JP2014166137A - ブラシレス電気機械を制御する方法、制御システム、および駆動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】電流を制御するために用いられるデバイスの電流定格を必要以上に大きくせずに、より円滑なトルクが得られる制御装置を提供する。
【解決手段】ブラシレス電気機械は、トルクを生成して負荷を駆動する少なくとも一つの相巻線を有する。機械の制御システムは、ある相に供給される磁束および電流を変化させて、ロータ位置の関数としてトルク出力を変更することができる。特定の角度で励磁を減少させてトルクプロファイルに低下部を生じさせることにより、駆動装置が失速する際に、所定位置、例えば、駆動装置の損失が最小となる位置、で失速するようにする。
【選択図】図12

Description

本発明は、ブラシレス電気機械の制御に関する。本発明は、特に、スイッチドリラクタンス機械に関するが、それに限定されるものではない。
スイッチドリラクタンス機械は、ブラシレス電気機械の一種である。機械は、複数のロータポールを定めるロータと、複数のステータポールを定めるステータと、ステータポールに関連して配置され1つ以上の個別に励磁可能な相を定める一組の巻線とを備える。リラクタンス機械において、1つ以上の相巻線を励磁すると、対応付けられたステータポールを含む回路に磁束が発生し、回路のリラクタンスが最小となる(また、対応する相巻線のインダクタンスが最大となる)位置にロータが動かされる。モータリング動作では、ロータ位置によって巻線を順次励磁するタイミングを調節することにより、ロータの動作が引き起こされる。スイッチドリラクタンス機械が組み込まれた電気駆動装置の一般的な取り扱いについては、例えば 「Electronic Control of Switched Reluctance Machines」、TJE Miller編, Newnes, 2001等の様々な本に載っており、この内容は参照することにより本出願に組み込まれるものとする。より詳細な内容は、the PCIM '93 Conference and Exhibition at Nurnberg, Germany, June 21-24, 1993で発表されたStephensonとBlakeによる論文「The Characteristics, Design and Applications of Switched Reluctance Motors and Drives」に記載されており、この内容も参照することにより本明細書に組み込まれるものとする。当技術で周知のように、これらの機械は、相巻線を励磁するタイミングを変えることによって、電動機または発電機として動作させることができる。
電流がステータコイルを流れてロータの永久磁石によって場が発生する、いわゆるブラシレス直流機械等の従来の誘導同期式「電磁」機械と異なり、スイッチドリラクタンス機械は、純粋に「磁気」機械であり、磁気回路のリラクタンスが変化する際に、トルクは磁場によってのみ生成される。したがって、これら二種類の機械を制御する方法は、制御がトルクの生成方法に関連しているため、全く異なる。一般に、正弦波で給電される従来の機械に用いられる制御方法は、スイッチドリラクタンス機械には適さない。
図1は、典型的なスイッチドリラクタンス機械の断面を示す。この例では、強磁性ステータ10は、6個のステータポール12を有する。強磁性ロータ14は、4個のロータポール16を有する。各ステータポールは、コイル18を有している。径方向に反対側に位置するポールのコイルはそれぞれ直列に接続され、これにより、3相巻線が設けられる。分かりやすいように、1つの相巻線のみが示されている。スイッチドリラクタンス機械の制御は、当業者に周知の様々な方法で実行可能である。ロータの角位置に関する情報が位置検出器等から入手可能であれば、励起を位置の関数として与えることが可能である。このような機械は、「ロータポジションスイッチド機械」と呼ばれることが多い。
典型的なスイッチドリラクタンス駆動装置を図2に示す。この例で、機械36は、図1に示された機械に対応する。3相巻線A、B、Cは、一組のパワー電子スイッチ48によって順番に直流電源Vに切り換えられる。スイッチが作動する時点(つまり、ロータ位置)はコントローラ38によって決定される。コントローラは、ハードウエアとして、またはマイクロコントローラやデジタル信号処理装置などの処理デバイスのソフトウエアとして実現されてよい。制御信号は、データバス46を介してスイッチに送られる。電流センサ44で相電流を検知し、要求電流iと比較される相電流に比例する信号をフィードバックすることによって、閉ループ電流フィードバックが行われる。制御アルゴリズムは、比例(P)、比例積分(P+I)、時間最適、フィードバック線形化、比例・積分・微分(PID)の機能、または当業界でよく知られているその他の多くの機能のうちの一つを含んでいてもよい。また、位置検出器40からロータ位置信号をフィードバックすることによって、位置または速度の外部制御ループが行われることも一般的である。
動作中、電流要求42に対応する信号がコントローラに与えられる。これによって、採用されている特定の制御方式に従って巻線内の電流が調整され、機械から所望の出力が生成される。
スイッチドリラクタンス機械の性能は、ロータ位置を基準にした相励磁のタイミングの精度に部分的に依存する。ロータ位置検出は、従来、ステータに取り付けられた光学または磁気センサ等と協働して作動する、図2に模式的に示される物理的なロータ位置変換器(RPT)40、例えば、機械のロータに搭載される歯付き回転ディスク等、を用いて実現される。ステータに対するロータ位置を示すパルス列が生成されて処理デバイスに供給されることにより、正確な相励磁が可能となる。別の位置検出方法としては、いわゆる「センサレス」方法がある。この方式では、物理的な位置変換器は設けられず、機械の1つ以上の他のパラメータの測定値から位置が推定される。
巻線内の電流は比較的簡単に測定できるため、機械の閉ループ制御は、従来、巻線内の励磁電流を監視および制御することによって実現される。しかし、機械で要求される出力は通常、トルクや位置、あるいは速度であり、電流はこれら全てと極めて非線形的関係にある。その結果、電流制御手法を用いると、一般に、トルクリップルや位置誤差および/または速度誤差等の出力が不正確となる。これらの短所に対処するために、後述するように多くの電流制御方式が考案された。
多くの異なる電力コンバータにおけるトポロジーが知られており、前記Stephensonの論文にその幾つかが述べられている。最も一般的な構成の一つを、多相システムの1つの相を用いて図3に示す。図では、機械の相巻線32がバスバー26、27間で2つのスイッチ装置21、22に直列に接続されている。バスバー26、27を、コンバータの「DCリンク」と総称する。エネルギーリカバリーダイオード23、24は、スイッチ21,22が開放されたときに巻線電流がDCリンクへと逆流するよう、巻線に接続される。「DCリンクコンデンサ」として知られるコンデンサ25は、DCリンクの間に接続され、電源から流れない又は電源に戻ることのできないDCリンク電流(いわゆる「リップル電流」)のあらゆる交流成分を供給したり吸収したりする。実際面では、コンデンサ25は、直列および/または並列に接続された複数のコンデンサを備えていてもよい。並列接続の場合、構成要素の一部をコンバータ中に分散させてもよい。多相システムでは、通常、図3に示された幾つかの「相端子」を並列接続したものを用いて、電気機械の相を個別に励磁している。
スイッチドリラクタンス機械の相インダクタンス周期は、連続する周期における共通ポイント間(例えば、ロータポールとそれに対応するステータポールとが完全に整列している場合のインダクタンス最大値間)における当該相または各相のインダクタンス変動期間である。上記Stephensonの論文で説明されているように、最大インダクタンス領域は、一対のロータポールが一対のステータポールと完全に整列しているロータ位置を中心としている。同様に、最小インダクタンス領域は、図1に示すように、ロータポール間軸がステータポール軸と整列する位置を中心としている。
低速では、スイッチドリラクタンスシステムは、一般に、電流制御モードまたは「チョッピング」モードで動作する。前記Stephensonの論文で説明されているように、「ハード」チョッピングを用いるヒステリシス電流制御装置が使用されることが多い。これを図4(a)に示す。図では、相が励磁されるスイッチオン角度θonと消磁されるスイッチオフ角度θoffとの間において注目している相の導通領域において、電流が高ヒステリシスレベルIと低ヒステリシスレベルIとの周期を繰り返す。別の制御方式としては、「ソフト」チョッピングがある。この場合、電流が高レベルに達するとスイッチが一つだけ開放される。電流はその後、巻線と第2スイッチと一つのダイオードとを介してさらにゆるやかに減衰する。これを図4(b)に示す。スイッチや電流制御装置の能力によっては、電流が事実上平坦となるまでヒステリシスバンドの幅を減少させることができる。ロータの角速度が遅い場合、スイッチオンから所望のレベルに達するまでにロータが移動する角度は非常に小さくなり、電流波形は後述するように矩形状となる。他の種類の電流制御装置も当技術では周知であり、その例として、EP−A−0769844に記載される電流制御装置、その内容は参照することにより本出願に組み込まれるものとする、や、オフタイム制御装置、定周波数制御装置等があるが、これ以上の説明はここでは省略する。
高速では、スイッチドリラクタンスシステムは、通常、チョッピングモードではなく、「シングルパルス」励磁モードで動作する。これも前記Stephensonの論文で説明されている。
このように、システムは一般に、低速ではチョッピングモードを用い、高速ではシングルパルスモードを用いる。チョッピング電流の高低レベルは、通常、シングルパルスモードの予想ピーク電流より大きい値に設定されるので、これらパラメータはシングルパルス動作の妨げにならない。また、高電流レベルを「セーフティネット」となる値に設定することが知られている。そうすることによって、駆動装置が故障した場合に、電流がこの高レベルを超えて1つ以上のスイッチ装置が開放され、電流を安全値に抑えることができる。
上記はモータリング動作を想定して説明されたが、スイッチドリラクタンス機械は、電流波形が一般にモータリング波形の鏡像となる生成モードでも同様に動作することは周知である。
他の何種類かの電気機械と異なり、スイッチドリラクタンス機械では一般に、トルクと電流は線形関係にない。これについての理由は、前記Millerの本やStephensonの論文により詳細に述べられている。上記関係を図5に示す。図では、ロータ角45度を超えるまで定電流が印加された場合の図1の3相機械の一つの相に関するいわゆる静トルクが示されている。機械の動作範囲において低い(例えば、10%未満)電流の場合、トルクはほぼ矩形状となる。しかし、磁束や電流レベルが上がるにつれ、磁束を保持する鉄の磁気特性は著しく非線形となり、トルクの形状は丸くなる。図示されるトルク曲線の形状は、機械において定格電流の場合によくみられるものである。
実際の波形では、通常、図示の平均電流にチョッピングリップルが重畳されるので、当業者であれば図5に示される電流波形が理想化されたものであるということは分かるであろう。
図6は、機械の異なる相におけるトルク曲線の関係を示す。6個のステータポールと4個のロータポールを備える機械において、曲線間の角変位(いわゆるε角度)は30度である。回転する機械から連続トルクを発生させる最も簡単な方法は、トルク曲線が交差するときに一つの相をオンに切り換え、ε角度回転した後にこの相をオフに切り換えて次の相をオンに切り換えるものである。これを図7に示す。ここでも相電流は一定とする。これは簡単に実現できる制御方式であるが、大きなトルクリップルが生じるという明らかな欠点がある。どの角度でも利用できる最小トルクはεトルクと呼ばれ、これを図7に示す。ε角度で生成される平均トルクは、曲線の正確な形にもよるが、ピークトルクとεトルクとの間である。しかし、この方法では、各相を相周期の1/3しか利用することができず、ステータや電子制御装置が十分に活用できないという欠点もある。
これらのデメリットを解消するために、各相が所望の方向にトルクを生成し得る時に必ず当該相を励起する方法が知られている。図示の3相機械の場合、励起パターンは、15度の間はA相のみ、次の15度ではA相とB相、次の15度ではB相のみ等となる。これを図8に示す(ここでは、相間のいかなる相互作用も無視する)。このパターンは、「相重複」や「11/2フェーズオン」等として知られている。εトルクは事実上2倍になることが分かる(2つの相が前回の交錯点で同一のトルクを生成しており、トルク曲線の傾斜がほぼ同じ大きさになるためである)。ピークトルクは変わらないので、トルクリップルははるかに小さくなり、平均トルクは大幅に増加する。各相は相周期の半分の期間で使用されるので、ステータの利用率が高くなる。
この励起方式は多くのデバイスに採用されるが、電流を制御するために用いられるデバイスの電流定格を必要以上に犠牲にすることなく、より円滑なトルクが必要となる利用分野もある。
本発明の一局面では、請求項1に定められるようなブラシレス電気機械を制御する方法が提供される。本発明のさらに別の局面では、請求項15に定められるような制御システムおよび請求項16に定められるような駆動装置が提供される。
一実施の形態において、ブラシレス電気機械を制御して出力を生成する方法が提供される。出力はトルクまたは力である。この方法は、スイッチオンポイントとスイッチオフポイントとの間の導通領域内において機械の第1の相を励磁する工程を備える。機械は出力要求に応じて励磁され、出力要求より高い出力上限と出力要求より低い出力下限との間の出力を生成して、ブラシレス電気機械の出力と第1の相の電流との間の非線形関係を補償する。上限および下限出力の間の出力は、導通領域の初めからディテント領域までとディテント領域から導通領域の終わりまでとで、出力要求に応じて生成される。ディテント領域においては、ディテントレベルで出力が生成される。ディテントレベルは、下限よりも低い。このように、機械がディテント領域内のディテント位置で失速しやすくする。
好適には、ブラシレス電気機械を制御して、ディテント領域外では出力上限許容値と出力下限許容値との間の出力を生成し、出力が下限許容値よりも低くなるよう機械を制御することによって、機械が失速しやすいディテント領域を定義することができる。これによって、機械の失速動作を制御することができる。
理想的条件では、導通領域で出力が理想的に円滑または平坦になるよう、出力上限および出力下限は同じである(出力要求と等しくなる)。実際の状況では、上記出力変動を完全に補償することはできないため、機械は、出力要求で出力を生成するよう制御され、出力要求は、実質的に円滑または平坦であり、補償されていない出力変動に起因して上限と下限との間で変動する。例えば、上限および下限は、出力要求のいずれ側においても5%であってもよく、より平坦な出力を得るようにするために、例えば、上限および下限を出力要求のいずれ側においても(出力要求に対して)3%、さらには1%や2%としてもよい。実質的に円滑または平坦な出力を得るためには、いかなる公知の出力調整手法を用いてもよく、例えば、電流(または磁束等の他の制御量)のプロファイリングを行うことによって、出力の所望の平滑度を実現してもよい。制御および/またはプロファイリングは、機械の特性に基づくフィードフォワード制御や、出力やその変動のような好適なフィードバック量に基づくフィードバック制御に基づいて行われてもよい。フィードフォワード制御およびフィードバック制御を組み合わせることも同様に可能である。実現可能な様々な制御手法では、ロータ位置の検出にセンサレス方式、あるいはロータ位置検出ハードウエアを用いる位置検出が採用されてもよい。また、ロータ位置の検出は、センサレス方式とハードウエア方式を組み合わせることによっても同様に可能である。
いくつかの実施の形態では、ディテントレベルは出力要求の96%未満である。例えば、ディテントレベルは95%でもよい。ディテントレベルにはより低いあるいはより高い値も同様に可能であるが、より高い値ではディテント効果は減少し、より低くなると好ましくないトルクリップルが発生してしまう。
いくつかの実施の形態では、方法は、第1の相と共に第2および第3の相をそれぞれ励磁する工程を備える。第2の相は、ディテント領域より前の導通領域の第1部分で第1の相と共に励磁され、第3の相は、ディテント領域より後の導通領域の第2部分で第1の相と共に励磁されて、上限と下限との間の出力を生成する。これら実施の形態では、図8を参照して説明した上記励磁方式を用いて出力の平滑化を容易にしてもよい。
いくつかの実施の形態では、実質的に円滑な出力を生成するよう機械を制御した結果、ある一定の出力要求の場合に第1の相によって流れる電流が、導通領域の第2および第4部分において想定レベルより高くなる。導通領域の第2および第4部分は、導通領域の第1、第3および第5部分の間にあり、これらの部分では電流は想定レベルよりも低い。したがって、電流プロファイルには、(直流電流制御または例えば磁束制御の結果として)谷を挟む2つピークがある。いくつかの実施の形態では、ディテント位置は第3部分内にあり、第3部分は電流プロファイルの2つのピーク間の谷部分である。このように、ディテント領域は、第1の相によって流れる電流が比較的低い領域にディテント位置が位置するように配置される。これは、失速中に相によって流れる電流に対応する熱負荷は、流れる電流がより高い場合に比べて減少することを意味する。想定レベルは、第1の相の導通領域内の最大電流と第1の相の導通領域の第3部分内の最小電流との平均より低くてもよい。想定レベルは、第1の相の導通領域内における最小電流の90%と最大電流の10%との和より低くてもよい。いくつかの実施の形態では、第1の相の導通領域の第3部分内の最小電流は、ディテント領域内で生じる。この結果、ディテント領域内で失速する時に、相によって最小電流(あるいは最小電流に近い電流)が流れる。
いくつかの実施の形態では、該ブラシレス電気機械は、コンプライアントトルク伝達機構によって負荷に連結される。伝達機構のコンプライアンスは、負荷の移動なく、機械がディテント領域内の失速位置へ移動する可能性があることを意味する。いくつかの実施の形態では、ブラシレス電気機械は、車両の1つ以上のトラクションホイール、例えば、後述のようなローダ、に連結されている。
いくつかの実施の形態では、該ブラシレス電気機械は複数の相を有し、該方法は、機械が異なるディテント位置で失速するように少なくとも2つのレベル間で出力要求を変化させる工程を含む。ディテント位置のそれぞれは、異なる相にある。これにより、失速電流に伴う熱負荷を複数の相で共有することができ、失速状態における機械の加熱を低減することができる。特に、いくつかの実施の形態では、出力要求は、機械の失速が検出されたことを受けて変更される。異なる相は互いに隣接していてもよく、n個の相を有するブラシレス電気機械の場合、出力要求はn個のレベル間で変更されてもよい(これにより、n個の相それぞれに対応する失速位置に到達するようにする)。
いくつかの実施の形態では、該ブラシレス電気機械はロータを有する。つまり、該機械は、トルクを出力する回転機械である。しかし、本開示は、機械が、静止部に対して直線運動するよう配置された移動部を有し、力の出力を生成するこのような直線機械である実施の形態にも同様に適用可能である。
いくつかの実施の形態では、該ブラシレス電気機械は、スイッチドリラクタンス機械である。別の実施の形態では、該ブラシレス電気機械は、ブラシレス直流機や他の好適な種類のブラシレス電気機械であってもよい。
いくつかの実施の形態では、ディテントレベルの出力となるディテント領域の導入は、速度に左右される。これを達成するため、例えば、機械の速度が決定され、速度が第1の値を下回る場合はディテント領域においてディテントレベルで出力が生成され、速度が第2の値を超える場合は下レベル以上で出力を生成してもよい。第2の値は第1の値と同じであってもよく、閾値レベルの役割を果たしてもよい。あるいは、例えば、速度が第1の値から第2の値に増加するにつれ、ディテントレベルから出力低下が全くなくなるまでレベルを徐々に遷移させることによって、第2の値を第1の値より大きくしてもよい。この場合、出力がディテント領域でディテントベルまで周期的に低下することに伴って起こるトルクリップルによって機械や駆動装置に共鳴が誘発されるリスクが低くなる。
他の実施の形態では、上記方法や手法に従ってブラシレス電気機械を制御する手段を備える制御システムを提供している。さらに別の実施の形態では、ブラシレス電気機械とこれに連結される制御システムとを備える駆動装置を提供している。制御システムは、上記方法や手法に従って制御システムにブラシレス電気機械を制御させるように構成されたプロセッサを備えている。
本発明は、様々な形で実施することができ、以下、添付図面を参照しながらそのいくつかを例に挙げて説明する。
図1は、スイッチドリラクタンス機械の概略軸交差断面を示す。 図2は、スイッチドリラクタンス機械駆動システムの概略を示す。 図3は、スイッチドリラクタンス機械に適した電力変換回路の一部を示す。 図4(a)は、チョッピング電流波形およびそのインダクタンスプロファイルとの角関係を示す。 図4(b)は、フリーホイーリングを加味したチョッピング電流波形を示す。 図5は、機械の一つの相に関するトルクおよび電流波形を示す。 図6は、機械の他の相を重ね合わせた図5の波形を示す。 図7は、一度に一つの相を励起することによって生成されたトルク波形を示す。 図8は、複数の相を重ね合わせることによって生成されたトルク波形を示す。 図9は、あるロータ角で滑らかなトルクを生成するための相電流プロファイルを示す。 図10は、別のものと重なった滑らかなトルクを与える相電流プロファイルを示す。 図11は、駆動トルクおよび負荷トルクを示す。 図12は、トルク波形および電流波形を示す。 図13は、本発明の一局面に係るトルク波形を示す。 図14は、本発明の別の一局面に係るトルク波形を示す。
負荷のうち何種類かは、原動機により発生したトルクリップルの影響を特に受けやすく、「滑らかな」トルク、つまり、ロータ位置によって著しく変動しないトルクを発生させる多くの手法が提案されている。そのうちのいくつかの手法では、例えばEP0930694(Randall)に開示されているように、ロータおよび/またはステータポールのプロファイルを調整する等の機械的な解法に注力している。別の方法では、米国特許第6922036号(Ehsani)に開示されているように、電流をロータ角の関数とすることによって、電流の大きさを、一定(図5ないし8参照)ではなく、導通角度にある間は変化させるようにしている。後者の手法は、一般に「電流プロファイリング」と呼ばれる。
電流プロファイリングは様々な方法で実現可能である。最も簡単な方法の一つは、図7に従って、一度に一つの相を用いる。いずれの相でもε角の間は、電流はトルク波形とは逆に変調され、ε角の間ずっとトルクは一定に保たれる。これを図9に示す。しかし実用上は、この手法には3つのデメリットがある。第一に、電流を瞬時に相に対して与えたり取り除いたりすることはできない。第二に、既に図7を参照して述べたように、一度に一つの相だけを励磁する場合のεトルクはかなり低いため、機械からの出力は図7の平均トルク(実際の波形にもよるが、εトルクのおよそ二倍)からεトルクにまで減少してしまう。第三に、電流は電気周期のほんの一部にしか存在せず、しかも複数の高いピーク値を有するため、RMSが比較的高くなり、生成されたトルクに対して比較的高い巻線損となる。
これらデメリットは、上記図8で示されたのと同様に、いくつかのロータ角で2つ(またはそれ以上の)相を励磁することによって、少なくとも部分的に解決することができる。相電流の立ち上がりおよび立ち下がりエッジは、立ち下がり相によって生成されたトルクが立ち上がり相によって生成されたトルクと調和して、必要とされる一定のトルク値を付与するようなプロファイルとなる。これを、一つの相の場合について図10に示す。図では、一定でリップルのないトルクが、図9の構成よりも小さい電流で実現可能である。
図10のεトルクは理想的に平坦または滑らかなトルクに対応する直線として示されているが、実際には、例えば、機種による誤差や制限されたフィードバック利得により、あるトルク要求に対するトルク出力は、許容可能トルク変動の上下限範囲の間においてトルク要求付近である程度変動する。結果として、実際の実施装置では、トルク出力は、制御工程でのノイズや不正確さや設計上の制約を見越しつつ、実質的に平坦または滑らかになる。
このように滑らかなトルクを実現する電流のプロファイルを選択する方法としては、個々の相電流に固有の解決策がないため、いろいろな方法が利用可能ある。例えば、Hung, JYによる「Torque ripple minimisation for variable reluctance motors」, Mechatronics, Vol. 4, No. 8, 1994, pp. 785-794、では、磁気回路の飽和に関する問題を無視した非常に簡単な方法が記載されている。Schramm, DS、 Williams, BW、 Green TCによる「Optimum commutation-current profile on torque linearization of switched reluctance motors」, the Proceedings of the International Conference on Electrical Machines, 15-17, Sept 1992, Manchester, UK, Vol. 2, pp. 484-488、では、ルックアップテーブルを用いたより複雑な方法が開示されている。さらに、Gobbi, R & Sahoo, NCによる「A fuzzy iterative approach for determination of current waveform for switched reluctance motors using a torque sharing function at positive and negative torque production regions」, the Proceedings of the 30th Annual Conference of the Industrial Electronics Society, 02-06 Nov 04, Busan, Korea, Vol. 4, pp. 3172-3177、では、個々の相電流に対する解決に向けてファジイ論理方法を繰り返し実施している。
これらの方法全てに共通するのは、相がロータ位置によって変化する電流を流すことによって、相電流と当該相によって生成されるトルクとの非線形関係が(できるだけ完全または部分的に)補償されるよう、相を励磁するという点である。一般に、結果として得られる電流波形には谷を挟んで2つのピークがあり、相導通領域の中央領域で或る電流に対して高いトルクを生成するトルク生成特性を反映している。
電気的な駆動システムを必要とする応用例では、実質的にリップルのないトルクの生成が最善の解決法とされることが多いが、意外なことに、常にこれが全体的に見て最善な解決法とは言えない応用分野もある。負荷に必要なトルクが駆動装置で得ることのできるトルクを超えており、システムが失速してしまうことは珍しいことではない。これは偶然に起こりうることもあるし、負荷を特定位置に保持するために作為的に引き起こすことも可能である。例えば、ホイストが駆動システムによって駆動されており、負荷を特定の高さに保持したい場合、負荷をある位置まで動かし、その位置で負荷が保持されるまでトルクを減少させることができ、このようにして、ブレーキをかける必要がなくなる。さらに別の例としては、ローダ等のばら材料をすくい上げる車両用のトラクション駆動装置が挙げられる。この場合、車両は積み上げられた材料まで駆動され、別の操作が行われる間そこで保持される。この種のシステムは、駆動システムのトルクを地面に伝えるゴム製タイヤにおいて大きなコンプライアンスがあるため、より複雑になっている。滑らかで一定の傾斜を有する表面を車両が安定した速度で進む場合、トルクを伝達する際のコンプライアンスは駆動装置に全く影響を与えない。しかし、失速時には、駆動装置がトルクを与え続けるのに対して車両は動かないため、タイヤが「ワインドアップ」してしまう。
これを図11に示す。ここでは、滑らかなトルクが駆動装置から供給されて、タイヤが駆動トルクと同等のトルクを生じるようになるまで(ポイントX)タイヤのコンプライアンスをワインドアップする。典型的には、車両のギアを入れるということは、モータがワインドアップ工程で多くの相サイクルを経て、場合によっては数回転する、ということである。そのため、コンプライアンスの変動が非常に小さい場合 (これは、例えば、周辺温度の変化で簡単に起こりうる)、ロータが停止する相周期の特定位置に大きな差が生じる可能性がある。図9および図10を参照することで、それによって失速電流がいかに簡単に2倍や3倍に変化しうるかが示される。そのため、巻取り装置や切り替え装置の付随損失は大きく変動し、駆動装置の温度管理が難しくなる。
駆動装置が失速するロータ位置を制御または左右するために、相巻線の電流プロファイルを導通領域のディテント領域内で変化させて、相電流が最低値あるいはそれに近い値になる時点(またはディテント位置)で駆動装置が失速するようにし、それによって駆動システムの付随損失を最小限に抑える。図12は、ディテント領域DR内のディテント位置で駆動装置が失速するように、図10に示す電流プロファイルのディテント領域に導入された僅かな低下部を示す図である。これにより、図示するように、対応する低下部がトルクにも生じる。このトルク波形がタイヤのコンプライアンスに適用されると、図13から、最低電流に対応するトルクの低下部で駆動装置が失速することが分かる。これによって、駆動装置が失速するロータ角を制御可能とするだけでなく、失速を確実に電流プロファイルの最低点のディテント領域内で起こさせるという有益な効果が得られる。また、駆動装置が3相駆動装置の場合、図8ないし12から、電流の低下部が電流波形の中央にある第3部分に位置するため、その時点で隣接相には電流が流れていないことが分かる。これにより、駆動装置の温度管理がさらに容易となる。
この手法は、反直感的な手法である。なぜなら、通常避けるべきものと考えられるトルクリップルを機械の出力に再導入しているためである。しかし、上記から分かるように、図9や図10の滑らかなトルクからあえて脱却し、失速状態で温度管理することの難しさを大幅に軽減することによって、駆動システムにとって全体的なメリットとなる。
必要なトルクの低下量は、とりわけ、トルク伝達機構のコンプライアンス量および機械の電気周期と負荷との連結に左右されるが、大きな産業車両の場合の一般的な値としては、出力トルクの約5%のトルク低下が導入されることになる。
概念的には、図12に理論上の電流レベル30を描き、導通領域を5つの部分、つまり、2つの側方部分A、Eと、電流が理論レベルよりも低い中央部分Cと、電流が理論レベルよりも高い2つの中間部分B、Dと、に分けることができる。失速電流の減少によるメリットの一部は、中間部分よりも電流が低い中央部分で電流の(したがって、トルクの)低下部が導入される場合に実現可能である。理論レベルが低いほど、メリットは大きくなる。中央部分の最低点を含むようにディテント領域が選択されると、最適にまたは最適に近い失速電流の減少が実現される。中央部分で電流低下が起こるよう選択することにより、何らかの励磁方式で隣接する相によって流れる電流もまた、低下部の位置設定や励磁方式や機械の相数にもよるが、減少する。
速度に依存するディテント領域を導入することが有用な場合もあり、そのため、駆動装置が低速で動作する場合や速度がゼロに近づいてほぼ失速しそうな場合にのみ、ディテント領域を導入してもよい。これにより、トルクのリップルによって駆動列の共鳴が誘発される可能性が低下する。
上記手法を用いて失速状態における温度管理の問題を大幅に軽減することができるが、損失は、依然として一つの相巻線と当該相を供給するコンバータの相端子とに集中する。駆動装置が長時間失速する場合、温度限度は、依然として懸念事項である。そこで、駆動システムを有益的により向上させる本発明の別の局面について説明する。図12および13を検証すると、隣接するトルク低下部(したがって、隣接するディテント/失速位置)は、機械の隣接する相と関連していることが分かる。トルク出力が比較的小さく変動する場合、タイヤトルク線は、異なる低下部上で駆動トルクプロファイルと交わることになる。これを図14に示す。図14は図13の部分拡大図である。
図14において、駆動トルクは、最初の値Tから増加した値Tiおよび減少した値Trに変化している。負荷は、発生するトルクに依存してシステムを新しいディテント位置XiおよびXrで失速させることが分かる。位置Xi、X、Xrはそれぞれ、本例に用いられる機械の3つの相の位置に対応している。より多くの相を有するシステムの場合は、それに応じた効果が得られることは明らかである。このように、失速状態の熱負荷は、駆動装置のいくつかまたは全ての相に分散させることができる。分かりやすいように、図14では、角スケールの動きを誇張して示しているが、実際の動きは比較的小さく、負荷に悪影響を及ぼすことはない。プロファイルされた相電流を用いないシステムでも同様の効果は得られるであろうが、上記実施の形態では一つの相から別の相への制御された遷移ができ、駆動装置が停止する点の全てを、駆動装置で得ることのできる最小の熱負荷に対応させることができる。
これまでは、導通角の間における電流プロファイリングの利用例について説明した。これは、駆動システムで共通に用いられる電流制御装置で実現可能である。しかし、本発明は別のパラメータを用いて機械の励磁レベルを制御することによっても実現可能である。例えば、駆動装置は磁束制御装置を備えていてもよく、機械の磁束を監視し所定のプロファイルになるよう制御することによって励磁制御を行ってもよい。
以上が、ステータに対して相対的に回転して出力トルクを生成するよう配置されたロータを有する回転機の一例についての説明である。上記説明は、静止部材に対して相対的に直線状に移動可能であり、出力の力を生成する移動部材を有する直動電械にも同様に適用可能である。この場合、「ロータ」、「回転」、「トルク」、「角度」等への言及は適宜置き換え可能であることは理解されるであろう。
本発明は、異なる実施の形態において様々な種類の電気的スイッチドブラシレス機械用トルク制御技術を提供しており、特に、スイッチドリラクタンス機械に適している。本発明は、駆動システムの熱挙動を閉制御することを可能にしている。開示された実施の形態では、最小限の変更で追加的な制御方式を既存の制御システムに組み込むことができるという大きな利点が示されている。詳細に開示された本実施の形態を本発明から逸脱することなく様々な変形または変更が可能であることは、当業者にとって自明である。本発明は、以下に記載される請求項の範囲にのみによって限定されるものである。

Claims (16)

  1. ブラシレス電気機械を制御して出力を生成する方法であって、前記出力はトルクまたは力であり、前記方法は、スイッチオン点とスイッチオフ点との間の導通領域内において出力要求に応じて前記機械の第1の相を励磁して、前記出力要求より高い出力上限と前記出力要求より低い出力下限との間の出力を生成し、それによって前記ブラシレス電気機械の前記出力と前記第1の相の電流との間の非線形関係を補償する工程を備え、前記第1の相が励磁されて、前記導通領域の初めからディテント領域までと前記ディテント領域から前記導通領域の終わりまでとで前記出力上限と前記出力下限との間の前記出力を生成し、前記ディテント領域内において前記下限より低いディテントレベルで出力を生成することによって、前記機械が前記ディテント領域内のディテント位置で失速しやすくする。
  2. 出力要求が一定の場合、前記第1の相によって流れる電流は、前記導通領域の第2部分および第4部分では或るレベルより高く、前記第2部分は前記導通領域の第1部分と第3部分との間にあり、前記第4部分は前記導通領域の前記第3部分と第5部分との間にあり、前記電流は、前記導通領域の前記第1部分、前記第3部分および前記第5部分では前記レベルより低く、前記ディテント位置は、前記導通領域の前記第3部分内にある、請求項1に記載の方法。
  3. 前記レベルは、前記導通領域の最大電流と前記第3部分の最小電流との平均を超えない、請求項2に記載の方法。
  4. 前記第3部分の最小電流は、前記ディテント領域で生じる、請求項2または3に記載の方法。
  5. 前記ディテントレベルは、前記出力要求の96%未満である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記方法は、前記ディテント領域より前の前記導通領域の第1部分および前記ディテント領域より後の前記導通領域の第2部分において、前記第1の相と共に、第2の相および第3の相をそれぞれ励磁して、前記上限と前記下限との間の前記出力を生成する工程をさらに備える、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記ブラシレス電気機械は複数の相を有し、各相は先行請求項のいずれか1項に記載の前記第1の相として励磁され、前記方法は、前記機械が異なるディテント位置で失速するように、少なくとも2つのレベル間で前記出力要求を変更する工程を備え、前記異なるディテント位置のそれぞれは、異なる相にある、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記出力要求は、前記機械の失速が検出されたことを受けて変更される、請求項7に記載の方法。
  9. 前記異なる相は互いに隣接する、請求項7または8に記載の方法。
  10. 前記ブラシレス電気機械はn個の相を有し、前記出力要求はn個のレベルの間で変更される、請求項7または8に記載の方法。
  11. 前記方法は、前記機械の速度を決定して、前記速度が第1の値を下回る場合は前記ディテント領域において前記ディテントレベルで出力を生成し、前記速度が第2の値を超える場合は前記ディテント領域において下レベル以上のレベルで出力を生成する工程を備え、
    前記第2の値は、前記第1の値以上である、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記ブラシレス電気機械は、トルクまたは力の出力を有し、負荷に前記出力を伝達するコンプライアント伝達機構を介して前記負荷に連結される、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記ブラシレス電気機械は、車両の1つ以上のトラクションホイールに連結される、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記ブラシレス電気機械は、スイッチドリラクタンス機械である、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 請求項1ないし14のいずれか1項に記載されるブラシレス電気機械を制御する手段を備えた制御システム。
  16. ブラシレス電気機械と、前記ブラシレス電気機械に連結された制御システムとを備える駆動装置であって、前記制御システムは、前記制御システムに請求項1ないし14のいずれか1項に記載された方法によって前記ブラシレス電気機械を制御させるよう構成されたプロセッサを備える、駆動装置。
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