JP2014177927A - シリンダボア壁の保温部材 - Google Patents

シリンダボア壁の保温部材 Download PDF

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Abstract

【解決課題】溝状冷却水流路内にシリンダボア壁の保温部材を組み付け易くすることができるシリンダボア壁の保温部材を提供すること。
【解決手段】内燃機関のシリンダブロックのシリンダボア壁の溝状冷却水流路側の壁面に接するための接触面を有し、該接触面を形成する部位がゴム材又は樹脂材からなり、接触面の形成範囲の面積に対する実接触面積の割合((実接触面積/接触面の形成範囲の面積)×100)が1〜50%であることを特徴とするシリンダボア壁の保温部材。
【選択図】図4

Description

本発明は、内燃機関のシリンダブロックのシリンダボア壁の溝状冷却水流路側の壁面に接触させて配置される保温部材に関する。
内燃機関では、ボア内のピストンの上死点で燃料の爆発が起こり、その爆発によりピストンが押し下げられるという構造上、シリンダボア壁の上側は温度が高くなり、下側は温度が低くなる。そのため、シリンダボア壁の上側と下側では、熱変形量に違いが生じ、上側は大きく膨張し、一方、下側の膨張が小さくなる。
その結果、ピストンのシリンダボア壁との摩擦抵抗が大きくなり、これが、燃費を下げる要因となっているので、シリンダボア壁の上側と下側とで熱変形量の違いを少なくすることが求められている。
そこで、従来より、シリンダボア壁の壁温を均一にするために、溝状冷却水流路内にスペーサーを設置し、溝状冷却水流路内の冷却水の水流を調節して、冷却水によるシリンダボア壁の上側の冷却効率と及び下側の冷却効率を制御することが試みられてきた。例えば、特許文献1には、内燃機関のシリンダブロックに形成された溝状冷却用熱媒体流路内に配置されることで溝状冷却用熱媒体流路内を複数の流路に区画する流路区画部材であって、前記溝状冷却用熱媒体流路の深さに満たない高さに形成され、前記溝状冷却用熱媒体流路内をボア側流路と反ボア側流路とに分割する壁部となる流路分割部材と、前記流路分割部材から前記溝状冷却用熱媒体流路の開口部方向に向けて形成され、かつ先端縁部が前記溝状冷却用熱媒体流路の一方の内面を越えた形に可撓性材料で形成されていることにより、前記溝状冷却用熱媒体流路内への挿入完了後は自身の撓み復元力により前記先端縁部が前記内面に対して前記溝状冷却用熱媒体流路の深さ方向の中間位置にて接触することで前記ボア側流路と前記反ボア側流路とを分離する可撓性リップ部材と、を備えたことを特徴とする内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材が開示されている。
ところが、引用文献1の内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材によれば、ある程度のシリンダボア壁の壁温の均一化が図れるので、シリンダボア壁の上側と下側との熱変形量の違いを少なくすることができるものの、近年、更に、シリンダボア壁の上側と下側とで熱変形量の違いを少なくすることが求められている。
そこで、特許文献2には、シリンダボア壁の壁温の均一性が高い内燃機関を提供すること目的とするシリンダボア壁の保温部材が開示されている。この特許文献2では、保温部材の材質としては、ゴム材や樹脂材が挙げられている。
特開2008−31939号公報(特許請求の範囲) 国際公開第2011/162096号(特許請求の範囲)
接触面がゴム材又は樹脂材からなるシリンダボア壁の保温部材は、溝状冷却水流路内に入れ込まれるときに、保温部材の接触面が溝状冷却水流路の壁面に接触しながら、溝状冷却水流路の下に向けて入れ込まれる。そして、接触面を形成する部位がゴム材又は樹脂材からなると、溝状冷却水流路の壁面と接触面との摩擦力が大きくなる。
そのため、シリンダボア壁の保温部材のシリンダブロックへの組み付けのために、大きな力が必要となるため、特別の治具が必要となったり、場合によっては組み付け自体ができなくなったり、あるいは、組み付け作業に時間がかかり過ぎたりするという問題が生じるおそれがある。
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、接触面を形成する部位がゴム材等のエラストマ又は樹脂材からなるシリンダボア壁の保温部材の接触面を加工して、接触面積を減じることにより、シリンダボア壁の保温部材を、溝状冷却水流路内に入れ込むときの摩擦力が低減されて、溝状冷却水流路内にシリンダボア壁の保温部材を組み付け易くすることができるということを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明(1)は、内燃機関のシリンダブロックのシリンダボア壁の溝状冷却水流路側の壁面に接するための接触面を有し、該接触面を形成する部位がエラストマ又は樹脂材からなり、接触面の形成範囲の面積に対する実接触面積の割合((実接触面積/接触面の形成範囲の面積)×100)が1〜50%であることを特徴とするシリンダボア壁の保温部材を提供するものである。
また、本発明(2)は、内燃機関のシリンダブロックのシリンダボア壁の溝状冷却水流路側の壁面に接するための接触面を有し、該接触面を形成する部位がエラストマ又は樹脂材からなり、該接触面に接触面積を減じる加工が施されることにより、該接触面の静摩擦係数を減じる加工が施されていることを特徴とするシリンダボア壁の保温部材を提供するものである。
本発明によれば、溝状冷却水流路内にシリンダボア壁の保温部材を組み付け易くすることができる。
シリンダボア壁の保温部材がシリンダブロックに設置されている状態を示す模式的な平面図である。 図1のx−x線端面図である。 図1中のシリンダブロックの斜視図である。 図1に示すシリンダボア壁の保温部材の模式図である。 シリンダボア壁の保温部材及び固定部材の形態例を示す模式図である。 保温部材1の設置位置を示す図である。 シリンダボア壁の周方向23を示す図である。 溝状冷却水流路内にシリンダボア壁の保温部材を入れ込む様子を示す模式図である。 図4に示すシリンダボア壁の保温部材を接触面側から見たときの図である。 シリンダボア壁の保温部材の形態例を示す模式図である。 シリンダボア壁の保温部材の形態例を示す模式図である。 シリンダボア壁の保温部材の形態例を示す模式図である。
本発明のシリンダボア壁の保温部材及び本発明のシリンダボア壁の保温部材が組み付けられた内燃機関の形態例について、図1〜図4を参照して説明する。図1〜図4は、シリンダボア壁の保温部材及びそれが設置されるシリンダブロックの形態例を示すものであり、図1は、シリンダボア壁の保温部材がシリンダブロックに設置されている状態を示す模式的な平面図であり、図2は、図1のx−x線端面図であり、図3は、図1中のシリンダブロックの斜視図であり、図4は、図1に示すシリンダボア壁の保温部材の模式図であり、(4−1)は平面図であり、(4−2)は図1の端面図であり、(4−3)は側面図である。なお、図1に示すシリンダブロックには、実際には複数の保温部材が設置されるが、図1では、そのうちの1つを記載し、他の記載を省略した。また、図2では、二点鎖線より下側部分については、記載を省略した。
図1及び図3に示すように、保温部材1aが設置される車両搭載用内燃機関のオープンデッキ型のシリンダブロック11には、ピストンが上下するためのボア12、及び冷却水を流すための溝状冷却水流路14が形成されている。そして、ボア12と溝状冷却水流路14とを区切る壁が、シリンダボア壁13である。また、シリンダブロック11には、溝状冷却水流路14へ冷却水を供給するための冷却水供給口15及び冷却水を溝状冷却水流路14から排出するための冷却水排出口16が形成されている。
図4に示すように、シリンダボア壁の保温部材1aは、シリンダボア壁13に接する接触面5aを有している。接触面5aは、シリンダボア壁13の壁面に接することができるように、シリンダボア壁13の壁面に沿った形状となっている。図9に、図4に示すシリンダボア壁の保温部材1aを、接触面側から見たときの図を示すが、図9(A)に示すように、接触面5aには、シリンダボア壁との接触面積を減じることを目的として、接触面5aの左右方向に延びる横溝6が、上下方向に順に複数形成されている。また、シリンダボア壁の保温部材1aには、連結部3a及び対壁接触部4aからなる固定部材2aが取り付けられている。そして、図1及び図2に示すように、接触面5aが、シリンダボア壁13の溝状冷却水流路14側の壁面17に接するように、シリンダボア壁の保温部材1a及び固定部材2aが、溝状冷却水流路14内に設置されている。
なお、内燃機関は、シリンダブロック及びシリンダブロックの溝状冷却水流路内に固定部材により固定される保温部材を有し、シリンダブロック、保温部材及び固定部材の他に、ピストン、シリンダヘッド、ヘッドガスケット等を有する。
そして、図8に示すように、シリンダボア壁の保温部材1aを、シリンダブロック11の溝状冷却水流路14の上側から、溝状冷却水流路14内に入れ込み、溝状冷却水流路14の中下部に設置する。
このようにして、本発明のシリンダボア壁の保温部材の組み付け方法では、シリンダボア壁の保温部材1aを、シリンダブロック11の溝状冷却水流路14内に組み付ける。
本発明の第一の形態のシリンダボア壁の保温部材(以下、シリンダボア壁の保温部材(1)とも記載する。)は、内燃機関のシリンダブロックのシリンダボア壁の溝状冷却水流路側の壁面に接するための接触面を有し、該接触面を形成する部位がエラストマ又は樹脂材からなり、接触面の形成範囲の面積に対する実接触面積の割合((実接触面積/接触面の形成範囲の面積)×100)が1〜50%であることを特徴とするシリンダボア壁の保温部材である。
また、本発明の第二の形態のシリンダボア壁の保温部材(以下、シリンダボア壁の保温部材(2)とも記載する。)は、内燃機関のシリンダブロックのシリンダボア壁の溝状冷却水流路側の壁面に接するための接触面を有し、該接触面を形成する部位がエラストマ又は樹脂材からなり、該接触面に接触面積を減じる加工が施されることにより、該接触面の静摩擦係数を減じる加工が施されていることを特徴とするシリンダボア壁の保温部材である。
シリンダボア壁の保温部材(1)及びシリンダボア壁の保温部材(2)は、内燃機関のシリンダブロックの溝状冷却水流路側のシリンダボア壁の壁面に接するための接触面を有し、接触面を形成する部位がエラストマ又は樹脂材からなる。
シリンダボア壁の保温部材(1)及びシリンダボア壁の保温部材(2)は、接触面が溝状冷却水流路側のシリンダボア壁の壁面に接することにより、溝状冷却水流路側のシリンダボア壁の壁面を覆うための部材である。そのため、シシリンダボア壁の保温部材(1)及びシリンダボア壁の保温部材(2)は、冷却水が溝状冷却水流路側のシリンダボア壁の壁面に直接接触することを防ぐことができる。
シリンダボア壁の保温部材(1)及びシリンダボア壁の保温部材(2)では、溝状冷却水流路側のシリンダボア壁の壁面に接する面である接触面の形状は、溝状冷却水流路側のシリンダボア壁の壁面の形状と合致するように、シリンダブロックの形態例毎に、適宜調節される。
シリンダボア壁の保温部材(1)及びシリンダボア壁の保温部材(2)の接触面を形成している部位は、エラストマ又は樹脂材からなる。エラストマとしては、ソリッドゴム、発砲ゴム等のゴム材、硬質ウレタン、軟質ウレタン等の発砲ウレタン等が挙げられる。接触面を形成している部位の材質としては、耐LLC性(不凍冷却水への耐性)や耐熱性を考慮して、天然ゴム、ブタジエンゴム、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のソリッドゴム;EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、フッ素ゴム等の発砲ゴム;軟質ウレタン、硬質ウレタン;熱可塑性樹脂(ナイロン樹脂など)、熱硬化性樹脂(フェノール樹脂、メラミン樹脂など)等の樹脂材が挙げられる。これらのうち、保温部材の接触面を形成する材質としては、EPDM、NBR等のゴム系材料が、弾性及び密着性に優れ、また、耐熱性が優れる点で、好ましい。
シリンダボア壁の保温部材(1)又はシリンダボア壁の保温部材(2)が、溝状冷却水流路内に設置されることにより、溝状冷却水流路側のシリンダボア壁の保温部位に冷却水が当たらないようにされる。更に、シリンダボア内壁の温度分布が、目的とする温度分布となるように、シリンダボア壁の保温部材(1)又はシリンダボア壁の保温部材(2)の形状、配置、設置位置、数等を適宜選択する。
また、シリンダボア壁の保温部材(1)及びシリンダボア壁の保温部材(2)の適用温度領域は、−40〜200℃である。そのため、シリンダボア壁の保温部材(1)及びシリンダボア壁の保温部材(2)の耐熱性は、好ましくは120℃以上、特に好ましくは150℃以上である。また、シリンダボア壁の保温部材(1)及びシリンダボア壁の保温部材(2)には、耐LLC性が求められる。
シリンダボア壁の保温部材(1)では、接触面の形成範囲の面積に対する実接触面積の割合((実接触面積/接触面の形成範囲の面積)×100)が、1〜50%である。シリンダボア壁の保温部材(1)では、接触面の形成範囲の面積に対する実接触面積の割合が上記範囲にあるので、溝状冷却水流路内にシリンダボア壁の保温部材を入れ込むときのシリンダボア壁と接触面との摩擦力を小さくすることができるため、溝状冷却水流路内にシリンダボア壁の保温部材を入れ込み易くなる。一方、接触面の形成範囲の面積に対する実接触面積の割合が、上記範囲を超えると、溝状冷却水流路内にシリンダボア壁の保温部材を入れ込むときに、シリンダボア壁と接触面との摩擦力が大きくなり過ぎ、また、上記範囲未満の面積割合の接触面の形成が難しくなる。
ここで、図9を参照して、本発明における接触面の形成範囲の面積に対する実接触面積の割合((実接触面積/接触面の形成範囲の面積)×100)(%)を説明する。本発明において、接触面の形成範囲の面積とは、接触面が形成されている範囲の面積であり、図4に示す形態例では、図9(B)の斜線で示す範囲の面積が接触面の形成範囲の面積である。また、実接触面積とは、実際にシリンダボア壁の壁面と接触する接触面の面積であり、接触面の形成範囲の面積からシリンダボア壁の壁面には接触しない部分(図4に示す形態例では、横溝6の面積)の面積を減じた面積であり、図4に示す形態例では、図9(C)の斜線で示す範囲の面積が実接触面積である。また、図10(A)に示す形態例のように、接触面側から見たときの接触面の形成範囲の形状が略ロの字形状であり、接触面には左右に延びる横溝6が上下方向に複数本形成されている形態例の場合、図10(B)の斜線で示す範囲の面積が接触面の形成範囲の面積であり、また、図10(C)の斜線で示す範囲の面積が実接触面積である。
シリンダボア壁の保温部材(2)では、接触面に接触面積を減じる加工が施されることにより、接触面の静摩擦係数を減じる加工が施されている。シリンダボア壁の保温部材(2)では、接触面に実接触面積を減じる加工が施されていることにより、接触面の静摩擦係数を減じる加工が施されているので、溝状冷却水流路内にシリンダボア壁の保温部材を入れ込むときのシリンダボア壁と接触面との摩擦力を小さくすることができるため、溝状冷却水流路内にシリンダボア壁の保温部材を入れ込み易くすることができる。
シリンダボア壁の保温部材(2)では、接触面に対して施される接触面積を減じる加工は、接触面の実接触面積を減じることにより静摩擦係数を減じることができる加工であれば、特に制限されない。接触面の静摩擦係数は、以下に述べる静摩擦係数測定試験において、0.01〜0.5であることが好ましい。接触面積を減じる加工としては、例えば、図4及び図10に示す形態例のような接触面に複数の横溝を形成させる加工、接触面に複数の縦溝を形成させる加工、図11に示す形態例のように、接触面に多数の膨らみを形成させる方法等が挙げられる。
図11は、本発明のシリンダボア壁の保温部材の形態例を示す模式図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)の断面である。図11に示すように、シリンダボア壁の保温部材23は、シリンダボア壁の壁面に沿った形状を有する基体部26と、基体部26の接触面側に形成されている略半球状の膨らみ24と、からなる。つまり、シリンダボア壁の保温部材23は、シリンダボア壁に接する側に多数の略半球状の膨らみ24を有しており、略半球状の膨らみ24及び基体部26はエラストマ又は樹脂材からなる。また、基体部26には、連結部3a及び対壁接触部4aからなる固定部材2aが取り付けられている。この略半球状の膨らみ24は、シリンダボア壁の保温部材23が、溝状冷却水流路内に入れ込まれるときに、シリンダボア壁に接する側が押し潰されるように変形し、略半球状の膨らみ24の表面の一部が、シリンダボア壁の壁面と接触することになる。よって、シリンダボア壁の保温部材23が溝状冷却水流路内に入れ込まれるときに変形して、シリンダボア壁の壁面に接触している略半球状の膨らみ24の表面部分が、接触面25である。シリンダボア壁の保温部材23では、シリンダボア壁の保温部材23が、溝状冷却水流路内に入れ込まれるときに、略半球状の膨らみ24の表面の全ては、シリンダボア壁の壁面とは接触せず、略半球状の膨らみ24の表面の一部のみが、シリンダボア壁の壁面と接触することになるので、シリンダボア壁の保温部材23の接触面には、接触面積を減じる加工が施されている。
ここで、本発明における接触面の静摩擦係数の測定方法を説明する。先ず、表面粗さがエンジンブロックの溝状冷却水流路の壁面の表面粗さと同じになるように研磨されたアルミニウム合金製の平板と、40mm×40mm×15mmに切り出した試験片と、試験片を貼り付けて試験片に荷重を負荷するための重りを用意する。次いで、静摩擦係数の測定面(アルミニウム合金製の平板に接触する側の面)とは反対側の面を重りの中央に貼り付ける。次いで、アルミニウム合金製の平板に、試験片の静摩擦係数の測定面が接するように、アルミニウム合金製の平板上に、試験片が貼り付けられた重りを、平板と重りで試験片を挟み込むようにして載せる。次いで、重りを水平方向に引張り、そのときの最大引張荷重を測定する。次いで、次式により静摩擦係数を求める。
静摩擦係数=最大引張荷重(N)/重りの重さ(N)
なお、接触面の静摩擦係数は、接触面を形成する部位の材質の種類、硬度、表面加工形状等により異なるため、接触面の静摩擦係数が上記範囲となるように、適宜、接触面を形成する部位の材質の種類、硬度、表面加工形状等を選択する。
また、シリンダボア壁の保温部材は、形状を保持するために、保温部材の内部又は接触面とは反対の裏面に、補強材を有してもよい。
シリンダボア壁の保温部材は、固定部材により、接触面がシリンダボア壁に接するように固定される。図1、図2及び図4に示す形態例では、固定部材2aにより、シリンダボア壁の保温部材1aが固定される。固定部材2aは、連結部3a及び対壁接触部4aからなる。対壁接触部4aは、シリンダボア壁13とは反対側の溝状冷却水流路14の壁面18に接するので、対壁接触部4aの接触面の表面形状は、壁面18の形状である。連結部3aは、保温部材1aと対壁接触部とを連結するものである。そして、連結部3aは、図4中(4−3)に示すように、冷却水が流れる方向21に上り傾斜の形状であることが、冷却水が流れた時に、冷却水の水流で、保温部材1a及び対壁接触部4aに、溝状冷却水流路14の下方に向かって押し付けられる力が加えられるので、保温部材1aが、シリンダボア壁13に押し付けられ固定され易くなる点で好ましい。なお、図4中(4−3)では、連結部3aの輪郭を点線で示した。
シリンダボア壁の保温部材において、固定部材としては、図1、図2及び図4に示す形態例に限定されるものではなく、例えば、図5に示すように、連結部3b、対壁接触部4b及び埋め込み部22からなる固定部材1bが挙げられる。図5は、シリンダボア壁の保温部材及び固定部材の形態例を示す模式図であり、図5中(5−1)は固定部材1bの平面図であり、(5−2)は(5−1)のy−y線で切った端面図である。固定部材1bでは、埋め込み部22は、保温部材1bの内部に埋め込まれている。そして、連結部3b、対壁接触部4b及び埋め込み部22のバネ付勢により、保温部材1bが、シリンダボア壁に押し付けられて固定される。
なお、これらの固定部材は、あくまでも形態例であり、保温部材の接触面がシリンダボア壁の壁面に接するように、保温部材をシリンダブロックの溝状冷却水流路内に固定できるものであればよい。
図1、図2及び図4に示す形態例では、接触面の形成範囲の形状は矩形状であるが、シリンダボア壁の保温部材の接触面の形成範囲の形状は、これに限定されるものではない。例えば、他には、図12に示す形態例が挙げられる。図12は、シリンダボア壁の保温部材の形態例を示す模式図であり、(12−1)は平面図であり、(12−2)は端面図であり、(12−3)は接触面側から見た図である。図12中、シリンダボア壁の保温部材31は、シリンダボア壁に接する接触面35を有している。接触面35は、シリンダボア壁の壁面に接することができるように、シリンダボア壁の壁面に沿った形状となっている。接触面35には、左右に延びる横溝40が、上下方向に順に形成されている。そして、(12−3)に示すように、接触面35を接触面35側から見たとき(図9の(12−2)の符号39で示す方向に見たとき)の接触面の形成範囲の形状は、シリンダボア壁の壁面の保温部位の外縁近傍を囲むような略ロの字形状となっている。シリンダボア壁の保温部材31は、保温部材の固定板36に固定され、固定板36には、連結部3a及び対壁接触部4aからなる固定部材2aが取り付けられている。
シリンダボア壁の保温部材31では、シリンダボア壁の保温部材31の接触面35の形成範囲の形状は、接触面側から見たときに溝状冷却水流路の壁面の保温部位の外縁近傍を囲む略ロの字状であるので、接触面35は、溝状冷却水流路の壁面の保温部位の外縁近傍とのみ接触し、溝状冷却水流路の壁面の保温部位の外縁より内側の保温部位に接触する面はない。保温部材の固定板36には、貫通孔37が形成されている。この貫通孔37は、シリンダボア壁の保温部材31が溝状冷却水流路内に設置され、溝状冷却水流路に冷却水が流されたときに、貫通孔37を通って保温部材の内側部分38に冷却水を流れ込ませるための貫通孔である。そして、保温部材の内側部分38内に入った冷却水は、溝状冷却水流路の壁面とシリンダボア壁の保温部材31と保温部材の固定板36との間に閉じ込められた状態となり、保温部材の固定板36の外側を流れる冷却水との入れ替わりが少ないために、その温度が高くなる。そのことにより、溝状冷却水流路の壁面の保温部位が、温度が高くなった保温部材の内側部分38の冷却水と、溝状冷却水流路の壁面の保温部位の外縁近傍と接触するシリンダボア壁の保温部材31とにより覆われて、保温される。
なお、シリンダボア壁の保温部材の全体形状及び固定部材の形状は、溝状冷却水流路に冷却水が流れるのを妨げる形状でなければ、特に制限されない。
図1に示す形態例では、シリンダボア壁の保温部材により、3つのシリンダボアのうち中央のシリンダボアの片側の壁面のみが保温されているが、これに限定されるものではなく、図6に示す形態例のように、シリンダボア壁の周方向の全部が覆われていてもよい。あるいは、シリンダボア壁の周方向の一部に、シリンダボア壁の保温部材に覆われていない部分があってもよい。なお、図6では、黒く塗りつぶした部分が、保温部材1の設置位置を示す。また、シリンダボア壁の周方向23とは、図7に示すように、シリンダボア壁13の外周を囲む方向であり、シリンダボア壁13を横から見たときのシリンダボア壁13の左右方向である。図7中、(7−1)はシリンダボア壁13のみを示す平面図であり、(7−2)はシリンダボア壁13のみを示す正面図である。
図1に示す形態例では、シリンダボア壁の保温部材は、3つのシリンダボアのうちの1つのシリンダボアの片側の壁面のみと接触しているが、これに限定されるものではなく、例えば、シリンダボア壁の保温部材は、2つ以上のシリンダボアのボア壁と接触できるような形状であってもよい。2つ以上のシリンダボアのボア壁と接触できるようなシリンダボア壁の保温部材としては、例えば、図1に示す形態例のシリンダボア壁の保温部材1aが、左右に2つ以上連結されたものが挙げられる。
内燃機関において、シリンダボア壁の上下方向において、シリンダボア壁の保温部材の設置位置は、シリンダボア壁の保温部材の上下方向の上端の位置が、溝状冷却水流路の上端を基準として、溝状冷却水流路側の上端から下端までの長さの1/3の長さ分下側の位置より下側である。なお、溝状冷却水流路の上端を基準として、溝状冷却水流路の上端から下端までの長さの1/3の長さ分下側の位置とは、図2中、溝状冷却水流路の上端131から下端132までの長さの1/3の長さ分だけ、溝状冷却水流路の上端131より下側に下がった位置を指す。なお、シリンダボア壁の保温部材の上下方向の下端の位置は、溝状冷却水流路の下端132と一致していることが好ましいが、シリンダボア壁の保温部材の作製上の都合や、溝状冷却水流路の形状等により、シリンダボア壁の保温部材の上下方向の下端の位置が、溝状冷却水流路の下端132より上であってもよい。本発明の効果を損なわない程度であれば、シリンダボア壁の保温部材の上下方向の下端の位置が、溝状冷却水流路の下端132より上にあってもよい。
1、1a、1b、31 保温部材
2a、2b 固定部材
3a、3b 連結部
4a、4b 対壁接触部
5a、5b、25、35 接触面
6、40 横溝
8 接触面の形成範囲の面積
9 実接触面積
11 シリンダブロック
12 ボア
13 シリンダボア壁
14 溝状冷却水流路
15 冷却水供給口
16 冷却水排出口
17 シリンダボア壁13の溝状冷却水流路14側の壁面
18 シリンダボア壁13とは反対側の溝状冷却水流路14の壁面
21 冷却水が流れる方向
22 埋め込み部
23 シリンダボア壁の周方向
24 半球状の膨らみ
26 基体部
36 保温部材の固定板
37 貫通孔
131 溝状冷却水流路の上端
132 溝状冷却水流路の下端

Claims (3)

  1. 内燃機関のシリンダブロックのシリンダボア壁の溝状冷却水流路側の壁面に接するための接触面を有し、該接触面を形成する部位がエラストマ又は樹脂材からなり、接触面の形成範囲の面積に対する実接触面積の割合((実接触面積/接触面の形成範囲の面積)×100)が1〜50%であることを特徴とするシリンダボア壁の保温部材。
  2. 内燃機関のシリンダブロックのシリンダボア壁の溝状冷却水流路側の壁面に接するための接触面を有し、該接触面を形成する部位がエラストマ又は樹脂材からなり、該接触面に接触面積を減じる加工が施されることにより、該接触面の静摩擦係数を減じる加工が施されていることを特徴とするシリンダボア壁の保温部材。
  3. 前記接触面を形成する部位の材質が、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム又はフッ素ゴムであることを特徴とする請求項1又は2いずれか1項記載のシリンダボア壁の保温部材。
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