JP2014181749A - 駆動力伝達装置、及び駆動力伝達装置の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】クラッチを押圧するカム機構の推力を精度よく調節することが可能な駆動力伝達装置、及び駆動力伝達装置の制御装置を提供する。
【解決手段】駆動力伝達装置11は、電動モータ5と、回転軸線O上で相対回転可能に配置され、軸方向に押圧されることで互いに摩擦係合するアウタクラッチプレート81及びインナクラッチプレート82を有する多板クラッチ8と、アウタクラッチプレート81と共に回転する入力回転部材13と、インナクラッチプレート82と共に回転する出力回転部材14と、電動モータ5の回転力を受けて多板クラッチ8を軸方向に押圧するカム推力を発生させるカム機構3と、カム推力に対する反力を流体Lの圧力に変換する圧力変換機構6と、流体Lの圧力を検知する圧力センサ10とを備え、圧力変換機構6は、反力を受けるピストン61と、流体Lを収容する収容部62と、ピストン61と収容部62との間をシールするシール部材63,64とを有する。
【選択図】図2
【解決手段】駆動力伝達装置11は、電動モータ5と、回転軸線O上で相対回転可能に配置され、軸方向に押圧されることで互いに摩擦係合するアウタクラッチプレート81及びインナクラッチプレート82を有する多板クラッチ8と、アウタクラッチプレート81と共に回転する入力回転部材13と、インナクラッチプレート82と共に回転する出力回転部材14と、電動モータ5の回転力を受けて多板クラッチ8を軸方向に押圧するカム推力を発生させるカム機構3と、カム推力に対する反力を流体Lの圧力に変換する圧力変換機構6と、流体Lの圧力を検知する圧力センサ10とを備え、圧力変換機構6は、反力を受けるピストン61と、流体Lを収容する収容部62と、ピストン61と収容部62との間をシールするシール部材63,64とを有する。
【選択図】図2
Description
本発明は、入力軸からの駆動力を出力軸に伝達する駆動力伝達装置、及び駆動力伝達装置を制御する制御装置に関する。
従来、例えば四輪駆動車に搭載され、クラッチによって第1の回転部材及び第2の回転部材を駆動力伝達可能に連結する駆動力伝達装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の駆動力伝達装置(駆動力配分装置)は、第1の回転部材(後輪出力軸)と、第1の回転部材と同一軸上において相対回転可能な第2の回転部材(クラッチドラム)と、第1の回転部材及び第2の回転部材の間に配置されたクラッチと、電動機(サーボモータ)の回転力をクラッチ側への押圧力(推力)に変換するカム機構とを備えている。第1の回転部材は、エンジンの駆動力が変速機を介して入力される入力軸に直結されている。第2の回転部材は、チェーンベルトを介して前輪出力軸に連結されている。
カム機構は、外歯ギヤが設けられた第1のボールカムと、内歯ギヤが設けられた第2のボールカムと、外歯ギヤ及び内歯ギヤに共に噛み合う駆動ギヤとを有し、駆動ギヤが減速機を介して電動機によって駆動されるように構成されている。駆動ギヤが電動機の回転力を受けて回転すると、第1のボールカムと第2のボールカムとの相対回転により、クラッチを軸方向に押圧する推力が発生する。
エンジン側からの駆動力が入力軸を介して第1の回転部材に入力されると、第1の回転部材がその軸回りに回転する。エンジンの駆動力をクラッチを介して前輪側に配分する際には、電動機に通電してカム機構を作動させる。カム機構は、電動機の回転力を受けてクラッチを押圧する推力を発生させ、この推力がクラッチに付与されることにより、第1の回転部材及び第2の回転部材が駆動力伝達可能に連結される。これにより、エンジン側からの駆動力が入力軸から駆動力伝達装置を介して前輪出力軸に伝達される。
第1の回転部材から第2の回転部材に伝達される駆動力は、電動機に供給する電流を増減し、カム機構による推力を調節することによって制御可能である。しかしながら、減速機構での摩擦抵抗や電動機の出力特性のばらつき、あるいは電動機に電流を供給する制御装置の特性のばらつき等によって、必ずしも電動機に供給される電流に応じた駆動力がクラッチを介して伝達されない場合がある。
そこで、本発明は、クラッチを押圧するカム機構の推力を精度よく調節することが可能な駆動力伝達装置、及び駆動力伝達装置の制御装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するために、[1]〜[7]の駆動力伝達装置及び駆動力伝達制御装置を提供する。
[1]電動モータと、同一軸線上で相対回転可能に配置されて、軸方向に押圧されることにより互いに摩擦係合する第1の摩擦部材及び第2の摩擦部材を有するクラッチと、前記第1の摩擦部材と共に回転する入力回転部材と、前記第2の摩擦部材と共に回転する出力回転部材と、前記電動モータの回転力を受けて、前記クラッチを前記軸方向に押圧するカム推力を発生させるカム推力発生機構と、前記カム推力に対する反力を前記カム推力発生機構から受けて、前記反力を流体の圧力に変換する圧力変換機構と、前記流体の圧力を検知する圧力センサとを備え、前記圧力変換機構は、前記反力を受けるピストンと、前記クラッチ及び前記カム推力発生機構が収容されたハウジングに設けられ、前記ピストンによって押圧される前記流体を収容する収容部と、前記ピストンと前記収容部の内面との間をシールするシール部材とを有する駆動力伝達装置。
[2]前記カム推力発生機構は、前記電動モータの前記回転力を受けて回転するカム部材と、前記カム部材に形成されたカム面を転動する転動部材と、前記転動部材の転動により発生する前記カム推力を前記クラッチ側に出力する出力部材とを有し、前記カム部材は、前記カム推力の反作用により発生する前記反力を前記圧力変換機構の前記ピストンに伝達する、[1]に記載の駆動力伝達装置。
[3]前記シール部材は、断面がX形状の弾性部材からなり、前記ピストンの外面、又は前記収容部の前記内面に環状に設けられたXリングである、[1]又は[2]に記載の駆動力伝達装置。
[4]前記シール部材は、鋼板からなる金属環と、弾性部材からなり、前記収容部の前記内面に接触するリップ部とを有するボンデッドピストンシールである、[1]又は[2]に記載の駆動力伝達装置。
[5]前記シール部材は、弾性部材からなり、前記ピストンの外面に接触するリップ部と、前記収容部の前記内面に接触する嵌合部とを有するオイルシールである、[1]又は[2]に記載の駆動力伝達装置。
[6]前記ピストンは、その先端部に、前記反力を受ける方向に突出した突部が形成され、前記ハウジングは、前記突部が嵌合される嵌合穴を有している、[1]乃至[5]の何れか1項に記載の駆動力伝達装置。
[7][1]乃至[6]の何れか1項に記載の駆動力伝達装置を制御する制御装置であって、前記圧力センサの信号に基づいて前記カム推力を算出し、算出された前記カム推力に基づいて前記電動モータを制御する駆動力伝達装置の制御装置。
本発明に係る駆動力伝達装置、及び駆動力伝達装置の制御装置によれば、クラッチを押圧するカム機構の推力を精度よく調節することが可能である。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る駆動力伝達装置、及び駆動力伝達装置の制御装置が搭載された四輪駆動車の概略を示す構成図である。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る駆動力伝達装置、及び駆動力伝達装置の制御装置が搭載された四輪駆動車の概略を示す構成図である。
(四輪駆動車100の構成)
四輪駆動車100は、駆動力伝達系101と、駆動力伝達装置11と、制御装置12と、主駆動源であるエンジン102と、トランスミッション103と、主駆動輪としての前輪104L,104Rと、補助駆動輪としての後輪105L,105Rとを備えている。なお、図1において符号中の文字「L」は四輪駆動車100の前進方向に対する左側を示し、文字「R」は四輪駆動車100の前進方向に対する右側を示している。
四輪駆動車100は、駆動力伝達系101と、駆動力伝達装置11と、制御装置12と、主駆動源であるエンジン102と、トランスミッション103と、主駆動輪としての前輪104L,104Rと、補助駆動輪としての後輪105L,105Rとを備えている。なお、図1において符号中の文字「L」は四輪駆動車100の前進方向に対する左側を示し、文字「R」は四輪駆動車100の前進方向に対する右側を示している。
駆動力伝達系101は、前輪側駆動力伝達系101Aと、後輪側駆動力伝達系101Bと、前輪側駆動力伝達系101A及び後輪側駆動力伝達系101Bをつなぐプロペラシャフト20とを有し、四輪駆動車100の四輪駆動状態を二輪駆動状態に、また二輪駆動状態を四輪駆動状態にそれぞれ切り替え可能に構成されている。駆動力伝達系101は、四輪駆動車100のトランスミッション103側から後輪105L,105Rに至る駆動力伝達経路に、フロントディファレンシャル21及びリヤディファレンシャル22と共に配置され、四輪駆動車100の図略の車体に搭載されている。
前輪側駆動力伝達系101Aは、フロントディファレンシャル21及び駆動力断続装置23を含み、プロペラシャフト20における前輪104L,104R側に配置されている。
フロントディファレンシャル21は、サイドギヤ211L,211Rと、一対のピニオンギヤ212と、一対のピニオンギヤ212を回転可能に支持するギヤ支持部材213と、サイドギヤ211L,211R及び一対のピニオンギヤ212を収容するフロントデフケース214とを有し、トランスミッション103に連結されている。サイドギヤ211Lは、前輪104L側のアクスルシャフト24Lに接続され、サイドギヤ211Rは、前輪104R側のアクスルシャフト24Rに接続される。一対のピニオンギヤ212は、サイドギヤ211L,211Rにギヤ軸を直交させて噛合する。
駆動力断続装置23は、第1のスプライン歯部231と、第2のスプライン歯部232と、スリーブ233とを有するドグクラッチからなる。駆動力断続装置23は、四輪駆動車100の前輪104L,104R側に配置され、スリーブ233が図略のアクチュエータによって進退移動可能である。第1のスプライン歯部231はフロントデフケース214に、第2のスプライン歯部232はリングギヤ262に、それぞれ回転不能に接続されている。スリーブ233は、第1のスプライン歯部231及び第2のスプライン歯部232にスプライン嵌合可能に連結されている。この構成により、駆動力断続装置23は、プロペラシャフト20とフロントデフケース214とを断続可能に連結する。
後輪側駆動力伝達系101Bは、リヤディファレンシャル22及び駆動力伝達装置11を含み、プロペラシャフト20における後輪105L,105R側に配置されている。
リヤディファレンシャル22は、サイドギヤ221L,221Rと、一対のピニオンギヤ222と、一対のピニオンギヤ222を回転可能に支持するギヤ支持部材223と、サイドギヤ221L,221R及び一対のピニオンギヤ222を収容するリヤデフケース224とを有し、プロペラシャフト20に連結されている。一対のピニオンギヤ222は、サイドギヤ221L,221Rにギヤ軸を直交させて噛合する。サイドギヤ221Lは、後輪105L側のアクスルシャフト25Lに接続され、サイドギヤ221Rは、後輪105R側のアクスルシャフト25Rに駆動力伝達装置11を介して接続される。
駆動力伝達装置11は、リヤディファレンシャル22のサイドギヤ221Rと後輪105R側のアクスルシャフト25Rとの連結を断接可能である。リヤディファレンシャル22のサイドギヤ221Rと後輪105R側のアクスルシャフト25Rとの連結が遮断されると、エンジン102の駆動力が後輪105Rに伝達されなくなると共に、リヤディファレンシャル22のサイドギヤ221L,221R及び一対のピニオンギヤ222が空回りすることにより後輪105Lにも駆動力が伝達されなくなる。
一方、リヤディファレンシャル22のサイドギヤ221Rと後輪105R側のアクスルシャフト25Rとが連結されると、エンジン102の駆動力が後輪105Rに伝達されると共に、リヤディファレンシャル22のサイドギヤ221Lを介して後輪105Lにも駆動力が伝達される。これにより、四輪駆動車100が四輪駆動状態となる。
前輪104L,104Rは、エンジン102がトランスミッション103及びフロントディファレンシャル21を介して前輪側のアクスルシャフト24L,24Rに駆動力を出力することにより駆動される。一方の後輪105Lは、エンジン102がトランスミッション103、駆動力断続装置23、プロペラシャフト20、及びリヤディファレンシャル22を介して後輪105L側のアクスルシャフト25Lに駆動力を出力することにより駆動される。他方の後輪105Rは、エンジン102がトランスミッション103、駆動力断続装置23、プロペラシャフト20、リヤディファレンシャル22、及び駆動力伝達装置11を介して後輪105R側のアクスルシャフト25Rに駆動力を出することにより駆動される。
プロペラシャフト20の前輪104L,104R側の端部には、互いに噛合するドライブピニオン261及びリングギヤ262からなる前輪側歯車機構26が配置されている。また、プロペラシャフト20の後輪105L,105R側の端部には、互いに噛合するドライブピニオン271及びリングギヤ272からなる後輪側歯車機構27が配置されている。
制御装置12は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶素子からなる記憶部121と、記憶部121に記憶されたプログラムに従って動作するCPU(Central Processing Unit)等を有する制御部122と、駆動力伝達装置11の電動モータ5(後述)を制御するモータ制御回路123とを有している。モータ制御回路123により電動モータ5に電流が供給されると、駆動力伝達装置11によってリヤディファレンシャル22のサイドギヤ221Rから後輪105R側のアクスルシャフト25Rにエンジン102の駆動力が伝達される。一方、電動モータ5に電流が供給されなくなると、リヤディファレンシャル22のサイドギヤ221Rと後輪105R側のアクスルシャフト25Rとの連結が遮断される。
(駆動力伝達装置11の構成)
図2は、駆動力伝達装置11の構成例を示す断面図である。図2において、回転軸線Oよりも上側は非作動状態を示し、下側は作動状態を示している。
図2は、駆動力伝達装置11の構成例を示す断面図である。図2において、回転軸線Oよりも上側は非作動状態を示し、下側は作動状態を示している。
この駆動力伝達装置11は、電動モータ5と、電動モータ5の出力軸500の回転を減速させる減速機構9と、第1の摩擦部材としての複数のアウタクラッチプレート81及び第2の摩擦部材としての複数のインナクラッチプレート82を有する多板クラッチ8と、複数のアウタクラッチプレート81と共に回転する入力回転部材13と、複数のインナクラッチプレート82と共に回転する出力回転部材14と、電動モータ5の回転力から軸方向の推力(押圧力)を発生させるカム推力発生機構としてのカム機構3と、カム機構3で発生した推力に対する反力を流体Lの圧力に変換する圧力変換機構6と、流体Lの圧力を検知する圧力センサ10と、本体部41及び蓋部42からなるハウジング4とを備えている。ハウジング4内には、図略の潤滑油が封入されている。
入力回転部材13は、回転軸線Oを軸線とする軸状の軸部131と、軸部131とは反対側(カム機構3側)に開口する有底円筒状の円筒部132とを一体に有している。入力回転部材13は、ハウジング4の本体部41内に針状ころ軸受133,134を介して回転可能に支持されている。軸部131は、リヤディファレンシャル22のサイドギヤ221R(図1参照)にスプライン嵌合によって連結されている。軸部131の外周面とハウジング4の本体部41の内面との間は、回転軸線O方向に沿って並列する一対のシール機構135によってシールされている。
出力回転部材14は、回転軸線Oを軸線とする軸状のボス部141と、ボス部141とは反対側(図1に示す後輪105R側)に開口する有底円筒状の円筒部142とを一体に有している。出力回転部材14は、入力回転部材13の円筒部132内に針状ころ軸受143,144を介して回転可能に支持されている。また、出力回転部材14は、ハウジング4の蓋部42に玉軸受145を介して回転可能に支持されている。出力回転部材14には、その開口から後輪105R側のアクスルシャフト25R(図1参照)の先端部が挿入される。後輪105R側のアクスルシャフト25Rは、出力回転部材14にスプライン嵌合によって相対回転不能かつ回転軸線O方向に相対移動可能に連結される。
ボス部141は、入力回転部材13における軸部131における円筒部132側の端部に形成された凹部131aに収容されている。ボス部141の外径は、円筒部142の外径よりも小さい寸法に設定されている。円筒部142における開口周辺部の外周面とハウジング4の蓋部42の内面との間は、シール部材146によってシールされている。
多板クラッチ8は、入力回転部材13と出力回転部材14との間に配置されている。多板クラッチ8における複数のアウタクラッチプレート81と複数のインナクラッチプレート82とは、同一軸線(回転軸線O)上で相対回転可能に交互に配置され、回転軸線O方向に押圧されることにより互いに摩擦係合する。
複数のアウタクラッチプレート81は、入力回転部材13の円筒部132の内周面に形成されたストレートスプライン嵌合部132aにスプライン嵌合し、入力回転部材13に対して相対回転不能、かつ回転軸線O方向に相対移動可能に連結されている。
複数のインナクラッチプレート82は、出力回転部材14の円筒部142の外周面に形成されたストレートスプライン嵌合部14aにスプライン嵌合し、出力回転部材14に対して相対回転不能、かつ回転軸線O方向に相対移動可能に連結されている。
電動モータ5は、電動機用ハウジング50内に収容され、電動機用ハウジング50がハウジング4の本体部41にボルト5aによって取り付けられている。電動モータ5の出力軸500は、減速機構9及び歯車伝達機構7を介してカム機構3に連結されている。
歯車伝達機構7は、第1の歯車71及び第2の歯車72を有している。第1の歯車71は、減速機構9の回転軸O1上に配置され、ハウジング4の本体部41内に玉軸受73,74を介して回転可能に支持されている。第2の歯車72は、ギヤ部720が第1の歯車71に噛合するように配置され、支持軸76に玉軸受75を介して回転可能に支持されている。歯車伝達機構7は、減速機構9で減速された電動モータ5の回転力を出力軸500から受けて、カム機構3に伝達する。出力軸500の回転軸は、減速機構9の回転軸O1と一致している。
(減速機構9の構成)
図3は、減速機構9の構成例を示す断面図である。
図3は、減速機構9の構成例を示す断面図である。
減速機構9は偏心揺動減速機構であり、より詳しくは、少歯数差インボリュート減速機構である。減速機構9は、回転軸90と、入力部材91と、自転力付与部材92と、複数(本実施の形態では6つ)の出力部材93とを有し、減速機構用ハウジング94内に収容されている。
回転軸90は、減速機構9の回転軸O1から偏心量δをもって平行に偏心する軸線O2を中心軸線とする偏心部901を有している。回転軸90は、図2に示すように、減速機構用ハウジング94に玉軸受95を介して、また歯車伝達機構7の第1の歯車71に玉軸受96を介して、それぞれ回転可能に支持されている。
入力部材91は、軸線O2を中心軸とする中心孔910を有する外歯歯車からなり、中心孔910の内周面と偏心部901の外周面との間に針状ころ軸受97を介在させて、回転軸90に回転可能に支持されている。入力部材91は、電動モータ5から回転力を受けて偏心量δを持つ矢印n1,n2方向の円運動を行う。入力部材91には、軸線O2回りに等間隔に並列する複数(本実施の形態では6つ)の貫通孔としてのピン挿通孔911が形成されている。入力部材91の外周面には、軸線O2を中心軸とするピッチ円のインボリュート歯形をもつ外歯912が形成されている。
自転力付与部材92は、軸線O1を中心軸とする内歯歯車からなり、入力部材91に噛合し、電動モータ5の回転力を受けて公転する入力部材91に対して矢印m1,m2方向の自転力を付与する。自転力付与部材92の内周面には、入力部材91の外歯912に噛合するインボリュート歯形をもつ内歯921が形成されている。
複数の出力部材93は、略均一な外径をもつピンからなり、入力部材91のピン挿通孔911を挿通して歯車伝達機構7における第1の歯車71のピン取付孔710に取り付けられている。複数の出力部材93は、自転力付与部材92によって付与された自転力を入力部材91から受けて歯車伝達機構7の第1の歯車71に出力する。複数の出力部材93の外周面には、入力部材91におけるピン挿通孔911の内周面との間の接触抵抗を低減するための針状ころ軸受98が設けられている。
(カム機構3の構成)
次に、カム機構3について、図4〜図8を参照して詳細に説明する。
図4は、カム機構3の構成例を示す斜視図である。図5は、カム機構3のカム部材31を示す斜視図である。図6は、カム機構3のリテーナ32を示す斜視図である。図7は、カム機構3の転動部材33及び支持ピン34を示す斜視図である。図8は、カム機構3の動作を説明するための説明図である。
次に、カム機構3について、図4〜図8を参照して詳細に説明する。
図4は、カム機構3の構成例を示す斜視図である。図5は、カム機構3のカム部材31を示す斜視図である。図6は、カム機構3のリテーナ32を示す斜視図である。図7は、カム機構3の転動部材33及び支持ピン34を示す斜視図である。図8は、カム機構3の動作を説明するための説明図である。
カム機構3は、電動モータ5の回転力(減速機構9からの回転力)を受けて、多板クラッチ8を回転軸線O方向に押圧する推力を発生させる。換言すれば、カム機構3は、電動モータ5のトルクを、多板クラッチ8を押圧する押圧力に変換する。
カム機構3は、電動モータ5の回転力を受けて回転するカム部材31と、カム部材31に形成されたカム面を転動する転動部材33と、転動部材33の転動により発生する推力を多板クラッチ8側に出力する出力部材としてのリテーナ32とを有している。カム機構3は、出力回転部材14の円筒部142の外周側に配置されている。
カム部材31は、図5に示すように、環状であり、出力回転部材14を挿通させる挿通孔310を有している。カム部材31の外周縁の一部には、径方向外方に突出した扇状の凸片311が設けられている。凸片311には、歯車伝達機構7の第2の歯車72(ギヤ部720)に噛合するギヤ部311aが形成されている。第2の歯車72のギヤ部720及びカム部材31のギヤ部311aは平歯車からなり、カム部材31は第2の歯車72に対して回転軸線Oに沿って移動可能である。
カム部材31の軸線方向一側の端面には、挿通孔310の開口周縁から後輪105R(図1参照)側に向かって突出する円筒部312が形成されている。カム部材31の軸線方向他側の端面には、多板クラッチ8に対向するカム面を構成する凸部316、及び凹部315が形成されている。円筒部312の内周面と出力回転部材14における円筒部142の外周面との間には、針状ころ軸受313(図2参照)が介在している。カム部材31の軸線方向一側の端面とハウジング4の蓋部42の内面との間には、針状ころ軸受314(図2参照)が介在している。
凹部315及び凸部316は、カム部材31の周方向に交互に並列している。本実施の形態では、3つの凹部315と3つの凸部316が互いに隣接して配置されている。凹部315は、略均一な切り欠き幅をもつ一対の切り欠き側面315a,315bと、一対の切り欠き側面315a,315bの間に介在する切り欠き底面315cとを有する断面略矩形状の切り欠きによって形成されている。
凸部316は、カム部材31の周方向に沿って傾斜した傾斜面316aと、平面316bとを有している。傾斜面316aは、凹部315側から第2の傾斜面316aに向かってカム部材31の軸線方向の厚さを漸次大きくするように傾斜している。平面316bは、カム部材31の軸線方向の厚さが略均一な平面で形成されている。
リテーナ32は、図6に示すように、環状であり、出力回転部材14を挿通させる挿通孔320を有している。リテーナ32は、複数(本実施の形態では3つ)のガイド部材32b(図2参照)により回転が規制されている。ガイド部材32bは、回転軸線Oに平行であり、ハウジング4の本体部41と蓋部42との間に固定されている。
リテーナ32の多板クラッチ8側の端面には、挿通孔320の開口周縁から多板クラッチ8側に向かって突出する円筒部321が形成されている。円筒部321の外周側には、リテーナ32からの推力を受けて多板クラッチ8を押し付ける環板状の押付部材323(図2参照)が配置されている。押付部材323は、入力回転部材13の円筒部132のスプライン嵌合部132bにスプライン嵌合によって連結されている。押付部材323の一側端面とリテーナ32の多板クラッチ8側端面との間には、針状ころ軸受324が介在している。
リテーナ32の外周縁には、ガイド部材32bを挿通させるためのガイド挿通孔322aが形成され、径方向に突出した複数(本実施の形態では3つ)の凸片322が、周方向に沿って等間隔に設けられている。また、リテーナ32の外周縁には、図7に示す支持ピン34を挿通させる複数(本実施の形態では3つ)のピン挿通孔32aが放射状に形成されている。
支持ピン34は、図4に示すように、ナット35によってリテーナ32に取り付けられている。図7に示すように、支持ピン34の外周には、転動部材33が設けられている。転動部材33は、針状ころ36(図2参照)を介して支持ピン34に対して回転可能に支持されている。
図8に示すように、傾斜面316aにおけるカム部材31の周方向両端部のうち凹部315側の端部を始端部316a1とすると、カム機構3は、転動部材33が始端部316a1に配置された状態においてリテーナ32から回転軸線Oに平行な方向の第1のカム推力P1(図2参照)を出力する。
また、傾斜面316aの始端部316a1とは反対側(平面316b側)の端部を終端部316a2とすると、カム機構3は、転動部材33が始端部316a1と終端部316a2との間に配置された状態においてリテーナ32から第1のカム推力P1よりも小さな第2のカム推力P2(図2参照)を出力する。このとき、カム部材31は、第1のカム推力P1及び第2のカム推力P2の反作用により発生する第1の反力F1及び第2の反力F2(図2参照)を、後述する圧力変換機構6のピストン61に伝達する。
(圧力変換機構6の構成)
図9は、圧力変換機構6のピストン61を示す、断面斜視図である。図10は、圧力変換機構6及びその周辺部を示す拡大図である。
図9は、圧力変換機構6のピストン61を示す、断面斜視図である。図10は、圧力変換機構6及びその周辺部を示す拡大図である。
圧力変換機構6は、カム機構3で発生した第1のカム推力P1及び第2のカム推力P2に対する第1の反力F1及び第2の反力F2をカム機構3から受けて、第1の反力F1及び第2の反力F2を流体Lの圧力に変換する。本実施の形態では、流体Lは、鉱物油である。
圧力変換機構6は、第1の反力F1及び第2の反力F2を受けるピストン61と、多板クラッチ8及びカム機構3が収容されたハウジング4の蓋部42に設けられ、流体Lを収容する収容部62と、ピストン61の外周面61bと収容部62の外側内周面62bとの間をシールする外側シール部材63と、ピストン61の内周面61cと収容部62の内側内周面62cとの間をシールする内側シール部材64とを有している。圧力変換機構6は、流体Lの圧力(本実施の形態では、油圧)を検知する圧力センサ10(図2参照)にパイプ10aを介して連結されている。パイプ10aは、収容部62の底面62aに開口している。
ピストン61は、図9に示すように、外周面61bに外側シール部材63を保持する外側シール保持部611が形成され、内周面61cに内側シール部材64を保持する内側シール保持部612が形成されている。なお、外側シール保持部611はピストン61の外周面61bに設けられていなくてもよく、例えば収容部62の外側内周面62bに形成されていてもよい。同様に、内側シール保持部612はピストン61の内周面61cに設けられていなくてもよく、例えば収容部62の内側内周面62cに形成されていてもよい。外側シール部材63及び内側シール部材64は、本実施の形態では、断面が略円形状の弾性部材からなる環状のOリングである。ピストン61とカム部材31との間には、針状ころ軸受314が介在し、針状ころ軸受314は、ピストン61の軸受接触面61dに接触している。
ピストン61には、収容部62の底面62aに対向する流体押圧面61aが形成され、ピストン61がカム部材31からの第1の反力F1及び第2の反力F2を受けて回転軸線Oに平行な方向に沿って収容部62の底面62a向かって押し付けられると、収容部62内の流体Lが圧縮されて流体Lの圧力が高くなる。
一方、ピストン61がカム部材31からの第1の反力F1及び第2の反力F2を受けない場合(F1=0,F2=0)、つまり、転動部材33がカム部材31の凹部315に配置された状態では、収容部62内の流体Lは圧縮されないため、流体Lの圧力が低くなる。圧力センサ10は、この流体Lの圧力の変化を検知する。これにより、制御装置12(図1参照)は、圧力センサ10の信号に基づいてカム機構3で発生したカム推力を算出し、算出されたカム推力に基づいて電動モータ5(図2参照)を制御している。制御装置12が電動モータ5を制御する際に実行する処理については後述する。
(駆動力伝達制御装置1の動作)
次に、本実施の形態に示す駆動力伝達制御装置1の動作について、図1、図2、図8及び図11を用いて説明する。
次に、本実施の形態に示す駆動力伝達制御装置1の動作について、図1、図2、図8及び図11を用いて説明する。
プロペラシャフト20と後輪105R側のアクスルシャフト25Rとを駆動力伝達装置11により連結させるには、制御装置12から電動モータ5に電流を供給し、電動モータ5の回転力をカム機構3に付与してカム機構3を作動させる。このとき、カム機構3のカム部材31が回転軸線O回り一方向に回転する。図8に示すように、カム部材31が回転すると、転動部材33がカム部材31の凹部315に配置された状態(初期状態)から転動し、カム部材31の凸部316の傾斜面316a上に乗り上げて始端部316a1に位置する。これにより、電動モータ5の回転力が、多板クラッチ8のアウタクラッチプレート81及びインナクラッチプレート82の間の隙間を詰めるための第1のカム推力P1に変換される。また、第1のカム推力P1の反作用により、圧力変換機構6のピストン61を押圧する第1の反力F1が発生する。
転動部材33は、支持ピン34及び針状ころ36を介してリテーナ32を多板クラッチ8側(図2及び図8における矢印X方向)に押し付ける。リテーナ32は、多板クラッチ8のアウタクラッチプレート81とインナクラッチプレート82とを互いに接近させる方向に押付部材323を押し付ける。押付部材323がアウタクラッチプレート81及びインナクラッチプレート82を矢印X方向に押し付けることにより、互いに隣り合うアウタクラッチプレート81とインナクラッチプレート82との間の隙間が詰められる。
また、カム部材31は、針状ころ軸受314を介して圧力変換機構6のピストン61側(矢印Xとは反対方向)に押し付けられる。これにより、ピストン61が収容部62の底面62aに向かって押圧されて、収容部62に収容された流体Lが圧縮される。
次に、カム部材31が電動モータ5の回転力を受けて、回転軸線O回り一方向にさらに回転すると、転動部材33は凸部316の傾斜面316aを平面316bに向かって転動し、傾斜面316aの終端部316a2に到達して平面316b上に乗り上げる。これにより、電動モータ5の回転力が、多板クラッチ8のアウタクラッチプレート81及びインナクラッチプレート82を摩擦係合させるための第2のカム推力P2に変換される。また、第2のカム推力P2の反作用により、圧力変換機構6のピストン61を押圧する第2の反力F2が発生する。
転動部材33から第2のカム推力P2を付与された押付部材323は、アウタクラッチプレート81及びインナクラッチプレート82を矢印X方向に押し付け、互いに隣り合うアウタクラッチプレート81及びインナクラッチプレート82同士が摩擦係合する。
一方、カム部材31は、第2の反力F2により、ピストン61側(矢印Xとは反対方向)にさらに押し付けられる。これにより、ピストン61が収容部62の底面62aに向かってさらに押圧されて、収容部62に収容された流体Lはより圧縮される。
圧力変換機構6において圧縮された流体Lの圧力は、パイプ10aを介して圧力センサ10で検知される。圧力センサ10は、検知した流体Lの圧力信号を制御装置12(図1参照)に出力する。制御装置12は、圧力センサ10から出力された信号に基づきカム機構3で発生したカム推力(第1のカム推力P1及び第2のカム推力P2)を算出し、算出されたカム推力に基づいて電動モータ5への供給電流を制御する。以下、制御装置12による駆動力伝達装置11の制御方法についてより具体的に説明する。
図11は、制御装置12の制御部122が実行する処理の一具体例を示すフローチャートである。制御部122は、このフローチャートに示す処理を制御周期(例えば10ms)ごとに繰り返し実行する。
制御部122は、車両走行状態に基づいて、入力回転部材13から出力回転部材14に伝達すべき目標トルク値を設定する(ステップS1)。この車両走行状態には、例えば前輪104L,104Rと後輪105L,105Rとの差動回転数や、車速が含まれる。次に、制御部122は、この目標トルク値から電動モータ5に供給すべき電流値を指令電流値として算出する(ステップS2)。次に、制御部122は、この指令電流値をモータ制御回路123に出力する(ステップS3)。モータ制御回路123によって指令電流値に応じた電流が電動モータ5へ供給されると、電動モータ5の回転力が減速機構9を介してカム機構3に伝達され、カム機構3で発生したカム推力に対する反力が圧力変換機構6で流体Lの圧力に変換される。制御部122は、この流体Lの圧力を検知(計測)した圧力センサ10の出力信号を取得し(ステップS4)、これに基づいて、カム機構3で実際に発生したカム推力を算出する(ステップS5)。次に、制御部122は、算出したカム推力に基づいて、実際に入力回転部材13から出力回転部材14に伝達されたトルク値を算出する(ステップS6)。
算出したトルク値が目標トルク値と一致する場合(ステップS7:Yes)、制御部122は、図11に示すフローチャートの処理を一旦終了する。一方、算出したトルク値が目標トルク値と異なる場合(ステップS7:No)、制御部122は、実際のトルク値が目標トルク値に一致するように電動モータ5への指令電流値を補正し(ステップS8)、補正後の指令電流値をモータ制御回路123に出力する(ステップS3)。これにより、補正後の指令電流値に基づいてモータ制御回路123によって電動モータ5へ電流が供給される。
以上より、エンジン102の駆動力(トルク)は、入力回転部材13から出力回転部材14に伝達され、さらに出力回転部材14から後輪105R側のアクスルシャフト25Rを介して後輪105Rに伝達されて後輪105Rが回転駆動される。後輪105Rが回転駆動されることにより、対となる後輪105Lにも駆動力が伝達され、四輪駆動状態となる。つまり、駆動力伝達制御装置1は、駆動力伝達装置11によりエンジン102の駆動力を後輪側駆動力伝達系101Bに伝達可能とし、制御装置12により駆動力の伝達量を制御している。
(第1の実施の形態の作用及び効果)
以上説明した第1の実施の形態によれば、以下のような作用及び効果が得られる。
以上説明した第1の実施の形態によれば、以下のような作用及び効果が得られる。
(1)圧力センサ10は、カム機構3で発生したカム推力に対する反力を圧力変換機構6によって変換された流体Lの圧力として検知するので、カム推力を精度よく検知することができる。したがって、制御装置12は、圧力センサ10からの信号に基づいてカム機構3で実際に発生したカム推力を算出し、算出されたカム推力に基づいて精度よく電動モータ5を制御することができるため、カム機構3による多板クラッチ8の押圧力を所望の値に近づけることが可能となる。
(2)ピストン61の外周面61bと収容部62の外側内周面62bとの間に外側シール部材63が、ピストン61の内周面61cと収容部62の内側内周面62cとの間に内側シール部材64が、それぞれ介在することにより、収容部62の外側内周面62b及び内側内周面62cに対するピストン61の摺動抵抗が低減される。これにより、反力を精度よく流体Lの圧力に変換することが可能である。
(3)また、ピストン61の外周面61bと収容部62の外側内周面62bとの間に外側シール部材63が、ピストン61の内周面61cと収容部62の内側内周面62cとの間に内側シール部材64が、それぞれ介在しているため、流体Lが収容部62から外部へ漏れ出して圧力が下がることを抑制することができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、図12及び図13を参照して説明する。
次に、本発明の第2の実施の形態について、図12及び図13を参照して説明する。
図12は、本発明の第2の実施の形態に係る駆動力伝達装置11における圧力変換機構6A及びその周辺部を示す拡大図である。図13は、図12のA分拡大図である。
なお、第2の実施の形態、後述する第3の実施の形態、第4の実施の形態、及び第4の実施の形態の変形例において、第1の実施の形態について説明したものと共通する機能を有する構成要素については、同一の又は対応する符号及び名称を付してその説明を省略する。
本実施の形態に係る駆動力伝達装置11は、圧力変換機構6Aの外側シール部材63A及び内側シール部材64Aの形状が、第1の実施の形態に係る駆動力伝達装置11における圧力変換機構6の外側シール部材63及び内側シール部材64の形状と異なる。
外側シール部材63Aは、断面がX形状の弾性部材からなり、ピストン61の外周面61bに形成された外側シール保持部611に環状に設けられたXリングである。同様に、内側シール部材64Aは、断面がX形状の弾性部材からなり、ピストン61の内周面61cに形成された内側シール保持部612に環状に設けられたXリングである。
外側シール部材63Aと内側シール部材64Aとは、その形状は同一であるので、外側シール部材63Aを例にとって、以下具体的に説明する。
外側シール部材63Aは、図13に示すように、第1〜第4のリップ部631〜634を一体に有している。第1〜第4のリップ部631〜634は、第1のリップ部631及び第3のリップ部633を結ぶ直線と第2のリップ部632及び第4のリップ部634を結ぶ直線とが交差(本実施の形態では、直交)するように配置されている。
第1のリップ部631は、収容部62の外側内周面62bに接触する第1の頂部631aと、ピストン61の外側シール保持部611の内周面611aに接触する第2の頂部631bとを有している。同様に、第4のリップ部634は、ピストン61の外側シール保持部611の内周面611aに接触する第1の頂部634aと、収容部62の外側内周面62bに接触する第2の頂部634bとを有している。
第2のリップ部632は、ピストン61の外側シール保持部611の内周面611aに接触する第1の頂部632a及び第2の頂部632bを有している。同様に、第3のリップ部633は、ピストン61の外側シール保持部611の内周面611aに接触する第1の頂部633a及び第2の頂部633bを有している。
外側シール部材63Aの第1のリップ部631の第1の頂部631a、及び第4のリップ部634の第2の頂部634bが収容部62の外側内周面62bに接触することにより、ピストン61の外周面61bと収容部62の外側内周面62bとの間がシールされている。
本実施の形態によれば、第1の実施の形態について説明した(1)〜(3)の作用及び効果と同様の作用及び効果に加えて、次の(4)の作用及び効果が得られる。
(4)圧力変換機構6Aは、外側シール部材63Aの第1のリップ部631の第1の頂部631a、及び第4のリップ部634の第2の頂部634bが収容部62の外側内周面62bに接触することにより、ピストン61の外周面61bと収容部62の外側内周面62bとの間がシールされている。したがって、収容部62の外側内周面62bと外側シール部材63Aとの接触面積が、Oリングを使用した第1の実施の形態における外側シール部材63と比べて小さいため、収容部62の外側内周面62bに対するピストン61の摺動抵抗がより低減される。同様に、収容部62の内側内周面62cと内側シール部材64Aとの接触面積が小さくなるため、収容部62の内側内周面62cに対するピストン61の摺動抵抗がより低減される。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について、図14を参照して説明する。図14は、本発明の第3の実施の形態に係る駆動力伝達装置11における圧力変換機構6B及びその周辺部を示す拡大図である。
次に、本発明の第3の実施の形態について、図14を参照して説明する。図14は、本発明の第3の実施の形態に係る駆動力伝達装置11における圧力変換機構6B及びその周辺部を示す拡大図である。
本実施の形態に係る駆動力伝達装置11は、圧力変換機構6Bのシール部材65の形状が、第1の実施の形態に係る駆動力伝達装置11における圧力変換機構6の外側シール部材63及び内側シール部材64の形状と異なる。
シール部材65は、鋼板からなる金属環としての基部650と、弾性部材からなり、収容部62の外側内周面62bに接触する外側リップ部651と、収容部62の内側内周面62cに接触する内側リップ部652とを有するボンデッドピストンシールである。
基部650は、ピストン61における軸受接触面61dとは反対側の端面に固定されている。基部650には、収容部62の底面62aに対向し、収容部62内に収容された流体Lを底面62aに向かって押圧する流体押圧面650aが形成されている。外側リップ部651は、収容部62の外側内周面62bに接触する頂部651aを有している。同様に、内側リップ部652は、収容部62の内側内周面62cに接触する頂部652aを有している。
シール部材65の外側リップ部651の頂部651aが収容部62の外側内周面62bに接触し、かつ内側リップ部652の頂部652aが収容部62の内側内周面62cに接触することにより、ピストン61の外周面61bと収容部62の外側内周面62bとの間、及びピストン61の内周面61cと収容部62の内側内周面62cとの間が、それぞれシールされている。
本実施の形態によれば、第1の実施の形態について説明した(1)〜(3)の作用及び効果、及び第2の実施の形態について説明した(4)の作用及び効果と同様の作用及び効果が得られる。
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について、図15を参照して説明する。図15は、本発明の第4の実施の形態に係る駆動力伝達装置11における圧力変換機構6C及びその周辺部を示す拡大図である。
次に、本発明の第4の実施の形態について、図15を参照して説明する。図15は、本発明の第4の実施の形態に係る駆動力伝達装置11における圧力変換機構6C及びその周辺部を示す拡大図である。
本実施の形態に係る駆動力伝達装置11は、圧力変換機構6Cの外側シール部材66及び内側シール部材67の形状が、第1の実施の形態に係る駆動力伝達装置11における圧力変換機構6の外側シール部材63及び内側シール部材64の形状と異なる。
外側シール部材66は、弾性部材からなり、ピストン61の外周面61bに接触するリップ部661と、収容部62の外側内周面62bに接触する嵌め合い部662と、リップ部661及び嵌め合い部662を連結する連結部663とを一体に有するオイルシールである。
リップ部661は、ピストン61の外周面61bに接触する接触面661bを有し、金属からなる弾性リング661aによってピストン61の外周面61b(外側シール部材66の径方向内側)に向かって押さえつけられている。嵌め合い部662は、収容部62の外側内周面62bに接触する接触面662bを有し、金属板からなる芯金662aによって収容部62の外側内周面62b(外側シール部材66の径方向外側)に向かって押さえつけられている。
同様に、内側シール部材67は、弾性部材からなり、ピストン61の内周面61cに接触するリップ部671と、収容部62の内側内周面62cに接触する嵌め合い部672と、リップ部671及び嵌め合い部672を連結する連結部673とを一体に有するオイルシールである。
リップ部671は、ピストン61の内周面61cに接触する接触面671bを有し、金属からなる弾性リング671aによってピストン61の内周面61c(内側シール部材67の径方向外側)に向かって押さえつけられている。嵌め合い部672は、収容部62の内側内周面62cに接触する接触面672bを有し、金属板からなる芯金672aによって収容部62の内側内周面62c(内側シール部材67の径方向内側)に向かって押さえつけられている。
外側シール部材66のリップ部661及び内側シール部材67のリップ部671がピストン61の外周面61b及び内周面61cにそれぞれ接触し、外側シール部材66の嵌め合い部662及び内側シール部材67の嵌め合い部672が収容部62の外側内周面62b及び内側内周面62cにそれぞれ嵌合していることにより、ピストン61の外周面61bと収容部62の外側内周面62bとの間、及びピストン61の内周面61cと収容部62の内側内周面62cにとの間が、それぞれシールされている。
本実施の形態によれば、第1の実施の形態について説明した(1)〜(3)の作用及び効果、及び第2の実施の形態について説明した(4)の作用及び効果と同様の作用及び効果が得られる。
上記第4の実施の形態に係る駆動力伝達装置11は、以下のように変形して実施することも可能である。
(第4の実施の形態の変形例)
図16は、本発明の第4の実施の形態の変形例に係る駆動力伝達装置11における圧力変換機構6D及びその周辺部を示す拡大図である。
図16は、本発明の第4の実施の形態の変形例に係る駆動力伝達装置11における圧力変換機構6D及びその周辺部を示す拡大図である。
本変形例に係る駆動力伝達装置11は、圧力変換機構6Dのピストン61Aの形状が、第4の実施の形態における圧力変換機構6Cのピストン61の形状と異なる。
ピストン61Aは、その先端部(収容部62の底面62a側)に、カム機構3で発生したカム推力に対する反力を受ける方向(収容部62の底面62a)に突出した突部612Aと、本体部611Aとを一体に有している。ハウジング4の蓋部42Aは、ピストン61Aの突部612Aが嵌合される嵌合穴420を有している。
ピストン61Aの突部612Aが蓋部42Aの嵌合穴420に嵌合することにより、車両等が振動した場合に、ピストン61Aの径方向に生じるがたつきを抑制することができる。なお、本変形例は第4の実施の形態に限らず、上記の第1〜第3の実施の形態におけるピストン61にも適用することが可能である。
以上、本発明の駆動力伝達装置、及び駆動力伝達装置の制御装置を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
(1)上記実施の形態では、駆動力伝達装置11をリヤディファレンシャル22から右側後輪105Rに至るトルク伝達経路に配置した場合について説明したが、これに限らず、駆動力伝達装置11をプロペラシャフト20とリヤディファレンシャル22との間に配置してもよい。
(2)上記実施の形態では、流体Lは鉱物油を用いたが、流体Lの種類に特に制限はない。
(3)減速機構9やカム機構3の構成は、上記したものに限らない。電動モータ5が高トルクを得られる、例えばDD(ダイレクトドライブ)モータ等である場合には、減速機構9を設けなくともよい。
3…カム機構、4…ハウジング、5…電動モータ、5a…ボルト、6,6A,6B,6C,6D…圧力変換機構、7…歯車伝達機構、8…多板クラッチ、9…減速機構、10…圧力センサ、10a…パイプ、11…駆動力伝達装置、12…制御装置、13…入力回転部材、14…出力回転部材、14a…ストレートスプライン嵌合部、20…プロペラシャフト、21…フロントディファレンシャル、22…リヤディファレンシャル、23…駆動力断続装置、24L,24R,25L,25R…アクスルシャフト、26…前輪側歯車機構、27…後輪側歯車機構、31…カム部材、32…リテーナ、32a…ピン挿通孔、32b…ガイド部材、33…転動部材、34…支持ピン、35…ナット、41…本体部、42,42A…蓋部、50…電動機用ハウジング、61,61A…ピストン、61a…流体押圧面、61b…外周面、61c…内周面、61d…軸受接触面、62…収容部、62a…底面、62b…外側内周面、62c…内側内周面、63,63A,66…外側シール部材、64,64A,67…内側シール部材、65…シール部材、71…第1の歯車、72…第2の歯車、73,74,75…玉軸受、76…支持軸、81…アウタクラッチプレート、82…インナクラッチプレート、90…回転軸、91…入力部材、92…自転力付与部材、93…出力部材、94…減速機構用ハウジング、95,96…玉軸受、97,98…針状ころ軸受、100…四輪駆動車、101…駆動力伝達系、101A…前輪側駆動力伝達系、101B…後輪側駆動力伝達系、102…エンジン、103…トランスミッション、104L,104R…前輪、105L,105R…後輪、121…記憶部、122…制御部、123…モータ制御回路、131…軸部、131a…凹部、132…円筒部、132a…ストレートスプライン嵌合部、132b…スプライン嵌合部、133,134…針状ころ軸受、135…シール機構、141…ボス部、142…円筒部、143,144…針状ころ軸受、145…玉軸受、146…シール部材、211L,211R…サイドギヤ、212…ピニオンギヤ、213…ギヤ支持部材、214…フロントデフケース、221L,221R…サイドギヤ、222…ピニオンギヤ、223…ギヤ支持部材、224…リヤデフケース、231…第1のスプライン歯部、232…第2のスプライン歯部、233…スリーブ、261,271…ドライブピニオン、262,272…リングギヤ、310…挿通孔、311…凸片、311a…ギヤ部、312…円筒部、313,314…針状ころ軸受、315…凹部、315a,315b…側面、315c…底面、316…凸部、316a…傾斜面、316a1…始端部、316a2…終端部、316b…平面、320…挿通孔、321…円筒部、322…凸片、322a…ガイド挿通孔、323…押付部材、324…針状ころ軸受、420…嵌合穴、500…出力軸、611…外側シール保持部、611A…本体部、611a…内周面、612…内側シール保持部、612A…突部、631…第1のリップ部、631a…第1の頂部、631b…第2の頂部、632…第2のリップ部、632a…第1の頂部、632b…第2の頂部、633…第3のリップ部、633a…第1の頂部、633b…第2の頂部、634…第4のリップ部、634a…第1の頂部、634b…第2の頂部、650…基部、650a…流体押圧面、651…外側リップ部、651a…頂部、652…内側リップ部、652a…頂部、661,671…リップ部、661a,671a…弾性リング、661b,671b…接触面、662,672…嵌め合い部、662a,672a…芯金、662b,672b…接触面、663,673…連結部、710…ピン取付孔、720…ギヤ部、901…偏心部、910…中心孔、911…ピン挿通孔、912…外歯、921…内歯、F1…第1の反力、F2…第2の反力、L…流体、O…回転軸線、O1…回転軸、O2…軸線、P1…第1のカム推力、P2…第2のカム推力、S1〜S8…ステップ、δ…偏心量
Claims (7)
- 電動モータと、
同一軸線上で相対回転可能に配置されて、軸方向に押圧されることにより互いに摩擦係合する第1の摩擦部材及び第2の摩擦部材を有するクラッチと、
前記第1の摩擦部材と共に回転する入力回転部材と、
前記第2の摩擦部材と共に回転する出力回転部材と、
前記電動モータの回転力を受けて、前記クラッチを前記軸方向に押圧するカム推力を発生させるカム推力発生機構と、
前記カム推力に対する反力を前記カム推力発生機構から受けて、前記反力を流体の圧力に変換する圧力変換機構と、
前記流体の圧力を検知する圧力センサとを備え、
前記圧力変換機構は、
前記反力を受けるピストンと、
前記クラッチ及び前記カム推力発生機構が収容されたハウジングに設けられ、前記ピストンによって押圧される前記流体を収容する収容部と、
前記ピストンと前記収容部の内面との間をシールするシール部材とを有する
駆動力伝達装置。 - 前記カム推力発生機構は、
前記電動モータの前記回転力を受けて回転するカム部材と、
前記カム部材に形成されたカム面を転動する転動部材と、
前記転動部材の転動により発生する前記カム推力を前記クラッチ側に出力する出力部材とを有し、
前記カム部材は、前記カム推力の反作用により発生する前記反力を前記圧力変換機構の前記ピストンに伝達する、
請求項1に記載の駆動力伝達装置。 - 前記シール部材は、
断面がX形状の弾性部材からなり、
前記ピストンの外面、又は前記収容部の前記内面に環状に設けられたXリングである、
請求項1又は2に記載の駆動力伝達装置。 - 前記シール部材は、
鋼板からなる金属環と、
弾性部材からなり、前記収容部の前記内面に接触するリップ部とを有するボンデッドピストンシールである、
請求項1又は2に記載の駆動力伝達装置。 - 前記シール部材は、
弾性部材からなり、前記ピストンの外面に接触するリップ部と、
前記収容部の前記内面に接触する嵌合部とを有するオイルシールである、
請求項1又は2に記載の駆動力伝達装置。 - 前記ピストンは、その先端部に、前記反力を受ける方向に突出した突部が形成され、
前記ハウジングは、前記突部が嵌合される嵌合穴を有している、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の駆動力伝達装置。 - 請求項1乃至6の何れか1項に記載の駆動力伝達装置を制御する制御装置であって、
前記圧力センサの信号に基づいて前記カム推力を算出し、算出された前記カム推力に基づいて前記電動モータを制御する
駆動力伝達装置の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013056479A JP2014181749A (ja) | 2013-03-19 | 2013-03-19 | 駆動力伝達装置、及び駆動力伝達装置の制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013056479A JP2014181749A (ja) | 2013-03-19 | 2013-03-19 | 駆動力伝達装置、及び駆動力伝達装置の制御装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2014181749A true JP2014181749A (ja) | 2014-09-29 |
Family
ID=51700666
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2013056479A Pending JP2014181749A (ja) | 2013-03-19 | 2013-03-19 | 駆動力伝達装置、及び駆動力伝達装置の制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2014181749A (ja) |
-
2013
- 2013-03-19 JP JP2013056479A patent/JP2014181749A/ja active Pending
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