JP2014182887A - バイオ燃料電池用酵素組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】食料としては利用されない燃料を利用することが可能であり、且つ、イミダゾール環を有する化合物のような緩衝能の高い物質の存在下でも安定に機能する酵素をバイオ燃料電池に利用すること。
【解決手段】配列番号1又は2のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、且つ、イミダゾール環を有する物質の存在下で安定であるアルドヘキソースデヒドロゲナーゼを含有する、バイオ燃料電池用組成物。
【選択図】なし
【解決手段】配列番号1又は2のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、且つ、イミダゾール環を有する物質の存在下で安定であるアルドヘキソースデヒドロゲナーゼを含有する、バイオ燃料電池用組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、バイオ燃料電池用酵素組成物等に関する。より具体的に、本発明は、バイオ燃料電池の電極への使用に適した酵素組成物、前記酵素組成物が使用された電極、及び前記電極を含むバイオ燃料電池等に関する。
バイオ燃料電池は、電極において使用される触媒として生体触媒(即ち、酵素)を利用した燃料電池である。バイオ燃料電池は、通常、正極、負極、電解質、及びセパレーターを備える。典型的に、負極で燃料(例えば、糖)が分解され、水素イオン及び電子が発生する。水素イオンは、電解質に媒介され、セパレーターを通って、正極側へと移動する。電子は、電子伝達物質(メディエーター)を介して負極に到達し、電子回路を通って正極へと流れる。正極では、典型的に、負極からの水素及び電子と空気中の酸素とを反応させ、水が生成される。バイオ燃料電池では、このような一連の反応によって生じる電子の流れによって、電気エネルギーが創出され、上記の通り、正極及び負極における化学反応の触媒として酵素が用いられる点で、燃料電池と基本的に異なる。
上記のように、バイオ燃料電池は、燃料の持つ化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換するため、エネルギー変換効率が高い発電装置である。また、バイオ燃料電池は、石油等の化石燃料を必要としないため、それを必要とする他の発電技術と比較して環境への負荷が低いと考えられる。これらの観点から、バイオ燃料電池の更なる実用化及びその拡大に対する期待は大きい。
バイオ燃料電池の実用性を更に高めるために、より効率的にエネルギーを創出することが求められている。それを実現するために、種々の試みが成されている。例えば、高濃度の酵素が負極に使用される場合、負極周辺での緩衝能の低下が問題となり得るところ、十分な緩衝能を提供できる電解質として、イミダゾール環を含む化合物を使用することが提案されている(特許文献1)。しかしながら、バイオ燃料電池技術には、更なる改善の余地が存在する。
上記のような現状の下、本発明者等は、バイオ燃料電池の更なる実用化に向けて鋭意検討を重ねたところ、特許文献1に開示されるような、イミダゾール環を含む化合物の使用は、優れた緩衝能を有するという点で優れているものの、そのような化合物の存在下において、酵素は必ずしも安定に機能しないことに気付いた。また、バイオ燃料電池の燃料には、主に、グルコースやエタノール等が用いられているところ、これらの物質は食料としても利用できるため、コスト削減の観点及び食糧危機への対応を考慮した場合に必ずしも望ましくない。これらの事情を踏まえ、本発明者等は、食料としては利用されない燃料を利用することが可能であり、且つ、イミダゾール環を有する化合物のような緩衝能の高い物質の存在下でも安定に機能する酵素をバイオ燃料電池に利用することを一つの目的とした。
上記のような課題を解決すべく、本発明者等は、日夜研究を重ね、食料としての利用価値が低いD−マンノースに対する基質特異性がグルコースに対するよりも高く、且つ、イミダゾール環を有する化合物の存在下でも安定であるアルドヘキソースデヒドロゲナーゼを見出し、それがバイオ燃料電池への使用に特に適していることを確認した。本発明者等は、斯かる知見に基づき、更なる検討と改良を重ね、本発明を完成するに至った。
代表的な本発明は、以下の通りである。
項1.
配列番号1又は2のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、且つ、イミダゾール環を有する物質の存在下でD−マンノース脱水素活性を有するアルドヘキソースデヒドロゲナーゼを含む、バイオ燃料電池用組成物。
項2.
アルドヘキソースデヒドロゲナーゼが、更に下記(A)〜(C)から成る群より選択される1つ以上の特性を備える、項1に記載のバイオ燃料電池用組成物。
(A)D−マンノースに対するKm値が、D−グルコースに対するKm値よりも小さい
(B)70℃以下の温度で安定である
(C)少なくともpH7〜11の範囲で安定である
項3.
バイオ燃料電池が、正極と負極との間に、イミダゾール環を有する化合物を0.5M以上の濃度で含む、項1又は2に記載のバイオ燃料電池用組成物。
項4.
項1又は2に記載のバイオ燃料電池用組成物を含む負極を有し、正極と負極との間にイミダゾール環を有する化合物を0.5M以上の濃度で含む、バイオ燃料電池。
項1.
配列番号1又は2のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、且つ、イミダゾール環を有する物質の存在下でD−マンノース脱水素活性を有するアルドヘキソースデヒドロゲナーゼを含む、バイオ燃料電池用組成物。
項2.
アルドヘキソースデヒドロゲナーゼが、更に下記(A)〜(C)から成る群より選択される1つ以上の特性を備える、項1に記載のバイオ燃料電池用組成物。
(A)D−マンノースに対するKm値が、D−グルコースに対するKm値よりも小さい
(B)70℃以下の温度で安定である
(C)少なくともpH7〜11の範囲で安定である
項3.
バイオ燃料電池が、正極と負極との間に、イミダゾール環を有する化合物を0.5M以上の濃度で含む、項1又は2に記載のバイオ燃料電池用組成物。
項4.
項1又は2に記載のバイオ燃料電池用組成物を含む負極を有し、正極と負極との間にイミダゾール環を有する化合物を0.5M以上の濃度で含む、バイオ燃料電池。
本発明によれば、イミダゾール環を有する化合物の存在下でもD−マンノース脱水素活性を有するアルドヘキソースデヒドロゲナーゼを含む組成物が提供される。この組成物を利用することにより、イミダゾール環を有する化合物による優れた緩衝能を利用しながら、効率的に、電気エネルギーを創出することが可能となる。また、前記組成物を利用することにより、D−マンノース等の食料価値の低い燃料から電気エネルギーを提供することが可能となるため、バイオ燃料電池の利用コストの低減を可能にする。
1.バイオ燃料電池用組成物
バイオ燃料電池用組成物は、配列番号1又は2のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、且つ、イミダゾール環を有する物質の存在下でD−マンノース脱水素活性を有するアルドヘキソースデヒドロゲナーゼを含むことが好ましい。本書では、アルドヘキソースデヒドロゲナーゼを「AHDH」と称する場合がある。
バイオ燃料電池用組成物は、配列番号1又は2のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、且つ、イミダゾール環を有する物質の存在下でD−マンノース脱水素活性を有するアルドヘキソースデヒドロゲナーゼを含むことが好ましい。本書では、アルドヘキソースデヒドロゲナーゼを「AHDH」と称する場合がある。
「イミダゾール環を有する化合物の存在下」とは、0.1M以上のイミダゾール環を有する化合物と接触する状態を意味し、例えば、AHDHが、イミダゾール環を有する化合物を0.1M以上含む水溶液中に存在していることを意味する。AHDHが存在する環境中のイミダゾール環を有する化合物の濃度は、0.1M以上である限り特に制限されないが、より高い緩衝能を得るという観点から、好ましくは0.5M以上、より好ましくは1M以上である。イミダゾール環を有する物質の濃度の上限は、AHDHが有するD−マンノース脱水素活性が維持される限り、特に制限されないが、例えば、3M以下であり、好ましくは2.5M以下に設定することができる。これらの濃度でイミンゾール環を有する化合物が存在することにより、バイオ燃料電子の電極の表面、周囲、又は内部(電極が多孔質の場合)でプロトン濃度の増減が生じても、十分な緩衝作用を得ることができるため、電極上の酵素の周囲のpHが酵素の至適pHからずれることを抑制し、酵素が本来持っている能力を十分に発揮することが可能となる。
イミダゾール環を有する化合物は、イミダゾール環を有し、水溶液中で緩衝能を示す限り特に制限されないが、例えば、イミダゾール、及びトリアゾール、並びにピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、及びイミダゾール誘導体等の誘導体を挙げることができる。前記誘導体としては、例えば、ヒスチジン、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、イミダゾール−2−カルボン酸エチル、イミダゾール−2−カルボキシアルデヒド、イミダゾール−4−カルボン酸、イミダゾール−4,5−ジカルボン酸、イミダゾール−1−イル−酢酸、2−アセチルベンズイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、N−アセチルイミダゾール、2−アミノベンズイミダゾール、N−(3−アミノプロピル) イミダゾール、5−アミノ−2−(トリフルオロメチル) ベンズイミダゾール、4−アザベンズイミダゾール、4−アザ−2−メルカプトベンズイミダゾール、ベンズイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール等を挙げることができる。好ましいイミダゾール環を有する化合物は、イミダゾールである。
D−マンノース脱水素活性は、下記の手順で測定することができる。
<試薬>
(1)100mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)
(2)80mg/mL NAD+水溶液
(3)1.5M D−マンノース水溶液
(4)酵素希釈溶液 0.1%TritonXと0.3M NaClを含む20mM リン酸カリウム緩衝液pH7.0
<試薬>
(1)100mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)
(2)80mg/mL NAD+水溶液
(3)1.5M D−マンノース水溶液
(4)酵素希釈溶液 0.1%TritonXと0.3M NaClを含む20mM リン酸カリウム緩衝液pH7.0
<手順1>
AHDH溶液を、予め氷冷した酵素希釈溶液(4)で0.8〜1.2U/mLに希釈し、氷冷保存して酵素溶液を準備する。また、2.6mLのTris−HCl緩衝液(1)、0.1mLのNAD+水溶液(2)、及び0.3mLのD−マンノース水溶液(3)を混合し、37℃にて5分間予備加温して、反応液を準備する。
AHDH溶液を、予め氷冷した酵素希釈溶液(4)で0.8〜1.2U/mLに希釈し、氷冷保存して酵素溶液を準備する。また、2.6mLのTris−HCl緩衝液(1)、0.1mLのNAD+水溶液(2)、及び0.3mLのD−マンノース水溶液(3)を混合し、37℃にて5分間予備加温して、反応液を準備する。
<手順2>
反応液3.0mLに、酵素溶液0.05mLを添加し、緩やかに混和した後、水を対照に37℃に制御された分光光度計(光路長1.0cm)で、340nmの吸光度を2〜3分間測定する。時間(分)をX軸、吸光度をY軸として吸光度の変化をプロットし、変化が直線に達した時点(即ち、反応速度が一定になった時点)から1分間あたりの吸光度変化(ΔODTEST)を測定する。盲検は酵素溶液の代わりに酵素希釈溶液を0.05mL加えて同様に1分間あたりの吸光度変化(ΔODBLANK)を測定する。これらの値から下記の式に従ってAHDH活性を求める。ここでAHDH活性における1単位(U)とは、上記の測定条件で1分間にNADHを生成する酵素量である。
反応液3.0mLに、酵素溶液0.05mLを添加し、緩やかに混和した後、水を対照に37℃に制御された分光光度計(光路長1.0cm)で、340nmの吸光度を2〜3分間測定する。時間(分)をX軸、吸光度をY軸として吸光度の変化をプロットし、変化が直線に達した時点(即ち、反応速度が一定になった時点)から1分間あたりの吸光度変化(ΔODTEST)を測定する。盲検は酵素溶液の代わりに酵素希釈溶液を0.05mL加えて同様に1分間あたりの吸光度変化(ΔODBLANK)を測定する。これらの値から下記の式に従ってAHDH活性を求める。ここでAHDH活性における1単位(U)とは、上記の測定条件で1分間にNADHを生成する酵素量である。
(U/mL)=[(ΔODTEST−ΔODBLANK)×3.05×希釈倍率]
/(6.22×1.0×0.05)
上記の式において各数値は、以下を意味する。
3.05:AHDH溶液混和後の容量(mL)
6.22:NADHのミリモル分子吸光係数(cm2/マイクロモル)
1.0:光路長(cm)
0.05:添加するAHDH溶液の液量(mL)
/(6.22×1.0×0.05)
上記の式において各数値は、以下を意味する。
3.05:AHDH溶液混和後の容量(mL)
6.22:NADHのミリモル分子吸光係数(cm2/マイクロモル)
1.0:光路長(cm)
0.05:添加するAHDH溶液の液量(mL)
AHDHのタンパク質量(質量)当たりの活性(U/mg:比活性)は、上記の式におけるml溶液中に存在するAHDHのタンパク質量を測定することにより求めることができる。タンパク質量は、任意の手法で測定することができるが、例えば、A280nmの吸光度又はバイオラッド社のタンパク質定量試薬(商品名:バイオラッドプロテインアッセイ濃縮色素試薬)等を用いて測定することができる。AHDHが固体でAHDH以外の成分を含むと思われる場合は、適当な溶液に溶解してタンパク質量を求め、比活性を求めることが出来る。
イミダゾール環を有する化合物の存在下でのD−マンノース脱水素活性の測定は、上記の測定方法において、試薬(1)のTris−HClを、イミダゾール環を有する化合物に置き換えて行うことが出来る。イミダゾール環を有する化合物以外の他の緩衝物質の存在による影響を調べる場合も同様に行うことができる。D−マンノース以外の糖(例えば、D−グルコース、2−デオキシ−D−グルコース、及びD−キシロース)に対する脱水素活性の測定は、D−マンノースを他の糖に置き換えることにより行うことができる。
イミダゾール環を有する物質の存在下でAHDHが有するD−マンノース脱水素活性は、特に制限されないが、補酵素としてニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を用いた場合に、好ましくは5U/mg以上であり、より好ましくは10U/mg以上、更に好ましくは12U/mg以上である。D−マンノース脱水素活性の上限は、特に制限されないが、例えば、50U/mg以下、40U/mg、又は30U/mgと設定することができる。イミダゾール環を有する化合物の存在下で、この範囲の活性を有することにより、AHDHは、バイオ燃料電池における負極用の酵素として好適で用いられる。
AHDHのD−マンノース脱水素活性についてのKm値は、NADを補酵素とした場合に、好ましくは100mM以下であり、より好ましくは50mM以下である。上記Km値の下限は、特に制限されないが、例えば、20mM以上、好ましくは30mM以上、より好ましくは40mM以上に設定することができる。D−グルコースよりも積極的にD−マンノースを基質として利用させるという観点から、D−マンノースを基質とした場合のKm値は、D−グルコースを基質とした場合のKm値よりも低いことが好ましい。
AHDHは、少なくとも70℃以下(0〜70℃)の温度範囲において安定であることが好ましい。ここで、特定の温度条件の下で安定であるとは、特定の温度に設定した適当な緩衝液(例えば、リン酸カリウムバッファー,pH7.0)中に1mg/mLの精製酵素を15分間維持した後の残存活性が、処理前の活性と比較して80%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上であることを意味する。ここで、活性とは、D−マンノース脱水素活性を意味する。
AHDHは、少なくともpH7〜11の範囲で安定であることが好ましい。本書において、特定のpH条件の下で安定であるとは、0.5mg/mLの酵素を25℃で19時間処理した後の残存酵素活性が、処理前の酵素活性と比較して80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、特に好ましくは実質的に100%維持されていることを意味する。
AHDHは、D−マンノース以外に、2−デオキシ−D−グルコース及び/又はキシロース等の食料としての価値の低い糖に対する基質特異性が、D−グルコースに対する基質特異性よりも高いことが好ましい。このような性質を備えることにより、食料価値の低い燃料から電気エネルギーを供給することが可能になるためである。
配列番号1のアミノ酸配列は、サーモプラズマ アシッドフィラム(以下「Ta」と称する場合もある)由来のAHDHのアミノ酸配列である。配列番号2のアミノ酸配列は、サーモプラズマ ボルカニウム(以下、「Tv」と称する場合もある)由来のAHDHのアミノ酸配列である。これらのAHDHは、いずれもイミダゾール環を有する化合物の存在下でD−マンノース脱水素活性を有し、上記のD−マンノースに対する好ましいKm値、好ましい熱安定性、好ましいpH安定性、及び好ましい基質特異性といった特性を満たす。
AHDHは、配列番号1又は2のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有し、且つ、イミダゾール環を有する物質の存在下でD−マンノース脱水素活性を有することが好ましい。配列番号1又は2のアミノ酸配列との同一性は、好ましくは95%以上であり、より好ましくは98%以上、更に好ましくは99%以上である。
アミノ酸配列の同一性は、市販の又は電気通信回線(インターネット)を通じて利用可能な解析ツールを用いて算出することができる。例えば、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムBLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)においてデフォルト(初期設定)のパラメータを用いて、算出することができる。
配列番号1又は2のアミノ酸配列と一定以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドは、任意の手法で得ることが出来る。例えば、配列番号1及び2のアミノ酸配列と同一性が90%以上であるアミノ酸配列を設計し、化学合成法によってその配列を有するポリペプチドを合成することができる。また、配列番号1又2のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドから公知の遺伝子工学的手法を利用して得ることもできる。配列番号1及び2のアミノ酸配列をコードする塩基配列を各々配列番号3及び4に示す。
配列番号1又は2のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するポリペプチドには、イミダゾール環を有する物質の存在下でD−マンノース脱水素活性を有さないものも含まれ得るが、そのようなポリペプチドは、上述する活性測定方法に従って確認することにより、容易に排除することができる。
配列番号1又は2のアミノ酸配列を90%以上の同一性を有するポリペプチドからなるAHDHは、配列番号1と2とに共通する配列部分について保存されていることが好ましい。例えば、配列番号1のアミノ酸配列における次の位置のアミノ酸が保存されていることが好ましい:6位〜8位、10位〜13位、15位、17位〜19位、21位、27位、30位、32位、33位、37位、48位、49位、53位〜56位、60位、61位、69位、71位、72位、74位、77位〜84位、86位、97位〜104位、107位、109位、113位、116位、117位、119位、126位、127位、129位、130位、132位〜134位、139位〜142位、144位〜151位、154位〜156位、158位、160位、162位〜165位、168位〜174位、176位、177位、179位、180位、182位、184位〜186位、189位、200位、201位、203位〜205位、208位〜210位、212位〜214位、216位、218位〜220位、223位〜228位、231位〜236位、238位、239位、241位〜245位、及び250位〜254位。
AHDHは、任意の微生物から単離して取得することも可能である。そのような微生物としては、例えば、超好熱性始原菌を挙げることができる。好ましい超好熱性始原菌としては、例えば、パイロディクティム(Pyrodictim)属、スルフォロバス(Sulfolobus)属、デスルフロコッカス(Desulfurococcus)属、サーモプロテウス(Thermoproteus)属、サーモフィラム(Thermofilum)属、及びサーモプラズマ(Thermoplasma)属などが挙げることができる。より好ましい微生物は、サーモプラズマ属に分類される微生物であり、具体的には、サーモプラズマ アシッドフィラム及びサーモプラズマ ボルカニウムを挙げることができる。
微生物からのAHDHの単離は、公知の技術を適宜組み合わせて実施することが出来る。例えば、微生物を適当な培養条件で培養し、培養上清を濾過及び/又は遠心することによって、不溶物を除去し、限外ろ過膜を用いた濃縮、硫安沈殿等の塩析、透析、及び/又は各種クロマトグラフィーなどを適宜組み合わせて実施することができる。
バイオ燃料電池用組成物は、AHDHのみを含んでいても良いが、AHDHのD−マンノース脱水素活性を阻害しない限り、任意の他の物質を含み得る。例えば、当該組成物は、AHDHの保存に適した任意の保存溶液(例えば、緩衝液)中にAHDHを含んでいても良い。また、当該組成物は、NADやNADP等の補酵素を含んでいても良い。更に、当該組成物は電子伝達物質を含み得る。電子伝達物質としては、特に制限されないが、例えば、2−アミノ−1,4−ナフトキノン(ANQ)、2−アミノ−3−メチル−1,4−ナフトキノン(AMNQ)、2−アミノ−3−カルボキシ−1,4−ナフトキノン(ACNQ)、2,3−ジアミノ−1,4−ナフトキノン、4−アミノ−1,2−ナフトキノン、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、2−メチル−3−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、ビタミンK1(2−メチル−3−フィチル−1,4−ナフトキノン)、ビタミンK2(2−ファルネシル−3−メチル−1,4−ナフトキノン)、ビタミンK3(2−メチル,1,4−ナフトヒドロキノン)等を挙げることができる。また、アントラキノン−1−スルホネート、アントラキノン−2−スルホネート等のアントラキノン骨格を有する化合物やその誘導体を用いることもできる。
バイオ燃料電池用組成物は、種々の形態をとり得る。例えば、バイオ燃料電池用組成物は、凍結乾燥粉末形態や液状形態であり得る。バイオ燃料電池用組成物が液体組成物である場合、当該組成物に含まれるAHDHの量は特に制限されないが、例えば、1〜100mg/mlであり、好ましくは10〜50mg/mlである。
2.バイオ燃料電池
バイオ燃料電池は、典型的に、正極、負極、及びこれらの間の電解液、及びセパレーターを備える。バイオ燃料電池は、負極に上述のAHDHを有する限りに任意の構成を取り得るが、更に0.1M以上のイミダゾール環を有する化合物を含む電解液を備えることが好ましい。
バイオ燃料電池は、典型的に、正極、負極、及びこれらの間の電解液、及びセパレーターを備える。バイオ燃料電池は、負極に上述のAHDHを有する限りに任意の構成を取り得るが、更に0.1M以上のイミダゾール環を有する化合物を含む電解液を備えることが好ましい。
正極及び負極は、電極に適した任意の素材によって構成され得る。例えば、電極は、多孔質カーボン、カーボンペレット、カーボンペーパー、カーボンフェルト、導電性カーボンブラック(例えば、ケッチェンブラック(Ketjen Black))、炭素繊維又は炭素微粒子の積層体等のカーボン系材料、並びに、金及び白金等の金属から構成され得る。酵素を積載するという観点から、好ましくは多孔質カーボンである。
負極には、上述するAHDHが存在することが好ましい。負極には、AHDHに加えて任意の他の酵素が存在しても良い。他の酵素は、燃料に選択する物質に応じて適宜選択することができ、例えば、グルコースデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドレダクターゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼ、ヒドロキシパルベートレダクターゼ、グリセレートデヒドロゲナーゼ、フォルメートデヒドロゲナーゼ、フルクトースデヒドロゲナーゼ、ガラクトースデヒドロゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、グリセルアルデヒドー3リン酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、スクロースデヒドロゲナーゼ、フルクトースデヒドロゲナーゼ、ソルボースデヒドロゲナーゼ、ピルベートデヒドロゲナーゼ、イソシレートデヒドロゲナーゼ、2−オキソグルタレートデヒドロゲナーゼ、スクシネートデヒドロゲナーゼ、マレートデヒドロゲナーゼ、アシルーCoAデヒドロゲナーゼ、L−3−ヒドロキシアシルーCoAデヒドロゲナーゼ、3−ヒドロキシプロピオネートデヒドロゲナーゼ、3−ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼ、NADHデヒドロゲナーゼ等から成る群より1種以上を選択することができる。
負極には、AHDH等の酵素に加えて、NAD及びNADP等の補酵素が存在することが好ましい。AHDHの好ましい補酵素はNADである。NAD及びNADHは、20〜40mMの濃度で存在することが好ましい。また、AHDHに加えて、他の酵素が負極に存在する場合は、他の酵素の性質に応じて、FAD及びPQQ等の他の補酵素が存在しても良い。
負極には、AHDH等の酵素に加えて、任意の電子伝達物質も存在し得る。AHDHの電子伝達物質としては、上記1において、バイオ燃料電池用組成物に含まれ得る電子伝達物質として記載したものを使用することができる。
負極に存在する酵素、補酵素及び/又は電子伝達物質等は、負極の表面に付着していることが好ましく、固定化されていることがより好ましい。固定化は、任意の手法で行うことができ、例えば、架橋試薬を用いる方法、高分子マトリックス中に封入する方法、透析膜で被覆する方法、並びに、光架橋性ポリマー、導電性ポリマー、酸化還元ポリマー等により固定化膜を形成する方法を挙げることが出来る。典型的には、AHDH等を、グルタルアルデヒドを用いてカーボン電極上に固定化した後、アミン基を有する試薬で処理してグルタルアルデヒドをブロッキングする手法が取ら得る。
正極の表面には、酸素の還元反応を触媒する酵素が存在することが好ましい。そのような酵素としては、例えば、ラッカーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、及びアスコルビン酸オキシダーゼ等を挙げることが出来る。また、正極には、負極と同様に、必用に応じて補酵素及び電子伝達物質が存在し得る。正極に存在する電子伝達物質は、負極に使用する電子伝達物質と比較して酸化還元電子が高いことが好ましい。
正極と負極との間に存在する電解液は、0.5M以上のイミダゾール環を有する化合物を含むことが好ましい。イミダゾール環を有する化合物としては、上記1.において記載するものを使用することができる。電解液中のイミダゾール環を有する化合物の濃度は、好ましくは1.0M以上である。イミダゾール環を有する物質の濃度の上限は、AHDHが有するD−マンノース脱水素活性が維持される限り、特に制限されないが、例えば、3M以下であり、好ましくは2.5M以下に設定することができる。
電解液には、イミダゾール環を有する化合物以外の他の緩衝物質を含んでいても良い。他の緩衝物質としては、例えば、リン酸二水素イオン、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、カコジル酸、炭酸、クエン酸水素イオン、N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−3−プロパンスルホン酸(HEPPS)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン、グリシルグリシン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン等から成る群より1種以上を選択することができる。
正極と負極との間のセパレーターは、電解液中の成分が透過可能な材料によって形成されていれば、その構成は特に制限されず、公知のセパレーターを適宜選択して使用することができる。例えば、セルロース系不織布又はセロファン等を使用することが出来る。
バイオ燃料電池の燃料は、AHDHの基質となり得る物質を含む限り特に制限されず、任意の物質を使用することが出来る。好ましい燃料は、AHDHの基質特性が高いD−マンノースを比較的高い割合で含む物質である。例えば、D−マンノース及びD−キシロースは、ヘミセルロースを構成する単糖であるため、ヘミセルロース及びそれを含む木質材料等を挙げることができる。ヘミセルロースは、非可食物質であり、比較的低廉であるという観点からも好ましい。
バイオ燃料電池は、電力の供給を必用とする任意の用途に用いることができる。例えば、電子機器、移動体(自動車、二輪車、航空機、ロケット、宇宙船等)、動力装置、建設機械、工作機械、発電システム、コージェネレーションシステム等に用いることができる。
以下、本発明を実施例参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
比較例1 NAD依存型グルコースデヒドロゲナーゼに対するイミダゾール等の影響
特許文献1には、負極に使用する酵素としてNAD依存型のグルコースデヒドロゲナーゼが開示されている。そこで、WO2010/137489開示されるThermoproteus sp. GDH1株由来のNAD依存型グルコースデヒドロゲナーゼを用いて、イミダゾール濃度による活性への影響を調べた。また、リン酸ナトリウム塩濃度による活性への影響も併せて測定した。D−グルコースを基質として用い、各種濃度のイミダゾール緩衝液中での酵素活性(0.1Mでの活性を100%とした時の相対値)を図1Aに示す。D−グルコースを基質として用い、各種濃度のリン酸ナトリウム緩衝液中での酵素活性(0.1Mでの活性を100%とした時の相対値)を図1Bに示す。
特許文献1には、負極に使用する酵素としてNAD依存型のグルコースデヒドロゲナーゼが開示されている。そこで、WO2010/137489開示されるThermoproteus sp. GDH1株由来のNAD依存型グルコースデヒドロゲナーゼを用いて、イミダゾール濃度による活性への影響を調べた。また、リン酸ナトリウム塩濃度による活性への影響も併せて測定した。D−グルコースを基質として用い、各種濃度のイミダゾール緩衝液中での酵素活性(0.1Mでの活性を100%とした時の相対値)を図1Aに示す。D−グルコースを基質として用い、各種濃度のリン酸ナトリウム緩衝液中での酵素活性(0.1Mでの活性を100%とした時の相対値)を図1Bに示す。
図1Aに示されるように、極限環境微生物であるサーモプロテウス由来のNAD依存型GDHの活性は、0.5Mのイミダゾールによって顕著に阻害され、1M以上のイミダゾールが存在する場合は、殆ど活性が見られないことが判明した。一方、図1Bに示されるように、0.1〜1.5MのNaPBでも酵素反応が進行することが分かった。塩濃度が濃くなるほど、酵素の比活性が下がる傾向があるが、1.5MのNaPBでも相対活性が57%以上保持されていた。
実施例1 Tv由来AHDHのクローニング
Thermoplasmavolcanium GSS1株を、酵母エキス(ディフコ社製)1g/L、グルコース 10g/L、(NH4)2SO4 1.32g/L、KH2PO4 0.372g/L、MgSO4・7H2O 0.247g/L、CaCl2・2H2O 0.074g/L、10mL/Lの微量元素溶液(FeCl3・6H2O 1.93g/L、MnCl2・4H2O 0.18g/L、Na2B4O7・10H2O 0.45g/L、ZnSO4・7H2O 22mg/L、CuCl2・2H2O 5mg/L、NaMoO 4・2H2O 3mg/L、VOSO 4・2H2O 3mg/L、CoSO4・7H2O 1mg/L)を加え、硫酸でpHを1.3に調節した培地で58℃、二晩振とう培養した。その後、遠心分離(4,000rpm、15分間)により集菌した。Tv株は、(独)製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンターより入手可能である(NBRC番号15438)。
Thermoplasmavolcanium GSS1株を、酵母エキス(ディフコ社製)1g/L、グルコース 10g/L、(NH4)2SO4 1.32g/L、KH2PO4 0.372g/L、MgSO4・7H2O 0.247g/L、CaCl2・2H2O 0.074g/L、10mL/Lの微量元素溶液(FeCl3・6H2O 1.93g/L、MnCl2・4H2O 0.18g/L、Na2B4O7・10H2O 0.45g/L、ZnSO4・7H2O 22mg/L、CuCl2・2H2O 5mg/L、NaMoO 4・2H2O 3mg/L、VOSO 4・2H2O 3mg/L、CoSO4・7H2O 1mg/L)を加え、硫酸でpHを1.3に調節した培地で58℃、二晩振とう培養した。その後、遠心分離(4,000rpm、15分間)により集菌した。Tv株は、(独)製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンターより入手可能である(NBRC番号15438)。
遠心チューブ内に残存する培養液をキムワイプで拭き取った後、細胞1gあたり20%シュークロース、100mMトリス−塩酸(pH8.0)、50mM EDTA、0.1%SDSを含んだ溶液15mLに懸濁し、150μLのプロテアーゼK溶液(10mg/mL)と150μLのRNAseA(10mg/mL)とを加え、37℃で12時間維持した。これを等量のクロロホルム/フェノール溶液で処理後、遠心分離により水層を分取する操作を3回繰り返した。
得られた水層に600μLの5MNaClを加え混合した後、0.8倍量のイソプロピルアルコールを加え、転倒混和後に出現するDNAを硝子棒に巻き付け精製DNA標品とした。この精製DNAを5mLの1mM EDTAを含んだ10mMトリス塩酸(pH8.0)溶液(以下、TEと略記する)に再溶解し、200μLの5M NaClを加え混合した後0.8倍量のイソプロピルアルコールを加え再抽出したDNAを70%エタノール溶液で洗浄後、風乾の後1mLのTE(トリス塩酸−EDTA)緩衝液に溶解した。
配列番号5に示す37塩基からなるセンスプライマーと配列番号6に示す34塩基からなるアンチセンスプライマーを合成し、このプライマーセットとPfuturbo DNAポリメラーゼとを用い、実施例1で得られたDNAを鋳型として、以下のサイクルでPCRを行った。
ステップ1:94℃、1分間
ステップ2:50℃、1分間
ステップ3:72℃、2.5分間(30サイクル)
得られたPCR産物を1%アガロースゲルにて泳動すると、0.78kbの大きさの特異的バンドが認められた。このDNA断片を、制限酵素NdeI及びXhoIで消化し、このDNA断片を同じくNdeI及びXhoIで消化することにより得られたベクターpET28の開環物とライゲーションした。このようにして、組み換えベクターpET/Tvを得た。この組み換えベクターによりエシェリヒア・コリXL1/Blue株(Stratagene社)を形質転換した。
ステップ1:94℃、1分間
ステップ2:50℃、1分間
ステップ3:72℃、2.5分間(30サイクル)
得られたPCR産物を1%アガロースゲルにて泳動すると、0.78kbの大きさの特異的バンドが認められた。このDNA断片を、制限酵素NdeI及びXhoIで消化し、このDNA断片を同じくNdeI及びXhoIで消化することにより得られたベクターpET28の開環物とライゲーションした。このようにして、組み換えベクターpET/Tvを得た。この組み換えベクターによりエシェリヒア・コリXL1/Blue株(Stratagene社)を形質転換した。
pET/Tvの約0.8kbpの挿入DNAについて、BigDye TerminatorCycle SequencingReady ReactionKit(アプライドバイオシステムズ社)及びABI3100(アプライドバイオシステムズ社)を用いて塩基配列を決定した。決定した塩基配列のオープンリーディングフレーム及びこれに対応するアミノ酸配列を、それぞれ配列番号3及び配列番号1に示した。アミノ酸配列から求められるタンパク質の分子量は27000〜33000であった。
実施例2 形質転換体の作製
エシェリヒア・コリBL21(DE3)RIL株(Stratagene社)のコンピテントセルをpET/Tvで形質転換し、形質転換体エシェリヒア・コリBL21(DE3)RIL(pET/Tv)を得た。
エシェリヒア・コリBL21(DE3)RIL株(Stratagene社)のコンピテントセルをpET/Tvで形質転換し、形質転換体エシェリヒア・コリBL21(DE3)RIL(pET/Tv)を得た。
実施例3 形質転換体からのTv株由来精製AHDHの製造
LB培地100mLを500mLフラスコに分注し、121℃、20分間オートクレーブを行い、放冷後、別途無菌濾過した20mg/mLカナマイシン、34mg/mLクロラムフェニコール(ナカライテスク社)0.1mLを添加した。この培地にLB培地で予め37℃、15時間振とう培養したエシェリヒア・コリBL21(DE3)RIL(pET/Tv)の培養液1mLを接種し、37℃で8時間通気攪拌培養した。
LB培地100mLを500mLフラスコに分注し、121℃、20分間オートクレーブを行い、放冷後、別途無菌濾過した20mg/mLカナマイシン、34mg/mLクロラムフェニコール(ナカライテスク社)0.1mLを添加した。この培地にLB培地で予め37℃、15時間振とう培養したエシェリヒア・コリBL21(DE3)RIL(pET/Tv)の培養液1mLを接種し、37℃で8時間通気攪拌培養した。
LB培地900mLを3Lフラスコに分注し、121℃、20分間オートクレーブを行い、放冷後、別途無菌濾過した20mg/mLカナマイシン及び34mg/mLクロラムフェニコール(ナカライテスク社製)0.9mLを添加した。この培地に8時間培養したエシェリヒア・コリBL21(DE3)RIL(pET/Tv)の培養液100mLを接種し、30℃で15時間通気攪拌培養した。培養終了時の培養液1mL中に含まれる菌体中のAHDH活性は約4U/mLであった。
培養液中の菌体を遠心分離により集菌し、300 mM NaCl, 1 mg/mlLysozymeを含む50mM Na phosphate緩衝液(pH8.0)に懸濁した。菌体懸濁液を超音波で破砕し、遠心分離を行い、上清液を得た。得られた粗酵素液を60℃で60分間熱処理し、遠心分離を行い、上清液を得た。
上清液をHIS−SELECT (sigma) に吸着させ、50 mMNa phosphatepH 6.0, 300 mMNaCl, 10% glycerolを含むバッファーで洗浄後、0〜400 mMimidazole lineargradientにて分離、精製を行った。次に、AHDHが多く含まれる画分を回収し、透析(25 mMTris pH7.5, 20%glycerol)を行い、精製酵素標品を得た。本方法により得られたAHDH標品は、電気泳動(SDS−PAGE)によりほぼ単一なバンドを示した。この際、タンパク質分子量マーカーとしてフォスフォリラーゼb(97,000ダルトン)、アルブミン(66,000ダルトン)、オバルブミン(45,000ダルトン)、カルボニックアンヒドラーゼ(30,000ダルトン)、トリプシンインヒビター(20,100ダルトン)、α−ラクトアルブミン(14,400ダルトン)を用いた。Tv株由来精製AHDHのSDS−PAGEを図2に示す。
実施例4 Tv株由来精製AHDHの基質特異性
実施例3で得られた精製AHDHを用いて、種々の糖に対する活性を、補酵素としてNADを用いて測定した。結果を図3及び下記の表1に示す。その結果、本酵素は、D−マンノース、2−デオキシ−D−グルコース、及びキシロースに対して高い活性を有することが判明した。尚、Thermoplasma acidophilum株由来のAHDHの基質特異性については、特開2004−33077号公報に開示されており、Tv株由来のAHDHと同様に、D−マンノース、2−デオキシ−D−グルコース、及びキシロースに対して高い活性を有する。
実施例3で得られた精製AHDHを用いて、種々の糖に対する活性を、補酵素としてNADを用いて測定した。結果を図3及び下記の表1に示す。その結果、本酵素は、D−マンノース、2−デオキシ−D−グルコース、及びキシロースに対して高い活性を有することが判明した。尚、Thermoplasma acidophilum株由来のAHDHの基質特異性については、特開2004−33077号公報に開示されており、Tv株由来のAHDHと同様に、D−マンノース、2−デオキシ−D−グルコース、及びキシロースに対して高い活性を有する。
実施例5 Tv株及びTa株由来の精製AHDHの至適pH
実施例3で得られたTv株由来の精製AHDH(2U/mL)及び特開2004−33077号公報に開示される内容に従って取得したTa株由来の精製AHDH(2U/ml)について、至適pHを調べた。100mM 酢酸緩衝液(pH3.5〜6.0、図中◆印でプロット)、100mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.0−8.0、図中■印でプロット)、100mMTris−HCl緩衝液(pH7.0−8.0、図中▲印でプロット)、100mM グリシン−NaOH緩衝液(pH9.0−11.0、図中●でプロット)を用い、それぞれのpHにおいて、25℃で酵素反応を行い、相対活性を調べた。結果を図4A(Tv株)と図4B(Ta株)に示す。Tv株由来のAHDHが残存活性80%以上を示すpH範囲はpH6.95−pH9.69であった。Ta株由来のAHDHが残存活性80%以上を示すpH範囲は、pH8.4−pH9.69であった。
実施例3で得られたTv株由来の精製AHDH(2U/mL)及び特開2004−33077号公報に開示される内容に従って取得したTa株由来の精製AHDH(2U/ml)について、至適pHを調べた。100mM 酢酸緩衝液(pH3.5〜6.0、図中◆印でプロット)、100mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.0−8.0、図中■印でプロット)、100mMTris−HCl緩衝液(pH7.0−8.0、図中▲印でプロット)、100mM グリシン−NaOH緩衝液(pH9.0−11.0、図中●でプロット)を用い、それぞれのpHにおいて、25℃で酵素反応を行い、相対活性を調べた。結果を図4A(Tv株)と図4B(Ta株)に示す。Tv株由来のAHDHが残存活性80%以上を示すpH範囲はpH6.95−pH9.69であった。Ta株由来のAHDHが残存活性80%以上を示すpH範囲は、pH8.4−pH9.69であった。
実施例6
Tv株及びTa株由来の精製AHDHの熱安定性
Tv株由来のAHDH酵素液(1mg/mL)及びTa株由来のAHDH酵素液(1mg/mL)を用いて、温度安定性を調べた。20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を用いて、種々の温度(20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃)で15分間処理した後、残存活性率を測定した。結果を図5に示す。活性が実質的に低下しない上限温度は、70℃以下であることが確認された。
Tv株及びTa株由来の精製AHDHの熱安定性
Tv株由来のAHDH酵素液(1mg/mL)及びTa株由来のAHDH酵素液(1mg/mL)を用いて、温度安定性を調べた。20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を用いて、種々の温度(20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃)で15分間処理した後、残存活性率を測定した。結果を図5に示す。活性が実質的に低下しない上限温度は、70℃以下であることが確認された。
実施例7 Tv株及びTa株由来の精製AHDHのpH安定性
Tv株由来のAHDH酵素液(0.5mg/mL)を用いて、pH安定性を調べた。100mM 酢酸緩衝液(pH3.5〜6.0、図中◆印でプロット)、100mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.0−pH8.0:図中■印でプロット)、100mM Tris−HCl緩衝液(pH7.0−pH9.0:図中▲印でプロット)、100mM グリシン−NaOH緩衝液(pH9.0−11.0、図中●でプロット)を用い、25℃で19時間処理した後の活性の残存率を測定した。結果を図6に示す。その結果、pH4.5〜10.1で酵素活性を90%以上維持した。Ta株由来のAHDHのpH安定性については、特開2004−33077号公報に開示されており、pH7〜11の範囲で安定であることが示されている。
Tv株由来のAHDH酵素液(0.5mg/mL)を用いて、pH安定性を調べた。100mM 酢酸緩衝液(pH3.5〜6.0、図中◆印でプロット)、100mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.0−pH8.0:図中■印でプロット)、100mM Tris−HCl緩衝液(pH7.0−pH9.0:図中▲印でプロット)、100mM グリシン−NaOH緩衝液(pH9.0−11.0、図中●でプロット)を用い、25℃で19時間処理した後の活性の残存率を測定した。結果を図6に示す。その結果、pH4.5〜10.1で酵素活性を90%以上維持した。Ta株由来のAHDHのpH安定性については、特開2004−33077号公報に開示されており、pH7〜11の範囲で安定であることが示されている。
実施例8 D−マンノースに対するKm値の測定
Tv株由来のAHDHについて、D−マンノースの濃度を変化させて活性測定を行い、基質濃度と反応速度のグラフ(図7)からLineweaver−burk plotを作成し、Km値を算出した。補酵素には、NADを用いた。その結果、Tv株由来AHDHのD−マンノースに対するKm値は、44mMであることが判明した。Ta株由来のAHDHのD−マンノースに対するKm値は、特開2004−33077号公報に開示される通り、25mMである。
Tv株由来のAHDHについて、D−マンノースの濃度を変化させて活性測定を行い、基質濃度と反応速度のグラフ(図7)からLineweaver−burk plotを作成し、Km値を算出した。補酵素には、NADを用いた。その結果、Tv株由来AHDHのD−マンノースに対するKm値は、44mMであることが判明した。Ta株由来のAHDHのD−マンノースに対するKm値は、特開2004−33077号公報に開示される通り、25mMである。
実施例9 D−グルコースに対するKm値の測定
Tv株由来のAHDHについて、D−グルコースの濃度を変化させて活性測定を行い、基質濃度と反応速度のグラフ(図8)からLineweaver−burk plotを作成し、Km値を算出した。その結果、Tv株由来AHDHのD−グルコースに対するKm値は、895mMであることが判明した。Ta株由来のAHDHのD−グルコースに対するKm値は、特開2004−33077号公報に開示される通り、208mMである。
Tv株由来のAHDHについて、D−グルコースの濃度を変化させて活性測定を行い、基質濃度と反応速度のグラフ(図8)からLineweaver−burk plotを作成し、Km値を算出した。その結果、Tv株由来AHDHのD−グルコースに対するKm値は、895mMであることが判明した。Ta株由来のAHDHのD−グルコースに対するKm値は、特開2004−33077号公報に開示される通り、208mMである。
実施例10 NADに対するKm値の測定
Tv株由来のAHDHについて、NADの濃度を変化させて活性測定を行い、基質濃度と反応速度のグラフ(図9)からLineweaver−burk plotを作成し、Km値を算出した。その結果、Tv株由来AHDHのNADに対するKm値は、0.15mMであることが判明した。尚、Ta株由来のAHDHのNADに対するKm値は、0.08mM以下であり、NADに対する親和性が非常に高い。
Tv株由来のAHDHについて、NADの濃度を変化させて活性測定を行い、基質濃度と反応速度のグラフ(図9)からLineweaver−burk plotを作成し、Km値を算出した。その結果、Tv株由来AHDHのNADに対するKm値は、0.15mMであることが判明した。尚、Ta株由来のAHDHのNADに対するKm値は、0.08mM以下であり、NADに対する親和性が非常に高い。
実施例11 リン酸ナトリウム塩がTa株由来AHDHの活性に与える影響
0.1M リン酸ナトリウム緩衝液(0.1M NaPB)、0.5M リン酸ナトリウム緩衝液(0.5M NaPB)、1.0M リン酸ナトリウム緩衝液(1.0M NaPB)、1.5M リン酸ナトリウム緩衝液(1.5M NaPB)でのTa株由来AHDHの活性を調べた。D−グルコースを基質とした時の結果を図10A及び図10Bに、D−マンノースを基質とした時の結果を図10C及び図10Dに、D−キシロースを基質とした時の結果を図10E及び図10Fに示す。
0.1M リン酸ナトリウム緩衝液(0.1M NaPB)、0.5M リン酸ナトリウム緩衝液(0.5M NaPB)、1.0M リン酸ナトリウム緩衝液(1.0M NaPB)、1.5M リン酸ナトリウム緩衝液(1.5M NaPB)でのTa株由来AHDHの活性を調べた。D−グルコースを基質とした時の結果を図10A及び図10Bに、D−マンノースを基質とした時の結果を図10C及び図10Dに、D−キシロースを基質とした時の結果を図10E及び図10Fに示す。
図10A及び図10Bに示されるように、0.1〜1.5MのNaPBでも酵素反応が進行することが分かった。塩濃度が濃くなるほど、酵素の比活性が下がる傾向があるが、0.1〜0.5MNaPBでは活性低下が起こらなかった。1.0M以上から酵素活性の低下が起こるが、1.5M NaPBでも相対活性が70%以上保持されていた。
図10C及び図10Dに示されるように、0.1〜1.5MのNaPBでも酵素反応が進行することが分かった。塩濃度が濃くなるほど、酵素の比活性が下がる傾向があるが、0.1〜0.5MNaPBでは活性低下が起こらなかった。1.0M以上から酵素活性の低下が起こるが、1.5MのNaPBでも相対活性が50%以上保持されていた。
図10E及び図10Fに示されるように、0.1〜1.5MのNaPBでも酵素反応が進行することが分かった。塩濃度が濃くなるほど、酵素の比活性が下がる傾向があるが、0.1〜0.5MのNaPBでは活性低下が起こらなかった。1.0M以上から酵素活性の低下が起こるが、1.5MのNaPBでも相対活性が60%以上保持されていた。
実施例12 リン酸ナトリウム塩がTv株由来AHDHの活性に与える影響
0.1M リン酸ナトリウム緩衝液(0.1M NaPB)、0.5M リン酸ナトリウム緩衝液(0.5M NaPB)、1.0M リン酸ナトリウム緩衝液(1.0M NaPB)、1.5M リン酸ナトリウム緩衝液(1.5M NaPB)でのTv株由来AHDHの活性を調べた。D−グルコースを基質とした時の結果を図11A及び図11Bに、D−マンノースを基質とした時の結果を図11C及び図11Dに、D−キシロースを基質とした時の結果を図11E及び図11Fに示す。
0.1M リン酸ナトリウム緩衝液(0.1M NaPB)、0.5M リン酸ナトリウム緩衝液(0.5M NaPB)、1.0M リン酸ナトリウム緩衝液(1.0M NaPB)、1.5M リン酸ナトリウム緩衝液(1.5M NaPB)でのTv株由来AHDHの活性を調べた。D−グルコースを基質とした時の結果を図11A及び図11Bに、D−マンノースを基質とした時の結果を図11C及び図11Dに、D−キシロースを基質とした時の結果を図11E及び図11Fに示す。
図11A及び図11Bに示されるように、0.1〜1.5MのNaPBでも酵素反応が進行することが分かった。塩濃度が濃くなるほど、酵素の比活性が下がる傾向があるが、1.5M NaPBでも相対活性が90%以上保持されていた。
図11C及び図11Dに示されるように、0.1〜1.5MのNaPBでも酵素反応が進行することが分かった。塩濃度が濃くなるほど、酵素の比活性が下がる傾向があるが、0.1〜0.5MのNaPBでは活性低下が起こらなかった。1.0M以上から酵素活性の低下が起こるが、1.5MのNaPBでも相対活性が70%以上保持されていた。
図11E及び図11Fに示されるように、0.1〜1.5MのNaPBでも酵素反応が進行することが分かった。塩濃度が濃くなるほど、酵素の比活性が下がる傾向があるが、0.1〜0.5MのNaPBでは活性低下が起こらなかった。1.0M以上から酵素活性の低下が起こるが、1.5MのNaPBでも相対活性が80%以上保持されていた。
実施例13 イミダゾール塩がTa株由来AHDHの活性に与える影響
0.1M イミダゾール緩衝液(0.1M イミダゾール)、0.5M イミダゾール緩衝液(0.5M イミダゾール)、1.0M イミダゾール緩衝液(1.0M イミダゾール)、1.5M イミダゾール緩衝液(1.5M イミダゾール)、2.0M イミダゾール緩衝液(2.0M イミダゾール)でのTa株由来AHDHの活性を調べた。D−グルコースを基質とした時の結果を図12A及び図12Bに、D−マンノースを基質とした時の結果を図12C及び図12Dに、D−キシロースを基質とした時の結果を図12E及び図12Fに示す。
0.1M イミダゾール緩衝液(0.1M イミダゾール)、0.5M イミダゾール緩衝液(0.5M イミダゾール)、1.0M イミダゾール緩衝液(1.0M イミダゾール)、1.5M イミダゾール緩衝液(1.5M イミダゾール)、2.0M イミダゾール緩衝液(2.0M イミダゾール)でのTa株由来AHDHの活性を調べた。D−グルコースを基質とした時の結果を図12A及び図12Bに、D−マンノースを基質とした時の結果を図12C及び図12Dに、D−キシロースを基質とした時の結果を図12E及び図12Fに示す。
図12A及び図12Bに示されるように、D−グルコースを基質とした場合、0.1〜2.0Mのイミダゾールでも酵素反応が進行することが分かった。塩濃度が濃くなるほど、酵素の比活性が下がる傾向があるが、2.0Mのイミダゾール緩衝液でも相対活性が8%以上保持されていた。
図12C及び図12Dに示されるように、D−マンノースを基質とした場合、0.1〜2.0Mのイミダゾールでも酵素反応が進行することが分かった。塩濃度が0.5〜1.5Mのイミダゾールになると酵素の比活性が上昇した。このような、比活性向上の効果はリン酸ナトリウム緩衝液では見られなかった現象である(図11C、図11D)。2.0Mのイミダゾール緩衝液でも相対活性が55%以上保持されていた。
図12E及び図12Fに示されるように、D−キシロースを基質とした場合、0.1〜2.0Mイミダゾールでも酵素反応が進行することが分かった。塩濃度が0.5Mイミダゾールになると酵素の比活性が上昇した。このような、比活性向上の効果はリン酸ナトリウム緩衝液では見られなかった現象である(図11E、図11F)。2.0Mのイミダゾール緩衝液でも相対活性が16%以上保持されていた。
実施例14 イミダゾール塩がTv株由来精製AHDHの活性に与える影響
0.1M イミダゾール緩衝液(0.1M イミダゾール)、0.5M イミダゾール緩衝液(0.5M イミダゾール)、1.0M イミダゾール緩衝液(1.0M イミダゾール)、1.5M イミダゾール緩衝液(1.5M イミダゾール)、2.0M イミダゾール緩衝液(2.0M イミダゾール)でTv株由来精製AHDHの活性を調べた。D−グルコースを基質とした時の結果を図13A及び図13Bに、D−マンノースを基質とした時の結果を図13C及び図13Dに、D−キシロースを基質とした時の結果を図13E及び図13Fに示す。
0.1M イミダゾール緩衝液(0.1M イミダゾール)、0.5M イミダゾール緩衝液(0.5M イミダゾール)、1.0M イミダゾール緩衝液(1.0M イミダゾール)、1.5M イミダゾール緩衝液(1.5M イミダゾール)、2.0M イミダゾール緩衝液(2.0M イミダゾール)でTv株由来精製AHDHの活性を調べた。D−グルコースを基質とした時の結果を図13A及び図13Bに、D−マンノースを基質とした時の結果を図13C及び図13Dに、D−キシロースを基質とした時の結果を図13E及び図13Fに示す。
図13A及び図13Bに示されるように、D−グルコースを基質とした場合、0.1〜2.0Mのイミダゾールでも酵素反応が進行することが分かった。塩濃度が濃くなるほど、酵素の比活性が下がる傾向があるが、2.0Mのイミダゾール緩衝液でも相対活性が9%以上保持されていた。
図13C及び図13Dに示されるように、D−マンノースを基質とした場合、0.1〜2.0Mのイミダゾールでも酵素反応が進行することが分かった。塩濃度が濃くなるほど、酵素の比活性が下がる傾向があるが、0.1〜0.5Mイミダゾールでは活性低下が起こらなかった。1.0M以上から酵素活性の低下が起こるが、2.0Mのイミダゾール緩衝液でも相対活性が40%以上保持されていた。
図13E及び図13Fに示されるように、D−キシロースを基質とした場合、0.1〜2.0Mのイミダゾールでも酵素反応が進行することが分かった。塩濃度が濃くなるほど、酵素の比活性が下がる傾向があるが、0.1〜0.5Mのイミダゾールでは活性低下が起こらなかった。1.0M以上から酵素活性の低下が起こるが、2.0Mのイミダゾール緩衝液でも相対活性が12%以上保持されていた。
上記実施例13及び14から、サーモプラズマ由来のNAD依存型AHDHは、サーモプロプロテウス由来のNAD依存型GDHとは異なり、イミダゾールの存在下でも安定であることが判明した。
Claims (4)
- 配列番号1又は2のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、且つ、イミダゾール環を有する物質の存在下でD−マンノース脱水素活性を有するアルドヘキソースデヒドロゲナーゼを含む、バイオ燃料電池用組成物。
- アルドヘキソースデヒドロゲナーゼが、更に下記(A)〜(C)から成る群より選択される1つ以上の特性を備える、請求項1に記載のバイオ燃料電池用組成物。
(A)D−マンノースに対するKm値が、D−グルコースに対するKm値よりも小さい
(B)70℃以下の温度で安定である
(C)少なくともpH7〜11の範囲で安定である - バイオ燃料電池が、正極と負極との間に、イミダゾール環を有する化合物を0.5M以上の濃度で含む、項1又は2に記載のバイオ燃料電池用組成物。
- 請求項1又は2に記載のバイオ燃料電池用組成物を含む負極を有し、正極と負極との間にイミダゾール環を有する化合物を0.5M以上の濃度で含む、バイオ燃料電池。
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JP2013055144A JP2014182887A (ja) | 2013-03-18 | 2013-03-18 | バイオ燃料電池用酵素組成物 |
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JP2017216154A (ja) * | 2016-05-31 | 2017-12-07 | アイシン精機株式会社 | バイオ電池 |
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- 2013-03-18 JP JP2013055144A patent/JP2014182887A/ja active Pending
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