JP2014180676A - 板幅方向に左右対称の板厚差を有する差厚鋼板の製造方法 - Google Patents

板幅方向に左右対称の板厚差を有する差厚鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】大量少品種の差厚鋼板を高速且つ低コストで製造する方法を提供する。
【解決手段】熱間タンデム圧延機の少なくとも最終スタンドにおいて、上下ワークロールのうちの少なくとも片方に、胴長方向に径差のある左右対称のプロフィルの孔型ワークロールを付与し、圧延することを特徴とする板幅方向に左右対称の板厚差を有する差厚鋼板の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、効率的に板幅方向に左右対称の板厚差を有する差厚鋼板を圧延することが可能な製造方法に関する。
近年、自動車の燃費を向上させるために、軽量化が推進されている。軽量化の具体的な方法としては、部材の鋼種を薄手化かつ高強度なものに変更する方法や、鋼よりも比重の軽いアルミニウム合金やマグネシウム合金に変更する方法や、部材の板厚分布を許容される性能が確保できる限界まで付与する方法などがある。
上述した方法のなかで、部材に板厚分布を付与した鋼板は、一般に差厚鋼板と呼ばれている。
差厚鋼板は、例えば、長さ1000〜2000mm程度、幅300〜600mm程度の材料に、長さで両端から300mmまでは板厚2mm、中央部は板厚1.6mmとした凹型のもの(板厚差2水準対称型)や逆に長手方向で両端から300mmまでは板厚1.8mm、中央部は板厚2.0mmとした凸型のもの(板厚差2水準対称型)などや、板厚をテーパー状に変化させたものや、板厚差が多水準の対称および非対称型のものまで、用途に応じてさまざまな種類がある。
差厚鋼板のうち、長手方向に板厚差を有する差厚鋼板は、圧延機を用いて圧延中にロールギャップを操作(圧下位置を操作)して製造されている(例えば特許文献1)。
また、板幅方向に板厚差を有する差厚鋼板の製造方法としては、熱間タンデム圧延機で製造する方法が、例えば特許文献2に開示されているが、このように板幅方向に板厚差の分布が非対称の場合にはキャンバーが発生するので、バッチ圧延ではコイル先端からは圧延できず、コイル先端が巻き取りリールに巻かれて、被圧延材の前後が巻き戻し及び巻き取り機構によって拘束されてから、ワークロールを斜動させて製造するか、連続圧延にしてコイル接合部から斜動させて製造しなければならないなどの制約が生じる。
前者は最終スタンドから巻き取りロールまで数十メートルの距離があるので歩留り落ちが大きいし、後者は上流で熱間コイルを接合して連続化するための装置が必要となり、設備コストの増大を招く。
特開平3−281010号公報 特開平4−84607号公報
上述のように圧延機を用いて差厚鋼板を製造する方法を、ここでは、圧延法による差厚鋼板の製造方法と呼ぶ。
圧延法による差厚鋼板の製造方法において、圧延の長手方向に圧延厚さを変化させる方法においては、差厚鋼板の板厚部の異なる長さは一般に短いので、圧延機出側の板厚を測定してロールギャップを制御し、所望の差厚鋼板を製造することは、ロールバイト出口から板厚測定器までの距離による無駄時間の影響により困難である。また、入側板厚および入側速度と出側速度を検出しマスフロー一定則を用いて圧延機出側の板厚を推定し、その値を元にロールギャップを制御し、所望の差厚鋼板を製造することは、トラッキングの精度や幅広がりの影響および板厚と板速度検出器の設置による設備コストの上昇等の問題がある。
従って、予め実験を行い、ロールギャップ(圧下位置)と出側板厚との関係を求め、ワークロールの回転数を高精度に求めて圧延長を推測し、推測された圧延長をもとに、所望とする板厚になるように前記ロールギャップを制御する方法(プリセット圧延方法)が一般的である。
上述のプリセット圧延方法の代わりに、予め実験を行い圧延機の変形特性を求め、圧延時の圧延荷重を測定し、圧延機の変形特性と測定された圧延荷重からロールバイト出口の板厚を推定し、上述した推測された圧延長をもとに所望とする板厚になるように前記ロールギャップを制御する方法(絶対値圧延方法)もある。
これらのプリセット圧延方法および絶対値圧延方法では、材料は冷延焼鈍材や熱延酸洗材或いは熱延材であり、温度は常温で圧延される。圧延法の生産性を高くする(生産速度を速くする)ためには、高応答なロールギャップ制御が必要であり、従って高応答な油圧圧下装置が必須となるが、油圧圧下装置は高価なため設備コストが高くなり、製造コストを増大させるという問題を招く。
これらの圧延法による製造方法は板幅300〜600mm程度のスリット材で圧延されるため、少量多品種の生産には適しているものの、大量少品種の生産には製造コスト面(製造速度の面)の問題があったため、上述した大量少品種の差厚鋼板を低コストで製造したいという要望があった。
また、圧延の長手方向に圧延厚さを変化させる圧延法により製造された差厚鋼板は、圧延方向の部分毎に圧下率が異なるので、圧延されたままでは材質にバラツキが生じる。この材質のバラツキをなくすために必要に応じて熱処理し、さらに必要に応じて表面にメッキ等が施され、この後、プレス成形やホットプレス成形が行われて自動車用の部材が作成される。
これに対して、本発明は、板幅方向に板厚差のある差厚鋼板を製造することが可能な差厚鋼板の製造方法を提供することを目的とし、大量少品種の差厚鋼板を低コストで製造することを可能とするものである。
上記目的を達成するため、本発明者らは、鋭意研究を行い、長手方向にロールギャップを制御しなくても、ワークロールの幅方向に、製品寸法分布に対応したロールプロフィルを付与し、かつ、熱間圧延をすることによって、圧下位置をほとんど操作しなくても、幅手方向に所望の板厚差を有する差厚鋼板を効率的に、かつ、長手方向に材質のバラツキの少ない差厚鋼板を製造可能な方法を見いだした。
上記知見に基づく本発明は、
(1)熱間タンデム圧延機の少なくとも最終スタンドにおいて、上下ワークロールのうちの少なくとも片方に、胴長方向に径差のある左右対称のプロフィルの孔型ワークロールを採用し、圧延することを特徴とする板幅方向に左右対称の板厚差を有する差厚鋼板の製造方法。
(2)上記(1)に記載の板幅方向に左右対称の板厚差を有する差厚鋼板の製造方法において、最終スタンドの圧延機を、一対のワークロールと一対のバックアップロールからなる4段圧延機とし、該ワークロールの少なくとも一方を孔型ワークロールとし、該孔型ワークロールのプロフィルと逆プロフィルを付与したバックアックロールを採用することを特徴とする板幅方向に左右対称の板厚差を有する差厚鋼板の製造方法。
(3)上記(1)又は(2)に記載の左右対称の板厚差を有する差厚鋼板の製造方法において、圧延後の被圧延材を、圧延方向及び/又は板幅方向に切断して、左右非対称の圧延製品とすることを特徴とする左右対称の板厚差を有する差厚鋼板の製造方法。
である。
本発明によれば、大量少品種の左右対称の板厚差を有する差厚鋼板や、被圧延材の幅方向に2個以上を配置できる幅の左右非対称の板厚さを有する差厚鋼板製品を、低コストで製造することが可能な差厚鋼板の製造方法を提供することができる。
本発明の製造方法に使用する圧延装置の例の側面図である。 ワークロールプロフィルに対応したプロフィルを備えたバックアップロールを具備する4段圧延機のロールセット、及びこの圧延機で製造される差圧鋼板の一例を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
図1は本発明製造方法に使用する圧延装置の1例を示す側面図である。
図1において、加熱炉1においてスラブ2は加熱され、加熱が終わったスラブは粗圧延機3へ移動され、シート状に薄く圧延される。このシートSは仕上げ圧延機4である7つの圧延機からなる熱間タンデム圧延機で所望の厚さまで圧延され、冷却を兼ねたランアウトテーブル5を通り、巻き取り機6によりコイル状に巻き取られる。
仕上げ圧延機はすべて4段圧延機であり、一対のワークロールと一対のバックアップロールから構成されている。図示していないが、上バックアップロールのチョック上部にはパスラインを調整するための電動圧下装置が、下バックアップロールのロールチョック下部には油圧圧下装置が配備されている。図示してはいないが、上バックアップロールのチョック上部には、ロードセルが配備されており圧延荷重が測定される。
さらに、図2に示すように、仕上げ圧延機の最終スタンドの少なくとも一方のワークロール11には、板幅方向に差厚鋼板の製品寸法分布に対応したロールプロフィルが付与されている。図示していないが、仕上げ圧延機出側には圧延された金属ストリップの板厚を測定する板厚計が設置されており、板厚計からの板厚測定値と予め設定した板厚目標値との偏差に応じて油圧圧下装置によりロールギャップが制御される。
図示していないが圧延後の金属ストリップを冷却するためのランアウトテーブル5の下流に金属ストリップの温度を測定する温度計が設置されており、温度計からの温度測定値と、予め設定した板温度標値との偏差に応じて冷却装置により、冷却条件(例えば流量)が制御される。
また、図示していないが、メインタンクから圧延機入側で潤滑とワークロールの摩耗減少および上記孔型ワークロールへの金属ストリップのメタルフローが容易になるように、低濃度の圧延潤滑油(エマルション潤滑油)がロールバイト入り口とロール表面に、圧延機出側でワークロール冷却のためのクーラント(エマルション圧延潤滑油)が供給されている。図示していないが、このエマルション潤滑油は圧延機の下部に設けられた潤滑油回収層に集められ、上記メインタンクへ戻される。
図1及び2に示した装置を用いて、探索実験を行った。
スラブ2は 60キロハイテンと呼ばれる引っ張り強さが600MPaの材料であり、板厚250mm、板幅1600mm、長さ5mのものである。このスラブを粗圧延により、板厚50mmのシートSに仕上げる。仕上げ圧延機の最終スタンドの圧延機のワークロール11は直径600mm、胴長2000mmであり、バックアップロール12は直径1500mm、胴長2000mmである。
今回目標とする差厚鋼板のサイズは、図2の下部に示すように、全長1600mmで両端から300(公差0〜±50)mm内側までは板厚1.85mmそれ以外の1000mm(公差0〜−20mm)は板厚2.90mmの凸型の板幅400mmの左右対称型の差厚鋼板である。
板幅1600mmのシートを、最終スタンド入側で金属ストリップの温度700℃で、入側板厚3.06mmから、両端から300(公差0〜+50)mm内側までは板厚1.85mm、それ以外の中央部1000(公差0〜20)mmは、板厚2.90mmの凸型の板幅400mmの差圧鋼板である。
図2の上部に示すように、最終スタンドの上ワークロール11を上記差圧鋼板のプロフィルに一致するように加工した。
すなわち、ロール胴長方向でロール中央部1000mmはロール端部よりも半径当たり1.05mm小さくなる凹型のロールプロフィルに加工した。このロールを用いて差圧鋼板の中央部の板厚が目標値になるようにロールギャップを調整して圧延した。
従って、板幅方向のロール半径を差厚鋼板の薄い部分を基準とし、差厚鋼板の板厚の厚い部分に対応する部分(すなわちロール胴長中心から片側500mm、合計1000mm)を基準のロール半径よりも約1.05mm小さくすれば良い。また、径差の異なる境界部分はある程度テーパー状に加工する。
このように初期加工を施し、圧延実験を行い圧延後のデータを元に上記径差を微調整する。
このときに使用したワークロール11を、バックアップロール12と共に、図2の上部に模式的に示した。
図2の下部に示した差圧鋼板を圧延する場合、中央の厚さ2.90mmの部分の板幅は1000mmであるのに対し、両側の厚さ1.85mmの部分の板幅は左右合計でも600mmであるので、中央部の厚さ2.90mmの板幅1000mmの部分において、バックアップロール12で、ワークロール11を支持する圧延方法が、ヘルツ圧力低減と、安定操業の面で、好ましい。
(実施例)
図1に示した装置を用いて、長手方向に板厚差を有する差厚鋼板を製造した。素材等は上述した差厚鋼板のサンプルを製造した条件と同じであり、本発明で製造する長手方向に板厚差を有する差厚鋼板の寸法も上述した条件と同じである。
本発明の実施例では、圧延機出側の板厚計で中央部の板厚が2.90mmになるように圧下位置を制御して圧延をした。
従来技術としては、別ラインの単スタンドの4段圧延機を用いて、上下ともフラットなワークロールを用いて、予め板幅400mmの金属ストリップを圧延実験によって求めた圧延荷重(圧下位置)と板厚の関係を用い、ワークロールの回転速度から圧延長を推定し、その推定値を元に差厚鋼板の板厚の目標値を与え、その板厚の目標値になるように圧延機のロールギャップを制御した。
本発明の場合、従来技術で上述したワークロールの回転速度から圧延長を推定し、その推定値を元に差厚鋼板の板厚の目標値を与え、その板厚の目標値になるように圧延機のロールギャップを制御する必要が無いので設備コストを低減できる。また、同じ圧延速度でも板幅が異なるので、本発明の生産性は従来技術の約4倍である。さらに品質(硬度)のバラツキも少なくすることができる。
本発明の実施例では上述した差厚鋼板を圧延速度1000m/minで板厚精度±10%内で製造することができ、品質(硬度)のバラツキも5%以内であった。従来技術によっても、上述した差厚鋼板で板厚精度±10%内で製造することができた。
なお、左右に複数個の差厚鋼板製品Pを配置して左右対称型の板厚分布とした場合には、圧延終了後に、長手方向に個々の圧延製品に分割することで完成品とすることができる。例えば、実施例で作製した図3に示す差圧鋼板Pを圧延中心線から2分割すれば、板厚1.85mmの部分が300mm、板厚2.90mmの部分が500mmの全幅800mmの2水準差厚鋼板を幅方向に2つ採取することができる。
本発明によれば、左右対称の板厚分布を有する圧延製品を、高速かつ低コストで大量生産することができる。さらに、圧延製品を板幅方向に2個以上配置できる場合には、その製品が左右非対称な板厚分布であっても、圧延方向中心線に対して、左右対称に該製品を配置することにより、被圧延材としては左右対称の板厚分布とすることができ、キャンバーなどの長手方向形状不良の発生を抑制しながら圧延操業することができ、圧延作業の効率化及び生産性向上に大いに寄与するものである。
1 加熱炉
2 スラブ
3 粗圧延機
4 仕上げ圧延機
5 ランアウトテーブル
6 巻き取り機
11 ワークロール
12 バックアップロール
S シート
P 差厚鋼板

Claims (3)

  1. 熱間タンデム圧延機の少なくとも最終スタンドにおいて、上下ワークロールのうちの少なくとも片方に、胴長方向に径差のある左右対称のプロフィルの孔型ワークロールを採用し、圧延することを特徴とする板幅方向に左右対称の板厚差を有する差厚鋼板の製造方法。
  2. 請求項1に記載の板幅方向に左右対称の板厚差を有する差厚鋼板の製造方法において、最終スタンドの圧延機を、一対のワークロールと一対のバックアップロールからなる4段圧延機とし、該ワークロールの少なくとも一方を孔型ワークロールとし、該孔型ワークロールのプロフィルと逆プロフィルを付与したバックアックロールを採用することを特徴とする板幅方向に左右対称の板厚差を有する差厚鋼板の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載された左右対称の板厚差を有する差厚鋼板の製造方法において、圧延後の被圧延材を、圧延方向及び/又は板幅方向に切断して、左右非対称の圧延製品とすることを特徴とする板幅方向に左右対称の板厚差を有する差厚鋼板の製造方法。
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