JP2014175131A - ロングアーク型放電ランプ - Google Patents

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雅史 團
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Abstract

【課題】両端が封止され、内部に発光物質が封入された発光管と、該発光管の内部で対向配置された一対の電極と、を備えたロングアーク型放電ランプにおいて、エミッターを先端部にのみ含んだ電極構造を安価に実現して、単価の低いロングアーク型放電ランプにも採用できるようにするとともに、先端部に含まれるエミッターの有効活用が図られるようにする構造を提供することである。
【解決手段】前記電極は、タングステンからなる本体部の先端に、エミッターを含有したタングステンからなる先端部を溶接により接合されたものであり、前記本体部と前記先端部との間に固溶層が形成されていることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

この発明はロングアーク型放電ランプに関し、特に、電極本体の先端にエミッターを含んだ先端部を接合した電極構造を有するロングアーク型放電ランプに係わる。
電子工業界や印刷業界においては、紫外線硬化型のインキや塗料や接着材を紫外線により硬化乾燥する紫外線光源として、あるいは、半導体基板や液晶ディスプレイ用の液晶基板を露光するために使用する露光装置の紫外線光源として、ロングアーク型放電ランプが使用されている。
ロングアーク型放電ランプとしては、発光物質として水銀を封入した水銀放電ランプや、金属ハロゲンを封入したメタルハライドランプが知られている。
その構造が図3に示されていて、ロングアーク型放電ランプ1における発光管2の両端の封止部3、3で封止支持された一対の電極4、4が、発光管内で対向配置されている。
前記電極4は、ここには詳細は図示しないが、通常は金属箔を用いた箔シールによって外部リードに接続されていて、ここから給電される。
そして、この種のロングアーク型放電ランプにおいては、特開2012−160330号公報(特許文献1)に示されるように、陰極動作する電極に、例えば酸化トリウムのようなエミッター(電子放射性物質)を含有させて、電子放射特性を高めるようにしたものが知られている。
ところで近時では、希少資源の節約という観点からエミッター材としてのトリウムなどの使用に制限が設けられるようになってきており、その大量使用を避ける要請がなされてきている。加えて該トリウムが放射性物質であり、法的規制によりその取り扱いが制限されているという事情もある。
このような事情を勘案して、電極の先端部にのみエミッター材を含有させた構造の放電ランプが開発されている。
特開2012−190627号公報(特許文献2)に、そのような電極を用いたショートアーク型放電ランプの陰極構造が開示されていて、タングステンからなる本体部の先端にエミッター材を含有させた先端部を接合する陰極構造が示されている。
このランプで採用されている接合方法は、拡散接合と呼ばれるもので、拡散接合とは、金属同士を面で重ね合わせて、当該金属の融点未満の固相状態で塑性変形が生じない程度に加熱・加圧して、接合面の原子を拡散させる固相接合をいう。具体的な加熱温度としては、タングステンの融点(約3400℃)より、低い2000℃程度で加熱される。
かかる接合電極は、前記したように、ショートアーク型放電ランプに適用されているが、ロングアーク型放電ランプに適用されている例は未だない。
これは、拡散接合方法が、非常に技術的なハードルが高く、かつ大がかりな装置を必要とすることから、コスト高となる接合方法であって、前記特許文献2に示すような、単価の高いショートアーク型放電ランプにおいては採用できるものの、該ショートアーク型放電ランプと比べて単価の低いランプであるロングアーク型放電ランプに適用することは、技術的にも、コスト面からも難しいという事情があるからである。
また、特許文献1に示される、電極全体にエミッターを含有させた従来例のものでは、電極先端部のエミッターは、電極先端側に拡散移動してランプの放電に寄与して失われていく。このように、エミッターは、その多くは電極先端側に移動していくものではあるが、拡散方向は特定されるわけではないので、その一部は、後端側にも拡散して移動していく。
このように、電極の後端側に移動したエミッターは、ランプの消灯により電極が冷却されると拡散が停止し、その位置に留まる。再度ランプを点灯させたとき、エミッターは再度、その位置から拡散しようとするが、電極先端までの距離が長くなっており、十分には先端に移動して放電に寄与することができない。
このようにランプの点灯、消灯を繰り返していくと、当初は、電極全体にエミッターが分布していたにも関わらず、先端側のエミッターは、放電に寄与して失われていき、後端側に移動したエミッターは、その後端側から余り先端側に移動できないようになっていく。そうなると、徐々に電極後端にエミッターが残留するのに対し、先端側にエミッターが存在しない枯渇状態となり、ランプの再始動ができなくなってしまうという問題がある。
このような事情は、前記特許文献2に示される、拡散接合電極においても同様であって、先端部および本体部ともにタングステン粒子からなることから、エミッターが含まれた先端部から、そのエミッターの一部が粒子間に形成される粒界を経由して後方の本体部方向にも拡散していってしまう。このように一旦後方の本体部に拡散していったエミッターは再度先端側に拡散移動することがないので、先端部内に含まれたエミッターが十分に活用できるものとはいえないという同種の問題がある。
特開2012−160330号公報 特開2012−190627号公報
この発明は、上記接合電極をロングアーク型放電ランプに適用した場合の問題点に鑑みて、両端に封止部を有する発光管と、該発光管の内部で対向配置された一対の電極とを備えたロングアーク型放電ランプにおいて、前記電極が、タングステンからなる本体部の先端面に、エミッターを含有したタングステンからなる先端部が接合された構造を有するものにおいて、コストアップとなることなくその接合ができ、エミッター材の有効活用ができるようにしたロングアーク型放電ランプを提供することにある。
上記課題を解決するために、この発明に係るロングアーク型放電ランプは、前記電極が、タングステンからなる本体部の先端面に、エミッターを含有したタングステンからなる先端部が溶接により接合されたものであり、前記本体部と前記先端部との間に固溶層が形成されていることを特徴とする。
この発明のロングアーク型放電ランプによれば、電極の本体部と先端部との間に溶接により固溶層が形成されていることにより、該固溶層では溶融・凝固することでタングステン粒子間に形成される粒界が閉塞されるので、エミッターが先端部から後方の本体部に拡散移動することが防止されてエミッターの有効活用ができるという効果を奏し、コストのかからない溶接接合を採用して安価な接合電極構造を有するロングアーク型放電ランプが得られるものである。
本発明のロングアーク型放電ランプにおける電極の側面図。 電極の部分拡大断面図。 従来のロングアーク型放電ランプの構造を示す説明図。
図1に、本発明のロングアーク型放電ランプにおける電極が示されており、電極4は、タングステンからなる本体部4aと、その先端に溶接により接合されたエミッター5を含有したタングステンからなる先端部4bとからなる。この溶接接合は、抵抗溶接やレーザーによる溶着などが採用できる。
こうして溶接接合された本体部4aと先端部4bとの間には、タングステン粒子が溶融し凝固した固溶層4cが形成されている。
また、先端部4bに含有されるエミッター物質5としては、酸化トリウムや酸化ランタンなどが用いられる。
溶接手法の一例としては、抵抗溶接が挙げられ、その溶接条件は電極径によって異なるが、本発明の実施形態として電極径を2.8mmとした場合、2000Aの電流を195msec流し、それぞれの接合面に加重20Nをかけて、抵抗溶接したものでものである。
なお、この溶接接合電極は、直流点灯ランプにおいては、陰極に採用し、また交流点灯ランプにおいては、両方の電極に採用するものである。
図2は溶接接合された電極の先端部の断面図であって、本体部4aと先端部4bとの間には、固溶層4cが形成されている。つまり、溶接時の加熱によりタングステン粒子が溶融し、その後冷却されて凝固した層である。
これにより、該固溶層4cでは、タングステン粒子間の粒界がこの溶融凝固したものによって閉塞されている。
これにより、先端部4bで蒸発したエミッターが後方の本体部4a方向に拡散しようとしても、固溶層4cによって堰き止められて、本体部4a方向に移動することができないので、先端部4a内のエミッターの有効活用が図られる。
次いで、従来のロングアーク型放電ランプと本願発明のロングアーク型放電ランプで、点灯時間の経過と点灯性を確認する実験を行った。
<ランプ仕様>
(本発明品)
発光管:石英ガラス、外径26mm、内径22mm
発光長:1100mm
封入物質:水銀、ヨウ化水銀、
キセノンガス100Torr(13.332kPa)
電極: 直径2.8mm
本体部:純タングステン
先端部:トリエーテッドタングステン(ThO:2パーセント)厚さ2mm
接合方法:本体部と先端部は溶接接合
定格入力:18kW(ランプ電圧 640V、ランプ電流 28.1A)

(従来品)
電極構造が一体構造であって、その材料はトリエーテッドタングステン(ThO:2パーセント)であり、それ以外の構造は本発明品と同様である。
上記の2種類のランプの点灯性をイグナイターの印加回数で計測した結果が表1に示されている。数値は、点灯時間の経過とともに、何回イグナイターを印加すると点灯したかを確認したものである。
この実験では、イグナイターの印加回数が少ない方が、点灯性が良いことを示すものであり、表1中「×」は、イグナイターを複数回印加しても点灯しなかったことを意味するものである。
<表1>
Figure 2014175131
表1で示すように、従来品においては、点灯時間が3000時間を経過すると点灯性が悪くなっていき、4000時間では不点灯となる。
これに対して、発明品では8000時間に至るも点灯性が良好であることが分かる。
以上説明したように、本発明においては、電極を、タングステンからなる本体部の先端に、エミッターを含有したタングステンからなる先端部を溶接により接合することにより形成し、前記本体部と前記先端部との間には固溶層が形成されていることにより、安価な製造コストで接合電極が得られて、単価の低いロングアーク型放電ランプに好適な電極構造が得られる。
また、本体部と先端部との間に固溶層が形成されていることにより、先端部中のエミッターが後方の本体部に拡散移動しようとしても、この固溶層によってタングステン粒子間の粒界が閉塞されていることにより、その拡散が阻止されて、本体部側に移動することがない。そのため、先端部に含まれるエミッターを本来の目的に十分に活用できるという効果を奏するものである。
1 ロングアーク型放電ランプ
2 発光管
3 封止部
4 電極
4a 本体部
4b エミッター含有の先端部
4c 固溶層
5 エミッター


Claims (1)

  1. 両端が封止され、内部に発光物質が封入された発光管と、該発光管の内部で対向配置された一対の電極と、を備えたロングアーク型放電ランプにおいて、
    前記電極は、タングステンからなる本体部の先端に、エミッターを含有したタングステンからなる先端部を溶接により接合されたものであり、前記本体部と前記先端部との間に固溶層が形成されていることを特徴とするロングアーク型放電ランプ。


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