基の分子量が大き過ぎると、前記一般式(1)で表される金属アルコキシドがワックス状になり、均一な分散が困難になる傾向がある。
nは、通常1〜40、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜4の整数である。
また、前記一般式(1)で表される金属アルコキシドにおいて、nの数が大き過ぎると金属アルコキシド自体の粘度が増大し、分散しにくくなるため、nは1〜4の整数であることが望ましい。特に一量体(一般式(1)でn=1)は反応が急激に起こり、浮遊粒子が多く生成する場合があるので、二量体(一般式(1)でn=2)、三量体(一般式(1)でn=3)、四量体(一般式(1)でn=4)等の縮合体を用いることが望ましい。
本発明で用いる一般式(1)で示される金属アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−sec−ブチルチタネート、テトラ−tert−ブチルチタネート、テトラ−2エチルヘキシルチタネート、テトラエチルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラ−n−ブチルジルコネート、テトラ−sec−ブチルジルコネート、テトラ−tert−ブチルジルコネート、テトラ−2エチルヘキシルジルコネート等及びこれらの縮合体が挙げられ、特にテトラエトキシシランが加水分解性および分散性の点で好ましい。これらの金属アルコキシドは単独で用いても、また2種以上混合して用いてもよい。
前記金属アルコキシドの加水分解生成物を金属粉末(A)における一次粒子の表面に付着させる方法としては、例えば、溶媒に金属粉末(A)を懸濁させた状態で金属アルコキシド及びそれを加水分解し得る量以上の水を徐々に添加することにより行う方法が挙げられる。当該方法により、金属アルコキシドから、金属酸化物等を含む加水分解物が生成し、同時に懸濁している金属粉末(A)における一次粒子の表面に付着させることができる。
前記一般式(1)で表される金属アルコキシドにおいて、例えばMがケイ素の場合は、加水分解により、二酸化ケイ素や、シラノールが脱水縮合した形のオリゴマーやポリマーおよびこれらの混合物が生成し、二酸化ケイ素等の金属酸化物からなる膜が、前記金属粉末(A)における一次粒子の表面を被覆する場合もある。
金属アルコキシドおよび水の添加法は、一括で添加する方式をとってもよいし、少量ずつ多段階に分割して添加する方式をとってもよい。各々の添加順序としては、金属粉末(A)と金属アルコキシドを先に有機溶媒中に溶解あるいは懸濁したところに水および必要に応じて加水分解触媒を添加しても、金属粉末(A)と水および必要に応じて加水分解触媒を先に有機溶媒中に溶解あるいは懸濁した後に金属アルコキシドを添加してもよいが、金属粉末(A)と水の反応により水素ガスが多量に発生する可能性があるので、金属アルコキシドは、水や加水分解触媒を添加する前に加える方が好ましい。また、一般には反応を穏やかに行う方が、金属粉末の表面に、金属アルコキシドの加水分解物を均一に付着できる傾向があるため、少量ずつ多段階に分割して添加する方式が好ましく、必要に応じ有機溶媒で濃度を低下させた状態で添加することがより好ましい。
前記有機溶媒としては、アルコール類、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油ベンジン、エーテル等の金属アルコキシドを溶解するものが望ましいが、懸濁状でも反応するため特に限定されない。また、これらは単独でも2種以上混合して用いてもよい。また、金属アルコキシドの加水分解反応において、水の添加によりアルコールが副生成することからアルコールを重合速度の調節剤として用いることが可能である。
本発明で用いる加水分解触媒は、特に限定はなく、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機アルカリ類、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機アルカリ塩類、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピリジン、アニリン、コリン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、グアニジンなどの有機アルカリ類、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、蟻酸モノメチルアミン、酢酸ジメチルアミン、乳酸ピリジン、グアニジノ酢酸、酢酸アニリンなどの有機酸アルカリ塩を用いることができる。
本発明で用いられる加水分解触媒には特に制限はないが、固形アルカリを溶解しない量を超えて添加すると、金属粉末に不純物として混入するので好ましくない。したがって、金属酸化物の生成反応のあとに除去しやすいアンモニア、エチレンジアミン、無機アンモニウム塩が好ましい。
上述のような金属粉末(A)における一次粒子の表面に金属アルコキシドの加水分解生成物を付着させる方法において、付着物の厚みを10nm〜2μm程度にすることができる。付着物の厚みは、例えば透過型電子顕微鏡を使って求めることができる。
金属アルコキシドの加水分解生成物の付着領域としては、金属粉末(A)における一次粒子の表面の一部でもよいが、金属粉末(A)同士が金属アルコキシドの加水分解生成物を介して隣合う方が、より耐電性を上げることができるので、金属粉末(A)の表面に対して5〜100%、好ましくは10〜100%、より好ましくは25〜100%の金属アルコキシドの加水分解生成物の付着があるとよい。
金属粉末(A)は、それぞれ単独でも2種以上混合しても使用することができる。
金属粉末(A)は、一次粒子の表面を酸化皮膜または金属アルコキシドの加水分解生成物を付着あるいは被覆させると、表面が適度な絶縁性を示すために、金属粉末(A)同士が重なって存在しても問題がない。しかし、バインダー成分(B)の比率が少ない場合、粉落ちなどの問題が発生する場合がある。そのため、作動性という面よりむしろ実用性を考慮すると、金属粉末(A)の質量占有率は、放電ギャップ充填用組成物の固形分中、95質量%以下であることが好ましい。
また、ESD発生時には、静電放電保護体が全体的に導電性を示す必要があるため、金属粉末(A)の質量占有率は、放電ギャップ充填用組成物の固形分中、30質量%以上であることが好ましい。
したがって、本発明の放電ギャップ充填用組成物を静電放電保護体に用いる場合、金属粉末(A)の質量占有率は30質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
[バインダー成分(B)]
本発明において、バインダー成分(B)とは、上述した金属粉末(A)を分散させるための絶縁体物質のことをいう。
バインダー成分(B)は、活性水素基を有する化合物、該活性水素基と反応する官能基を有する化合物、またはこの両方を含むことが好ましい。前記活性水素基としては、水酸基、カルボキシル基、チオール基などが挙げられ、活性水素基と反応する官能基としては、エポキシ基、カルボジイミド基、イソシアネート基などが挙げられる。
バインダー成分(B)としては、例えば有機系ポリマー、無機系ポリマーまたはそれらの複合ポリマーを挙げることができ、具体例としては、ポリシロキサン化合物、ウレタン樹脂、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリブタジエン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、水添加ポリブタジエン、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリテトラフルオロ樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド、ポリアミドイミド、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アルキド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アリルエステル樹脂、フラン樹脂、ロジン、ロジン誘導体、ゴム誘導体などが挙げられるが、硬化反応機能を持たせる点で、水酸基、カルボキシル基、チオール基などを含有する化合物(例えばポリシロキサン化合物、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アルキド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アリルエステル樹脂など)およびエポキシ基、カルボジイミド基、イソシアネート基を含有する化合物(例えばウレタン樹脂、エポキシ樹脂など)の混合物か、エポキシ基を含有する熱硬化性化合物(例えばエポキシ樹脂など)であることが好ましい。
前記エポキシ基を含有する熱硬化性化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、N−グリシジル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、カプロラクトン変性エポキシ樹脂などの1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられる。また、難燃性付与のために、塩素、臭素などのハロゲンやリンなどの原子がその構造に導入されたエポキシ化合物を用いてもよい。
前記バインダー成分としては、力学的、熱的、化学的、経時的な安定性の観点から、熱硬化性化合物のほかに、アクリレート化合物と重合促進剤との組み合わせといった活性エネルギー線硬化性化合物を含有させることが考えられるが、これを放電ギャップ充填用組成物として用いる場合、該組成物は高濃度の金属粉末が充填される組成となり遮光してしまう。したがって、中でも熱硬化性化合物が好ましい。
前記熱硬化性化合物の中でも、絶縁抵抗値が高く、基材との密着性が良好で、金属粉末(A)の分散性が良好である点で、熱硬化性ウレタン樹脂が特に好ましい。前記熱硬化性ウレタン樹脂としては、例えば、カーボネートジオール化合物を含むポリオール化合物とイソシアネート化合物とを反応させて形成されるウレタン結合を有するポリマーを挙げることができる。
前記カーボネートジオール化合物としては、1種または2種以上の直鎖状脂肪族ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むカーボネートジオール化合物、1種または2種以上の脂環式ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むカーボネートジオール化合物、またはこれら両方のジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むカーボネートジオール化合物が挙げられる。
直鎖状脂肪族ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むカーボネートジオール化合物としては、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等のジオール成分をカーボネート結合で連結した構造を有するポリカーボネートジオールを挙げることができる。
脂環式ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むカーボネートジオール化合物としては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、トリシクロヘキサンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール等のジオール成分をカーボネート結合で連結した構造を有するポリカーボネートジオールを挙げることができる。これらのジオール成分は2種以上を組み合わせてもよい。
前記カーボネートジオール化合物で、市販されているものとしては、ダイセル化学(株)製の商品名PLACCEL CD−205、PLACCEL 205PL、PLACCEL 205HL、PLACCEL 210、PLACCEL 210PL、PLACCEL 210HL、PLACCEL 220、PLACCEL 220PL、PLACCEL 220HL、宇部興産(株)製の商品名 UC−CARB100、UM−CARB90、UH−CARB100、株式会社クラレ製の商品名 C−1065N、C−2015N、C−1015N、C−2065Nなどが挙げられる。
これらのカーボネートジオール化合物は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中で、特に、直鎖状脂肪族ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオールは、低反り性や可撓性に優れる傾向がある。したがって、該ポリカーボネートジオールを含有するバインダー成分(B)を用いた場合、フレキシブル配線基板に後述する静電放電保護体を設けることが容易になる。
また、脂環式ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオールは、結晶性が高くなり耐熱性に優れる傾向がある。以上の観点から、これらのポリカーボネートジオールは2種以上を組み合わせて用いるか、あるいは直鎖状脂肪族ジオール由来と脂環式ジオール由来の両方の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオールを用いることが好ましい。可撓性と耐熱性とをバランス良く発現させるには、直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールとの共重合割合が質量比で3:7〜7:3のポリカーボネートジオールを用いるのが好適である。
また、カーボネートジオール化合物の数平均分子量は5000以下であることが好ましい。数平均分子量が5000以下であれば相対的なウレタン結合の量を一定量維持できるため、静電放電保護体の作動電圧が上昇したり、耐高電圧性が低下したりすることを抑制することができる。
前記イソシアネート化合物の具体例としては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメチレンジイソシアネート、(o,mまたはp)−キシレンジイソシアネート、(o,mまたはp)−水添キシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジメチレレンジイソシアネート、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,9−ノナメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、2,2’−ジエチルエーテルジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジメチレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−メチレンジトリレン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、テトラクロロフェニレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートおよび1,5−ナフタレンジイソシアネート等のジイソシネートが挙げられる。これらのイソシアネート化合物は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらイソシアネート化合物の中でも脂環式ジアミンから誘導される脂環式ジイソシアネート、具体的には、イソホロンジイソシアネート或いは(o,mまたはp)−水添キシレンジイソシアネートが好ましい。これらのジイソシアネートを使用した場合、耐電性に優れた硬化物を得ることができる。
本発明に用いる熱硬化性ウレタン樹脂として、特に前記カルボキシル基含有熱硬化性ウレタン樹脂を得るには、例えば前記カーボネートジオール化合物および前記イソシアネート化合物とともにカルボキシル基を有するポリオールを反応させればよい。
カルボキシル基を有するポリオールとしては、特にカルボキシル基を有するジヒドロキシ脂肪族カルボン酸を使用することが好ましい。このようなジヒドロキシル化合物としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸が挙げられる。カルボキシル基を有するジヒドロキシ脂肪族カルボン酸を使用することによって、ウレタン樹脂中に容易にカルボキシル基を存在させることができる。
本発明に用いる熱硬化性ウレタン樹脂として、特に前記酸無水物基含有熱硬化性ウレタン樹脂を得るには、例えば前記カーボネートジオール化合物および前記イソシアネート化合物を、前記カーボネートジオール化合物中の水酸基数と前記イソシアネート化合物中のイソシアネート基数との比率が、イソシアネート基/水酸基=1.01以上になるようにして反応させて第2のジイソシアネート化合物を生成し、次いで得られた第2のジイソシアネート化合物と、酸無水物基を有するポリカルボン酸またはその誘導体とを反応させればよい。
前記酸無水物基を有するポリカルボン酸およびその誘導体としては、酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸及びその誘導体、並びに酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸を挙げることができる。
酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸及びその誘導体としては、特に限定されないが、例えば、下記式(2)及び下記式(3)で示される化合物を挙げることができる。
(式中、R′は、水素、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を示し、Y1は、−CH2−、−CO−、−SO2−、又は−O−である。)
R′で示される炭素数1〜10のアルキル基としては、その具体例としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル及びn−ドデシルが挙げられる。
酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸及びその誘導体としては、耐熱性、コスト面等から、トリメリット酸無水物が、特に好ましい。
また、前記ポリカルボン酸又はその誘導体の他に必要に応じて、テトラカルボン酸二無水物、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸を使用することができる。
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4′−スルホニルジフタル酸二無水物、m−タ−フェニル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、4,4′−オキシジフタル酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス〔4−(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス〔4−(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ−〔2,2,2〕−オクト−7−エン−2:3:5:6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オキシジ安息香酸等が挙げられる。
さらに、前記熱硬化性ウレタン樹脂を製造する際の末端封止剤としてモノヒドロキシル化合物を使用することが好ましい。モノヒドロキシル化合物は、分子中にヒドロキシル基を一つ有する化合物であればよく、脂肪族アルコール、モノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味し、以降同様である。
脂肪族アルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソブタノール等が挙げられ、モノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート化合物の例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート等が挙げられる。これらを使用することにより、熱硬化性ウレタン樹脂中にイソシアネート基が残存しないようにすることができる。
熱硬化性ウレタン樹脂には、さらに難燃性を付与するため、塩素、臭素等のハロゲンやリン等の原子がその構造中に導入されていてもよい。
前記カーボネートジオール化合物と前記イソシアネート化合物との反応における両者の配合割合は、前記酸無水物基含有熱硬化性ウレタン樹脂を得る場合を除き、好ましくは50:100〜150:100であり、さらに好ましくは80:100〜120:100である。
特にカルボキシル基含有熱硬化性ウレタン樹脂を得る場合、前記カーボネートジオール化合物および前記イソシアネート化合物とともにカルボキシル基を有するポリオールを反応させる際の配合割合は、カーボネートジオール化合物(a)、イソシアネート化合物(b)、カルボキシル基を有するポリオール(c)と表記すると、(a)+(c):(b)=50:100〜150:100であり、さらに好ましくは(a)+(c):(b)=80:100〜120:100である。
前記カーボネートジオール化合物を含むポリオール化合物と前記イソシアネート化合物との反応において用いることのできる溶媒としては、非含窒素系極性溶媒が好ましく、例えばエーテル系溶媒、含硫黄系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族炭化水素系等が挙げられる。
エーテル系溶媒としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテルが挙げられる。
含硫黄系溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランが挙げられる。
エステル系溶媒としては、γ−ブチロラクトン、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートが挙げられる。
ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノン、メチルエチルケトンが挙げられる。
芳香族炭化水素系溶媒としては、トルエン、キシレン、石油ナフサ等が挙げられる。
これらの溶媒は単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
これら溶媒の中でも、高揮発性であって、低温硬化性を付与できる溶媒が好ましく、例えばγ−ブチロラクトン、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等を挙げることができる。
前記カーボネートジオール化合物を含むポリオール化合物と前記イソシアネート化合物との反応温度は、好ましくは30〜180℃であり、さらに好ましくは50〜160℃である。30℃以上であれば反応効率がよく、180℃未満であればゲル化が抑制できる。
反応時間は、反応温度によるが、好ましくは2〜36時間であり、さらに好ましくは8〜16時間である。2時間未満の場合、期待する数平均分子量を得るために反応温度を上げても制御が難しい。また、36時間を超える場合は、実用的ではない。
前記の熱硬化性ウレタン樹脂の数平均分子量は500〜100,000であることが好ましく、8,000〜50,000が更に好ましい。ここで、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の値である。熱硬化性ウレタン樹脂の数平均分子量が500以上では、硬化膜の伸度、可撓性、並びに強度を損なうことがなく、また100,000以下であれば樹脂が硬くなることにより可撓性を低下させるおそれがない。
特にカルボキシル基含有熱硬化性ウレタン樹脂の酸価としては、5〜150mgKOH/gが好ましく、30〜120mgKOH/gが更に好ましい。酸価が5mgKOH/g以上であれば、硬化性成分との反応性が低下せず、期待する耐熱性や長期信頼性を得ることができる。酸価が150mgKOH/g以下であれば、可撓性が失われることなく、かつ長期絶縁特性等が低下されにくい。なお、樹脂の酸価はJISK5407に準拠して測定をした値である。
[チタネート系化合物(C)]
本発明において、チタネート系化合物(C)とは、金属粉末(A)を安定的に分散させるため、チタネート系加水分解性基と疎水性基とを両方含有する化合物のことをいう。
本発明で用いられるチタネート系化合物としては、金属チタンとアルコールとの反応などによって得られるテトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラステアリルチタネート、トリエタノールアミンチタネート、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、ジブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン、チタニウムエチルアセトアセテート、チタニウムイソポロポキシオクチレングリコレート、チタニウムラクテートなどのチタンのアルコキシド、およびイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネートなどのチタネート系カップリング剤などの有機チタン含有溶液などが挙げられるが、特に、下記一般式
(Z)kTi(X)l
(式中、Zは疎水基を表し、Xは加水分解性基を表し、kおよびlは1〜3の整数を表し、k+l=4である。)で表される化合物が好ましい。
Zで示される疎水基としては、下記式(4)及び式(5)で表される疎水基が挙げられる。
また、Xで示される加水分解性基としては、リン原子を含む有機官能基を有するものが挙げられ、前記有機官能基の具体例としては、下記一般式(6)で表される基が挙げられる。
(式中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
市販品としては、味の素ファインテクノ(株)製チタネート系カップリング剤「プレンアクト338X(ビスイソプロピルジ(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート)」、「プレンアクトKR38S(イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート)」、「プレンアクト238S」が挙げられ、これらは、放電ギャップ充填用組成物としたときの金属粉末(A)の沈降防止の効果が非常に高い。また、これらのチタネート系化合物は、耐電性を改善する傾向が見られる。
本発明の放電ギャップ充填用組成物中の金属粉末(A)とチタネート系化合物(C)との質量比は、金属粉末(A):チタネート系化合物(C)が、好ましくは100:0.1〜100:15、より好ましくは100:0.3〜100:8である。チタネート系化合物の質量比が前記割合未満であると、期待している金属粉末(A)の分散安定性が得られず、放電ギャップ充填用組成物としたときの金属粉末(A)の沈降防止の効果が発現しない。また、チタネート系化合物(C)の質量比が前記割合を超える場合は、放電ギャップ充填用組成物とした時にゲル化しやすくなる傾向がある。
[その他の成分]
本発明の放電ギャップ充填用組成物は、上述した金属粉末(A)、バインダー成分(B)、チタネート系化合物(C)の他、必要に応じて、硬化触媒、硬化促進剤、充填剤、溶剤、発泡剤、消泡剤、レベリング剤、滑剤、可塑剤、抗錆剤、粘度調整剤、着色剤等を含有することができる。また、シリカ粒子などの絶縁性粒子を含有することができる。
[放電ギャップ充填用組成物の製造方法]
本発明の放電ギャップ充填用組成物は、金属粉末(A)に対してチタネート系化合物(C)を均一に分散する目的で、金属粉末(A)とチタネート系化合物(C)および溶剤をあらかじめディスパー、ニーダー、3本ロールミル、ビーズミル、自転公転型撹拌機などを用いて分散、混合した後、その他の成分であるバインダー成分(B)、溶剤、充填剤、硬化触媒などを混合することが望ましい。金属粉末(A)とチタネート系化合物(C)の分散、混合の際は、相溶性を良好にするために充分な温度に加温してもよい。上記の分散、混合の後、必要に応じてさらに硬化促進剤を加えて混合して、調製することができる。
[静電放電保護体]
本発明の静電放電保護体は、少なくとも2つの電極と、前記2つの電極間に放電ギャップとを有する静電放電保護体であって、上述した放電ギャップ充填用組成物を前記放電ギャップに充填して形成される放電ギャップ充填部材を有することを特徴としている。
前記2つの電極は、一定の距離を置いて配置される。この2つの電極間の空間は放電ギャップとなる。前記放電ギャップ充填部材は、この放電ギャップに形成されている。つまり、前記2つの電極は放電ギャップ充填部材を介して連結されている。前記放電ギャップ充填部材は、上述した放電ギャップ充填用組成物により形成される。
本発明の静電放電保護体は、静電放電時にデバイスを保護するため、過電流をアースに逃すための保護回路として用いられる。
本発明の静電放電保護体は、上述した放電ギャップ充填用組成物を前記放電ギャップに充填して形成される放電ギャップ充填部材を有するので、通常作動時の絶縁性、作動電圧、耐高電圧性に優れる。すなわち、本発明の静電放電保護体は、通常作動時の低い電圧のときには、高い電気抵抗値を示し、電流をアースに逃がさずデバイスに供給することができる。一方、静電放電が生じたときには、即座に低い電気抵抗値を示し、過電流をアースに逃し、過電流がデバイスに供給されるのを阻止することができる。静電放電の過渡現象が解消したときには、高い電気抵抗値に戻り、電流をデバイスに供給することができる。
また、本発明の静電放電保護体は、2つの電極間の放電ギャップに、絶縁性のバインダー成分(B)を有する放電ギャップ充填用組成物を充填しているため、通常作動時に漏れ電流は発生しない。例えば、2つの電極間にDC10V以下の電圧を印加した場合の抵抗値を108Ω以上にすることが可能となり、静電放電保護を実現することができる。
本発明の静電放電保護体は、上述した放電ギャップ充填用組成物を用いて、次のようにして放電ギャップ充填部材を形成することによって製造することができる。
すなわち、まず上述した方法で放電ギャップ充填用組成物を調製する。該放電ギャップ充填用組成物を、放電ギャップとなる2つの電極間を覆うように、ポッティングまたはスクリーン印刷などの方法で塗布し、必要に応じて加熱して、固化または硬化させて放電ギャップ充填部材を形成する。
前記放電ギャップの幅は、1mm以下であることが好ましく、5μm以上1mm以下がより好ましく、5μm以上500μm以下であることがさらに好ましい。放電ギャップの幅が1mmを超える場合は、放電ギャップを形成する電極の幅を幅広く設置すると作動する場合もあるが、製品ごとの静電放電性能の不均一化が生じやすく、また静電放電保護体の小型化から逆行し好ましくない。また、5μm未満の場合も、電極自体がマイグレーションを生じて短絡するので好ましくない。ここで、放電ギャップの幅とは、電極間の最短距離を意味する。
静電放電保護体の好ましい電極の形状は、回路基板の状態に合わせて任意に設定できるが、小型化を考慮した場合、断面形状が矩形型の膜状で、例えば厚さ5〜200μmの形状を例示できる。
静電放電保護体の好ましい電極の幅は、5μm以上であり、電極幅が広いほど静電放電時のエネルギーが拡散できるために好適である。一方、静電放電保護体の電極の幅が5μm未満の尖状の場合、静電放電時のエネルギーが集中するために、静電放電保護体自体を含め周辺部材のダメージが大きくなるために好ましくない。
本発明の静電放電保護体は、前記放電ギャップ充填部材の表面に保護層が形成されていることが好ましい。
上述した放電ギャップ充填用組成物は、放電ギャップを設けた基材の材質によっては基材との密着性が不足気味であったり、静電放電が非常に高エネルギーであったりする場合や、金属粉末(A)の質量占有率が高い場合がある。
このような場合でも、本発明の静電放電保護体は、放電ギャップ充填部材を形成した後、この放電ギャップ充填部材を覆うように、後述する樹脂組成物等の保護層を設けると、より高電圧耐性が付与されて、優れた繰り返し耐性を維持することができる。
保護層として用いる樹脂としては、天然樹脂、変性樹脂またはオリゴマー合成樹脂等が挙げられる。
天然樹脂としてはロジンが代表的である。
変性樹脂としては、ロジン誘導体、ゴム誘導体等が挙げられる。
オリゴマー合成樹脂としては、シリコン樹脂等が挙げられ、静電放電保護体のポリシロキサン化合物と併用されるような、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、マレイン酸誘導体、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、イミド樹脂、アミック酸樹脂、イミド・アミド樹脂等が挙げられる。
また、保護層として樹脂組成物を用いることができる。前記樹脂組成物としては、その塗膜強度を保つために、熱または紫外線で硬化させることのできる硬化性樹脂を含むことが好ましい。
熱硬化性樹脂としては、カルボキシル基含有ウレタン樹脂、エポキシ化合物、あるいは酸無水物基、カルボキシル基、アルコール性基またはアミノ基を含有する化合物とエポキシ化合物との組み合わせ、カルボキシル基、アルコール性基またはアミノ基を含有する化合物とカルボジイミドを含有する化合物との組み合わせが挙げられる。
エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、N−グリシジル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、シリコン変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂等の、一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物が挙げられる。
また、難燃性付与のために、塩素、臭素等のハロゲンやリン等の原子がその構造中に導入されたエポキシ化合物を使用してもよい。さらに、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、ヘテロサイクリックエポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂及びテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂等を使用してもよい。
紫外線硬化性樹脂としては、エチレン性不飽和基を2個以上含む化合物であるアクリル系共重合体、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレ−ト樹脂が挙げられる。
保護層を形成する樹脂組成物は、必要に応じて、硬化促進剤、充填剤、溶剤、発泡剤、消泡剤、レベリング剤、滑剤、可塑剤、抗錆剤、粘度調整剤、着色剤等を含有することができる。
保護層の膜厚は、特に限定しないが、0.1μm〜1mmであることが好ましい。また、保護層は、放電ギャップ充填用組成物により形成した放電ギャップ充填部材を完全に覆うことが好ましい。保護層に欠損があると、静電放電時の高いエネルギーでクラックを発生させる可能性が高くなる。
図1は、本発明の静電放電保護体の一具体例である静電放電保護体11の縦断面図を表す。静電放電保護体11は、電極12A、電極12Bおよび放電ギャップ充填部材13から形成される。電極12Aおよび電極12Bは、その軸方向を一致させ、それぞれの先端面を向かい合わせるように配置されている。電極12Aおよび電極12Bの、向かい合った端面間には放電ギャップ14が形成されている。放電ギャップ充填部材13は、放電ギャップ14に形成され、さらに電極12Aの、電極12Bの先端面と向かい合っている方の先端部、および電極12Bの、電極12Aの先端面と向かい合っている方の先端部を上側から覆うように、これらの先端部に接して設けられている。放電ギャップ14の幅、すなわち互いに向かい合っている電極12Aと電極12Bとの先端面間の距離は、5μm以上1mm以下であることが好ましい。
図2は、本発明の静電放電保護体の他の具体例である静電放電保護体21の縦断面図を表す。静電放電保護体21は、電極22A、電極22Bおよび放電ギャップ充填部材23から形成される。電極22Aおよび電極22Bは、互いに平行に、それぞれの先端部が鉛直方向で重なるように対置されている。電極22Aおよび電極22Bが鉛直方向に重なっている部分には放電ギャップ24が形成されている。放電ギャップ充填部材23は、断面矩形状であり、放電ギャップ24に形成されている。放電ギャップ24の幅、すなわち電極22Aおよび電極22Bが鉛直方向に重なっている部分の電極22Aと電極22Bとの距離は、5μm以上1mm以下であることが好ましい。
図3は、本発明の静電放電保護体の一具体例である静電放電保護体31の縦断面図を表す。静電放電保護体31は、例えばポリイミドフィルムからなる基材上に形成され、電極32A、電極32B、放電ギャップ充填部材33及び保護層35から形成される。電極32Aおよび電極32Bは、その軸方向を一致させ、それぞれの先端面を向かい合わせるように配置されている。電極32Aおよび電極32Bの、向かい合った端面間には放電ギャップ34が形成されている。放電ギャップ充填部材33は、放電ギャップ34に形成され、さらに電極32Aの、電極32Bの先端面と向かい合っている方の先端部、および電極32Bの、電極32Aの先端面と向かい合っている方の先端部を上側から覆うように、これらの先端部に接して設けられている。放電ギャップ34の幅、すなわち互いに向かい合っている電極32Aと電極32Bとの先端面間の距離は、5μm以上1mm以下であることが好ましい。
図4は、静電放電保護体1(実施例1)のX線CT画像である。放電ギャップに薄片状の粒子が高密度に充填していることが示されている。
[用途]
本発明の電子回路基板は、上述した静電放電保護体を有する。したがって、本発明の電子回路基板は、静電気放電を受けても、静電気による破壊を受け難くなる傾向がある。
本発明の電子機器は、電子回路基板を有する。したがって、本発明の電子機器は、静電気放電を受けても、静電気による破壊を受け難くなる傾向がある。
次に本発明について実施例を示してさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
本実施例で得られた放電ギャップ充填用組成物および、静電放電保護体の各特性を以下のとおり評価した。
<放電ギャップ充填用組成物の分散安定性>
放電ギャップ充填用組成物を、100mL容の容器に充填、密封し、室温にて静置する。
静置から24時間以上経過してから、容器をのぞき、上澄みの有無を確認する。
次いで、スパーテルなどで容器の底に触れた時、堅い手ごたえのある沈殿物がある場合をハードケーキありと判定する。
(基準)
上澄み分離
A:上澄み分離が見られず、ハードケーキ(容器の底の堅い沈殿物)がない。
B:上澄み分離が見られるが、ハードケーキはない。
C:上澄み分離がないが、ハードケーキがある。
D:上澄み分離が見られ、ハ−ドケーキがある。
<作動電圧の評価方法>
半導体用静電気試験器ESS−6008(NOISE LABORATORY社製)を用い、得られた静電放電保護体に対して、最初に1kVの印加をして、200V刻みで印加電圧を上げて電流測定を行い、放電電流が流れた印加電圧を「作動電圧」として評価した。
<金属粉末(A)の調製例1>
一次粒子の形状が薄片状であるアルミニウム粒子(昭和アルミパウダー社製、商品名:2173、固形分65%)を77gとり、プロピレングリコールモノメチルエーテル450gに分散させ、次いでテトラエトキシシラン18.6gを加えた。この分散液にイオン交換水169gおよび25質量%アンモニア水を25g添加し12時間攪拌した。このアルミニウム粒子含有スラリーの液温を30℃に保持した。その後、前記アルミニウム粒子含有スラリーを濾過装置に供して、スラリーから残渣(テトラエトキシシランの加水分解生成物が付着したアルミニウム粒子)を濾紙上に分離した。次いで、濾紙上にプロピレングリコールモノメチルエーテルを供して、残渣を洗浄した。この洗浄操作を3回実施した。洗浄後、濾紙から残渣を採取し、残渣に含まれる溶剤を飛散させるために70℃に保持し、アルミニウム固形分が65質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルを含むペースト(以下「アルミニウム粒子含有ペースト1」と記す。)にした。
なお、アルミニウム固形分とは、アルミニウム粒子含有ペーストを150℃で1時間乾燥させて得られた加熱残分を指し、アルミニウム固形分の含有量(質量%)は、加熱残分の質量(残量)(X1)と、乾燥前のアルミニウム粒子含有ペーストの質量(X0)とを用いて、以下の数式に基づいて算出されたものである。
なお、70℃での溶剤の飛散操作は、アルミニウム固形分が65質量%になることを確認して終了とした。
<金属粉末(A)の調製例2>
一次粒子の形状が球状であるアルミニウム粒子(東洋アルミニウム社製、商品名:08−0076、平均粒径:2.5μm)を50g取り、プロピレングリコールモノメチルエーテル300gに分散させ、次いでテトラエトキシシラン7.4gを加えた。この分散液にイオン交換水150gおよび25質量%アンモニア水を32g添加し、12時間攪拌した。このアルミニウム粒子含有スラリーの液温を30℃に保持した。その後、前記アルミニウム粒子含有スラリーを濾過装置に供して、スラリーから残渣(テトラエトキシシランの加水分解生成物が付着したアルミニウム粒子)を濾紙上に分離した。次いで、濾紙上にプロピレングリコールモノメチルエーテルを供して、残渣を洗浄した。この洗浄操作を3回実施した。洗浄後、濾紙から残渣を採取し、残渣に含まれる溶剤を飛散させるために70℃に保持し、アルミニウム固形分が80質量%になるまで溶剤を飛散させ、プロピレングリコールモノメチルエーテルを含むアルミニウム粒子含有ペースト(以下「アルミニウム粒子含有ペースト2」と記す。)を得た。なお、アルミニウム固形分の定義と算出方法は調製例1と同様である。
<バインダー成分(B)の合成例1>
バインダー成分(B)として、熱硬化性ウレタン樹脂1を以下のように合成した。
攪拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、ポリカーボネートジオールとしてC−1015N(株式会社クラレ製ポリカーボネートジオール、原料ジオールモル比:1,9−ノナンジオール:2−メチル−1,8−オクタンジオール=15:85、分子量964)718.2g、カルボキシル基を有するジヒドロキシル化合物として2,2−ジメチロールブタン酸(日本化成株式会社製)136.6g、溶媒としてジエチレングリコールエチルエーテルアセテート(ダイセル化学株式会社製)1293gを仕込み、90℃ですべての原料を溶解した。
この原料を溶解した液の温度を70℃まで下げ、滴下ロートにより、ポリイソシアネートとしてメチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)(住化バイエルウレタン(株)製、商品名「デスモジュール−W」)237.5gを30分かけて滴下した。
滴下終了後、80℃で1時間、90℃で1時間、100℃で1.5時間反応を行い、ほぼイソシアネートが消失したことを確認した後、イソブタノール(和光純薬株式会社製)2.13gを滴下し、更に105℃にて1時間反応を行った。室温まで冷却した後、γ−ブチロラクトンを加えて固形分45質量%になるように希釈して、熱硬化性カルボキシル基含有ウレタン樹脂(以下「熱硬化性ウレタン樹脂1」と記す。)を得た。
得られた熱硬化性ウレタン樹脂1の数平均分子量は6090、固形分酸価は40.0mgKOH/gであった。
[実施例1]
<放電ギャップ充填用組成物の調製および評価>
金属粒子(A)として、調製例1で調製したアルミニウム粒子含有ペースト1(固形分65質量%) 15.4g、チタネート系化合物(C)として、チタネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ製:プレンアクト338X(ビスイソプロピルジ(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート))0.5g、および溶剤としてトリアセチン(和光純薬工業製)20gを加えてホモジナイザーを用いて2000rpmで15分間攪拌した。次いで、バインダー(B)として合成例1で調製した熱硬化性ウレタン樹脂1(固形分45質量%)11.1gと硬化剤としてエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製:JER604)1.0gとを加え、さらに2000rpmで15分間撹拌して放電ギャップ充填用組成物1を得た。得られた放電ギャップ充填用組成物1について、分散安定性を前記方法で評価した。結果を表1に示す。
<静電放電保護体の作製および評価>
図3に示すような静電放電保護体を以下のとおり作製した。
膜厚25μmのポリイミドフィルム上に一対の電極パターン(膜厚12μm、放電ギャップの幅500μm、電極幅1mm)を形成した配線基板に、前記放電ギャップ充填用組成物1を、針先が直径2mmで平坦なニードルを用いて塗布し、電極パターンに跨って放電ギャップに充填した。その後、150℃の恒温器内で1時間熱硬化して放電ギャップ充填部材を形成した。その後、シリコン樹脂(X14−B2334:モーメンティブ社製)を前述の放電ギャップ充填部材を完全に覆うように塗布し、150℃の恒温器内で1時間硬化して保護層を形成し、静電放電保護体1を得た。得られた静電放電保護体1について、作動電圧を前記方法で評価した。結果を表1に示す。
[実施例2]
金属粒子(A)としてアルミニウム粒子含有ペースト2(固形分80質量%) 12.5g、溶剤としてトリアセチン 12.0gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして放電ギャップ充填用組成物2を調製し、特性を評価した。また、放電ギャップ充填用組成物2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、静電放電保護体2を作製し、静電放電保護体の特性を測定した。
[実施例3]
金属粒子(A)として調製例1で調製したアルミニウム粒子含有ペースト1(固形分65質量%) 15.4g、チタネート系化合物(味の素ファインテクノ製:プレンアクトKR38S(イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート))1.0g、溶剤としてトリアセチン(和光純薬工業製)23.0g、バインダー(B)として合成例1で調製した熱硬化性ウレタン樹脂1(固形分45質量%)11.1gおよび硬化剤としてエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製:JER604)1.0gを加えホモジナイザーを用いて2000rpmで15分間攪拌して放電ギャップ充填用組成物3を得た。得られた放電ギャップ充填用組成物3について、実施例1と同様にして特性を評価した。また、放電ギャップ充填用組成物3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、静電放電保護体3を作製し、静電放電保護体の特性を測定した。
[実施例4]
溶剤としてガンマーブチロラクトン 8g、バインダー成分(B)としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学製、jER 1009、エポキシ当量 2720)6gおよびエポキシ樹脂硬化剤として2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール(四国化成製、商品名TBZ)0.5g、を用いたこと以外は、実施例1と同様にして放電ギャップ充填用組成物4を調製し、特性を評価した。また、放電ギャップ充填用組成物4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、静電放電保護体4を作製し、静電放電保護体の特性を測定した。
[実施例5]
金属粒子(A)としてアルミニウム粒子(東洋アルミニウム社製、商品名:08−0076、平均粒径:2.5μm、固形分:100%)10g、溶剤としてトリアセチン7gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして放電ギャップ充填用組成物5を調製し、特性を評価した。また、放電ギャップ充填用組成物5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、静電放電保護体5を作製し、静電放電保護体の特性を測定した。
[比較例1]
溶剤としてトリアセチン 28g、およびチタネート系化合物を用いなかったこと以外は、実施例4と同様にして放電ギャップ充填用組成物6を調製し、特性を評価した。また、放電ギャップ充填用組成物6を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、静電放電保護体6を作製し、静電放電保護体の特性を測定した。
[比較例2]
チタネート系化合物を用いなかったこと以外は、実施例2と同様にして放電ギャップ充填用組成物7を調製し、特性を評価した。また、放電ギャップ充填用組成物7を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、静電放電保護体7を作製し、静電放電保護体の特性を測定した。
[比較例3]
チタネート系化合物の代わりにシランカップリング剤(信越化学工業(株)製:信越シリコンKBM−503)1.0gを用いたこと以外は、実施例3と同様にして、放電ギャップ充填用組成物8を調製し、特性を評価した。また、放電ギャップ充填用組成物8を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、静電放電保護体8を作製し、静電放電保護体の特性を測定した。
表1の結果から分かるように、作動電圧に関しては、静電放電保護体が実施例1〜5および比較例1〜3の何れの放電ギャップ充填用組成物を用いて作製された場合も、効果を示した。
しかしながら、放電ギャップ充填用組成物の分散安定性に関しては、チタネート系化合物を加えた場合(実施例1〜5)は、チタネート系化合物を加えない場合(比較例1〜2)およびチタネート系化合物以外のカップリング剤を添加した場合(比較例3)に比べて、きわめて良好であった。比較例1の場合、チタネート系化合物を用いないと、金属粉末が分散できなかったため、溶剤を増やす必要があったが、放電ギャップ充填用組成物としての固形分と粘度が下がったことで、短時間で上澄み液が分離した。比較例2の場合、最表面層に透明な上澄み液があるとともに容器の底に堅い沈殿物ができた。比較例3の場合、溶剤を増やさなくても金属粉末が分散できたが、上澄み液が分離した。
すなわち、放電ギャップ充填用組成物を調製するにあたって、金属粉末(A)とバインダー成分(B)のほかにチタネート系化合物(C)を加えると良好な分散安定性が得られることがわかる。
金属粉末(A)、バインダー成分(B)およびチタネート系化合物(C)を含む放電ギャップ充填用組成物を用いることにより、分散安定性が良好で、放電時の作動性に優れ、小型化、低コスト化の可能な静電放電保護体が得られる。
11・・・静電放電保護体
12A・・電極
12B・・電極
13・・・放電ギャップ充填部材
14・・・放電ギャップ
21・・・静電放電保護体
22A・・電極
22B・・電極
23・・・放電ギャップ充填部材
24・・・放電ギャップ
31・・・静電放電保護体
32A・・電極
32B・・電極
33・・・放電ギャップ充填部材
34・・・放電ギャップ
35・・・保護層

Claims (14)

  1. 金属粉末(A)、バインダー成分(B)およびチタネート系化合物(C)を含む放電ギャップ充填用組成物。
  2. 前記チタネート系化合物(C)がリン原子を含む有機官能基を有することを特徴とする請求項1に記載の放電ギャップ充填用組成物。
  3. 前記有機官能基が下記一般式(6)で示される基を含むことを特徴とする請求項2に記載の放電ギャップ充填用組成物。
    (式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
  4. 前記金属粉末(A)が、マンガン、ニオブ、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、モリブデン、バナジウム、ニッケル、コバルト、クロム、マグネシウム、タングステン、チタンまたはアルミニウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の放電ギャップ充填用組成物。
  5. 前記金属粉末(A)が酸化被膜を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の放電ギャップ充填用組成物。
  6. 前記金属粉末(A)の表面に、下記一般式(1)で表される金属アルコキシドの加水分解生成物が付着していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の放電ギャップ充填用組成物。
    (式中、R1〜R4は独立して炭素数1〜20のアルキル基を表し、Mは金属原子を表し、nは1〜40の整数を表す。)
  7. 前記一般式(1)におけるMで示される金属原子が、ケイ素、チタン、タンタル、ジルコニウムまたはハフニウムであることを特徴とする請求項6に記載の放電ギャップ充填用組成物。
  8. 前記バインダー成分(B)が、熱硬化性化合物または活性エネルギー線硬化性化合物を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の放電ギャップ充填用組成物。
  9. 前記バインダー成分(B)が、熱硬化性ウレタン樹脂またはエポキシ化合物を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の放電ギャップ充填用組成物。
  10. 少なくとも2つの電極と、前記2つの電極間に放電ギャップとを有する静電放電保護体であって、請求項1〜9のいずれか一項に記載の放電ギャップ充填用組成物を前記放電ギャップに充填して形成される放電ギャップ充填部材を有することを特徴とする静電放電保護体。
  11. 前記放電ギャップの幅が5μm以上1mm以下であることを特徴とする請求項10に記載の静電放電保護体。
  12. 前記放電ギャップ充填部材の表面に保護層が形成されていることを特徴とする請求項11に記載の静電放電保護体。
  13. 請求項11または12に記載の静電放電保護体を有する電子回路基板。
  14. 請求項13に記載の電子回路基板を有する電子機器。
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CN104600568A (zh) * 2015-02-12 2015-05-06 苏州晶讯科技股份有限公司 一种陶瓷静电抑制器及其制备方法

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