図1乃至図14に基づき、本発明の一実施形態によるシート荷重検出装置10について説明する。尚、説明中において、車両シート1に着座した乗員にとっての前方を車両シート1の前方とし、乗員の右手側を車両シート1の右方とし、乗員の左手側を車両シート1の左方とする。
図1に示すように、左ハンドル車両に搭載された助手席用の車両シート1は、乗員が着座するシートクッション11と、シートクッション11の後端部において前後方向に回動可能に取り付けられ、乗員の背もたれとなるシートバック12とを備えている。また、シートバック12の上端には、乗員の頭部を支持するヘッドレスト13が取り付けられている。
シートクッション11は、シートフレーム111、シートフレーム111の上方に配置されたパッド部材112、およびパッド部材112の表面を覆う表皮113により形成されている。シートフレーム111の下面には、左右一対のアッパレール14R、14Lが取り付けられている。アッパレール14R、14Lは、車両のフロア4上に固定された一対のロアレール41R、41Lに、それぞれ前後方向に移動可能に係合している。これにより車両シート1は、フロア4上を前後方向に移動して、乗員の所望する位置に固定可能に形成されている。
車両シート1は、後席への乗車又は後席からの降車を容易化するために、乗員の背もたれとなるシートバック12は図1に示す如く着座可能位置における最起立位置である初段位置から、図2に示す如く、前方へ前傾させた着座不能位置となる前傾位置例えばシートバック12をシートクッション11に接触して折り畳まれた位置へと姿勢を変更可能であり、また、シートバック12は前傾位置から初段位置へと復帰可能である。
シートバック12のシート姿勢を検出するシート姿勢検出部71が車両シート1に設けられている。シート姿勢検出部71は、シートバック12が標準位置で切換作動(例えばオン作動する)標準位置スイッチ72を有する。又、シート姿勢検出部71は、シートバック12が前傾位置で切換作動(例えばオン作動する)前傾位置スイッチ73を有する。なお、標準位置とは、平均的な体格の乗員の標準的な着座位置を示す。
左右一対の着座センサ2R、2Lは、図1に示す如く、シートフレーム111とアッパレール14R、14Lとの間に、それぞれ介装されている。着座センサ2R、2Lは、車両シート1のシートクッション11の後縁部に取り付けられている。着座センサ2R、2Lは、いずれも歪ゲージ等により形成された荷重センサで、車両シート1への乗員の着座あるいは荷物の載置等により、シートクッション11に対し加わる荷重を検出するものである。着座センサ2R、2Lは、これに限定されるものではないが、エアバッグの展開制御や、シートベルトのプリテンション装置の作動制御のために、シートクッション11に対する荷重を検出している。尚、本発明は、着座センサ2R、2Lの種類、型式、検出原理を、特定のものに限定するものではない。
右着座センサ2Rは、シートフレーム111の右部分と右側のアッパレール14Rとの間に介装され、シートクッション11の右部分が受け持つ荷重を検出する。同様に、左着座センサ2Lは、シートフレーム111の左部分と左側のアッパレール14Lとの間に介装され、シートクッション11の左部分が受け持つ荷重を検出する。右着座センサ2Rと左着座センサ2Lは、シートクッション11の幅方向に所定距離だけ離れて設けられている。以下、右着座センサ2Rおよび左着座センサ2Lを総称する場合は、着座センサ2R、2Lという。
図3に示すように、着座センサ2R、2L(図3において、左着座センサ2Lのみ示す)は、金属板により形成された起歪体23、起歪体23を保持したブラケット24およびブラケット24の下面に形成されたアンプケース241を備えている。起歪体23の下面には、歪ゲージ(図示略)が貼付されている。また、アンプケース241内には、アンプ部(図示略)が内蔵されており、アンプケース241の前端には、着座センサ2Lをコントローラ3(本発明のシート荷重検出装置10の制御部に該当する)と接続するためのコネクタ242が一体に形成されている。
起歪体23の前端部および後端部に設けられた取付孔には、それぞれブッシュ231が装着されている。各々のブッシュ231内にはアッパレール14Lに立設された取付ボルト(図示せず)が下方から挿入され、ブラケット24の上方から締付ナットを螺合させることにより、起歪体23はアッパレール14L上に取り付けられる。起歪体23をアッパレール14Lに取り付けた状態で、起歪体23の下方に位置するブッシュ231の厚みによって、起歪体23とアッパレール14Lとの間には十分な隙間が形成されている。
また、起歪体23の中央部には、スタッドボルト232が取り付けられている。スタッドボルト232には、起歪体23の上面に位置するようにスペーサ233が装着されている。スタッドボルト232をシートフレーム111の下面に形成された取付孔(図示せず)に挿入した後、上方からナット部材を締め付けることによって、起歪体23はシートフレーム111の下方に取り付けられる。起歪体23をシートフレーム111に取り付けた状態において、スペーサ233の厚みによって、起歪体23とシートフレーム111との間にも十分な隙間が形成されている。
上述した構成によって、起歪体23は、シートフレーム111とアッパレール14R、14Lとの間の相対位置の変化によって、上下方向に撓み可能に形成されている。着座センサ2R、2Lの歪ゲージは、起歪体23の中央部(スタッドボルト232の取付部)が下方へと押圧される圧縮状態となる、あるいは起歪体23の中央部が上方へと牽引される引っ張り状態となることによって、シートクッション11に加わる荷重を検出している。又一方、歪ゲージを起歪体23の上面に貼付した場合では、歪ゲージは、起歪体23の中央部(スタッドボルト232の取付部)が上方へと押圧される圧縮状態となる、あるいは起歪体23の中央部が下方へと牽引される引っ張り状態となることによって、シートクッション11に加わる荷重を検出できることは明らかである。尚、右着座センサ2Rは、図3に示した左着座センサ2Lに対して対称形状を呈している。
各々の着座センサ2R、2Lは、それぞれ1乃至4個の歪ゲージからなる一般周知のホイートストンブリッジ回路によって形成され、ホイートストンブリッジ回路の中間点の間の電圧である、ブリッジ電圧を出力する。
着座センサ2R、2Lには、上述したコントローラ3が接続されている。コントローラ3は、着座センサ2R、2Lの出力に基づいて、検出荷重Wとして車両シート1に作用する荷重の一部を検出する荷重検出部31を有し、荷重検出部31は、この例では着座センサ2R、2Lの出力の和を演算して、検出荷重Wとしているが、これに限るものではない。
コントローラ3の荷重検出部31は、上述したブリッジ電圧値により、着座センサ2R、2Lの起歪体23が圧縮状態にあるか引っ張り状態にあるかを検出している。この場合、ブリッジ電圧の正負(電圧の向き)に基づいて、起歪体23が圧縮状態にあるか引っ張り状態にあるかを区別すればよい。あるいは、それに代えて、ブリッジ電圧の正の所定値を基準電圧とし、基準電圧以上の電圧値が検出された場合に圧縮状態とし、基準電圧よりも低い電圧値が検出された場合に引っ張り状態としてもよい。
次に、図4は、本実施形態のシート荷重検出装置10の構成を示し、コントローラ3は前述の荷重検出部31と、荷重検出部31によった検出された検出荷重Wの変動に基づいて車両シート1の状態変化を判定するとともに、シート姿勢検出部71の出力に基づいて車両シート1の状態変化の判定を規制する状態判定部32と、状態判定部32の判定結果に応じて動作する動作部33と、荷重検出部31によって検出された検出荷重Wに基づいて車両シート1に作用する荷重体を判定する荷重体判定部34とを有する。
状態判定部32には、検出荷重Wの変動に基づいて、車両が坂道にあるか否かを判定するとともに、坂道の傾斜角度に応じて検出荷重Wを補正が必要な状態に車両シート1が変化したか否かを判定する坂道判定部35と、検出荷重Wの変動に基づいて、車両シート1が車両に衝撃が加わった状態に変化したか否かを判定する車両衝撃判定部36が含まれる。また、動作部33には、坂道の傾斜角度に応じて検出荷重Wを補正する荷重補正部37と、車両に衝撃があったことを乗員に知らせる車両衝撃報知部38が含まれる。
また、坂道判定部35は、空席判定部51と、無荷重時検出荷重―前後傾斜角度対応部52と、前後傾斜角度演算部53とから構成されている。なお、荷重検出部31、状態判定部32における坂道判定部35の空席判定部51と、無荷重時検出荷重―前後傾斜角度対応部52と、前後傾斜角度演算部53と、車両衝撃判定部36、動作部33の荷重補正部37、そして荷重体判定部34は、ソフトウェアを主体にして実現されている。
前述のシート姿勢検出部71の出力としてシートバック12の標準位置及び前傾位置に関する姿勢の情報もコントローラ3に取り込まれている。シートバック12が標準位置にあるか否かは、標準位置スイッチ72の出力にて判断できる。又、シートバック12が前傾位置にあるか否かは、前傾位置スイッチ73の出力にて判断できる。
又、シートバック12が前傾位置から離脱後予め設定された所定時間TXを経過したか否かは、所定時間TXのカウント開始を前傾位置スイッチ73がオフ作動時点として経過時間を測定し、所定時間TXと比較すれば足りるものである。なお、所定時間TXは、通常シートバック12が前傾位置を離脱した時点から初段位置へ復帰した際の衝撃に伴う荷重が発生している時間までに相当する時間であり、好ましくは、検出精度を上げるために多少の余裕時間を追加する。所定時間TXは本発明の規制時間に相当する。
また、車両シート1に設けられたシートベルトを装着するためのバックルには、着脱状態を検出するバックルスイッチ61が配設されており、出力されるバックル情報BSWもコントローラ3に取り込まれている。そして、シートバック12の前傾位置及びその前傾位置に伴う動作を検出するシート姿勢検出部71の信号もコントローラ3に取り込まれ、状態判定部32に作用している。
ここで、予め荷重検出部31における検出荷重Wのゼロ点校正を行う。ゼロ点校正時には、シートバック12は、標準位置スイッチ72がオンである標準位置にあって車両が傾斜せずかつ車両シート1に荷重体が載っていない基準状態において、両着座センサ2R、2Lに車両シート1の自重の一部が作用している。そして、このときの荷重検出部31の出力がゼロとなるようにレベル調整する。ゼロ点校正を行うことにより、検出荷重Wは、シート自重を除外した荷重体のみに相当する量となる。なお、標準位置スイッチ72を省略し、前傾位置スイッチ73の作動切換位置においてゼロ点校正を行うようにしてもよい。具体的には、標準位置で荷重検出部31の出力がゼロとなるような値を前傾位置において設定する。また、前傾位置スイッチ73を、初段位置(着座可能位置における最起立位置)で切換作動する初段位置スイッチに変更し、上記同様にゼロ点校正するようにしてもよい。
次に、図5および図6に基づき、車両の状態として衝突によって車両に衝撃が加わった場合の、車両シート1のシートクッション11において発生する荷重について説明する。本発明者は、数々の実験と経験により、車両衝突時のシートクッション11における荷重について、以下のような現象が発生することを発見した。
図5の左方に示すように、車両が前進している際に、車両前方において衝突が発生した場合、衝突の瞬間において、着座者を含んだ車両シート1に対し前方への加速度が発生する。これにより、車両シート1において、図5における反時計回りのモーメントが発生する。したがって、シートクッション11の下端前縁において、車両のフロア4の方向に向けて加えられる所定値以上の荷重(以下、車両のフロア4の方向に向けて加えられる荷重を圧縮方向荷重という)が発生し、一方、シートクッション11の下端後縁において、車両のフロア4から離れる方向に加えられる所定値以上の荷重(以下、車両のフロア4から離れる方向に加えられる荷重を引張方向荷重という)が発生する。
その後、車両前方において衝突が発生してからごく僅かな所定時間以内に、図7の右方に示すように、車両シート1に対し後方へ戻りが発生し、これにより、車両シート1において、図7における時計回りのモーメントが発生する。したがって、シートクッション11の下端前縁において所定値以上の引張方向荷重が発生し、一方、シートクッション11の下端後縁において所定値以上の圧縮方向荷重が発生する。
また、図6に示すように、車両が後退している際に、車両後方において衝突が発生した場合は、上述した前方衝突の場合に対し、それぞれの荷重が発生する前後位置が反対になる。すなわち、図6の左方に示すように、車両が後退している際に、車両後方において衝突が発生した場合、衝突の瞬間において、着座者を含んだ車両シート1に対し後方への加速度が発生し、これにより、車両シート1において、図6における時計回りのモーメントが発生する。したがって、シートクッション11の下端後縁において所定値以上の圧縮方向荷重が発生し、一方、シートクッション11の下端前縁において所定値以上の引張方向荷重が発生する。
その後、車両後方において衝突が発生してからごく僅かな所定時間のうちに、図6の右方に示すように、車両シート1に対し前方へ戻りが発生し、これにより、車両シート1において、図6における反時計回りのモーメントが発生する。したがって、シートクッション11の下端後縁において所定値以上の引張方向荷重が発生し、一方、シートクッション11の下端前縁において所定値以上の圧縮方向荷重が発生する。
尚、言うまでもないことではあるが、上述した圧縮方向荷重が発生する状態は、着座センサ2R、2Lにおける起歪体23の圧縮状態に該当し、引張方向荷重が発生する状態は、起歪体23の引っ張り状態に該当する。上述したように、前方衝突および後方衝突を問わず、衝突後において短時間のうちに車両シート1に戻りが発生する原因について、詳細なメカニズムは不明であるが、シートフレーム111および車両のフロア4等の剛性に起因すると考えられる。
なお、シートバック12が図2に示した前傾位置から図1に示す初段位置に復帰した場合には、前述した車両が後退している際に、車両後方において衝突が発生した場合と同様な荷重(図6示)が発生する。即ち、シートバック12が前傾位置から初段位置に復帰した瞬間において、車両シート1に対し後方への加速度が発生し、これにより、車両シート1において、図6における時計回りのモーメントが発生する。したがって、シートクッション11の下端後縁において所定値以上の圧縮方向荷重が発生し、一方、シートクッション11の下端前縁において所定値以上の引張方向荷重が発生する。その後、シートバック12が初段位置に復帰してからごく僅かな所定時間のうちに、図6の右方に示すように、車両シート1に対し前方へ戻りが発生し、これにより、車両シート1において、図6における反時計回りのモーメントが発生する。したがって、シートクッション11の下端後縁において所定値以上の引張方向荷重が発生し、一方、シートクッション11の下端前縁において所定値以上の圧縮方向荷重が発生する。
以上、車両に前方衝突および後方衝突が発生した場合及びシートバック12が前傾位置から初段位置に復帰した場合に、車両シート1において発生する荷重について説明したが、これら以外の方向からの衝突時においても、車両シート1において上述した場合と同様に荷重が発生する。すなわち、車両の側突あるいは斜め衝突といったような場合にも、衝突の瞬間において、衝突した側に近い位置にあるシートクッション11の周縁部において所定値以上の圧縮方向荷重が発生し、衝突した側と離れた位置にあるシートクッション11の周縁部において所定値以上の引張方向荷重が発生する。その後、衝突が発生してからごく僅かな所定時間のうちに、車両シート1に対し戻りが発生する。
次に、図7に基づき、本実施形態における、コントローラ3による車両シート1の車両衝撃報知制御の一例について説明する。最初に、ステップS11にて、車両衝撃検出を行う。次に、ステップS12にて車両衝撃検出が有ったか否かの判断がされる。なお、ステップS12にて、車両に衝撃が加わったことを検出されなかった場合は、車両衝撃報知を行わずに制御フローを終了する。
一方、ステップS12にて、車両に衝撃が加わったことを検出した場合には、ステップS13に進み、車両に衝撃が加わったのは車両シート1の状態変化の判定を規制する予め設定された規制時間TXなるシートバック12の前傾位置離脱後所定時間を経過しているか否かの判定を行う。車両に衝撃が加わったのは規制時間TXを経過した後である場合は車両シート1が車両に衝撃が加わった状態に変化したと判定して、ステップS14に進み、車両衝撃報知を行い、動作部33なる車両衝撃報知部38を動作させる。車両衝撃報知部33は、例えば車内スピーカまたは報知用発光体として、車両に衝撃が加わったため、車両の点検が必要なことを乗員に知らせる。
なお、ステップS13において、車両に衝撃が加わったのは規制時間TXを経過する以前と判定された場合には、車両シートが車両に衝撃が加わった状態に変化したか否かを判定する車両衝撃判定部33の作動が規制されて即ち車両に衝撃が加わったことの検出を反映しないもので、車両衝撃報知を行わずに制御フローを終了する。従って、シートバック12を前傾位置から初段位置に復帰させると、シートバック12の初段位置へ復帰した際に衝撃が生じるため、車両が後退している際に車両後方にて軽度の衝突を起こして車両シート1が車両に衝撃が加わった状態に変化した場合と同様な検出荷重Wとなるが、この場合はステップS13の判定にて車両シート1が車両に衝撃が加わった状態に変化していないと判定でき、シートバック12の姿勢変更に基づく検出荷重Wの変動を、他の要因に基づく状態変化と誤認してしまうのを抑制することができる。より具体的には、シートバック12を前傾位置から初段位置に復帰させる姿勢変更に基づく検出荷重Wの変動を、車両が軽度の衝突を起こして車両シート1が車両に衝撃が加わった状態変化と誤認してしまうのを抑制することができる。
次に、図8に基づき、本実施形態における、コントローラ3による車両シート1の車両衝撃報知制御の他の例について説明する。最初に、ステップS71にて、シートバック12の前傾位置を離脱した時点からの経過時間Tmを測定する。次に、ステップS72にて、経過時間Tmが規制時間TXを経過しているか否かの判定を行う。ステップ72において経過時間Tmが規制時間TXを経過していない場合は、車両衝撃検出を行わずに制御フローを終了する。
ステップ72において経過時間Tmが規制時間TXを経過している場合には、ステップ73に進み、車両衝撃検出を行う。次に、ステップS74にて車両衝撃検出が有ったか否かの判断がされる。なお、ステップS74にて、車両に衝撃が加わったことを検出されなかった場合は、車両衝撃報知を行わずに制御フローを終了する。一方、ステップS74にて、車両に衝撃が加わったことを検出した場合には、ステップS75に進み、車両衝撃報知を行い、動作部33なる車両衝撃報知部38を動作させる。車両衝撃報知部33は、例えば車内スピーカまたは報知用発光体として、車両に衝撃が加わったため、車両の点検が必要なことを乗員に知らせる。
従って、シートバック12を前傾位置から初段位置に復帰させると、シートバック12の初段位置へ復帰した際に衝撃が生じるため、車両が後退している際に車両後方にて軽度の衝突を起こして車両シート1が車両に衝撃が加わった状態に変化した場合と同様な検出荷重Wとなるが、この場合はステップS72の判定にて、経過時間Tmが規制時間TXを経過していない場合は、車両衝撃検出を行わず、即ち車両シート1の状態変化の判定自体の実行が規制されるため、車両シート1が車両に衝撃が加わった状態に変化していないとされ、シートバック12の姿勢変更に基づく検出荷重Wの変動を、他の要因に基づく状態変化と誤認してしまうのを抑制することができる。より具体的には、シートバック12を前傾位置から初段位置に復帰させる姿勢変更に基づく検出荷重Wの変動を、車両が軽度の衝突を起こして車両シート1が車両に衝撃が加わった状態変化と誤認してしまうのを抑制することができる。
次に、図9に基づき、図7及び図8に示した車両衝撃検出について説明する。最初に、ステップS21にて、荷重検出部31の検出荷重Wが入力される。次に、ステップS22にて検出荷重Wに基づいて荷重が発生しているか否かを判定される。具体的には、検出荷重Wが0より所定値δ(δ≒0)だけ大きいか否かが判定される。検出荷重Wがδ未満であって荷重が発生していないと判定されると、本制御フローは終了する。
検出荷重Wがδ以上であって、荷重が発生していると判定された場合、検出荷重Wが圧縮方向荷重であるか、引張方向荷重であるかが判定される(ステップS23)。検出荷重Wが圧縮方向荷重であった場合、検出荷重Wが圧縮方向荷重の閾値であるW1以上であるか否かが判定される(ステップS24)。閾値W1は、車両に衝撃が加わった時の圧縮方向荷重の閾値であり、すなわち、上述した図5の左方または図6の左方において示した圧縮方向荷重の閾値に該当する。
検出荷重Wが圧縮方向荷重の閾値であるW1未満であった場合、本制御フローは終了する。検出荷重Wが閾値W1以上であった場合、ステップS25へと進む。また、検出荷重Wが引張方向荷重であった場合、検出荷重Wが引張方向荷重の閾値であるW3以上であるか否かが判定される(ステップS26)。閾値W3は、車両に衝撃が加わった時の引張方向荷重の閾値であり、すなわち、上述した図5の左方または図6の左方において示した引張方向荷重の閾値に該当する。検出荷重Wが引張方向荷重の閾値であるW3未満であった場合、本制御フローは終了する。検出荷重Wが閾値W3以上であった場合、ステップS27へと進む。
ステップS25においては、再び、検出荷重Wが入力され、次に、ステップS28において、検出荷重Wに基づき、荷重が発生しているか否かが判定される。検出荷重Wがδ以上であって、荷重が発生していると判定された場合、検出荷重Wが圧縮方向荷重であるか、引張方向荷重であるかが判定される(ステップS29)。検出荷重Wが引張方向荷重であった場合、検出荷重Wが引張方向荷重の閾値であるW2以上であるか否かが判定される(ステップS30)。閾値W2は、車両に衝撃が加わった後の戻り時の引張方向荷重の閾値であり、すなわち、上述した図5の右方または図6の右方において示した引張方向荷重の閾値に該当する。
検出荷重Wが閾値W2以上であった場合、ステップS24において、検出荷重Wが圧縮方向荷重の閾値であるW1以上であると判定されてから、閾値W2以上となるまでに経過した時間Tsが、閾値時間であるT1を超えたか否かが判定される(ステップS31)。時間Tsが、閾値時間であるT1を超えたと判定された場合、本制御フローは終了する。時間Tsが、閾値時間T1を超えていないと判定された場合、コントローラ3は、例えば、衝突により車両に衝撃が加わったことを検出する(ステップS32)。
上述したステップS28において、検出荷重Wがδ未満であって、荷重が発生していないと判定された場合、または、ステップS29において、検出荷重Wが圧縮方向荷重であると判定された場合、もしくは、ステップS30において、検出荷重Wが引張方向荷重の閾値であるW2未満であった場合には、ステップS24において、検出荷重Wが圧縮方向荷重の閾値であるW1以上であると判定されてから経過した時間Tが、閾値時間であるT1を超えたか否かが判定される(ステップS33)。時間Tが、閾値時間であるT1を超えていないと判定された場合、ステップS25へと戻り、時間Tが閾値時間T1を超えたと判定された場合、本制御フローは終了する。
一方、ステップS27においては、再び、検出荷重Wが入力され、次に、ステップS34において、検出荷重Wに基づき、荷重が発生しているか否かが判定される。検出荷重Wがδ以上であって、荷重が発生していると判定された場合、検出荷重Wが圧縮方向荷重であるか、引張方向荷重であるかが判定される(ステップS35)。検出荷重Wが圧縮方向荷重であった場合、検出荷重Wが圧縮方向荷重の閾値であるW4以上であるか否かが判定される(ステップS36)。閾値W4は、車両に衝撃が加わった後の戻り時の圧縮方向荷重の閾値であり、すなわち、上述した図5の右方または図6の右方において示した圧縮方向荷重の閾値に該当する。
検出荷重Wが閾値W4以上であった場合、ステップS26において、検出荷重Wが引張方向荷重の閾値であるW3以上であると判定されてから、閾値W4以上となるまでに経過した時間Tsが、閾値時間であるT2を超えたか否かが判定される(ステップS37)。時間Tsが、閾値時間であるT2を超えたと判定された場合、本制御フローは終了する。時間Tsが、閾値時間T2を超えていないと判定された場合、例えば、衝突により車両に衝撃が加わったことを検出する(ステップS32)。
一方、上述したステップS34において、検出荷重Wがδ未満であって、荷重が発生していないと判定された場合、または、ステップS35において、検出荷重Wが引張方向荷重であると判定された場合、もしくは、ステップS36において、検出荷重Wが圧縮方向荷重の閾値であるW4未満であった場合には、ステップS26において、検出荷重Wが引張方向荷重の閾値であるW3以上であると判定されてから経過した時間Tが、閾値時間であるT2を超えたか否かが判定される(ステップS38)。時間Tが閾値時間T2を超えていないと判定された場合、ステップS27へと戻り、時間Tが、T2を超えたと判定された場合、本制御フローは終了する。
次に、図10乃至図12に基づき、衝突によって車両に衝撃が加わった時における荷重検出部31による検出荷重Wの荷重特性を、他の現象時の荷重特性と比較して説明する。また、図10乃至図12において、縦軸のプラス領域は検出荷重Wが圧縮方向荷重である場合を表し、マイナス領域は引張方向荷重である場合を表しており、引張方向荷重については、マイナス方向へ行くほどその値が大きくなっていることを示している。
さらに、図10において一点鎖線にて示された線図は、車両シート1を乗員の手により故意にゆすった場合における検出荷重Wを示している。これは、図11に示した線図と同一のものであるが、図11の横軸における時間的長さは、図10のものに比較しておよそ10倍に拡大されている。
また、図10において破線にて示された線図は、車両が、表面が波打った道路(波状路)を走行した場合における検出荷重Wを示している。これは、図12に示した線図と同一のものであるが、図12の横軸における時間的長さも、図10のものに比較しておよそ10倍に拡大されている。
図10の実線に示したように、例えば、車両に後方衝突が発生した場合及びシートバック12が前傾位置から初段位置に復帰した場合、荷重検出部31は、それぞれ閾値W1を超える圧縮方向荷重を検出した後、短時間Tsのうちに閾値W2を超える引張方向荷重を検出する。図にあるように、圧縮方向荷重が閾値W1を超えてから、引張方向荷重が閾値W2を超えるまでの時間Tsは、0.2sec未満という短い時間であることが分かる。
これに対し、シートをゆすった場合および車両走行時における検出荷重Wは、圧縮方向荷重と引張方向荷重との間の時間的間隔が、車両衝突時の検出荷重Wに比較して約10倍ほどあり、また、圧縮方向荷重および引張方向荷重がそれぞれの閾値W1、W2を超えることもまれである。
したがって、上述した圧縮方向荷重についての閾値W1、W4および引張方向荷重についての閾値W2、W3について、それぞれ、衝突によって車両に衝撃が加わった場合に、シートクッション11に加えられる荷重を、その他の現象によってシートクッション11に発生する荷重に対して区別できる値に予め設定されたもので、圧縮方向荷重についての閾値W1そして引張方向荷重についての閾値W3は、本発明における予め設定された第1設定値の荷重に相当し、一方、引張方向荷重についての閾値W2そして圧縮方向荷重についての閾値W4は、本発明における第1設定値W1、W3よりも低い値に設定された第2設定値の荷重に相当する。さらに、閾値時間T1、T2について、衝突によって車両に衝撃が加わった場合に、シートクッション11に連続的に発生する圧縮方向荷重と引張方向荷重との間の時間的間隔を、その他の現象によってシートクッション11に発生する圧縮方向荷重と引張方向荷重との間の時間的間隔に対して区別できる時間に設定することにより、荷重検出部31による検出荷重Wに基づいて、車両に衝撃が加わったことを判定できることが分かる。この閾値時間T1と、閾値時間T2は、本発明における予め設定された第1設定時間に相当し、規制時間Txはこの第1設定時間T1、T2よりも長時間に設定されている。
本実施形態によれば、着座センサ2R、2Lにより、シートクッション11の周縁部において、W1以上の圧縮方向荷重が検出された後、閾値時間T1以内にW2以上の引張方向荷重が検出された場合、あるいは、シートクッション11の周縁部において、W3以上の引張方向荷重が検出された後、閾値時間T2以内にW4以上の圧縮方向荷重が検出された場合に、車両に衝撃が加わったと判定することにより、既存の着座センサ2R、2Lを用いて、シートクッション11に発生した荷重を検出するのみで、容易に車両に衝撃が加わったことを判定できる。
また、着座センサ2R、2Lは、シートクッション11の後縁部に取り付けられたことにより、前方衝突または後方衝突により車両に衝撃が加わったことを容易に判定することができる。さらに、着座センサ2R、2Lが、シートクッション11の後縁部に取り付けられたことにより、着座センサ2R、2Lに対して着座者等による荷重が加わりやすくなる。このため、着座センサ2R、2Lがシートクッション11の前方部に設けられていなくても、シートクッション11に印加される荷重の変化を検出しやすくなり、車両への衝撃の有無の正確な判定と、着座センサ2R、2Lの低減に伴う車両シート1の低コスト化を両立させることができる。
また、着座センサ2R、2Lは、シートクッション11の左右部位に少なくとも一つずつ取り付けられ、荷重検出部31は、着座センサ2R、2Lの出力の和を用いて検出荷重Wを得ていることから、着座センサ2R、2Lのうちの少なくとも一つにより、W1以上の圧縮方向荷重が検出された後、閾値時間T1以内にW2以上の引張方向荷重が検出された場合、あるいは、W3以上の引張方向荷重が検出された後、閾値時間T2以内にW4以上の圧縮方向荷重が検出された場合に、車両に衝撃が加わったと判定することにより、シートクッション11の左右部位に発生する荷重に偏りがあっても、荷重の変化を見過ごすことなく、車両への衝撃の有無を正確に判定することができる。
次に、シート荷重検出装置10における坂道判定部35、荷重補正部37及び荷重体判定部34の動作、演算、処理内容について説明する。検出荷重Wのゼロ点校正に続いて、車両シート1に荷重体が載っていないときに荷重検出部31から出力される無荷重時検出荷重Wと車両の前後傾斜角度A1との関係を示す無荷重時検出荷重−前後傾斜角度対応部52を、予め求めておく。この無荷重時検出荷重−前後傾斜角度対応部52は、車両シート1に荷重体が載っていない空席状態で車両を前後に傾斜させ、検出荷重Wを得ることにより求められる。つまり、このときの検出荷重Wと前後傾斜角度A1との関係を例えば対応マップあるいは関数式の形態で記憶部内に保持することにより、無荷重時検出荷重−前後傾斜角度対応部52とすることができる。本実施形態においては、車両の前方が低く傾斜するほど、車両シート1の自重の分担比率が前方に偏り、後方に配した着座センサ2R、2Lを用いた荷重検出部31による無荷重時検出荷重Wは負側に減少する。逆に、車両の前方が高く傾斜するほど、両シート1の自重の分担比率が後方に偏り、無荷重時検出荷重Wは正側に増加する。
図13は、図4の構成において、無荷重時検出荷重−前後傾斜角度対応部52、ならびに補正値Cの一例を示すグラフである。図中の横軸は下り坂で車両の前方が低くなる前後傾斜角度A1を示し、縦軸負側には無荷重時検出荷重Wのグラフ(1)、縦軸正側には補正値Cのグラフ(2)を示している。無荷重時検出荷重Wのグラフ(1)の原点Oは、上述のゼロ点校正で、前後傾斜角度A1=0(°)のときに無荷重時検出荷重Wを0(Nまたはkgw)に校正したことを示している。図13の例では、無荷重時検出荷重Wと前後傾斜角度A1は比例している。
さらに、無荷重時検出荷重Wの変動範囲よりも高いレベルの空席判定値W0を予め設定しておく。空席判定値W0をゼロとしない理由は、上り坂に車両が停止して空席状態で無荷重時検出知荷重Wが正値となり空席を判定できなくなることを避けるためである。
空席判定部51は、荷重検出部31から出力された検出荷重Wを入力として、車両シート1の空席状態を判定する。判定ロジックは、検出荷重Wが空席判定値W0未満であるときに空席状態と判定する。
前後傾斜角度演算部53は、空席判定部51が空席状態を判定したときに、無荷重時検出荷重−前後傾斜角度対応部52に基づいて荷重検出部31から出力された検出荷重Wに対応する車両の前後傾斜角度A1を演算する。当該前後傾斜角度A1は本発明の坂道の傾斜角度に相当する。演算とは、例えば、対応マップを検索して検出荷重Wに対応する前後傾斜角度A1を求めること、あるいは関数式に検出荷重Wを代入して前後傾斜角度A1を算出することである。さらに本実施形態では、前後傾斜角度演算部53は、車両の前後傾斜角度A1を路面の勾配に置き換えて表現し、図13に示されるように緩勾配判定値R1および急勾配判定値R2を用いて3段階に区分している。つまり、検出荷重Wが正値からゼロを含み下りの緩勾配判定値R1を越えていれば「平地」、下りの緩勾配判定値R1以下で急勾配判定値R2を越えていれば「緩勾配」、下りの急勾配判定値R2以下であれば「急勾配」と、いずれかの一傾斜状態に区分する。
なお、シートバック12が前傾位置にある場合、シートバック12の重心が前方へ変位しているため、平坦路にもかかわらず、下り坂の場合と同様に無負荷時検出荷重Wは負側の値となる。この様な検出荷重Wの特性は、着座センサ2R、2Lは、車両シート1のシートクッション11の後縁部に取り付けられ、歪ゲージが起歪体23の下面に貼付された構成である本実施形態に基づくものである。 なお、仮に、歪ゲージを起歪体23の上面に貼付けた構成に変更した場合は、シートバック12が前傾位置にある場合、シートバック12の重心が前方へ変位しているため、平坦路にもかかわらず、上り坂の場合と同様に無負荷時検出荷重Wは正側の値と逆転することは明らかである。
無荷重時検出荷重−前後傾斜角度対応部52、空席判定部31、および前後傾斜角度演算部53により坂道判定部35が構成されている。したがって、車両の前後傾斜角度を検出する傾斜センサなどのハードウェアは、別には設けられていない。
荷重補正部37は、車両シート1に荷重体が載っているときに荷重検出部31から出力された検出荷重Wを前後傾斜角度A1に応じて補正する。荷重補正部37は、検出荷重Wに加算する補正値Cを予め求めて保持している。この補正値Cは、複数の大人の被験者に順次車両シート1に着座してもらい、車両の前側を低く傾斜させて、検出荷重Wと前後傾斜角度A1との関係を求めた予備実験結果を基にして定められている。具体的には図13のグラフ(2)に示されるように、補正値Cは、「平地」でゼロ、「緩勾配」で無荷重時検出荷重Wの負値を符号反転した値、「急勾配」で無荷重時検出荷重Wの負値を符号反転しさらに一定荷重値Zを加えた値としている。そして、実際の動作時に、「平地」では補正を行わず、「緩勾配」および「急勾配」では、荷重検出部31から出力された検出荷重Wに補正値Cを加えて補正荷重値WCを求めている。
荷重体判定部34は、検出荷重Wまたは補正荷重値WCを所定の大人判定値WXおよび標準成人男性判定値WYと大小比較して、車両シート1に着座する乗員などの荷重体を判定する。なお、大人判定値WXは小柄な成人女性の体重、例えば5%タイル値を基にして設定されており、標準成人男性判定値WYは標準的な成人男性の体重、例えば50%タイル値を基にして設定されている。荷重体判定部34は、バックル情報BSWを参照するとともに、タイマを利用した所定時間の継続判定も行っており、機能の詳細は次の荷重体判定制御フローで説明する。
荷重体判定制御フローは、図14に示す如くであり、車両を発進させるときに、まず可能であれば路面の傾斜状態を判定し、次に荷重体として助手席の車両シート1の乗員を判定するものである。まず、ステップS40でイグニッションスイッチIGがオンされると、コントローラ3における荷重体判定制御フローの動作が開始される。次に、ステップS41で、空席判定部51は、検出荷重Wが空席判定値W0未満であれば空席状態と判定して、ステップS42〜S50の勾配判定処理およびステップS55の補正なし乗員判定処理に移行する。また、空席判定部51は、検出荷重Wが空席判定値W0以上である状態が所定時間継続したときに乗員ありと判定して、ステップS51〜S58の乗員判定処理に移行する。
空席状態の判定に続いて、前後傾斜角度演算部53は、ステップS42〜S50の勾配判定処理を行う。ステップS42で、前後傾斜角度演算部53はシート姿勢検出部71からの信号にてシートバック12が前傾位置か否かの判断をする。シートバック12が、図2に示される如く、前傾位置にある場合には、ステップ42にてそのシートバック12が前傾位置にある場合その時間TYの間は勾配判定を実行しないと判定して即ち坂道判定部33による車両が坂道にあるか否かを判定するとともに坂道の傾斜角度に応じて検出荷重Wを補正が必要な状態に車両シート1が変化したか否かを判定することが規制されて、ステップS50で前回の勾配判定結果を維持する。従って、シートバックが前傾位置へと姿勢変更されることに伴い車両が坂道にある状態と同様な検出荷重Wとなるが、この場合はステップ42にて車両シート1が坂道の傾斜角度に応じて検出荷重Wを補正が必要な状態に変化していないと判定でき、シートバック12の姿勢変更に基づく検出荷重Wの変動を、車両が軽度の衝突を起こして車両シート1が車両に衝撃が加わった状態変化と誤認してしまうのを抑制することができる。より具体的には、シートバック12を前傾位置へ姿勢変更したことに伴う検出荷重Wの変動を、車両シート1が坂道の傾斜角度A1に応じて検出荷重Wを補正が必要な状態変化と誤認してしまうのを抑制することができる。シートバック12が前傾位置にある時間TYは、本発明の規制時間に相当する。
ステップ42にてシートバック12が前傾位置でない場合には、車両が坂道にあるか否かを判定するとともに坂道の傾斜角度に応じて検出荷重Wを補正が必要な状態に車両シート1が変化したと判定し、ステップ44に進む。ステップS44で、前後傾斜角度演算部53はバックル情報BSWを確認し、オフ状態であればステップS45およびS46で検出荷重値Wを緩勾配判定値R1および急勾配判定値R2と大小比較する。そして、比較結果に基づいて、路面の勾配をステップS47の「平地」、ステップS48の「緩勾配」、ステップS49の「急勾配」のうち一傾斜状態と判定する。一傾斜状態を新たに求めることにより、前回の勾配判定結果は更新される。ステップS44で、バックル情報BSWがオン状態であれば、車両シート1に何らかの荷重体が載っていて勾配判定は行えないと判断して、ステップS50で前回の勾配判定結果を維持する。この後、ステップS41に戻る。
ここまでのステップにおいて、車両シート1が実際に空席であればステップS41で空席状態と判定され、ステップS42〜S50で勾配が判定されるとともに、ステップS55の補正なし乗員判定処理で後述するように「乗員なし」と判定される。一方、車両シート1に実際に乗員が着座していれば、通常は検出荷重Wが空席判定値W0以上となって、ステップS51以降の乗員判定処理に移行する。また、車両シート1に乗員が着座していても、座り直しなどの姿勢変化により例外的に大きな検出荷重Wが検出されなかったときには、空席状態と判定される。このとき、ステップS44でシートベルトの装着が確認されて、勾配の判定は行われず、ステップS50で前回の判定結果が維持される。さらに、ステップS55の補正なし乗員判定処理で、姿勢変化後の安定した検出荷重Wを用いて乗員の判定が行われる。
乗員有りの判定に続く乗員判定処理において、荷重補正部37はステップS51〜S54およびS56の処理を行い、荷重体判定部34はステップS55、S57およびS58の処理を行う。ステップS51で、荷重補正部37は、検出荷重Wが大人判定値WX以上である状態が所定時間継続したときに、乗員を大人と判定してステップS55に移行し、そうでないときにステップS52に移行する。ステップS52で、検出荷重Wが空席判定値W0以上大人判定値WX未満でかつバックル情報BSWがオン状態のときに、乗員を幼児と判定してステップS53に移行し、そうでないときにステップS54に移行する。ステップS53で、幼児の判定が継続して着座姿勢作動タイマTAの時間経過したときにステップS55に移行し、経過していないときにはステップS54に移行する。ステップS54では、ステップS42〜S50の勾配判定処理で得られた路面の勾配が「平地」であれば補正を行わずにステップS55に移行し、「緩勾配」または「急勾配」であればステップS56で検出荷重Wに補正値Cを加算して補正荷重WCを求めたのちステップS57に移行する。
ステップS55の補正なし乗員判定処理では、荷重体判定部34は検出荷重Wを用いて乗員の判定を確定し、ステップS57の補正あり乗員判定処理では、荷重体判定部34は補正荷重WCを用いて乗員の判定を確定する。ステップS58の判定を詳述すると、検出荷重Wまたは補正荷重WCが空席判定値W0未満のときには「乗員なし」と判定する。また、検出荷重Wまたは補正荷重WCが空席判定値W0以上大人判定値WX未満のときには、バックル情報BSWがオン状態であれば「幼児」と判定し、バックル情報BSWがオフ状態であれば「子供」と判定する。さらに、検出荷重Wまたは補正荷重WCが大人判定値WX以上標準成人男性判定値WY未満のときには「大人」と判定し、標準成人男性判定値WY以上のときには「標準成人男性」と判定する。なお、これらの判定は、検出荷重Wまたは補正荷重WCがそれぞれの範囲内に収まった状態で所定時間を経過したことを以って確定される。
判定結果を補足すると、「幼児」とは、シートベルトに固縛されたチャイルドシートに着座している幼児を意味し、「子供」とは、大人よりも体重が少なくシートベルトを装着していない子供を意味する。また、「大人」とは、小柄な成人女性以上で標準的な成人男性以下の体重を有する大人を意味し、「標準成人男性」とは、標準的な成人男性以以上の体重を有する大人を意味する。
なお、ステップS53で着座姿勢作動タイマTAを用いた理由は、車両シート1に大人が着座する際の過渡的な着座位置や着座姿勢の影響で小さな検出荷重Wが検出されても判定を確定させず、着座が安定して大きな検出荷重Wが検出されたときに最終的な判定を行うためである。
判定結果が確定した以降は、検出荷重Wが瞬間的に変化しても、乗員の姿勢変化や車両走行時の振動などの影響によるものと判断して、判定結果を変更しない。また、判定結果が確定した以降であっても、検出荷重Wの継続的変化やバックル情報BSWの状態変化が発生したときには、乗員の乗降などにより荷重体が入れ替わった可能性があるので、ステップS58からステップS41に戻って再度判定を行う。
上述のステップS58における乗員判定結果に基づいて、エアバッグの事故時展開の可否や展開スピードを制御することで、北米法規に適合させることができる。北米法規では、「大人」であれば事故時にエアバッグを展開し、「幼児」であれば事故時にエアバッグの展開を禁止するように定められており、中間的な体重の「子供」に対しては定めがない。さらに、「大人」については、「標準成人男性」以上の体重を有するときエアバッグの展開スピードを大とし、そうでないときエアバッグの展開スピードを小とするようになっている。
上述のように、本発明の実施形態のシート荷重検出装置10によれば、シートバック12を着座可能位置における最起立位置である初段位置から前方へ前傾させた着座不能位置となる前傾位置へと姿勢を変更可能な車両シート1に作用する荷重の一部を検出する荷重検出部31と、該荷重検出部31によって検出された検出荷重Wに基づいて車両シート1に作用する荷重体を判定する荷重体判定部34と、シートバック12の前傾位置を検出するシート姿勢検出部71と、検出荷重Wの変動に基づいて車両シート1の状態変化を判定するとともに、シート姿勢検出部71の出力に基づいて車両シート1の状態変化の判定を規制する状態判定部32と、を備えた構成であるので、シートバック12の姿勢変更に基づく検出荷重Wの変動を、他の要因に基づく状態変化と誤認してしまうのを抑制することができる。
上述のように、本発明の実施形態のシート荷重検出装置10によれば、状態判定部32は、シート姿勢検出部71によるシートバック12の検出状態に変化があった際には、予め設定された規制時間TX、TYが経過するまでは車両シート1の状態変化の判定を規制する構成であるので、シートバック12の姿勢変更に基づく検出荷重Wの変動を、他の要因に基づく状態変化と誤認してしまうのをより抑制することができる。
上述のように、本発明の実施形態のシート荷重検出装置10によれば、状態判定部32は、検出荷重Wの変動に基づいて、車両シート1が車両に衝撃が加わった状態に変化したか否かを判定する構成であるので、例えばシートバック12を前傾位置から初段位置に復帰させると、シートバック12の初段位置へ復帰した際に衝撃が生じるため、車両が後退している際に車両後方にて軽度の衝突を起こして車両シート1が車両に衝撃が加わった状態に変化した場合と同様な検出荷重Wとなるが、この場合車両シート1が車両に衝撃が加わった状態に変化していないと判定でき、シートバック12の姿勢変更に基づく検出荷重Wの変動を、車両が軽度の衝突を起こして車両シート1が車両に衝撃が加わった状態変化と誤認してしまうのをより抑制することができる。
上述のように、本発明の実施形態のシート荷重検出装置10によれば、状態判定部32は、検出荷重Wが予め設定された第1設定値W1、W2以上の荷重であった後、予め設定された第1設定時間T1、T2以内に第1設定値W1、W2よりも低い値に設定された第2設定値W2,W4以下に遷移した場合に、車両シート1が車両に衝撃が加わった状態に変化したと判定し、規制時間TXが第1設定時間T1、T2よりも長時間に設定されている構成であるので、例えば、シートバック12を前傾位置から初段位置に復帰させると、シートバック12の初段位置へ復帰した際に衝撃が生じるため、車両が後退している際に車両後方にて軽度の衝突を起こして車両シート1が車両に衝撃が加わった状態に変化した場合と同様な検出荷重Wとなるが、この場合車両シート1が車両に衝撃が加わった状態に変化していないと判定でき、シートバック12の姿勢変更に基づく検出荷重Wの変動を、車両が軽度の衝突を起こして車両シート1が車両に衝撃が加わった状態変化と誤認してしまうのをより抑制することができる。
上述のように、本発明の実施形態のシート荷重検出装置10によれば、状態判定部32は、検出荷重Wの変動に基づいて、車両が坂道にあるか否かを判定するとともに、坂道の傾斜角度A1に応じて前記検出荷重Wを補正が必要な状態に車両シート1が変化したか否かを判定する構成であるので、シートバックが前傾位置へと姿勢変更されることに伴い車両が坂道にある状態と同様な検出荷重Wとなるが、この場合車両シート1が坂道の傾斜角度A1に応じて荷重Wを補正が必要な状態に変化していないと判定でき、シートバック12の姿勢変更に基づく検出荷重Wの変動を、車両シート1が坂道の傾斜角度A1に応じて検出荷重Wを補正が必要な状態変化と誤認してしまうのを抑制することができる。
上述のように、本発明の実施形態のシート荷重検出装置10によれば、状態判定部32は、シート姿勢検出部71によりシートバック12の前傾位置が検出されている間TY、車両シート1の状態変化の判定を規制する構成であるので、シートバック12の姿勢変更に基づく検出荷重の変動を、シートバック12の姿勢変更に基づく検出荷重の変動を、車両シート1が坂道の傾斜角度A1に応じて検出荷重Wを補正が必要な状態変化と誤認してしまうのをより抑制することができる。
なお、実施形態では、シートバック12の姿勢変更の一つの例としてシートバック12を初段位置から前傾位置へ姿勢変更した際に、車両に軽度の衝突を起こした場合と同様な検出荷重となること説明したが、一方、シートバック12を着座位置から前傾位置へ姿勢変更した際にも、車両に軽度の衝突を起こした場合と同様な検出荷重を検出することから、シートバック12の着座位置から前傾位置へ姿勢変更した際にも、車両シート1の状態変化の判定を規制するようにしてもよいことは明らかである。
なお、検出荷重Wの特性は、本実施形態即ち着座センサ2R、2Lは、車両シート1のシートクッション11の後縁部に取り付けられ、歪ゲージが起歪体23の下面に貼付された構成に基づくものである。なお、仮に、歪ゲージを起歪体23の上面に貼付けた構成に変更した場合は、本実施形態とは、検出荷重Wが圧縮方向荷重と引張方向荷重即ち正負の方向が逆転するもので、その逆転に対応する構成に変更することも明らかである。
なお、複数の実施の形態が存在する場合、特に記載がある場合を除き、各々の実施の形態の特徴部分を適宜組合せることが可能であることは、明らかである。