JP2014173843A - 漏電検出装置および漏電検出方法 - Google Patents

漏電検出装置および漏電検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】注入信号の強度が微弱であっても、対地インピーダンスを精度よく算出することができる漏電検出装置等を提供する。
【解決手段】信号注入部(205)は、AC系統(1)に注入信号を注入し、ノッチフィルタ部(2062a)は、所定の時間毎に計測する系統周波数を用いて、AC系統(1)の漏れ電流の系統電流成分を除去し、ロックイン検出部(2062b)は、上記漏れ電流の注入信号成分を所定回数だけ抽出して検出し、抽出結果を積算する。
【選択図】図2

Description

本発明は、漏電検出装置および漏電検出方法に関し、特に、交流電源を備えた電気回路からの漏電を検出する漏電検出装置および漏電検出方法に関する。
従来、配電線等の電路において発生する漏電を検出する様々な技術が開示されている。例えば、特許文献1には、受電変圧器のB種接地線に対して、上記受電変圧器の商用周波数とは異なる周波数を有する監視信号を注入して、B種接地線に還流する漏れ電流を検出し、上記漏れ電流の上記監視信号成分に含まれる対地絶縁抵抗成分を求める絶縁監視装置が記載されている。
具体的に、まず、上記絶縁監視装置は、低圧側電路のD種接地線を基準とする上記B種接地線からの基準入力より、上記商用周波数成分およびその高調波成分を除去することによって、上記監視信号に相当する基準信号を抽出する。次に、上記絶縁監視装置は、検出した上記漏れ電流に対して、上記基準信号の所定位相に同期させたDFT(Discrete Fourier Transform)演算を行う。これにより、上記絶縁監視装置は、上記漏れ電流の上記監視信号成分を抽出して、抽出した上記監視信号成分より対地絶縁抵抗成分を求める。
特開2010−66162号公報(2010年3月25日公開)
「九州大学 笹田研究室(Sasada LabWiki)」より(http://www.nfcorp.co.jp/pro/mi/lb/lockin/index.html)(2013/1/17検索)
ところで、一般的に、注入信号(特許文献1の監視信号)の強度が微弱であるほど、上記漏れ電流から検出した注入信号成分(特許文献1の監視信号成分)のS/Nが悪くなることが知られている。
上記のようなS/Nの問題を解決するためには、比較的大きな強度を有する上記注入信号をB種接地線に注入すればよいと考えられる。しかしながら、上記注入信号の強度を大きくする場合、以下のような問題がある。
一般的に、上記注入信号をB種接地線に注入するために、上記B種接地線の周りを囲む閉磁路を形成する中空円筒状の磁気コアが用いられる。この構成では、上記磁気コアの円周方向の磁束強度を変化させることで、電磁誘導により上記B種接地線に誘導電流を発生させる。ところが、上記構成では、上記注入信号の強度を増大させるために、上記コアのサイズを大きく(上記磁束強度を強く)する必要がある。しかしながら、上記コアのサイズが大きくなるほど、上記コアのコストが増大するだけでなく、上記コアの設置や運搬のための労力が大きくなるという問題がある。さらに、上記注入信号の強度が大きい場合、電路に接続された負荷に対して、上記注入信号が悪影響を及ぼす可能性があるという問題もある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、注入信号の強度が微弱であっても、対地インピーダンスを精度よく算出することができる漏電検出装置等を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る漏電検出装置は、交流電源を備えた電気回路であるAC系統の接地線に対して、上記交流電源が発生させる系統周波数とは異なる注入周波数を有する第1の交流電圧を印加することにより、上記AC系統に第1の注入信号を注入する信号注入部と、上記接地線からの漏れ電流を検出し、漏れ電流信号として出力する第1のセンサと、所定の時間間隔で上記系統周波数を計測し、上記所定の時間間隔で計測結果が更新される上記系統周波数を用いて、上記漏れ電流信号に含まれる上記系統周波数の信号成分である第1の系統電流成分を除去する特定周波数成分除去手段と、上記特定周波数成分除去手段によって上記第1の系統電流成分が除去された上記漏れ電流信号を上記注入信号の特定位相と同期して検出することにより、上記漏れ電流信号から、上記注入周波数の信号成分である第1の注入信号成分を抽出する処理を、所定の回数だけ繰り返して行い、各回の処理から得られた上記第1の注入信号成分を積算する特定周波数成分抽出手段と、上記特定周波数成分抽出手段によって抽出され、積算された上記第1の注入信号成分を、上記第1の交流電圧に対する対地絶縁抵抗の応答分と、上記第1の交流電圧に対する対地静電容量の応答分とに分離して、上記対地絶縁抵抗の応答分から対地絶縁抵抗を算出する漏電情報算出手段と、を備えた構成である。
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る漏電検出方法は、交流電源を備えた電気回路であるAC系統の漏電を検出する漏電検出方法であって、上記AC系統の接地線に対して、上記交流電源が発生させる系統周波数とは異なる注入周波数を有する第1の交流電圧を印加することにより、上記AC系統に第1の注入信号を注入する信号注入ステップと、上記接地線からの漏れ電流を検出し、漏れ電流信号として出力する検出ステップと、所定の時間間隔で上記系統周波数を計測し、上記所定の時間間隔で計測結果が更新される上記系統周波数を用いて、上記漏れ電流信号に含まれる上記系統周波数の信号成分である第1の系統電流成分を除去する特定周波数成分除去ステップと、上記第1の系統電流成分が除去された上記漏れ電流信号を上記注入信号の特定位相と同期して検出することにより、上記漏れ電流信号から、上記注入周波数の信号成分である第1の注入信号成分を抽出する処理を、所定の回数だけ繰り返して行い、各回の処理から得られた上記第1の注入信号成分を積算する特定周波数成分抽出ステップと、上記第1の注入信号成分を、上記第1の交流電圧に対する対地絶縁抵抗の応答分と、上記第1の交流電圧に対する対地静電容量の応答分とに分離して、上記対地絶縁抵抗の応答分から対地絶縁抵抗を算出するインピーダンス算出ステップと、を含む構成である。
上記の各構成によれば、第1のセンサが検出した漏れ電流信号に含まれる系統周波数の信号成分(第1の系統電流成分)を除去する。これにより、漏れ電流信号から、AC系統の系統電流成分を除去することができる。さらに、所定の時間ごとに、系統周波数を計測して、除去する系統周波数の信号成分を更新する。そのため、上記系統周波数が時間変化する場合であっても、上記漏れ電流信号から、上記系統電流成分を正確に除去することができる。
さらに、上記の各構成によれば、上記漏れ電流信号から、上記系統電流成分を除去した後、上記漏れ電流に含まれる注入周波数の信号成分(第1の注入信号)を所定の回数だけ抽出して検出し、上記所定の回数の検出による検出結果を積算する。これにより、上記漏れ電流信号から、第1の注入信号を抽出することができる。また、1回の検出により得られる上記注入信号成分の強度が微弱であったとしても、複数回の検出による検出結果を積算することにより、検出される上記注入信号成分のS/Nを向上させることができる。
このように、漏れ電流信号に含まれる系統電流成分を除去するとともに、漏れ電流信号の上記第1の注入信号を抽出して検出することによって、漏れ電流信号から第1の注入信号を精度よく抽出することができる。また、このように抽出された上記注入信号成分に含まれる対地絶縁抵抗の応答分から対地絶縁抵抗を精度よく算出することができる。
また、本発明の一態様に係る漏電検出装置は、所定のインピーダンスを有する抵抗または容量を備えた参照用回路部と、上記参照用回路部を流れる参照電流を検出する第2のセンサと、漏電情報算出手段とをさらに備え、上記信号注入部は、上記参照用回路部に対して、上記第1の交流電圧と同期した、上記注入周波数を有する第2の交流電圧を印加することにより、上記参照用回路部に第2の注入信号を注入し、上記注入信号を正弦波の基準として、上記第1の注入信号を、余弦波成分および正弦波成分からなる第1のベクトルで表し、また、上記第2のセンサが検出した上記参照電流に含まれる上記注入周波数の信号成分である第2の注入信号成分を、第2のベクトルで表すとき、上記漏電情報算出手段は、上記第1のベクトルと、上記第2のベクトルとの重なり成分から、上記AC系統の対地絶縁抵抗を算出する構成である。
上記の構成によれば、抵抗を備えた参照用回路部に対して、第2の交流電圧を印加することによって、第2の注入信号を注入する。この第2の注入信号に含まれる第2の注入信号成分は、第2の交流電圧に対する上記参照用回路部の応答である。一方、上述した第1の注入信号は、第1の交流電圧に対する対地絶縁抵抗および対地静電容量の応答である。
ところで、第1の注入信号のうち、上記対地絶縁抵抗の応答である第1の信号成分と、上記対地静電容量の応答である第2の信号成分とは、互いに直交する(90度の位相差がある)。また、参照用回路部が抵抗のみを備えた回路であるので、上記第1の信号成分と、上記第2の注入信号成分とは同位相である。換言すれば、これらを表すベクトル同士は平行である。一方、上記第2の信号成分と、上記第2の注入信号成分とは位相差90度である。換言すれば、これらを表すベクトル同士は直交する。そのため、第1のベクトルと、第2のベクトルとの重なり成分から、対地絶縁抵抗を求めることができる。
また、本発明の一態様に係る漏電検出装置においては、上記特定周波数成分除去手段は、上記漏れ電流信号に含まれる上記系統周波数のn倍(nは2以上の自然数)の信号成分をさらに除去する構成である。
上記の構成によれば、上記漏れ電流信号から、系統周波数の信号成分だけでなく、系統周波数のn倍の周波数の信号成分がさらに除去される。これにより、漏れ電流信号から、系統電流のn次の高調波成分も除去することができる。特に、上記漏れ電流信号に含まれる上記系統周波数の2倍および3倍の周波数の信号成分をさらに除去してもよい。これにより、比較的大きい強度を有する系統電流の2次高調波成分および3次高調波成分を、漏れ電流信号から除去することができる。
また、本発明の一態様に係る漏電検出装置は、所定の周波数範囲に含まれる上記系統周波数のk倍(kは自然数)または1/k倍の周波数の信号成分に対する該特定周波数の信号強度の割合が所定の閾値以下となる特定周波数を、上記所定の周波数範囲において選択する特定周波数選択手段をさらに備え、上記信号注入部は、上記特定周波数選択手段により選択された上記特定周波数を、上記注入信号の上記注入周波数として決定する構成である。
上記の構成によれば、特定周波数選択手段は、まず、所定の周波数範囲に含まれる上記漏れ電流信号の信号成分であって、系統周波数のk倍または1/k倍の周波数を有する信号成分の最大の信号強度を取得する。次に、上記所定の周波数範囲の漏れ電流信号から、該特定周波数の信号強度が上記最大の信号強度に対して所定の閾値以下となる特定周波数を選択する。そのため、上記特定周波数の信号成分は、上記所定の周波数範囲に含まれる他の信号成分と比較して、小さな強度を有することになる。
また、上記信号注入部は、上記特定周波数を、上記注入信号の上記注入周波数として決定する。そのため、上記注入信号は、上記所定の周波数範囲において、比較的小さな強度を有する背景の信号成分と重なり合うことになる。言い換えれば、上記漏れ電流において、上記注入信号成分は、背景の信号成分に対して比較的大きな強度を有することになる。これにより、上記注入周波数の信号成分において、上記注入信号の強度の割合が大きくなる。このことは、対地絶縁抵抗が精度よく算出されるという結果を導くことになる。
また、本発明の一態様に係る漏電検出装置において、上記注入周波数は、上記系統周波数のn倍とm倍と(n、m>nは自然数)の相乗平均、または上記系統周波数の1/n倍と1/m倍との相乗平均を中心とする所定の範囲に含まれる周波数である。
上記の構成によれば、注入周波数が、系統周波数のn倍とm倍との相乗平均を中心とする所定の範囲に含まれる。ここで、上記所定の範囲は、例えば、系統周波数のn倍とm倍との差分、または1/n倍と1/m倍との差分の1パーセントであってよい。
そのため、漏れ電流信号において、注入信号成分が系統電流成分と重なりにくい。さらに、注入信号成分は、系統周波数の自然数倍の周波数を有する系統電流の高調波成分とも重なりにくい。そのため、漏れ電流信号から注入信号成分を精度よく抽出することができる。
また、本発明の一態様に係る漏電検出装置において、上記第1のセンサは、磁性体で形成された中空円筒状の磁気コア、および上記磁気コアに巻き付けられたコイルを有しており、上記磁気コアの中空部分を上記AC系統の回路が貫通している構成であり、上記第1のセンサの上記磁気コアおよび上記コイルと同じ磁気コアおよびコイルを有し、かつ上記第1のセンサの近傍に位置する第3のセンサと、上記第1のセンサが検出した漏れ電流信号から上記第3のセンサが検出した信号を減算する背景信号減算部と、をさらに備え、上記第1のセンサおよび上記第3のセンサは、上記磁気コアの円筒の中心軸が互いに同じ方向を向き、かつ、同一の方向から見たときに、上記コイルが互いに逆巻きとなるように配置されている構成である。
上記の構成によれば、第1のセンサおよび上記第3のセンサは、磁気コアの円筒の中心軸が互いに同じ方向を向き、かつ、同一の方向から見たときに、コイルが互いに逆巻きとなるように配置され、かつ互いに近接して位置している。そのため、上記漏れ電流が上記磁気コアに発生させる磁束変化により、上記2つのセンサには、互いに逆相の信号が現れる。従って、これらの信号を減算した場合、双方のコイルで得られた信号は強めあうことになる。一方、交流電源から外部空間へ漏れ出ている微弱な電磁波がコイルと電磁結合することにより、上記2つのセンサには、互いに同相の信号が現れる。従って、これらの信号を減算した場合、双方のコイルで得られた信号は弱めあうことになる。
従って、第1のセンサが検出した信号(漏れ電流信号)から上記第3のセンサが検出した信号を減算することにより、上記漏れ電流信号から、上記コイルと上記電磁波との電磁結合に起因する不要な信号成分を減少させることができる。
本発明の各態様に係る特定周波数成分除去手段、特定周波数成分抽出手段、背景信号減算手段、および漏電情報算出手段は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各手段として動作させることにより上記各手段をコンピュータにて実現させる制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
本発明は、注入信号の強度が微弱であっても、対地インピーダンスを精度よく算出することができるという効果を奏する。
本発明の実施形態1に係る漏電検出システムのデータ処理部の構成を示すブロック図である。 本発明の実施形態1に係る漏電検出システムの構成を示す模式図である。 図2に示す漏電検出システムにおいて形成される電流経路を模式的に示す回路図である。 (a)および(b)は、それぞれ、あるAC系統の漏れ電流のパワースペクトルを示すグラフである。 85Hz、125Hz、および147Hzの注入周波数の評価尺度を示す表である。 図2に示すAC系統において発生される系統周波数の計測値を示すグラフである。 85.47Hzの注入信号に対する19.5Ωの純粋抵抗の応答信号を示すグラフである。 図1に示すデータ処理部が実行する漏電検出処理の流れを示すフローチャートである。 漏電電流用CTセンサが検出するCh2の電圧信号を示すグラフである。 図1に示すノッチフィルタ部によりノッチフィルタ処理が実行された後のCh2の電圧信号を示すグラフである。 (a)および(b)は、図1に示すロックイン検出部が、Ch2の電圧信号に対して、42回および1680回のロックイン検出を行った結果として得た検出信号を示すグラフである。 図1に示すロックイン検出部が、Ch4の電圧信号をロックイン検出した結果として得た検出信号を示すグラフである。 (a)および(b)は、実験(1)における漏電設定および測定結果を示す表である。 (a)および(b)は、図13の(b)に示すIgr推定およびXC推定の測定データをプロットしたグラフである。 (a)および(b)は、実験(2)における漏電設定および測定結果を示す表である。 (a)および(b)は、図15の(b)に示すIgr推定およびXC推定の測定データをプロットしたグラフである。 (a)および(b)は、実験(3)における漏電設定および測定結果を示す表である。 図17の(b)に示すIgr推定の測定データをプロットしたグラフである。 磁気シェイキングを行ったCTセンサによる電流信号の検出結果の一例を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について、図2〜図18を用いて詳細に説明する。
[漏電検出システム1000の構成]
図2は、AC系統1と、漏電検出装置2とからなる漏電検出システム1000の構成を示す模式図である。図2に示すように、AC系統1は、3相3線式の配電システムである。詳細には、AC系統1は、3本の電路X、Y、Zと、交流電圧源101、102、103と、負荷111、112、113とを含む。ここで、電路X、電路Y、電路Zは、それぞれ、AC系統1の配電線のR相、S相、T相の電路である。また、接地線eは、AC系統1の接地線である。
図2には、R相の対地インピーダンス(対地絶縁抵抗XR1および対地静電容量XC1)と、T相の対地インピーダンス(対地絶縁抵抗XR2および対地静電容量XC2)を、電流経路として模式的に示している。なお、以下では、対地絶縁抵抗XR1、XR2、および対地静電容量XC1、XC2を、抵抗分XR1、XR2、および容量分XC1、XC2と呼ぶことがある。また、R相およびT相の対地インピーダンスを合わせて、対地インピーダンスZIと呼ぶ。AC系統1が漏電する場合、抵抗分XR1、XR2、容量分XC1、およびXC2のうちいずれか1つまたは複数の経路を通って、大地に漏電電流が流れると考えることができる。
[漏電検出装置2の構成]
続いて、図2を用いて、上述した漏電検出装置2の構成を詳細に説明する。漏電検出装置2は、AC系統1の抵抗分XR1、XR2、容量分XC1、およびXC2において発生する漏電を検出するための装置である。
漏電検出装置2は、漏電電流用CTセンサ(第1のセンサ)201、純粋抵抗用CTセンサ(第2のセンサ)202、背景信号用CTセンサ(第3のセンサ)203、参照用回路部204、信号注入部205、およびデータ処理部206を含む構成である。漏電検出装置2の各部の詳細な構成を、以下に説明する。
[1.漏電電流用CTセンサ201]
漏電電流用CTセンサ201は、100A定格の分割可能な磁気コア(CTコア;分割型の変流器)を含む電流センサである。なお、後述する純粋抵抗用CTセンサ202および背景信号用CTセンサ203も、漏電電流用CTセンサ201と同じ100A定格の分割可能な磁気コアを含む電流センサである。
漏電電流用CTセンサ201は、磁気コア(環状の軟磁性体)の内側を接地線eが通過するように配置されている。そのため、漏電電流用CTセンサ201は、交流が接地線eを流れるとき、該センサ201と電気的に接続された入力回路を流れる誘導電流を誘導励起する。上記入力回路は、その交流を電流信号として検出する。
この漏電電流用CTセンサ201は、上記入力回路と協働して、定格電流に対して非常に微弱な電流も精度良く検出することが要求される。具体的には、漏電電流用CTセンサ201は、小型の信号注入部205のコイルによって発生される35mVr.m.s.の電圧を10kΩの抵抗分に印可した際に、接地線eを流れる約3.5μAの電流信号を1次側の電流信号として出力することが要求される。
上記入力回路は、上記磁気コアに複数回(例えば、一般的なCTセンサでは標準とされる3000回)巻き付けられたコイルに発生する2次側の電流信号(1.2nA=3.5μA/3000回)を検出する性能が要求される。すなわち、この例の場合、漏電電流用CTセンサ201は、定格電流(100A)比では約−150dBの微弱な電流を検出することになる。漏電電流用CTセンサ201が検出した電流信号は、電圧信号に変換され、さらにローパスフィルタを透過した後、データロガー(16bit A/D)に入力する。
[2.純粋抵抗用CTセンサ202]
純粋抵抗用CTセンサ202は、磁気コアの内側を参照用回路部204の一部が通過するように配置されている。そのため、参照用回路部204を交流が通過したとき、純粋抵抗用CTセンサ202は、参照用回路部204を流れる交流を電圧信号として検出する。
[3.背景信号用CTセンサ203]
背景信号用CTセンサ203は、漏電検出システム1000に含まれる全ての電線から外れて(従って、漏電検出システム1000に含まれるいずれの電線も背景信号用CTセンサ203を通過することなしに)、漏電電流用CTセンサ201の近傍に配置される。
背景信号用CTセンサ203は、エレキギターのピックアップのハムバッキングから発想されたものである。背景信号用CTセンサ203は、コアにコイルが巻き付けられた状態で、上記コアの上下方向を定めるとき、漏電電流用CTセンサ201のコアと上下反対向きに配置されている。言い換えれば、同じ方向から見たとき、背景信号用CTセンサ203の磁気コアに巻き付けられているコイルの巻き方向は、漏電電流用CTセンサ201の磁気コアに巻き付けられているコイルの巻き方向とは逆の方向となっている。
これにより、漏電電流用CTセンサ201および背景信号用CTセンサ203の各コアを貫く磁束が変化したとき、この磁束変化に起因して漏電電流用CTセンサ201と背景信号用CTセンサ203とが検出する第1の電圧信号は、互いに逆相の関係となる。一方、空間に漏れ出た電磁波が上記の各コアに巻き付けられたコイルと電磁結合することによって漏電電流用CTセンサ201および背景信号用CTセンサ203が検出する第2の電圧信号(背景信号)は、互いに同相の関係となる。
そのため、漏電電流用CTセンサ201および背景信号用CTセンサ203の検出する電圧信号同士を減算した場合、接地線eを流れる電流に起因する第1の電圧信号同士は強めあう。一方、上記の減算により、空間に漏れ出た電磁波に起因する第2の電圧信号同士は打ち消しあうことになる。
従って、漏電電流用CTセンサ201が検出した電圧信号と、背景信号用CTセンサ203が検出した電圧信号とを減算することによって、漏電電流用CTセンサ201が検出した電圧信号から上記背景信号を除去することができる。このように、電磁結合に起因する背景信号成分を除去することは、長距離信号配線等において発生する誘導ノイズをキャンセルすること等に有効である。
[CTセンサの変形例]
なお、漏電電流用CTセンサ201、純粋抵抗用CTセンサ202、および背景信号用CTセンサ203の一変形例は、各々の磁気コアに対して、数kHzの高周波(例えば、5kHz90mAの波)が印加される構成であってもよい。上記高周波は、磁気コアを磁気シェイキング(非特許文献1参照)することによって、微弱な低周波磁界に対する磁気コアの透磁率を向上させる。その結果、これらのCTセンサ201、202、203は、より弱い電流を検出することが可能となる。高周波の印加による磁気シェイキングは、後述するロックイン検出と併用した場合、特に効果が大きい。
図19に、あるCTセンサの磁気コアに磁気シェイキングを行った場合と行わなかった場合とについて、上記CTセンサによって25Hzの微弱な電流信号を検出した測定結果を示す。図19に示すグラフの横軸は、上記電流信号の強度の設定値であり、同グラフの縦軸は、CTセンサによる上記電流信号の測定結果(検出電圧)である。また、同図において、「励磁あり検出」のグラフが、CTセンサに磁気シェイキングを行った場合の測定結果であり、「励磁なし検出」のグラフが、CTセンサに磁気シェイキングを行わなかった場合の測定結果である。図19より、上記電流信号の設定値が約50μA以下の場合に、磁気シェイキングを行わなかった場合のCTセンサの検出電圧が、上記電流信号に比例していないことがわかる。すなわち、CTセンサの磁気シェイキングを行わなかった場合、上記CTセンサは、約50μA以下の微弱な電流信号を正しく計測することができない。一方、磁気シェイキングを行なった場合の検出電圧は、上記電流信号の設定値によらず、上記電流信号に比例している。従って、CTセンサの磁気シェイキングを行なった場合、上記CTセンサは、約50μA以下の微弱な上記電流信号であっても、正しく計測することができる。
なお、上記高周波を磁気コアに注入するために使用される電線は、漏電検出システム1000に含まれるいずれかの電線であってもよいし、それ以外の電線であってもよい。本実施形態では、60Hzの系統周波数が、漏電電流用CTセンサ201の磁気シェイキングを行う役割を果たしている。なお、このような磁気シェイキングの技術は、従来のCTセンサによって構成された微小交流電流計や漏電電流計に使用することもできる。
[4.参照用回路部204]
参照用回路部204は、39Ωの純粋抵抗2041の部位と、信号注入用磁気コア2052に巻きつけられた回路巻き部2042の部位と、純粋抵抗用CTセンサ202の内側を通過する部位とを有している。回路巻き部2042を貫く信号注入用磁気コア2052中の磁束の強さが変化したとき、参照用回路部204には、電磁誘導により誘導電流が流れる。
後述する信号注入用磁気コア2052に対する回路巻き部2042の巻き数は、1または2である。上記巻き数が1である場合、信号注入用CT205のコアに対する参照用回路部204の巻き数と、磁気コア2052に対するAC系統1の巻き数とが等しくなる。そのため、後述する漏電検出処理において、対地インピーダンスの抵抗分を算出するための計算方法が明快となる。一方、巻き数が2である場合、巻き数が1である場合と比較して、参照用回路部204の純粋抵抗2042に印加される誘導電圧が大きくなる。そのため、純粋抵抗2042がより大きな抵抗値を有する場合であっても、純粋抵抗2042を流れる電流を精度よく検出することができる。回路巻き部2042の巻き数は、1であっても、あるいは2であっても、非常に小さい。加えて、機能する周波数が高々147Hzと小さい。そのため、純粋抵抗2041に対して、回路巻き部2042によるインダクタンスの寄与はないとみなすことができる。
従って、参照用回路部204は、インダクタンスおよび容量値がほぼゼロであって、純粋抵抗2041に基づく抵抗値(39Ω)のみを有する回路である。なお、磁気コア2052が小さく、従って信号注入部205の信号注入能力が低い場合、純粋抵抗2041の抵抗値は、純粋抵抗用CTセンサ202が機能し得る1mA以上の参照電流を確保することができる数十Ω程度に設定されることが妥当である。すなわち、数十Ω程度よりも大きすぎる場合、参照用回路部204を電流が流れなくなるので、純粋抵抗用CTセンサ202により電流を測定することが困難となる。一方、数十Ω程度よりも小さすぎる場合、参照用回路部204へと電流が流れすぎるので、信号注入部205による接地線eへの注入能力が減殺されることになる。
[5.信号注入部205]
信号注入部205は、発振器2051と、アンプ(図視せず)と、600A定格の信号注入用磁気コア2052とを備えている。信号注入用磁気コア2052の穴を接地線eが通過している。また、信号注入部205は、発振器2051および上記オーディオアンプにより発生された電流が、上記コアに巻き付けられたコイル3053を通って流れる構成となっている。また、信号注入用磁気コア2052は、注入信号を接地線に注入するために用いられる一般的な磁気コアと比較して、接地線eに平行な方向の断面積が小さい構成である。そのため、一般的な磁気コアと比較すると、質量が約1/30に小さくなっている。これにより、信号注入部205(信号注入用磁気コア2052)は、質量が軽いので、持ち運びが容易である。一方で、それとともに、信号注入部205が接地線eに注入する注入信号の電圧の上限値は、一般的な磁気コアを備えた信号注入部のそれよりも低くなっている。以下に、その理由を説明する。
信号注入部205により注入することができる注入信号の電圧の上限値は、磁気コア2052に収容することができる磁束Wbと、注入周波数とに比例する。そのため、上記上限値を大きくするためには、上記磁束Wbおよび/または注入周波数を大きくすればよい。ところが、注入周波数が大すぎる場合、AC系統1において、容量性の漏電の応答が卓越する、あるいは、容量性の漏電が抵抗性の漏電に変化して観測されるなどの不具合がある。そのため、注入周波数を大きくしすぎることは望ましくない。
一方、上記磁束Wbを大きくするためには、磁束密度および注入回路に鎖交する断面積を拡大することが有効である。しかし、上記磁束密度は、実用的に利用可能な材料では、1.8T程度(鉄系材料の飽和磁束密度)が上限である。結局、注入信号の電圧の上限値を大きく向上させるためには、磁気コアの断面積を大きくすることのみが有効である。従って、小さな断面積を有する磁気コア2052により注入することができる電圧の上限値は、一般的な信号注入部のそれよりも小さいことになる。
さて、発振器2051により発生された交流が、上記コア2052に巻き付けられたコイル2053を通るとき、上記コア2052中の磁束の強さが変化することによって、上記コア2052を通過する接地線eに誘導電流が流れる。この誘導電流の第1の経路は、接地線e、電流源102、R相の電路X、経路aおよび/またはbをこの順で通って大地より還流するものである。また、上記誘導電流の第2の経路は、接地線eから、電流源103、T相の電路Z、経路cおよび/またはd、および大地をこの順で通って接地線eに戻るものである。図3に、第1および第2の電流経路の概略的な回路図を示す。上記第1および第2の電流経路には、AC系統1の系統電流(およびその高調波)も流れている。
さらに、コア2052中の磁束の強さが変化したとき、参照用回路部204の回路巻き部2042を貫く磁束の強さが変化する。これにより、参照用回路部204にも誘導電流が流れることになる。
以上のように、信号注入部205は、発振器2051によって発生された励起用信号により、コア2052中の磁束強度を変化させる。上記磁束変化は、接地線eおよび参照用回路部204に対して、同位相の誘導電圧を発生させる。これにより、接地線eおよび参照用回路部204に誘導電流が流れる。これらの誘導電流(以下、注入信号と呼ぶ)は、上記励起用信号と同じ周波数(以下、注入周波数と呼ぶ)を有している。以下に、注入周波数の選択方法を説明する。
図4の(a)に、実験台上で構成したあるAC系統において、信号注入部205によって125Hzの注入信号を注入した場合に、B種接地線を通る漏れ電流のパワーをFFT演算により測定した測定結果を示す。同図は、周波数0Hzから300Hzの間における漏れ電流の相対パワーを示すスペクトルである。上記スペクトルにおいて、系統周波数に等しい60Hzにおけるピークパワーは系統電流によるものである。このピークパワーは、125Hzのパワーと比較して、約10000倍となっている。すなわち、注入信号のパワーは、系統電流のピークパワーと比較して、およそ1/10000よりも小さいことがわかる。
図4の(a)は、系統電流の2次高調波(周波数120Hz)のパワーが比較的小さい例である。ところが、AC系統によっては、系統電流の2次高調波のピークパワーが、系統電流のピークパワーと同等程度に大きい場合がある。
図4の(b)に、このようなAC系統の相対パワースペクトルの一例を示す。図4の(b)に示すパワースペクトルを有するAC系統に対して、125Hzの注入信号を注入した場合、125Hzにおいて、漏れ電流の全パワーに占める注入信号のパワーの割合は大変小さくなる。そのため、この漏れ電流から注入信号成分のみを抽出することは困難となる。言い換えれば、この漏れ電流から注入信号成分を抽出した場合、抽出された注入信号成分には大きな系統電流の2次高調波成分が含まれる。従って、抽出した上記注入信号成分のS/Nが悪くなる。
従って、上記注入周波数は、AC系統の系統周波数およびその分数倍から離れていることが望ましい。具体的に、AC系統の系統周波数とその分数倍の周波数との相乗平均であることが望ましい。例えば、系統周波数(60Hz)と系統周波数の2倍(120Hz)との相乗平均の周波数、および、系統周波数の2倍(120Hz)と3倍(180Hz)との相乗平均などが、上記注入周波数として好ましい。なぜならば、系統周波数とその分数倍の周波数との相乗平均は、系統周波数の無理数倍となる。そのため、注入周波数が系統周波数とその分数倍の周波数との相加平均である場合と比較して、注入信号が、系統電流の有理数倍の高調波とも重なりにくいという特長を有するからである。すなわち、注入周波数として、以下2パターンが考えられる。
1.系統周波数の1次(60Hz)と2次(120Hz)との間の周波数
√(60×120)=60×√2=120×(1/√2)=84.852814Hz
2.系統周波数の2次(120Hz)と3次(180Hz)との間の周波数
√(120×180)=120×√(3/2)=180×√(2/3)=146.96938Hz
図4の(b)では、約85Hzおよび約147Hzにおいて、AC系統1の電流の相対パワーが低くなっている。従って、これらの2パターンの周波数を注入周波数とした場合、漏れ電流において、AC系統1の電流信号のピークと注入信号とが重ならないことがわかる。
また、1次の半分(30Hz)と1次(60Hz)の間の周波数も、注入周波数の候補となり得る。例えば、√(30x60)=42.426Hzは、注入周波数の候補となり得る。しかしながら、AC系統1は、インバータによって系統周波数よりも低い周波数を生成する場合がある。この場合、インバータに生成された周波数と42.426Hzの注入周波数とが重なる可能性がある。そのため、30Hzから60Hzの間の周波数は、注入周波数として望ましくない。一方、30Hzより下の周波数領域は、インバータの周波数とも重なりにくくなるので、注入周波数の候補となる。具体的には、√(60Hz/2×60Hz/3)=24.49Hzなどが、注入周波数の候補となる。
図5に、上述した85Hz、125Hz、147Hzの各注入周波数について、系統周波数からの周波数距離、容量分からの漏電量に対する影響、および注入可能な電力(パワー)の3つの要素に基づいて評価した評価尺度を示す。漏電検出装置2は、系統電流の高調波およびノイズの強さ、および上記の各要素に基づき、最適な注入周波数を自動選択する構成であってよい。
また、これ以外に、漏電検出装置2が注入周波数選択手段(図示せず)をさらに備えている構成であってよい。上記注入周波数選択手段は、所定の周波数範囲(例えば、0Hzから300Hz)に含まれる上記系統周波数のk倍(kは自然数)または1/k倍の周波数の信号成分における最大の信号強度を取得する。そして、上記最大の信号強度に対して所定の割合(たとえば1%)以下となる信号強度を有する特定周波数を、上記所定の周波数範囲内から選択する。そして、信号注入部205は、上記注入周波数選択手段により選択された上記特定周波数を、上記注入信号の上記注入周波数として決定する。
これにより、上記漏れ電流信号において、上記注入信号は、上記注入周波数を有する背景の信号成分に対して、比較的大きな強度を有することになる。その結果、ロックイン検出部2062bが抽出する信号において、上記注入信号の割合が大きくなる。上記構成によれば、例えば、工場のインバータなどが発生する特有の周波数を有するノイズと、上記注入信号とが重なることを避けることができる。
なお、系統周波数の1次が50Hzの場合、系統周波数の1次が60Hzの場合における上記2パターンの注入周波数の計算と同じ計算で、注入周波数は約71Hzおよび約123Hzの2パターンが考えられる。
[6.データ処理部206]
データ処理部206は、データ取得部2061と、データ解析部2062とを含む。データ取得部2061は、漏電検出システム1000の各部より電圧信号を取得するものである。また、データ解析部2062は、データ取得部2061が取得したデータに対して、オフラインでPCソフト処理を行うものである。
[6−1.データ取得部2061]
データ取得部2061は、以下のCh1〜Ch5の電圧信号を受信する。
Ch1:AC系統1の系統電流
Ch2:漏電電流用CTセンサ201の検出した信号
Ch3:背景信号用CTセンサ203の検出した信号
Ch4:純粋抵抗用CTセンサ202の検出した信号
Ch5:注入信号
データ取得部2061は、後述するように、データ解析部2062の各部に上記Ch1〜Ch5の電圧信号を送出する。
[6−2.データ解析部2062]
データ解析部2062は、ノッチフィルタ部(特定周波数成分除去手段)2062a、背景信号減算部(背景信号減算手段)2062c、ロックイン検出部(特定周波数成分抽出手段)2062b、および漏電情報算出手段(漏電情報算出手段)2062dを含む。以下に、データ解析部2062の各部について、図1を用いて詳細に説明する。図1は、データ処理部206の構成を示す機能ブロック図である。なお、同図には、データ取得部2061よりデータ解析部2062に出力されるCh1〜Ch5の電圧信号の移動経路を示している。
[6−2a.ノッチフィルタ部2062a]
図1に示すように、ノッチフィルタ部2062aは、Ch2の電圧信号に対して、系統周波数の1、2、3次分に等しい周波数成分を除去するノッチフィルタ処理を行うものである。
詳細には、ノッチフィルタ部2062aは、0.5秒ごとに、40回(20秒間)、データ取得部2061よりCh1の電圧信号を取得して、上記Ch1の電圧信号から系統周波数を計測する。図6に、ノッチフィルタ部2062aが、60Hzの系統周波数を0.5秒ごとに40回計測した結果の一例を示す。同図より、計測された系統周波数(縦軸)は、約20秒間で±0.004Hz程度の揺らぎを有していることがわかる。
ノッチフィルタ部2062aは、このようにして0.5秒ごとに更新される系統周波数の計測値をパラメータとして、Ch2の電圧信号から、上記計測値の周波数成分を除去する。これにより、系統周波数が揺らいでいる場合であっても、Ch2の電圧信号から、系統周波数を有する信号成分(以下、系統電流成分と呼ぶ)を正確に除去することができる。さらに、ノッチフィルタ部2062aは、上記計測値の2倍および3倍の周波数成分も、上記Ch2の電圧信号から除去する。これにより、ノッチフィルタ部2062aは、系統電流だけでなく、その2次高調波、および3次高調波も、上記Ch2の電圧信号から除去することができる。
こうして、ノッチフィルタ処理が実行された後、Ch2の電圧信号は、系統電流成分、その2次高調波成分、および3次高調波成分を含まないことになる。従って、上記ノッチフィルタ処理によって、上記電圧信号から、系統電流成分の数千分の1の強度を有する微弱な注入信号成分を抽出することができるようになる。
このように、ノッチフィルタ処理は、大パワーかつ狭域の周波数成分(例えば、地絡や漏電時に発生する高調波や高周波)を除去することができる。そのため、上記ノッチフィルタ処理は、漏電リレーや火災警報器に応用することができる。
なお、パワーコンディショナ等では、電力系統と同期した交流電圧を得るために、周波数の変化に追従するPLL(Phase Locked Loop)回路が使用される。漏電検出システム1000の一変形例では、このPLL回路に系統周波数を追従させてもよい。この構成では、ノッチフィルタ部2062aは、上記PLL回路より系統周波数を取得して、電圧信号から、上記系統周波数を有する信号成分を除去する。これにより、ノッチフィルタ部2062aが系統周波数を計測する処理を軽減あるいは省略することができる。その結果、系統周波数を計測するための計算量を削減することができる。
[6−2b.ロックイン検出部2062b]
ロックイン検出部2062bは、データ取得部2061が取得したCh2〜Ch4の電圧信号から注入信号成分のみを検出するために、上記の各電圧信号を注入周波数でロックイン検出する。ここで、ロックイン検出(同期検波)とは、信号に含まれる特定の周波数成分と位相を合わせて上記信号を検出することによって、上記信号から上記特定の周波数成分のみを検出することをいう。このようなロックイン検出の技術は、検出機器の絶縁状態や絶縁液体の検出等に応用することができる可能性がある(例:高抵抗液体検出や絶縁抵抗測定への応用)。
ロックイン検出部2062bは、約20秒間、Ch2〜Ch4の電圧信号に対してロックイン検出を繰り返して、検出された検出信号A〜検出信号Cをそれぞれ積算する。本発明では、ロックイン検出部2062bによる検出信号の積算時間を20秒程度に設定することで、上記検出信号A〜Cに含まれる微小な注入信号成分のS/Nを向上させることを狙っている。これは、通信理論のシャノン限界から導かれるように、S/Nと積算時間は、トレードオフの関係にあるという原理があるためである。なお、上記原理を応用した計測器は、例えば非特許文献1に示されるように、既に製品として開発されている。
ロックイン検出部2062bは、85.47Hzでロックイン検出する場合、約0.5秒で42回(=85.47×0.5)、約20秒間で1680回(=85.47×20)のロックイン検出を行うことができる。なお、Ch2〜Ch4の電圧信号に含まれる注入信号成分の強度がより微小である場合、ロックイン検出部2062bによる検出時間および/または検出回数をより増加させて、積算時間を増加させてもよい。
ロックイン検出部2062bは、検出信号Aおよび検出信号Bを背景信号減算部2062cに出力し、検出信号Cを漏電情報算出手段2062dに出力する。
[6−2c.背景信号減算部2062c]
背景信号減算部2062cは、ロックイン検出部2062bから受信した検出信号Aから検出信号Bを減算する。ここで、検出信号Aは、漏電電流用CTセンサ201で検出されたCh2の電圧信号から、注入信号成分のみを抽出した信号である。また、検出信号Bは、背景信号用CTセンサ203で検出されたCh4の電圧信号から、注入信号成分のみを抽出した信号である。
前述したように、漏電電流用CTセンサ201および背景信号用CTセンサ203が検出したCh2およびCh4の電圧信号には、各センサが備えたコイルが電磁波と電磁結合することに起因する微小なノイズ信号が互いに同位相で含まれている。従って、背景信号減算部2062cは、検出信号Aから検出信号Bを減算することにより、検出信号Aから、上記電磁結合に起因する微小なノイズ信号を除去することができる。
[6−2d.漏電情報算出手段2062d]
漏電情報算出手段2062dは、電路XおよびZと大地との間に形成される対地インピーダンスZIの抵抗分XR、および抵抗分XRからの漏電電流Igrを算出するものである。具体的に、漏電情報算出手段2062dは、以下のようにして、上記抵抗分XRおよび上記漏電電流Igrを算出する。
漏電情報算出手段2062dは、背景信号減算部2062cより検出信号Aを取得し、ロックイン検出部2062bより検出信号Cを取得する。ここで、検出信号Aは、漏電電流用CTセンサ201で検出されたCh2の電圧信号から、注入信号成分のみを検出した信号である。従って、検出信号Aは、注入信号に対する対地インピーダンスZIの応答である。言い換えれば、検出信号Aは、注入信号に対して、図3に示す回路が示す応答である。
一方、検出信号Cは、純粋抵抗用CTセンサ202より得られたCh3の電圧信号から注入信号成分を抽出したものである。そのため、検出信号Cは、注入信号に対する参照用回路部204の応答である。ところが、参照用回路部204は、抵抗値39Ωの純粋抵抗2041のみを有する回路である。従って、検出信号Cは、注入信号に対する純粋抵抗2041の応答を示すものである。なお、図7に、参考として、85.47Hzの注入信号に対する19.5Ωの純粋抵抗の応答を示す。
さて、注入信号に対する参照用回路部204の応答(検出信号C)は、抵抗分のみを有する(容量分がゼロの)インピーダンスの応答であると考えることができる。そのため、検出信号Aを、検出信号Cと位相が一致した平行信号成分と、検出信号Cに対する位相差が90度である直交信号成分とに分解したとき、上記平行信号成分は抵抗分XRによる応答に相当する。また、上記直交信号成分は、容量分XCによる応答に相当する。
従って、以下の計算手順1.から4.により、対地インピーダンスZIの抵抗分XRを算出することができる。
1.信号を余弦波成分と正弦波成分とを有するベクトルで表す場合、励起用信号を純粋な正弦波の基準(ベクトル(0、1))として、検出信号Aと検出信号Cを表すベクトル(X1、X2)、(r1、r2)の各成分を求める。
まず、検出信号Cの余弦成分r1および正弦成分r2は、それぞれ以下のようにして求められる。
Figure 2014173843
Figure 2014173843
ここで、T0は基準信号の一周期である。また、Fは注入周波数である。また、検出信号Cの振幅(電圧)を時刻tの関数としてf(t)で表している。
同様に、検出信号Aの余弦成分X1および正弦成分X2は、それぞれ以下のようにして求められる。
Figure 2014173843
Figure 2014173843
ここで、検出信号Aの振幅を時刻tの関数としてg(t)で表している。
2.ベクトル(r1、r2)とベクトル(X1、X2)との内積演算により、これらの2ベクトルの重なり成分XRipを計算する。
XRip=r1×X1+r2×X2
このようにして、対地インピーダンスZIの抵抗分XRipが求められる。
3.XRipに含まれるr1とX1との積は、システム(参照用回路部204の抵抗値など)に依存した単位を有している。そのため、XRipは数値計算に使用し難いという欠点がある。そこで、検出信号Cのベクトル(r1、r2)の長さの自乗でXRipを割算することにより、XRipをシステムに依存しない無次元量XR0に変換する。
XR0=XRip/(r1×r1+r2×r2)
このようにして得られたXR0は、検出信号Aのベクトル(X1、X2)のうち、検出信号Cのベクトル(r1、r2)と平行な成分に相当する無次元量である。
4.無次元量XR0を、Ωの単位を有する実際の抵抗値XRに戻す。
XR=Rref/XR0
ここで、Rrefは純粋抵抗の抵抗値(Ω)である。
以上の計算手順1.から4.により、システムに依存しない対地インピーダンスZIの抵抗分XRが求められた。また、以下の計算式に従って、漏電電流Igrを計算することができる。
Igr=E/XR
ここで、Eは前述のとおり、AC系統1の電路Xに印加される電圧E=ESR=|EST|である。
このように、漏電情報算出手段2062dは、注入信号に対する純粋抵抗2041の応答(検出信号C)に基づき、注入信号に対する対地インピーダンスZIの応答(検出信号A)を校正する。これらの注入信号は、同じ励起用信号を起源とするものである。従って、励起用信号が、信号注入用磁気コア2052の性質等に起因する非線形性や位相遅れを含んでいた場合であっても、検出信号Aには、上記の非線形性や位相遅れが影響することはない。
なお、対地インピーダンスZIの(システムに依存する)容量分XCipは、ベクトル(r1、r2)とベクトル(X1、X2)との直交成分(r1×X2−r2×X1)を、注入信号の振動数で割算することで求められる。
あるいは、参照用回路部204の純粋抵抗2041を、既知の容量値を有する純粋容量に取り換えた場合、検出信号Cは、注入信号に対する上記純粋容量の応答となる。この場合、検出信号Aにおいて、検出信号Cと位相が一致した平行信号成分は、対地インピーダンスZIの容量分XCによる応答に相当することになる。従って、上記手順1.から4.と同様の手順により、システムに依存しない容量分XCを算出することもできる。
[漏電検出処理]
続いて、図8〜図12を用いて、漏電検出装置2がAC系統1の漏電を検出する漏電検出処理を説明する。図8は、上記漏電検出処理の流れを示すフローチャートである。また、図9〜図12は、3.3kΩの対地絶縁抵抗XRを有する3相3線式のキュービクルにおいて、上記漏電検出処理を実行した際の測定データである。以下では、図9〜図12に示す測定データを補助的に用いつつ、上記漏電検出処理の流れを説明する。
上記漏電検出処理の間、信号注入部205は、接地線eを介してAC系統1に注入信号を注入する。また、データ取得部2061は、Ch1〜Ch5の電圧信号を取得する。図9は、データ取得部2061が漏電電流用CTセンサ201から取得するCh2の電圧信号を示している。図9では、上記電圧信号中に、60Hzの系統電流成分のみが確認される。
データ取得部2061は、Ch1およびCh2の電圧信号をノッチフィルタ部2062aに出力し、Ch3およびCh4の電圧信号をロックイン検出部2062bに出力する。
ノッチフィルタ部2062aは、0.5秒ごとに、Ch1の電圧信号からAC系統1の系統周波数を計測し(S101)、Ch2の電圧信号から上記系統電流成分(60Hz)およびその2次、3次分(120Hz、180Hz)の信号成分を除去するノッチフィルタ処理を行う(S102)。
図10は、ノッチフィルタ部2062aによってノッチフィルタ処理が実行された後のCh2の電圧信号を示している。図9に示す電圧信号と比較して、図10に示す電圧信号の振幅(電圧値)は、約1/400になっていることがわかる。図10の電圧信号には、系統電流の5次高調波(300Hz)が残っている。また、図10では、電圧信号中に注入信号成分(85Hz)を確認することができない。
ノッチフィルタ部2062aは、ノッチフィルタ処理後のCh2の電圧信号を、ロックイン検出部2062bに出力する。
ロックイン検出部2062bは、0.5秒ごとに、約20秒間、上記Ch2〜Ch4の電圧信号をロックイン検出するロックン検出処理を行う(S103)。そして、ロックイン検出部2062bは、約20秒間の間に実行した複数回のロックイン検出による全検出結果を積算する。
図11の(a)および(b)は、42回分(約0.5秒間)および1680回分(約20秒間)のロックイン検出による検出結果を積算したのち、積算結果を積算回数で平均した検出信号Aを示している。図11の(a)および(b)では、検出信号A中に約85Hzの信号成分を確認することができる。さらに、図11の(a)および(b)では、系統電流の5次高調波成分(300Hz)が検出信号A中から消えていることがわかる。また、図11の(b)に示す1680回分のロックイン検出の積算値は、図11の(a)に示す42回分のロックイン検出の積算値と比較して、波形が滑らかになっている。
ロックイン検出部2062bは、第1および検出信号Bを背景信号減算部2062cに出力し、検出信号Cを漏電情報算出手段2062dに出力する。
背景信号減算部2062cは、検出信号Aから検出信号Bを減算する(S104)。図12は、検出信号Bを示している。図12に示す検出信号Bは、図11の(b)に示す検出信号Aと比較して、約1/10の振幅を有している。背景信号減算部2062cは、検出信号Bを減算した後の検出信号Aを、漏電情報算出手段2062dに出力する。
漏電情報算出手段2062dは、背景信号減算部2062cから入力された検出信号Aと、ロックイン検出部2062bから入力された検出信号Cとに基づき、対地インピーダンスZIの抵抗分XRを算出する(S105)。
さらに、漏電情報算出手段2062dは、対地インピーダンスZIの抵抗分XRによる漏電電流Igrを算出する(S106)。
以上で、漏電検出処理が終了する。
[実験]
以下に、実験台上で構成したAC系統、またはキュービクルにおいて、漏電検出装置2を用いて漏電検出を行った実験(1)〜(3)の測定結果を示す。
[1.実験(1)]
本実験では、図2に示すAC系統1の構成を有するAC系統を実験台上で構成した。そして、上記AC系統において、対地インピーダンスZIの抵抗分XR1、XR2および容量分XC1、XC2を様々な値に設定して、それらの値の測定を行った。また、抵抗分XR1およびXR2による漏電電流Igrを算出した。なお、注入信号の周波数は125Hzとした。また、E=|EST|=ESR=210Vとした。
図13の(a)に、実験における漏電の設定条件を示す。同図において、設定XRは、(設定XR)=1/(1/XR1+1/XR2)と定義される量である。このように定義される設定XRは、R相およびT相が同時に漏電している場合に、両相からの全漏電電流を計算するために有用である。なぜならば、XR1からの漏電電流をIgr1、抵抗分XR2からの漏電電流をIgr2としたとき、全漏電電流IgrはIgr1+|Igr2|=ESR/XR1+|EST|/XR2=E(1/XR1+1/XR2)=E/(設定XR)となるためである。
また、設定XCは、(設定XC)=XC1+XC2として定義される量である。この設定XCは、AC系統と大地との間に形成される全容量を示す量である。また、設定Igrは、(設定Igr)=E/(設定XR)として定義される量である。設定Igrは、抵抗分XR1および抵抗分XR2からの漏電量を示す値である。
図13の(b)に示すXR推定、XC推定、およびIgr推定は、上記設定XRおよび上記設定XCの下で測定された抵抗分XR1、XR2、XC1、およびXC2より算出されるものである。それぞれ、(XR推定)=1/(1/XR1+1/XR2)、(XC推定)=XC1+XC2、(Igr推定)=E/(XR推定)と定義される。同図より、R相のみ、またはR相とT相に漏電がある場合、測定データであるXR推定、XC推定の値は、対応する設定XR、設定XCの値を正しく計測することができていることがわかる。
図14の(a)および(b)は、図13の(b)に示すIgr推定およびC推定の測定データをグラフに示したものである。図14の(a)および(b)中の三角形は、Igr推定およびXC推定の測定データである。また、図14の(a)および(b)中の直線は、設定Igrおよび設定XCの参照線(y=xのグラフ)である。上記測定データと上記参照線との距離が近いほど、Igr推定は、設定Igrとの一致がよいことになる。なお、図14の(a)と(b)、図16の(a)と(b)、および図18に示すグラフにおいて、「補正あり」または「補正なし」という記載は、前述した背景信号減算部2062cにより、各測定値を補正したかまたは補正していないかを表している。また、図14の(a)、図16の(a)、および図18において、「210V/抵抗(kΩ)」または「105V/抵抗(kΩ)」という記載は、抵抗分に印加される電圧が、210Vまたは105Vであることを示している。
[2.実験(2)]
本実験では、3相3線式の配電線に使用されているPVキュービクルにおいて、対地インピーダンスZIの抵抗分XR1、XR2および容量分XC1、XC2を様々な値に設定して、それらの値の測定を行った。また、抵抗分による漏電電流Igrを算出した。注入周波数は、85Hzとした。また、AC系統1の線間電圧は210.8Vである。設定XRおよび設定XCを図15の(a)に示す。
図15の(b)は、上記設定XRおよび設定XCの下で測定されたXR1、XR2、XC1、およびXC2から算出されたXR推定、XC推定、およびIgr推定である。
図16の(a)は、図15の(b)に示すIgr推定の測定データをグラフにしたものである。また、図16の(b)は、図15の(b)に示すXC推定の測定データをグラフに示したものである。図16の(a)より、Igr推定の測定データは、参照線の近くに分布しており、推定Igrは設定Igrとよく一致していることがわかる。また、図16の(b)では、参照線と測定データとの間にオフセットが存在している。しかしながら、このオフセットは、漏電検出装置2が設定XCを正しく測定できなかったのではなく、実際の対地静電容量が設定XCよりも大きかった可能性もある。
ここで、従来のIo方式の漏電検出装置が検出する漏電電流は、各相からの漏電電流同士の重ね合わせである。ところが、複数の相を備えた配電方式(単相3線式、および3相4線等)を有するAC系統において、複数の相が同時に漏電した場合、各相からの漏電電流は、互いに重なり合うことにより、等しい系統位相の成分同士が打ち消しあうことになる。そのため、上記従来のIo方式の漏電検出装置は、上記AC系統の漏電を正しく検出できない。一方、本発明に係る漏電検出装置2は、Igr方式の漏電検出装置であるので、上記系統位相に依存せず、各相の漏電電流の総和を正確に検出することができる。
[3.実験(3)]
本実験では、単相3線式(特許文献1参照)のキュービクルにおいて、対地インピーダンスZIの抵抗分XR1、XR2および容量分XC1、XC2を様々な値に設定して、それらの値の測定を行った。また、抵抗分による漏電電流Igrを算出した。注入周波数は85.47Hzとし、各相に対する印加電圧は105Vとした。設定XR、設定XC、および設定Igrを、図17の(a)に示す。
図17の(b)は、上記設定XRおよび設定XCの下で測定されたXR1、XR2、XC1、およびXC2から算出されたXR推定、XC推定、およびIgr推定である。図17の(a)および(b)より、R相のみ、またはR相とT相に漏電がある場合、測定データであるXR推定、XC推定の値は、対応する設定XR、設定XCの値を正しく計測することができていることがわかる。
[ソフトウェアによる実現例]
漏電検出装置2の制御ブロック(特にノッチフィルタ部2062a、ロックイン検出部2062b、背景信号減算部2062c、および漏電情報算出手段2062d)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
後者の場合、漏電検出装置2は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明は、AC系統の漏電を検出する漏電検出装置等に利用することができる。
1 AC系統
2 漏電検出装置
201 漏電電流用CTセンサ(第1のセンサ)
202 純粋抵抗用CTセンサ(第2のセンサ)
203 背景信号用CTセンサ(第3のセンサ)
204 参照用回路部
205 信号注入部
2062a ノッチフィルタ部(特定周波数成分除去手段)
2062b ロックイン検出部(特定周波数成分抽出手段)
2062c 背景信号減算部(背景信号減算手段)
2062d 漏電情報算出手段(漏電情報算出手段)

Claims (7)

  1. 交流電源を備えた電気回路であるAC系統の接地線に対して、上記交流電源が発生させる系統周波数とは異なる注入周波数を有する第1の交流電圧を印加することにより、上記AC系統に第1の注入信号を注入する信号注入部と、
    上記接地線からの漏れ電流を検出し、漏れ電流信号として出力する第1のセンサと、
    所定の時間間隔で上記系統周波数を計測し、上記所定の時間間隔で計測結果が更新される上記系統周波数を用いて、上記漏れ電流信号に含まれる上記系統周波数の信号成分である第1の系統電流成分を除去する特定周波数成分除去手段と、
    上記特定周波数成分除去手段によって上記第1の系統電流成分が除去された上記漏れ電流信号を上記注入信号の特定位相と同期して検出することにより、上記漏れ電流信号から、上記注入周波数の信号成分である第1の注入信号成分を抽出する処理を、所定の回数だけ繰り返して行い、各回の処理から得られた上記第1の注入信号成分を積算する特定周波数成分抽出手段と、
    上記特定周波数成分抽出手段によって抽出され、積算された上記第1の注入信号成分を、上記第1の交流電圧に対する対地絶縁抵抗の応答分と、上記第1の交流電圧に対する対地静電容量の応答分とに分離して、上記対地絶縁抵抗の応答分から対地絶縁抵抗を算出する漏電情報算出手段と、
    を備えたことを特徴とする漏電検出装置。
  2. 所定のインピーダンスを有する抵抗または容量を備えた参照用回路部と、
    上記参照用回路部を流れる参照電流を検出する第2のセンサと、をさらに備え、
    上記信号注入部は、上記参照用回路部に対して、上記第1の交流電圧と同期した、上記注入周波数を有する第2の交流電圧を印加することにより、上記参照用回路部に第2の注入信号を注入し、
    上記注入信号を正弦波の基準として、上記第1の注入信号成分を、余弦波成分および正弦波成分からなる第1のベクトルで表し、また、上記第2のセンサが検出した上記参照電流に含まれる上記注入周波数の信号成分である第2の注入信号成分を、第2のベクトルで表すとき、
    上記漏電情報算出手段は、上記第1のベクトルと、上記第2のベクトルとの重なり成分から、上記AC系統の対地絶縁抵抗を算出する
    ことを特徴とする請求項1に記載の漏電検出装置。
  3. 上記特定周波数成分除去手段は、上記漏れ電流信号に含まれる上記系統周波数のn倍(nは2以上の自然数)の信号成分をさらに除去する
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の漏電検出装置。
  4. 所定の周波数範囲に含まれる上記系統周波数のk倍(kは自然数)または1/k倍の周波数の信号成分に対する該特定周波数の信号強度の割合が所定の閾値以下となる特定周波数を、上記所定の周波数範囲において選択する特定周波数選択手段をさらに備え、
    上記信号注入部は、上記特定周波数選択手段により選択された上記特定周波数を、上記注入信号の上記注入周波数として決定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の漏電検出装置。
  5. 上記注入周波数は、上記系統周波数のn倍とm倍と(n、m>nは自然数)の相乗平均、または上記系統周波数の1/n倍と1/m倍との相乗平均を中心とする所定の範囲に含まれる周波数であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の漏電検出装置。
  6. 上記第1のセンサは、磁性体で形成された中空円筒状の磁気コア、および上記磁気コアに巻き付けられたコイルを有しており、上記磁気コアの中空部分を上記AC系統の回路が貫通している構成であり、
    上記第1のセンサの上記磁気コアおよび上記コイルと同じ磁気コアおよびコイルを有し、かつ上記第1のセンサの近傍に位置する第3のセンサと、
    上記第1のセンサが検出した漏れ電流信号から上記第3のセンサが検出した信号を減算する背景信号減算部と、をさらに備え、
    上記第1のセンサおよび上記第3のセンサは、上記磁気コアの円筒の中心軸が互いに同じ方向を向き、かつ、同一の方向から見たときに、上記コイルが互いに逆巻きとなるように配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の漏電検出装置。
  7. 交流電源を備えた電気回路であるAC系統の漏電を検出する漏電検出方法であって、
    上記AC系統の接地線に対して、上記交流電源が発生させる系統周波数とは異なる注入周波数を有する第1の交流電圧を印加することにより、上記AC系統に第1の注入信号を注入する信号注入ステップと、
    上記接地線からの漏れ電流を検出し、漏れ電流信号として出力する検出ステップと、
    所定の時間間隔で上記系統周波数を計測し、上記所定の時間間隔で計測結果が更新される上記系統周波数を用いて、上記漏れ電流信号に含まれる上記系統周波数の信号成分である第1の系統電流成分を除去する特定周波数成分除去ステップと、
    上記第1の系統電流成分が除去された上記漏れ電流信号を上記注入信号の特定位相と同期して検出することにより、上記漏れ電流信号から、上記注入周波数の信号成分である第1の注入信号成分を抽出する処理を、所定の回数だけ繰り返して行い、各回の処理から得られた上記第1の注入信号成分を積算する特定周波数成分抽出ステップと、
    上記第1の注入信号成分を、上記第1の交流電圧に対する対地絶縁抵抗の応答分と、上記第1の交流電圧に対する対地静電容量の応答分とに分離して、上記対地絶縁抵抗の応答分から対地絶縁抵抗を算出するインピーダンス算出ステップと、
    を含むことを特徴とする漏電検出方法。
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