JP2014172835A - 光機能材料及び光電変換用増感色素 - Google Patents

光機能材料及び光電変換用増感色素 Download PDF

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Abstract

【課題】ルテニウム等の枯渇性がある原料を使わず、安定で、太陽エネルギーの変換効率の高い色素増感型の光電変換セル用の光電変換用増感色素の提供。
【解決手段】下式(1)で示される光電変換用増感色素。
Figure 2014172835

(式中、R〜R14はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数が1〜4のアルコキシ基、または、炭素数1〜4のアルキルチオ基を表し、Xは直接結合、エテン-1,2-ジイル基(−CH=CH−)または、エチン-1,2-ジイル基(−C≡C−)を表す。二重結合による幾何異性体は両方を表す。)
【選択図】なし

Description

本発明は光機能材料、及びこれを含む光電変換用増感色素に関する。また、本発明は、この光電変換用増感色素を用いた光電変換材料、光電変換電極、及びこれを用いた光電変換セルに関する。
太陽光発電は、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池及びテルル化カドミウムやセレン化インジウム銅などの化合物太陽電池が実用化もしくは研究開発の対象となっている。これらの太陽電池を更に普及させる為には、製造コスト、原材料、エネルギーペイバックタイム等に関する問題点を克服する必要がある。一方、大面積化や低価格を指向した有機材料を用いた太陽電池もこれまでに多く提案されているが、これらは変換効率が低く、耐久性も悪いという問題があった。
こうした状況の中で、色素によって増感された半導体微多孔質体を用いた光電変換電極及び光電変換セル、並びにこれを作製する為の材料及び製造技術が開示されている(非特許文献1および特許文献1参照)。開示されている電池は、ルテニウム錯体色素によって分光増感された酸化チタン多孔質薄層を作用電極とし、ヨウ素を主体とする電解質層および対電極から成る色素増感型の光電変換セルである。この方式の第一の利点は、酸化チタン等の安価な酸化物半導体を用いることから安価な光電変換素子の提供が可能であることである。また、第二の利点は、使用されるルテニウム錯体色素が可視光域に幅広く吸収を有していることから比較的高い変換効率が得られることである。
一方、このような色素増感型光電変換セルの問題点の一つとして、色素の原料にルテニウムを用いていることが挙げられる。ルテニウムはクラーク数が0.01ppmと比較的低く、白金やパラジウムに匹敵する程度の少量が地球に現存している。従って、大量に使用された場合には、枯渇する虞がある。更に、ルテニウム錯体色素は高価であることから、光電変換セルの大量普及に対しての妨げとなるものである。
最近、色素増感型太陽電池における増感色素として、ルテニウム錯体以外の色素の研究が盛んに行なわれている。その例としてはフェニルキサンテン系色素、フタロシアニン系色素、クマリン系色素、シアニン形色素、ポルフィリン系色素、アゾ系色素等が挙げられる。これらの有機色素はルテニウム錯体に比較して吸光係数が大きく、分子設計の自由度も大きいため、高い光電変換効率が期待されている。しかしながら、色素の光吸収領域が狭いこと、酸化チタンへの電荷の注入が非効率的である等の理由から未だ良好な性能の有機増感色素は見出されていない。
これらの問題を解決するため、吸着末端基としてシアノ酢酸を持つ化合物の開発が盛んに行われているが、他の吸着末端基の検討はあまりなされていない。他の吸着末端としてはカルボキシル基とした化合物が報告されている(非特許文献2、3参照)。しかし、カルボキシル基の吸着力が弱いため、例えば電解液に少量の水が混入した場合に、酸化チタン表面から色素が離脱し、電池の寿命が低下するおそれがある。したがって、性能向上を目的として多くのカルボキシル基を有する吸着部位が求められている。
以上の理由から、安価で高い変換効率を有する光電変換セルの提供を可能にするために、末端基にカルボキシル基を持ち、耐久性の高い骨格構造を有し、更に、枯渇の虞のない原料を使用する、増感色素が求められていた。
米国特許第4927721号明細書 特開2002−164089号公報 国際公開第02/11213号
"Nature"、1991年、第353巻、p.737−740 "J. Photochem. Photobiol A."、2009年、p.192−202 "J. Mater. Chem."、2012年、p.13318−13327
本発明の目的はルテニウム等の様に枯渇の虞のある原料を使用せず、耐久性の高い骨格構造を有し、安価で高い変換効率を有する、色素増感型光電変換セル用の増感色素に用いられる光機能材料を提供することにある。さらにはこの光機能材料を含む増感色素、この増感色素を無機半導体多孔質体表面に連結させた光電変換材料、及び、光電変換材料を、導電性表面を有する透明基材の電導面に積層して成る光電変換電極、及び、光電変換電極を、電解質層を介して導電性対極を組み合わせて成る光電変換セルを提供することにある。
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、透明導電性基板上に積層させた無機酸化物半導体表面に特定の光機能材料を連結させることにより、良好な特性を示す光電変換セルの作製が可能であることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は下記の一般式(1)で表される光機能材料に関する。
Figure 2014172835
(式中、R〜R14はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数が1〜4のアルコキシ基、または、炭素数1〜4のアルキルチオ基を表し、さらにアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基は置換基を有していてもよい。Xは直接結合、エテン-1,2-ジイル基(−CH=CH−)または、エチン-1,2-ジイル基(−C≡C−)を表す。二重結合による幾何異性体は両方を表す。)
また、本発明は、上記光機能材料を含む光電変換用増感色素に関する。さらに、本発明は、無機半導体と、前記無機半導体に連結された前記増感色素とを含む光電変換材料に関する。
また、本発明は、透明電極と、前記透明電極に積層された前記光電変換材料とを含む光電変換電極に関する。
また、本発明は、前記光電変換電極、電解質層、及び導電性対極を含んで成る光電変換セルに関する。
本発明によれば、枯渇の虞のない材料で高い光電変換効率を有する光電変換セルを提供することが可能である。また、本発明の増感色素と他の増感色素を組み合わせることにより、太陽光に対して幅広い波長領域で高効率な光電変換機能を発現する光電変換材料、光電変換電極及び光電変換セルの作製が可能である。
図1は、光電変換セルの一例として、実施例における試験試料の構成を模式的に示した断面図である。
以下、詳細に本発明について説明する。
本発明において、光機能材料とは、光を吸収することによって新たに増感効果、発熱効果、発色効果、退色効果、蓄光効果、相変化効果、光電変換効果、光磁気効果、光触媒効果、光変調効果、光記録効果、ラジカル発生効果等の機能を発現する材料、あるいは逆にこれらの効果を受けて発光機能を有する材料を意味する。この光機能材料は、たとえば、光電変換材料、発光材料、光記録材料、画像形成材料、フォトクロミック材料、エレクトロルミネッセンス材料、光導電材料、二色性材料、ラジカル発生材料、酸発生材料、塩基発生材料、蓄光材料、非線形光学材料、第2高調波発生材料、第3高調波発生材料、感光材料、光吸収材料、近赤外吸収材料、フォトケミカルホールバーニング材料、光センシング材料、光マーキング材料、光化学治療用増感材料、光相変化記録材料、光焼結記録材料、光磁気記録材料、光線力学療法用色素、および光電変換用増感色素等に、幅広く用いることができる。
以下に、一般式(1)の化学構造を有する光機能材料を、主として光電変換用増感色素として用いる場合について説明するため、本明細書においてはこの光機能材料を、その代表的な適用形態として、光電変換用増感色素あるいは単に増感色素と呼称する場合があるが、上記の幅広い応用を否定するものではない。
色素増感型太陽電池の動作機構は次に記す過程より成るものである。すなわち、太陽光を吸収した増感色素が光励起された後に励起状態の増感色素から酸化チタン等の無機半導体の伝導帯へ電子が注入される過程、無機半導体に電子を注入して酸化された増感色素に対してヨウ素をはじめとするレドックス系からの電子注入による還元過程である。
従って、光電変換用増感色素に必要な機能としては、色素が広い吸収領域を有して太陽光を効率的に吸収できること、酸化チタン等の無機化合物半導体に効率よく電荷を注入できること等が挙げられる。
このとき、光電変換用増感色素の化学構造の特徴としては、電子受容性部位と、電子供与性部位を分割し、かつπ共役系でつなぐ構造をとっている。このような特徴的な化学構造により、基底状態で電子が電子供与性部位に局在化し、励起状態では電子が電子受容性部位に局在化するという傾向があり、電子受容性部位から酸化チタン等の無機化合物半導体への電子注入をきわめて効率的に行なうことができる。
ここで、一般式(1)で表される光機能材料を増感色素として用いた場合について説明する。
まず、電子受容性部位は、末端にカルボキシル基を有している為、酸化チタン等の無機化合物半導体表面への物理吸着、エステル結合等を介した化学吸着等が可能であることから、酸化チタン等の無機半導体への電子注入が効率的に行われる。
次いで、電子求引性基がカルボキシル基のメタ位に置換した構造をとることにより、カルボキシル基の結合する炭素原子の電子受容性が著しく高くなるため、励起電子が色素骨格のπ共役系を経由して酸化チタン等の無機半導体へ効率的に注入されることが期待できる。とりわけ、電子求引性基の中でもシアノ基は電子求引性が高い基であり、さらに、立体的に分子全体の平面性を損なわないため、吸収領域の広域化が期待できる。
また、電子供与性部位には、高い安定性と、吸収領域の広域化、モル吸光係数の増加が期待できるジフェニルアミノ基を有している。
このような特長により、一般式(1)で表される増感色素の化学構造は、高い光電変換効率と高い安定性を達成し得る構造であると言える。
次に、一般式(1)で表される光機能材料中の各置換基について説明をする。
一般式(1)で表される増感色素中のR1〜R14はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、または、炭素数1〜4のアルキルチオ基を表す。
炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。
炭素数1〜4のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、イソプロピルチオ基、イソブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基等が挙げられる。
これら、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、および、炭素数1〜4のアルキルチオ基はさらに置換基を有していてもよい。
Xは直接結合、エテン-1,2-ジイル基(−CH=CH−)または、エチン-1,2-ジイル基(−C≡C−)を表す。Xがエテン-1,2-ジイル基またはエチン-1,2-ジイル基であると、一般式(1)において電子供与性部位と電子受容性部位の間に炭素間2重結合または3重結合が含まれる。これにより、Xが直接結合である場合よりもπ共役系が伸び、変換効率が上昇する傾向がある。
ここで、本発明の光機能材料は二重結合を有するため、シス体、トランス体などの構造異性体を種々とり得る。これらは、何れも光電変換用増感色素として良好に使用することができる。さらに、置換基等に二重結合を有した場合にも同様のことがいえる。
一般式(1)で表される化合物は、例えば、次に示すような方法により製造することができる。
i)Xが直接結合の場合
まず、下記式(2)で表されるブロモ体と下記一般式(3)で表されるボロン酸との反応により下記一般式(4)で表される化合物を製造することができる。他の工程で合成してもかまわない。
Figure 2014172835
Figure 2014172835
(式中、R〜R14は一般式(1)におけるR〜R14と同義である。)
Figure 2014172835
(式中、R〜R14は一般式(1)におけるR〜R14と同義である。)
次に、一般式(4)で表される化合物のメチルエステル基を加水分解させることにより下記一般式(5)で表される化合物を製造することができる。
Figure 2014172835
(式中、R〜R14は一般式(1)におけるR〜R14と同義である。)
ii)Xがエテン-1,2-ジイル基(−CH=CH−)または、エチン-1,2-ジイル基(−C≡C−)の場合
まず、式(2)で表されるブロモ体と下記一般式(6)で表される化合物との反応により下記一般式(7)で表される化合物を製造することができる。他の工程で合成してもかまわない。
Figure 2014172835
(式中、R〜R14は一般式(1)におけるR〜R14と同義である。X´は−CH=CHまたは、−C≡CHを表す。
Figure 2014172835
(式中、R〜R14は一般式(1)におけるR〜R14と同義である。Xはエテン-1,2-ジイル基(−CH=CH−)または、エチン-1,2-ジイル基(−C≡C−)を表す。)
次に、一般式(7)で表される化合物のメチルエステル基を加水分解させることにより一般式(8)で表される化合物を製造することが出来る。
Figure 2014172835
(式中、R〜R14は一般式(1)におけるR〜R14と同義である。Xは一般式(7)におけるXと同義である。)
以下、本発明の光機能材料として用いることができる一般式(1)で表される化合物の代表例を下記の式(9)〜(28)に示すが、本発明はこれらの代表例に限定されるものではない。
Figure 2014172835
(式中、R〜R14はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数が1〜4のアルコキシ基、または、炭素数1〜4のアルキルチオ基を表す。Xは直接結合、エテン-1,2-ジイル基(−CH=CH−)または、エチン-1,2-ジイル基(−C≡C−)を表す。二重結合による幾何異性体は両方を表す。)
Figure 2014172835
Figure 2014172835
本発明に係る光電変換用増感色素(以下、単に増感色素と言う場合もある。)は、上記の本発明に係る光機能材料を単独で、または複数種を組み合わせて含むものである。また、一般式(1)で表される光機能材料が吸収し得ない領域の太陽光の吸収を補うために他の光機能材料を併せて含むことができる。すなわち、他の増感色素と組み合わせて用いることが出来る。他の増感色素としてはアゾ系色素、キナクリドン系色素、ジケトピロロピロール系色素、スクワリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、クロロフィル系色素、ルテニウム錯体系色素、インジゴ系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素等及びその誘導体等があげられる。
これらの増感色素はその化学構造中に無機半導体多孔質体表面に連結し得るような官能基を有していることが望ましい。その理由としては、光励起された色素の励起電子を無機半導体多孔質体の伝導帯に迅速に伝達可能であることが挙げられる。ここでいう官能基とは、前述の酸性官能基等が挙げられるが、無機半導体多孔質体表面に増感色素を連結し、色素の励起電子を無機半導体多孔質体の伝導帯に迅速に伝え得る機能を有する置換基であればよい。
以下に、上述の本発明に係る光電変換用増感色素を用いて得られる本発明に係る光電変換材料、光電変換電極、および光電変換セルについて、光電変換用増感色素以外の材料を含めて説明する。
1.光電変換材料
上述の光電変換用増感色素を、連結基を介して無機半導体表面に連結することによって、無機半導体が増感された光電変換材料、すなわち、無機半導体と、この無機半導体に連結された増感色素とを含む光電変換材料が得られる。ここで、連結とは、無機半導体と増感色素が化学的あるいは物理的に結合していることを意味し、たとえば両者が吸着により結合していることも含んでいる。
(無機酸化物)
本発明において用いられる光電変換用増感色素は連結基を介して無機半導体表面に連結することによって無機半導体が増感された光電変換材料を形成する。無機半導体は、一般に、一部の領域の光に対して光電変換機能を有しているが、この表面に増感色素を連結することによって可視光及び/又は近赤外光領域までの光電変換が可能となる。無機半導体としては主に無機酸化物が用いられるが、増感色素を連結することによって光電変換機能を有する無機半導体であればこれに限らない。
上記の無機半導体は、多孔質化して、無機半導体多孔質体として使用することが好ましい。無機半導体多孔質体は、多孔質化による広い表面積を有するため、多量の増感色素をその表面に連結し、より高効率な光電変換能力を有することができる。
無機半導体としては、シリコン、ゲルマニウム、III族‐V族系半導体、金属カルコゲニド等が挙げられる。本発明で用いられる無機酸化物半導体多孔質体としては、酸化チタン、酸化スズ、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化ストロンチウム、酸化タンタル、酸化アンチモン、酸化ランタノイド、酸化イットリウム、酸化バナジウム等の多孔質体を挙げることができるが、これらの表面が増感色素を連結することによって可視光及び/又は近赤外光領域までの光電変換が可能となるものであればこれらに限らない。
無機酸化物半導体多孔質体表面が増感色素によって増感されるためには無機酸化物の伝導帯が増感色素の光励起準位から電子を受容し易い準位に存在することが望ましい。この理由から、前記無機酸化物半導体多孔質体の中でも、特に酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ニオブ等が用いられる。さらに、価格や環境衛生性等の点から、特に酸化チタンが用いられる。また、本発明においては前記無機酸化物半導体多孔質体から一種類又は複数の種類を選択して組み合わせることができる。
(無機酸化物の多孔質化)
無機半導体多孔質体は多量の増感色素をその表面に連結し、高効率な光電変換能力を発現させる目的から、多孔質化することにより広い表面積を有している。多孔質化の方法としては、粒子径が数乃至数十ナノメートルの酸化チタン等の無機酸化物粒子をペースト化した後に焼結する方法が広く知られているが、多孔質化して広い表面積を得る方法であればこれに限らない。
2.光電変換電極
上記本発明の光電変換材料を、電導性表面を有する透明基材の電導面に積層することによって光電変換電極が形成される。光電変換材料が積層される、透明基材の電導性表面を、透明電極ともいう。すなわち、透明電極と、この透明電極上に積層された光電変換材料とを含む光電変換電極である。
(電導性表面)
本発明において用いられる電導性表面としては、太陽光の可視領域から近赤外領域に対して光吸収が少ない導電材料であれば特に限定されないが、ITO(インジウム−スズ酸化物)や酸化スズ(フッ素等によりドープされたものを含む)、酸化亜鉛等の電導性の良好な金属酸化物が好適である。透明基材のシート抵抗(表面抵抗)はできるだけ低いほうが好ましく、具体的には20Ω/□(Ω/sq.)以下であることが好ましいので、電導層はそれに応じた厚みを有していることが好ましい。
(透明基材)
用いられる透明基材としては太陽光の可視領域から近赤外領域における光吸収の少ない材料であれば特に限定されない。石英、並ガラス、BK7、鉛ガラス等のガラス基材;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラート、ポリプロピレン、テトラアセチルセルロース、シンジオクタチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリエステルスルフォン、ポリエーテルイミド、環状ポリオレフィン、塩化ビニール等の樹脂基材等を用いることができる。
(積層方法)
本発明において用いられる光電変換材料を、電導性表面を有する透明基材の電導面に積層する方法としては、電導面にペースト化した無機酸化物粒子を塗布した後に乾燥又は焼結させることにより無機酸化物半導体多孔質体を形成し、これを透明基材ごと増感色素を溶解させた溶液中に浸すことにより、無機多孔質表面と増感色素の連結基の親和性を利用して増感色素を無機多孔質表面に結合させる方法が一般的であるが、この方法に限定されない。
無機酸化物粒子をペースト化させるためには無機酸化物粒子を水又は適当な有機溶媒中に分散させる。均質で表面積が大きい無機多孔質表面として積層させるには分散性の良いペーストにすることが重要であり、必要に応じて、硝酸やアセチルアセトン等の酸やポリエチレングリコール、オクチルフェノールポリ(エチレングリコールエーテル)等の分散剤をペースト成分に混合し、ペイントシェーカー等を用いてペースト化する。
ペーストを透明基材の電導面に塗布する方法としてはスピンコーターによる塗布方法、スクリーン印刷法、スキージを用いた塗布方法、ディップ法、吹き付け法、ローラー法等が用いられる。塗布された無機酸化物ペーストは乾燥又は焼成後にペースト中の揮発成分が除去され透明基材の電導面上に無機酸化物半導体多孔質体を形成する。乾燥又は焼成の条件としては、例えば400℃から500℃の温度で30分乃至1時間程度の熱エネルギーを与える方法が一般的であるが、透明基材の電導面に密着性を有し、太陽光照射時に良好な起電力が得られる乾燥又は焼成方法であればこれに限らない。
増感色素を溶解させた溶液を調製する際に用いる溶剤としては、エタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶剤、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶剤、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、炭酸ジエチル、炭酸プロピレン等の炭酸エステル系溶剤、ヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチルイミダゾリノン、N−メチルピロリドン、水等を用いることができるがこれらに限らない。
透明基材の電導面上に形成される無機酸化物半導体多孔質体の膜厚は0.5μm乃至200μmであることが望ましい。膜厚がこの範囲未満の場合には良好な変換効率が得られない。又膜厚がこの範囲より厚い場合には成膜時に割れや剥がれが生じる等作製が困難になるだけでなく、無機酸化物半導体多孔質体表層と電導面との距離が長くなり、発生した電荷が電導面に有効に伝えられなくなる為に良好な変換効率を得ることが困難になる。
3.光電変換セル
以上のようにして得られる本発明の光電変換電極は、電解質層を介して導電性対極を組み合わせることにより、光電変換セル、すなわち、光電変換電極と、電解質層と、導電性対極とを含んでなる光電変換セルを形成することができる。
(電解質層)
本発明で用いられる電解質層は電解質、媒体及び添加物から構成されることが好ましい。本発明の電解質はヨウ素とヨウ化物(例としてヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化第一銅、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等)の混合物、臭素と臭化物(例として臭化リチウム等)の混合物、“Inorganic Chemistry”、1996年、第35巻、p.1168−1178に記載の有機溶融塩化合物等を用いることができるがこの限りではない。
ここでいう有機溶融塩化合物とは、有機カチオンと無機または有機アニオンからなるイオン対化合物であって、融点が室温以下であるものを指す。
具体的に有機溶融塩化合物を構成する有機カチオンとしては、芳香族系カチオン類として、たとえば、N−メチル−N’−エチルイミダゾリウムカチオン、N−メチル−N’−n−プロピルイミダゾリウムカチオン、N−メチル−N’−n−ヘキシルイミダゾリウムカチオン等のN−アルキル−N’−アルキルイミダゾリウムカチオン類;N−ヘキシルピリジニウムカチオン、N−ブチルピリジニウムカチオン等のN−アルキルピリジニウムカチオン類が挙げられる。脂肪族カチオン類として、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムカチオン等の脂肪族系カチオン類、N,N−メチルピロリジニウム等の環状脂肪族カチオン類が挙げられる。
有機溶融塩化合物を構成する無機または有機アニオンとしては、たとえば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン、六フッ化リンイオン、四フッ化ホウ素イオン、三フッ化メタンスルホン酸塩、過塩素酸イオン、次塩素酸イオン、塩素酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン等の無機アニオン類;ビス(トリフロロメチルスルホニル)イミド等のアミド、イミド系アニオン類が挙げられる。
これら電解質の中でもヨウ素とヨウ化物の組み合わせとしてヨウ化リチウム、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等を混合した電解質が本発明では好ましいが、この組み合わせに限らない。好ましい電解質濃度は、媒体中のヨウ素が0.01M乃至0.5Mでありヨウ化物の混合物が0.1M乃至15Mである。
本発明で電解質層に用いられる媒体は、良好なイオン電導性を発現できる化合物であることが望ましい。溶液状の媒体としては、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル化合物;エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテルなどの鎖状エーテル類;メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類;アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル化合物;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物;3−メチル−2−オキサゾリジノンなどの複素環化合物;ジメチルスルホキシド、スルホランなど非プロトン性極性溶媒;水などを用いることができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて用いられる。
また、固体状(ゲル状を含む)の媒体を用いる目的で、ポリマーを含ませることもできる。この場合、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン等のポリマーを前記溶液状媒体中に添加したり、エチレン性不飽和基を有する多官能性モノマーを前記溶液状媒体中で重合させたりすることにより媒体を固体状にする。
電解質層としては、この他にCuI、CuSCN媒体を必要としない電解質及び“Nature”、1998年、第395巻、p.583−585記載の2,2´,7,7´−テトラキス(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミン)−9,9´−スピロビフルオレンのような正孔輸送材料を用いることができる。
本発明に用いられる電解質層には、光電変換セルの電気的出力を向上させたり、耐久性を向上させたりする働きをする添加物を添加することができる。電気的出力を向上させる添加物として4−tert−ブチルピリジンや、2−ピコリン、2,6−ルチジン等があげられる。耐久性を向上させる添加物としてはヨウ化マグネシウム等が挙げられる。これら添加剤と上述の増感色素を併用することで、本発明の効果をより効果的に引き出すことができる。
形成される電解質層の厚みは、特に限定されないが、導電性対極と色素の吸着した無機半導体層とが直接接触しないような最小の厚みとすることが好ましい。具体的には、0.1〜100μm程度であることが好ましい。
(導電性対極)
本発明で用いられる電導性対極は光電変換セルの正極として機能するものである。具体的に対極に用いる導電性の材料としては金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、ITO(インジウム‐スズ酸化物)や酸化スズ(フッ素等によりドープされたものを含む)、酸化亜鉛等の金属酸化物、または炭素等が挙げられる。対極の膜厚は特に制限はないが、5nm乃至10μmであることが好ましい。
(組み立て方)
前記の光電変換電極と導電性対極を、電解質層を介して組み合わせることにより光電変換セルを形成する。必要に応じて電解質層の漏れや揮発を防ぐために、光電変換セルの周囲に封止を施す。封止には熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、ガラスフリット等を封止材料として用いることができる。光電変換セルは必要に応じて小面積の光電変換セルを連結させて作る。光電変換セルを直列に組み合わせることにより起電圧を高くすることができる。
以下、実施例を具体的に示すが本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、「mL」はミリリットルを示す。
(合成例1) 2-シアノ-4´-(ジフェニルアミノ)-(1,1´-ビフェニル)-4-カルボン酸の合成
(1) 4-ブロモ-3-ニトロ安息香酸の合成(反応式(A)〜(F)による)
Figure 2014172835
0 ℃に保ちながら4-ブロモ安息香酸(5.03 g、25 mmol)に濃硫酸(30 mL、560 mmol)と硝酸(27 mL、582 mmol)を加え、85 ℃で16時間撹拌した。その後0 ℃に冷却し、水で洗浄しながら減圧濾過した後、真空乾燥することにより白色固体を得た。この白色固体の1H NMRスペクトル、赤外吸収スペクトル及びマススペクトルを測定した。各スペクトルにおけるピークのデータ(以下、「データ」とも言う。)を以下に示す。これらのデータにより、4-ブロモ-3-ニトロ安息香酸であることを確認した(5.46 g、22.1 mmol、収率88%)。
1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz)δ 8.42 (s, 1H)、 8.04 (s, 2H)。
IR (KBr/ cm-1) 3101、2840、2665、2559、2362、1695、597、1547、1428、360、1318。
HRMS (ESI): C7H3O4NBr ([M-H]-) m/z 243.9251 (Theo. Mass 243.9240)。
(2) 4-ブロモ-3-ニトロ安息香酸メチルの合成
Figure 2014172835
4-ブロモ-3-ニトロ安息香酸(1.98 g、8.1 mmol)をメタノール(4.8 mL、120 mmol)に溶かし、さらに濃硫酸(0.88 g、9.0 mmol)を滴下し、還流下で4時間撹拌した。水で洗浄しながら濾過した後、乾燥することで白色固体を得た。白色固体の1H NMRスペクトルにより、4-ブロモ-3-ニトロ安息香酸メチル(1.88 g、7.23 mmol、90%)であることを確認した。
上記1H NMRスペクトルによるデータを以下に示す:1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.46 (d, J=1.8 Hz, 1H)、8.06 (dd, J=8.1 及び 1.8 Hz, 1H)、7.84 (d, J=8.1 Hz, 1H)、3.97 (s, 3H)。
(3) 3-アミノ-4-ブロモ安息香酸メチルの合成
Figure 2014172835
4-ブロモ-3-ニトロ安息香酸メチル(1.30 g、5.0 mmol)をエタノール(10 mL)と水(10 mL)の混合物に溶かし、鉄(0.838 g、15 mmol)と1M塩酸(0.5 mL、0.50 mmol)を加え、還流下で4時間撹拌した。室温まで冷却後、珪藻土(炭酸ナトリウムと共に焼成した珪藻土、Celite Corporation社の登録商標「セライト」、以下同じ。)とフロリジル(ケイ酸マグネシウム)で濾過した。酢酸エチル(10 mL×2)で抽出後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮することで黄色固体を得た。1H NMRスペクトル及びマススペクトルにより、3-アミノ-4-ブロモ安息香酸メチル(1.05 g、4.56 mmol、91%)であることを確認した。
上記スペクトルによるデータを以下に示す: 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 7.47 (d, J=8.4 Hz, 1H)、7.43 (d, J=2.1 Hz, 1H)、7.26 (dd, J=2.1 及び 8.4 Hz, 1H)、4.21(bs, 2H)、3.89(s, 3H)。
HRMS (ESI): C8H9O2NBr ([M+H]+) m/z 229.9808 (Theo. Mass 229.9811)。
(4) 4-ブロモ-3-シアノ安息香酸メチルの合成
Figure 2014172835
3-アミノ-4-ブロモ安息香酸メチル(0.461 g、2.0 mmol)に、2M塩酸(7.5 mL、15 mmol)を加え、0 ℃で15分間撹拌した。その後、水(0.74 mL)に亜硝酸ナトリウム(0.141 g、 2.0 mmol)を溶かしたものをゆっくりと滴下し、さらに20分間撹拌した。反応液を、硫酸銅五水和物(0.504 g、1.8 mmol)とシアン化カリウム(0.589 g、8.9 mmol)を水(0.6 mL)に溶かした溶液に60 ℃で撹拌しながらゆっくり滴下し、40分間撹拌した。珪藻土とフロリジル(ケイ酸マグネシウム)で濾過し、有機相を水(10 mL×2)で洗浄した。その後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮し、橙色油状物質を得た。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム:ヘキサン=4:1)で精製し、橙色結晶を得た。1H NMR及び13C NMRスペクトルにより、4-ブロモ-3-シアノ安息香酸メチル(0.107 g、0.45 mmol、22%)であることを確認した。
上記スペクトルによるデータを以下に示す: 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.31 (d, J=2.1 Hz, 1H)、8.09 (dd, J=2.1 及び 8.4 Hz, 1H)、7.80 (d, J=8.4 Hz, 1H)、3.96 (s, 3H, Hd)。
13C NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 146.4、135.2、134.4、133.5、130.3、130.0、116.34、116.27、52.8。
(5) 2-シアノ-4´-(ジフェニルアミノ)-(1,1´-ビフェニル)-4-カルボン酸メチルの合成
Figure 2014172835
アルゴン雰囲気下、アセトン(2.4 mL)に4-ブロモ-3-シアノ安息香酸メチル(0.0822 g、0.34 mmol)、4-(5,5-ジメチル- [1,3,2]ジオキサボリナン-2-イル) - N,N-ジフェニルアニリン(0.280 g、0.78 mmol)、水(0.7 mL)に溶かした炭酸カリウム(0.140 g、0.85 mmol)を加えて常温で30分間撹拌した後、酢酸パラジウム(0.00387 g、0.017 mmol)を加え、還流下で20時間撹拌した。珪藻土とフロリジル(ケイ酸マグネシウム)で濾過し、酢酸エチル(10 mL×4)で抽出した後、有機相を水(10 mL×2)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮することで橙色油状物(0.260 g)を得た。得られた油状物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:酢酸エチル=7:1)を行い、ヘキサン-酢酸エチルより再結晶することで、橙色固体を得た。1H NMRスペクトルにより、2-シアノ-4´-(ジフェニルアミノ)-(1,1´-ビフェニル)-4-カルボン酸メチル(0.0538 g、0.133 mmol、39%)であることを確認した。
上記1H NMRスペクトルによるデータを以下に示す: 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.40 (d, J=1.5 Hz, 1H)、8.23 (dd, J=1.5 及び 8.4 Hz, 1H)、7.58 (d, J=8.4 Hz, 1H)、7.46 (d, J=8.4 Hz, 2H)、7.30 (t, J=7.8 Hz, 4H)、7.18-7.07 (m, 8H)、3.97 (s, 3H)。
(6) 2-シアノ-4´-(ジフェニルアミノ)-(1,1´-ビフェニル)-4-カルボン酸の合成
Figure 2014172835
2-シアノ-4´-(ジフェニルアミノ)-(1,1´-ビフェニル)-4-カルボン酸メチル(0.0414 g、0.10 mmol)をテトラヒドロフラン(3.0 mL)に溶解させ、水酸化リチウム(0.00859 g、0.205 mmol)と水(1.0 mL)を加え室温で18時間撹拌した。水(5 mL)を加えた後、クエン酸一水和物をpH = 3になるまで加えた。その後、クロロホルム(10 mL×3)で抽出し、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮して橙色固体を得た。得られた固体をクロロホルム−ヘキサンから再沈殿し、橙色固体を得た。1H NMR、13C NMR、赤外吸収、マス及び紫外可視吸収スペクトルにより、2-シアノ-4´-(ジフェニルアミノ)-(1,1´-ビフェニル)-4-カルボン酸(0.0315 g、0.0807 mmol、79%)であることを確認した。
融点=233-234 ℃; 上記各スペクトルによるデータを以下に示す: 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.48 (d, J=0.9 Hz, 1H)、8.30 (dd, J=1.2 及び 8.4 Hz, 1H)、7.63 (d, J=8.4 Hz, 1H)、7.47 (d, J=8.4 Hz, 2H)、7.30 (t, J=7.8 Hz, 4H)、7.17 (d, J=8.1 Hz, 4H)、7.14 (d, J=9.0 Hz, 2H)、7.09 (t, J=7.8 Hz, 2H)。
13C NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 170.1、149.8、149.3、146.9、136.0、134.0、130.0、129.6、129.5、129.4、127.8、125.4、124.0、121.7、118.1、111.1。
IR (KBr/cm-1) 3035、2230、1694、1590、1489。
HRMS (ESI): C26H17O2N2 ([M-H]-) m/z 389.1292 (Theo. Mass 389.1296)。
UV-Vis (THF, 3×10-5 M) λmax/nm (ε/cm-1M-1) 370 (17,000)。
(合成例2) (E)-3-シアノ-4-(4-(ジフェニルアミノ)スチリル)安息香酸の合成(反応式(G)〜(I)による)
(1) N,N-ジフェニル-4-ビニルアニリンの合成
Figure 2014172835
メチルトリフェニルホスホニウムブロミド(1.44 g、4.03 mmol)をテトラヒドロフラン(50 mL)に溶かし、-78 ℃に冷却した。n-ブチルリチウム(3 mL、5 mmol、1.63 Mヘキサン溶液)を30分かけて滴下し、1時間撹拌した。4-(ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド(0.919 g、3.36 mmol)をテトラヒドロフラン(5 mL)に溶かしたものを20分かけて滴下し、室温まで昇温後、3時間撹拌した。水(250 mL)を加え酢酸エチル(30 mL×2)で抽出後、有機相を飽和食塩水(30 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過後、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:酢酸エチル=10:1)を行い、白色固体を得た。1H NMRスペクトルにより、N,N-ジフェニル-4-ビニルアニリン(0.615 g、2.27 mmol、67.6%)であることを確認した。
上記スペクトルによるデータを以下に示す:1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 7.28 (d, J=8.4 Hz, 2H)、7.23 (t, J=8.1 Hz, 4H)、7.08 (d, J=8.1 Hz, 4H)、7.02 (d, J=8.4 Hz, 2H)、7.00 (d, J=7.2 Hz, 2H)、6.65 (dd, J=10.8 及び 17.7 Hz, 1H)、5.63 (d, J=17.4 Hz, 1H)、5.15 (d, J=10.8 Hz, 1H)。
(2) (E)-3-シアノ-4-(4-(ジフェニルアミノ)スチリル)安息香酸メチルの合成
Figure 2014172835
4-ブロモ-3-シアノ安息香酸メチル(0.2392 g、0.9965 mmol)、N,N-ジフェニル-4-ビニルアニリン(0.2704 g、0.9965 mmol)、炭酸カリウム(0.2755 g、1.993 mmol)、tetrabutylammonium bromide(0.3218 g、0.9982 mmol)、酢酸パラジウム(II) (0.0030 g、0.013 mmol)の混合物をジメチルホルムアミド(2 mL)に溶かし、窒素置換した。110 ℃で15時間加熱撹拌し、室温まで冷却後、珪藻土とフロリジル(ケイ酸マグネシウム)で濾過した。水(5 mL)を加え酢酸エチル(10 mL×2)で抽出後、飽和食塩水(10 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:酢酸エチル=3:1)を行い、橙色固体を得た。1H NMR、13C NMR、赤外吸収及びマススペクトルにより、(E)-3-シアノ-4-(4-(ジフェニルアミノ)スチリル)安息香酸メチル(0.3067g、0.7124 mmol、71.5%)であることを確認した。
上記各スペクトルによるデータを以下に示す:1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.29 (d, J=1.5 Hz, 1H)、8.17 (dd, J=1.5 及び 8.4 Hz, 1H)、7.83 (d, J=8.4 Hz, 1H)、7.45 (d, J=8.7 Hz, 2H)、7.37 (s, 2H)、7.29 (dd, J=7.8 及び 8.4 Hz, 4H)、7.13 (d, J=7.5 Hz, 4H)、7.08 (t, J=7.8 Hz, 2H)、7.05 (d, J=8.4 Hz, 2H)、3.95 (s, 3H)。
13C NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 165.1、149.0、147.0、144.8、135.3、134.5、133.2、129.4、129.0、128.5、128.4、125.1、124.7、123.7、122.2、120.8、117.2、110.9、52.5。
IR (KBr/cm-1) 3034、2949、2370、2345、2225、1724、1586、1509、1271。
HRMS (ESI): C29H23O2N2 ([M+H]+) m/z 431.1749 (Theo. Mass 431.1754)。
(3) (E)-3-シアノ-4-(4-(ジフェニルアミノ)スチリル)安息香酸の合成
Figure 2014172835
(E)-3-シアノ-4-(4-(ジフェニルアミノ)スチリル)安息香酸メチル(0.1987 g、0.4617 mmol)をテトラヒドロフラン(3 mL)に溶解させ、水酸化リチウム(0.0394 g、0.9390 mmol)と水(1 mL)を加え室温で15時間撹拌した。クエン酸一水和物をpH= 3になるまで加え、酢酸エチル(10 mL×2)で抽出後、飽和食塩水(10 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、減圧濃縮し、得られた固体を酢酸エチル-ヘキサンより再沈殿し、橙色固体を得た。1H NMR、13C NMR、赤外吸収、マス及び紫外可視吸収スペクトルにより、(E)-3-シアノ-4-(4-(ジフェニルアミノ)スチリル)安息香酸(0.1874 g、0.4500 mmol、97.4%)であることを確認した。
融点=236-238 ℃; 上記各スペクトルによるデータを以下に示す: 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.32 (s, 1H)、8.22 (d, J=8.4 Hz, 1H)、7.87 (d, J=8.7 Hz, 1H)、7.46 (d, J=8.7 Hz, 2H)、7.35 (s, 2H)、7.30 (t, J=7.8 Hz, 4H)、7.14 (d, J=8.1 Hz, 4H)、7.09 (t, J=6.9 Hz, 2H)、7.05 (d, J=8.7 Hz, 2H)。
13C NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 169.6、1492、147.0、146.0、135.9、135.3、133.8、129.4、128.9、128.6、127.5、125.2、124.9、123.8、122.2、120.6、117.1、111.1。
IR (KBr/cm-1) 3035、2948、2376、2346、2224、1696、1586、1509、1490、1272、696。
HRMS (ESI): C28H19O2N2 ([M-H]-) m/z 415.1465 (Theo. Mass 415.1452)。
UV-Vis (THF, 3×10-5 M) λmax/nm (ε/cm-1M-1) 411 (27,000)。
(合成例3) 3-シアノ-4-((4-(ジフェニルアミノ)フェニル)エチニル)安息香酸の合成
(1) 4-(4-(ジフェニルアミノ)フェニル)-2-メチル-3-ブチン-2-オールの合成(反応式(J)〜(M)による)
Figure 2014172835
4-ブロモ-N,N-ジフェニルアニリン(0.325 g、1.00 mmol)をトリエチルアミン(3 mL)と無水N,N-ジメチルホルムアミド(1 mL)に溶かし、2-メチル-3-ブチン-2-オール(0.3 mL、3 mmol)を加え、アルゴンで15分間バブリングした。その後ビス(トリフェニルホスフィン)二塩化パラジウム(II)(0.0145 g、0.0206 mmol)、ヨウ化銅(I)(0.0113 g、0.06 mmol)、トリフェニルホスフィン(0.0150 g、0.0572 mmol)を加え、還流下で23時間撹拌した。室温まで冷却後、珪藻土とフロリジル(ケイ酸マグネシウム)で濾過した。水(10 mL)を加え酢酸エチル(10 mL×2)で抽出後、飽和食塩水(10 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:酢酸エチル=2:1)を行い、茶色液体を得た。1H NMRスペクトルにより、4-(4-(ジフェニルアミノ)フェニル)-2-メチル-3-ブチン-2-オール(0.311 g、0.950 mmol、95.0%)であることを確認した。
上記スペクトルによるデータを以下に示す:1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 7.28-7.23 (m, 6H)、7.09-7.02 (m, 6H)、6.96 (d, J=8.4 Hz, 2H)、1.61(s, 6H)。
(2) 4-エチニル-N,N-ジフェニルアニリンの合成
Figure 2014172835
4-(4-(ジフェニルアミノ)フェニル)-2-メチル-3-ブチン-2-オール(0.3 g、0.9 mmol)の2-プロパノール溶液(5 mL)に、粉砕した水酸化カリウム(0.15 g、2.7 mmol)を加え、還流下で2時間撹拌した。室温まで冷却後、水(5 mL)を加え酢酸エチル(10 mL×2)で抽出後、飽和食塩水(10 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:酢酸エチル=3:1)を行い、黄色固体を得た。1H NMRスペクトルにより、4-エチニル-N,N-ジフェニルアニリン(0.187 g、0.690 mmol、76.7%)であることを確認した。
上記スペクトルによるデータを以下に示す:1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 7.31 (t, J=8.4 Hz, 2H)、7.25 (t, J=3.9 Hz, 4H)、7.09 (d, J=7.5 Hz, 4H)、7.04 (d, J=7.5 Hz, 2H)、6.96 (d, J=8.7 Hz, 2H)、3.02 (s, 1H, Hf)。
(3) 3-シアノ-4-((4-(ジフェニルアミノ)フェニル)エチニル)安息香酸メチルの合成
Figure 2014172835
4-ブロモ-3-シアノ安息香酸メチル(0.154 g、0.642 mmol)と4-エチニル-N,N-ジフェニルアニリン(0.167 g、0.510 mmol)をトリエチルアミン(3 mL)と無水N,N-ジメチルホルムアミド(1 mL)に溶かし、アルゴンで30分間バブリングした。その後ビス(トリフェニルホスフィン)二塩化パラジウム(II)(0.0070 g、0.0100 mmol)、ヨウ化銅(I)(0.0052 g、0.0273 mmol)、トリフェニルホスフィン(0.0070 g、0.0267 mmol)を加え、還流下で22時間撹拌した。室温まで冷却後、珪藻土とフロリジル(ケイ酸マグネシウム)で濾過した。水(10 mL)を加え酢酸エチル(10 mL×2)で抽出後、飽和食塩水(10 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:酢酸エチル=3:1)を行い、黄色固体を得た。1H NMR、赤外吸収及びマススペクトルにより、3-シアノ-4-((4-(ジフェニルアミノ)フェニル)エチニル)安息香酸メチル(0.194 g、0.453 mmol、90.5%)であることを確認した。
上記各スペクトルによるデータを以下に示す:1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.31 (s, 1H)、8.18 (dd, J=1.5 及び 8.7 Hz, 1H)、7.64 (d, J=8.7 Hz, 1H)、7.45 (d, J=8.7 Hz, 2H)、7.30 (t, J=7.5 及び 8.1 Hz, 4H)、7.13 (d, J=7.5 Hz, 4H)、7.09 (d, J=7.2 Hz, 2H)、7.00 (d, J=8.7 Hz, 2H)、3.96 (s, 3H, Hi)。
IR (KBr/cm-1) 3854、3745、3676、2204、1728、1586、1512。
HRMS (ESI): C29H21O2N2 ([M+H]+) m/z 429.1594 (Theo. Mass 429.1598)。
(4) 3-シアノ-4-((4-(ジフェニルアミノ)フェニル)エチニル)安息香酸の合成
Figure 2014172835
3-シアノ-4-((4-(ジフェニルアミノ)フェニル)エチニル)安息香酸メチル(0.0867 g、0.202 mmol)をテトラヒドロフラン(3 mL)に溶解させ、水酸化リチウム(0.0197 g、0.469 mmol)と水(1 mL)を加え室温で15時間撹拌した。クエン酸一水和物をpH = 3になるまで加え、酢酸エチル(10 mL×2)で抽出後、飽和食塩水(10 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、減圧濃縮し、得られた固体を酢酸エチル-ヘキサンから再沈殿し、黄色固体を得た。1H NMR、13C NMR、赤外吸収、マス及び紫外可視吸収スペクトルにより、3-シアノ-4-((4-(ジフェニルアミノ)フェニル)エチニル)安息香酸(0.0825 g、0.199 mmol、 98.7%)であることを確認した。
融点=193-194 ℃; 上記各スペクトルによるデータを以下に示す:1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.37 (d, J=1.8 Hz, 1H)、8.23 (dd, J=1.8 及び 8.1 Hz, 1H)、7.68 (d, J=8.4 Hz, 1H)、7.46 (d, J=8.7 Hz, 2H)、7.30 (t, J=7.5 及び 8.4 Hz, 4H)、7.14 (d, J=7.2 Hz, 4H)、 7.09 (d, J=7.2 Hz, 2H)、7.00 (d, J=8.7 Hz, 2H)。
13C NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 169.6、149.4、146.7、134.3、133.5、133.4、132.7、131.8、129.5、128.1、125.5、124.2、121.2、116.7、115.3、113.2、101.3、85.1。
IR (KBr/cm-1) 2359、2344、2191、1695、1584。
HRMS (ESI): C28H17O2N2 ([M-H]-) m/z 413.1302 (Theo. Mass 413.1296)。
UV-Vis (THF, 3×10-5 M) λmax/nm (ε/cm-1M-1) 402 (32,900)。
(合成例4) 4´-(ジフェニルアミノ)-(1,1´-ビフェニル)-4-カルボン酸の合成(反応式(N)による)
Figure 2014172835
4-ブロモ安息香酸(0.203 g、1.01 mmol)と4-(5,5-ジメチル- [1,3,2]ジオキサボリナン-2-イル) - N,N-ジフェニルアニリン(0.800 g、2.34 mmol)をアセトン(7 mL)に溶かし、炭酸カリウム(0.358 g、2.52 mmol)を水(2 mL)に溶かしたものを加え、アルゴンで30分間バブリング後、酢酸パラジウム(II)(0.0112 g、0.0499 mol)を加え、還流下で24時間撹拌した。室温まで冷却後、酢酸エチル(10 mL)と水(10 mL)を加え分液し、水層にクエン酸を加えてpHを約2にしてから、酢酸エチル(10 mL×2)で抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム:メタノール=10:1)で精製し、酢酸エチル-ヘキサンから再結晶することで黄緑色固体を得た。1H NMR及び紫外可視吸収スペクトルにより、4´-(ジフェニルアミノ)-(1,1´-ビフェニル)-4-カルボン酸(0.0930 g、0.254 mmol、25.1%)であることを確認した。
上記各スペクトルによるデータを以下に示す:1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.15 (d, J=8.1 Hz, 2H)、7.66 (d, J=8.4 Hz, 2H)、7.51 (d, J=8.7 Hz, 2H)、7.31-7.25 (m, 4H)、7.15-7.13 (m, 6H)、7.08-7.03 (m, 2H)。
UV-Vis(THF, 3×10-5 M) λmax/nm (ε/cm-1M-1) 352 (24,000)。
次に、光電変換用増感色素の評価法として、増感色素を用いて組み立てた光電変換セルの変換効率を測定する方法について、光電変換セルの試験試料を表した図1を用いて説明する。
透明電極
フッ素ドープ型酸化スズ層(透明電極層)付ガラス基板3(旭硝子株式会社製、タイプU−TCO)を使用した。
導電性対極
フッ素ドープ型酸化スズ層付ガラス基板3(旭硝子株式会社製、タイプU−TCO)の導電層上に、スパッタリング法により白金層(白金電極層、厚み150nm)を積層した導電性対極4を用いた。
酸化チタンペーストの調製
下記の処方で酸化チタンとジルコニアビーズを混合し、ペイントシェーカーを用いて分散することにより酸化チタンペーストを得た。なお、「部」は質量部を示す。
酸化チタン(日本アエロジル株式会社製品名 P25 粒子径 21nm) 6部
水(硝酸添加でpH2に調整) 14部
アセチルアセトン 0.6部
界面活性剤 オクチルフェノールポリ(エチレングリコールエーテル)(ユニオンカーバイド社製 Triton(登録商標)X−100) 0.04部
ポリエチレングリコール‐#500,000 0.3部
酸化チタン多孔質層の作製
透明電極の導電面(透明電極層3)に厚さ60μmのメンディングテープを張り、1cm角のテープを除去することでマスクを作り、空いた部分に上記酸化チタンペーストを数滴たらした後に、スキージで余分のペーストを除去した。風乾後、全てのマスクを除去し、450℃のオーブンで1時間焼成して、有効面積1cm2の酸化チタン多孔質層を有する酸化チタン電極を得た。
増感色素の吸着
光電変換用増感色素として、上記で作製した合成例1〜4の光機能材料を使用した。前記増感色素をテトラヒドロフラン:アセトニトリル=1:1(体積比)に溶解(濃度0.6mmol/L)し、メンブランフィルターで不溶分を除去した後に、この色素溶液に上記酸化チタン電極を浸漬し、室温で24時間放置した。浸漬時間は、実際にセルを作製して変換効率を求め、その変換効率が最大となるように設定した。
着色した電極表面を、溶解に使用した溶媒およびアルコールで洗浄した後、4-tert-ブチルピリジンの2mol%アルコール溶液に30分浸した後、乾燥させて、増感色素の吸着した酸化チタン多孔質層1を有する光電変換電極を得た。
電解質溶液の調製
下記処方の電解質溶液を調製した。溶媒にはメトキシアセトニトリルを用いた。
ヨウ化リチウム 0.1M
ヨウ素 0.05M
4-tert-ブチルピリジン 0.5M
1-プロピル-2,3-ジメチルイミダゾリウムヨージド 0.6M
光電変換セルの組み立て
図1に示すように、光電変換セルの試験サンプルを組み立てた。すなわち、上記の手順により光電変換用増感色素を吸着させた酸化チタン多孔質層1が形成された透明電極(フッ素ドープ型酸化スズ層付ガラス基板3)と、フッ素ドープ型酸化スズ層付ガラス基板の導電層上に白金層が積層された導電性対極4とを、樹脂フィルム製スペーサー6(三井・デュポンポリケミカル株式会社登録商標「ハイミラン」アイオノマー樹脂フィルム(25μm厚))を挟んで固定し、その空隙に上記の電解質溶液を注入して電解質溶液層2を形成した。ガラス基板3及び白金対極層には、それぞれ変換効率測定用の導線7を固定した。
変換効率の測定方法
ORIEL社製ソーラーシミュレーター(#8116)とエアマスフィルターを組み合わせ、光量計で100mW/cm2 の光量に調整して測定用光源とした。光電変換セルの試験サンプルに光照射をしながら、KEITHLEY MODEL2400ソースメーターを使用してI−Vカーブ特性を測定した。変換効率ηは、I−Vカーブ特性測定から得られたVoc(開放電圧値)、Isc(短絡電流値)及びff(フィルファクター値)を用いて下記の式により算出した。
Figure 2014172835
実施例1
光電変換用増感色素として、合成例1で得られた光機能材料を用い、上記のように光電変換セルを組み立てた。このときの光電変換効率を表1に示す。
実施例2、3、比較例1
増感色素を表1に示す光機能材料に変えた以外は実施例1と同様に光電変換セルを組み立てた。このときの光電変換効率を表1に示す。
Figure 2014172835
実施例1と比較例1とを比較すると、本発明のカルボキシル基のメタ位にシアノ基を持つ光機能材料を増感色素に用いた実施例1は公知のカルボキシル基を持つ光機能材料を増感色素に用いた比較例1よりも変換効率が上昇しており、メタ位へシアノ基の導入により太陽電池としての性能の向上が確認された。
さらに、実施例2および実施例3は、実施例1よりも変換効率が上昇した。これは実施例2および実施例3で用いた増感色素が電子供与性部位と電子受容性部位の間をそれぞれ炭素間二重結合と三重結合をはさむことにより、π共役系が実施例1で用いた増感色素よりも伸びた結果、変換効率が上昇したと推測できる。
1.酸化チタン多孔質層(光電変換用増感色素を吸着済み)
2.電解質溶液層
3.透明電極(フッ素ドープ型酸化スズ層)
4.白金電極層
5.ガラス基板
6.樹脂フィルム製スペーサー
7.変換効率測定用導線
8.入射光

Claims (5)

  1. 下記一般式(1)で表される光機能材料。
    Figure 2014172835
    (式中、R〜R14はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数が1〜4のアルコキシ基、または、炭素数1〜4のアルキルチオ基を表し、さらにアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基は置換基を有していてもよい。Xは直接結合、エテン-1,2-ジイル基(−CH=CH−)または、エチン-1,2-ジイル基(−C≡C−)を表す。二重結合による幾何異性体は両方を表す。)
  2. 請求項1記載の光機能材料を含む光電変換用増感色素。
  3. 無機半導体と、前記無機半導体に連結された請求項2記載の増感色素とを含む光電変換材料。
  4. 透明電極と、前記透明電極に積層された請求項3記載の光電変換材料とを含む光電変換電極。
  5. 請求項4記載の光電変換電極、電解質層及び導電性対極を含んで成る光電変換セル。
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