本発明に基づいた実施の形態および実施例について、以下、図面を参照しながら説明する。実施の形態および実施例の説明において、個数および量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数およびその量などに限定されない。実施の形態および各実施例の説明において、同一の部品および相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
[実施の形態]
(全体構成)
図1〜図8を参照して、実施の形態における近接センサ510の全体構成について説明する。図1は、近接センサ510を示す斜視図である。図2は、近接センサ510の分解した状態を示す斜視図である。図3は、図1中のIII−III線に沿った矢視断面図である。図4は、図3に対応する断面斜視図である。図5は、図1中のV−V線に沿った矢視断面図である。図6は、図5は、図3に対応する断面斜視図である。図7は、近接センサ510に備えられる検出コイル部210の近傍を拡大して示す断面図である。図8は、近接センサ510に備えられる検出コイル部210の内部構造を模式的に示す斜視図である。
図1〜図8を参照して、近接センサ510(図1)は、検出領域内に磁界を発生させて検出対象の接近または有無を検出する誘導形の近接センサである。近接センサ510により検出される検出対象は、導電性の物体である。近接センサ510により検出される検出対象は、代表的には、鉄などの磁性金属であるが、銅またはアルミニウムなどの非磁性金属であってもよい。
近接センサ510は、仮想上の中心軸102(図3,図5)に沿って円柱状に延伸する外観を有する。近接センサ510は、検出コイル部210(図3,図5,図7,図8)と、前面カバー20(コイルケース)(図2,図3,図5,図7,図8)と、プリント基板50と、ベース金具60と、クランプ80と、リングコード70とを備える。
検出コイル部210は、検出対象の接近または有無を検出する検出部として設けられている。検出コイル部210は、磁界を発生する。検出コイル部210は、検出領域と向かい合う近接センサ510の前端側に設けられている。検出コイル部210は、コア体40と、電磁コイル36(図7,図8)と、コイルスプール30(図2,図7,図8)と、コイルピン46(図7,図8)とが組み合わさって構成されている。
コア体40は、高周波特性の良い材料、たとえばフェライトから形成されている。コア体40は、検出コイル部210のコイル特性を高めるとともに、磁束を検出領域に集中させる機能を有する。電磁コイル36は、コイル線であって、コイルスプール30に巻回されている。電磁コイル36は、中心軸102を中心に巻回されている。中心軸102は、電磁コイル36の巻回中心軸でもある。
コイルスプール30(スプール体)は、電気絶縁性を有する樹脂から形成されている。コイルスプール30は、コア体40と、コア体40に形成された環状の溝の内部に収容されている。コイルピン46は、導電性の金属から形成されている。コイルピン46は、コイルスプール30により支持されている。コイルピン46は、検出コイル部210からプリント基板50の側に向けて延出する形状を有する。コイルピン46の延びる先は、プリント基板50上に形成されたパターン50P(図8参照)に、図示しないはんだを用いて接続されている。
検出コイル部210から延出するコイルピン46の根元部には、コイルスプール30の外周上から引き出された電磁コイル36の先端37(図7,図8)が巻き付けられている。電磁コイル36とプリント基板50とは、コイルピン46および図示しないはんだを介して互いに電気的に接続されている。
検出コイル部210は、前面カバー20(コイルケース)内に収容されている。前面カバー20は、樹脂から形成されている。前面カバー20は、熱可塑性樹脂から形成されている。前面カバー20は、たとえば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の、熱可塑性樹脂部122を形成する熱可塑性樹脂との接着性がよい材料から形成されている。前面カバー20は、検出コイル部210を収容する前端カバーとして設けられている。前面カバー20は、円筒形状を有するベース金具60の前端を閉塞する。前面カバー20は、主に、検出コイル部210を外部雰囲気から遮断し、保護するために設けられている。
前面カバー20は、有底の円筒形状を有する。前面カバー20は、中心軸102を中心に円筒状に延伸し、その一方端で閉塞され、その他方端で開口された形状を有する。前面カバー20の閉塞端側の端面が、近接センサ510の検出面を構成している。
プリント基板50は、長尺状の平板形状を有する。プリント基板50は、中心軸102の軸方向を長手方向として延在している。プリント基板50には、トランジスタやダイオード、抵抗、コンデンサなど、各種の図示しない電子部品が搭載されている。この電子部品には、検出コイル部210に電気的に接続されるものも含まれる。プリント基板50には、図示しない発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)が搭載されている。発光ダイオードは、プリント基板50の表面および裏面に設けられ、検出状態を知らせるための発光部として機能する。
ベース金具60は、トランジスタやダイオード、抵抗、コンデンサ等の電子部品を収容する本体ケースとして設けられている。ベース金具60は、中心軸102の外周上で近接センサ510の外郭をなす。ベース金具60は、中心軸102を中心に円筒状に延びる形状を有する。ベース金具60は、中心軸102に沿って延びる両端で開口されている。前面カバー20は、ベース金具60の一方の開口端の内側に挿入されることにより、ベース金具60に固定されている。ベース金具60の内径は、たとえば5mmであり、好ましくは5mm以上である。
ベース金具60は、金属から形成されている。ベース金具60の外表面には、近接センサ510を外部設備に固定する際に用いられるネジが形成されている。実施の形態における近接センサ510は、いわゆるシールドタイプの近接センサであり、金属製のベース金具60が、検出コイル部210の外周上に配置されている。近接センサ510としては、金属製のベース金具60が検出コイル部210の外周上から中心軸102の軸方向にずれた位置に配置される、いわゆる非シールドタイプの近接センサに適用されてもよい。
クランプ80は、近接センサ510の後端側からベース金具60に接続される接続部材として設けられている。クランプ80は、円筒形状を有するベース金具60の後端に接続されている。クランプ80は、ベース金具60の後端の内側に挿入されている。クランプ80は、開口部82を有し、ベース金具60と一体となって、中心軸102を中心に円筒状に延びている。ベース金具60およびクランプ80により、中心軸102を中心に円筒状に延びる円筒ケース310が構成されている。円筒ケース310には、プリント基板50と、プリント基板50に搭載される電子部品とが収容されている。
プリント基板50に搭載された発光ダイオードは、クランプ80の内側に位置決めされている。クランプ80は、樹脂から形成されている。近接センサ510の外部から発光ダイオードの発光が視認可能なように、クランプ80は、透明または半透明の樹脂により形成されている。クランプ80は、たとえば、ポリアミドから形成されている。クランプ80には、ゲート81が形成されている。ゲート81は、近接センサ510の製造時、円筒ケース310内に樹脂を注入するための貫通孔として設けられている。
リングコード70は、図示しない内部導体を有し、一方の端部が円筒ケース310の内部でプリント基板50に電気的に接続されている。リングコード70は、クランプ80の開口部82に挿通され、他方の端部が円筒ケース310の後端側から引き出されている。リングコード70は、円筒ケース310の後端を閉塞する後端カバーとして設けられている。
リングコード70は、ケーブル71およびリング部材72を有する。リング部材72は、ケーブル71の端部を覆うように設けられている。リング部材72は、ポリブチレンテフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、およびポリアミド(PA)からなる群より選択される少なくとも1種を含む熱可塑性樹脂から形成されている。リングコード70の更なる詳細については、図9〜図12を参照して後述する。
円筒ケース310の内部には、樹脂充填により封止樹脂120(図7参照)が形成されている。近接センサ510においては、円筒ケース310および前面カバー20によって、検出コイル部210およびプリント基板50を収容するケース部材が構成されている。封止樹脂120は、円筒ケース310と、その前後端を閉塞する前面カバー20およびリングコード70とに囲まれたこのケース部材内の空間を満たすように設けられている。封止樹脂120は、このケース部材とリングコード70との間をこのケース部材の内側から塞ぎ、前面カバー20に収容された検出コイル部210、円筒ケース310に収容されたプリント基板50および電子部品を封止する。
(封止樹脂120)
封止樹脂120は、熱硬化性樹脂部121と、熱可塑性樹脂部122とを有する。熱硬化性樹脂部121は、熱硬化性樹脂により形成されており、検出コイル部210(コア体40、電磁コイル36、コイルスプール30)を封止している。熱可塑性樹脂部122は、上記ケース部材(円筒ケース310、リングコード70、および前面カバー20)の中の熱硬化性樹脂部121が形成されていない部分に熱可塑性樹脂により形成されており、プリント基板50および電子部品を封止している。熱可塑性樹脂部122の形成に用いられる熱可塑性樹脂としては、詳細は後述するが、硬度(shoreD)が60以下のものが選定されている。
熱硬化性樹脂部121と熱可塑性樹脂部122とは、図7,図8中の2点鎖線101で示す前面カバー20内部で境界をなすように設けられている。図8を参照して、2点鎖線101から見て矢印AR121で示す方向の側に熱硬化性樹脂部121が形成されており、2点鎖線101から見て矢印AR122で示す方向の側に熱可塑性樹脂部122が形成されている。
熱硬化性樹脂部121は、コア体40、電磁コイル36およびコイルスプール30を少なくとも封止するとともに、コイルピン46の一部(コイルピン46の根元側の部分)を封止している。コイルピン46のうちの熱硬化性樹脂部121により封止されていない部分は、熱可塑性樹脂部122により封止されている。コイルピン46のうちの電磁コイル36(コイル線)の先端37が巻き付けられている部分よりもさらに延びる先の部分(先端46Jの側)は、熱可塑性樹脂部122により封止されている(図7参照)。コイルピン46のうちのプリント基板50のパターン50Pにはんだ付けされた部分は、熱可塑性樹脂部122により封止されている。この構成に限られず、コイルピン46のうちの電磁コイル36(コイル線)の先端37が巻き付けられている部分よりもさらに延びる先の部分(先端46Jの側)が、熱硬化性樹脂部121により封止されていてもよい。この場合、コイルピン46のうちのプリント基板50のパターン50Pにはんだ付けされた部分は、熱硬化性樹脂部121により封止される。
熱可塑性樹脂部122の形成に用いられる熱可塑性樹脂としては、低温かつ低圧で成形可能なものが好ましく、たとえばポリオレフィン、ポリエステルおよびポリアミドからなる群より選ばれた少なくとも一種が挙げられる。熱可塑性樹脂部122の形成に用いられる熱可塑性樹脂には、難燃剤、有機・無機フィラー、可塑剤、着色剤、酸化防止剤などの各種の添加剤が含まれてもよい。硬度(shoreD)は、60以下である熱可塑性樹脂が用いられることで、樹脂充填時の熱と圧力とによる内部機器への応力を低減でき、反応硬化の必要も無く、工程タクトタイムを短縮することもできる。
熱可塑性樹脂部122を形成する熱可塑性樹脂を充填可能な成形機としては、その樹脂充填圧力が0.1MPa〜10MPaの範囲で任意に調整できるのもが用いられるとよい。近接センサ510の構造細部への樹脂充填性の観点からは、樹脂充填圧力は0.1MPa以上、より好ましくは1MPa以上の範囲に設定するとよい。内部部品に対するダメージ抑制の観点からは、樹脂充填圧力は、10MPa以下、より好ましくは6MPa以下の範囲に設定するとよい。
熱硬化性樹脂部121の形成に用いられる熱硬化性樹脂としては、代表的に、エポキシ樹脂が用いられる。熱硬化性樹脂部121は、検出コイル部210に作用する樹脂応力変動(応力緩和)が小さいことが好ましい。熱硬化性樹脂部121は、常温での弾性率が800MPa以上であるものが好ましい。熱硬化性樹脂部121の形成に用いられる熱硬化性樹脂には、難燃剤、有機・無機フィラー、可塑剤、着色剤、酸化防止剤などの各種添加剤が含まれても良い。
封止樹脂120は、熱硬化性樹脂部121および熱可塑性樹脂部122からなる2段の分割構造に限られず、3段以上の分割構造を有してもよい。封止樹脂120が分割構造を有する場合において、各層を形成する樹脂は、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のうちの同一種類の樹脂の組み合わせであってもよい。封止樹脂120は、上記分割構造に限られず、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれか一方により、検出コイル部210、プリント基板50および電子部品を一括して封止する構造を有してもよい。
好ましくは、熱可塑性樹脂部122の粘度は、TAインスツルメント社製のレオメーターAR2000EXを用いて測定したとき、測定時のせん断速度を10(1/s)とし、測定時の温度を190℃とすると、500mPa・s以上、10000mPa・s以下であるとよい。さらに好ましくは、熱可塑性樹脂部122の粘度は、TAインスツルメント社製のレオメーターAR2000EXを用いて測定したとき、測定時のせん断速度を10(1/s)とし、測定時の温度を190℃とすると、500mPa・s以上、8000mPa・s以下であるとよい。
(リングコード70)
図9は、リングコード70を示す第1斜視図である。図10は、リングコード70を示す第2斜視図である。図11は、リングコード70のうちのリング部材72を示す斜視図である。図12は、図10中のXII−XII線に沿った矢視断面図である。
上述のとおり、リングコード70は、ケーブル71およびリング部材72を含む。ケーブル71は、いわゆる3線式の構造を呈しており、3本の芯線73と、これらの芯線73を外側から被覆する被覆材75とを有している。図示上の便宜のため、図4〜図7においては芯線73が記載されていないが、芯線73は、実際には図12に示すように被覆材75の内部において端部75Tから端部75Sに向かって(若しくは端部75Sから端部75Tに向かって)延びている。ケーブル71は、3線式以外の構造を呈していてもよく、導体単体の太さ、数、縒り線数、および導体メッキ処理などの構成は、必要に応じて最適なものが選択される。
被覆材75は、全体として円柱形状を有しており、リング部材72が設けられる側の端部75Tからその反対側の端部75Sに向かって長手方向に延びている。被覆材75は、たとえば、ポリ塩化ビニル(PVC)を含む樹脂により形成されている。被覆材75の硬度(shoreA)は、85以下であることが好ましい。
硬度(shoreA)が85以下の被覆材75を有するケーブル71(いわゆる軟質ケーブル)が近接センサ510に用いられることで、近接センサ510を設置する際の配線の取り回し性を向上させることができる。硬度(shoreA)が85以下の被覆材75を有するケーブル71は、ユーザビリティを向上させることが可能となる。
3本の芯線73は、内部導体73aおよびこれを被覆する絶縁体73b(内部被覆)をそれぞれ有している。絶縁体73bは、必須の構成では無く、必要に応じて設けられるとよい。リングコード70の長手方向において、芯線73は、被覆材75よりも長い長さを有している。
芯線73のうちの被覆材75の端部75T側に延びている部分は、端部75Tからリング部材72を貫通してプリント基板50に向かってさらに延びており、その延びる先において内部導体73aはプリント基板50に接続されている(図6参照)。芯線73のうちの被覆材75の端部75S側に延びている部分は、図示しない制御機器などに接続される部位である(図1参照)。
リング部材72は、円筒ケース310内に設けられる封止樹脂120(熱可塑性樹脂部122)と、ケーブル71(被覆材75)との間の接合性を確保する。リング部材72は、熱可塑性樹脂を用いた射出成形により、ケーブル71(被覆材75)の端部75Tを覆うように形成され、ケーブル71(被覆材75)の端部75Tとリング部材72とは互いに溶着されている。
被覆材75の長手方向においてリング部材72が被覆材75を覆っている領域の長さL10(図12参照)は、接着面積を拡大し、ケーブル側面からの水浸入を防止する観点から、被覆材75の端部75Tから2mm以上であるとよい。リング部材72が被覆材75の側面を覆っている部分の厚さTH(図12参照)は、樹脂の成形性の観点から0.5mm以上であるとよく、さらに好ましくは成形歩留まり率を高める観点から0.6mm以上であるとよい。
リング部材72は、円筒ケース310の中に樹脂を充填する際(詳細は図21,図22を参照して後述する)、被覆材75の内表面と芯線73(絶縁体73b)の外表面との間に端部75Tの側から水が入り込んでしまうことを抑制または防止する。リング部材72は、近接センサ510の使用開始後に、被覆材75の外表面とリング部材72の内表面との間をリング部材72の端部72Sの側から侵入してきた水が、被覆材75の内表面と芯線73(絶縁体73b)の外表面との間にさらに入り込むことも抑制または防止する。
リング部材72は、全体として有底の円筒形状を有する。リング部材72は、ケーブル71の周囲において円筒状に延伸し、その円筒状に形成された部分は、一方の端部72Tで閉塞され、他方の端部72Sで開口された形状を有する。リング部材72がケーブル71の端部75Tを覆うように形成された状態では、ケーブル71の長手方向において、被覆材75の端部75Tは、リング部材72の端部72Tとリング部材72の端部72Sとの間に位置している(図12参照)。
詳細は後述されるが、リング部材72は、射出成形のための成形ゲート74Q(図13参照)が被覆材75の長手方向において被覆材75の端部75Tを基準として−1.5mm以上+1.5mm以下の範囲内に位置して形成されたものである。好適には、リング部材72は、射出成形のための成形ゲート74Q(図13参照)が被覆材75の長手方向において被覆材75の端部75Tを基準として−1.0mm以上+1.0mm以下の範囲内に位置して形成されたものである。
図11を参照して、上述のとおり、ケーブル71(被覆材75)の端部75Tとリング部材72とは互いに溶着されている。リング部材72の内表面は、側面72Uおよび端面72Vを含む。側面72Uは、環状の形状を有し、ケーブル71(被覆材75)の外表面に接合されている。端面72Vは、ケーブル71(被覆材75)の端部75Tに接合されている。リング部材72の端部72T側の部分には、3つの貫通孔72Wが形成されている。これらの貫通孔72Wは、射出成形の際に芯線73の存在によって形成された部位である。
リング部材72の外表面は、クランプ80の開口部82(クランプ80の開口部82寄りの内表面の形状)に対応する形状を有している(図3〜図6参照)。近接センサ510が製造される際(詳細は図20および図21を参照して後述する)、リング部材72はクランプ80の内側に配置される。ケーブル71およびリング部材72によって、クランプ80の開口部82が閉塞される。
リング部材72の外表面は、成形痕74および3つの凹部76,78M,78Nを有する。成形痕74は、リング部材72の外表面の一部が円柱状に凹むようにして形成されており、凹部76よりも端部72T寄りに位置している。成形痕74は、リング部材72を射出成形により形成する際に用いられた成形ゲート74Q(図13参照)の位置に対応する位置に形成されている。
図12を参照して、成形痕74の直径はたとえば1.0mmである。この直径は、成形ゲート74Q(図13参照)の直径DD(図13参照)の値に対応している。被覆材75(ケーブル71)の長手方向において、成形ゲート74Q(図13参照)の中心の位置と被覆材75の端部75Tとの間の距離は、たとえば+0.4mmである。被覆材75(ケーブル71)の長手方向において、成形痕74の中心の位置と被覆材75の端部75Tとの間の距離LL1も、たとえば+0.4mmである。ここでは、端部75Tよりも端部72T(プリント基板50)側の位置を−とし、端部75Tよりも端部72S(被覆材75)側の位置を+としている。
上述のとおり、リング部材72は、射出成形のための成形ゲート74Q(図13参照)が被覆材75の長手方向において被覆材75の端部75Tを基準として−1.5mm以上+1.5mm以下の範囲内に位置して形成されたものである。当該構成によれば、成形痕74は、被覆材75の端部75Tを基準とすると、たとえば被覆材75(ケーブル71)の長手方向において距離LL1の値が−1.5mm以上+1.5mm以下の範囲内となるように形成される。
好適には、リング部材72は、射出成形のための成形ゲート74Q(図13参照)が被覆材75の長手方向において被覆材75の端部75Tを基準として−1.0mm以上+1.0mm以下の範囲内に位置して形成されたものである。当該構成によれば、成形痕74は、被覆材75の端部75Tを基準とすると、たとえば被覆材75(ケーブル71)の長手方向において距離LL1の値が−1.0mm以上+1.0mm以下の範囲内となるように形成される。
凹部76,78M,78Nは、リング部材72の外表面の一部が凹むようにして形成されており、被覆材75の円周方向に沿って延びる扇状の形状を有している。凹部76,78M,78Nは、被覆材75の円周方向に間隔を空けて形成されている。凹部76,78M,78Nは、射出成形の際にケーブル71(被覆材75)が金型の凸部(後述する凸部76Q,79M,79N)に支持されることにより形成されている。被覆材75の長手方向において、凹部76は、成形痕74よりも端部72S寄りに位置し、成形痕74から凹部76を見た場合、凹部76は、芯線73がプリント基板50(電子部品)に向かって延びている方向の側とは反対側に位置している。凹部76は、リングコード70の成形金型(金型79)に対する離型前の状態においては、射出成形の際に用いられた成形ゲート74Q(図13参照)の射出口の位置よりも、芯線73がプリント基板50(電子部品)に向かって延びている方向の側とは反対側に位置しているものである。
本実施の形態の凹部76は、凹部76を被覆材75の長手方向に沿って成形痕74に向かって仮想的に投影した場合に、成形痕74に重なる部分を有している(図11参照)。換言すると、リング部材72の外表面の周方向において凹部76が形成されている角度範囲は、リング部材72の外表面の周方向において成形痕74が形成されている角度範囲に重なる部分を有している。凹部76は、凹部76を射出成形の際に用いられた成形ゲート74Q(図13参照)の射出口に向かって仮想的に投影した場合(離型前の状態)には、当該射出口に重なる部分を有しているものである。当該構成の作用効果については図16を参照して後述する。
図13を参照して、ケーブル71の端部75Tにリング部材72が形成される場合には、金型79が準備される。金型79は、上型および下型などの複数の部位から構成され、被覆材75の端部75T側の部分を囲うように配置される。金型79の内表面は、リング部材72(図11,図12参照)の外表面に対応する形状を有する。金型79の内表面79Lは、リング部材72の端部72Tを形成する部位である。金型79の内表面79Kは、リング部材72の端部72Sを形成する部位である。
金型79の内表面は、さらに、リング部材72の凹部76を形成するための凸部76Qと、リング部材72の凹部78M,78Nを形成するための2つの凸部79M,79N(図16参照)とを含む。金型79の内表面79Sが被覆材75の外表面を挟持し、金型79の内表面79Tが芯線73の外表面を挟持した際、これらの凸部は、内表面79Lと内表面79Kとの間において被覆材75を支持する支持構造として機能する。これらの凸部(支持構造)は、成形樹脂とケーブル端部との溶融接合性を向上させる位置(樹脂の流動を妨げない位置)として、成形ゲート74Qに対して、ケーブル71の本体側(被覆材75の側)に配置されているとよい。これらの凸部(支持構造)は、必須の構成ではなく、必要に応じて設けられるとよい。
この状態(図13に示す状態)で、被覆材75(ケーブル71)の長手方向において、成形ゲート74Qの中心の位置と被覆材75の端部75Tとの間の距離LL2は、たとえば0.4mmである。成形ゲート74Qは、被覆材75の端部75Tを基準とすると、被覆材75(ケーブル71)の長手方向において距離LL2の値が−1.5mm以上+1.5mm以下の範囲内となるように配置される。好適には、成形ゲート74Qは、被覆材75の端部75Tを基準とすると、被覆材75(ケーブル71)の長手方向において距離LL2の値が−1.0mm以上+1.0mm以下の範囲内となるように配置される。
成形ゲート74Qの直径DDは、たとえば1.0mmである。成形ゲート74Qの直径DDは、ケーブルの溶融接合性および位置ズレ防止の観点に加えて、ランナカット性および充填圧力損失(成形性)の観点から、φ0.5mm(もしくは、同等のスクエア形状)以上、φ1.5mm(もしくは、同等のスクエア形状)以下であるとよい。成形ゲート74Qの直径DDがφ0.5mm以上であると、ゲート部での成形圧力損失が低くなり、高い品質を有する者が得られる。成形ゲート74Qの直径DDがφ1.5mm以下であると、ランナカット性が向上し、生産効率も向上する。
成形ゲート74Qを通して、高温高圧の熱可塑性樹脂が金型79内に充填される。熱可塑性樹脂は、被覆材75の長手方向に対して直交する方向に充填される。成形機による熱可塑性樹脂の充填条件は、たとえば、溶融温度が200℃以上305℃以下であり、射出圧は5MPa以上120MPa以下であるとよい。
樹脂温度が200℃以上であると、十分な溶融接合力および耐水性が得られる。樹脂温度が305℃以下であると、ケーブルの熱変形量も小さくなり品質のより高いものが得られる。射出圧が5MPa以上であると、成形流路での圧力損失が少なくなり、溶融接合に必要な圧力を確保できる。射出圧が120MPa以下であると、ケーブルの位置ズレを確実に抑制することができる。
リング部材72の形成に用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリブチレンテフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、およびポリアミド(PA)からなる群より選択される少なくとも1種を含むものが採用されるとよい。当該樹脂はアロイ化されていてもよく、各種添加剤を含んでいてもよい。
図14および図15を参照して、仮に、距離LL2の値が−1.5mm以上+1.5mm以下の範囲内とならないように成形ゲート74Qが配置されている場合について説明する。図14は、成形ゲート74Qおよび被覆材75の端部75Tの相対位置が上記範囲内に含まれず、成形ゲート74Qが内表面79Kの方(被覆材75の方)に寄って配置されている場合を説明するための断面図である。図15は、成形ゲート74Qおよび被覆材75の端部75Tの相対位置が上記範囲内に含まれず、成形ゲート74Qが内表面79Lの方(芯線73の方)に寄って配置されている場合を説明するための断面図である。
図14を参照して、成形ゲート74Qが被覆材75の方に寄る形態で配置されている場合、成形ゲート74Qから充填された樹脂は、被覆材75の外表面に強く接触した後、被覆材75の端部75Tに供給される。成形ゲート74Qから充填された樹脂の温度は、成形ゲート74Qから離れた後、急峻に低下する。端部75Tに到達した樹脂は、端部75Tの表面を十分に溶融させることができず、その樹脂と端部75Tとの間の強い接着力を得ることが困難となる。ケーブル71の作製後に熱サイクルが端部75Tに繰り返し作用した場合、端部75Tにおいて被覆材75とリング部材72とが接合している部分の界面が熱収縮の影響を受けて開いてしまい、耐水性が低下しやすくなる。
図15を参照して、成形ゲート74Qが芯線73の方に寄る形態で配置されている場合、成形ゲート74Qから充填された樹脂は、被覆材75の長手方向において被覆材75の端部75Tに強く接触する。被覆材75は、端部75Tを通して被覆材75の長手方向の流動応力(図15中の左方向に向かう力)を強く受け、被覆材75の位置は同方向にずれやすくなる。被覆材75の位置が図中の左方向にずれた場合、芯線73は金型79の内表面79Tにより挟み込まれているため、芯線73の絶縁体73bが延びて内部導体73aが露出してしまう可能性もある。
図13を再び参照して、図14および図15に示す形態に対して、本実施の形態では、距離LL2の値が−1.5mm以上+1.5mm以下の範囲内となるように構成されている。成形ゲート74Qから充填された樹脂は、被覆材75の端部75Tに沿うように流れるため、端部75Tに対して被覆材75の長手方向の流動応力が強く作用するようなことはなく、端部75Tの表面を十分に溶融させることも可能となる。被覆材75の位置ズレもほとんど発生せず、充填された樹脂と端部75Tとの間の強い接着力を得ることが可能となる。
端部75Tに対して被覆材75の長手方向の流動応力が強く作用するようなことはないため、硬度(shoreA)が85以下の被覆材75を有するケーブル71(いわゆる軟質ケーブル)を用いる場合であっても、被覆材75の位置ズレもほとんど発生せず、充填された樹脂と端部75Tとの間の強い接着力を得ることが可能となる。上述のとおり、硬度(shoreA)が85以下の被覆材75を有するケーブル71(いわゆる軟質ケーブル)が近接センサ510に用いられることで、近接センサ510を設置する際の配線の取り回し性を向上させることができる。硬度(shoreA)が85以下の被覆材75を有するケーブル71は、ユーザビリティを向上させることが可能となる。
図16は、金型79内に樹脂が充填される時の様子を模式的に示す斜視図である。図16では金型79の成形面(内表面)を図示している。成形ゲート74Qから金型79内に樹脂が充填された後、樹脂は、被覆材75の外表面に接触して広がる。リング部材72の凹部76を形成するための凸部76Qは、凸部76Qを被覆材75の長手方向に沿って成形ゲート74Qに向かって仮想的に投影した場合に、成形ゲート74Qの吐出口に重なる部分を有している。
成形ゲート74Qから金型79内に充填された樹脂は、凸部76Qの存在によって端部75Tから遠ざかる方向に流れることが抑制され(堰き止められ)、端部75Tの側に向かって積極的に供給されることとなる。凸部79M,79Nも、端部75T側に供給された樹脂を、端部75Tから遠ざかる方向に流れることを妨げる。端部75Tには、高温高圧の樹脂が供給され易くなっている。被覆材75の長手方向において被覆材75の位置ズレもほとんど発生せず、充填された樹脂と端部75Tとの間により強い接着力を得ることが可能となっている。当該構成により形成された凹部76は、凹部76を被覆材75の長手方向に沿って成形痕74に向かって仮想的に投影した場合に、成形痕74に重なる部分を有することとなる。
(製造方法)
図17から図22を参照して、近接センサ510(図1参照)の製造方法について説明する。図17を参照して、まず、検出コイル部210およびプリント基板50からなるサブアセンブリ116を組み立てる。具体的には、コア体40と、電磁コイル36が巻回されたコイルスプール30とを組み合わせるとともに、コア体40にプリント基板50を接続する。コイルピン46の先端をプリント基板50の表面(図8中のパターン50P)上にはんだ付けすることによって、電磁コイル36とプリント基板50とを電気的に接続する。
図18を参照して、次に、サブアセンブリ116に前面カバー20を組み付ける。具体的には、まず、前面カバー20に1次注型樹脂として熱硬化性樹脂を充填する。前面カバー20内に、検出対象の接近または有無を検出する検出コイル部210の側からサブアセンブリ116を挿入配置することによって、検出コイル部210を前面カバー20内の熱硬化性樹脂に浸漬する。加熱により、前面カバー20内の熱硬化性樹脂を硬化させる。
図19を参照して、次に、リングコード70をサブアセンブリ116に組み付ける。具体的には、リングコード70のケーブルの先端(内部導体73a)を、プリント基板50の表面上にはんだ付けする。図20を参照して、次に、前面カバー20にベース金具60を組み付ける。具体的には、ベース金具60の前端側からリングコード70およびプリント基板50を順に通し、ベース金具60の前端側の内側に前面カバー20を圧入する。
図21を参照して、次に、ベース金具60にクランプ80を組み付ける。具体的には、クランプ80の前端側の開口部82よりリングコード70を通し、ベース金具60の後端側の内側にクランプ80を圧入する。その後、打痕、加締め、接着または溶着などの固定手段を用いて、ベース金具60とクランプ80とを固定する。アセンブリ117が得られる。ベース金具60とクランプ80とを固定する工程は、この後に続く2次樹脂充填工程の後に実施してもよい。
図22を参照して、次に、ベース金具60およびクランプ80からなる円筒ケース310内に、2次充填樹脂としての熱可塑性樹脂を充填する。より具体的には、先の工程で得られたアセンブリ117を、位置決め用治具を用いて金型にセッティングする。ゲート81(図1〜図4等参照)を通じて、高温の樹脂を円筒ケース310内に注入する。熱可塑性樹脂を冷却固化させることにより、熱可塑性樹脂部122が形成される。円筒ケース310内のプリント基板50や各種の電子部品は、樹脂封止される。以上の工程により、図1中の近接センサ510が完成する。
(作用・効果)
近接センサ510においては、検出コイル部210が熱硬化性樹脂部121によって封止される。熱硬化性樹脂部121としては、エポキシ樹脂などが用いられる。検出コイル部210のコア体40は、フェライト等の焼成体を含んでいる。仮に、検出コイル部210が熱可塑性樹脂部によって封止されているとすると、検出コイル部210を構成しているコア体40および電磁コイル36は、外部から受ける応力が経時的に変化しやすくなる。外部から受ける応力が増減すると、コア体40および電磁コイル36が形成する磁界の強度(磁束密度)が不安定になりやすい。具体的には、コア体40に加わる応力が変化すると、磁気弾性結合(磁歪)の影響により、コア体40の磁気特性が変化する。コア体40に加わる応力が変化すると、コア体40を構成する磁区が変化し、これに伴い磁束が変化する。コア体40に加わる応力が変化すると、コイル径やコイル線間距離が変化することもある。この場合、コイルのL値が変化したり、コイルのC値が変化したりする。これらの特性変動は、近接センサの検出感度の変動を招く。
実施の形態において、検出コイル部210を封止する樹脂として熱硬化性樹脂を用いると、熱可塑性樹脂を用いる場合に比べて、検出コイル部210に作用する応力が長期的に安定する。たとえば、近接センサ510の製造直後、近接センサ510の検査後、近接センサ510の製品出荷後、近接センサ510の使用時の各時点において、検出コイル部210が熱硬化性樹脂部121から受ける応力は、ほとんど変化しない。近接センサ510は、検出対象の接近または有無を安定した感度で検出することができる。
一方で、プリント基板50などは、熱可塑性樹脂部122によって封止される。熱可塑性樹脂部122としては、硬度(shoreD)が60以下の樹脂が用いられる。硬度が低い熱可塑性樹脂を用いて封止する場合、封止後に電子機器の内部に残留する応力を緩和することができる。熱可塑性樹脂部122を用いてプリント基板50を封止したとしても、封止後にプリント基板50に作用する応力は、熱硬化性樹脂部121を用いてプリント基板50を封止する場合に比べて小さくなる。近接センサ510によれば、プリント基板50およびその上に実装された各電子部品に作用する応力を緩和することができる。
近接センサ510においては、熱硬化性樹脂部121および熱可塑性樹脂部122を用いてその内部が封止される。近接センサ510は、近接センサの内部のすべてを熱硬化性樹脂部を用いて封止する場合に比べて、短い製造時間で製造されることができる。
上述のとおり、好ましくは、熱可塑性樹脂部122の粘度は、TAインスツルメント社製のレオメーターAR2000EXを用いて測定したとき、測定時のせん断速度を10(1/s)とし、測定時の温度を190℃とすると、500mPa・s以上、10000mPa・s以下であるとよい。さらに好ましくは、熱可塑性樹脂部122の粘度は、TAインスツルメント社製のレオメーターAR2000EXを用いて測定したとき、測定時のせん断速度を10(1/s)とし、測定時の温度を190℃とすると、500mPa・s以上、8000mPa・s以下であるとよい。これらの構成によれば、熱硬化性樹脂部121と熱可塑性樹脂部122との間の界面において、熱可塑性樹脂部122を熱硬化性樹脂部121に良好に接着することが可能となる。
図23を参照して、上述のとおり、近接センサ510に用いられるリングコード70は、その製造時において成形ゲート74Qの中心の位置と被覆材75の端部75Tとの間の距離LL2(図13参照)が−1.5mm以上+1.5mm以下の範囲内となるように構成されている。これにより、成形痕74の中心の位置と被覆材75の端部75Tとの間の距離LL1(図12参照)は、たとえば−1.5mm以上+1.5mm以下の範囲内となるように形成されている。リングコード70を構成しているケーブル71(被覆材75)およびリング部材72は、被覆材75の端部75Tにおいて十分な溶融接合力を持って溶着されている。
リングコード70は、被覆材75の端部75Tにおいて強力な接合が実現されており、被覆材75の側面の外表面およびリング部材72の内表面同士が接合された部分(図23中の白矢印に示す部分)と、リング部材72の端部72Tおよび熱可塑性樹脂部122同士が接合された部分(図23中の黒矢印に示す部分)との間に形成されるパスを通して水分が侵入する(出入りする)ことが十分に抑制または防止されている。
図24を参照して、被覆材75の端部75Tにおいて十分な溶融接合力を持って溶着された接合面75Vによれば、この接合面75Vを介して形成されるたとえば図24中の点線で示すようなパスを通して水分が侵入する(出入りする)ことを十分に抑制可能となる。したがって、このようなリングコード70を備えた近接センサ510は、高い耐水性を実現することが可能となっている。
近接センサ510においては、ケース部材(円筒ケース310、リングコード70、および前面カバー20)の中に熱可塑性樹脂部122が形成されている。熱可塑性樹脂部122の形成には、たとえばポリオレフィン、ポリエステルおよびポリアミドからなる群より選ばれた少なくとも一種を含む柔らかい熱可塑性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂部122が充填樹脂として採用される場合であっても、リングコード70のリング部材72は、円筒ケース310内に設けられる封止樹脂120(熱可塑性樹脂部122)と、ケーブル71(被覆材75)との間に十分な接合性(耐水性)を確保することができる。
硬度(shoreA)が85以下の被覆材75を有するケーブル71(いわゆる軟質ケーブル)が用いられる場合であっても、被覆材75の端部75Tを基準として被覆材75(ケーブル71)の長手方向において成形ゲート74Q(図13参照)の位置が−1.5mm以上+1.5mm以下の範囲内となるように形成されることで、ケーブル71は、高い耐水性を発揮することができる。近接センサ510を設置する際の配線の取り回し性を向上させることができる。硬度(shoreA)が85以下の被覆材75を有するケーブル71は、ユーザビリティを向上させることが可能となる。
[実験例1]
図25を参照して、実施の形態に関して行なった実験例1について説明する。当該実験例は、比較例1A,2Aおよび実施例1A〜7Aを含む。当該実験例では、複数種類のリングコードを準備した。リングコードのリング部材は、いずれも0.5mmの直径を有する成形ゲートから金型内に熱可塑性樹脂が充填されて形成されたものである。リングコードのリング部材を形成する充填樹脂の温度は、いずれも290℃に設定され、充填圧力(射出圧)はいずれも20MPaに設定されたものである。リングコードのケーブル71(被覆材)の硬度(shoreA)は、いずれも75である。図25中におけるゲート位置とは、端部75T(図12,図13参照)よりも端部72T(プリント基板50)側の位置を−とし、端部75Tよりも端部72S(被覆材75)側の位置を+としたものである。
比較例1A,2Aおよび実施例1A〜7Aのそれぞれにおいて、リングコードの端部75Tにおける溶融接合性を評価するとともに、被覆材75の位置ズレの程度を評価した。溶融接合性の評価は、A,B,Cの3段階とした。リング部材72の形成後に得られたリングコード70に対して引張試験を実施し、ケーブル71の端部(端部75T)の全周に渡って凝集破壊形態が見られた場合を評価Aとした(凝集破壊形態は、良好な溶融接合が形成されている場合に発現するものである)。ケーブル71の端部(端部75T)に凝集破壊と界面剥離との双方の形態が見られた場合を評価Bとした。ケーブル71の端部(端部75T)に界面剥離形態が見られた場合を評価Cとした(界面剥離形態は、良好な溶融接合が形成されていない場合に発現するものである)。
ケーブルの位置ズレの評価は、A,B,Cの3段階とした。具体的には、位置ズレに起因して絶縁体73bが引張したとしても内部導体73aの露出が発生せず、ケーブル71の端部75Tにおける溶融接合性の低下も見られず、耐水検査(IP67試験)で絶縁抵抗値>50MΩを示したものを評価Aとした。位置ズレに起因して絶縁体73bが引張して内部導体73aの露出が発生し、ケーブル71の端部75Tにおける溶融接合性の低下が見られ、耐水検査(IP67試験)で絶縁抵抗値>50MΩを示したものを評価Bとした。位置ズレに起因して絶縁体73bが引張して内部導体73aの露出が発生し、ケーブル71の端部75Tにおける溶融接合性の低下が見られ、耐水検査(IP67試験)で絶縁抵抗値≦50MΩを示したものを評価Cとした。
比較例1Aでは、ゲート位置(図13における距離LL2)の値が−2.0mmに設定されて形成されたリングコード70が用いられ、成形痕74の位置(図12における距離LL1)の値は−2.0mmである。引張試験後の溶融接合性としては評価Aが得られ、ケーブルの位置ずれとしては評価Cが得られた。比較例1Aでのゲート位置は、被覆材75の端部75Tを溶融させることはできるものの、端部75Tに対する流動応力が大きく、位置ずれが発生し、耐水性も低下したものと考えられる。
実施例1Aでは、ゲート位置(図13における距離LL2)の値が−1.5mmに設定されて形成されたリングコード70が用いられ、成形痕74の位置(図12における距離LL1)の値は−1.5mmである。引張試験後の溶融接合性としては評価Aが得られ、ケーブルの位置ずれとしては評価Bが得られた。実施例1Aでのゲート位置は、被覆材75の端部75Tを溶融させることが可能であり、所定の耐水性が得られることがわかる。
実施例2A,3A,4A,5A,6Aでは、ゲート位置(図13における距離LL2)の値がそれぞれ−1.0mm,−0.5mm,0mm,0.5mm,1.0mmに設定されて形成されたリングコード70が用いられ、成形痕74の位置(図12における距離LL1)の値はそれぞれ−1.0mm,−0.5mm,0mm,0.5mm,1.0mmである。引張試験後の溶融接合性としてはいずれも評価Aが得られ、ケーブルの位置ずれとしてもいずれも評価Aが得られた。実施例2A,3A,4A,5A,6Aでのゲート位置は、被覆材75の端部75Tを十分に溶融させることができ、端部75Tに対する流動応力も小さく、位置ずれがほとんど発生せず、耐水性も得られていることがわかる。
実施例7Aでは、ゲート位置(図13における距離LL2)の値が1.5mmに設定されて形成されたリングコード70が用いられ、成形痕74の位置(図12における距離LL1)の値は1.5mmである。引張試験後の溶融接合性としては評価Bが得られ、ケーブルの位置ずれとしては評価Aが得られた。実施例7Aでのゲート位置は、端部75Tに対する流動応力は小さく、位置ずれも発生せず、所定の耐水性が得られたことがわかる。
比較例2Aでは、ゲート位置(図13における距離LL2)の値が2.0mmに設定されて形成されたリングコード70が用いられ、成形痕74の位置(図12における距離LL1)の値は2.0mmである。引張試験後の溶融接合性としては評価Cが得られ、ケーブルの位置ずれとしては評価Aが得られた。比較例2Aでのゲート位置は、被覆材75の端部75Tを溶融させることはできなかったものの、端部75Tに対する流動応力は小さく、位置ずれは発生しなかったことがわかる。
実験例1の結果から、製造時において成形ゲート74Qの中心の位置と被覆材75の端部75Tとの間の距離LL2(図13参照)が−1.5mm以上+1.5mm以下の範囲内となるように構成され、成形痕74の中心の位置と被覆材75の端部75Tとの間の距離LL1(図12参照)が−1.5mm以上+1.5mm以下の範囲内となるように形成されたリングコード70が用いられるとよいことがわかる。距離LL2(図13参照)が−1.0mm以上+1.0mm以下の範囲内となるように構成することで、被覆材75の端部75Tを十分に溶融させることができ、端部75Tに対する流動応力も小さく、位置ずれがほとんど発生せず、耐水性も得られるといったこれら効果のより高いものが得られることがわかる。
[実験例2]
図26を参照して、実施の形態に関して行なった実験例2について説明する。当該実験例は、比較例1B,2Bおよび実施例1B〜7Bを含む。当該実験例では、上述の実験例1とは異なり、リングコードのリング部材は、いずれも1.5mmの直径を有する成形ゲートから金型内に熱可塑性樹脂が充填されて形成されたものである。実験例2のその他の実験の前提となる条件は、上述の実験例1と同様である。
比較例1Bでは、引張試験後の溶融接合性としては評価Aが得られ、ケーブルの位置ずれとしては評価Cが得られた。比較例1Bでのゲート位置は、被覆材75の端部75Tを溶融させることはできるものの、端部75Tに対する流動応力が大きく、位置ずれが発生し、耐水性も低下したものと考えられる。
実施例1Bでは、引張試験後の溶融接合性としては評価Aが得られ、ケーブルの位置ずれとしては評価Bが得られた。実施例1Bでのゲート位置は、被覆材75の端部75Tを溶融させること可能であり、所定の耐水性が得られることがわかる。
実施例2B,3B,4B,5B,6Bでは、引張試験後の溶融接合性としてはいずれも評価Aが得られ、ケーブルの位置ずれとしてもいずれも評価Aが得られた。実施例2B,3B,4B,5B,6Bでのゲート位置は、被覆材75の端部75Tを十分に溶融させることができ、端部75Tに対する流動応力も小さく、位置ずれがほとんど発生せず、耐水性も得られていることがわかる。
実施例7Bでは、引張試験後の溶融接合性としては評価Bが得られ、ケーブルの位置ずれとしては評価Aが得られた。実施例7Bでのゲート位置は、端部75Tに対する流動応力は小さく、位置ずれも発生せず、所定の耐水性が得られたことがわかる。
比較例2Bでは、引張試験後の溶融接合性としては評価Cが得られ、ケーブルの位置ずれとしては評価Aが得られた。比較例2Bでのゲート位置は、被覆材75の端部75Tを溶融させることはできなかったものの、端部75Tに対する流動応力は小さく、位置ずれは発生しなかったことがわかる。
実験例2の結果からも、製造時において成形ゲート74Qの中心の位置と被覆材75の端部75Tとの間の距離LL2(図13参照)が−1.5mm以上+1.5mm以下の範囲内となるように構成され、成形痕74の中心の位置と被覆材75の端部75Tとの間の距離LL1(図12参照)が−1.5mm以上+1.5mm以下の範囲内となるように形成されたリングコード70が用いられるとよいことがわかる。距離LL2(図13参照)が−1.0mm以上+1.0mm以下の範囲内となるように構成することで、被覆材75の端部75Tを十分に溶融させることができ、端部75Tに対する流動応力も小さく、位置ずれがほとんど発生せず、耐水性も得られるといったこれら効果のより高いものが得られることがわかる。
上述の実施の形態は、電子機器の一例として近接センサに基づいて説明したが、本発明は近接センサに限られない。本発明は、光電センサ、ファイバセンサ、または、スマートセンサなどに適用してもよい。光電センサは、発光源から出射される光の様々な性質を利用して、物体の有無や表面状態の変化などを検出する。光電センサの検出部は、発光源として発光ダイオードまたは半導体レーザーなどを含む。ファイバセンサは、光電センサに光学ファイバを組み合わせたセンサである。ファイバセンサの検出部も、発光源として発光ダイオードまたは半導体レーザーなどを含む。スマートセンサは、近接センサや光電センサに、解析、情報処理の能力が付加されたセンサである。スマートセンサの検出部は、近接センサが基本構成として用いられる場合、上記の実施の形態における検出コイル部に相当し、光電センサが基本構成として用いられる場合、発光源として発光ダイオードまたは半導体レーザーなどを含む。
以上、本発明に基づいた実施の形態および実施例について説明したが、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。