JP2014161283A - Ceacam5遺伝子のスプライシングバリアント - Google Patents

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香菜子 中尾
Toru Mochizuki
徹 望月
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Abstract

【課題】CEACAM5遺伝子のスプライシングバリアントや、かかるスプライシングバリアントがコードするタンパク質や、かかるタンパク質に特異的に結合する抗体を提供する。
【解決手段】特定の塩基配列からなるCEACAM5遺伝子のスプライシングバリアント、又は特定のアミノ酸配列からなるCEACAM5タンパク質。特定の塩基配列からなるCEACAM5遺伝子のスプライシングバリアントの発現を検出するためのプライマー対若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えることを特徴とするがんの有無の判定用キット、特定のアミノ酸配列からなるタンパク質に特異的に結合する抗体、又はその標識物を備えることを特徴とするがんの有無の判定用キット。
【選択図】なし

Description

本発明は、CEACAM5遺伝子のスプライシングバリアントや該スプライシングバリアントがコードするタンパク質の発現量を検出することによりがんの有無を判定する方法や、CEACAM5遺伝子のスプライシングバリアントや該スプライシングバリアントがコードするタンパク質を特異的に検出できるがんの有無の判定用キットなどに関する。
がん胎児性抗原(carcinoembryonic antigen、CEA、CD66e、CEACAM5[carcinoembryonic antigen-related cell adhesion molecule 5])(以下、「CEACAM5」という)は、がん細胞から産生される胎児性抗原の一つであり、分子量20万前後の糖タンパク質であることが知られている。CEACAM5は、がんに罹患していない血中には検出されないが、大腸がん、肺がん、胃がん、乳がん、肝がん、甲状腺髄様がんなど臓器がんに罹患すると、がん細胞中や血中におけるCEACAM5濃度が上昇することが知られている。そのため、CEACAM5は、がんの有無を検出するため、また術後の再発予防のための腫瘍マーカーとして、広く用いられている(特許文献1、非特許文献1)。
現在までにCEACAM5に加えて、CEACAM5と配列・構造上の相同性が高い約20種類のCEA関連分子も知られているものの、腫瘍マーカーとして用いられているものはCEACAM5のみである。また、そのCEACAM5でさえ、がんの臓器特異性が低いうえに一部の正常組織でも検出されるため、がんに対する特異度や個々のがんに対する特異度の面から腫瘍マーカーとしては不十分であると考えられていた。
CEACAM5には、スプライシングバリアントが存在することが示唆されている。すなわち、定量PCR(quantitative real-time PCR)法を用いた解析によりヒト結腸がん由来のLS147T細胞株においてCEACAM5遺伝子のスプライシングバリアントが検出されたことが報告されている(非特許文献2)。しかし、非特許文献3でも指摘されているように(9頁、左欄の上から4〜13行目)、かかるスプライシングバリアントは、PCRによるアーティファクトである可能性が高いと考えられる。また、非特許文献3においてもがん細胞中でCEACAM5遺伝子のスプライシングバリアントが存在することが示されているものの、かかるスプライシングバリアントはスプライス部位(GT-AG)に基づいて生成されたものではなく、このため上記スプライシングバリアントが存在するかどうか疑念が残る。
このように、CEACAM5遺伝子のスプライシングバリアントががん細胞中で産生されるかについては不明な点が多い。また、CEACAM5遺伝子のスプライシングバリアントがコードするタンパク質を検出・同定したことは、これまでのところ報告されていない。
特表2011−527414号公報
Tsujimoto M., et al. Clinical Cancer Research 13 : 4807-4816 (2007) Hampton R., et al. Oncogene 21: 7817-7823 (2002) Peng L., et al. PLoS One. 7: e36412 (2012)
本発明の課題は、膵臓がん、胃がん、大腸がんなどのがんを特異的に検出することができる、がんの有無を判定する方法やがんの有無の判定用キットを提供することにある。
本発明者らは、CEACAM4(carcinoembryonic antigen-related cell adhesion molecule 4)遺伝子のスプライシングバリアントが甲状腺髄様がんで発現することを見いだしている(特願2012−113732)。本発明者らは、上記課題を解決するため、CEACAM5の分子型(バリアント、糖鎖修飾)に着目して検討したところ、試行錯誤の末、CEACAM5遺伝子の2種類のスプライシングバリアント(図2中の「バリアント5D及び3D」参照)ががん細胞(膵臓がん、胃がん、大腸がん)で特異的に発現することを見いだした。さらに、かかる2種類のスプライシングバリアントがコードするタンパク質が上記がん細胞で発現することが確認された。本発明はこれらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は、(1)判定用試料中の、配列番号1又は3に示される塩基配列からなるCEACAM5遺伝子のスプライシングバリアント(以下、「本件スプライシングバリアント」ということがある)の発現、又は該スプライシングバリアントがコードする、配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質(「本件スプライシングバリアントがコードするタンパク質」ということがある)の発現を検出する工程(a);及び工程(a)で本件スプライシングバリアントの発現、又は本件スプライシングバリアントがコードするタンパク質の発現が検出された場合、判定用試料提供者ががんである可能性が高いと評価する工程(b);を備えたことを特徴とするがんの有無を判定する方法(以下、「本件方法」ということがある)や、(2)がんが、膵臓がん、胃がん、又は大腸がんであることを特徴とする上記(1)に記載の方法に関する。
上記本件方法は、医師によるがんの診断を補助する方法であって、医師による診断行為を含まない。また上記本件方法のその他の態様としては、がんを診断するためのデータを収集する方法を挙げることができる。
また本発明は、(3)本件スプライシングバリアントの発現を検出するためのプライマー対若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えることを特徴とするがんの有無の判定用キットや、(4)がんが、膵臓がん、胃がん、又は大腸がんであることを特徴とする上記(3)に記載のキットに関する。このキット発明は、がんの有無を判定するためのキットに関する用途発明であり、このキットには、通常、がんを判定するための説明書が含まれる。
また本発明は、(5)本件スプライシングバリアントがコードするタンパク質に特異的に結合する抗体、又はその標識物を備えることを特徴とするがんの有無の判定用キットや、(6)がんが、膵臓がん、胃がん、又は大腸がんであることを特徴とする上記(5)に記載のキットに関する。このキット発明は、がんの有無を判定するためのキットに関する用途発明であり、このキットには、通常、がんを判定するための説明書が含まれる。
さらに本発明は、(7)配列番号1又は3に示される塩基配列からなるDNA(以下、「本件DNA」ということがある)や、(8)配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質(以下、「本件タンパク質」ということがある)に関する。
本発明によると、本件スプライシングバリアントや本件スプライシングバリアントがコードするタンパク質を特異的に検出することが可能となり、膵臓がん、胃がん、大腸がんなどのがんの早期発見に必要な定期検診等のがんの検診者の増加が期待される他、早期がんの段階で診断・治療をうける検診者が増えることや、がんによる死亡率を下げることが期待される。
PCR法を用いて、3種類の膵臓がん細胞株(HPAC、HPAFII、QGP1)、3種類の胃がん細胞株(MKN45、KATOIII、SNU1)、及び3種類の大腸がん細胞株(LoVo、HCA2、HCA46)の計9種類のがん細胞における、本発明のCEACAM5遺伝子のスプライシングバリアント(バリアント5D及び3D)を検出した結果を示す図である。図中「全長」は、後述の「既知のCEACAM5遺伝子」を示す。また、コントロールとしてヒト正常組織を用いた。 PCR法を用いて、本発明のCEACAM5遺伝子のスプライシングバリアント(バリアント5D及び3D)を同定した結果を示す図である。図2中の棒線は、PCRによる増幅領域を示す。 本発明のCEACAM5遺伝子のスプライシングバリアント(バリアント5D及び3D)を特異的に検出するプライマー対が、定量PCR解析できることを確認した結果を示す図である。図3Aは、プライマー対がアニーリングして増幅するDNA領域を示す。図3Bは、プライマー対により増幅したPCR産物(図中の矢頭)をアガロースゲル電気泳動で解析した結果を示す。図3Cは、インプット(cDNA)を段階的に希釈した場合に(横軸)、図3Aのプライマー対により増幅されたPCR産物が一定量になるPCRのサイクル数(threshold cycle;Ct value[Ct値])(縦軸)を示す。 定量PCR法を用いて、上記9種類のがん細胞における、本発明のCEACAM5遺伝子のスプライシングバリアント(バリアント5D及び3D)を定量した結果を示す図である。 ウェスタンブロッティング法を用いて、上記9種類のがん細胞における、本発明のCEACAM5遺伝子のスプライシングバリアント(バリアント5D及び3D)がコードするタンパク質を検出した結果を示す図である。 本発明のCEACAM5遺伝子のスプライシングバリアント(バリアント5D及び3D)がコードするタンパク質の構造を模式的に示した図である。 ウェスタンブロッティング法を用いて、上記9種類のがん細胞における、本発明のCEACAM5遺伝子のスプライシングバリアント(バリアント5D及び3D)がコードするタンパク質は、細胞外に分泌されることを示す図である。
本件方法としては、例えば被験者(提供者)から採取された判定用試料中の、本件スプライシングバリアントの発現、又は本件スプライシングバリアントがコードするタンパク質の発現を検出する工程(a);及び工程(a)で本件スプライシングバリアントの発現、又は本件スプライシングバリアントがコードするタンパク質の発現が検出された場合、判定用試料提供者(被験者)ががんである可能性が高いと評価する工程(b);を順次備えた方法(但し、医師による診断行為を除く。)であれば特に制限されず、また、本発明のがんの有無の判定用キットとしては、本件スプライシングバリアントの発現を検出するためのプライマー対若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えるキット(以下、「本件キット1」ということがある)や、本件スプライシングバリアントがコードするタンパク質に特異的に結合する抗体、又はその標識物を備えるキット(以下、「本件キット2」ということがある)であれば特に制限されず、ここで、本件キット1や本件キット2は、がんの有無の判定用キットとしての用途に限定されるものである。そして、これらキットには、一般にこの種の診断キットに用いられる成分、例えば担体、pH緩衝剤、安定剤の他、取扱説明書等の添付文書が通常含まれる。
上記判定の対象となるがんとしては、膵臓がん、腎がん、胃がん、前立腺がん、大腸がん(盲腸がん、結腸がん、直腸がん)、子宮がん、卵巣がん、子宮内膜がん、食道がん、甲状腺がん、肺がん、乳がんなどを挙げることができ、これらの中でも膵臓がん、胃がん、及び大腸がんが好ましい。
本件方法における判定用試料としては、組織、細胞等の非液性試料や、血液、唾液等の液性試料を例示することができる。非液性試料は、判定用試料提供者より採取された後に、凍結処理が施された凍結組織であっても、病理組織学的処理が施された病理組織であってもよく、かかる病理組織としては、ホルマリン固定組織や、ホルマリン固定パラフィン包埋組織等を例示することができる。
本件方法において、本件スプライシングバリアント(mRNA又はその逆転写物[cDNA])の発現を検出する方法としては、本件スプライシングバリアントを特異的に検出できる方法であればどのような方法であってもよく、具体的には、判定用試料中の細胞における全RNAを抽出・精製し、本件スプライシングバリアント(mRNA)に相補的な塩基配列からなるプローブを用いたノーザンブロッティング法で検出する方法や、判定用試料中の細胞における全RNAを抽出・精製し、逆転写酵素を用いてcDNAを合成した後、本件スプライシングバリアント(mRNA)のcDNAを特異的に増幅するプライマー対を用いた、競合的PCR法、リアルタイムPCR法等の定量PCR法で検出する方法や、判定用試料中の細胞における全RNAを精製し、逆転写酵素を用いてcDNAを合成した後、ビオチン(biotin)やジゴキシゲニン(digoxigenin)などでcDNAをラベルし、蛍光物質が標識されたビオチンに対する親和性の高いアビジン(avidin)やジゴキシゲニンを認識する抗体などで間接的にcDNAを標識した後、ガラス、シリコン、プラスチックなどのハイブリダイゼーションに使用可能な支持体上に固定化された、本件スプライシングバリアント(cDNA)に相補的な塩基配列からなるプローブを用いたマイクロアレイで検出する方法等を挙げることができる。
本件方法において、本件スプライシングバリアントがコードするタンパク質を検出する方法としては、本件スプライシングバリアントがコードするタンパク質を特異的に検出できる方法であればどのような方法であってもよく、具体的には、本件スプライシングバリアントがコードするタンパク質を構成するポリペプチドを検出する質量分析法や、本件スプライシングバリアントがコードするタンパク質を特異的に認識する抗体を用いた免疫学的測定法を挙げることができ、免疫学的測定法としては、免疫組織化学染色法、ELISA法、EIA法、RIA法、ウェスタンブロッティング法等を好適に例示することができる。
本件キット1におけるプライマー対としては、本件スプライシングバリアント(cDNA)の上流及び下流の配列の一部とアニーリングしうる相補的なプライマー対であり、且つ本件スプライシングバリアントを特異的に検出できるものであれば、プライマー配列の長さ、かかるcDNAとアニーリングする部位、増幅するcDNAの長さ等は、DNAの増幅効率を考慮して適宜選択することができ、ここで特異的に検出するとは、本件スプライシングバリアント以外のcDNAをほとんど又は全く検出せずに、本件スプライシングバリアントを検出することを意味し、本件スプライシングバリアント以外のcDNAには、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/guide/)のデータベースに登録されているCEACAM5遺伝子のcDNA(NCBI Reference Sequence:NM_004363)、すなわち配列番号5に示される塩基配列からなるDNA(以下、「既知のCEACAM5遺伝子」という)が含まれる。
本件キット1におけるプライマー対のうち、配列番号1に示される塩基配列からなるCEACAM5遺伝子のスプライシングバリアントの発現を検出するためのプライマー対としては、配列番号1に示される塩基配列の424番目のシトシン及び425番目のシトシンを含む領域を増幅するプライマー対が好ましく、増幅するDNAの長さ(塩基対)としては、増幅効率や特異性を考慮すると、通常300塩基対以下であり、200塩基対以下が好ましく、180塩基対以下がより好ましく、160塩基対以下がさらに好ましい。また、プライマーの長さ(塩基)としては、通常少なくとも15塩基であり、少なくとも18塩基が好ましく、少なくとも19塩基がより好ましく、少なくとも20塩基がさらに好ましい。本件キット1におけるプライマー対としては、具体的に、配列番号17に示される塩基配列からなるDNAと配列番号18に示される塩基配列からなるDNAとからなるプライマー対を挙げることができる。
また、本件キット1におけるプライマー対のうち、配列番号3に示される塩基配列からなるCEACAM5遺伝子のスプライシングバリアントの発現を検出するためのプライマー対としては、配列番号3に示される塩基配列の569番目のグアニン及び570番目のグアニンを含む領域を増幅するプライマー対が好ましく、増幅するDNAの長さ(塩基対)としては、増幅効率や特異性を考慮すると、通常300塩基対以下であり、200塩基対以下が好ましく、180塩基対以下がより好ましく、160塩基対以下がさらに好ましい。また、プライマーの長さ(塩基)としては、通常少なくとも15塩基であり、少なくとも18塩基が好ましく、少なくとも19塩基がより好ましく、少なくとも20塩基がさらに好ましい。本件キット1におけるプライマー対としては、具体的に、配列番号19に示される塩基配列からなるDNAと配列番号20に示される塩基配列からなるDNAとからなるプライマー対を挙げることができる。
本件キット1におけるプローブとしては、本件スプライシングバリアント(mRNA又はそのcDNA)の一部とハイブリダイゼーションし、且つ本件スプライシングバリアントを特異的に検出できるものであれば、プローブの長さ、かかるスプライシングバリアントとハイブリダイズする部位等は、ハイブリダイゼーションの効率を考慮して適宜選択することができ、ここで特異的に検出するとは、本件スプライシングバリアント以外のmRNA又はそのcDNAをほとんど又は全く検出せずに、本件スプライシングバリアントを検出することを意味し、本件スプライシングバリアント以外のmRNA又はそのcDNAには、既知のCEACAM5遺伝子のmRNA又はそのcDNAが含まれる。
本件キット1におけるプローブのうち、配列番号1に示される塩基配列からなるCEACAM5遺伝子のスプライシングバリアントの発現を検出するためのプローブとしては、配列番号1に示される塩基配列の424番目のシトシン及び425番目のシトシンを含む領域にハイブリダイゼーションするプローブが好ましく、ハイブリダイゼーションするプローブの長さ(塩基)としては、ハイブリダイゼーションの効率や特異性を考慮すると、通常300塩基以下であり、200塩基以下が好ましく、150塩基以下がより好ましく、100塩基以下がさらに好ましい。
また、本件キット1におけるプローブのうち、配列番号3に示される塩基配列からなるCEACAM5遺伝子のスプライシングバリアントの発現を検出するためのプローブとしては、配列番号3に示される塩基配列の569番目のグアニン及び570番目のグアニンを含む領域にハイブリダイゼーションするプローブが好ましく、ハイブリダイゼーションするプローブの長さ(塩基)としては、ハイブリダイゼーションの効率や特異性を考慮すると、通常300塩基対以下であり、200塩基対以下が好ましく、150塩基対以下がより好ましく、100塩基対以下がさらに好ましい。
本件キット2における抗体としては、本件タンパク質に特異的に結合するものであれば特に制限されず、ここで、「本件タンパク質に特異的に結合する」とは、本発明の抗体又はその標識物の本件タンパク質に対する親和性が、本件タンパク質以外のタンパク質に対する親和性と比較して高いことを意味する。上記「高い親和性」とは、通常、結合定数(K)が少なくとも10−1、好ましくは、少なくとも10−1、より好ましくは、少なくとも10−1、さらに好ましくは、少なくとも1010−1である結合親和性を意味する。上記本件タンパク質以外のタンパク質には、EBI(http://www.ebi.ac.uk/IPI/IPIhelp.html)のデータベースに登録されているCEAM5_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P06731)、すなわち配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質(以下、「既知のCEACAM5タンパク質」という)が含まれる。
本件キット2における抗体のうち、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質に特異的に結合する抗体としては、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質の構造(一次構造、二次構造、三次構造)を特異的に結合できるものであれば特に制限されず、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質の一次構造を特異的に結合する抗体としては、配列番号2に示されるアミノ酸配列の141〜144番目のアミノ酸(YPEP)を含むものをエピトープとするものが好ましい。エピトープの長さとしては、5〜40アミノ残基数が好ましく、10〜30アミノ酸残基数がより好ましく、13〜17アミノ酸残基数がさらに好ましい。
また、本件キット2における抗体のうち、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質に特異的に結合する抗体としては、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質の構造(一次構造、二次構造、三次構造)を特異的に結合できるものであれば特に制限されず、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質の一次構造を特異的に結合する抗体としては、配列番号4に示されるアミノ酸配列の209番目のアスパラギン酸及び210番目のアラニンを含み、且つ少なくとも既知のCEACAM5や配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質を構成するペプチドとアミノ酸配列が同一ではない領域をエピトープとするものが好ましい。エピトープの長さとしては、5〜40アミノ残基数が好ましく、10〜30アミノ酸残基数がより好ましく、13〜17アミノ酸残基数がさらに好ましい。
本件キット2における抗体又はその標識物を用いて免疫学的測定法により解析すると、既知のCEACAM5タンパク質をほとんど又は全く検出することなく、本件スプライシングバリアントをコードするタンパク質を特異的に検出することができる。上記免疫学的測定法としては、免疫組織化学染色法、ELISA法、EIA法、RIA法、ウェスタンブロッティング法等を好適に例示することができる。
本件キット2における抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体などの抗体であってもよく、また、この中には、F(ab’)、Fab、diabody、Fv、ScFv、Sc(Fv)などの抗体の一部からなる抗体断片も含まれる。
本件キット1のプライマー対又はプローブの標識物における標識物質や、本件キット2の抗体の標識物における標識物質としては、例えば、ペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase)、アルカリフォスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコ−ス−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、アルコール脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素、ペニシリナーゼ、カタラーゼ、アポグルコースオキシダーゼ、ウレアーゼ、ルシフェラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ等の酵素、フルオレスセインイソチオシアネート、フィコビリタンパク、希土類金属キレート、ダンシルクロライド、テトラメチルローダミンイソチオシアネート等の蛍光物質、緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescence Protein;GFP)、シアン蛍光タンパク質(Cyan Fluorescence Protein;CFP)、青色蛍光タンパク質(Blue Fluorescence Protein;BFP)、黄色蛍光タンパク質(Yellow Fluorescence Protein;YFP)、赤色蛍光タンパク質(Red Fluorescence Protein;RFP)、ルシフェラーゼ(luciferase)等の蛍光タンパク質、H 、14C、125I、131I等の放射性同位体、ビオチン、アビジンなどを挙げることができる。
本件キット2における抗体(以下、「本件抗体」ということがある)は、慣用のプロトコールを用いて、本件タンパク質を構成するポリペプチドをマウス、ラット等のヒト以外の動物へ投与し、本件抗体を産生する細胞クローンを細胞融合技術によりスクリーニングすることにより、本件抗体を得ることができる。ここで本件タンパク質を構成するポリペプチドとしては、本件タンパク質に特異的なポリペプチドであれば特に制限されないが、上述のエピトープが好ましい。上記スクリーニングする方法としては、例えば本件抗体を用いた上述の免疫学的測定法により、既知のCEACAM5タンパク質等の本件タンパク質以外のものはほとんど検出されずに、本件タンパク質を特異的に検出することを確認する方法を挙げることができる。
本件抗体は、本件抗体を産生する細胞クローンを基に本件抗体をコードする遺伝子配列を同定し、遺伝子組換え技術により、本件抗体遺伝子を発現させることにより、組換え抗体として作製することもできる。組換え抗体を作製する方法としては、例えば本件抗体遺伝子を発現ベクターに組み込み、かかる発現ベクターをチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞等の哺乳類細胞株や、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞などの宿主細胞へ導入して、宿主細胞において組換え抗体を生産させる方法を挙げることができる(P.J.Delves., ANTIBODY PRODUCTION ESSENTIAL TECHNIQUES., 1997 WILEY、P.Shepherd and C.Dean., Monoclonal Antibodies., 2000 OXFORD UNIVERSITY PRESS, J.W.Goding., Monoclonal Antibodies:principles and practice., 1993 ACADEMIC PRESS)。特に、キメラ抗体は、特開2005−245337に記載の技術に基づいて作製することができる。発現ベクターに組み込む抗体遺伝子の塩基配列は、発現させる宿主細胞に合わせてコドン配列の最適化がされていてもよい。
また、トランスジェニック動物作製技術を用いて本件抗体遺伝子が組み込まれたマウス、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ニワトリ、ブタ等のトランスジェニック動物を作製し、かかるトランスジェニック動物の血液、ミルク中などから本件抗体遺伝子に由来する抗体を大量に産生させることもできる。
形質転換細胞、トランスジェニック動物、ハイブリドーマ等により産生された本件抗体は、例えばProteinA、ProteinGカラムによるクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、硫安塩析法、ゲル濾過、アフィニティクロマトグラフィー等を用いて精製することができる。
本件DNAは、本件スプライシングバリアントのmRNA又はそのcDNAの発現を検出するためのプライマー対やプローブの設計に有用である。また本件タンパク質は、本件スプライシングバリアントがコードするタンパク質に特異的に結合する抗体、又はその標識物の作製に有用である。
本件DNAは、分子生物学的手法を用いて作製することができる。分子生物学的手法としては、例えば、まず、HPAC細胞株などの膵臓がん由来の細胞株や、KATOIII細胞株などの胃がん由来の細胞株や、HCA2細胞株などの大腸がん由来の細胞株等のがん細胞株から、モレキュラー・クローニング、ア・ラボラトリーマニュアル(Molecular cloning,A laboratorymanual)などに記載の方法や、RNeasy(R) Plus Mini Kit(QIAGEN社製)などの市販のキットを用いて、本件スプライシングバリアント(mRNA)を含む全RNAを単離する。次に、単離した全mRNAを鋳型として、モレキュラー・クローニング、ア・ラボラトリーマニュアルに記載の方法や、PrimeScript(R) II 1st Strand cDNA Synthesis Kit(TaKaRa社製)などの市販のキットを用いてcDNAを合成し、本件DNAを特異的に増幅するプライマーを用いたPCRを行うことにより、本件DNAを増幅することができる。ここで本件DNAを増幅する方法としては、既知のCEACAM5遺伝子の全長を増幅できるプライマー対を用いて増幅する方法であっても、本件DNAを少なくとも2以上のパーツに分けて増幅できるプライマー対を用いて各パーツを増幅した後、各パーツを鋳型として本件DNAの全長を増幅できるプライマー対を用いて増幅する方法であってもよい。
本件タンパク質は、遺伝子組換え技術により、本件DNAを発現させることにより、組換えタンパク質として作製することができる。組換えタンパク質を作製する方法としては、例えば本件DNA遺伝子を発現ベクターに組み込み、かかる発現ベクターをチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞等の哺乳類細胞株や、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞などの宿主細胞へ導入して、宿主細胞において組換え抗体を生産させる方法を挙げることができる。発現ベクターには、組換えタンパク質精製のために、FLAGタグ、HAタグ、mycタグ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)等のタグ配列が付加されていてもよい。得られたタンパク質は、タグ配列を利用した精製法等の公知の条件・方法によって精製することができる。精製したタンパク質は、Bradford法、BCA法などのタンパク質定量法で正確な量(濃度)を算出することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
1.CEACAM5遺伝子のmRNAの発現解析
がん特異的なCEACAM5遺伝子のスプライシングバリアントが存在するかどうかを検証するために、CEACAM5遺伝子のmRNAを検出するプライマーを用いたPCR法により、3種類の膵臓がん細胞株(HPAC、HPAFII、QGP1)、3種類の胃がん細胞株(MKN45、KATOIII、SNU1)、3種類の大腸がん細胞株(LoVo、HCA2、HCA46)の計9種類のがん細胞株におけるCEACAM5遺伝子の発現解析を行った。なお、コントロールとして正常組織(膵臓、胃、大腸)由来の全RNA(Clontech社製)を用いた。
1−1 方法
〔1〕インキュベーター(37℃、5%CO)中で(10%FBS、0.3mg/mlグルタミン、100U/mlペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシン)/RPMI1640(Sigma-Aldrich社製)存在下に培養した上記9種類のがん細胞株から、キット(RNeasy(R) Plus Mini Kit、QIAGEN社製)を用いて全RNAを単離した。
〔2〕単離した全RNA40μgに、Promega社製DNase処理溶液(RQ1 DNase 10x Reaction Buffer;10μl、RNasinR Plus RNase Inhibitor1μl、RQ1 RNase - Free Dnase10μl)を加え、RNase(R) Free Waterで最終体積を101μlに調整した後、37℃で30分間、DNase処理を行った。
〔3〕DNase処理後のサンプルから、キット(RNeasy MinElute Cleanup Kit、QIAGEN社製)を用いて全RNAを精製した。
〔4〕精製した全RNA2μgを用いて、キット(PrimeScript(R) II 1st Strand cDNA Synthesis Kit、TaKaRa社製)によりcDNAを合成した。
〔5〕合成したcDNAを用いて、キット(QIAquick PCR Purification Kit、QIAGEN社製)によりcDNAを精製した。
〔6〕精製したcDNA20ngに、CEACAM5遺伝子のエキソン2〜9を含む領域を増幅するプライマー対(配列番号7及び8に示される塩基配列からなるDNA)10μMをそれぞれ1μlずつ、及びTaKaRa社製PCR反応溶液(10x LA PCR(R) Buffer II(Mg2+free);5μl、25mMMgCl;4μl、2.5mMdNTP Mixture for PCR;8μl、TaKaRa LA TaqTM;0.5μl)を加え、RNase(R) Free Waterで最終体積を50μlに調整した後、以下の1)〜6)に示したPCR反応条件でサーマルサイクラー(TGRADIENT、Biometra社製)を用いてPCRを行うことにより、CEACAM5遺伝子のmRNA由来のcDNAを増幅した後、PCR産物をSYBRR Safe DNA Gel Stain (Invitrogen社製)による染色とアガロースゲル電気泳動で検出した(図1)。なお、内部標準としてβアクチン遺伝子を増幅するプライマー対(配列番号9及び10に示される塩基配列からなるDNA)を用いた。また、生成したPCR産物は4℃で保存した。
<PCR反応条件>
1)95℃、2分を1サイクル(DNA二本鎖の熱変性)
2)95℃、30秒を1サイクル(DNA二本鎖の熱変性)
3)51℃、30秒を1サイクル(プライマーのcDNAへのアニーリング)
4)68℃、15秒を1サイクル(プライマー対によるcDNAの増幅)
5)2)〜4)のサイクルをさらに34回繰り返す。
6)68℃、7分を1サイクル(プライマー対によるcDNAの増幅)
1−2 結果
既知のCEACAM5遺伝子のmRNAに加えて、2種類のCEACAM5遺伝子のスプライシングバリアント(以下、塩基配列が長い順に、「バリアント5D」、「バリアント3D」ということがある。)が、がん細胞(膵臓がん、胃がん、大腸がん)で検出された(図1)。また、かかるバリアント5D及び3Dは、正常細胞では検出されなかった。 以上の結果は、バリアント5D及び3Dは、がん細胞で特異的に発現することを示している。
2.CEACAM5遺伝子のスプライシングバリアントの同定
上記実施例1に記載の方法により、CEACAM5遺伝子のスプライシングバリアント(バリアント5D及び3D)ががん細胞特異的に発現することがわかったので、それらの塩基配列を同定した。
2−1 方法
〔1〕上記実施例1のステップ〔6〕のアガロースゲル電気泳動後に、バリアント5D及び3D由来のPCR産物(バンド)を切り出した。
〔2〕アガロースゲルからPCR産物の精製は、キット(QIAquick Gel Extraction Kit、QIAGEN社製)を用いて行った。
〔3〕PCR産物のクローニングは、キット(TOPO TA Cloning(R) Kit for Sequencing、invitrogen社製)を用いて行った。すなわち、PCR産物をTOPO(R) Cloning Reactionを用いてpCRTM2.1-TOPO(R)ベクターへ挿入した後、PCR産物を含むベクターをOne Shot(R) TOP10 Competent Cells(コンピテントセル)へ形質転換した。
〔4〕形質転換したコンピテントセルから、キット(QuickLyse Miniprep Kit、QIAGEN社製)を用いてPCR産物を含むベクターを精製した。
〔5〕PCR産物を含むベクターを鋳型としたシーケンス用PCRは、プライマー(バリアント5D;配列番号7、8、及び11〜14に示される塩基配列からなるDNA、バリアント3D;配列番号7、8、13、及び14に示される塩基配列からなるDNA)、キット(BigDye(R) Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit、Applied Biosystems社製)を用いて、以下の1)〜5)に示した条件でサーマルサイクラー(GeneAmpR PCR System 9700、Applied Biosystems社製)により行った。なお、生成したシーケンス用PCR産物は4℃で保存した。
<PCR反応条件>
1)96℃、1分を1サイクル(DNA二本鎖の熱変性)
2)96℃、10秒を1サイクル(DNA二本鎖の熱変性)
3)50℃、5秒を1サイクル(プライマーの鋳型DNAへのアニーリング)
4)60℃、4分を1サイクル(プライマーからの伸長反応)
5)2)〜4)のサイクルをさらに24回繰り返す。
〔6〕生成したシーケンス用PCR産物を、キット(BigDye(R)XTerminatorTM Purification Kit、Applied Biosystems社製)を用いて精製した後、DNAシークエンサー(3130xl Genetic Analyzer、Applied Biosystems社製)を用いて塩基配列を決定した。
2−2 結果
バリアント5D及び3D由来のPCR産物は、それぞれ配列番号15及び16に示される塩基配列からなるDNAであることが明らかとなった。かかる塩基配列情報を基に、CEACAM5遺伝子のエキソン2〜9の領域を詳細に調べたところ、バリアント5Dは、CEACAM5遺伝子のエキソン3及び4が欠損したものであること、また、バリアント3Dは、CEACAM5遺伝子のエキソン3の一部(エキソン3の146〜279番目の塩基)、エキソン4〜6、及びエキソン7の一部(エキソン7の1〜145番目の塩基)が欠損したものであることが確かめられた(図2)。また、バリアント5D及び3Dは、新規に同定されたCEACAM5遺伝子のスプライシングバリアントであることが明らかとなった。
以上の結果から、バリアント5D及び3D、すなわち配列番号1及び3に示される塩基配列からなるCEACAM5遺伝子のスプライシングバリアントが、がん細胞(膵臓がん、胃がん、大腸がん)で特異的に発現していることが明らかとなった。
3.CEACAM5遺伝子のスプライシングバリアントの定量解析
次に、がん細胞中で発現するバリアント5D及び3Dの発現量を定量するために、定量PCR法を用いた解析を行った。
3−1 方法
〔1〕全RNAの単離及びcDNAの合成は、上記実施例1に記載された方法〔1〕〜〔5〕にしたがって行った。
〔2〕精製したcDNA20ngに、バリアント5D又は3Dを特異的に増幅するプライマー対(バリアント5D;配列番号17及び18に示される塩基配列からなるDNA、バリアント3D;配列番号19及び20に示される塩基配列からなるDNA)(図3A)10μMをそれぞれ1μlずつ、及びTaKaRa社製PCR反応溶液(SYBR Premix ExTaqII, ROX Refference Dye)を加え、RNase(R) Free Waterで最終体積を20μlに調整した後、以下の1)〜4)に示したPCR反応条件でサーマルサイクラー(ABI PRISM 7900HT Fast Real time PCR System、Applied Biosystems社製)を用いて定量PCR解析を行った。なお、コントロールとして既知のCEACAM5遺伝子のmRNAを特異的に増幅するプライマー対(配列番号21及び22に示される塩基配列からなるDNA)(図3A)を用いた。また、生成したPCR産物をアガロースゲル電気泳動により解析した(図3B)。
<PCR反応条件>
1)95℃、20秒を1サイクル(DNA二本鎖の熱変性)
2)95℃、1秒を1サイクル(DNA二本鎖の熱変性)
3)60℃、30秒を1サイクル(プライマーのcDNAへのアニーリング及びプライマー対によるcDNAの増幅)
4)2)〜3)のサイクルをさらに39回繰り返す。
3−2 結果
まず、用いるプライマーが、バリアント5D又は3Dを特異的に検出できることと(図3B)、定量PCR解析を行うためのプライマーとして十分適していることを確認した(図3C)。かかるプライマーを用いて定量PCR解析を行い、cDNA20ng当たりのmRNAのコピー数を算出したところ、バリアント5Dは、正常細胞と比べ、3種類すべての膵臓がん細胞株(HPAC、HPAFII、QGP1)、2種類の胃がん細胞株(MKN45、KATOIII)、及び3種類すべての大腸がん細胞株(LoVo、HCA2、HCA46)で高発現していることが明らかとなった(図4の中央図)。また、バリアント3Dは、正常細胞と比べ、3種類すべての膵臓がん細胞株(HPAC、HPAFII、QGP1)、2種類の胃がん細胞株(MKN45、KATOIII)、及び2種類の大腸がん細胞株(HCA2、HCA46)で高発現していることが明らかとなった(図4の右図)。特に、バリアント5Dは、既知のCEACAM5遺伝子のmRNAと少なくとも同レベルで発現していることが明らかとなった(図4の中央図と左図との比較)。以上の結果は、上記実施例1の結果を支持するとともに、バリアント5Dは、既知のCEACAM5タンパク質と少なくとも同レベルで検出できるバイオマーカーとして用いることができることを示唆している。
4.CEACAM5遺伝子のスプライシングバリアントがコードするタンパク質の検出1
次に、がん細胞で発現するCEACAM5遺伝子のスプライシングバリアント(バリアント5D及び3D)がコードするタンパク質を検出するために、ウェスタンブロッティング法を用いた解析を行った。なお、CEACAM5タンパク質は多数の糖鎖修飾を受けていることが知られているため、バリアント5D及び3Dがコードするタンパク質も同様に糖鎖修飾され、このことによりウェスタンブロッティング解析したときに単一の位置に目的のバンドが検出されないことが予想された。そこで、アミノ酸数から予想される理論分子量の位置にバンドを検出させるために、ウェスタンブロッティング解析する前に、あらかじめ脱糖化処理を行った。
4−1 方法
〔1〕インキュベーター(37℃、5%CO)中で(10%FBS、0.3mg/mlグルタミン、100U/mlペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシン)/RPMI1640(Sigma-Aldrich社製)存在下に培養した上記9種類のがん細胞株から、lysisバッファー(7.5MUrea、2.5MThio−Urea、12.5%glycerol、50mMTris-HCl (pH 7.4)、2.5%N-Octylglucoside、6.25mMTCEP、1.25mMprotease inhibitor)を用いて細胞抽出液を調製した。
〔2〕後のステップ〔3〕におけるPNGaseF処理のために、2-D clean up kit(GE Healthcare社製)を用いて溶液の置換を行った。
〔3〕PNGaseF(New England Biolabs社製)を用いて脱糖化処理を行った。
〔4〕脱糖化処理後の溶液に含まれるタンパク質をSDS−PAGEを用いて分離し、PVDF膜に転写させた
〔5〕抗CEACAM5抗体(mouse monoclonal antibody、Sigma-Aldrich社製)を一次抗体として、HRP標識マウスIgG抗体(Jackson ImmunoResearch社製)を二次抗体として用いてウェスタンブロッティング法による解析を行った。なお、内部標準として抗βアクチン抗体(mouse monoclonal antibody、Sigma-Aldrich社製)を用いた。
〔6〕検出は化学発光検出(ECL Prime Western Blotting Detection Reagent)(GE Healthcare社製)を用いて行った。
4−2 結果
3種類のがん細胞(膵臓がん、胃がん、大腸がん)において、既知のCEACAM5タンパク質の他、バリアント5D及び3Dがコードするタンパク質の分子量に相当する位置にバンドが検出された(図5)。また、かかるバンドがバリアント5D及び3Dがコードするタンパク質であることは、LC−MS/MS解析により確認した。なお、LC−MS/MS解析は定法にしたがって行った。
以上の結果は、バリアント5D及び3Dがコードするタンパク質、すなわち、配列番号2及び4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、がん細胞(膵臓がん、胃がん、大腸がん)で特異的に発現することを示している。また、バリアント5D及び3Dがコードするタンパク質は、図6に示すように、既知のCEACAM5タンパク質と比べ、途中のドメイン構造が抜け落ちた構造を有していると考えられる。
5.CEACAM5遺伝子のスプライシングバリアントがコードするタンパク質の検出2
さらに、バリアント5D及び3Dが細胞外、すなわち培地中に分泌されるかどうかについて解析を行った。なお、培地中に含まれる血清(特にアルブミン)は、後のウェスタンブロッティング解析において検出の妨げになるので、(10%FBS、0.3mg/mlグルタミン、100U/mlペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシン)/RPMI1640(Sigma-Aldrich社製)は回収前に血清不含培地([0.3mg/mlグルタミン、100U/mlペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシン]/RPMI1640[Sigma-Aldrich社製])へ置換した。
5−1 方法
〔1〕インキュベーター(37℃、5%CO)中で(10%FBS、0.3mg/mlグルタミン、100U/mlペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシン)/RPMI1640(Sigma-Aldrich社製)存在下に上記9種類のがん細胞株を培養した後、血清不含基礎培地へ培地を置換した。
〔2〕24時間インキュベーター(37℃、5%CO)中で培養した後、培地を回収した。
〔3〕以降のステップは、上記実施例4のステップ〔2〕〜〔6〕にしたがって行った。
5−2 結果
3種類のがん細胞(膵臓がん、胃がん、大腸がん)において、既知のCEACAM5タンパク質の他、バリアント5D及び3Dが検出された(図7)。
以上の結果は、バリアント5D及び3Dがコードするタンパク質は、がん細胞(膵臓がん、胃がん、大腸がん)の細胞外へ分泌されることを示している。
本発明は、膵臓がん、胃がん、大腸がんなどのがん発症予防や早期発見に必要な定期検診等のがんの検診者の増加が期待される他、早期がんの段階で診断・治療をうける検診者が増えることや、がんによる死亡率を下げることが期待される。

Claims (8)

  1. 以下の工程(a)及び工程(b)を備えたことを特徴とするがんの有無を判定する方法。
    1)判定用試料中の、配列番号1又は3に示される塩基配列からなるCEACAM5遺伝子のスプライシングバリアントの発現、又は配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質の発現を検出する工程(a);
    2)工程(a)で配列番号1又は3に示される塩基配列からなるCEACAM5遺伝子のスプライシングバリアントの発現、又は配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質の発現が検出された場合、判定用試料提供者ががんである可能性が高いと評価する工程(b);
  2. がんが、膵臓がん、胃がん、又は大腸がんであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 配列番号1又は3に示される塩基配列からなるCEACAM5遺伝子のスプライシングバリアントの発現を検出するためのプライマー対若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えることを特徴とするがんの有無の判定用キット。
  4. がんが、膵臓がん、胃がん、又は大腸がんであることを特徴とする請求項3に記載のキット。
  5. 配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質に特異的に結合する抗体、又はその標識物を備えることを特徴とするがんの有無の判定用キット。
  6. がんが、膵臓がん、胃がん、又は大腸がんであることを特徴とする請求項5に記載のキット。
  7. 配列番号1又は3に示される塩基配列からなるDNA。
  8. 配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
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