JP2014177202A - 鉄道車両用空力ブレーキ装置 - Google Patents

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創 高見
Tetsuhiro Suyama
哲宏 須山
Katsuji Takada
勝治 高田
Kohei Yamada
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Abstract

【課題】小型化と収容空間の低減を両立した空力ブレーキ装置を実現する。
【解決手段】ロック解除で僅かに浮き上がり走行風の空気抵抗で第1揺動軸41で揺動・起立する第1空力ブレーキ板4を備える。ロック機構80は、モータ駆動軸102を解除方向(反時計回り)に回すことで解除される。このとき、クラッチ120は、モータ側噛合突起122が断切角度範囲へ移動し「切れる」。助勢トルクはそのまま作用し、第1空力ブレーキ板4は走行風の空気抵抗のみで自然と起立姿勢に至るので、ブレーキ作動用の大型アクチュエータは不要となる。起立過程で、揺動軸側噛合突起126が断切角度範囲を詰めてモータ側噛合突起122に接近する。モータ駆動軸102を復帰方向(時計回り)に逆回動させると、モータ側噛合突起122が揺動軸側噛合突起126を押して「クラッチ入り」、第1空力ブレーキ板4を格納姿勢に復帰させることができる。
【選択図】図12

Description

本発明は、鉄道車両用の空力ブレーキ装置に関する。
高速移動する車両のブレーキとして空気抵抗を増加させて減速させる空力ブレーキ装置が研究されている。例えば、高速鉄道への搭載が想定された空力ブレーキ装置では、空力ブレーキ板を車両の屋根から起立させるヒンジ方式の空力ブレーキ装置(例えば、特許文献1参照)や、走行風と直交する方向へ空力ブレーキ板を直線的に突出させるポップアップ方式の空力ブレーキ装置(例えば、特許文献2参照)、回転機構を用いて走行風と直交する方向へ空力ブレーキ板を突出させるロータリ方式の空力ブレーキ装置(例えば、特許文献3参照)が知られるところである。
特開平7−277158号公報 特開2003−2194号公報 特開2005−41325号公報
ポップアップ方式やロータリ方式は、空力ブレーキ板の駆動機構に作用する風圧の影響がヒンジ方式よりも低減されるので比較的出力が小さいアクチュエータで構成できるメリットがある。しかし、空力ブレーキ板が上下方向へ移動するため収容したときの装置の高さ寸法がヒンジ方式よりも数倍程度大きくなり、その結果空力ブレーキ装置を客室部には設置できず例えば機器室などを別途設ける必要がある。また、空力ブレーキ板を案内し且つ制動中に風圧に耐えて保持するために強固なスライド支持機構を設けなければならない。すなわち、空力ブレーキ板を収容するための収容空間と空力ブレーキ板の支持機構が客室空間を圧迫する課題があった。
一方、ヒンジ方式は、装置を薄型化できるため航空機などではメリットが高いが、駆動時に風圧の影響を直接受けるため、大出力のアクチュエータが必要であった。また、鉄道では、電源損失時等の緊急時に確実に作動し、且つ、不要時には空力ブレーキ板を未作動状態に確実に保持し、加えて、作動状態から未作動状態への復元を容易にする、といった機構が求められる。
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものである。
以上の課題を解決するための第1の発明は、揺動軸で回転することで格納姿勢と起立姿勢とに変位可能な空力ブレーキ板(例えば、図6の第1空力ブレーキ板4、第2空力ブレーキ板6)と、
ロック保持力(例えば、図7のロック保持力Fh)が与えられている間、前記空力ブレーキ板を前記格納姿勢に保持するロック機構(例えば、図7のロック機構80、ロック解除バネ91)と、
前記格納姿勢にある前記空力ブレーキ板を前記起立姿勢に変位させる方向に付勢力を付与する付勢手段(例えば、図7の起立付勢部76、トーションバネ77)と、
モータ駆動軸(例えば、図7のモータ駆動軸102)と、
前記モータ駆動軸の制動力(例えば、図7のギアヘッド100bのセルフロックによる制動力)又は回転力を前記ロック保持力に変換して前記ロック機構へ伝達する伝達手段(例えば、図7及び図12の揺動腕104、ロック操作ロッド95、係合ロッド93)と、
前記モータ駆動軸と前記揺動軸とを接続するクラッチであって、噛み合い方向が逆になったときに所定の断切角度範囲を介して接続するクラッチ(例えば、図7及び図10のクラッチ120)と、を備え、前記クラッチにより前記モータ駆動軸と前記揺動軸とが接続され、前記モータ駆動軸の回転力によって前記空力ブレーキ板が前記格納姿勢とされて後、前記モータ駆動軸が逆回転力可能となって前記ロック機構のロックが解除され、前記空力ブレーキ板が前記格納姿勢から前記起立姿勢に至るまでを前記所定の断切角度範囲として少なくとも含むように構成された鉄道車両用空力ブレーキ装置である。
第1の発明によれば、ブレーキ未作動状態において格納姿勢にあった空力ブレーキ板は、ロック機構によるロックが解除されると、付勢手段の付勢力が有効に作用して、起立姿勢に向けて初期の変位をする。つまり、走行中は無駄な空気抵抗を生まないように寝ていた空力ブレーキ板が、初期の変位で少し浮き上がる。これにより、空力ブレーキ板は走行風を受けて制動力を発揮し始める。
一方、クラッチは、ロック機構の変位に伴って空力ブレーキ板の開き方向の断切角度範囲の間は噛み合いが復元しない状態となる。つまり、揺動軸の回動はモータ駆動軸へは伝達されない「クラッチが切れた」状態となる。
空力ブレーキ板が初期の変位で浮き上がることで走行風をはらめば、揺動軸には空力ブレーキ板の起立姿勢への変位を促進する助勢トルクが作用する。もし、クラッチが切れていなければ、助勢トルクはモータ駆動軸の回動のために消費され、空力ブレーキ板は初期の変位の状態で止まってしまう。従来技術であれば、起立を確実にさせるためにモータ駆動軸を起立方向へ回転させることで対処したことであろう。しかし、本発明では、クラッチが切れることで助勢トルクがモータ駆動軸側へ伝達されて消費されることがない。そのため、助勢トルクはそのまま空力ブレーキ板の起立を促進する。つまり、制御や動力の必要なアクチュエータなど無くとも空力ブレーキ板を自然と起立させることができる。
このように、本発明によれば、空力ブレーキ板を完全に起立させるための大型アクチュエータを必要とせず、小型化と収容空間の低減を両立した空力ブレーキ装置を実現することができる。また、緊急時における電源損失状態によってロック保持力が自然と低減・消失する構成であれば、自動的にロックが解除され、ブレーキが作動することになるので、電源損失を想定した非常用ブレーキとしても利用できる。
第2の発明は、前記付勢手段が、走行風による助勢トルクが、自重により前記空力ブレーキ板が前記格納姿勢に復元しようとする復元トルクを上回る姿勢まで、前記空力ブレーキ板を部分起立させるよう付勢する、第1の発明の鉄道車両用空力ブレーキ装置である。
第2の発明によれば、第1の発明と同様の効果が得られるとともに、ロック解除後の初期の変位を不可逆とすることで、ブレーキの作動不良が起きないようできる。もし、付勢手段を、バネ等で実現すれば、ここでもアクチュエータを不要とすることができる。
第3の形態は、前記ロック機構が、前記空力ブレーキ板に設けられた被係合部と係合する係合爪であって、
所定軸(例えば、図9のフック回転軸83)で回転することでロック姿勢とロック解除姿勢とに変位可能であり、前記ロック姿勢において頭頂面(例えば、図9の頭頂面82s)が前記空力ブレーキ板の変位に伴う前記被係合部(例えば、図9のロックピン81)の移動軌跡に対して傾斜して交差する角度を有し、当該交差時に揺動することで一時的にロック解除姿勢の方向に回転する係合爪(例えば、図9のフック82)と、
前記係合爪を前記ロック解除姿勢に変位させる方向に付勢力を付与する解除バネ(例えば、図7のロック解除バネ91)と、を有し、
前記伝達手段は、前記解除バネの付勢力に抗して前記係合爪を前記ロック姿勢に変位及び保持する力として前記ロック保持力を伝達するよう構成された、第1又は第2の発明の鉄道車両用空力ブレーキ装置である。
第3の発明によれば、第1又は第2の発明と同様の効果が得られる。そして、第3の発明では、ロック機構の構成を、係合爪で被係合部を引っ掛けて止める構成とする。この係合爪は、その頭頂面(空力ブレーキ板を格納姿勢に戻そうとする時に被係合部と最初に当接する面)が、空力ブレーキ板の変位に伴う被係合部の移動軌跡に対して傾斜して交差する角度を有し、更に、空力ブレーキ板を格納姿勢に戻そうとする時に被係合部から受ける力でロック解除姿勢に一時的に変位可能である。よって、起立姿勢にある空力ブレーキ板を格納姿勢に変位させるだけで、係合爪の方が適当に逃げて、空力ブレーキ板が格納姿勢に至ることができ、また格納姿勢に至ることで自動的にロックが係ることになる。ロック機構を駆動するためのアクチュエータを備える必要は無く、更なる小型化・軽量化に寄与する。
係合爪を付勢する構成に関してより好適には、第4の発明として、前記ロック機構が、前記係合爪を前記ロック姿勢に変位させる方向に、前記解除バネより小さい付勢力を付与するロック姿勢助勢バネ(例えば、図9のトーションバネ85)を更に有する、第3の発明の鉄道車両用空力ブレーキ装置を構成することができる。
第5の発明は、第1及び第2の前記揺動軸で回転する第1及び第2の前記空力ブレーキ板を、走行風に対して一方が助勢方向、他方が抗勢方向となるように車両幅方向に並べて配置するとともに、双方の空力ブレーキ板が連動して回転するように前記第1及び第2の揺動軸を連係する連係手段(例えば、図2及び図7の第1バランスギア42、第2バランスギア62)を更に備え、
前記ロック機構、前記付勢手段、前記伝達手段及び前記クラッチを、前記第1の空力ブレーキ板及び前記第2の空力ブレーキ板の一方又はそれぞれに対応して設けた、
第1〜第4の何れかの発明の鉄道車両用空力ブレーキ装置である。
第5の発明によれば、第1〜第4の発明の何れかと同様の効果が得られる構成でありながら、複数の空力ブレーキ板を備えることができる。また、ブレーキ作動当初は、第1の空力ブレーキ板では助勢方向に起こされ、同時に、第2の空力ブレーキ板では抗勢方向に起こされることになる。前者では走行風をはらむ格好となるので、はらんだ風による空気抵抗はブレーキ板の起立を助ける助勢トルクを生むことになる。後者では走行風を受け流す格好となるのでブレーキ板の起立を抑制する抗勢トルクとして作用するが、その大きさは第1の空力ブレーキ板の助勢トルクよりも小さくなる。そして、第1及び第2の空力ブレーキ板の揺動軸は、双方が連動して起立回転するように連係されている。従って、第1及び第2の空気ブレーキ板を少し起こした部分起立状態とするだけで、第1の空力ブレーキ板に生じる助勢トルクから第2の空力ブレーキ板の抗勢トルクを差し引いても、助勢トルクが優勢となり、両空気ブレーキ板は自然と全起立状態に向かって揺動を続けることとなる。この関係は、車両の進行方向が逆転したとしても変わらない。なお、走行速度が高い場合に第1の空力ブレーキ板に生じる過大な助勢トルクは第2の空力ブレーキ板の抗勢トルクにより減じられ、走行速度が高い場合であっても空力ブレーキ板が衝撃的に立ち上がることはない。
よって、ポップアップ方式やロータリ方式のようなスライド支持機構も不要で、且つ従来のヒンジ式の空力ブレーキ装置のように大出力のアクチュエータや緩衝装置を必要としない、駆動機構の小さな空力ブレーキ装置を実現できる。駆動機構が小さい分、収容空間が小さくなり、鉄道車両に搭載しても従来の空力ブレーキ装置よりも客室を圧迫しないで済む。
空力ブレーキ装置と、ブレーキ未作動状態の当該装置を搭載した鉄道車両の例を示す斜視外観図。 空力ブレーキ装置の作動原理を説明するための概略図。 空力ブレーキ板の起立角度と、助勢抗力D1、抗勢抗力D2、合成抗力D3、の計測例を示すグラフ。 空力ブレーキ板の起立角度と、助勢トルクから抗勢トルクを差し引いた起立トルクの計測例を示すグラフ。 未作動状態の空力ブレーキ装置の斜視外観図。 主外装板を不図示とした作動状態の空力ブレーキ装置の作動状態に相当する斜視外観図。 第1空力ブレーキ板、第2空力ブレーキ板、主外装板を不図示とした、内部構造の俯瞰図。 第1空力ブレーキ板が格納姿勢にある場合のロック機構の正面図(図7のC−C面)。 ロック機構に係る構造をわかり易く抜き出したロック状態の縦断面図(図7のB−B断面)。 クラッチまわりの拡大断面図(図7のD部分)。 クラッチの動作を説明するための部分拡大断面図(図10のE−E断面)。 空力ブレーキ板が全閉のブレーキ未作動状態を示す断面図。 ロック機構が解除された直後の状態を示す断面図。 空力ブレーキ板が起立姿勢へ変位する初期段階の状態を示す断面図。 空力ブレーキ板が全開のブレーキ作動状態を示す断面図。 ロック機構が復帰した状態を示す断面図。 空力ブレーキ板を格納状態に復帰させる過程に於いてロックシャフトがフックに当った状態を示す断面図。
図1は、本発明を適用した空力ブレーキ装置と、ブレーキ未作動状態の当該装置を搭載した鉄道車両の例を示す斜視外観図である。
本実施形態の空力ブレーキ装置2は、第1空力ブレーキ板4と第2空力ブレーキ板6とを連動させて起立させ、走行風(図中の白矢印)に当てて空気抵抗を増大させて制動力を得るブレーキ装置である。本実施形態の鉄道車両1は、車両の屋根部に上面視矩形の収容空間を車両長手方向に複数備えており、各収容空間には左右一対に(車両幅方向に)並べた空力ブレーキ装置2R,2Lが収容・固定されている。
左右の空力ブレーキ装置2R,2Lは互いに左右対称構造を有しており、第1空力ブレーキ板4或いは第2空力ブレーキ板6が隣り合うように車両幅方向に並べて配置される。図1の例で言うと、左右の空力ブレーキ装置2R,2Lは、それぞれの第2空力ブレーキ板6が隣り合う(中央寄りになる)ように並べて配置されている。第1空力ブレーキ板4及び第2空力ブレーキ板6以外の上面は主外装板5により覆われており、空力ブレーキ装置2R,2Lが未作動の状態では、全体として空力ブレーキ装置2R,2Lの上面は鉄道車両1の車体上面とフラットになり、通常走行中は車両の空力特性に影響を与えないように考慮されている。
以降では、右方の空力ブレーキ装置2Rを代表として取り上げて構造と動作について詳細に説明する。左方の空力ブレーキ装置2Lは、構造を右方の空力ブレーキ装置2Rの左右対称とすれば同様に実現できるので説明は省略する。
[作動原理の説明]
図2は、空力ブレーキ装置2Rの作動原理を説明するための概略図であって、(1)上面図、(2)ブレーキ作動過程における空力ブレーキ板の変位例を示すV−V断面図である。尚、理解を容易にするために一部構成要素は図示省略している。
図2(1)に示すように、空力ブレーキ装置2Rは、上面視矩形を成しており、短辺方向が鉄道車両1の進行方向に向けて鉄道車両1に装備されている。よって、鉄道車両1の進行方向を基準とすれば、図2では図の左が「前」、右が「後」となる。
第1空力ブレーキ板4は、左右方向(図の上下方向)に長辺を有する上面視略矩形型の板であって、ブレーキ作動時は後端側に設けられた第1揺動軸41で回転し、前端が持ち上がって起立する。第2空力ブレーキ板6は、同様に左右方向に長辺を有する上面視略矩形型の板であり、ブレーキ作動時は後端側(空力ブレーキ装置2R全体としてみれば前端側)に設けられた第2揺動軸61で回転し、前端側(空力ブレーキ装置2R全体としてみれば後端側)が持ち上がって起立する。
第1空力ブレーキ板4の第1揺動軸41と第2空力ブレーキ板6の第2揺動軸61は、一端が互いに近接するように平行に枢支されている。そして、第1揺動軸41の近接側端部には第1バランスギア42が設けられ、第2揺動軸61の近接側端部には第2バランスギア62が設けられている。第1バランスギア42及び第2バランスギア62は互いに噛み合っていて、双方の空力ブレーキ板が連動して回転するように第1揺動軸41及び第1揺動軸41を連係する。
ブレーキ未作動の状態では、図2(2)の(i)に示すように、第1空力ブレーキ板4と第2空力ブレーキ板6は「格納姿勢」にある。
ブレーキが作動を開始すると、図2(2)の(ii)に示すように、第1空力ブレーキ板4と第2空力ブレーキ板6が、自重によって元の格納姿勢に戻ろうとする「復元トルク」に打ち勝つように付勢され僅かに浮き上がる。すると、第1空力ブレーキ板4は走行風を「はらむ」ため、第1空力ブレーキ板4には起立姿勢への変位を促進する方向へ助勢抗力D1が生じ「助勢トルク」となって第1揺動軸41及び第1バランスギア42を(図で言うと)時計回りに回そうとする。第2空力ブレーキ板6も走行風を受けるが、第2揺動軸61が風上にある関係から走行風を「受け流す」ことになる。よって、第2空力ブレーキ板6には起立姿勢への変位に抵抗しようとする方向に抗勢抗力D2が生じ、第2揺動軸61及び第2バランスギア62は反時計回りに回ろうとする「抗勢トルク」として作用する。
図3は、空力ブレーキ板の起立角度と、第1空力ブレーキ板4に生じる助勢抗力D1、第2空力ブレーキ板6に生じる抗勢抗力D2、それらの合成抗力D3、の三つの計測例を示すグラフである。そして、図4は、空力ブレーキ板の起立角度と、第1揺動軸41及び第1バランスギア42に生じる助勢トルクから、第2揺動軸61及び第2バランスギア42に生じる抗勢トルクを差し引いた起立トルクの計測例を示すグラフである。
図3に示すように、第1空力ブレーキ板4は走行風を「はらむ」ため、第1空力ブレーキ板4に生じる助勢抗力D1は空力ブレーキ板の起立が進むに従い増加するが、第2空力ブレーキ板6は走行風を「受け流す」ので抗勢抗力D2は常に助勢抗力D1より小さくなる。第1バランスギア42と第2バランスギア62は互いに反対方向に回転しようとするが、結果的には図4のグラフに示すように、第1バランスギア42に生じる助勢トルクが、常に第2バランスギア62の抗勢トルク上回ることとなる。よって、図2(2)の(iii)に示すように、第1揺動軸41及び第1バランスギア42が、第2バランスギア62を介して第2揺動軸61を(図で言うと)反時計回りに回動させ、第2空力ブレーキ板6の起立を促進させる。そして、終には図2(2)の(iv)に示すように、第1空力ブレーキ板4および第2空力ブレーキ板6は「起立姿勢」へ変位するに至る。
このように、第1バランスギア42及び第2バランスギア62は、双方の空力ブレーキ板が連動して回転するように第1揺動軸41及び第2揺動軸61を連係する連係手段として機能し、第1空力ブレーキ板4と第2空力ブレーキ板6が、僅かに浮き上がりさえすれば、大型のアクチュエータで駆動させなくとも、空力ブレーキ板が起立してブレーキを作動させることができるのである。そして、空力ブレーキ装置2Rは、第1空力ブレーキ板4及び第2空力ブレーキ板6を、走行風に対して一方が助勢方向、他方が抗勢方向となるように車両幅方向に並べた構成を有するので、鉄道車両1の進行方向が反転したとしても、進行方向如何に係わらず同様に作用する。
[構造の詳細な説明]
では、より詳細な構造について説明する。
図5は、未作動状態の空力ブレーキ装置2Rの斜視外観図である。
図6は、主外装板5を不図示とした作動状態の空力ブレーキ装置2Rの斜視外観図であって、図6(1)が図5の作動状態に相当する。
図7は、第1空力ブレーキ板4、第2空力ブレーキ板6、主外装板5を不図示とした、内部構造の俯瞰図である。
図6及び図7に示すように、第1揺動軸41及び第2揺動軸61は、それぞれ軸受部72により装置基底板70の上面に、軸を左右に向けて軸回転自在に固定されている。そして、これらの揺動軸には、それぞれ空力ブレーキ板を固定するための固定腕部40,60と、起立姿勢への変位初期段階において格納姿勢にある空力ブレーキ板を起立姿勢に変位させる方向に付勢力を付与する起立付勢部76とを備える。
起立付勢部76は、例えばトーションバネ77で実現できる。トーションバネ77は、「ひげバネ」とも呼ばれ、コイル軸に第1揺動軸41或いは第2揺動軸61を挿通させ、一方の腕を空力ブレーキ板の裏面に当て、他方の腕を装置基底板70の上面に当てて腕固定具78でもって固定される。第1空力ブレーキ板4と第2空力ブレーキ板6が格納姿勢にあると、トーションバネ77のコイル軸まわりにトルクを受ける。トーションバネ77の付勢力は、特に第1空力ブレーキ板4について、走行風により生じる助勢トルクが自重により元の格納姿勢に復元しようとする復元トルクを上回る姿勢まで部分起立させることができるように設定されている。
空力ブレーキ装置2Rは、第1空力ブレーキ板4の下に、起立付勢部76の付勢力や、車両外部の圧力変動(例えば、鉄道車両1がトンネルに出入りする際に作用する圧力変動など)に打ち勝って第1空力ブレーキ板4の格納状態を維持するためのロック機構80を備える。
図8は、ブレーキ未作動状態すなわち第1空力ブレーキ板4が格納姿勢にある場合のロック機構80の正面図(図7のC−C面)である。図9は、ロック機構80に係る構造をわかり易く抜き出した縦断面図(図7のB−B断面)であって、ロック状態を示している。
図7〜図9に示すように、ロック機構80は、第1空力ブレーキ板4の下面側、第1揺動軸41よりも前端寄りの位置に、第1揺動軸41と平行に吊り下げられたロックピン81(被係合部)と、これを鈎状部の内側(喉側)で引っ掛けて係合し係止するためのフック82(鈎)と、を有する。
フック82は、第1揺動軸41と平行に装置基底板70に設置されたフック回転軸83に遊嵌し、(装置基底板70を水平とすれば垂直面で)ロックが作動している状態の「ロック姿勢」からロックが解除された「ロック解除姿勢」へ揺動・変位できる。図8及び図9では、フック82は「ロック姿勢」にある。鈎が上にあり、その先端部を第1揺動軸41とは反対側すなわち第1空力ブレーキ板4の揺動端側(前端側)へ向けている。
また、フック82は、フック82の頭頂面82s(鈎爪部分の上面)は、鈎先端の方向へ傾斜した斜面を構成している。望ましくは、頭頂面82sはフック回転軸83を中心とした円弧の一部を成している。換言すると、ロック姿勢において頭頂面82sが第1空力ブレーキ板4の変位に伴うロックピン81の移動軌跡に対して傾斜して交差する角度を有している。
フック回転軸83には、フック82の揺動位置とは別の位置にストッパー片84が一体に設けられている。このストッパー片84とフック82との間には、フック回転軸83をコイル軸に挿通するようにトーションバネ85が設置されている。そして、トーションバネ85の2本の腕は、それぞれストッパー片84とフック82に掛けられている。すなわち、フック82は、ロック方向(図9における反時計回り方向)に回転するようにフック回転軸83の軸回りに付勢されている。一方、トーションバネ85の付勢力に抗してロック解除方向(図9における時計回り方向)に回転・揺動することができる。詳細は後述するが、フック82の頭頂面82sの形状と、フック82がロック解除方向(フックが抜ける方向)へ揺動可能な構成とから、第1空力ブレーキ板4を格納姿勢に復帰させる際、自動的にロックがかかるように機能する。
また、図7に示すように、ストッパー片84は、突起部84aを有して上面視L字状の形状をなし、フック回転軸83と一体に回転するように構成されている。詳細は後述するが、空力ブレーキ作動時のフック回転軸83の回転に際して、ストッパー片84の突起部84aがフック82に当接して、フック82をロック解除姿勢の方向へ揺動・変位させる(図13参照)。
また、図6〜図7に示すように、ロック機構80は、フック回転軸83をロック解除方向へ回動させるロック解除バネ91を備える。ロック解除バネ91の一端(図7で言うところの左端)は、装置基底板70に係合され、他端はフック回転軸83の軸中心からオフセットして固定された係合ロッド93に係合されている。図7の構成では、ロック解除バネ91はフック回転軸83の下を通ってフック回転軸83より右にある係合ロッド93に掛けられているので、係合ロッド93は常に図の左方へ引っ張られていることになる。
また、係合ロッド93には、ロック操作ロッド95の一端が連係されている。
ロック操作ロッド95の他端は、電動モータ100のモータ駆動軸102に固定された揺動腕104の揺動端に枢支されている。電動モータ100は、コントローラ106に接続され、その駆動が電気電子制御される。
電動モータ100は、モータ本体100aと、ギアヘッド100bと、電磁クラッチ100cとを内蔵する。ギアヘッド100bは、モータ本体100aの回転を減速して低回転・高トルクの回転に変換する。ギアヘッド100bは、例えば高減速比のウォームギアを用いて実現され、セルフロック機能を有する。従って、静止状態で且つ電磁クラッチ100cが接続状態であったとしてもモータ駆動軸102側からの入力では電動モータ100は回動されない。電磁クラッチ100cは、通電により接続又は解除される電磁式クラッチである。空力ブレーキ装置2を停電時に作動する非常用ブレーキとして利用する場合には、通電時接続し通電遮断により開放されるタイプとする。
従って、ブレーキ未作動の状態、すなわち電動モータ100が停止している間、ロック解除バネ91の付勢力がロック操作ロッド95に作用していても、揺動腕104がギアヘッド100bのセルフロック機能により揺動しない。ロック操作ロッド95は、ロック作動状態においては常に、図7に示すように、フック回転軸83をロック方向へ回動させる方向(図7の例では右方へ)引かれた状態で保持されている。ロック解除バネ91の付勢力に抗して保持する力を「ロック保持力Fh」と呼ぶ。尚、ロック保持力Fhは、セルフロック機能による制動力に代えて、電動モータ100の発生する回転力(駆動トルク)により賄われるとしても良い。また、電磁クラッチ100cを、通電時に開放するタイプとして利用する形態も考えられるのは勿論である。
ロック操作ロッド95は、揺動腕104、係合ロッド93とともに、モータ駆動軸102の制動力又は回転力をロック保持力Fhに変換してロック機構80へ伝達する伝達手段を構成している。ロック保持力Fhが、係合ロッド93を引くロック解除バネ91の付勢力を下回れば、フック回転軸はロック解除方向に回動され、ロック機構80のロックが解除することになる。
次に、第1空力ブレーキ板4及び第2空力ブレーキ板6の支持および格納姿勢への復帰に使用される駆動機構について説明する。
図7に示すように、電動モータ100のモータ駆動軸102の回転は、クラッチ120を介して、第1バランスギア42や第2バランスギア62(すなわち第1揺動軸41や第2揺動軸61)に接続される。
図10は、クラッチ120付近の拡大断面図(図7のD部分)である。図11は、クラッチ120の動作を説明するための部分拡大断面図(図10のE−E断面)である。
クラッチ120は、a)モータ駆動軸102の先端から回転軸方向に突設された二つのモータ側噛合突起122と、b)モータ駆動軸102と対向位置において、モータ駆動軸102と同軸上で回転するクラッチ軸124の対向面に突設された二つの揺動軸側噛合突起126と、c)クラッチ軸124と一体に設けられて、第2バランスギア62と噛み合う減速ギア128と、を備える。
モータ側噛合突起122は、モータ駆動軸102とクラッチ軸124との対向端面において、モータ駆動軸102の回転軸を中心とした所定半径の円周上に、回転軸を基準に点対称位置に一対設けられている。揺動軸側噛合突起126は、モータ側噛合突起122と同様に、クラッチ軸124のモータ駆動軸102との対向端面において、回転軸を中心とした所定半径の円周上に、当該回転軸を基準に点対称位置に一対設けられている。つまり、二つのモータ側噛合突起122と、二つの揺動軸側噛合突起126は、互いに対向して突設されている。
モータ側噛合突起122と揺動軸側噛合突起126の突寸の合計は、モータ駆動軸102とクラッチ軸124の対向面間の距離よりも大きく設定されている。
また、モータ側噛合突起122及び揺動軸側噛合突起126の円周方向の厚さは、4つの突起全てを合算しても円周の長さには至らないように、且つモータ駆動軸102のトルクを十分伝達できる強度を得られるように設計されている。
そして、二つのモータ側噛合突起122と、二つの揺動軸側噛合突起126は、交互に対向して組み付けられている。前述のように、モータ側噛合突起122及び揺動軸側噛合突起126の円周方向の厚さは、4つの突起全てを合算しても円周の長さには至らないので、図11に示すように、あるモータ側噛合突起122と、隣接する揺動軸側噛合突起126との間には少なくとも「断切角度範囲θ」の隙間ができることになる。
図11(1)に示すように、モータ駆動軸102が正回転(図における反時計回り)してモータ側噛合突起122と揺動軸側噛合突起126の円周方向の側面が互いに当接すると、機械的に一方から他方へ(図11(1)の例ではモータ駆動軸102からクラッチ軸124へ)回転力(正回転する力)が伝達されることになる。つまり、クラッチ120は「クラッチが繋がった」状態となる。
この状態から一方側(モータ駆動軸102)が逆回転すると、図11(2)に示すように、断切角度範囲θがあることでモータ側噛合突起122と揺動軸側噛合突起126の当接が解除され、断切角度範囲θの間は回転の伝達が断切される。つまり、クラッチ120は「クラッチが切れた」状態となる。
もし、断切角度範囲θだけ逆回転が進むと、図11(3)に示すように、再びモータ側噛合突起122と揺動軸側噛合突起126の円周方向の側面が互いに当接するに至り回転の伝達が再開することになる。このように、本実施形態のクラッチ120は、噛み合い方向が逆になったときに断切角度範囲を介して接続するように機能する。なお、一方側をモータ駆動軸102、他方側をクラッチ軸124として図示及び説明したが、逆の場合も同様である。
[動作の説明]
次に、図12〜図17を参照して、空力ブレーキ装置2Rの動作説明として、停電時に鉄道車両1を速やかに減速・停止させるための非常用ブレーキとして使用する場合を例にあげて説明する。尚、各図の(1)は図7のA−A断面図、(2)は図7のB−B断面図にあたる。
先ず、ブレーキが作動する過程の動作について説明する。
ブレーキ未作動の状態においては、図12に示すように、揺動腕104はロック操作ロッド95をいっぱいに引いた姿勢にあって、コントローラ106が電動モータ100が内蔵する電磁クラッチ100cを通電させて接続状態にしている(図7参照)。従って、モータ駆動軸102には、ギアヘッド100bのセルフロック機能による制動力が作用するのでロック保持力Fhが発生し、ロック操作ロッド95をいっぱいに引いたロック状態で維持される。
この状態ではロック解除バネ91の付勢力は無効化され、フック82は鈎部分を上にした「ロック姿勢」が維持される。フック82はトーションバネ85により、常にロックピン81を引っ掛ける方向(図示の例では反時計回り)へ回るように付勢されている。よって、当該空力ブレーキ装置2Rを搭載した鉄道車両1がトンネルに出入りするなどして、第1空力ブレーキ板4や第2空力ブレーキ板6の外側に高い圧力変動が生じる場合でも、第1空力ブレーキ板4や第2空力ブレーキ板6を格納姿勢で確実に保持し続けることができる。
次に、図13に示すように、空力ブレーキを作動させるため、或いは、電車線からの電力供給が停止する等の緊急時の場合には、電動モータ100に内蔵される電磁クラッチ100cへの電力供給が絶たれてクラッチの接続が開放される。これによりギアヘッド100bのセルフロックが無効となり、ロック保持力Fhが消失または低減し、ロック解除バネ91の付勢力が有効となる。フック回転軸83は、その付勢力により解除方向(図示の例では時計回り)に回転する。すると、フック回転軸83と一体のストッパー片84が第1揺動軸41に向かって倒れる。図示の例では時計回りに倒れる格好となる。ストッパー片84が時計回りに倒れると、突起部84aがフック82の下部に当接してフック82も倒れるので、図示のごとく「ロック解除姿勢」に変位し、ロックピン81とフック82の係合が解除されロック機構80のロックは解除される。
ロックが解除される過程におけるクラッチ120の動きに着目すると、ロック状態(図12参照)では、モータ側噛合突起122の反時計回り側の側面と、揺動軸側噛合突起126の時計回り側の側面とが当接した状態である。
電動モータ100への電力供給が絶たれると、ロック解除バネ91の付勢力によってフック回転軸83が解除方向へ回るのに伴って、ロック操作ロッド95は図の左方向へ引っ張られる。電磁クラッチ100cによる接続が開放されたことで、モータ駆動軸102は実質的に自由回転可能となっている。よって、ロック操作ロッド95が左方向へ引っ張られるのに伴ってモータ駆動軸102は(図示の例では)時計回りに連れ回ることになる。そして、この連れ回りにより、モータ側噛合突起122は時計回り方向へ回転し、揺動軸側噛合突起126から離れる。
ロック操作ロッド95が左方向へ引っ張られるのに伴うモータ駆動軸102の連れ回り角度は、断切角度範囲θ(図11参照)と一致、又はそれより僅かに小さくなるように設定されている。従って、モータ側噛合突起122が揺動軸側噛合突起126から離れてから断切角度範囲θだけ変位するまでは、なんら回転抵抗を受けることはなく、スムーズにロック機構80が解除される。当然、揺動軸側噛合突起126は変位しない。
第1空力ブレーキ板4及び第2空力ブレーキ板6には、起立付勢部76(図6,7参照)による付勢力が作用しているので、図14に示すように、ロックが解除されると第1空力ブレーキ板4が第1揺動軸41で回動し、自重で元に戻ろうとする復元トルクに打ち勝って走行風を受風できる程度に浮き上がる。このブレーキ作動時初期の浮き上がりにより受けた走行風がきっかけとなり、第1空力ブレーキ板4には助勢トルクT1が発生し、第2空力ブレーキ板6には抗勢トルクT2が発生する。助勢トルクT1は抗勢トルクT2より常に上回るため第1バランスギア42が第2バランスギア62を起立方向へ回動し、両空力ブレーキ板は起立姿勢へ変位し続ける(図2参照)。
この過程におけるクラッチ120の動きに着目すると、第1空力ブレーキ板4及び第2空力ブレーキ板6が浮き上がるのに伴って、第1バランスギア42と第2バランスギア62は回転する。図14の例では、前者は反時計回り、後者は時計回りに回る。第2バランスギア62には減速ギア128が噛み合っている(図7参照)。従って、減速ギア128がクラッチ軸124を中心に連れ回る。
クラッチ軸124の回転により揺動軸側噛合突起126も位置を変える。図14の例では、(クラッチ軸124と同軸のモータ駆動軸102を中心に)時計回り方向へ移動する。しかし、ロック解除の過程において、モータ側噛合突起122が既に、時計回り方向に離間しているので、クラッチ120はクラッチが切れた状態と同じである。つまり、この回転がモータ側へ伝達されることはない。
第1空力ブレーキ板4の第1揺動軸41及び第1バランスギア42に作用する助勢トルクから、第2空力ブレーキ板6の第2揺動軸61及び第2バランスギア62に作用する抗勢トルクを差し引いた起立トルク(図4参照)が、モータ駆動軸102等の回動に消費されることはなく、ブレーキ作動用に大型のアクチュエータを装備しなくとも、自然と第1空力ブレーキ板4及び第2空力ブレーキ板6は収容姿勢から起立姿勢への変位し続ける。やがて、図15に示すように、第1空力ブレーキ板4や第2空力ブレーキ板6が全開となった完全な起立姿勢に達し、非常用のブレーキは最大限に制動力を発生する。
次に、第1空力ブレーキ板4および第2空力ブレーキ板6を起立状態から格納状態に復元させる動作について説明する。
空力ブレーキ装置2Rをブレーキに作動状態に戻すには、コントローラ106は、電動モータ100に内蔵された電磁クラッチ100cを通電した後、モータ本体100aをモータ駆動軸102を所定の復帰方向(図15の例では、反時計回り)へ回動させる制御をすればよい(図7参照)。
前述のように、本実施形態では、減速ギア128の減速比が適当に決められることにより、第1空力ブレーキ板4及び第2空力ブレーキ板6が格納姿勢から起立姿勢に至る過程で、揺動軸側噛合突起126がクラッチ軸124を中心に回転する角度は、断切角度範囲θと一致、又はそれより僅かに小さくなるように設定されている。従って、図15に示すように、第1空力ブレーキ板4及び第2空力ブレーキ板6が完全に起立した姿勢にあるとき、モータ側噛合突起122の反時計側の側面には、揺動軸側噛合突起126が当接している、或いは極めて接近した状態にある(図15におけるクラッチ120回りの各噛合突起の配置に着目)。
この状態からモータ駆動軸102を、空力ブレーキ板を格納させる復帰方向(反時計方向)へ回動させると、この回動はモータ側噛合突起122が揺動軸側噛合突起126に当接して押すことで伝達される。結果、図16に示すように、クラッチ軸124及び減速ギア128は復帰方向(反時計方向)に回動され、第1バランスギア42(すなわち第1揺動軸41)及び第2バランスギア62(すなわち第2揺動軸61)は、第1空力ブレーキ板4及び第2空力ブレーキ板6を起立状態から格納状態に復帰させる方向へ回動させる。
一方、ロック操作ロッド95は揺動腕104を介してモータ駆動軸102に一端が枢支されているので、モータ駆動軸102を復帰方向へ回すと、図16の右方向に引っ張られる。ロック操作ロッド95が右方向へ引っ張られるのに伴い、フック回転軸83が反時計回り方向へ回動される。フック回転軸83と一体のストッパー片84は、反時計回りに回って起き上がり、これに伴いトーションバネ85の付勢力によりフック82も反時計回りに回って立ち上がり、図17に示すように、元の「ロック姿勢」に復帰する。
更に格納姿勢への復帰が進行すると、第1空力ブレーキ板4が「ロック姿勢」のフック82に対して覆い被さる格好で降りてくる。やがて第1空力ブレーキ板4のロックピン81が、既にロック姿勢に復元しているフック82の頭頂面82sに当接する。
フック82の頭頂面82s(鈎爪部分の外側)は、ロック姿勢において第1空力ブレーキ板4の変位に伴うロックピン81の移動軌跡に対して傾斜して交差する角度を有している。ロックピン81がフック82の頭頂面82sに当接するに至ると、ロックピン81がフック82を押す力F1(図17中、太実線の矢印)のうち、頭頂面82sの接線に直交する成分F2(図中、白抜き矢印)がフック82に作用し、トーションバネ85によるトルクに抗してフック82を第1揺動軸41の側(時計回り方向、退避方向)へ押す。フック82は、ストッパー片84に対して開くように揺動して「逃げる」。この「フックの逃げ」が起きることで、第1空力ブレーキ板4は更に格納姿勢への復元過程を継続することが可能となる。そして、ロックピン81がフック82の先端を越えた瞬間に、トーションバネ85のトルクによりフック82が先端方向へストッパー片84に対して閉じるように揺動し、鈎の内側にロックピン81を捕らえて係合するロック状態に至る。つまり、第1空力ブレーキ板4を格納姿勢に復帰する際は、機構的に自動的にロック作動状態となる。
以上、本実施形態の空力ブレーキ装置2Rは、ロック機構80をロック状態に維持するロック保持力Fhを担うためのアクチュエータと、起立した空力ブレーキ板を格納姿勢に復帰させるためのアクチュエータとを設ければ空力ブレーキとして機能する。何れのアクチュエータも小型でよく、大型のアクチュエータなど用意しなくとも良いので、空力ブレーキ装置2Rは極めて薄く、小型且つ軽量に作ることができる。しかも、クラッチ120を用いることで、アクチュエータを電動モータ100の一つで兼用する構成が可能となり、一層の小型化と軽量化を実現している。
尚、本実施形態の空力ブレーキ装置2Rは、非常用のみならず通常走行時にも利用できるのは勿論である。具体的には、コントローラ106が、外部装置から空力ブレーキ作動信号を受信すると、電磁クラッチ100cへの通電をカットしてブレーキを作動させる。そして、外部装置からブレーキ解除信号を受信すると、電磁クラッチ100cへの通電を再開し、電動モータ100を復帰方向へ回動させて、起立した空力ブレーキ板を格納姿勢に復帰させるように制御すれば良い。
以上、本発明を適用した実施形態について説明したが、これに限定されるものではなく適宜構成要素の追加・省略・変更を施すことができる。
例えば、上記実施形態では、ロック機構80と、ロックの解除/作動機構(例えば、揺動腕104、ロック操作ロッド95)と、クラッチ120とを、第1空力ブレーキ板4の側に設ける構成としているが、第2空力ブレーキ板4の側に設ける構成としてもよいし、第1空力ブレーキ板4及び第2空力ブレーキ板6のそれぞれに対応するように設ける構成も可能である。また、起立付勢部76も、上記実施形態では第1空力ブレーキ板4と第2空力ブレーキ板6それぞれに設けたが、何れか一方にのみ設ける構成とすることもできる。
1…鉄道車両、
2R、2L…空力ブレーキ装置、
4…第1空力ブレーキ板、
5…主外装板、
6…第2空力ブレーキ板、
40…固定腕部、
41…第1揺動軸、
42…第1バランスギア、
60…固定腕部、
61…第2揺動軸、
62…第2バランスギア、
70…装置基底板、
72…軸受部、
76…起立付勢部、
77…トーションバネ、
78…腕固定具、
80…ロック機構、
81…ロックピン(被係合部)、
82…フック(係合爪)、
82s…頭頂面、
83…フック回転軸、
84…ストッパー片、
85…トーションバネ、
91…ロック解除バネ、
93…係合ロッド、
95…ロック操作ロッド、
100…電動モータ、
102…モータ駆動軸、
104…揺動腕、
106…コントローラ、
120…クラッチ、
122…モータ側噛合突起、
124…クラッチ軸、
126…揺動軸側噛合突起、
128…減速ギア、
D1…助勢抗力
D2…抗勢抗力
T1…助勢トルク
T2…抗勢トルク

Claims (5)

  1. 揺動軸で回転することで格納姿勢と起立姿勢とに変位可能な空力ブレーキ板と、
    ロック保持力が与えられている間、前記空力ブレーキ板を前記格納姿勢に保持するロック機構と、
    前記格納姿勢にある前記空力ブレーキ板を前記起立姿勢に変位させる方向に付勢力を付与する付勢手段と、
    モータ駆動軸と、
    前記モータ駆動軸の制動力又は回転力を前記ロック保持力に変換して前記ロック機構へ伝達する伝達手段と、
    前記モータ駆動軸と前記揺動軸とを接続するクラッチであって、噛み合い方向が逆になったときに所定の断切角度範囲を介して接続するクラッチと、
    を備え、前記クラッチにより前記モータ駆動軸と前記揺動軸とが接続され、前記モータ駆動軸の回転力によって前記空力ブレーキ板が前記格納姿勢とされて後、前記モータ駆動軸が逆回転可能となって前記ロック機構のロックが解除され、前記空力ブレーキ板が前記格納姿勢から前記起立姿勢に至るまでを前記所定の断切角度範囲として少なくとも含むように構成された鉄道車両用空力ブレーキ装置。
  2. 前記付勢手段は、走行風による助勢トルクが、自重により前記空力ブレーキ板が前記格納姿勢に復元しようとする復元トルクを上回る姿勢まで、前記空力ブレーキ板を部分起立させるよう付勢する、
    請求項1に記載の鉄道車両用空力ブレーキ装置。
  3. 前記ロック機構は、
    前記空力ブレーキ板に設けられた被係合部と係合する係合爪であって、所定軸で回転することでロック姿勢とロック解除姿勢とに変位可能であり、前記ロック姿勢において頭頂面が前記空力ブレーキ板の変位に伴う前記被係合部の移動軌跡に対して傾斜して交差する角度を有し、当該交差時に揺動することで一時的にロック解除姿勢の方向に回転する係合爪と、
    前記係合爪を前記ロック解除姿勢に変位させる方向に付勢力を付与する解除バネと、
    を有し、
    前記伝達手段は、前記解除バネの付勢力に抗して前記係合爪を前記ロック姿勢に変位及び保持する力として前記ロック保持力を伝達するよう構成された、
    請求項1又は2に記載の鉄道車両用空力ブレーキ装置。
  4. 前記ロック機構は、前記係合爪を前記ロック姿勢に変位させる方向に、前記解除バネより小さい付勢力を付与するロック姿勢助勢バネを更に有する、
    請求項3に記載の鉄道車両用空力ブレーキ装置。
  5. 第1及び第2の前記揺動軸で回転する第1及び第2の前記空力ブレーキ板を、走行風に対して一方が助勢方向、他方が抗勢方向となるように車両幅方向に並べて配置するとともに、双方の空力ブレーキ板が連動して回転するように前記第1及び第2の揺動軸を連係する連係手段を更に備え、
    前記ロック機構、前記付勢手段、前記伝達手段及び前記クラッチを、前記第1の空力ブレーキ板及び前記第2の空力ブレーキ板の一方又はそれぞれに対応して設けた、
    請求項1〜4の何れか一項に記載の鉄道車両用空力ブレーキ装置。
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