以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
〔訓練システムの構成〕
図1は本発明による訓練システムの一実施形態のシステム構成を示すブロック図である。
図1に示されるように、訓練システム10は、被訓練者Aに装着される装着式動作補助装置B(以下「動作補助装置」と言う)と、痙性緩和装置Cと、不要信号除去部(不要信号除去手段)Dとを有する。被訓練者Aは、例えば脳卒中慢性期の症状と診断されており、脳(上位中枢)からの運動指令が末梢神経を経由して筋肉に正常に送られてこない場合が想定される。そのため、被訓練者Aは、左右の脚を前後方向に動かして歩行しようと思っても脚が動かないため、歩行動作が行えなかったり、あるいは腕を動かそうとしても腕が動かない状況にある。
図1において、被訓練者Aの体の一部での脳から筋肉へ送られる信号の伝送経路が模式的に示してあり、脳A1からの指令信号は、脊髄A2、神経A3、筋紡錘A4、筋肉A5に伝達されると、筋肉A5の力で関節A6が回動動作する。その際、神経A3から筋紡錘A4においては、生体信号としての神経系生体信号が生体信号検出センサB1により検出される。また、筋肉A5においては、生体信号としての筋電位信号が生体信号検出センサB1により検出される。尚、関節A6は、膝関節、股関節、肩関節、肘関節、手首関節などの四肢の各関節に相当する。
また、被訓練者Aが脳卒中により腕又は脚が麻痺している場合、信号が正確に、もしくは十分に伝わらない状態になっている。そのため、生体信号検出センサB1は、筋電位信号を検出できず、神経系生体信号の微弱な信号を検出することになる。
また、動作補助装置Bは、概略、被訓練者Aの生体信号(電位信号)を検出する生体信号検出センサB1と、角度センサB2と、データ格納部B3と、制御装置B4と、電力増幅部B5と、駆動部B6と、無線通信機B7とを有する。生体信号検出センサB1は、被訓練者Aの筋肉の動作に伴って発生する生体信号(筋電位信号)を検出しようとすると、被訓練者Aの麻痺箇所(麻痺した筋肉)の近くに貼り付けられるため、後述するように電気刺激を麻痺箇所に付与する際の不要信号も同時に検出することになる。
角度センサB2により検出された関節A6の回動角度の検出値は、データ格納部B3に格納されて制御装置B4に入力される。制御装置B4は、後述するように演算処理を行って生体信号に応じたモータトルクが得られるように制御信号を生成し、電力増幅部B5で増幅された電気信号を駆動部B6のモータに印加する。駆動部B6は、駆動力を被訓練者Aの関節A6に伝達し、被訓練者Aの関節A6を回動させる。このように動作補助装置Bは、被訓練者Aから検出された生体信号、すなわち被訓練者Aの意思に基づいてリハビリテーション(運動機能回復訓練)を行うことができる。
痙性緩和装置Cは、電気刺激手段としてのFES装置(FES:Functional Electrical Stimulation)C8と、制御部C2と、無線通信機C3とを有する。被訓練者Aで痙性(痙縮)が発生した場合、被訓練者Aは痙性のため関節A6を意思通りに動かすことができなくなる。FES装置C8は、制御部C2の指令により動作補助装置Bによるリハビリテーションを行う際に、電気刺激を与えることで被訓練者Aの筋肉A5の硬直を緩和する装置である。尚、本実施形態では、電気刺激手段として上記FES装置C8について説明する。しかし、電気刺激手段としては、上記FES装置C8以外に痙性の軽減や筋萎縮を改善して関節の可動域を拡大するための治療的電気刺激(Therapeutic Electrical Stimulation:TES)を行うTES装置を用いても良い。
また、制御部C2は、FES装置C8による電気刺激を行なうと共に、無線通信機C3より動作補助装置Bに対してニューロリハビリテーション許可信号を送信する。そして、動作補助装置Bは、痙性緩和装置Cから送信されるニューロリハビリテーション許可信号を受信した場合にニューロリハビリテーションを開始する。尚、FES装置C8は、制御部C2及び無線通信機C3とは切り離して単独で使用することも可能である。
不要信号除去部Dは、FES装置C8による電気刺激を被訓練者Aの麻痺箇所に与える際、電気刺激に伴う不要信号bを抽出する不要信号抽出部D1と、生体信号検出センサB1により検出された検出信号a(電気刺激による不要信号が重畳された信号)から電気刺激に伴う不要信号bを除去する減算器D2(減算手段)とを有しており、不要信号除去手段を構成している。
ここで、ニューロリハビリテーションについて説明する。従来、身体を中心としたリハビリテーションの手法にロボット技術を加えたものとして、ハーネスに体を固定し、脚に駆動部分を拘束することで歩行運動を機械的に行わせる繰り返し動作補助装置がある。この種の動作補助装置は、被訓練者の脚を動かすという作業を、理学療法士に代わって行うに過ぎない。このような単純なロボット技術のみでは、繰り返し動作によって身体を動かすリハビリテーション支援を行うことができるが、ニューロリハビリテーションのような脳・神経系から末梢神経に至る神経機能回復にまで及ぶニューロリハビリテーション支援を行うには限界がある。このようなリハビリテーションの限界を超えるには、人・機械・情報系の融合複合分野であるサイバニクスを駆使することが有効である。サイバニクスとは、Cybernetics,Mechatronics,Informaticsを中心に脳・神経科学、心理学、社会科学、倫理、法律などを融合複合した新学術領域である。
サイバニクスの観点からニューロリハビリテーションを考えると、生体内の生科学反応によって生じる微弱な生体信号(筋電位、神経活動電位、心電位、脳波など)、筋骨格系の物理的な運動や床面との相互作用、筋紡錘におけるγニューロンからの信号の働き、被訓練者Aと動作補助装置Bとの相互作用、動作補助装置Bに求められる各種機能など、総合的な視点で脳・神経系から身体(筋骨格系)に至る機能改善、機能維持、悪化抑制が期待される。
ニューロリハビリテーションを積極的に推進するためには、動作補助装置Bのように脳・神経系由来の神経筋活動情報としての生体電位信号(bioelectrical signal:BES)を活用したHAL(Hybrid Assistive Limbs)の技術が必要であり、脳・神経系と被訓練者Aの身体とを一体として捉えるニューロリハビリテーションを開拓するサイバニクスを駆使した動作補助装置Bの開発が重要である。
また、被訓練者Aの症状としては、脳卒中等による脳損傷に伴う中枢神経系疾病(片麻痺など)に限らず、例えば脊髄損傷による対麻痺、脳性麻痺による身体運動系の障害、上位中枢から末梢までの上位/下位ニューロンの進行性の広範な運動系障害(ALSなど)、ポリオウイルスの感染による運動神経障害(ポリオ)、末梢神経系の障害(主に運動神経系・下肢筋萎縮、軽度の感覚障害)による神経難病(シャルコー・マリー・トゥース病など)、進行性の筋萎縮による筋力低下を伴う筋疾患(筋ジストフィーなど)などに対しても、ニューロリハビリテーションによる脳・神経系と筋骨格系のトータルな機能改善が可能となる。
また、強い痙性(痙縮)を伴う慢性期の脳卒中患者に対して麻痺対象筋群への電気刺激による痙性緩和療法と共に動作補助装置Bによるリハビリテーションを行うことで、過剰な筋緊張を緩和するだけでなく、筋紡錘におけるγニューロンの働きやαニューロン−γニューロン関連の機序を含むニューロンの多シナプス性の働き等を考慮したニューロリハビリテーションが可能になる。本発明による訓練システムでは、FES装置C8による電気刺激を被訓練者Aの麻痺箇所に与えると共に、不要信号除去部Dにおいて電気刺激による不要信号bが重畳された検出信号aから不要信号bを除去することで正確な生体信号cを生成する。これにより、動作補助装置Bは、当該生体信号cに基づいて制御され、当該被訓練者Aの意思に応じた適正な駆動力を被訓練者Aに伝達してニューロリハビリテーションを効果的に行える。
〔痙性緩和装置Cの構成〕
ここで、痙性緩和装置Cの一実施形態の構成について詳細に説明する。
図2は痙性緩和装置Cの一実施形態を示すブロック図である。図2に示されるように、図11は痙性緩和装置の変形例を示すブロック図である。図11に示されるように、変形例の痙性緩和装置Cは、被訓練者Aの麻痺対象部位の末梢神経に機能的電気刺激(FES)を付与するための物理療法手段であり、前述した制御部C2、無線通信機C3、FES装置C8の他に、入力操作部C4と、タイマC6と、認証・FES条件設定部C7とを有する。
認証・FES条件設定部C7は、入力操作部C4の操作により入力された医師又は理学療法士の認証データ(ID・パスワード)、及び医師又は理学療法士の診断に基づいて入力されたFES条件(刺激周波数、パルス幅、パルス波形・変調、電圧などの条件)を設定する。
また、FES装置C8は、刺激周波数調整部C8−1と、パルス幅調整部C8−2と、パルス波形・変調調整部C8−3と、電圧調整部C8−4と、機能的電気刺激信号生成部C8−5と、電極C8−6とを有する。刺激周波数調整部C8−1は、機能的電気刺激の刺激周波数を認証・FES条件設定部C7により設定された周波数に調整する。パルス幅調整部C8−2は、機能的電気刺激のパルス幅を認証・FES条件設定部C7により設定されたパルス幅に調整する。パルス波形・変調調整部C8−3は、機能的電気刺激のパルス波形を認証・FES条件設定部C7により設定されたパルス波形に調整する。電圧調整部C8−4は、機能的電気刺激の電圧を認証・FES条件設定部C7により設定された任意の電圧に調整する。
機能的電気刺激信号生成部C8−5は、刺激周波数調整部C8−1、パルス幅調整部C8−2、パルス波形・変調調整部C8−3、電圧調整部C8−4により刺激周波数、パルス幅、パルス波形・変調、電圧を調整された電気信号を電極C8−6に出力する。電極C8−6は、被訓練者Aの麻痺対象部位の皮膚に貼り付けられており、痙性(痙縮)が発生しているものと思われる筋肉に機能的電気刺激を印加する。これにより、被訓練者Aの筋肉の硬直に伴う麻痺による痙性を緩和すると共に、痙性(痙縮)の発症に伴う痙攣の症状も緩和されるため、生体信号検出センサ110、112による生体信号の検出精度が向上する。
〔不要信号除去部Dの構成、作用について〕
図3は本発明による訓練システム及び不要信号除去手段を模式的に示す図である。図4は電気刺激信号と生体信号とが合成された検出信号、電気刺激信号、生体信号の各波形を模式的に示す図である。ここでは、被訓練者Aの脚に動作補助装置Bを装着して膝関節のリハビリテーションを行う場合について説明する。尚、図3においては、説明の便宜上、動作補助装置Bの構成を簡略化して示している。
図3に示されるように、例えば被訓練者Aの麻痺箇所となる大腿部の皮膚表面には、一対の生体信号検出センサB1とFES装置C8の一対の電極C8−6とが貼り付けられている。尚、生体信号検出センサB1及び電極C8−6が一対ずつ設けられているのは、大腿部の伸筋と屈筋のそれぞれに電気刺激を与えると共に、伸筋と屈筋のそれぞれから生体信号を検出するためである。
また、被訓練者Aの腰付近など脚の伸筋/屈筋がない部分の皮膚表面には、基準電位eを検出する基準電極B8が貼り付けられている。生体信号検出センサB1により検出された検出信号には、被訓練者Aが帯電している電位も含まれているので、制御装置B4においては基準電極B8から得られた基準電位に対する電位を生体信号として用いる。
不要信号除去部Dは、不要信号抽出部D1と、減算器D2とを有する。また、不要信号抽出部D1は、信号線の先端に、FES装置C8による電気刺激による不要信号bを検出するための電極D3を有する。電極D3は、FES装置C8の電極C8−6の近傍の皮膚表面に貼り付けられるため、FES装置C8の電極C8−6から被訓練者Aの麻痺箇所(硬直した筋肉)に与えられる電気刺激の信号(電位)を皮膚を介して抽出することが可能である。
FES装置C8による電気刺激を被訓練者Aの麻痺箇所に与えると、生体信号検出センサB1は電気刺激による不要信号bが重畳された検出信号a(図4(A)の波形G1参照)を検出することになり、被訓練者Aが筋肉を動作させる際に得られる本来の生体信号を正確に検出することができない。
しかしながら、本実施形態においては、電極D3により検出された電気刺激による不要信号b(図4(B)の波形G2参照)は、減算器D2のマイナス側端子に入力される。そのため、減算器D2では、生体信号検出センサB1の検出信号aから不要信号bが減算(キャンセル)された生体信号c(図4(C)の波形G3参照)を生成する。減算器D2において、不要信号bを除去された生体信号cは、動作補助装置Bの制御装置B4に入力される。
制御装置B4では、不要信号除去部Dで電気刺激の不要信号bを除去された生体信号cに基づいて動作補助装置Bを制御する制御信号dを演算して出力するため、動作補助装置Bは当該被訓練者Aの意思に応じた適正な駆動力を被訓練者Aの脚に伝達して膝関節及び大腿部のニューロリハビリテーションを行うことができる。
〔不要信号除去部Dの変形例1〕
図5は不要信号除去手段の変形例1を模式的に示す図である。図5において、前述した図3と同一部分は、同一符号を付して説明を省略する。
図5に示されるように、FES装置C8の電極C8−6の近傍に電極D3を貼り付けることが難しい場合には、FES装置C8の出力端子から電気刺激の信号bを直接、不要信号除去部Dの減算器D2に入力させる。この場合、FES装置C8の出力端子と減算器D2のマイナス側端子を信号線L1によって接続するため、当該信号線L1が不要信号抽出部D1になる。
従って、変形例1の場合も前述した図3の場合と同様に、制御装置B4においては、不要信号除去部Dで電気刺激の不要信号bを除去された生体信号cに基づいて動作補助装置Bを制御する制御信号dを演算して出力するため、動作補助装置Bは当該被訓練者Aの意思に応じた適正な駆動力を被訓練者Aの脚に伝達して膝関節及び大腿部のニューロリハビリテーションを行うことができる。
〔不要信号除去部Dの変形例2〕
図6は不要信号除去手段の変形例2を模式的に示す図である。図6において、前述した図3と同一部分は、同一符号を付して説明を省略する。
図6に示されるように、FES装置C8に余分な出力端子が無くて、電極C8−6の近傍に電極D3を貼り付けることも難しい場合には、FES装置C8と電極C8−6とを接続する信号線L2から分岐された信号線L3を介して電気刺激の信号bを不要信号除去部Dの減算器D2に入力させる。この場合、信号線L2から分岐された信号線L3が減算器D2のマイナス側端子に接続されるため、当該信号線L3が不要信号抽出部D1になる。
従って、変形例2の場合も前述した図3の場合と同様に、制御装置B4においては、不要信号除去部Dで電気刺激の不要信号bを除去された生体信号cに基づいて動作補助装置Bを制御する制御信号dを演算して出力するため、動作補助装置Bは当該被訓練者Aの意思に応じた適正な駆動力を被訓練者Aの脚に伝達して膝関節及び大腿部のニューロリハビリテーションを行うことができる。
〔動作補助装置Bの制御系〕
ここで、動作補助装置Bについて詳細に説明する。
図7は装着式動作補助装置Bの制御系のシステム構成を示すブロック図である。尚、図7において、FES装置C8及び不要信号除去部Dの説明は、前述した通りなので、ここでは省略する。
図7に示されるように、動作補助装置Bの制御系システムは、被訓練者Aに対してアシスト力を付与する駆動部B6と、被訓練者Aの動作に応じた関節角度(物理現象)を検出する物理現象検出部142と、被訓練者Aの生体電位等を含む生体信号を検出する生体信号検出部144とを備えている。尚、上記駆動部B6は、被訓練者Aに装着される動作補助装着具に設けられた駆動ユニット20のモータ30からなり、複数の駆動ユニット20が装着された場合には、複数のモータ30が含まれる。物理現象検出部142は、上記関節回動角度を検出する角度センサB2、および足底又は靴底の床反力センサ260(図14(A)(B)参照)からなる。生体信号検出部144は、生体信号検出センサB1及び後述する生体信号検出センサ110,112からなる。
データ格納部B3には、基準パラメータデータベース148と、指令信号データベース150とが格納されている。また、生体信号検出部144により検出された生体信号は、基準パラメータデータベース148に格納され、さらに無線通信機B7より痙性緩和装置Cへ送信される。
随意的制御部(随意的制御手段)154は、生体信号検出部144の検出信号に応じた指令信号(随意的制御信号)を電力増幅部B5に供給する。随意的制御部154は、生体信号検出部144に所定の指令関数f(t)またはゲインPを適用して指令信号を生成する。このゲインPは予め設定された値又は関数でも良く、ゲイン変更部156を介して調整される。
また、生体信号検出部144からの生体信号の入力が得られない場合、物理現象検出部142の角度センサにより検出された膝関節の角度データに基づいてモータ30の駆動トルク(トルクの大きさ及び回動角度)を制御する方法を選択することも可能である。
物理現象検出部142の角度センサによって検出された関節角度(θknee,θhip)および床反力センサ260によって検出された荷重のデータは、基準パラメータデータベース148に入力される。フェーズ特定部152では、物理現象検出部142の角度センサにより検出された関節角度ならびに床反力センサ260により検出された荷重を基準パラメータデータベース148に格納された基準パラメータの関節角度と荷重と比較することにより、被訓練者Aの動作のフェーズを特定する。
そして、自律的制御部160では、フェーズ特定部152により特定されたフェーズの制御データを得ると、このフェーズの制御データに応じた指令信号を生成し、この動力を駆動部B6に発生させるための指令信号を電力増幅部B5に供給する。また、自律的制御部160は、前述したゲイン変更部156により調整されたゲインが入力されており、このゲインに応じた指令信号を生成し、電力増幅部B5に出力する。電力増幅部B5は、駆動部B6のモータ30を駆動する電流(駆動信号)を制御してモータ30のトルクの大きさ及び回動角度を制御して当該被訓練者Aにモータ30によるアシスト力を付与する。尚、モータ30は、前述した角度センサB2が内蔵されており、角度センサB2により関節の動作角度θを検出可能な構成になっている。
このように、動作補助装置Bは、被訓練者Aの左脚に貼り付けられた生体信号検出センサ110,112(図9参照)によって検出された検出信号に基づいて、モータ30を制御する制御信号が電力増幅部B5によって増幅されて駆動部B6を構成する駆動ユニット20のモータ30に供給され、被訓練者Aにモータ30のトルクがアシスト力として伝達される。
また、動作補助装置Bでは、生体信号検出部144の検出信号に応じた制御信号を生成する随意的制御系と、物理現象検出部(物理量センサ)142の角度センサによって検出された関節角度及び床反力センサ260により検出された荷重の移動(重心位置)に基づくフェーズの制御データに応じた制御信号を生成する自律的制御系とが併用されたサイバニックハイブリット制御(cybernic hybrid control)が行われる。すなわち、被訓練者Aが身体を動かそうとした場合、その運動意思は、微弱なイオン電流として、図1に示す脳A1から脊髄A2、神経A3、筋紡錘A4、筋肉A5へ伝達されて関節A6を有する筋骨格系が動くことになる。その際、微弱な生体信号が被訓練者Aの皮膚表面から検出されると、随意的制御部154がモータ30を制御して被訓練者Aの意思に応じて関節A6を動作させる。そして、動作補助装置Bは、被訓練者Aの腕、脚などに密着した状態で締結されているため、モータ30の駆動力は、関節A6を回動させる補助力として被訓練者Aに伝達される。
そのため、被訓練者Aの身体が動作補助装置Bのアシスト力によって動くことにより筋紡錘A4からIa求心性ニューロンの信号が神経A3、脊髄A2を経て脳A1に戻る。これにより、被訓練者Aと、脳A1と、動作補助装置Bとの間では、「脳A1→脊髄A2→神経A3→筋紡錘A4→筋肉A5→関節A6→動作補助装置B」という信号伝達系と、「動作補助装置B→関節A6→筋肉A5→筋紡錘A4→神経A3→脊髄A2→脳A1」という信号伝達系というバイオフィードバックが形成される。これが双方向のサイバニック随意制御であり、ニューロリハビリテーションによる神経系の運動機能回復訓練の効果をより高めることが可能になる。
このように、動作補助装置Bは、運動に関する意思決定後の脳から末梢への生体信号をセンシングしてモータ制御に活用する構成であるが、脳活動に対応した生体信号を末梢である筋肉活動から捉えようとしたものである。そして、末梢でセンシングされた脳・神経系にリアルタイムにフィードバックさせることが可能になる。よって、被訓練者Aに動作補助装置Bを装着した状態でリハビリテーションを行うことで双方向の信号伝達系における運動機能回復を促進することができる。
また、重度の運動機能障害を呈する場合、生体信号が検出できないような状態では、随意制御が機能しないため、人間の基本運動パターンや動作メカニズムの解析結果を元にフェーズ毎の制御プログラムによってモータ30を制御するサイバニック自律制御が機能するように制御モードが切り替わる。このような随意制御系と自律制御系とが共存するサイバニックハイブリット制御方式では、例えば急性期などにみられる完全に身体が麻痺した状態から回復期に至る過程、あるいは神経・筋難病疾患における進行過程でも、身体の運動機能の状態に応じて生体信号の振幅や信号特性なども変化するため、これらの症状に対してもリハビリテーションを有効に行える。
〔動作補助装置Bの構成〕
図8は装着式動作補助装置Bの一実施形態を示す斜視図である。尚、図8においては、被訓練者Aが膝関節の動作訓練する場合の動作補助装置Bを例示する。また、被訓練者Aの左脚に装着される動作補助装置Bの構成を図示しているが、被訓練者Aの右脚にも同様な駆動ユニット20(図8中、一点鎖線で示す)を有する動作補助装着具が装着されており、右脚の動作補助装置Bの図示は省略する。
図8に示されるように、動作補助装置Bは、例えば被訓練者Aの腰に装着された腰ベルト60の支持部62に連結されることで左脚の膝関節に駆動ユニット20が装着される場合について説明する。また、腰ベルト60の後側には、駆動ユニット20を制御する制御装置B4及びバッテリ102が装着されている。
駆動ユニット20は、モータ30と、第1の伝達部材40と、第2の伝達部材50とを有する。モータ30は、被訓練者Aの左膝関節の側方に配置される。第1の伝達部材40は、被訓練者Aの左大腿部に締結部材80、82を介して締結され、第2の伝達部材50は被訓練者Aの左脛に締結部材90、92を介して締結される。尚、締結部材80、82及び90、92は、夫々布製のベルト等からなり、各伝達部材40、50が挿通される挿通部81、83及び91、93を有する。
尚、駆動ユニット20は、腕及び脚の各関節のうち任意の関節の動作を補助するように選択的の装着することが可能である。また、駆動ユニット20は、同一の被訓練者Aの複数の関節を補助するように組み合わせることも可能であり、腕及び脚の各関節のうち被訓練者Aが希望する任意の関節を適宜補助するように装着することができる。
動作補助装置Bは、被訓練者Aの左膝関節のみでも装着することが可能であるので、例えば、左膝関節の治療または手術を受けた後の運動機能回復訓練(リハビリテーション)を行うことができる。また、被訓練者Aがベッドで寝た状態、あるいは被訓練者Aが椅子に座った状態でも動作補助装置Bを用いた運動機能回復訓練を行うことができるので、被訓練者Aに無理な負担を掛けずに運動機能回復訓練を適宜行うことが可能である。
〔動作補助装置Bを用いた運動機能回復訓練〕
図9は装着式動作補助装置が装着者の左脚に装着された場合の動作状態を示す側面図である。図10は装着式動作補助装置が装着者の左脚に装着された場合の動作状態を示す背面図である。
図9及び図10に示されるように、被訓練者Aの左膝関節の運動機能回復訓練を行う場合、動作補助装置Bを左脚の膝関節に装着する。また、モータ30の第1の結合部36に結合された第1の伝達部材40は、締結部材80、82によりカフ72、74を密着させた状態で被訓練者Aの左脚大腿部に締結され、被訓練者Aの左脚大腿部と一体化される。さらに、第1の伝達部材40は、ベルト84、86(図8参照)により締結部材80、82と共に強固に保持される。
また、動作補助装置Bの装着状態において、前述した痙性緩和装置CのFES装置C8により電気刺激が麻痺箇所である大腿部の伸筋及び屈筋に印加されることにより硬直された状態の被訓練者Aの大腿部の筋肉は緩和されて動作可能であるため、被訓練者Aが椅子に座った姿勢で膝から下を前方又は後方に曲げようとすると、被訓練者Aの脳A1から神経A3に伝達される神経伝達系生体信号及び筋電位による生体信号を含む検出信号が生体信号検出センサ110、112(B1)により検出される。
生体信号検出センサ110、112(B1)により検出された検出信号には、FES装置C8の電気刺激による不要信号が重畳されているため、前述したように不要信号除去部Dで電気刺激による不要信号が除去された生体信号に基づいて制御信号が生成される。そして、電気刺激に伴う不要信号を含まない生体信号に基づいて制御されたモータ30のトルク(駆動力)が第2の伝達部材50に伝達されて膝関節の角度を180度から120度に曲げることが可能になる。また、被訓練者Aの左右両脚に動作補助装置Bを装着して両脚の運動機能回復訓練を行うため、右脚も左脚と同様に、各生体信号検出センサ(図示せず)が貼り付けられる。
すなわち、制御装置B4は、左脚の大腿部の前側と後側に貼り付けられた生体信号検出センサ110、112によって検出された検出信号から電気刺激に伴う不要信号を除去された生体信号に基づいてモータ制御処理(制御プログラム)を実行する。
従って、被訓練者Aは、FES装置C8による電気刺激が麻痺箇所である大腿部の伸筋及び屈筋に印加されて大腿部の筋肉が緊張状態を緩和されて膝関節を回動可能状態に保たれたまま、脳A1からの神経伝達系生体信号及び筋肉の動きに伴う運動系生体信号(筋電位)によりモータ30のトルク及び回動角を調整することが可能になり、膝関節に無理な力を掛けないように運動機能回復訓練(リハビリテーション)を行うことができる。
また、被訓練者Aが例えば病院のベッドで寝た状態でも任意の関節に対応するように駆動ユニット20を適宜装着できるので、当該被訓練者Aが希望する関節の動作を補助しながら運動機能回復訓練を効率良く行うことができる。
また、被訓練者Aが立ち上がった姿勢になれば、動作補助装置Bを用いて歩行訓練を行うことも可能である。
〔痙性緩和装置による痙性緩和制御処理〕
図11は痙性緩和制御処理2のフローチャートである。図11に示されるように、変形例の制御部C2は、S11において、医師又は理学療法士による機能的電気刺激(FES)の許可信号が入力されたか否かを判定しており、許可信号が入力された場合(YESの場合)、S12に進む。S12では、入力操作部C4の操作により設定された機能的電気刺激(FES)の条件(刺激周波数、パルス幅、パルス波形・変調、電圧などの条件)を認証・FES条件設定部C7から読み込む。
続いて、S13に進み、入力操作部C4の操作により入力された認証データ(ID・パスワード)を読み込み、データベースの登録認証データと照合する。次のS14では、入力された認証データがデータベースの登録認証データと合致するか否かを判定する。S14において、入力された認証データがデータベースの登録認証データと合致しないと判定された場合(NOの場合)、S15に進み、認証データエラーを報知する。そして、S13に戻り、認証データの再入力を行う。
また、上記S14において、入力された認証データがデータベースの登録認証データと合致したと判定された場合(YESの場合)、S16に進み、機能的電気刺激(FES)の条件(刺激周波数、パルス幅、パルス波形・変調、電圧などの条件)を刺激周波数調整部C8−1、パルス幅調整部C8−2、パルス波形・変調調整部C8−3、電圧調整部C8−4に出力して機能的電気刺激(FES)の付与を開始する。すなわち、機能的電気刺激信号生成部C8−5から、刺激周波数調整部C8−1、パルス幅調整部C8−2、パルス波形・変調調整部C8−3、電圧調整部C8−4により調整された刺激周波数、パルス幅、パルス波形・変調、電圧の電気信号が電極C8−6に出力される。この機能的電気刺激(FES)により、被訓練者Aの筋肉の麻痺による痙性を緩和すると共に、痙性(痙縮)の発症に伴う痙攣の症状も緩和される。
次のS17では、生体信号検出センサ110、112に検出された検出信号を読み込み、S18において、検出信号のレベルが予め設定された閾値X3より大きい値か否かを判定する。機能的電気刺激(FES)が電極C8−6から被訓練者Aの麻痺部位に印加された場合、生体信号検出センサ110、112に検出された検出信号に電気刺激の信号が重畳されて図4(A)に示す波形G1のようになるため、検出レベルが上昇する。そのため、S18において、当該検出信号のレベルが閾値X3より小さい値の場合(NOの場合)、筋肉の硬直緩和効果が小さいため、上記S16に戻り、機能的電気刺激(FES)の印加を継続する。尚、閾値X3は、電気刺激の信号の出力レベルに応じて任意の値に設定される。
また、S18において、検出信号のレベルが閾値X3より大きい値の場合(YESの場合)、筋肉の硬直緩和効果が十分得られるので、S19に進み、予め設定された所定回数Nに達したか否かをチェックする。S19において、検出信号のレベルが閾値X3より大きい値の回数が所定回数Nに達していない場合(NOの場合)、上記S16に戻り、S16〜S19の処理を繰り返す。
また、上記S19において、検出信号のレベルが閾値X3より大きい値の回数が所定回数Nに達した場合(YESの場合)、S20に進み、機能的電気刺激(FES)により痙性緩和の効果が得られたと判定する。続いて、S21に進み、機能的電気刺激(FES)を停止する。そして、S22では、動作補助装置Bに対してニューロリハビリテーションの許可信号を無線通信機C3より送信する。
このように、機能的電気刺激(FES)により痙性を緩和させながら動作補助装置Bによるニューロリハビリテーションを行うことで、前述した筋紡錐A4における運動機能回復が可能となる。
〔ニューロリハビリテーションの制御処理〕
図12は装着式動作補助装置Bのスタンバイモード(制御モード1)のフローチャートである。図12に示されるように、動作補助装置Bの制御装置B4は、S31において、電源スイッチがオンに操作されると、S32に進み、スタンバイモードを設定する。このスタンバイモードは、ニューロリハビリテーションの許可信号を送信するための制御処理であり、リハビリテーションモードに移行する前段階の制御モードである。
S33では、生体信号検出センサ110、112により検出された生体信号を読み込む。次のS34では、生体信号検出センサ110、112により検出された低レベルの生体信号を無線送信機B7より痙性緩和装置Cに送信する。続いて、S35に進み、ニューロリハビリテーション許可信号の要求を痙性緩和装置Cに送信する。
次のS36では、痙性緩和装置Cからのニューロリハビリテーション許可信号を受信したか否かを判定する。S36において、ニューロリハビリテーション許可信号を受信できない場合(NOの場合)、S37に進み、受信不可回数が予め設定された所定回数であるN回目か否かを判定する。S37において、受信不可回数がN回目未満の場合(NOの場合)、上記S33に戻り、再度、生体信号を読込み、S33〜S36の制御処理を繰り返す。
また、上記S36において、FES装置C8による電気刺激が印加されリハビリ可能な状態になって痙性緩和装置Cからのニューロリハビリテーション許可信号を受信した場合(YESの場合)、S38に進み、制御モードをリハビリモードに設定する。この場合、FES装置C8による電気刺激が印加されて被訓練者Aの硬直した筋肉が緩和されてリハビリ可能な状態になったものと判断されるため、動作補助装置Bを用いたニューロリハビリテーションを行う。
また、上記S37において、受信不可回数がN回目に達した場合(YESの場合)、S39に進み、痙性緩和装置Cからのニューロリハビリテーション許可信号が送信されないものと判断してリハビリテーション不可を報知する。この場合、FES装置C8による電気刺激が印加されていないものと判断されるため、動作補助装置Bを用いたニューロリハビリテーションは、行わない。
図13は装着式動作補助装置のリハビリモード(制御モード2)のフローチャートである。図13に示されるように、制御装置B4は、S41でリハビリモードが設定されたか否かを判定しており、前述したS39でリハビリモードが設定されている場合(YESの場合)、S42に進み、制御モードをリハビリモードに切り替えると共に、FES装置C8による電気刺激を被訓練者Aの麻痺箇所(筋肉の硬直箇所)に付与する。続いて、S43では、不要信号除去部Dで生体信号検出センサ110、112により検出された検出信号aから電気刺激の不要信号bを除去された生体信号cを読み込む。このときは、被訓練者Aが身体を動作させる意思があるので、被訓練者Aの脳A1から神経A3に伝達される神経伝達系生体信号の検出レベルが上昇する。
次のS44では、生体信号検出センサ110、112により検出された検出信号aから電気刺激の不要信号bを除去された生体信号cが予め設定された閾値X2より大きい値か否かを判定する。S44において、当該生体信号cが予め設定された閾値X2より小さい値の場合(NOの場合)、S45に進み、モータトルクが小さくなるため、電力増幅部B5の増幅率を所定%上昇させる。また、S44において、検出信号aから電気刺激の不要信号bを除去された生体信号cが予め設定された閾値X2より大きい値の場合(YESの場合)は、S46に進み、モータ30の制御量(制御信号)を演算する。尚、閾値X2は、被訓練者Aの電気刺激による痙性緩和効果をみながら、被訓練者Aの様子に応じて適宜調整する。
次のS47では、上記S46で演算された制御信号を出力してモータ30の駆動制御を開始する。これにより、動作補助装置Bによるニューロリハビリテーションが開始され、被訓練者Aの左脚の膝関節を動作させる。このときのモータトルクは、電気刺激の影響を排除された被訓練者Aの神経伝達系生体信号に基づくため、被訓練者A自身が膝関節の状態に応じて調整することが可能になり、開始当初はゆっくりと動作させ、動作回数により手加減しながら徐々にピッチを上げることも可能である。そのため、被訓練者Aは、動作補助装置Bを装着しても身体の負担が小さくて済み、電気刺激による筋肉の硬直を緩和した状態でも安心してリハビリテーションを行える。
次のS48では、角度センサB2により検出された関節の動作角度θを読み込む。続いて、S49に進み、角度センサB2により検出された関節の動作角度θが予め設定された目標動作角度θ1に達したか否かを判定する。S49において、関節の動作角度θが目標動作角度θ1に達していない場合(NOの場合)、上記S46に戻り、S46〜S49の処理を繰り返す。尚、上記目標動作角度θ1は、当該被訓練者Aの症状に応じて任意の角度に設定する。
また、S49において、関節の動作角度θが目標動作角度θ1に達した場合(YESの場合)、S50に進み、モータ30を停止させる。続いて、S51では、モータ30を逆回転させる。これにより、被訓練者Aの関節が目標動作角度θ1より初期状態の角度に復帰する。
そして、S52では、角度センサB2により検出された関節の動作角度θを読み込み、関節の戻り具合を確認して、S53において、関節の動作角度θがリハビリ前の初期値に戻ったか否かを判定する。S53で関節の動作角度θがリハビリ前の初期値になると、S54に進み、モータ30を停止させる。
続いて、S55において、リハビリ回数nに1を加算する。S56では、リハビリ回数が予め設定された目標回数nmaxに達していない場合(NOの場合)、上記S43に戻り、S43〜S56の処理を繰り返す。また、S56において、リハビリ回数が予め設定された目標回数nmaxに達した場合(YESの場合)、今回のニューロリハビリテーションを終了する。尚、上記目標回数nmaxは、当該被訓練者Aの症状に応じて任意の回数に設定する。
〔装着式動作補助装置の変形例1〕
図14(A)(B)は装着式動作補助装置の変形例1の装着状態を示す斜視図である。図14(A)に示されるように、変形例1の動作補助装置200は、第1の駆動ユニット20と、第2の駆動ユニット220とを組み合わせた構成である。第1の駆動ユニット20は、前述した実施例の場合と同様に膝関節駆動用であり、第2の駆動ユニット220は、股関節駆動用である。尚、図14(A)において、被訓練者Aの左脚に装着される動作補助装置200の構成を図示しているが、被訓練者Aの右脚にも同様な駆動ユニット20(図14中、一点鎖線で示す)が装着されており、右脚の動作補助装置の図示は省略する。尚、動作補助装置200は、被訓練者Aの歩行訓練を行うことが可能であり、両脚の筋力が低下している場合でも各伝達部材が被装着者Aの体重を支えることが可能なため、被訓練者Aが歩行訓練中にバランスを崩さないように補助することができる。
第2の駆動ユニット220は、左股関節の側方に配されたモータ30Aと、腰ベルト60の左側に設けられた挿通部64に挿通される第3の伝達部材230と、第1の伝達部材40に連結された第4の伝達部材240とを有する。第2の駆動ユニット220のモータ30Aは、第1の駆動ユニット20のモータ30と共通である。
第3の伝達部材230は、例えばステンレス等の金属またはカーボンファイバ(炭素繊維)などにより形成されており、全長が当該被訓練者Aの股関節の高さ位置に応じた寸法のものが選択される。また、第3の伝達部材230は、下端がモータ30Aの第1の結合部36に結合され、上端が腰ベルト60の挿通部64に保持される。従って、第3の伝達部材230は、被訓練者Aの腰(第1の身体部位)にモータ30Aのトルクを伝達するように取り付けられている。
第4の伝達部材240は、例えばステンレス等の金属またはカーボンファイバ(炭素繊維)などにより細長い板状に形成され、上端にはモータ30Aの第2の結合部38に結合される。また、第4の伝達部材240の下端は、第1の伝達部材40の連結部材48に連結される。すなわち、第4の伝達部材240は、被訓練者Aの左大腿部(第2の身体部位)にモータ30Aのトルクを伝達するように取り付けられている。
変形例1の動作補助装置200は、膝関節駆動用の第1の駆動ユニット20と、股関節駆動用の第2の駆動ユニット220とを第1の伝達部材40及び第4の伝達部材240により結合した構成であり、複数のモータ30、30Aが各関節をアシストするように駆動制御することが可能になる。尚、変形例1の場合、左膝関節の動作をアシストするための生体信号検出センサ110,112を被訓練者Aの左大腿部の皮膚に貼り付けると共に、左股関節の動作をアシストするための生体信号検出センサ114、116を左股関節の前後の部位にも貼り付ける。また、右脚も左脚と同様に、各生体信号検出センサ(図示せず)が貼り付けられる。
これにより、第1の駆動ユニット20のモータ30は、不要信号除去部Dにおいて、生体信号検出センサ110,112により検出された検出信号aから電気刺激の不要信号bを除去された生体信号cに基づいてトルクの大きさ及び回動角度を制御される。また、第2の駆動ユニット220のモータ30Aは、不要信号除去部Dにおいて、左股関節の前後に貼り付けられた生体信号検出センサ114、116により検出された検出信号aから電気刺激の不要信号bを除去された生体信号cに基づいてトルクの大きさ及び回動角度を制御される。
このように、動作補助装置200は、被訓練者Aの意思に応じて複数の駆動ユニット20、220を連結する構成とすることで、モータ30、30Aのトルク(アシスト力)による左膝関節と左股関節の運動機能回復訓練を行うことが可能となる。
さらに、運動機能回復訓練に用いる制御情報として足の裏に作用する荷重及び重心位置を用いることもできる。図14(A)に示されるように、足首に装着される締結部材92の床面に接する足の裏側(足底側)に設けられた床反力センサ260、又は図14(B)に示されるように、専用靴250の靴底に設けられた一対の床反力センサ260により検出された荷重検出信号、及び各荷重検出信号に基づく重心位置のデータがデータ格納部146の基準パラメータデータベース148に格納される。そして、フェーズ特定部152では、基準パラメータデータベース148から取得した基準パラメータの関節角度と荷重とを比較することにより、被訓練者Aの動作のフェーズを特定する。
また、専用靴250を用いて歩行訓練を行う場合、第2の伝達部材50は下端に形成された被保持部58が専用靴250の側面連結部252に上方から挿入されて専用靴250に連結させる。そして、床反力センサ260により検出された床反力検出信号は、有線あるいは無線にて制御装置B4に送信する。
従って、当該変形例1では、上記動作補助装置200を被訓練者Aに装着すると共に、前述したFES装置C8の電気刺激により被訓練者Aの筋肉の硬直を緩和することにより、前述した実施形態と同様にニューロリハビリテーションを行うことが可能になる。すなわち、FES装置C8の電気刺激により筋肉の硬直を緩和させながら動作補助装置200によるニューロリハビリテーションを行うことで、筋紡錐A4における運動機能回復が可能となる。
尚、変形例1の動作補助装置200を用いた場合も、前述した実施形態と同様に、図1、図2に示す制御系により図11、図12、図13に示す制御処理を実行する。
〔装着式動作補助装置の変形例2〕
図15は装着式動作補助装置の変形例2の装着状態を示す斜視図である。図15に示されるように、変形例2の動作補助装置300は、被訓練者Aの右腕の肘関節をアシストする駆動ユニット310を有する。駆動ユニット310は、右肘関節の側方に配置されたモータ30と、右肘関節より上方の上腕に沿うように配された第1の伝達部材40と、右肘関節より下方の下腕に沿うように配された第2の伝達部材50とを有する。モータ30は、前述した実施形態及び変形例1のモータと同じ構成であり、共通化が図られている。
第1の伝達部材40は、被訓練者Aの右上腕(第1の身体部位)に締結部材80、82を介して締結され、第2の伝達部材50は被訓練者Aの右下腕(第2の身体部位)に締結部材90、92を介して締結される。また、第1の伝達部材40及び第2の伝達部材50は、前述した実施例と同じ構成のものであり、全長が当該被訓練者Aの腕の長さに応じた寸法に形成されている。
被訓練者Aの上腕の前側及び後側には、生体信号検出センサ118、119が貼り付けられている。そのため、被訓練者Aが右肘関節を回動させようとすると、生体信号検出センサ118,119が上腕の生体電位(生体信号)の検出信号を出力する。そして、駆動ユニット310のモータ30は、前述した駆動ユニット20と同様に、制御装置B4により生体信号検出センサ118,119により検出された上腕の生体電位(生体信号)の検出信号に基づいてトルクの大きさ及び回動角度を制御される。
このように、動作補助装置300は、被訓練者Aの意思に応じて駆動ユニット310のモータ30のトルク(アシスト力)による右腕の肘関節の運動機能回復訓練を行うことが可能となる。駆動ユニット310は、前述した他の駆動ユニット20、220と基本的に同じ構成であり、モータ30が共通化されている。そのため、当該被訓練者Aの腕の長さに合わせて第1の伝達部材40及び第2の伝達部材50の全長を適宜選択すれば良い。
また、変形例2の動作補助装置300は、肘関節を駆動する駆動ユニット310を有する構成であるが、さらに被訓練者Aの肩関節を駆動する駆動ユニットを連結することも可能である。また、被訓練者Aの左右両腕に動作補助装置300を装着して両腕の運動機能回復訓練を行うことも可能である。
従って、変形例2では、上記動作補助装置300を被訓練者Aに装着すると共に、前述したFES装置C8の電気刺激により被訓練者Aの筋肉の硬直を緩和することにより、前述した実施形態と同様にニューロリハビリテーションを行うことが可能になる。すなわち、FES装置C8の電気刺激により筋肉の硬直を緩和させながら動作補助装置300によるニューロリハビリテーションを行うことで、前述した筋紡錐A4における運動機能回復が可能となる。
尚、変形例2の動作補助装置300を用いた場合も、前述した実施形態と同様に、図1,図2に示す制御系により図11、図12、図13に示す制御処理を実行する。
〔装着式動作補助装置の変形例3〕
図16は装着式動作補助装置の変形例3を示す斜視図である。図16に示されるように、動作補助装置400は、左右脚に装着される各伝達部材が一体に形成された一体型であり、被訓練者Aの腰に装着される腰支持体430と、腰支持体430の右側から下方に設けられた右脚補助伝達部454と、腰支持体430の左側から下方に設けられた左脚補助伝達部455とを有する。尚、動作補助装置400は、腰支持体430と、右脚補助伝達部454と、左脚補助伝達部455とが一体な構成であるので、被訓練者Aが両脚の筋力が低下している場合でも各伝達部454、455が被装着者Aの体重を支えることが可能なため、被訓練者Aが歩行訓練中にバランスを崩さないように補助することができる。
腰支持体430は、例えば剛性を有するジュラルミンやアルミ合金などの金属材により形成された腰サポート部410を有しており、その背面内側には、被訓練者Aの腰背面側との隙間をなくして密着するフィッティング部431が取り付けられている。そして、フィッティング部431は、スポンジ又は低反発樹脂材などからなり、被訓練者Aの腰背面側に当接して被訓練者Aの腰を保護する。
右脚補助伝達部454と左脚補助伝達部455とは、左右対称に配置されており、腰支持体430に連結された腰部連結機構500と、腰部連結機構500より下方に延在し被訓練者Aの腿側方に沿うように形成された第1の伝達部材458と、第1の伝達部材458より下方に延在し被訓練者Aの脛側方に沿うように形成された第2の伝達部材460と、被訓練者Aの脚の裏(靴を履く場合には、靴底)が載置される第3の伝達部材462とを有する。
腰部連結機構500の下端と第1の伝達部材458の上端との間には、軸受構造とされた第1関節464が介在しており、腰部連結機構500と第1の伝達部材458とを回動可能に連結している。この第1関節464は、股関節と一致する高さ位置に設けられており、腰部連結機構500が第1関節464の支持側に締結され、第1の伝達部材458が第1関節64の回動側に締結されている。また、第1関節464は、駆動モータ420,422が内蔵されたモータユニットを構成しており、第1関節64と駆動モータ420,422とは外観上一体化されている。
また、第1の伝達部材458の下端と第2の伝達部材460の上端との間には、軸受構造とされた第2関節466が介在しており、第1の伝達部材458と第2の伝達部材460とを回動可能に連結している。この第2関節466は、膝関節と一致する高さ位置に設けられており、第1の伝達部材458が第2関節466の支持側に締結され、第2の伝達部材460が第2関節466の回動側に締結されている。また、第2関節466には、駆動モータ424,426が内蔵されたモータユニットを構成しており、第2関節466と駆動モータ424,426とは外観上一体化されている。
また、第2の伝達部材460の下端と第3の伝達部材462の上端との間には、軸受構造とされた第3関節468が介在しており、第2の伝達部材460と第3の伝達部材462とを回動可能に連結している。そして、第3の伝達部材462の内側には、被訓練者Aの足を装着する靴484が固定されている。
従って、第1の伝達部材458及び第2の伝達部材460は、腰支持体430に固定された腰部連結機構500に対して第1関節464及び第2関節466を回動支点とする歩行動作を行えるように取り付けられている。すなわち、第1の伝達部材458及び第2の伝達部材460は、被訓練者Aの脚と同じ動作を行えるように構成されている。また、第3関節468は、被訓練者Aの足首の側方に位置するように設けられている。そのため、靴484は、第3関節468の回動動作により歩行動作に応じて被訓練者Aの足首と同じように床面(または地面)に対する角度が変化する。
また、第1関節464及び第2関節466は、駆動モータ420,422,424,426の回転軸が、ギヤを介して被駆動側となる第1の伝達部材458、第2の伝達部材460に駆動トルクを伝達するように構成されている。
さらに、駆動モータ420,422,424,426は、関節回動角度を検出する角度センサ(図示せず)を有する。この角度センサは、例えば、第1関節464及び第2関節466の関節角度に比例したパルス数をカウントするロータリエンコーダなどからなり、関節回動角度に応じたパルス数に対応した電気信号をセンサ出力として出力する。
第1関節464の角度センサは、被訓練者Aの股関節の関節角度に相当する腰支持体430と第1の伝達部材458との間の回動角度を検出する。また、第2関節466の角度センサは、被訓練者Aの膝関節の関節角度に相当する第1の伝達部材458の下端と第2の伝達部材460との間の回動角度を検出する。
また、第1の伝達部材58の長手方向の中間位置には、被訓練者Aの腿に締結されるベルト状の腿締結部材478が取り付けられている。腿締結部材478の内面側には、被訓練者Aの腿との隙間をなくして密着するフィッティング部479が取り付けられている。
また、第2の伝達部材460の長手方向の中間位置には、被訓練者Aの膝下の脛に締結されるベルト状の脛締結部材480が取り付けられている。脛締結部材480の内面側には、被訓練者Aの脛との隙間をなくして密着するフィッティング部481が取り付けられている。
従って、駆動モータ420,422,424,426で発生された駆動トルクは、ギヤを介して第1の伝達部材458、第2の伝達部材460に伝達され、さらに腿締結部材478、脛締結部材480を介して被訓練者Aの脚にアシスト力として伝達される。
また、第2の伝達部材460の下端には、第3関節468を介して靴484が回動可能に連結されている。尚、第1の伝達部材458及び第2の伝達部材460は、被訓練者Aの脚の長さに応じた長さに調整されている。
各伝達部材458,460,462は、夫々ジュラルミン等の軽量化された金属材の周囲を弾性を有する樹脂材で覆うように構成されており、被訓練者Aの体重及び腰支持体430、バッテリ、制御ユニット(共に図示せず)等の質量を支えることができる。すなわち、動作補助装置400は、腰支持体430、バッテリ、制御ユニットの質量が被訓練者Aに作用しないように構成されている。
腰支持体430は、内周面中央に被訓練者Aの腰後部(背面)に当接するフィッティング部431を有する金属材からなる腰サポート部410と、腰サポート部410の両端にヒンジを介して連結されたベルト520,521と、一方のベルト520の端部に取り付けられたバックル522と、他方のベルト521の端部に取り付けられた係止用金具524とを有する。
腰支持体430を被訓練者Aの腰に装着する際は、腰サポート部410の内側に設けられたフィッティング部431に腰の背面側を当接させた状態でバックル522の挿入口に係止用金具424を挿入して係止させる。そして、ベルト520,521の長さを被訓練者Aのお腹の大きさに応じた長さに調整する。これにより、腰支持体430は、被訓練者Aの腰回りの外周にほぼ密着した保持状態となる。また、バックル522は、自動車のシートベルトと同様な構成になっており、係止解除部を操作することにより係止用金具524の係止を解除することができるように構成されている。
従って、変形例3では、上記動作補助装置400を被訓練者Aに装着すると共に、前述したFES装置C8の電気刺激により被訓練者Aの筋肉の硬直を緩和することにより、前述した実施形態と同様にニューロリハビリテーションを行うことが可能になる。すなわち、FES装置C8の電気刺激により筋肉の硬直を緩和させながら動作補助装置400によるニューロリハビリテーションを行うことで、前述した筋紡錐A4における運動機能回復が可能となる。
尚、変形例3の動作補助装置400を用いた場合も、前述した実施形態と同様に、図1,図2に示す制御系により図11、図12、図13に示す制御処理を実行する。
上記実施形態では、装着式動作補助装置を用いて被訓練者のリハビリテーションを支援する場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、装着式動作補助装置以外の装置、例えば、テーブルや車椅子などに支持されるアームなどの伝達部材をモータで駆動するように構成された支援装置などを用いた構成のものにも適用できるのは勿論である。