JP2014171413A - トランスジェニック非ヒト哺乳動物 - Google Patents

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Abstract

【課題】新たな特性を有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物を提供する。
【解決手段】Akt(セリン/スレオニンキナーゼ)を活性化しない変異ホスホイノシチド−3キナーゼのp85調節サブユニットβをコードする遺伝子が非ヒト哺乳動物に導入されてなる、長寿命化されたトランスジェニック非ヒト哺乳動物が提供される。当該p85調節サブユニットβとして、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質が挙げられる。非ヒト哺乳動物はげっ歯類、例えばマウスであることが好ましい。長寿命化に加えて巨大化したものであってもよい。
【選択図】図4

Description

本発明は、トランスジェニック非ヒト哺乳動物に関し、さらに詳細には、Akt(セリン/スレオニンキナーゼ)を活性化しない変異ホスホイノシチド−3キナーゼのp85調節サブユニットβをコードする遺伝子が導入されてなる、長寿命化されたトランスジェニック非ヒト哺乳動物に関する。
ホスホイノシチド−3キナーゼ(以下、「PI3K」と略記することがある)は、イノシトールリン脂質のイノシトール環3位のヒドロキシル基をリン酸化する酵素である。細胞膜の構成成分の1つであるイノシトールリン脂質は、PI3K等のキナーゼの作用によってリン酸化され、Akt(セリン/スレオニンキナーゼ)を活性化する(PI3K−Akt経路)。すなわち、PI3KはAkt(セリン/スレオニンキナーゼ)を活性化する作用を有する。
PI3Kは、p110触媒サブユニット(α、β、δ)とp85調節サブユニット(α、β)から構成されている。p85調節サブユニットのうち、αサブユニットについてはこれまでに詳細な研究がなされているが、βサブユニット(以下、「p85β」と略記することがある)については不明な点が多い。
Akt(セリン/スレオニンキナーゼ)を活性化しない変異PI3Kが知られている。例えば、特許文献1には、p85βにアミノ酸置換による変異が導入された、Akt(セリン/スレオニンキナーゼ)を活性化しない変異PI3K、及び、当該変異が導入されたp85βをコードする遺伝子(cDNA)が開示されている。そして、p85βを発現している細胞に前記アミノ酸置換による変異を導入することにより、Akt(セリン/スレオニンキナーゼ)を活性化しない変異PI3Kを発現する細胞を作出する技術が記載されている。
国際公開第2011/111595号
上記のように、細胞レベルにおいて、前記変異PI3Kの細胞に対する作用等が調べられている。しかし、生物個体レベルにおいては、前記変異PI3Kの作用等は明らかでない。そこで本発明は、前記変異PI3Kやその遺伝子を生物個体に適用することを包含する新しい技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、Akt(セリン/スレオニンキナーゼ)を活性化しない変異ホスホイノシチド−3キナーゼのp85調節サブユニットβ(変異p85β)をコードするDNAをベクターに組み込み、当該ベクターをマウスの受精卵に導入することにより、新規のトランスジェニックマウスを作製した。そして、当該トランスジェニックマウスが、通常のマウスと比較して長い寿命を有しており、長寿命化の特性を獲得していることを見出した。なお、サーチェイン遺伝子を除き、受容体以外の遺伝子導入で哺乳動物の長寿命化に成功した例は、過去に見当たらない。
上記した知見に基づいて完成された本発明の1つの様相は、Akt(セリン/スレオニンキナーゼ)を活性化しない変異ホスホイノシチド−3キナーゼのp85調節サブユニットβをコードする遺伝子が非ヒト哺乳動物に導入されてなる、長寿命化されたトランスジェニック非ヒト哺乳動物である。
本発明において「長寿命化された」とは、通常の非ヒト哺乳動物と比較して寿命が10%以上長いことを指す。
本発明における「Akt(セリン/スレオニンキナーゼ)を活性化しない変異ホスホイノシチド−3キナーゼ」には、Akt(セリン/スレオニンキナーゼ)の活性化が全く観察されない変異ホスホイノシチド−3キナーゼの他、Akt(セリン/スレオニンキナーゼ)の活性化が極めて弱く、活性化は実質的に起こっていないと判断される変異ホスホイノシチド−3キナーゼも含まれる。
好ましくは、前記遺伝子は、下記(i)〜(iii)のいずれかの蛋白質をコードする遺伝子である。
(i)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつAkt(セリン/スレオニンキナーゼ)を活性化しない変異ホスホイノシチド−3キナーゼのp85調節サブユニットβとしての活性を有する蛋白質、
(iii)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつAkt(セリン/スレオニンキナーゼ)を活性化しない変異ホスホイノシチド−3キナーゼのp85調節サブユニットβとしての活性を有する蛋白質。
配列番号2で表されるアミノ酸配列は、PC12細胞のp85調節サブユニットβのアミノ酸配列(配列番号4)における660番目のリジンがアルギニンに置換されたものに相当する。配列番号2で表されるアミノ酸配列は、特許文献1に記載されている。
好ましくは、前記遺伝子は、下記(iv)又は(v)のDNAからなる遺伝子である。
(iv)配列番号1で表される塩基配列からなるDNA、
(v)配列番号1で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつAkt(セリン/スレオニンキナーゼ)を活性化しない変異ホスホイノシチド−3キナーゼのp85調節サブユニットβとしての活性を有する蛋白質をコードするDNA。
配列番号1で表される塩基配列は、PC12細胞のp85調節サブユニットβのcDNA(配列番号3)における285番目の塩基が「g」から「a」に、1979番目の塩基が「a」から「g」に、それぞれ置換したものに相当する。配列番号1で表される塩基配列は、特許文献1に記載されている。
好ましくは、前記非ヒト哺乳動物は、げっ歯類である。
好ましくは、前記非ヒト哺乳動物は、マウスである。
上記トランスジェニック非ヒト哺乳動物は、長寿命化に加えて巨大化したものであってもよい。
ここで「巨大化」とは、通常の非ヒト哺乳動物と比較して体重が10%以上大きいことを指す。
本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、寿命に関する研究に有用である。その他、寿命や巨大化に関係する疾患のモデル動物としても有用である。
変異p85β遺伝子が導入されたベクターの構成を表す説明図である。 トランスジェニックマウスの検定で行った電気泳動の結果を表す写真である。 マウスの生存日数を表すグラフである。 マウスの平均寿命と標準偏差を表すグラフである。 マウスの生存率曲線を表すグラフである。
以下、本発明の実施するための形態について具体例を挙げながら説明する。なお、以下の説明において、Akt(セリン/スレオニンキナーゼ)を「Akt」と略記することがある。
本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、「Aktを活性化しない変異ホスホイノシチド−3キナーゼ(PI3K)のp85調節サブユニットβ(p85β)」をコードする遺伝子が導入されたものである。
前述したとおり、本発明における「Aktを活性化しない変異PI3K」には、Aktの活性化が全く観察されない変異PI3Kの他、Aktの活性化が極めて弱く、活性化は実質的に起こっていないと判断される変異PI3Kも含まれる。
前記p85調節サブユニットβ(p85β)をコードする遺伝子としては、「(i)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質」をコードする遺伝子が挙げられる。配列番号2で表されるアミノ酸配列は、PC12細胞のp85βのアミノ酸配列(配列番号4)における660番目のリジンがアルギニンに置換されたものに相当する。配列番号2で表されるアミノ酸配列は、特許文献1に記載されている。
なお、PC12細胞のp85βに前記アミノ酸置換(リジン→アルギニン)を導入すると、当該PC12細胞は、神経成長因子(NGF)を作用させてもAktを活性化しない特性と、NGFを作用させても神経分化が誘導されない特性を備えたものとなる。
さらに、当該遺伝子の例として、以下の(ii)又は(iii)の蛋白質をコードする遺伝子が挙げられる。
(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつAkt(セリン/スレオニンキナーゼ)を活性化しない変異ホスホイノシチド−3キナーゼのp85調節サブユニットβとしての活性を有する蛋白質、
(iii)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつAkt(セリン/スレオニンキナーゼ)を活性化しない変異ホスホイノシチド−3キナーゼのp85調節サブユニットβとしての活性を有する蛋白質。
上記(ii)において、欠失等されたアミノ酸の数は、好ましくは2〜7個、より好ましくは2〜5個、さらに好ましくは2〜3個である。また上記(iii)において、アミノ酸配列の相同性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。アミノ酸配列の相同性は、例えば、BLASTデータベースを用いて調べることができる。
さらに、当該遺伝子の例として、下記(iv)又は(v)のDNAからなる遺伝子が挙げられる。
(iv)配列番号1で表される塩基配列からなるDNA、
(v)配列番号1で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつAkt(セリン/スレオニンキナーゼ)を活性化しない変異ホスホイノシチド−3キナーゼのp85調節サブユニットβとしての活性を有する蛋白質をコードするDNA。
ここで、上記(v)における「ストリンジェントな条件」とは、0.1×SSC溶液(1倍濃度のSSC溶液は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウム、からなる)、1%ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)、65℃、24時間の条件をいう。なお配列番号1は、配列番号3(PC12細胞のp85β遺伝子)において、285番目の塩基「g」が「a」に、1979番目の塩基「a」が「g」に、それぞれ置換された塩基配列に相当する。
本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物の動物種としては特に限定はなく、例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ等を採用することができる。好ましくはげっ歯類であり、マウスが特に好ましい。
本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、長寿命化された特性を有している。上述のように、「長寿命化された」とは、通常の非ヒト哺乳動物と比較して寿命が10%以上長いことを指し、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上、特に好ましくは25%以上である。長寿命化の有無は、例えば、変異p85βをコードする遺伝子を導入された非ヒト哺乳動物(トランスジェニック非ヒト哺乳動物)と、当該遺伝子を導入されていない非ヒト哺乳動物とを並行して飼育し、その生存期間を比較することにより判断することができる。
本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物には、長寿命化に加えて、巨大化した特性を備えたものも含まれる。上述したように、「巨大化」とは、通常の非ヒト哺乳動物と比較して体重が10%以上大きいことを指し、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上、特に好ましくは25%以上である。巨大化の有無は、例えば、変異p85βをコードする遺伝子を導入された非ヒト哺乳動物(トランスジェニック非ヒト哺乳動物)と、当該遺伝子を導入されていない非ヒト哺乳動物とを並行して飼育し、その体重を比較することにより判断することができる。
本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物の作製は、公知のトランスジェニック動物作製技術を利用して行うことができる。以下、DNAマイクロインジェクションによるトランスジェニックマウスの作製を例として説明する。
まず、受精卵移植用(仮親用)雌マウスに偽妊娠を誘発するための、精管を切除した雄マウスを作製する。そして、成体雌マウスと精管切除雄マウスとを交配し、仮親(偽妊娠)マウスを作製する。
一方、受精卵採取のために、雌マウスにホルモン剤を投与して過剰排卵誘発処理を行う。この過排卵誘発処理した雌マウスを雄マウスと交配し、前核期受精卵を採取する。
マイクロインジェクションにより、前核期受精卵に目的遺伝子(変異p85β遺伝子)を導入する。目的遺伝子を導入した受精卵を、仮親マウスの卵管内に移植する。その後、自然分娩により出産させ、保育させる。
得られた子マウスの尻尾からDNAを抽出し、PCR法等で導入遺伝子の検定を行い、目的遺伝子が導入されたマウス(F0マウス)を選抜する。F0マウスを成熟させた後、野生型マウスと交配し、F1マウスを作製する。これにより、変異p85β遺伝子が導入されたトランスジェニックマウスを得ることができる。その後、長寿命化の特性を有する個体をさらに選抜することにより、長寿命化されたトランスジェニックマウスを得ることができる。
なお、マイクロインジェクションに用いる遺伝子(導入用遺伝子、導入用DNA)は、例えば、哺乳動物細胞用の発現ベクターに目的遺伝子を組み込むことにより調製することができる。哺乳動物細胞用の発現ベクターとしては、各種の市販品を用いることができる。例えば、エンハンサー/プロモーター、遺伝子導入部位、及びポリアデニル化シグナルがこの順番に配置されたベクターを用いる。そして、当該遺伝子導入部位に目的遺伝子を導入した発現ベクターを、受精卵に導入するための導入用遺伝子として用いることができる。
本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、様々の用途に適用することができる。例えば、長寿命化モデル動物として、寿命に関する基礎研究に用いることができる。その他、寿命や巨大化に関係する疾患のモデル動物として、医薬候補化合物等のスクリーニングに用いることができる。当該疾患の例として、肥満や脳卒中等の慢性疾患が考えられる。さらに、畜産分野への応用として、巨大化したトランスジェニック非ヒト哺乳動物(例えば、ブタやウシ)から畜肉を効率よく得られる可能性がある。すなわち、1つの個体からより多くの畜肉を得られる可能性がある。
以下、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.変異p85β遺伝子を組み込んだ発現ベクターの作製
配列番号1に示す変異p85β遺伝子のm−RNAから作製したPCR産物をTOPO PCRクローニングベクター(TOPO PCR-XL-TOPO,インビトロジェン社)に組み込み、増幅した。増幅産物をEcoRIで切断後、発現ベクターpcDNA3.1(インビトロジェン社)のEcoRIサイトに組み込んだ(図1)。正方向に組み込まれたものを増幅して、SalIとNuaIの2つの制限酵素によって切断した(DNA溶液)。このDNA溶液を、以下のDNAマイクロインジェクションに用いた。
なお、変異p85β遺伝子(cDNA)が組み込まれた発現ベクターは、図1に示すように、CMVプロモーター(pCMV)とBGHポリA配列(BGHpA)を有しているので、変異p85β蛋白質が効率よくトランスジェニックマウスの細胞で作られるようになっている。
以下、上記発現ベクターをマウスの受精卵に導入することによって、変異p85β遺伝子が組み込まれたトランスジェニックF0マウスを作製し、自然死するまで飼育してマウスの寿命延長があるかどうかについて検討した。すべてのトランスジェニックマウス作製実験に、C57BL/6系マウスを使用した。
2.変異p85β遺伝子トランスジェニックF0マウスの作製
正常なC57BL/6マウスの雌より、DNAマイクロインジェクションに用いる前核期受精卵を胚操作用キャピラリーで集めた。集めた前核期受精卵をPB1培養液で洗浄後、M16培養液(Sigma, M-7292)を用いてCO2インキュベーターで培養した。受精卵へのDNAマイクロインジェクションは、倒立顕微鏡下でマイクロマニュピュレーターにセットしたマイクロキャピラリーを用いて、受精卵前核に上記のDNA溶液を注入して行った。DNAの注入を終えた受精卵を新しい培養液に移し、CO2インキュベーターで培養した。
1回目の実験では、DNAをマイクロインジェクションした受精卵263個を10〜20個ずつに分け、20匹の偽妊娠を誘導した雌マウスの卵管にそれぞれ移植し、8匹の産仔を得ることができた。得られた8匹のマウスは尾よりDNAを抽出し、PCR法によって導入遺伝子を増幅後、電気泳動にて検出を行った。陽性対照としてゲノムDNAと導入遺伝子の混合物を、陰性対照としてゲノムDNAのみを用い、同様の操作を行った。結果を図2に示す。図2中、レーン1〜3は雌マウス、レーン4〜8は雄マウス、レーン9,10は陽性対照、レーン11は陰性対照をそれぞれ示す。すなわち、雌3匹の内1匹が陽性を示し(レーン2)、雄5匹中1匹が陽性であった(レーン8)。この内、陽性の雄をF1マウス作製に使用し、陰性のマウスを寿命実験の対照に用いた。
2回目のF0マウス作製実験では、DNAをマイクロインジェクションした受精卵128個に対して同様に移植し、5匹の産仔を得ることができた。得られた5匹のマウスについて、同様にPCR法によって導入遺伝子の検出を行った結果、雌3匹の内1匹が陽性を示し、雄2匹中2匹が陰性であった。
3.変異p85β遺伝子トランスジェニックF1マウスの作製
変異p85β遺伝子陽性のトランスジェニックF0マウスの雄より手術によって精子を取り出し、正常なC57BL/6マウスの雌の卵子と人工授精を行ってF1マウスを作製した。方法としては、正常なC57BL/6マウスの雌30匹より630個の卵子を得、CO2インキュベーターで培養した。人工授精を行って得られた80個の2Cellを4匹のレシピエントマウスに移植した。自然分娩及び帝王切開によって48匹のトランスジェニックF1マウスを得ることができた。得られた8匹のマウスの尾よりDNAを抽出し、PCR法によって導入遺伝子の検出を行った。その結果、雌24匹の内15匹が陽性を示し、雄24匹中11匹が陽性であった。
4.変異p85β遺伝子を導入したマウスの寿命の検出
変異p85β遺伝子トランスジェニックF1マウス26匹を、自然死に至るまで飼い続けてそれらの寿命を調べた。対照として、変異p85β遺伝子陰性の正常C57BL/6マウスを並行して飼育した。結果を図3〜図5に示す。
図3はマウスの生存日数を表すグラフ、図4は各グループの平均寿命と標準偏差を表すグラフ、図5はマウスの生存率曲線を表すグラフである。図3と図4において、「WT」は変異p85β遺伝子陰性の正常C57BL/6マウス、「P85βM−tg(−)」は変異p85β遺伝子を導入したが変異p85β遺伝子が発現しなかったマウス、「P85βM−tg(+)」は変異p85β遺伝子を導入し、当該変異p85β遺伝子が発現したマウスを表す。
図3、図4に示すように、正常マウス(WT)の平均寿命は770日であった。一方、変異p85β遺伝子トランスジェニックF1マウス(26匹)では、17匹(P85βM−tg(−))は正常マウスと同様の正常な平均寿命を示したが、6匹(P85βM−tg(+))の平均寿命が940日となり、約22%の長寿を示した。なお、3匹は事故で死亡した。
また図4に示すように、変異p85β遺伝子が発現したマウス(P85βM−tg(+))は他の2群(WT及びP85βM−tg(−))と比較して有意に寿命が延長した。
図5に示すように、変異p85β遺伝子が発現したマウス(太線)は正常マウス(細線)と比較して有意に生存率が高かった。
また、長寿を示した変異p85β遺伝子トランスジェニックF1マウスは、いずれも、対照と比較して1.5倍程度大きい体重を示した。すなわち、変異p85β遺伝子トランスジェニックF1マウスは、長寿化に加えて巨大化の特性も備えていた。

Claims (6)

  1. Akt(セリン/スレオニンキナーゼ)を活性化しない変異ホスホイノシチド−3キナーゼのp85調節サブユニットβをコードする遺伝子が非ヒト哺乳動物に導入されてなる、長寿命化されたトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
  2. 前記遺伝子は、下記(i)〜(iii)のいずれかの蛋白質をコードする遺伝子である請求項1に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
    (i)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
    (ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつAkt(セリン/スレオニンキナーゼ)を活性化しない変異ホスホイノシチド−3キナーゼのp85調節サブユニットβとしての活性を有する蛋白質、
    (iii)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつAkt(セリン/スレオニンキナーゼ)を活性化しない変異ホスホイノシチド−3キナーゼのp85調節サブユニットβとしての活性を有する蛋白質。
  3. 前記遺伝子は、下記(iv)又は(v)のDNAからなる遺伝子である請求項1に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
    (iv)配列番号1で表される塩基配列からなるDNA、
    (v)配列番号1で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつAkt(セリン/スレオニンキナーゼ)を活性化しない変異ホスホイノシチド−3キナーゼのp85調節サブユニットβとしての活性を有する蛋白質をコードするDNA。
  4. 前記非ヒト哺乳動物は、げっ歯類である請求項1〜3のいずれかに記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
  5. 前記非ヒト哺乳動物は、マウスである請求項4に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
  6. 長寿命化に加えて巨大化したものである請求項1〜5のいずれかに記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
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