本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る加工装置の構成例を示す模式図である。
加工装置10は、図1に示すように、レーザ発振器12と、案内光学系14と、照射ヘッド16と、加工ステージ20と、X軸移動機構22と、C軸回転機構24と、Y軸移動機構26と、Z軸移動機構28と、制御装置30と、を含む。加工装置10は、加工ステージ20を囲む門型ブリッジ32を有する。加工装置10は、加工ステージ20上に保持される被加工部材Wにレーザを照射し、被加工部材Wを加工する。ここで、本実施形態では、加工ステージ20の水平面をXY平面とし、加工ステージ20の水平面に直交する方向をZ軸方向としている。また、本実施形態では、Z軸回りの回転方向をC軸方向としている。
ここで、被加工部材Wは、例えば、板状の部材である。被加工部材Wとしては、種々の材料、例えば、インコネル(登録商標)、ハステロイ(登録商標)、ステンレス、セラミック、鋼、炭素鋼、耐熱鋼、セラミックス、シリコン、チタン、タングステン、樹脂、プラスチックス、Ni基耐熱合金等で作成された部材を用いることができる。また、被加工部材Wとして、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastics)、ガラス長繊維強化プラスチック(GMT:Glass-mat Reinforced Thermoplastics)等の繊維強化プラスチック、鋼板以外の鉄合金、アルミ合金等の各種金属、種々の複合材等で作成された部材も用いることができる。また、本実施形態において、加工処理は、切断加工、穴あけ加工、溶接加工、クラッディング加工、表面改質加工、表面仕上げ加工、レーザ積層造形のいずれかであり、これらの加工を組み合わせることもできる。
レーザ発振器12は、レーザを出力する装置であり、加工装置10の門型ブリッジ32に併設される。レーザ発振器12は、例えば、光ファイバを媒質としてレーザを出力するファイバレーザ出力装置、または、短パルスのレーザを出力する短パルスレーザ出力装置などが用いられる。ファイバレーザ出力装置としては、例えば、ファブリペロー型ファイバレーザ出力装置やリング型ファイバレーザ出力装置を用いることができ、これらの出力装置が励起されることによりレーザが発振される。ファイバレーザ出力装置のファイバは、例えば、エルビウム(Er)、ネオジム(Nd)、イッテルビウム(Yb)等の希土類元素が添加されたシリカガラスを用いることができる。短パルスレーザ出力装置としては、レーザの発振源として例えば、チタンサファイアレーザを用いることができ、パルス幅が100ピコ秒以下のパルスを発振することができる。また、YAGレーザやYVO4レーザ等のナノ秒オーダーパルス発振をするレーザも使用可能である。
案内光学系14は、レーザ発振器12から出力されたレーザを照射ヘッド16へ案内する光学系である。案内光学系14は、本実施形態では、例えば、光ファイバである。案内光学系14は、一方の端部がレーザ発振器12のレーザ出射口と接続され、他方の端部が照射ヘッド16のレーザ入射端と接続される。案内光学系14は、レーザ発振器12のレーザ出射口から照射ヘッド16の入射端へレーザを導光する。
照射ヘッド16は、案内光学系14で案内されたレーザを旋回させつつ被加工部材Wに照射する。また、照射ヘッド16は、レーザをプリズムで屈折させることで、屈折前のレーザの光路と被加工部材Wに照射されるレーザの光路とをオフセットする。さらに、照射ヘッド16は、レーザを集光させて、被加工部材Wに照射する。また、照射ヘッド16は、照射ヘッドカバー16aにより覆われる。照射ヘッド16の構造については、後述する。
加工ステージ20は、表面に載置された被加工部材Wを保持する機構である。加工ステージ20は、被加工部材Wを保持する表面が基準面(例えば、加工装置10の設置面)に対して水平面(XY平面)である。
X軸移動機構22は、加工ステージ20を支持するX軸ステージであって、加工ステージ20をX軸方向に移動させることで、X軸方向の所定の位置に被加工部材Wを移動させる。
C軸回転機構24は、X軸移動機構22と加工ステージ20との間に配置される。つまり、C軸回転機構24は、X軸移動機構22に支持されており、加工ステージ20を支持する。C軸回転機構24は、加工ステージ20をC軸方向に回転駆動することにより、C軸方向の所定の位置に被加工部材Wを回転させる。
Y軸移動機構26は、Z軸移動機構28を支持しつつ、照射ヘッド16をY軸方向に移動させる。これにより、Y軸移動機構26は、Y軸方向の所定の位置に照射ヘッド16を移動させる。
Z軸移動機構28は、照射ヘッド16を支持しつつ、照射ヘッド16をZ軸方向の所定位置に移動させる。
加工装置10は、X軸移動機構22と、C軸回転機構24と、Y軸移動機構26と、Z軸移動機構28と、を用いて、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、C軸方向の4軸方向に加工ステージ20と照射ヘッド16とを相対的に移動させることで、被加工部材Wとレーザとの相対位置関係を4軸方向に移動させる。
制御装置30は、レーザ発振器12と照射ヘッド16とX軸移動機構22とC軸回転機構24とY軸移動機構26とZ軸移動機構28とにそれぞれ接続され、各部の動作を制御する。制御装置30は、例えば、レーザ発振器12から出力されるレーザの各種条件を調整したり、X軸移動機構22とC軸回転機構24とY軸移動機構26とZ軸移動機構28とにより照射ヘッド16および加工ステージ20を移動させて被加工部材Wに対する照射ヘッド16の位置を調整したり、被加工部材Wの条件(材質、厚み等)や加工処理の条件から熱影響層の許容厚みを検出して設定したり、照射ヘッド16から被加工部材Wに照射されるレーザの後述する旋回数や旋回径Rを制御したりする。
次に、図2から図6を用いて、照射ヘッド16について説明する。図2は、第1実施形態に係る照射ヘッドの概略構成を示す説明図である。図3は、第1実施形態に係る照射ヘッドのレーザ旋回部からノズルまでを拡大して示す拡大模式図である。図4は、ノズルの構成例を示す模式図である。図5は、ノズルの構成例を示す模式図である。図6は、被加工部材に照射されるレーザの照射位置の説明図である。
照射ヘッド16は、図2および図3に示すように、コリメート光学系34と、レーザ旋回部35と、反射光学系36と、集光光学系37と、ノズル38と、割出機構39と、撮像手段40と、ギャップ検出手段41と、支持部材42と、を含む。照射ヘッド16は、案内光学系14から出力されるレーザLの光路において、上流側から下流側に向かって、コリメート光学系34、レーザ旋回部35、反射光学系36、集光光学系37、ノズル38の順で配置される。照射ヘッド16は、案内光学系14から出力されたレーザLをノズル38に対面する被加工部材Wに向けて照射する。照射ヘッド16は、案内光学系14から出力されるレーザLの光路において、上流側から下流側に向かって、コリメート光学系34、レーザ旋回部35、反射光学系36、集光光学系37、ノズル38の順で配置されている。照射ヘッド16は、コリメート光学系34とレーザ旋回部35と反射光学系36と集光光学系37とにそれぞれ分割可能である。照射ヘッド16は、案内光学系14から出力されたレーザLをノズル38に対面する被加工部材Wに向けて照射する。
コリメート光学系34は、案内光学系14のレーザLが出射される端面に対向して配置される。つまり、コリメート光学系34は、案内光学系14とレーザ旋回部35との間に配置される。コリメート光学系34は、コリメータレンズ等を備えており、案内光学系14から出力されたレーザLをコリメート光とし、レーザ旋回部35に向けて出射する。
レーザ旋回部35は、光路の中心P周りにレーザLを回転させて、被加工部材Wに照射レーザ、つまりレーザLの照射位置IPを旋回させる。レーザ旋回部35は、第1プリズム51と、第2プリズム52と、第1回転機構53と、第2回転機構54と、を有する。レーザ旋回部35は、第1プリズム51と第2プリズム52との位相角の差を変化させることができる。
第1プリズム51は、レーザLを屈折させて、光軸OAに対して傾ける。第2プリズム52は、第1プリズム51で屈折されたレーザLを再度屈折させて、集光する位置を制御する。これにより、レーザ旋回部35を通過したレーザLは、通過前のレーザLの光路に対してずれた光路で出力される。
第1プリズム51は、レーザLが入射される入射面51aと、レーザLが出射される出射面51bと、を有する。
入射面51aは、光軸OAに対して僅かに傾く平坦面である。入射面51aは、光軸OAに対する傾きが1°未満である。つまり、入射面51aは、案内光学系14から出力されたレーザLが入射する時、入射面51aで反射するレーザを光軸OAからずらすことができる。これにより、第1プリズム51は、入射面51aから案内光学系14に向かって反射するレーザの反射量を抑え、レーザ発振器12の出射口に向かって反射するレーザの量を抑制することができる。
出射面51bは、出射するレーザLを屈折させる傾きの平坦面である。これにより、第1プリズム51は、案内光学系14から出力されたレーザLを屈折させて、光軸OAに対して傾ける。
第2プリズム52は、レーザLが入射される入射面52aと、レーザLが出射される出射面52bと、を有する。
入射面52aは、第1プリズム51から出力されたレーザLを屈折させる傾きの平坦面である。これにより、第2プリズム52は、第1プリズム51で屈折されたレーザLを再度屈折させて、集光する位置を制御する。すなわち、第2プリズム52は、レーザ旋回部35を通過前のレーザLの光路に対して、レーザ旋回部35を通過したレーザLの光路をずらして出力する。
出射面52bは、入射面52aで屈折したレーザLの光軸に対して僅かに傾く平坦面である。出射面52bは、入射面52aで屈折したレーザLの光軸に対する傾きが1°未満である。つまり、出射面52bは、第1プリズム51から出力されたレーザLが出射する時、出射面52bで反射するレーザLを、入射面52aで屈折したレーザLの光軸からずらすことができる。これにより、第2プリズム52は、出射面52bから案内光学系14に向かって反射するレーザLの反射量を抑え、レーザ発振器12の出射口に向かって反射するレーザLの量を抑制することができる。
第1回転機構53は、図3に示すように、第1プリズム51を保持する第1スピンドル55と、第1スピンドル55が内部に挿入され当該第1スピンドル55を回転させる第1中空モータ56と、を有する。第2回転機構54は、第2プリズム52を保持する第2スピンドル57と、第2スピンドル57が内部に挿入され当該第2スピンドル57を回転させる第2中空モータ58と、を有する。第1回転機構53と第2回転機構54とは、互いに同期回転および相対回転可能である。
第1スピンドル55と第2スピンドル57とは、レーザLの光路の部分が中空の筒状部材である。第1スピンドル55には、レーザLの進行方向の先側に第1プリズム51が固定されている。第2スピンドル57には、レーザLの進行方向の後側に第2プリズム52が固定されている。第1スピンドル55と第2スピンドル57とは、軸受59および軸受60を介して支持される。軸受59および軸受60は、例えば、転がり玉軸受等の転がり軸受である。
第1中空モータ56は、第1スピンドル55の外周面に固定された中空ロータ61と、中空ロータ61に対向配置されたステータ62と、を有する。第1中空モータ56は、第1スピンドル55とともに第1プリズム51を回転させる。第2中空モータ58は、第2スピンドル57の外周面に固定された中空ロータ63と、中空ロータ63に対向配置されたステータ64と、を有する。第2中空モータ58は、第2スピンドル57とともに第2プリズム52を回転させる。第1プリズム51と第2プリズム52とは、互いに同期回転および相対回転可能である。
また、第1回転機構53および第2回転機構54は、それぞれ、回転部(第1スピンドル55および中空ロータ61、第2スピンドル57および中空ロータ63)と固定部(ステータ62、ステータ64)との相対的な位置、回転数を検出するエンコーダ65を備える。エンコーダ65は、上記回転部側に固定される識別子66と、上記固定部側に固定され、識別子66を検出する検出部67と、を有する。エンコーダ65は、検出部67で識別子66を検出することで、上記回転部の相対的な位置を検出することができる。エンコーダ65は、検出した上記回転部の回転数および回転位置(位相角)の情報を制御装置30に出力する。また、エンコーダ65としては、例えば、回転位置(位相角)を数千分の一度(0.001度以下)の分解能で検出する検出機器を用いることが好ましい。
第1回転機構53と第2回転機構54とは、第1プリズム51と第2プリズム52との位相角の差を変えることができる。これにより、図6に示すように、レーザ照射点を回転軸の光路の中心Pから第1プリズム51と第2プリズム52との位相角の差に対応する距離(旋回径R)だけ離れた照射位置IPまで偏心させることができる。この第1プリズム51と前記第2プリズム52との位相角の差を維持しながら、第1回転機構53と第2回転機構54とを同回転周期で同期回転させる場合、レーザ照射点は旋回径Rの円軌道を描く。また、第1プリズム51と前記第2プリズム52とを非同期回転(異なる回転周期で回転)させる場合には、レーザ照射点の旋回径を増減させながらレーザ照射点を旋回させることができ、任意の曲線軌道を描くことも可能である。
なお、本実施形態において、第1中空モータ56と第2中空モータ58との位相角の差とは、第1中空モータ56と第2中空モータ58との回転位置(位相角)の相対的なずれの角度のことをいう。また、第1中空モータ56と第2中空モータ58との位相角の差の誤差とは、第1中空モータ56と第2中空モータ58との位相のずれの角度の誤差のことをいう。
また、旋回径Rとは、図2および図4に示すように、光路の中心Pから被加工部材Wに照射されるレーザLの照射位置IPまでの距離のことをいい、被加工部材Wに照射されるレーザLが中心P周りに旋回する半径のことをいう。旋回径Rは、第1プリズム51と第2プリズム52との位相角の差を変えることにより被加工部材Wに照射されるレーザLの旋回径Rが変わるので、可変である。旋回数とは、被加工部材Wに照射されるレーザLの照射位置IPが中心P周りに旋回する単位時間当たりの回数のことをいう。
反射光学系36は、図2および図3に示すように、レーザ旋回部35を通過したレーザLを反射する第1反射ミラー71と、第1反射ミラー71で反射したレーザLを再び反射する第2反射ミラー72と、筒部73と、ノズル装着部74と、を有する。反射光学系36は、第1反射ミラー71と第2反射ミラー72とにより、レーザ旋回部35から出力されたレーザLを集光光学系37に向けて反射する。つまり、反射光学系36は、レーザ旋回部35のレーザの光路と、集光光学系37のレーザの光路と、をオフセットする。第2反射ミラー72は、ハーフミラーであり、被加工部材Wの加工部位を撮像手段40で撮像可能とする。筒部73とノズル装着部74とは、継手部75で連結される。
集光光学系37は、複数のレンズを有しており、この複数のレンズにより、第2反射ミラー72で反射されたレーザLを集光し、所定の焦点距離、焦点深度となるレーザLを形成する。集光光学系37は、被加工部材Wに所定のスポット径のレーザLを照射する。
ノズル38は、集光光学系37を介してノズル装着部74に装着される。ノズル38は、被加工部材Wの加工点で生じるスパッタ等により集光光学系37が汚損するのを防ぐための透光部材76を有する。また、ノズル38は、図4および図5に示すように、本体部38aと、第1ノズル部77と、第2ノズル部78と、を有する。本体部38aは、レーザLの進行方向の先側に向かうにつれて次第に径が縮小する中空の円錐形状である。
第1ノズル部77は、レーザLの進行方向の先側の開口径Kが、レーザLの旋回径Rよりも一回り大きい。第1ノズル部77は、レーザLの進行方向の反対側にシールドガスG1の供給口77aを有する。第1ノズル部77は、ガス供給源80のシールドガス供給配管80aを介して供給口77aにシールドガスG1が供給される。つまり、第1ノズル部77は、被加工部材Wに照射されるレーザLを通過させると同時に、透光部材76へのスパッタの付着等を抑えるためのシールドガスG1を通過させることができる。ガス供給源80は、第1ノズル部77に供給するシールドガスG1のガス圧や流量等を調整する図示しない調整手段を有する。調整手段は、例えば、調整弁などを用いることができる。
第2ノズル部78は、本体部38aの外周面と内周面との間に形成される。第2ノズル部78は、第1ノズル部77の周囲に等間隔で、中心Pを中心とする同心円状に配置される。第2ノズル部78は、レーザLの進行方向の反対側にアシストガスG2の供給口78aを有する。第2ノズル部78は、ガス供給源80のアシストガス供給配管80bを介して供給口78aにアシストガスG2が供給される。つまり、第2ノズル部78は、被加工部材Wに吹きつけるためのガスとしてアシストガスG2を通過させることができる。ガス供給源80は、第2ノズル部78に供給するアシストガスG2のガス圧や流量等を調整する図示しない調整手段を有する。調整手段は、例えば、調整弁などを用いることができる。
また、第2ノズル部78は、第1ノズル部77よりも小さい穴径である。ここで、第2ノズル部78が第1ノズル部77よりも小さい穴径であるとは、第1ノズル部77からアシストガスG2を噴射する場合と比べて、アシストガスG2の消費量を抑えることができ、且つ、被加工部材Wに向けて噴射するアシストガスG2の流速と圧力とを高めることができる穴径であることをいう。これにより、第2ノズル部78は、アシストガスG2の消費量を抑えつつ、加工に適した圧力、流量のアシストガスG2を噴射することができる。
本実施形態において、シールドガスG1またはアシストガスG2は、例えば、空気、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、キセノンガス、ヘリウムガス、または、これらの混合ガスを用いることができる。シールドガスG1またはアシストガスG2として、酸化反応熱を加工処理に利用できる酸素ガスを用いた場合、金属等の被加工部材Wに対する加工速度をより向上させることができる。また、シールドガスG1またはアシストガスG2として、熱影響層としての酸化被膜の生成を抑える窒素ガスやアルゴンガス等を用いた場合、金属等の被加工部材Wに対する加工精度をより向上させることができる。また、シールドガスG1またはアシストガスG2のガス種、混合比、および、ノズル38からの噴出量(圧力)などは、被加工部材Wの種類や加工モード等の加工条件に応じて変えることができる。
割出機構39は、図2および図3に示すように、割出軸81と、中空モータ82と、割出角度検出手段83と、を有する。割出軸81は、ノズル装着部74に連結され、ノズル装着部74と一体で回転する。割出軸81は、軸受84でY軸回りに回転可能に支持される。軸受84は、例えば、静圧軸受(流体軸受)である。中空モータ82は、割出軸81の外周面に固定された中空ロータ85と、中空ロータ85に対向して配置されたステータ86と、を有する。
中空モータ82は、割出軸81を回転中心とし、ノズル装着部74に装着されたノズル38を割出軸81回り(矢印d方向)に首振り可能に駆動する。すなわち、中空モータ82は、ノズル38をY軸回りに首振り可能に駆動する。これにより、割出機構39は、割出軸81を回転中心として反射光学系36のノズル装着部74を回転させ、この回転に伴って、割出軸81の同軸上に配置された第2反射ミラー72を回転させることができるので、割出角度を変更しても第2反射ミラー72で反射したレーザLをノズル38から照射することができる。また、割出機構39は、ノズル装着部74およびノズル38を一体で首振りさせるので、首振り部分の大型化を抑制することができる。
割出角度検出手段83は、回転部(割出軸81および中空ロータ85)と固定部(ステータ86)との相対的な位置(割出角度)を検出するエンコーダを備える。エンコーダは、検出した上記回転部の割出角度の情報を制御装置30に出力する。このように、割出機構39を用いる場合、加工装置10は、X軸移動機構22、C軸回転機構24、Y軸移動機構26、Z軸移動機構28、割出機構39、を用いて、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、C軸方向、首振り方向からなる5軸方向に加工ステージ20と照射ヘッド16とを相対的に移動させることで、被加工部材Wと照射するレーザLとの相対位置関係を5軸方向に移動させることができる。
撮像手段40は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等を有するカメラである。撮像手段40は、レーザLの照射位置IPや旋回径Rなどを撮像し、この撮像した画像から画像データを生成し、制御装置30に画像データを出力する。撮像手段40は、ノズル装着部74を挟んでノズル38と対向する位置で、ノズル装着部74に装着される。撮像手段40は、光路の中心Pと同軸上に配置される。
ギャップ検出手段41は、レーザ光を用いたギャップ測定装置である。ギャップ検出手段41は、被加工部材Wに照射されるレーザLの焦点と、被加工部材Wとのギャップを検出する。ギャップ検出手段41は、検出したギャップを制御装置30に出力する。ギャップ検出手段41は、撮像手段40に連結されており、光路の中心Pと同軸上に配置される。
支持部材42は、Y軸移動機構26に支持される。支持部材42は、レーザ旋回部35と割出機構39とを支持する。
次に、図6から図8を用いて、加工装置10による加工処理について説明する。図7は、穴あけ加工された被加工部材の断面の説明図である。図8は、加工装置の制御動作の一例を示すフローチャートである。
まず、加工装置10(制御装置30)は、図8に示すように、加工モードを決定する(ステップST1)。例えば、加工装置10(制御装置30)は、オペレータ等の作業員によって入力された、切断加工、穴あけ加工、溶接加工、クラッディング加工、表面改質加工、表面仕上げ加工、レーザ積層造形のいずれを実行するかを示す操作を確認し、確認した操作に基づいて、加工モードを決定する。
次に、加工装置10(制御装置30)は、被加工部材Wの材質や厚みを決定する(ステップST2)。例えば、加工装置10(制御装置30)は、作業員によって入力された、被加工部材Wの材質や厚みを入力する操作を確認し、確認した操作に基づいて、被加工部材Wの材質や厚みを決定する。
次に、加工装置10(制御装置30)は、加工条件を決定する(ステップST3)。例えば、加工装置10(制御装置30)は、作業員によって入力された、ステップST1で決定した加工モードにおいて被加工部材Wに施す加工処理の位置や形状、深さ等の加工条件を入力する操作を確認し、確認した操作に基づいて、被加工部材Wに施す加工処理の位置や形状、深さ等の加工条件を決定する。
次に、加工装置10(制御装置30)は、熱影響層Wa(図7参照)の許容厚みを決定する(ステップST4)。例えば、加工装置10(制御装置30)は、ステップST1で決定した加工モード、ステップST2で決定した被加工部材Wの材質や厚み、ステップST3で決定した加工条件、をそれぞれ取得し、加工モードと被加工部材Wの材質や厚みと加工条件と熱影響層Waの許容厚みとの相関関係を定めた制御マップ(加工条件制御マップ)を参照して、熱影響層Waの許容厚みを決定する。
次に、加工装置10(制御装置30)は、レーザLの許容旋回数、許容旋回径を決定する(ステップST5)。例えば、加工装置10(制御装置30)は、ステップST4で決定した熱影響層Waの許容厚みに基づいて、熱影響層Waの厚みとレーザLの旋回数と旋回径Rとの相関関係を定めた制御マップ(旋回条件制御マップ)を参照して、熱影響層Waの厚みTH(図5参照)が許容厚みを超えないレーザLの許容旋回数範囲および許容旋回径範囲を決定する。なお、ステップST5においては、ステップST1で決定した加工モードが穴あけ加工の場合、旋回径Rは必須ではないため、旋回数のみを決定してもよい。
次に、加工装置10(制御装置30)は、第1プリズム51および第2プリズム52の回転数、位相角の差を決定する(ステップST6)。例えば、加工装置10(制御装置30)は、ステップST5で決定したレーザLの許容旋回数範囲に含まれる旋回数を第1プリズム51および第2プリズム52の回転数として決定し、レーザLの旋回径Rと第1プリズム51および第2プリズム52の位相角の差との相関関係を定めた制御マップ(位相角制御マップ)を参照し、ステップST5で決定したレーザLの許容旋回径範囲に含まれる位相角の差を第1プリズム51と第2プリズム52との位相角の差として決定する。
次に、加工装置10(制御装置30)は、レーザ出力を決定する(ステップST7)。例えば、加工装置10(制御装置30)は、ステップST4で決定した熱影響層Waの許容厚みを取得し、熱影響層Waの厚みとレーザLの出力との相関関係を定めた制御マップ(レーザ出力制御マップ)を参照し、レーザLのピーク出力およびパルス幅を選択し、レーザ出力を決定する。
次に、加工装置10(制御装置30)は、アシストガス噴射条件を決定する(ステップST8)。例えば、加工装置10(制御装置30)は、ステップST2で決定した被加工部材Wの材質や厚み、ステップST3で決定した加工条件、ステップST5で決定したレーザLの許容旋回数、許容旋回径、ステップST7で決定したレーザ出力などに基づいて、アシストガスG2の圧力や流量を決定する。また、同時に、加工装置10(制御装置30)は、ステップST2で決定した被加工部材Wの材質や厚み、ステップST3で決定した加工条件、ステップST5で決定したレーザLの許容旋回数、許容旋回径、ステップST7で決定したレーザ出力などに基づいて、シールドガスG1の圧力や流量を決定する。なお、ステップST8においては、被加工部材Wの熱影響層Waの厚みと、被加工部材Wの表面および裏面の溶融物の飛散量もしくは飛散長さと、被加工部材Wに吹きつけるアシストガスG2の圧力と、被加工部材Wに吹きつけるアシストガスG2の流量と、の関係に基づいて、被加工部材Wの熱影響層Waの許容厚みと、前記飛散量もしくは前記飛散長さと、を満足する範囲にアシストガスG2の圧力と流量とを決定し、アシストガスG2の圧力と流量とを制御してもよい。
次に、加工装置10(制御装置30)は、被加工部材Wに対して加工を実行する(ステップST9)。例えば、加工装置10(制御装置30)は、ステップST8で決定したアシストガス噴射条件に基づいてガス供給源80からアシストガスG2を供給してノズル38(第2ノズル部78)から噴射し、ステップST8でアシストガス噴射条件と同時に決定したシールドガスG1の噴射条件に基づいてガス供給源80からシールドガスG1を供給してノズル38(第1ノズル部77)から噴射し、ステップST7で決定したレーザ出力に基づいてレーザ発振器12を発振させてレーザLを出射させると同時に、ステップST6で決定した回転数と位相角の差とに基づき第1中空モータ56および第2中空モータ58の回転を調整し、被加工部材Wに対してレーザLを照射し、加工を実行する。上述したステップST1からステップST9により、加工装置10(制御装置30)は、被加工部材Wに加工処理を施す。
ここで、ステップST1で決定した加工モードが穴あけ加工の場合、ステップST9において、レーザ発振器12から出射されたレーザLは、案内光学系14を介して照射ヘッド16の入射端に入射し、図2、図4および図6に示すように、ステップST6で決定した回転数と位相角の差とで矢印a方向に回転する第1プリズム51および第2プリズム52により屈折し、屈折前のレーザLの光軸OAと同軸となる光路の中心Pから偏心した位置に照射される。この状態で第1プリズム51と第2プリズム52とを同じ回転周期で回転させると、レーザ照射点が屈折前のレーザLの光軸OAと同軸となる回転軸の光路の中心P周りに旋回し、中心Pを旋回中心とする仮想円IC上をレーザLの照射位置IPが移動し、被加工部材Wに穴Wbがあけられる。なお、ステップST1で決定した加工モードが穴あけ加工の場合、穴径は設定値によりほぼ決まる。これに対して溶接加工、クラッディング加工などは、熱影響層Waや表面、裏面の飛散物量の制御を旋回数に加えて、旋回径Rも用いることが可能である。
次に、図9から図16を用いて、加工装置10によるレーザLの照射動作について説明する。図9は、加工装置が照射するレーザの照射動作の説明図である。図10は、加工装置が照射するレーザの軌跡の一例を示す模式図である。図11は、加工装置が照射するレーザの軌跡の一例を示す模式図である。図12は、加工装置が照射するレーザの軌跡の一例を示す模式図である。図13は、複数回に分けて穴あけ加工する際のレーザの軌跡の一例を示す模式図である。図14は、斜めに穴あけ加工する際の動作の説明図である。図15は、レーザ旋回部の動作の説明図である。図16は、ノズルが噴射するアシストガスの圧力の説明図である。
一定周期でON/OFFさせて被加工部材WにレーザLを照射する場合、図9に示すように、加工装置10は、レーザLのON/OFFの周期を、照射位置IPの旋回周期の非整数倍とすることが好ましい。すなわち、加工装置10は、レーザLのON/OFFの周期と、照射位置IPの旋回周期とをずらすことにより、一周目はレーザLを照射位置IPaに照射し、二周目はレーザLを照射位置IPbに照射することができる。つまり、加工装置10は、三周目以降も動揺にレーザLのON/OFFを繰り返すことで、照射位置を順次ずらすことができる。これにより、加工装置10は、レーザLの照射位置が各周回でずれ、被加工部材Wの加工対象の領域に効率よくレーザLを照射することができる。
また、第1プリズム51と第2プリズム52との位相角の差を連続的に変化させつつ第1プリズム51および第2プリズム52を回転させる場合、図10に示すように、加工装置10は、中心Pから徐々に離れる渦巻状の軌跡TRでレーザLを被加工部材Wに照射することができる。これにより、加工装置10は、渦巻状にレーザLを照射することで、レーザLが入りにくくなる厚みを有する被加工部材Wに対しても精度良く加工することができる。
同様に、図11および図12に示すように、加工装置10は、楕円状やハート状の軌跡TRで被加工部材WにレーザLを照射することもできる。つまり、加工装置10は、第1プリズム51および第2プリズム52を回転させつつ第1プリズム51と第2プリズム52との位相角の差を連続的に変えることで、レーザLの旋回径Rを変え、種々の軌跡TRでレーザLを被加工部材Wに照射することができる。すなわち、加工装置10は、第1プリズム51と第2プリズム52との回転および位相角の差を制御することで、種々の形状の軌跡TRでレーザLを被加工部材Wに照射することができる。
また、被加工部材Wに対して施す加工処理に適したレーザLの旋回径Rを光学上の理論値から算出した後、熱影響層Waを考慮してその旋回径Rを補正する場合、図13に示すように、加工装置10は、一周目は穴あけ加工する目標穴の穴径よりも小さい円形状の軌跡TRaでレーザLを被加工部材Wに照射し、二周目は穴あけ加工する目標穴の穴径と同じ大きさの円形状の軌跡TRbでレーザLを被加工部材Wに照射する。この場合、一周目のレーザLの旋回径Raは目標穴よりも小さい旋回径とし、二周目のレーザLの旋回径Rbは目標穴をあけるための旋回径を光学上の理論値から算出した後に目標穴において熱影響層Waの厚みTHが許容厚みの範囲内となるように補正した旋回径とすることが好ましい。これにより、レーザLが被加工部材Wに最初に照射される一周目では熱の拡がりが大きくなるが、加工装置10は、一周目では目標穴よりも小さい穴をあけることで熱の拡がりを抑え、二周目で目標穴をあけることができる。つまり、加工装置10は、一周目で粗加工し、二周目で仕上げ加工することができるので、高精度で加工することができる。
また、複数の異なる材料の層を有する被加工部材Wに斜めの穴Wcをあける場合、例えば、セラミック層W1と金属層W2とを有する薄板状の被加工部材Wに対して傾斜角αが20°から40°の斜めの穴Wcをあける場合、図14から図16に示すように、加工装置10は、割出機構39によりノズル38の割出角度を20°から40°とし、セラミック層W1では、照射するレーザLの旋回数を相対的に遅くして照射位置IPにおける単位時間当たりのエネルギを高くすると同時に、アシストガスG2の圧力と流量とを相対的に低くして穴あけ加工する。また、加工装置10は、金属層W2では、照射するレーザLの旋回数を相対的に速くして照射位置IPにおける単位時間当たりのエネルギを低くすると同時に、アシストガスG2の圧力と流量とを相対的に高くして穴あけ加工する。
これにより、加工装置10は、熱影響層Waの厚みTHを抑えつつ熱伝導性の比較的に低いセラミック層W1に高精度で穴をあけることができ、熱影響層Waの厚みTHを抑えつつ熱伝導性の比較的に高い金属層W2に高精度で穴をあけることができる。さらに、加工装置10は、セラミック層W1および金属層W2のそれぞれの穴あけにかかる所要時間を短縮することができる。つまり、加工装置10は、セラミック層W1および金属層W2のそれぞれに適した加工条件で加工する多段階加工を行うことができるので、セラミック層W1および金属層W2を一直線状に貫く加工品質の高い斜めの穴Wcをあけることができる。
また、加工装置10は、セラミック層W1と金属層W2との境界付近では、金属層W2側に照射するレーザLの軌跡TRが、セラミック層W1側に照射するレーザLの軌跡TRよりも相対的に小さくなる非真円形状とする。これにより、加工装置10は、金属層W2の熱影響層Waの厚みTHを抑えることができ、セラミック層W1よりも穴あけ加工速度が相対的に速い金属層W2の穴あけの進行速度を抑えることができる。つまり、加工装置10は、セラミック層W1と金属層W2とを同様に穴あけできる。すなわち、加工装置10は、セラミック層W1および金属層W2のそれぞれに適した加工条件で加工する多段階加工を行うことができ、セラミック層W1および金属層W2を一直線状に貫く加工品質の高いストレート穴をあけることができる。
また、加工装置10は、上記多段階加工において、各段階に適したガス種のアシストガスG2を用いることにより、より適した加工条件で被加工部材Wに加工処理することができる。
また、加工装置10は、互いに異なるガス種のシールドガスG1とアシストガスG2とをノズル38に供給し、被加工部材Wの加工部位でシールドガスG1とアシストガスG2とを混合させて混合ガスを作成し、作成した混合ガスの雰囲気下で被加工部材Wを加工することができる。これにより、加工装置10は、容易に混合ガスを得ることができ、ガス比、ガス種、圧力や流量などを容易に変更することもできる。つまり、加工装置10は、加工に適した混合ガスを用いて加工することができる。
また、加工装置10は、被加工部材Wの材質や加工モードによりスパッタの発生量が異なるので、スパッタの発生量に応じてシールドガスG1の圧力と流量とを調整することができる。これにより、加工装置10は、透光部材76へのスパッタの付着を抑え、透光部材76の交換等のメンテナンス間隔を延ばすことができる。
また、加工装置10は、撮像手段40により被加工部材W上の加工部位を観察しつつ、照射するレーザLの焦点と被加工部材Wとのギャップをギャップ検出手段41検出して加工処理を行うことができるので、加工調整作業などが容易に行えるようになる。
また、加工装置10は、第1回転機構53が第1中空モータ56で駆動され、第2回転機構54が第2中空モータ58で駆動され、割出機構39が中空モータ82で駆動されることから、第1回転機構53、第2回転機構54、割出機構39のそれぞれにはバックラッシュがないので、第1回転機構53および第2回転機構54による第1プリズム51と第2プリズム52との位相角の差を高精度に制御することができ、割出機構39によるノズル38の割出角度を高精度に制御することができる。これにより、加工装置10は、被加工部材Wに照射するレーザLの旋回径Rを高精度に制御することができ、被加工部材Wに照射するレーザLの割出角度を高精度に制御することができる。
また、加工装置10は、被加工部材Wに対して旋回するレーザLのパワーを周回ごとに変調することが好ましい。例えば、加工装置10は、熱影響層Waの広がりを抑えるために、被加工部材Wの加工部位に対するレーザLのパワー(出力)を周回ごとに変調する。加工装置10は、レーザLの出力の変調として、例えば、パルス変調、リニア変調、高周波重畳変調などを用いることで、被加工部材Wに施す加工処理に適したレーザLを出力する。これにより、加工装置10は、被加工部材Wに対する加工品質を安定化することができる。
また、加工装置10は、第1中空モータ56と第2中空モータ58との位相角の差の誤差を0.1°以内とすることが好ましい。つまり、加工装置10は、第1プリズム51と第2プリズム52との位相角の差の誤差を0.1°以内とすることが好ましい。この場合、制御装置30は、エンコーダ65から出力された第1スピンドル55および第2スピンドル57の回転数と回転位置(位相角)とに基づいて、上述したステップST6で決定した第1プリズム51と第2プリズム52との位相角の差の誤差を0.1°以内とする。これにより、加工装置10は、第1プリズム51および第2プリズム52の光学特性にもよるが、旋回径Rのずれを数十μm以内とすることができ、被加工部材Wに対して精度良くレーザLを照射して加工することができる。
また、加工装置10は、レーザLの出力周波数が1kHz未満では、第1プリズム51および第2プリズム52を20rpm以上で回転させることが好ましく、レーザLの出力周波数が1kHz以上では、第1プリズム51および第2プリズム52を200rpm以上で回転させることが好ましい。つまり、加工装置10は、被加工部材Wに照射するレーザLの旋回数を、レーザLの出力周波数が1kHz未満では20rpm以上とすることが好ましく、レーザLの出力周波数が1kHz以上では200rpm以上とすることが好ましい。
加工装置10は、レーザLの出力周波数に応じて第1プリズム51および第2プリズム52の回転数を調節することで、加工をより高速に行うことができ、さらに加工精度をより向上することができる。すなわち、加工装置10は、レーザLの出力周波数が相対的に高い場合は、被加工部材Wに照射されるレーザLのエネルギが相対的に高くなることから、レーザLを相対的に高速旋回させ、レーザLの出力周波数が相対的に低い場合は、被加工部材Wに照射されるレーザLのエネルギが相対的に低くなることから、レーザLを相対的に低速旋回させる。また、被加工部材Wに照射されるレーザLを相対的に高速旋回させることで、一定範囲において均一にレーザLを照射することができ、レーザLの出力が一部に集中することを抑制できる。これにより、加工装置10は、熱影響層Waの厚みTHの制御を行いやすくなり、加工精度を高くすることもできる。また、被加工部材Wに照射されるレーザLを相対的に高速旋回させることで、レーザLを相対的に高出力にしても熱影響(熱ダメージの影響)を抑制し、熱影響層Waの厚みTHを抑え、加工品質を維持しつつ加工速度を高速化することができる。
また、加工装置10は、被加工部材Wとして鋼板などの金属材料を用いることで、好適に切断加工、穴あけ加工、溶接加工、クラッディング加工、表面改質加工、表面仕上げ加工あるいはレーザ積層造形することができ、且つ、切断面をより好適な形状とすることができる。これにより、加工装置10は、加工精度を高くすることができる。また、加工装置10は、旋回させながらレーザLを照射することで、レーザLの出力が一部に集中することを抑制することができることから、高出力のレーザLを用いることができるようになるので、溶接加工やクラッディング加工に好適に使用することができ、耐熱性の高い材料にも好適に使用することができる。
また、加工装置10は、第1回転機構53を第1中空モータ56で回転駆動し、第2回転機構54を第2中空モータ58で回転駆動することから、第1中空モータ56および第2中空モータ58の径方向を小型化することができるので、照射ヘッド16を小型化することができる。つまり、加工装置10の大型化を抑制することができる。
また、加工装置10は、制御装置30が第1回転機構53および第2回転機構54の回転数を決定することにより、熱影響層Waの厚みTHを許容厚み以下としつつ被加工部材Wを加工することができる。
次に、図17から図24を用いて、加工装置10による他の加工例について説明する。図17は、加工装置による切断加工の動作の説明図である。図18は、切断加工された被加工部材の熱影響層の説明図である。図19は、加工装置による溶接加工の動作の説明図である。図20は、溶接加工された被加工部材の熱影響層の説明図である。図21は、加工装置によるクラッディング加工の動作の説明図である。図22は、クラッディング加工された被加工部材の熱影響層の説明図である。図23は、加工装置による表面改質加工の動作の説明図である。図24は、表面改質加工された被加工部材の熱影響層の説明図である。
加工装置10は、加工モードが切断加工の場合、図17および図18に示すように、XY平面(水平面)のうちの任意の方向である矢印b方向に照射ヘッド16を走査させることにより、軌跡TRのようにレーザLを旋回させつつ矢印b方向に照射し、熱影響層Waの厚みTHを許容厚み以下に抑えることができる。これにより、加工装置10は、レーザLを照射幅Dで被加工部材Wに照射し、照射幅Dで被加工部材Wを切断することができる。また、加工装置10は、第1プリズム51および第2プリズム52の回転数を制御することにより、被加工部材Wに照射されるレーザLの旋回数を制御し、熱影響層Waの厚みTHの許容厚みを制御することができる。
また、加工装置10は、加工モードが溶接加工の場合、図19および図20に示すように、矢印b方向(XY平面のうちの任意の方向)に照射ヘッド16を走査させながらレーザLの照射位置IPに溶接ワイヤ91等を供給することにより、軌跡TRのようにレーザLを旋回させつつ矢印b方向に照射する。これにより、加工装置10は、例えば、I形などの開先形状である一方の被加工部材W3と他方の被加工部材W4とを溶接部Wdで溶接することができる。また、加工装置10は、第1プリズム51および第2プリズム52の回転数を制御することにより、一方の被加工部材W3と他方の被加工部材W4との開先に照射されるレーザLの旋回数を制御し、熱影響層Waの厚みTHを許容厚みを制御することができる。
また、加工装置10は、加工モードがクラッディング加工の場合、図21および図22に示すように、矢印b方向(XY平面のうちの任意の方向)に照射ヘッド16を走査させながらレーザLの照射位置IPに肉盛り材ワイヤ92等を供給することにより、軌跡TRのようにレーザLを旋回させつつ矢印b方向に照射する。これにより、加工装置10は、被加工部材W上に肉盛り部Weを形成することができる。また、加工装置10は、第1プリズム51および第2プリズム52の回転数を制御することにより、被加工部材Wに照射されるレーザLの旋回数を制御し、熱影響層Waの厚みTHの許容厚みを制御することができる。
また、加工装置10は、加工モードが表面改質加工の場合、図23および図24に示すように、矢印b方向(XY平面のうちの任意の方向)に照射ヘッド16を走査させることにより、軌跡TRのようにレーザLを旋回させつつ矢印b方向に照射する。これにより、加工装置10は、レーザLを照射幅Daで被加工部材Wに照射することで、例えば、被加工部材Wの表面を平滑化したり、被加工部材Wの表面の材料粒子を微細化したりし、被加工部材Wの表面を改質した表面改質部Wfを形成することができる。また、加工装置10は、第1プリズム51および第2プリズム52の回転数を制御することにより、被加工部材Wに照射されるレーザLの旋回数を制御し、熱影響層Waの厚みTHの許容厚みを制御することができる。
本実施形態において、被加工部材Wの熱影響層Waは、被加工部材Wに照射されたレーザLにより形成される再溶融層、酸化層、クラック、ドロスを少なくとも1つ含む。再溶融層は、加工時に、レーザLの照射により被加工部材Wの固体が液体化し、再び固体化した層である。再溶融層は、加工モードにより異なるが、穴あけ加工、切断加工の場合、レーザLの照射方向(進行方向)の先に形成される層ではなく、レーザLの照射方向(進行方向)に直交する方向に形成される層であり、レーザLを照射することで形成された穴Wbの内周面や、切断された被加工部材Wの切断面に形成されるものである。また、再溶融層は、加工モードが溶接加工、クラッディング加工、表面改質加工、表面仕上げ加工、レーザ積層造形の場合、レーザLの照射方向(進行方向)の先と照射方向に直交する方向とに形成される層であり、レーザLを照射することで形成された溶接部Wdの周囲や下側、肉盛り部Weの周囲や下側、表面改質部Wfの周囲や下側に形成されるものである。
酸化層は、被加工部材Wが金属等である場合、アシストガスG2として酸素を使用した際に、被加工部材Wの穴Wbの内周面や切断面に形成される酸化被膜である。クラックは、レーザLの照射により被加工部材Wが急速加熱され、この急速加熱時に被加工部材Wの穴Wbの内周面や切断面に生じる微細なひび割れ(マイクロクラック)である。ドロスは、被加工部材Wの穴あけ時や切断時などに液体化した材料が溶融物となって、被加工部材Wの穴Wbの内周面や切断面に付着して固体化した付着物である。被加工部材Wの熱影響層Waの厚みは、再溶融層の厚み、酸化被膜の厚み、ひび割れの深さ、付着物の厚みを含む。
許容厚みは、切断加工、穴あけ加工、溶接加工、クラッディング加工、表面改質加工、表面仕上げ加工、レーザ積層造形の少なくとも1つを含む加工処理を被加工部材Wに施した際に、穴Wbの内周面、切断部分や溶接部Wdの熱影響層Waの厚みTH、肉盛り部Weや表面改質部Wfの熱影響層Waの厚みTHなどが、加工処理を施された製品としての被加工部材Wにおいて許容できる範囲内の厚みである。
また、許容厚みは、加工モードにより異なるが、穴あけ加工、切断加工の場合、レーザLの照射方向(進行方向)に直交する方向の長さである。また、許容厚みは、加工モードが溶接加工、クラッディング加工、表面改質加工、表面仕上げ加工、レーザ積層造形の場合、レーザLの照射方向(進行方向)の長さ、および、レーザLの照射方向に直交する方向の長さである。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る照射ヘッド16について説明する。図25は、第2実施形態に係る照射ヘッドの概略構成を示す説明図である。第2実施形態に係る照射ヘッド16の基本的構成は、第1実施形態に係る加工装置10の照射ヘッド16と同様であるので、同一部分の構成の説明は省略する。第2実施形態に係る照射ヘッド16は、コリメート光学系34、レーザ旋回部35、集光光学系37のそれぞれのレーザLの光路が直線状(同軸上)に並んで一体的に連結される。
照射ヘッド16は、図25に示すように、コリメート光学系34と、レーザ旋回部35と、集光光学系37と、ノズル38と、を有する。照射ヘッド16は、案内光学系14から出力されるレーザLの光路において、上流側から下流側に向かって、コリメート光学系34、レーザ旋回部35、集光光学系37、ノズル38の順で配置される。照射ヘッド16は、案内光学系14から出力されたレーザLをノズル38に対面する位置に配置された被加工部材Wに向けて照射する。
レーザ旋回部35は、第1回転機構53で回転駆動され、第1プリズム51を支持する中空筒状の第1スピンドル55と、第2回転機構54で回転駆動され、第2プリズム52を支持する中空筒状の第2スピンドル57と、を有する。これにより、照射ヘッド16は、光路の中心P周りにレーザLを回転させて、被加工部材Wに照射されるレーザLの照射位置IPを旋回させる。
また、照射ヘッド16は、第1回転機構53および第2回転機構54の回転数、第1プリズム51と第2プリズム52との位相角の差を制御することにより、被加工部材Wに照射されるレーザLの旋回径R、旋回数および軌跡TRなどを加工モード等に合わせて変えることができる。
また、照射ヘッド16は、撮像手段40、ギャップ検出手段41などを有し、第1プリズム51と第2プリズム52との回転数や位相角の差を制御することにより、上記第1実施形態に係る照射ヘッド16と同様の加工を行うことができる。
[実験例]
ここで、加工装置10を用いて被加工部材Wに施した穴あけ加工の実験例について説明する。図26は、加工装置による被加工部材の加工例を示す図である。図27は、図26に示す被加工部材を反対側から見た図である。
被加工部材Wに照射するレーザLは、レーザピークパワーを100W〜20kW、周波数を5Hz〜10kHz、パルス幅を1μs〜100ms、照射時間を10ms〜10秒、焦点距離を40〜400mm、旋回数を20〜5000rpmとした。アシストガスは、圧力が0.1〜1MPaの酸素を用いたが、空気や窒素でもよいし、アルゴンガス(Ar)やキセノンガス(Xe)等の希ガスでもよい。また、被加工部材Wは、厚さが0.5〜10mmのインコネル(登録商標)を用いた。
加工装置10により上記条件で加工を行った結果を図26および図27に示す。ここで、図26は、被加工部材Wの表面(レーザの入射側)を示し、図27は、被加工部材Wの裏面を示す。本実験例では、図26および図27に示すように、被加工部材Wに穴Wbを形成した。加工装置10は、上記条件で加工を行うことで、レーザの照射時間が0.2秒であっても、穴Wbの周囲にゆがみや凹凸が少なく、高い精度で加工できていることがわかった。
以上のように、実施形態に係る加工装置10によれば、第2ノズル部78から被加工部材WにアシストガスG2を吹きつけることから、加工装置10、すなわちレーザ加工装置を簡単かつ小型な構成で、第1ノズル部77の開口径Kを大きくしてもアシストガスG2の消費量を抑えることができるという効果を奏する。また、第1ノズル部77の開口径Kを大きくしてもアシストガスG2の消費量を抑えることができるので、第1ノズル部77の開口径Kを大きくし、被加工部材Wに照射するレーザLの旋回径Rを大きくすることができるという効果を奏する。また、第1プリズム51と第2プリズム52との位相角の差を変えるだけで、被加工部材Wに照射されるレーザLの旋回径Rを変えることができるので、加工装置10を簡単な構成にすることができるという効果を奏する。また、第1プリズム51と第2プリズム52との位相角の差を制御し、被加工部材Wに照射されるレーザLの旋回径Rを変えることで、加工モードや加工条件により適した旋回径Rで加工処理を行うことができるようになる。これにより、要求される加工品質を満たすことができ、より高い精度の加工を高速で行うことが可能であるという効果を奏する。
なお、上記実施形態において、加工装置10は、ファイバレーザ出力装置や短パルスレーザ出力装置を用いているが、これらに限定されず、被加工部材Wに対して加工処理を施すことができるレーザLを出力するレーザ出力装置であればよい。これにより、加工装置10は、種々のレーザ出力装置を利用することができ、加工用途に応じて適したレーザ出力装置を用いることができる。
また、ファイバレーザ出力装置は、連続波発振(Continuous Wave Operation)あるいはパルス発振(Pulsed Operation)のいずれかの方式を用いるレーザ出力装置であってもよい。ファイバレーザ出力装置は、連続波発振の場合、高出力を得やすいことから、切断加工や溶接加工などに好適に使用することができ、パルス発振の場合、熱的影響を抑えやすいことから、微細加工などに好適に使用することができる。
また、ファイバレーザ出力装置は、被加工部材Wに照射するレーザLの断面の光強度分布が、ガウシアンモード(シングルモード)あるいはマルチモードであってもよい。ファイバレーザ出力装置は、ガウシアンモードの場合、照射位置IPのスポット径を絞り込みやすく、高出力を得やすいことから、溶接加工、切断加工および極微細な穴あけ加工などに好適に使用することができ、マルチモードの場合、母材への熱的影響を抑えやすいことから、表面改質加工、表面仕上げ加工およびブレージング加工などに好適に使用することができる。
また、上記実施形態において、加工装置10は、板状の被加工部材Wを加工しているが、被加工部材Wの形状は特に限定されず、種々の形状とすることができる。また、加工装置10は、切断加工、穴あけ加工、溶接加工、クラッディング加工、表面改質加工、表面仕上げ加工、レーザ積層造形を組み合わせて被加工部材Wに対して加工処理を施してもよい。また、加工装置10は、レーザLの照射位置IPを制御することで、屈曲点を有する軌跡TRで照射したり、湾曲形状を有する軌跡TRで照射したりすることもできる。これにより、加工装置10は、被加工部材Wに対して、レーザLを旋回しつつ照射する各種加工処理を施すことができる。
また、加工装置10は、加工精度を高くすることができるため、被加工部材Wとして鋼板などの金属材料を用いることが好ましいが、これに限定されず、被加工部材Wとして、インコネル(登録商標)、ハステロイ(登録商標)、ステンレス、セラミック、鋼、炭素鋼、セラミックス、シリコン、チタン、タングステン、樹脂、プラスチックス、繊維強化プラスチック、複合材、Ni基耐熱合金のうち少なくともいずれかの材料で作成されていればよい。また、加工装置10は、熱影響(熱ダメージの影響)を低減や除去できるため、熱影響を低減や除去して加工を行う必要のある各種材料、複合材に用いることができる。これにより、加工装置10は、種々の材料に対して加工処理を施すことができる。
また、加工装置10は、レーザLの照射位置IPと被加工部材Wとの相対位置を移動させるために、被加工部材Wを移動させてもよく、照射ヘッド16を移動させてもよく、被加工部材Wと照射ヘッド16とを移動させてもよい。これにより、加工装置10は、被加工部材Wに対してより高速で加工処理を施すことができる。
また、上記実施形態において、被加工部材W上でレーザLを旋回させつつ当該レーザの旋回径Rを変更する加工装置10について説明したが、加工装置10は、照射されるレーザLの旋回径Rを変えた場合、旋回するレーザの照射位置IPの移動速度(例えば、仮想円IC上の線速度)が一定となるように、第1プリズム51および第2プリズム52の回転数を制御してもよい。これにより、加工装置10は、被加工部材Wに照射されるレーザLの照射位置IPにおける単位時間当たりのエネルギを一定とすることができる。
また、加工装置10は、被加工部材Wにあけたパイロット穴を撮像手段40で撮像し、撮像したパイロット穴の画像データから穴径を測定し、測定した穴径と照射したレーザLの条件(ピーク出力やパルス幅、旋回数、旋回径Rなど)とから熱影響層Waの厚みTHを推定し、推定した熱影響層Waの厚みTHから該熱影響層Waの許容厚みの範囲となるレーザLの旋回数と旋回径Rとを決定し、決定したレーザLの旋回数と旋回径Rとで第1中空モータ56および第2中空モータ58の回転数と位相角の差とを制御装置30で制御し、本穴をあけてもよい。これにより、加工装置10は、被加工部材Wの熱影響層Waの厚みTHが許容厚みの範囲内となるように、より正確に制御することができる。
また、加工装置10は、コリメート光学系34、レーザ旋回部35、反射光学系36、集光光学系37などを冷却ジャケット等の冷却機構により冷却してもよい。これにより、加工装置10は、レーザLによるレンズやミラーなどの温度上昇を抑えることができるので、照射ヘッド16の光学特性を安定化し、レーザLの照射位置IPを高精度に制御することができる。
また、上記実施形態において、加工装置10は、ギャップ検出手段41が集光光学系37の集光レンズに対向する位置(真後ろ)に配置されているが、レーザLの焦点と被加工部材Wとのギャップとを検出できる位置であればよいので、照射ヘッド16の他の位置に配置してもよい。これにより、加工装置10は、装置の形態に応じてギャップ検出手段41の取付位置を変更することができる。
また、上記実施形態において、加工装置10は、第1プリズム51の入射面51aの傾きを1°未満とし、第2プリズム52の出射面52bの傾きを1°未満としたが、第1プリズム51の入射面51aで反射したレーザ、および、第2プリズム52の出射面52bで反射したレーザがレーザ発振器12の出射口に到達しない傾きであればよい。これにより、加工装置10は、案内光学系14の長さに応じて入射面51aおよび出射面52bの傾きを変えることができる。また、入射面51aが上記傾きとなるようにプリズムホルダに第1プリズム51を取り付けてもよく、出射面52bが上記傾きとなるようにプリズムホルダに第2プリズム52を取り付けてもよい。
また、セラミック層W1と金属層W2とを有する被加工部材Wに対して二段階で条件を変えて加工する方法を説明したが、これに限定されず、例えば、三層以上であれば三段階で条件を変えて加工することができ、多層であれば多段階で条件を変えて加工(多段階加工)することができる。また、セラミック層W1および金属層W2の他に、種々の材料を用いることができる。これにより、加工装置10は、被加工部材Wに多段階で加工処理を施すことができ、被加工部材Wの材質に適した加工条件で加工を行うことができる。
また、第1中空モータ56および第2中空モータ58のうち少なくとも一方は、超音波モータであってもよい。これにより、加工装置10は、第1中空モータ56および第2中空モータ58の位相角(回転位置)の位置決め精度を容易に向上することができる。
また、被加工部材Wに照射されるレーザLの旋回数を上げたり、レーザLのパルス幅を短くしたりしてもよい。これにより、加工装置10は、熱影響層Waの厚みTHをより薄くすることができる。
また、被加工部材W上のレーザLの照射位置IPからの飛散物の量とレーザLの旋回数との相関関係を定めた制御マップ(飛散物制御マップ)を参照し、第1プリズム51および第2プリズム52の回転数、第1プリズム51と第2プリズム52との位相角の差を決定し、決定した回転数と位相角の差とで第1中空モータ56および第2中空モータ58を回転させてもよい。これにより、加工装置10は、熱影響層Waの厚みTHと、飛散物の量とを抑えることができる。
また、上記実施形態において、シールドガスG1およびアシストガスG2を同一のガス種としているが、互いに異なるガス種であってもよい。これにより、加工装置10は、加工モードや加工条件、被加工部材Wの材質等に適したシールドガスG1やアシストガスG2を用いて加工することができる。
また、上記実施形態において、案内光学系14は、光ファイバであるが、これに限定されず、ミラーやレンズを組み合わせ、レーザLを反射や集光等して照射ヘッド16に案内してもよい。これにより、照射ヘッド16は、種々の加工装置で利用することができる。
また、上記実施形態において、X軸移動機構22により相対移動する加工ステージ20について説明しているが、加工ステージ20は、XYステージまたはXYZステージ等であってもよい。また、照射ヘッド16をXYZの三方向に相対移動させてもよく、照射ヘッド16をアームで支持し、XYZの3軸方向に加え、C軸方向に移動させてもよい。これにより、照射ヘッド16は、種々の形態の加工装置に利用することができる。