JP2014162789A - 羊水塞栓症治療剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 治療上有効な羊水塞栓症治療剤を提供する。
【解決手段】 C1インヒビターを有効成分とする羊水塞栓症治療剤の提供。好ましくは、C1インヒビターがヒトC1−インヒビター、さらに好ましくは、C1インヒビターがヒト血漿由来C1−インヒビターである、羊水塞栓症治療剤の提供。
【選択図】 図1

Description

本発明は、羊水塞栓症治療剤に関する。さらに本発明は、C1インヒビター、特にヒト血漿由来C1−インヒビターを有効成分とする羊水塞栓症阻害剤に関する。
羊水塞栓症(amniotic fluid embolism: AFE)は、羊水が母体血中へ流入することによって引き起こされる、肺毛細管の閉塞を原因とする肺高血圧症と、それによる呼吸循環障害を病態とする疾患として定義される。最近では病因として羊水による塞栓のみならず、羊水成分によるアナフィラクトイド反応も指摘されている。発生頻度は低いが、いったん発症すると短時間で妊産婦死亡等の生命の危機をもたらす危険性の高い重篤な疾患である(非特許文献1、2参照)。
羊水塞栓症は、剖検後の病理組織学的診断により確定される確定羊水塞栓症(established AFE)と、臨床的に以下の3つの羊水塞栓症診断基準を満たすものとして診断される臨床的羊水塞栓症(potential AFE)の2つに分類される。
臨床的羊水塞栓症の診断基準:
(1)妊娠中または分娩後12時間以内に発症した場合
(2)下記に示した症状・疾患(1つまたはそれ以上でも可)に対して集中的な医学治療が行われた場合
a)心停止
b)分娩後2時間以内の原因不明の大量出血(1,500mL以上)
c)播種性血管内凝固症候群
d)呼吸不全
(3)観察された所見や症状が他の疾患で説明できない場合。(非特許文献1参照)
また、羊水塞栓症の補助診断として血清学的な方法がある。これは母体血液中に、羊水・胎便由来の固有の物質を検出する方法であり、このような固有物質としては、亜鉛コプロポルフィリン1(Zinc coproporphirin 1: Zn-CP1)やシアリルTn (Sialyl Tn: STN)が使用される(非特許文献1参照)。
羊水塞栓症の治療法としては、抗ショック療法(気道確保、血管確保、補液、抗ショック薬剤投与)および抗DIC療法(アンチトロンビンIII投与、新鮮凍結血漿投与)が基本とされてきた。しかしながら、現在でも死亡率は高く、これらの従来の治療法に加えて、さらなる有効な羊水塞栓症の治療法が強く望まれていた。
その一方で、羊水塞栓症の病態生理における補体系の関与に関しては、DIC(播種性血管内凝固症候群)を呈する患者では母体血中の補体C3およびC4が低値を示すことが知られてはいたが、羊水塞栓症における C1インヒビターの関与に関しては、これまで何ら報告はなされていなかった。
したがって、羊水塞栓症の治療のためのC1インヒビターの使用に関しても、これまでなんら記載も教示もなかった。
金山尚裕ら;「3)分娩時大量出血 (1)羊水塞栓症」、日本産科婦人科学会雑誌、2012年9月、64巻9号、N−407〜411; Kanayama N et al., J. Obstet. Gynaecol. Res., 2011 Jan.; 37(1):58-63 "Maternal death analysis from the Japanese autopsy registry for recent 16 years: significance of amniotic fluid embolism" ;
治療上有効な羊水塞栓症治療剤を提供する。
本発明者らは、さらなる有効な羊水塞栓症の治療剤を得ることを目的として研究を重ねてきたところ、臨床的羊水塞栓症の患者の血液中のC1インヒビター活性が正常妊婦と比較して顕著に低下していることを見いだし、羊水塞栓症の病態生理におけるC1インヒビターの関与を明らかにした。そして、臨床的に羊水塞栓症の患者にC1インヒビターを投与することにより有効な治療効果を見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明を要約すれば、C1インヒビターを有効成分とする羊水塞栓症治療剤の提供であり、より特定すれば、C1インヒビターがヒトC1−インヒビターである、羊水塞栓症治療剤の提供であり、さらに特定すれば、C1インヒビターがヒト血漿由来C1−インヒビターである、羊水塞栓症治療剤の提供である。
C1インヒビターは、C1エステラーゼインヒビターまたはC1−INHともよばれ、セルピンと総称されるセリンプロテアーゼインヒビターのスーパーファミリーに属する478個のアミノ酸からなる糖タンパク質である。C1インヒビターという名称は、最初に、血液および組織中の古典的補体経路で唯一知られていた生理的インヒビターであったことに起因する。しかしながら、C1インヒビターはまた、第XIIa因子および血漿カリクレインを阻害することから、カリクレイン−キニン系(KKS)の主要な調節物質でもある。いくつかの他の機能(例えば第XIa因子の阻害)とは別として、C1インヒビターは、補体系の最初の成分の活性化相同的セリンプロテアーゼであるC1sおよびClrの唯一の公知の生理的インヒビターである。
本発明における用語「C1インヒビター」は、補体系に関連するプロテアーゼ、好ましくはプロテアーゼC1rおよびC1sおよびMASP−1およびMASP−2、カリクレイン−キニン系(KKS)に関連するプロテアーゼ、好ましくは血漿カリクレインおよび第XIIa因子、ならびに凝固系に関連するプロテアーゼ、好ましくは第XIa因子、を阻害するセリンプロテアーゼインヒビターとして機能する、タンパク質またはそのフラグメントを意味する。さらに、C1インヒビターは、内皮細胞へのセレクチン介在性白血球付着を減少させる抗炎症分子として働く。本明細書で使用する「C1インヒビター」は、天然のセリンプロテアーゼインヒビターもしくはその活性フラグメントであってもよく、または類似の機能的性質(例えば、プロテアーゼC1rおよびC1s、および/またはMASP−1およびMASP−2および/または第XIIa因子および/または第XIa因子の阻害)を有する、組換えペプチド、合成ペプチド、ペプチド模倣体もしくはペプチドフラグメントを含むこともできる。C1インヒビターの構造および機能に関するさらなる開示は、米国特許第5,939,389号;米国特許第6,248,365号;米国特許第7,053,176号;および国際公開WO 2007/073186を参照できる。
したがって、本発明の好ましい実施態様において、C1インヒビターは、血漿由来または組換えC1インヒビターである。さらなる好ましい実施態様では、C1インヒビターは天然に生じるヒトタンパク質またはその変異体である。C1インヒビターは、C1インヒビターとして同じ機能を有する天然に生じる全てのアレル(allele)も包含する。最も好ましい実施態様では、該インヒビターはヒトC1エステラーゼインヒビターである。
他の好ましい実施態様において、本発明に関するC1インヒビターは、生物学的利用性および/または半減期を改善し、効果を改善し、および/または可能性のある副作用を減少させるために修飾される。この修飾は、組換え法またはその他の工程により実現できる。そうした修飾の例には、上記のC1インヒビターの糖鎖付加またはアルブミンとの融合が挙げられる。タンパク質の糖鎖付加およびアルブミン融合に関する開示は国際公開WO 01/79271が参照できる。
各種の実施態様の中で、C1インヒビターは、当業者が公知の方法により製造することができる。例えば、血漿由来C1インヒビターは、多くの献血者に由来する血漿を集めて製造することができる。血漿の献血者は当分野で定義される健常人である。好ましくは、多くの健常人献血者(1000人またはそれ以上)の血漿はプールされ、そして必要な場合はさらに処理される。治療用のC1インヒビターの製造方法の例は、米国特許第4,915,945号に開示される。代りに、いくつかの実施態様では、C1インヒビターを、当該分野で公知の方法を用いて、天然の組織から集めそして濃縮することができる。C1インヒビターを含む商業的に利用可能な製品には、例えば、血漿由来のCinryze(登録商標)(Viropharma社)、組換え体のRuconest(登録商標)およびRhucin(登録商標)(いずれもPharming社)、ならびに血漿由来のベリナート(Berinert)(登録商標)(CSL Behring社)が挙げられる。ベリナート(登録商標)は、遺伝的血管浮腫および先天性欠損症の治療を適応症としている。組換えC1インヒビターは公知の方法で製造できる。
ある実施態様では、C1インヒビターを含む医薬組成物が、羊水塞栓症の治療で使用するために調製される。C1インヒビターを含む医薬組成物の製剤化の方法は当該分野で公知である。例えば、C1インヒビターの粉末または凍結乾燥形態が提供され、そして水性製剤が必要な場合は、粉末を、医薬製剤の水性成分と混合して溶解することができ、次いでボルテックスにかけるか緩和な撹拌のような適切な方法によりかき混ぜることができる。他の実施態様では、C1インヒビターは凍結乾燥形態で提供され、そして投与前に水性医薬成分(例えば、追加の活性成分、または充填剤、安定化剤、溶媒もしくは担体のような不活性成分)と組み合わされる。
ある実施態様では、医薬組成物は、少なくとも1つの添加物、例えば充填剤、増量剤、緩衝剤、安定化剤または賦形剤を含むことができる。標準的な医薬製剤技術は当業者には周知である(例えば、2005 Physicians' Desk Reference(登録商標), Thomson Healthcare: Montvale, NJ, 2004; Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th ed., Gennado et al., Eds. Lippincott Williams & Wilkins: Philadelphia, PA, 2000を参照)。適切な製剤添加剤には、例えば、マンニトール、デンプン、グルコース、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、水、エタノール等が含まれる。ある実施態様では、医薬組成物はまた、pH緩衝剤および湿潤剤または乳化剤を含んでもよい。さらなる実施態様では、組成物は保存剤または安定化剤を含んでもよい。
医薬組成物の処方は、目的とする投与経路および他のパラメーターに依存して変えることができる(例えば、Rowe et al., Handbook of Pharmaceutical Excipients, 4th ed., APhA Publications, 2003を参照)。ある実施態様では、医薬組成物は凍結乾燥ケーキまたは粉末であってよい。凍結乾燥組成物は、静脈投与のために、例えば注射用滅菌水(USP)により再構成できる。他の実施態様では、組成物は滅菌発熱性物質除去溶液であってよい。さらなる他の実施態様では、組成物は、ピルまたは錠剤中の粉末形態で投与される。
上記の医薬組成物はC1インヒビターを単一の活性成分として含むこともでき、または少なくとも1つの他の化合物、組成物もしくは生物学的物質と組み合わせて投与することもできる。そうした化合物の例には、ビタミン類、抗生物質、または組織中で血栓形成を除去もしくは阻害するための化合物(例えば、組織プラスミノゲンアクチベータ、アセチルサリチル酸、クロピドグレルまたはジピリダモール)が含まれる。
羊水塞栓症を治療するためのキットもまた開示される。ある実施態様では、キットには(a)C1インヒビター、(b)羊水塞栓症の治療で使用するための使用説明書、および場合によっては(c)少なくとも1つのさらなる治療用活性化合物もしくは医薬、を含んでいる。液状形態の場合は、C1インヒビターは、安定化剤のような添加剤および/またはプロリン、グリシンもしくはショ糖のような保存剤、または貯蔵寿命を向上させるその他の添加剤を含むことができる。
ある実施態様では、キットには、C1インヒビターを投与する前、同時にまたは後に投与するための、治療用活性成分または医薬のような追加の化合物を含むことができる。そうした化合物の例には、ビタミン類、抗生物質、抗ウイルス剤等が含まれる。他の実施態様では、組織中での血栓形成を除去または阻害するための化合物(例えば、組織プラスミノゲンアクチベータ、アセチルサリチル酸、クロピドグレルまたはジピリダモール)が含まれる。
いくつかの実施態様では、キットの使用のための使用説明書は、羊水塞栓症を治療するために、キットの構成成分を使用するための指示書を含む。この使用説明書にはさらに、C1インヒビターは、をどのように調製するか(例えば、凍結乾燥タンパク質の場合は、希釈または再構成する)についての情報を含むことができる。使用説明書にはさらに投与の用量および頻度に関するガイドラインを含むことができる。
C1インヒビター製剤は、任意の医薬的に適切な投与方法で、患者に投与することができる。種々の投与系が知られており、任意の適切な投与経路で組成物を投与するために使用できる。好ましい実施態様では、C1インヒビター製剤は全身的に投与される。全身的な使用のために、治療用タンパク質は、従来法にしたがって非経口的または経腸的(例えば、経口、経膣、経直腸的)投与のために製剤化される。非経口的投与には、静脈注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射または組織への直接注射、肺内投与、経皮投与または鼻腔内投与、が含まれるが、それに限定されない。最も好ましい投与経路は静脈注射である。製剤は、連続的に点滴によりまたはボーラス注射により投与できる。ある製剤は持続放出系を含む。
C1インヒビターを含む組成物は、治療有効量で患者に投与できる。一般に、治療有効量は、患者の年齢、全身症状および患者の病態の重篤性により変えることができる。用量は医師によって決定され、そして、必要な場合は、観察された治療効果に適合するように調節することができる。ある実施態様では、C1インヒビターの用量は、体重1kg当たり、1、 5、7.5、10、15、20、25、30、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、450、500または1000ユニット(またはそれらの間の任意の値)である。C1インヒビター投与の治療用量の範囲は、例えば米国特許第5,939,389号にも記載されている。好ましくは、C1インヒビターは、体重1kg当たり5〜500ユニット、より好ましくは体重1kg当たり10〜200ユニット、そして最も好ましくは体重1kg当たり20〜100ユニットで投与される。
ヒト血漿由来のC1インヒビターを活性成分として含む製剤は、遺伝性血管神経性浮腫hereditary angioedema:HAE)の治療薬として、既に1979年にドイツで承認され販売されてきた。そしてその後世界各国で承認・販売されている。日本でも、1990年にHAEの急性発作を適応症として承認され、「ベリナート(登録商標)P静注用500」の販売名で市販されている。この製剤は、1バイアル中に健常人血漿1mL中のヒトC1インヒビター活性の500倍以上を含有している(医薬品インタビューフォーム「血漿分画製剤(乾燥濃縮人C1−インアクチベーター製剤)ベリナート(登録商標)P静注用500」、2012年3月(改訂大4版)、CSLベーリング株式会社)。
本発明者は、羊水塞栓症でDICを呈する症例で母体血中の補体C3およびC4が低下していることが知られていたこと、および、C1インヒビターが補体C1、C3、第XII因子、古典的補体経路およびブラジキニンを抑制し、免疫系、血管透過性、血液凝固線溶系に作用する重要な生体防御物質で、その活性の低下により血管浮腫が発生することが知られていたことから、臨床的羊水塞栓症患者におけるC1インヒビター活性を測定することを試み、その結果、羊水塞栓症の患者の分娩時血清中でC1インヒビター活性が低下していることを初めて明らかにした。
ついで、本発明者らは、このような羊水塞栓症の患者での分娩時血清中のC1インヒビター活性の低下が、母体の補体系の亢進によるC1インヒビターの過剰消費によるもの考え、臨床的羊水塞栓症の患者に対してC1インヒビターを投与し、実際に目的とする治療効果を臨床的に得ることに成功した。
本発明の羊水塞栓症治療剤は、従来の羊水塞栓症治療方法と比べて、救命効果等の有効性の点で優れている。
正常妊婦からなるコントロール群と臨床的羊水塞栓症群との分娩時血清中のC1インヒビター活性を比較した測定結果を、それぞれの平均値±標準偏差で示す。*はp<0.01で有意差があることを示している。 上記図1と同じ測定結果を、それぞれの群の個別の値の分布で示す。ただし、25%未満は25%として扱っている。各群の中間の長い横棒は平均値、その上下の短い横棒は標準偏差を示しており、*はp<0.01で有意差があることを示している。
次に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]臨床的羊水塞栓症におけるC1インヒビター活性の検討
〔方法〕
インフォームドコンセントの下で得られた、正常妊婦40例(年齢31±5.1歳、妊娠期間273±11日、分娩時出血量590±367mL)からなるコントロール群の分娩時血清、および臨床的羊水塞栓症と診断された57例(年齢34±4.5歳、妊娠期間267±19日、分娩時出血量4489±2900mL)の患者の分娩時血清を用いて、それぞれの血清サンプル中のC1インヒビター活性を、発色性合成基質法により測定した。血清中のC1インヒビター活性の基準値は70〜130%であり、測定可能値は25%以上であって、25%未満は一律25%として扱った。得られた各群のデータはマン・ホイットニイ(Mann-Whitney)検定により比較した。
〔結果〕
分娩時血清中のC1インヒビター活性は、コントロール群で53±21.0%であったのに対して、臨床的羊水塞栓症群では35.5±13.5%であり、両者間には有意差があり(p<0.01)、臨床的羊水塞栓症群ではコントロール群と比較して明らかに低い値を示した(図1)。また、個別の値を比較した場合でも、測定可能値の25%未満の例数は、コントロール群が4例(10%)であったのに対し、臨床的羊水塞栓症群では19例(33.3%)であり、両者間には有意差があった(図2)。
〔結論〕
臨床的羊水塞栓症においてC1インヒビター活性が低下することが明らかになった。C1インヒビターが、補体系のみならず、キニン生成系、凝固、線溶系も制御していることから、このようなC1インヒビターの活性の低下は、羊水塞栓症によるDIC型後産期出血を誘発している可能性を示唆していた。
[実施例2]臨床的羊水塞栓症のC1インヒビターによる治療
経膣分娩後に、頚管裂傷があり縫合後にも子宮出血止まらず救急車で産褥搬送を受け、臨床的羊水塞栓症と診断された患者(34歳、40週)に対して、母体胎児集中治療室(MFICU)にて以下のように治療を行った。救急車で到着時までの、母体からの出血量は不明だったが、ヘモグロビン(Hb)が2.6g/dLおよび意識レベル(日本昏睡尺度:JCS:II-10〜II−20)から、かなりの出血量と推定された。MFICU搬入後、意識レベルはJCS:III−300まで低下、弛緩性子宮出血にてオキシトシン入りの大量輸液を開始した。自発呼吸はあるが浅いためマスクで用手換気を行った。その後挿管し用手呼吸管理を継続。続いて、濃厚赤血球(RCC)輸血および新鮮凍結血漿(FFP)輸血を開始、この時点で来院時からの出血量2934g。続いて、ノルアドレナリンを投与、子宮からの大量出血し、濃縮血小板(PC)輸血開始。その後、瞳孔左右とも6mmで対光反射なし、ここまでの出血量4310g、非凝固性の出血が続いた。
ここで、C1インヒビター製剤(ベリナート(登録商標)P静注用500、CSLベーリング株式会社)を2バイアル静注、次いでフィブリノゲン製剤を3バイアル静注した。C1インヒビター製剤投与直後より意識レベルの改善が見られ、対光反射がなかった瞳孔が、瞳孔左右とも5mmで対光反射を認めた。また止血されなかった弛緩出血も出血量が減少し、血液凝固もみられるようになった。MFICUでの輸血量はRCC20単位、FFP50単位、PC50単位であり、計測可能だった総出血量は4811gだった。その後、ICUに移され、翌朝、子宮内圧迫ガーゼを抜去するも出血は正常範囲内だった。肺水腫を生じたので人工呼吸管理は継続したが、以後の経過は良好で3日目に抜管し、ICUからMFICUに移動し、7日目に転院ができた。
この結果は、羊水塞栓症の治療におけるC1インヒビターの有用性を強く示唆している。

Claims (7)

  1. C1インヒビターを有効成分とする羊水塞栓症治療剤。
  2. C1インヒビターが、血漿由来または組換えC1−インヒビターである、請求項1に記載の羊水塞栓症治療剤。
  3. C1インヒビターが、天然に生じるヒトタンパク質またはその変異体である、請求項1又は2に記載の羊水塞栓症治療剤。
  4. C1インヒビターがヒトC1−インヒビターである、請求項1〜3のいずれかに記載の羊水塞栓症治療剤。
  5. C1インヒビターがヒト血漿由来C1−インヒビターである、請求項1〜4のいずれかに記載の羊水塞栓症治療剤。
  6. C1インヒビターが、静脈注射または皮下注射で投与される、請求項1〜5のいずれかに記載の羊水塞栓症治療剤。
  7. C1インヒビターが、1〜1000ユニット/kg体重、好ましくは5〜500ユニット/kg体重の用量で投与される、請求項1〜6のいずれかに記載の羊水塞栓症治療剤。
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