JP2014159012A - 触媒体およびその製造方法 - Google Patents

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諭 内田
Takuya Fukuda
琢也 福田
Tatsutaro Fujita
辰太郎 藤田
Takashi Morita
敬司 森田
Ryuichi Tanaka
竜一 田中
Yusuke Tomokuni
祐介 友國
Arinori Sato
有紀 佐藤
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Abstract

【課題】ナノレベルの触媒体をドライプロセスで製造する装置を提供する。
【解決手段】複数のナノ粒子をコア部とし、そのコア部の表面にナノオーダーのシェル部をスパッタで形成するスパッタリングユニットと、複数のナノ粒子をスパッタリングユニット内に分散させる分散ユニットとを有するコアシェルナノ構造体の製造装置を提供する。分散ユニットは、複数のナノ粒子を逆スパッタする逆スパッタリングユニット、複数のナノ粒子を間接加熱する間接加熱ユニットおよび複数のナノ粒子を誘電泳動する誘電泳動ユニットの少なくともいずれかを含む。
【選択図】図19

Description

本発明は、触媒体およびその製造方法に関するものである。
特許文献1には、高価な貴金属であるPt、Ruの使用量を抑制しつつ、燃料電池に用いるのに好適な高活性かつ高安定性を有する触媒、この触媒の製造方法、この触媒を用いた膜電極複合体および燃料電池を提供することが記載されている。特許文献1の触媒は、導電性担体と、前記導電性担体に担持され、下記式で表される組成を有する触媒粒子であって、PtuRuxMgyTz(式中、uは30〜60atm%、xは20〜50atm%、yは0.5〜20atm%、zは0.5〜40atm%である)T元素がSi、W、Mo、V、Ta、Crおよびそれらの組み合わせからなる群より選ばれてなり、X線光電子分光法(XPS)によるスペクトルにおける酸素結合を有するT元素の量が、金属結合を有するT元素の量の4倍以下である触媒粒子を含む。
特開2009−28599号公報
触媒はさまざまな分野で用いられている。一例は、燃料電池の電極触媒や排気ガス触媒において用いられるPtやPtRuなどである。触媒をして用いられる金属または合金にはレアメタル(希少金属、レアアースを含む)として分類される成分が含まれることが多い。したがって、そのような金属または合金の使用量が少なく、効率の良い触媒体を提供することが要望されている。
本発明の一態様は、コア部の表面にナノオーダーの島状または粒状に断続したシェル部を含むコアシェルナノ構造体を有する触媒体である。コア部の表面に、希少金属または合金のナノオーダーの島状または粒状に断続したシェル部を設けることにより、接触面積を拡大できる(比面積、比表面積の増加)。それとともにナノオーダーの局所的な構造、たとえば鋭角構造や内部応力に片寄りが発生する構造などを含むことにより表面エネルギー状態(電子エネルギー状態密度)を変えて、より触媒の活性を高めることができる。したがって、希少金属または合金を含む触媒体であって、希少金属の使用量が少なく、触媒活性の高い触媒体を提供できる。
シェル部は、コア部に含まれる第1の金属に対して仕事関数の大きな第2の金属を含むことが望ましい。フェルミ準位の違いを利用して、第2の金属の電子密度を高めることが可能となり、第2の金属として用いられる希少金属の触媒活性をさらに高めることができる。
コアシェルナノ構造体はナノ粒子であってもよく、基体の表面に複数のコアシェルナノ構造体が形成された触媒体であってもよい。コア部の直径(実効径)は500nm以下であることが望ましく、100nm以下であることがさらに有効である。また、シェル部を形成することを考えるとコア部の直径(実効径)は1nm以上であることが望ましく、10nm以上であることがさらに好ましい。シェル部の島状または粒状の断続した構造の直径(実効径、対角線、代表的な辺の長さ)は、1〜100nm程度が好ましく、10〜50nm程度がさらに好ましい。
触媒として機能する希少金属の典型的なものは白金であり、シェル部は典型的には白金を含む。また、コア部は白金と同属のニッケル、パラジウムであってもよく、銀、銅またはアルミニウムの少なくともいずれかまたは合金、酸化物であってもよい。
これらの触媒体を含む一例は電極であり、複数の電極と、複数の電極の間に配置された電解質層とを有する電池、たとえば燃料電池を提供できる。また、触媒体に接するようにガスが流れる流路を有するガス処理装置を提供できる。ガス処理装置の典型的なものは排ガス処理装置である。
本発明の他の態様の1つは、触媒体の製造方法であり、以下のステップを含む。
・ナノサイズのコア部の表面にナノオーダーの金属薄膜を気相中で成膜し、コアシェルナノ構造体を形成すること。
・コアシェルナノ構造体をアニールすることにより、コア部の表面に島状または粒状に断続したシェル部を形成すること。
たとえば、気相中の成膜プロセス、たとえば、スパッタと、アニールとを組み合わせることにより数10nm規模の島状または粒状の断続的な構造が形成できることが確認できた。スパッタの条件によっては、アニールを省いて島状または粒状に断続したシェル部を形成することも可能である。
コアシェルナノ構造体を形成することの前に、基体の表面に気相中で複数のコア部を形成することを含むことも有効である。コア部を形成することは、以下のステップを含むことが望ましい。
・コア部を構成する金属に対し格子不整合の大きな基体の表面にコア部を構成する金属を気相中で成膜すること。
・基体をアニールすることによりナノサイズのコア部を形成すること。
格子不整合により島成長が進み、アニールすることによりナノサイズのコア部(粒子化部)を形成できる。スパッタまたは蒸着の条件によってはアニールを省いてナノサイズのコア部を形成できる。
本発明の他の態様の1つは、以下のステップを有する触媒体の製造方法である。
・ナノ粒子をコア部として、その表面に気相中で、ナノオーダーの島状または粒状に断続したシェル部を含むコアシェルナノ構造体を形成すること。
・コアシェルナノ構造体を形成する間、また前に、ナノ粒子を分散すること。
ナノ粒子をコアとしてその表面にナノサイズのシェルを気相中で形成するためには、ナノ粒子を分散する工程を設けることが必要である。分散することは、ナノ粒子を逆スパッタリングすることを含んでいてもよく、ナノ粒子を加熱することを含んでいてもよく、ナノ粒子を誘電泳動することを含んでいてもよい。
本発明の他の態様の1つは、複数のナノ粒子をコア部とし、そのコア部の表面にナノオーダーのシェル部をスパッタで形成するスパッタリングユニットと、複数のナノ粒子をスパッタリングユニット内に分散させる分散ユニットとを有するコアシェルナノ構造体の製造装置である。分散ユニットは、複数のナノ粒子を逆スパッタする逆スパッタリングユニット、複数のナノ粒子を間接加熱する間接加熱ユニットおよび複数のナノ粒子を誘電泳動する誘電泳動ユニットの少なくともいずれかを含むことが望ましい。
触媒体の一例を示す図。 触媒体を形成する製造装置の一例を示す図。 製造装置により触媒体を製造する過程を示す図。 コア部評価用サンプルのSEMによる構造評価の結果を示す図。 コアシェル構造評価用サンプルのSEMによる構造評価の結果を示す図。 電子密度および電子温度のRF電力依存性を示す図。 電子密度および電子温度のAr分圧依存性を示す図。 Ar分圧を変化させて作製したCr薄膜のSEM像を示す図。 RF電力を変化させて作製したCR薄膜のSEM像を示す図。 コア部評価用サンプルの仕事関数の測定値を示す図。 コア部評価用サンプルの表面抵抗の測定値を示す図。 コア部評価用サンプルの接触抵抗の測定値を示す図。 表面抵抗測定値の傾向を示す図。 接触抵抗測定値の傾向を示す図。 RFスパッタリングによるコアシェル構造の形成過程を示す図。 触媒体の触媒特性を大気圧光電子分光測定により評価した結果を示す図。 バルク膜で仕事関数を測定した結果を示す図。 バルク膜で直流抵抗を測定した結果を示す図。 ナノ粒子タイプの触媒体を製造する装置の概略構成を模式的に示す図。 RF電力に対する自己バイアス電位の測定結果を示す図。 逆スパッタリングにより粒径分布が変化する様子を示す図。 イオン温度を表す式を示す図。 逆スパッタにおけるプラズマ状態を示す図。 プラズマ写真観察の結果を示す図。 ベーキングの効果を示す図。 誘電泳動力および磁気泳動力を表す各式を示す図。 誘電泳動力および磁気泳動力の理論計算値を示す図。 誘電泳動用の電極を示す平面図。 サンプルステージの一部を拡大して示す断面図。 サンプルステージに形成された誘電体柱群を示す図。 ナノ粒子をケルビン法により評価した様子を示す図。 ナノ粒子を直流抵抗により評価した様子を示す図。 ナノ粒子をインピーダンス測定により評価した様子を示す図。 触媒体を電極として用いた燃料電池の概略構成を示す図。 触媒体を触媒セルとして用いたガス処理装置を示す図。
1. 概要
自動車産業でも地球環境保全問題やエネルギー問題に対処し、持続可能な循環型社会の実現に対応していかなければならない。とくに、自動車に係る具体的事象としては、車載用燃料電池の電極触媒や排気ガス触媒がある。触媒にはPtやPt−Ruなどの合金が使われるが、いずれもレアメタルでありコストも高い。世界的不況下の中、自動車関連事業の国際競争力を維持・向上させていくには、各種材料などの省資源化・低コスト化、さらには軽量化などに関し、より一層の技術革新が求められている。
触媒とは、化学反応を促進する材料である。携帯機器や自動車向けに実用化の検討が進んでいる高分子固体電解質型燃料電池(PEFC)やDMFC(ダイレクトメタノール型燃料電池)では、水素を酸化して水素イオンと電子を取り出す反応を促進する。燃料電池の構成材料の中で、電解質と並んで最も重要な働きをする能動的な材料である。
PEFCやDMFCでは,触媒材料としては白金(Pt)が使われる。Ptの表面に水素分子を吸着して、吸着点で分子から原子状態に解離させ、低い温度でも反応が起きやすくなる。Ptそのものの改良研究で、もっとも有効な方法は触媒の粒径を小さく均一に分散させることにより反応に寄与する表面積を上げることである。現在、Pt粒子の径は2〜3nm程度まで小さくなっている。粒径を小さくしていくと、粒子同士が凝集しやすくなり表面積を上げられないという問題が生じる。そのために、ナノテクノロジーを使って、カーボンなどの担持材料に分散した状態で固定化する研究が活発化している。
Ptは希少金属で有限な資源であることから有効に使うために、(1)Pt材料そのものを改良する、(2)触媒構造を工夫する、(3)Pt以外の新材料を探索する、という三つの方向で開発が進んでいる。
Ptは希少金属であり、世界全体の推定埋蔵量は約8万t程度と見られる。価格も3千円/gと高価な貴金属である。特にPt使用量の多い自動車向けについて考えると、現状のPt使用量のままでは、1000万台の燃料電池車を作るためには、世界の白金を使っても足りないという試算になる。さらに、燃料電池のコストを低減させるためにはPtの触媒活性を一層向上させ、その使用量を極限まで抑えることが重要である。
1つの目標は、触媒として多用されるレアメタル(たとえばPt)以外の適切なナノ粒子材料(樹脂、酸化物、金属)表面をPt薄膜で成膜したものを乾式法で生産可能とし、Pt触媒の代替品とすることである。一般的に主流の燃料電池車などには1台あたりに電極触媒として約100gのPtが使われているが、Ptをナノ粒子の表層のみ使用することになり、大幅に使用量を減少させることができる。さらに新たな他の金属をはじめとする材料との合金としたり、Pt表面構造の改質などで触媒効率を高めたりすることにより、使用量を減らすことが可能となる。
適切なナノ粒子基材(たとえば、粒子径100nm以下をナノ粒子と定義するが、粒子径500nm以下であってもよい)を選定して、これを原料として「Ptナノ粒子」と同等の挙動を示す「Pt成膜ナノ粒子」とすることで、車載用の燃料電池電極触媒や排気ガス触媒として使用されるPt、Ruなどのレアメタルの使用量を従来の1/10程度に削減することである。即ち、レアメタル粒子の代替としてナノ粒子基材の表面のみにレアメタル材料で成膜(厚さは〜10nm以下)することにより大幅な省資源を可能とする。また、省資源により原材料コストを削減することとなり、燃料電池や排気ガス触媒などの環境負荷を低減する技術を、より市場へ普及させることを目指す。
湿式法の1つである液相還元法では、ナノ粒子を液相中に分散させるための分散剤や、合成条件調整のための塩、酸又は塩基などの添加が不可欠となっているほか、合成にともなって廃液が生じる。乾式法ではこのような添加剤が不要であり、また廃液を出さない点において環境負荷が少ない。したがって、以下では、乾式法でのPt成膜ナノ粒子の作製を説明する。
1 触媒体
図1に触媒体の一例を示している。図1(a)の触媒体1は、平板状の基体(基板)7を含むプレートタイプであり、図1(b)の触媒体9はナノ粒子である。いずれも、担持材(コア材、コア部、コア)5と、その表面3に形成されたシェル部6とを含む。ナノサイズのコア部5の表面3にナノオーダーのシェル部6が形成された構造体をコアシェルナノ構造体2と呼ぶ。さらに、これらの触媒体1および9のシェル部6は、島状または粒状(粒子状)に分断されており、コア部5の表面に多数のナノオーダーの微細構造が形成された状態となっている。このようなコアシェルナノ構造体2は、一例としては、スパッタとアニーリングとの組み合わせにより形成できることが確認された。スパッタとアニールの条件選定とナノ粒子のSEM観察から、表面3に直径が数10ナノメートル以下の球状粒子または島状の構造(シェル部)6の生成を確認した。また、これらの触媒体1および9は、仕事関数測定から表面が導体膜に覆われていること、直流電流測定ではアニール条件によってその形態が異なることを確認した。
2 基板タイプの触媒体の製造装置および方法
2.1 スパッタとアニールとの組み合わせによる例
図2に、触媒体1を形成する製造装置10の一例を示している。また、図3に、触媒体1を製造する方法の一例を示している。この製造装置10および製造方法では、ドライプロセスを用い、特に代表的な成膜技術の1つであるスパッタ法とアニール処理とを組み合わせた製造方法により、平板上にコアシェルナノ構造体(コアシェルナノ粒子)を生成する。この手法によってウェットプロセスの問題点を解決することが期待される。また、触媒材料のナノサイズ化だけでなく、適切な担体(コア)と組み合わせることにより、触媒効果の向上が可能となる。コア部5のサイズは100nm程度、シェル部のナノ構造は数10nmである。
製造装置(スパッタリング装置、成膜装置)10は、平板状の基体(以降では基板)7にコアシェルナノ構造体を生成する装置である。製造装置10は、地面に対して接地された真空容器(チャンバー)11と、複数のターゲット16がチャンバー11内に配置されたカソードユニット15、カソードユニット15に電力を供給する電力供給ユニット20と、基板7を搭載するサンプルステージ25と、サンプルステージ25を介して基板7に影響を与えるアシストユニット30とを含む。製造装置10はさらに、プラズマを遮蔽するシャッター40と、ロータリーポンプおよびオイル拡散ポンプなどの排気システム(不図示)と、キャリアガスとなるArガスを真空容器11に導入するポート(不図示)とを含む。
電力供給ユニット20は、交流電源(高周波電源、RF電源)21と、マッチングボックス(MB)22と、DC電源23と、ローパスフィルタ(LPF)24とを含む。電力供給ユニット20は、必要に応じて、RF電力、またはマイナスのDC電力が重畳されたRF電力、DC電力を切替えてカソードユニット15に供給できる。
アシストユニット30は、サンプルステージ25にバイアス電位を印加する電源31と、サンプルステージ25の加熱用ヒータ27に電力を供給するヒータ電源33とを含む。基板7を加熱するために、真空容器11内にランプヒータや、IRヒータ等を設置してもよい。
製造装置10は、スパッタリング時のプラズマの状態を計測するラングミュアプローブ(ラングミュア探針)36と、駆動回路37とを含む。駆動回路37は、ラングミュアプローブ36に電力を供給する直流電源38およびローパスフィルタ(LPF)39を含む。
図3に製造装置10により触媒体1を製造する過程を示している。基板7の一例はシリコン(Si(1、0、0))であり、コア材5はニッケル(Ni)であり、シェル材6は白金(Pt)である。図3(a)に示すように基板7をステージ25にセットする。図3(b)に示すように、ターゲット16としてニッケルをセットし、スパッタにより基板7の上にニッケルの薄膜5aを形成した。薄膜成長様式におけるVW成長(島成長)を利用しナノ粒子化を試みた。成長様式は基板と薄膜の格子不整合度の大きさで決まり、格子不整合度が大きいほどVW成長になりやすい。基板7上にコア層5aをスパッタで成膜した後、図3(c)に示すようにアニール処理によってコア層5aをナノ粒子化した。スパッタ時間の一例は30〜60秒であり、加速電圧は1250V、電流密度は0.9mA/cm、アルゴン流量は0.6sccmである。アニール時間の一例は30分であり、アニール温度は420から720℃である。スパッタリングした基板7を熱処理炉等でアニーリングすることにより、基板7の表面に凸状のコア部5をマイグレーション効果により成形してもよい。
コア材はニッケルに限らず、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、コバルト(Co)などであってもよく、これらの金属を含む合金または酸化物であってもよい。後述するように、コア材としては、電気陰性度が比較的大きい単金属または合金を用いることが望ましい。コア部5は、直径または有効径が数100nmから100nm以下のサイズであることが、触媒体1としての機能面および取扱いの面から好ましい。たとえば、コア部5の直径(有効径)は、1〜500nmが好ましく、10〜100nmであることがさらに好ましく、50〜100nmであることがいっそう好ましい。
さらに、図3(d)に示すように、コア部5の表面3に白金Ptをスパッタすることによりシェル材の薄膜(シェル層)6aを形成し、図3(e)に示すようにアニール処理によりコア部5の表面3に島状または粒状に断続したナノオーダーの構造を含むシェル部6を形成した。スパッタ時間の一例は10秒であり、加速電圧は1250V、電流密度は0.9mA/cm、アルゴン流量は0.6sccmである。アニール時間の一例は30分であり、アニール温度は550から850℃である。
シェル材は、白金Ptに限らず、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、インジウム(Ir)、その他のレアメタルまたはそれらの合金であってもよく、コア部5に含まれる金属に対して仕事関数が大きい金属または合金を用いることが望ましい。シェル部6はコア部5の表面3に数10nm程度のナノレベルの島状または粒状の構造、たとえば、突起、鋭角構造などの微細構造を含む。この構造により、比表面積が増加し、白金の接触面積が増加する。それとともに、ナノレベルの微細構造により、内部応力のアンバランスから表面エネルギー状態がアンバランスになりやすく電子エネルギー状態密度が変わりやすいので、シェル部6に電子密度の片寄りが発生し、触媒としての活性が向上する。
さらに、コア部5に対して仕事関数の大きなシェル部6を形成することにより、フェルミ準位の違いを利用してシェル部6に電子を移動でき、シェル部6の電子密度を高めることができる。したがって、上記の製造方法により、これらの相乗効果として、白金の使用量が少なくても触媒活性の高い、触媒効率の大きな触媒体1を提供できる。
図4に、基板7の表面にコア材であるニッケル(Ni)のスパッタリング時間およびアニール時間を変えてコア構造評価用のサンプルを作製し、SEM(FE−SEM)により構造の評価を行った結果を示している。図4(a)のサンプル1−1は、Niをターゲット材とし、スパッタリング時間を30秒として、Si基板の表面に、Niを薄膜状に成長させた。Niが成長した基板を真空容器から取り出し、熱処理炉により、アニール温度を720℃、アニール時間を30分とする条件で、アニーリングをしてサンプルを作製した。
図4(b)のサンプル1−2は、スパッタ時間を60秒、アニール温度を720℃、図4(c)のサンプル1−3は、スパッタ時間を30秒、アニール温度を420℃、図4(d)のサンプル1−4は、スパッタ時間を60秒、アニール温度を420℃、図4(e)のサンプル1−5は、スパッタ時間を30秒、アニーリングなし、図4(f)のサンプル1−6は、スパッタ時間を60秒、アニーリングなしで、他の条件はサンプル1−1と同様に作製した。
上記は、基板7と薄膜(コア部)5の格子不整合が大きいことで成長時にVW成長することを利用してナノ粒子化を試みた。サンプル1−5および1−6ではナノ粒子化していなかった。これは上記の条件のスパッタ法が低温プロセスであるため、蒸着原子が基板表面での拡散に必要な運動エネルギーを持っておらず、基板上で表面拡散が盛んに行われず、島成長に至らなかったためだと考えられる。これに対し,アニール処理によってナノ粒子化されたのは、コア部5のNi膜が融点降下により融点以下(Niのバルク時の融点は1455℃)で溶融し、Ni原子が熱により拡散し始め、スパッタ時に形成された核にNi原子が集中し、ナノ粒子状のコア部5が形成されたと考えられる。また、アニール温度が高いサンプル1−1および1−2のコア部5の球形度が向上する傾向があり、スパッタリング時間が短いサンプル1−1および1−3の方がコア部5の寸法が小さくなる傾向がある。
図5に、シェル部6のPtのアニール時間を変えてコアシェル構造評価用のサンプルを作製し、SEMにより構造の評価を行った結果を示している。基板7の上に、コア材としてNiをターゲットに用い、スパッタリング時間を30秒として、Si基板7の表面にNiを薄膜状に成長させた後、720℃で30分間アニーリングをしてコア部5を形成した。その後、再び真空容器内に戻し、シェル材としてPtをターゲットに用い、10秒間スパッタリングを行った。図5(a)のサンプル2−1は、真空をブレークしてサンプルを取り出した後、アニール温度550℃、アニール時間30分の条件下で、熱処理炉にてアニーリングを行ったものである。
図5(b)のサンプル2−2は、アニーリングの温度を850℃とし、図5(c)のサンプル2−3はアニーリングを行わず、図5(d)のサンプル2−4は、Ptをスパッタリングしなかったもの、すなわち、シェル部6を有しないものである。
アニーリングの温度が高いほどNiの突起の球形度が増していることが確認できるが、いずれのサンプルにおいても、Ni表面のPtの形態は観察できかった。コア部5のNi上におけるシェル部6のPtの形態については、電気特性測定の結果を踏まえて、次のように推察した。まず、Pt膜が形成されるが、そのPt膜の結晶性が悪い場合は、アニールによりPt膜がナノ粒子化し、接地面積が低くなり、抵抗が大きくなる。一方、結晶性の良い均質なPt膜が形成されるか、PtとNiの中間層が生成され、やや合金に近い状態になる場合は、Pt-Ni界面の電気的障壁が小さくなり電気抵抗が小さくなると考えられる。今後、TEM等の高解像度顕微鏡を用いた観察、および、触媒としての特性の評価を行い他のナノ粒子触媒との比較をすることが望ましい。
以上では、スパッタ法とアニール処理を組み合わせたコアシェル構造をもつ金属ナノ粒子触媒の製造方法を説明した。基板7の上にコアシェルナノ構造(コアシェルナノ粒子)2が生成され、コア部(コアナノ粒子)5に関しては、アニール処理を行うことで薄膜からナノ粒子化され、アニール温度とスパッタ時間を変えることで粒子の形状や寸法を制御できる。シェル部(シェルナノ粒子)6に関しては、電気特性評価により形態を推察し、たとえば、Ptにより形成されたシェル層を550℃でアニールすることで、シェル部6が島状または粒状に分断されたコアシェルナノ粒子構造2が形成されたと考えられる。
2.2 RFプラズマを用いた例
さらに、スパッタのみによりコアシェルナノ構造を含む触媒体を製造することも可能である。スパッタリングで用いる放電プラズマは弱電離プラズマであり、電子、イオン、中性粒子が混在した状態にある。電子やイオンだけでなく、中性粒子との衝突による励起、解離や電離により生じた粒子が、プラズマ中および個体表面での反応過程において重要である。スパッタリング過程におけるプラズマの状態は、プラズマの色の違いを視覚的に観察することもできるが(例えば、赤色発光色であれば低エネルギー、青色発光色であれば高エネルギーなど)、プラズマを特徴づけるプラズマ粒子の密度やエネルギー状態を具体的に知ることが重要である。プラズマ特性を表わすファクターを計測するのがプラズマ診断であり、プラズマ診断の一つの方法である静電プローブ法(Langmuirプローブ法、ラングミュアプローブ法)により、荷電粒子である電子やイオンの温度や密度、具体的には、プラズマ電位Vs、電子温度Te、電子密度Neなどを求めることができる。
図6に、図2に示した製造装置10においてRFプラズマを発生させたときの、ラングミュアプローブ法により求めた電子密度Neおよび電子温度TeのRF電力依存性を示している。ターゲットにはCrを用い、Ar分圧は1.0Paに固定し、RF電力を100Wから500Wまで変化させた。また、図7に、電子密度Neおよび電子温度TeのAr分圧依存性を示している。ターゲットにはCrを用い、RF電力を400Wに固定し、Ar分圧を5Paから25Paまで変化させた。投入電力およびAr分圧は、スパッタリングされた物質の形状、構造、物性などに強い影響をおよぼすと考えられるプロセス条件である。
一般的に、RF電力の増加に伴い、電子やイオンを含む各種粒子間の衝突の機会が増加するため、電子温度Teおよび電子密度Neは増加すると考えられる。しかしながら、図6においては、RF電力が100Wから増加するのに伴い、電子密度Neおよび電子温度Teは単調に増加し、それぞれ400Wおよび300Wで極大値を示す。さらに、プラズマ中の電子および各種励起粒子の消滅が、真空容器壁への拡散消失であるとすると、電子温度Teは、プラズマの中心線から半径Rの真空容器内のAr圧力pに対し、R×pの増加に伴って減少することになる。しかしながら、図7においては、Ar分圧の増加に伴うそのような変化は見られない。
したがって、電子温度Teおよび電子密度Neは、単純にはプロセス条件には依存しないが、スパッタリングされた薄膜、または微粒子の状態と、プラズマの状態を関連付けて最適化を行うことにより、RFプラズマを用いてナノ粒子状のコア部5およびコア部5の表面にナノオーダーで島状または粒子状のシェル部6を形成することができる。
ラングミュアプローブ法により求めたプラズマ電位Vsは、RF電力およびAr分圧の増加に伴い単調に増加する。したがって、プラズマ電位Vsを制御するには、RF電力にDC電力を重畳させて印加することも有効である。
図6および図7の各プロセス条件にて、基板上にCrの薄膜をスパッタリングして、膜厚並びに、SEMおよびXRDによる構造の評価を行った。RF電力の増加に伴い、成膜速度が増加するとともに、結晶性が良好となり、粒子径が増大する。また、Ar分圧の増加に伴い、成膜速度は減少するとともに、非晶質化し、粒子径が小さくなる。したがって、基板表面に島状構造を有する微粒子構造体(コアシェルナノ構造体)を形成するためには、RF電力を低下させるとともに、Ar分圧を増加させることが有効であることがわかった。
図8に、RF電力400W一定で、Ar分圧1.0、5.0、10Paと3種類に圧力変化させたCr薄膜のSEM写真を示している。図8(a)は400W、1.0Paの薄膜は金属光沢が見られ反射率の高い膜である。SEM写真の倍率が十分でないが表面に200〜250nmの粒径が観測できる。Cr薄膜は3000オングストローム近くの膜厚なので連続膜が下層に存在し、その上に230nm前後の粒状の表面形態となっている。これは薄膜の形成過程におけるStranski-Krastanov型の成長様式に類似している。図8(b)に示すように、Ar分圧を増加すると膜厚は減少し、薄膜の色は茶色に変化し反射率が低下している。これは膜厚が薄いためだけでなく膜構造の影響もあると考えられる。図8(c)に示すように、Ar分圧が増すと表面形態の粒径は小さいように見えるが薄膜中に空孔や孔の多い膜のため反射率の低下を招いている。
図9は、Ar分圧1.0Pa一定でRF電力300Wと400WにおけるW数の異なるCrスパッタ膜のSEM写真である。図9(a)の300Wで成膜した膜厚は930オングストロームと、図9(b)の400Wで成膜した薄膜の1/3に薄くなっているが表面形態の変化はない。
このように、RFスパッタリング成膜において下地の層が連続膜でない島状構造を得るには質量膜厚が300オングストローム(30nm)以下にする必要がある。一般的にガラス絶縁体基板上へ金属を蒸着する場合、初期過程では三次元の核が生成、成長、合体することにより島状構造の薄膜成長をする。このために島の成長は吸着原子の表面拡散によって制限を受ける。この表面拡散は基板の表面状態によって大きく影響するが、成長段階にある個々の島成長が合体して最終的に連続膜となる。蒸着時の薄膜の密度はバルク結晶と異なり、膜厚の増加とともに変化しバルクの値に近づく。基板温度はスパッタCr原子の付着、再蒸発、表面拡散に大きく影響する。高温では蒸着薄膜内部での凝縮が起こりやすくなり、島の形状は球状に近づく。また、島状構造の不連続膜から連続膜に遷移する膜厚は厚い方に移行する。低温プラズマスパッタではバイアス電位やAr分圧が基板に入射する蒸着原子のエネルギーに影響し島状構造となる膜厚を制限すると考えられる。薄膜の構造を決めるもう一つの因子は基板に入射する蒸着原子の速度がある。一般に、速度が速いほど島の数密度は大きくなり、島状構造不連続膜-連続膜遷移膜厚は薄い方に移行する。この島状構造成膜が基板上にコア粒子を作成する方法として有効であり、プラズマ特性に関係するスパッタ電極機構とバイアスシステム、RF電力、Ar分圧、基板表面状態、基板温度の因子を適応することにより最適化成膜条件が得られる。
図10に、RFスパッタにより(アニールせずに)基板7の上にナノ粒子状のコア部5を形成した各サンプル(サンプル3−1〜3−3)の仕事関数の測定値を示し、図11に、各サンプルの直流抵抗測定による表面抵抗を示し、図12に、各サンプルの接触抵抗の測定値を示している。
サンプル3−1は、製造装置10のカソードユニット15にNiのターゲット16を設置し、Si基板7をサンプルステージ25の上に配置して、チャンバー11内を排気してRFスパッタリングによりコア部5を形成した。RFスパッタリング条件は、RF電力が50W、Ar分圧が1Pa、スパッタリング時間が5分である。サンプル3−2は、スパッタリング時間が10分であり、サンプル3−3は、スパッタリングを行っていないリファレンスである。
図10は、ケルビン法による仕事関数の測定値である。ケルビン法は、容量測定用標準電極と測定対象のサンプルの表面(スパッタリング面)とを非接触で近接させ、高周波電圧を印加して、電極とサンプルとの間の容量変化を測定する方法である。容量(容量測定における高周波電流)が最小となる印加電圧を測定することにより、サンプルの仕事関数が決定される。最小となる印加電圧が低いほど、サンプルからの電子が放出され難く、絶縁性が高いことになる。
基板のみであるサンプル3−3の仕事関数は、0.02eVである。Niを5分スパッタリングしたサンプル3−1の仕事関数は、0.09eVであり、Niをスパッタリングすることにより、導電性が高くなったことがわかる。これに対し、Niを10分スパッタリングしたサンプル3−2の仕事関数は−0.01eVであり、サンプル3−1に比較して、サンプル3−3に近い値となっている。このことから、サンプル3−2のコア用サンプルは、サンプル3−1よりも、基板表面の露出の割合が高いことが推察される。
図11は、直流抵抗測定による表面抵抗測定値である。図13(a)および(b)における表面抵抗測定値の傾向を示している。表面抵抗測定は、サンプル表面を流れる電流を評価する方法であり、サンプルのスパッタリング面に接触させた2つの電極間に流れる電流から抵抗を求める方法である。表面を流れる電流が小さいほど、測定抵抗が高いことになり、突起(凸部)の横方向の接触の割合が低いことになる。したがって、突起が島状に形成されていれば、抵抗が大きくなる。
サンプル3−2の表面抵抗は2.9×10Ωであり、サンプル3−1の表面抵抗1.12×10Ωよりも大きい。このことからも、サンプル3−2は、基板表面の露出の割合が高いことが推察される。
図12は、直流抵抗測定による接触抵抗測定値である。図14(a)および(b)に、接触抵抗の測定値の傾向を示している。接触抵抗は、基板7とスパッタリング面との間を流れる電流を評価する方法であり、サンプルのスパッタリング面(表面)と基板面(裏面)に接触させた2つの電極間に流れる電流から抵抗を求める方法である。抵抗が大きいほど、絶縁性が高く、突起が島状に形成されていることになる。
サンプル3−2の接触抵抗は1.63×10Ωcmであり、サンプル3−1の接触抵抗2.02×10Ωcmよりも大きい。接触抵抗の測定結果からも、サンプル3−2は、基板表面の露出の割合が高いことが推察される。
以上の評価結果より、図15に示すように、RFスパッタリングによりコア部5の形成は、まず、図15(b)に示すように、基板7の表面を覆うようにコア材の層5aが形成され、RFスパッタリングを継続することにより、図15(c)に示すように、ナノ粒子状のコア部5が形成されると考えられる。さらに、RFスパッタリングにより図15(d)に示すようにナノ構造のシェル部6を形成する。
図16に、コア部5の表面にRFスパッタリングにより(アニールなしで)島状または粒子状のシェル部6を形成した触媒体1の触媒特性を大気圧光電子分光測定により評価した結果を示している。
図16(a)のサンプル4−1は、製造装置10のサンプルステージ25の上にSi基板7を配置し、チャンバー11内を排気し、Niのターゲット16aをRFスパッタリングすることによりコア部5を形成した。スパッタリング条件は、RF電力が200W、Ar分圧が10Pa、スパッタリング時間が10分である。続けて、Ptのターゲット16bをRFスパッタリングすることによりシェル部6を形成した。スパッタリング条件は、RF電力が200W、Ar分圧が10Pa、スパッタリング時間が30secの条件である。
図16(b)のサンプル4−2は、コア部(Ni)5の表面に、Ptをスパッタリングしない、すなわち、シェル部6を形成していないリファレンスであり、図16(c)のサンプル4−3は、コア部5を形成せずに基板7にPtをRFスパッタリング(スパッタリング条件は、RF電力が200W、Ar分圧が1Pa、スパッタリング時間が2分)したリファレンスであり、図16(d)のサンプル4−4は、コア部(Ni)5の表面に、Ptをスパッタリングしない、すなわち、シェル部6を形成していないリファレンスであり、Niのスパッタリング条件を、RF電力200W、Ar分圧1Pa、スパッタリング時間10分としたリファレンスである。サンプル4−4は、Niをサンプル4−2よりも低いAr分圧でスパッタリングしているため、連続膜に近い構造のサンプルである。
大気圧光電子分光(UPS: Ultraviolet Photo-electron Spectroscopy)の測定は、理研計器株式会社製の大気圧光電子分光装置(型式:AC−2)を用いて行った。大気圧光電子分光は、hνのエネルギーをもつ紫外線などの励起光をサンプルに照射して放出される光電子の運動エネルギーを光電子スペクトルとして測定するものである。この光電子スペクトルにより試料の最外殻での金属表面の電子構造や電子状態密度の解析ができる。特に大気圧光電子分光は内殻ではなく最外殻の電子構造を知ることができるので表面状態の解析に有効である。光電子分光スペクトルのYield(光電子放出数)は電子状態密度を反映しており自由電子論の適用からYieldの1/2乗をとることによりフェルミ準位(金属においては仕事関数と一致)が決定できる。
図16(a)〜(d)は、横軸は光電子エネルギーを表し、縦軸はYieldの1/2乗を表している。図16(d)に示すように、サンプル4−4の仕事関数は4.56eVであり、バルクの純Niの仕事関数である5.15eVよりも小さい。これは、スパッタリングされた薄膜の形状、膜構造および内部応力等が影響していると考えられる。サンプル4−2の仕事関数は4.63eVであり、サンプル4−4よりも0.07eV大きくなっている。したがって、Ar分圧が高いサンプル4−2の方が、仕事関数が大きくなっており、微細構造の変化によるものと思われる。サンプル4−3の仕事関数は、4.83eVであり、Ptのバルクの値5.65eVよりも小さくなっている。
サンプル4−1は、2つの傾きが観測される。これは、NiとPtとの電子状態密度関数の違いよるものであり、エネルギーの低い方の傾きから求められる4.67eVがNiの仕事関数であり、高い方の傾きから求められる4.75eVがPtの仕事関数であると考えられる。したがって、Niの仕事関数が4.63eVから4.67eVに増加し、逆にPtの仕事関数が4.83eVから4.75eVに減少していることになる。これは、Niの表面にPtを成長させることにより、仕事関数の小さいNiから仕事関数が大きいPtに電子が注入されたためであると考えられる。これにより、Ptの電子密度が増加し、Pt単独の場合よりも、触媒としての活性度が向上すると考えられる。
金属触媒のメカニズムは充分に解明されたと言えないが、触媒作用の主要な因子は触媒表面の電子状態である。すなわち、電子のやりとりで触媒作用が行われているため金属表面の電子状態密度やフェルミ準位を知ることが大切である。担体金属(コア部)5にナノ微粒子Ptを担持したコアシェル構造であると、フェルミ準位の違いによりコア部5のNiからシェル部6のPtに電子が移行しPt表面の電子密度が高くなり触媒活性が増大することが分かった。
図17に、ナノ粒子測定の前にバルク膜で仕事関数を測定した結果を示している。均一な表面に膜形成された場合に推測される順は、Si<Pt/Si≒Pt/Ni/Si<Ni/Siとなるはずである。実際に測定された仕事関数(Wf(eV))の測定結果は、Si(実線)<Pt/Si(破線)<Ni/Si(一点鎖線)<Pt/Ni/Si(二点鎖線)となった。これはNiが島状に成膜されていることを意味する。
図18に、直流抵抗測定の結果を示している。表面抵抗値は、均一成膜であれば、Si>Ni/Si>Pt/Si>Pt/Ni/Siとなるはずである。しかしながら、測定結果は、Si(実線)>Ni/Si(一点鎖線)>Pt/Si(破線)>Pt/Ni/Si(二点鎖線)となっている。この測定結果はNiが島状に成膜されていることを意味する。このケルビン法と表面抵抗測定から推察されるサンプルの断面構造としては、NiはSi上では島用状に形成されており、PtはSi上では均一に形成されていることが示唆されている。
ナノ粒子上にPt形成した場合の評価方法は、(a)表面状態の評価であり(前述したケルビン法)、粒子表面を流れる電流と、内部と表面での電流の流れ易さの測定((b)直流抵抗と(c)インピーダンス測定)になり、上記ではそれに基づいて測定を行った。
2.3 斜め入射法によるコアシェルナノ構造体の形成
気相成長において、基板表面に対する入射粒子の入射角度を制御することにより、島状の微細構造体を形成することもできる。たとえば、スパッタリングにおいて、ターゲット面に対し、基板表面が一定の角度で傾くようにサンプルステージを設置するとともに、サンプルステージを回転させながら、スパッタリングすることにより、斜め入射の効果により、島状の微細構造体が形成される。サンプルステージの角度、回転数およびスパッタリング条件により、微細構造体の形態を制御することができる。
3 粒子タイプの触媒体の製造装置および方法
3.1 製造装置
図19に、ナノ粒子タイプの触媒体9を製造する装置50の概略構成を模式的に示している。製造装置(スパッタリング装置、成膜装置)50は、地面に対して接地された真空容器(チャンバー)11と、コーティング用のターゲット16がチャンバー11内に配置されたカソードユニット15、カソードユニット15に電力を供給する電力供給ユニット20と、コア部5となるナノ粒子を搭載するサンプルステージ25と、サンプルステージ25のナノ粒子を分散するための機能を提供するアシストユニット30とを含む。
電力供給ユニット20は、交流電源(高周波電源、RF電源)21と、マッチングボックス(MB)22と、DC電源23と、ローパスフィルタ(LPF)24とを含む。DC電源23は、マイナスの電圧がカソードユニット15に印加されるように配線されている。電力供給ユニット20は、必要に応じて、RF電力、またはマイナスのDC電力が重畳されたRF電力を切替えてカソードユニット15に供給できる。
また、この製造装置10は、スパッタ用の電力を供給する電力供給ユニット20の出力をカソードユニット15とサンプルステージ25とに切り替えるスイッチ35を含む。したがって、カソードユニット15とサンプルステージ25とに切り替えてスパッタ用の電力を供給できる。
サンプルステージ25は、誘電泳動用の電極26と、サンプルステージ25のナノ粒子を間接的に加熱するベーキング用ヒータ27と、微振動発生機構(振動機構)28とを含む。サンプルステージ25の上面には、電極26、ヒータ27および微振動発生機構28をプラズマから保護するための樹脂薄膜(PTFE)29が配置されている。微振動発生機構28は、超音波を発生する圧電素子またはランジュバン型振動子などを含む。
アシストユニット(マルチアシストユニット)30は、サンプルステージ25にバイアス電位を印加する電源31と、誘電泳動用電極26に電力を供給する電源32と、ベーキング用ヒータ27に電力を供給する電源33と、微振動発生機構28を駆動する駆動源34とを含む。加熱用のヒータ27は、真空容器11内にランプヒータや、IRヒータ等を設置するようにしてもよい。
さらに、スパッタリング装置10は、スパッタリング時のプラズマの状態を計測するラングミュアプローブ(ラングミュア探針)36と、ラングミュアプローブ36に電力を供給する直流電源38およびローパスフィルタ(LPF)39を含む駆動回路37とを含む。スパッタリング装置10には、さらに、必要に応じてプラズマを遮蔽するシャッター40と、ロータリーポンプおよびオイル拡散ポンプなどの排気システム(不図示)と、キャリアガスとなるArガスを真空容器11に導入するポート(不図示)とが配置されている。
一般に、ナノサイズの粒子になると、その挙動に対する界面の影響が極めて大きくなり、粒子同士が凝集してしまう。凝集した粒子は、従来の機械振動のみで分散させることは困難であり、それぞれのナノ粒子をコア部5として、その表面3にナノオーダーのシェル部6を形成することは難しい。
特に、コア部5となる金属粒子は自由電子が多いナノサイズの粒子で凝集性が大である。微粒子およびナノ粒子はメーカから購入した段階ですでに凝集している。そこで、製造装置50は、ナノ粒子を分散させる技術として、チャンバーにアシストユニット30からのエネルギーを用いてナノ粒子(コア部)を分散する機能を含む。具体的には、製造装置50は、逆スパッタ機構、電気泳動アシスト機構などを備える。逆スパッタによるナノ粒子の分散技術においては、泳動用電極基材にダメージを与えずに微粒子を分散させるためのエネルギーを見積もって分散を可能としている。
したがって、製造装置50を用いたコアシェルナノ構造体を含む触媒体を製造する方法は、ナノ粒子をコア部5として、その表面3に気相中で、ナノオーダーの島状または粒状に断続したシェル部6を含むコアシェルナノ構造体を形成する工程と、その工程とともに、または前に、コア部5であるナノ粒子を分散する工程とを含む。
以下の実施形態においては、一例として、本例の製造装置50において、凝集したニッケル(Ni)ナノ粒子をコア部5としてチャンバーで分散させてから電気泳動により気相中で浮遊させ、その表面に白金(Pt)をシェル部6として成膜する。そのために逆スパッタにより凝集したNiナノ粒子にArイオンを照射し、そのArの衝突エネルギーにより分散させる。Ni微粒子の凝集力はファンデルワ―ルス力と仮定して9.64kJ/mol、電気泳動用電極(PTFE)基材ではC-F共有結合484kJ/mol、C-C結合353kJ/molで、電極基材の方が結合力は大きい。このため逆スパッタにおけるArイオンのエネルギーを制御すれば基材にダメージを与えることなく微粒子分散が可能である。
3.1.2 逆スパッタ機能
製造装置50は、スイッチ35を切替えて、サンプルステージ25にRF電力または、DC電力が重畳されたRF電力を印加することにより、サンプルステージ25を逆スパッタリングすることができる。逆スパッタリングでは、サンプルステージ25に電力を供給することにより、自己バイアスによりサンプルステージ25が時間平均として負の電位となり、プラズマ中のArイオンが加速されてサンプルステージ25に衝突する。したがって、このArイオンを凝集したナノ粒子に照射することにより、Arイオンの衝突エネルギーにより凝集したナノ粒子を分散させられる。
サンプルステージ25の上面には樹脂薄膜29が配置されているが、それについても上記のように、樹脂薄膜29を含むサンプルステージ25にダメージを与えることなく、ナノ粒子を分散させることが可能である。
図20に、1PaのAr分圧で逆スパッタリングした際の、RF電力に対する自己バイアス電位(シース電界)の測定結果を示している。RF電力が10Wにおいても、自己バイアスは−200V程度であり、凝集したナノ粒子を分散させるのに十分なエネルギーが得られる。しかしながら、本実施形態においては、樹脂薄膜基材の結合エネルギーに対して大き過ぎる。その場合、RF電力にDC電力を重畳させることにより、自己バイアス電位を目的の値に制御することができる。
図21に、逆スパッタリングを行うことにより粒径分布が変化する様子を示している。Si基板の表面に、市販のNiのナノ粒子(平均粒径100nm)を載せた後、基板を傾けて、過剰なナノ粒子を払い落し、その基板を製造装置50にセットして逆スパッタリングを行った。逆スパッタリングの条件は、Ar分圧が1Pa、RF電力が10W、時間が15分である。
図21(a)は、逆スパッタリングしたサンプルをFE−SEMで観察して求めたNiナノ粒子の粒径分布を示している。図21(b)は逆スパッタリングを行わなかったNiナノ粒子の粒径分布を示している。逆スパッタリングを行うことにより平均粒径が0.9umから0.7umとなり、全体として逆スパッタリングにより粒径分布が小粒径側にシフトしていることが分かる。したがって、逆スパッタリングにより凝集したナノ粒子が分散したことが確認できた。
プラズマにおける電離気体中のArイオンの熱運動速度をVi、そのイオンの質量をMとすると図22に示す式(1)で定義されるイオン温度が存在する。イオンが平均自由行程中に外部から得られるエネルギーは電界Eに比例し、気体圧力Pに反比例する。このエネルギーによりイオン温度が決まる。このイオン温度をTiとすると低圧ガスの場合は電子温度Teより低くなる。電子温度Teのみが高い場合は非平衡プラズマと言われている。凝集したナノ微粒子に衝突するエネルギーはプラズマ状態とバイアス電位により制御できる。目的の分散エネルギーとしては、前述の見積もりから1eV〜2eV程度の衝突エネルギーが必要となる。中性微粒子の凝集現象は熱運動、サイズ、密度が影響し、プラズマ中では微粒子の帯電状態として正、負、中性状態が存在し、この帯電状態の周波数と微粒子間の衝突周波数に大きく関わっている。プラズマ中も微粒子分散・凝集はプラズマ密度、温度と微粒子サイズによって決まると考えられる。
図23に、逆スパッタにおけるプラズマ状態をラングミュアプローブ法により計測したプラズマ特性を示している。図24に、プラズマ写真観察を示している。逆スパッタリングにおけるRF電力60W、Ar分圧1.0Pa(図23(a)および図24(a))とAr分圧5.0Pa(図23(b)および図24(b))の測定結果である。凝集したナノ微粒子の分散のためには逆スパッタによるArイオンの照射エネルギーを1〜2eV位に制御することが要求される。RF電力60WでAr分圧1.0Paと5.0Paにおけるプラズマ写真観察で比較すると、青色系から赤色系に変化していることがわかる。分圧が高い方がプラズマエネルギー状態は低下している。
図23は、ターゲット16と試料電極(台)25の間隔は45mmで、試料台から上に15mmの中央に円筒プローブを用いてプラズマプローブ特性を測定した結果である。そのプローブ特性(電圧Vs−電流Is特性)を示す。プローブ電圧−電流特性としては低気圧のシングルプローブ特性と類似しているが、イオン飽和電流と電子飽和電流は明確に観測されない。したがって、密度や温度を直接的に求めることは困難である。すなわち、プローブ半径、構造、位置、空間における電子エネルギー分布関数などを物理的パラメータとして、プラズマ密度、温度の評価に対して考慮する必要がある。
イオンさや領域で試料電極電位とプラズマ電位Vpとの電位差がArイオンの照射エネルギーを決める。上記のプラズマ写真をみると試料電極やターゲット電極ホルダーの構造に関係した電子エネルギー分布のリングが観測される。これらのプラズマ診断は逆スパッタだけでなくナノ微粒子のスパッタリング成膜においても装置特性のモニターとして有効であることが分かる。
3.1.3 ベーキング機能
製造装置50は、ベーキング用ヒータ27を含む。ナノ粒子を凝集させるのは、上記の通りファンデルワールス力によるものであるとともに、ナノ粒子表面に吸着した水分による影響が考えられる。したがって、凝集したナノ粒子を加熱(ベーキング)することにより、ナノ粒子に運動エネルギーを与えるとともに、吸着水分を蒸発させることにより、ナノ粒子を分散することができる。
図25(a)は粒径10umのTiOを50g、155℃で45分間ベーキングを行った状態を示す写真であり、図25(b)は、180℃で120分間ベーキングを行った状態を示す写真である。図25(a)では、5mm程度に凝集しているが、図25(b)に示すように、ベーキングを行うことによりミクロンレベルに分散する。したがって、ベーキングは凝集したナノ粒子を分散させるのに有効である。
3.1.4 誘電泳動機能
製造装置50は、ナノ粒子を誘電泳動させるための電極26と、電極26に電力を供給する装置32とを含む。水中で凝集したナノ粒子を分散させる方法として、電磁界勾配を利用した泳電法の実績があるが、気相中での検証はほとんど行われていない。気相中でのナノ粒子に対する分散効果を得る方法として、誘電泳動力(dielectrophoresis: DEP)および/または磁気誘導力(magnetophoresis: MAP)を使用する方法がある。
泳動アシスト機構による気中微粒子分散技術の確立を目的として、泳動力の理論計算、液中及び気中における泳動試験を行った。ナノ粒子に作用する分散効果を定量的に検証するために、誘電泳動力Fdep及び磁気泳動力Fmapの見積りを行った。Fdepは図26の式(2)で表わされる。εmは媒質の誘電率、K(ω)は駆動角周波数、Rは粒子半径、Eeffは実効電界であり、K(ω)は図26の式(3)で表わされるClausius-Mossotti関数である。εは複素誘電率であり,添字m及びpは媒質及び粒子を表わす。Fmapでは、誘電率が透磁率に、電界が磁界に置き換わる。
図27に、気中ならびに液中のNiナノ粒子(径100nm)における誘電泳動力および磁気泳動力の理論計算値を示す。なお、電極(又は磁石)間隔は10μm、駆動周波数は100kHzを想定している。参考として、同条件下における擾乱外力(重力、ランダム力)も付記した。Arの比誘電率が1であるのに対して純水では80のため、Fdepは80分の1に減少する。一方、透磁率には変化がないため、Fmapにも変化がない。ランダム力は液中から気中での変動が小さいため、Fdepを上回る結果となっている。ただし、マイクロオーダーの微小空間に数十mT程度の磁界を発生させるよりは、数十V程度を印加する方がシステムとして簡便である。また、気中におけるFdepはランダム力と同オーダーであり、回転移動などの微小な分散操作を行うだけであれば、十分であるとも言える。
なお、誘電体材料であるTiO2のFdepについては理論上、Niの場合と同程度が見込まれるが、Fmapは媒質との透磁率差がないため生じないので分散操作に使えない。
以上のように、誘電泳動力は液相中に対し気相中では80分の1に減少するが、磁気泳動よりも、装置構成が簡便であり、ブラウン運動によるエネルギーと同じオーダーのエネルギーを与えることができる。したがって、本製造装置50は、比較的簡易な構成で、ナノ粒子に回転移動などの分散に必要な微小なエネルギーを与える誘電泳動機能を含む。
図28に、製造装置50のサンプルステージ25に設けられた誘電泳動用の電極26を平面図により示している。電極26は、複数の歯を含む第1の櫛状電極26aと、複数の歯を含む第2の櫛状電極26bと含む。櫛状電極26aおよび26bの歯は、幅5mmの銅により、それぞれの歯と歯とが1mmのギャップを介して互い違いになるように、樹脂薄膜29の下面に接して配置されている。それぞれの櫛状電極26aおよび26bは、それぞれ端子26cおよび26dにおいて、電源32に接続されている。
図29に、サンプルステージ25の断面の一部を拡大して示している。樹脂薄膜29の下面には、第1の櫛状電極26aの歯と第2の櫛状電極26bの歯が互い違いに配置され、上面には、直径5umの誘電体柱群(ピット群)29aが10umピッチでマトリックス状(アレー状)に形成されている(図30参照)。端子26cおよび26dの間に電源32から数十Vの高周波電圧を印加することにより、櫛状電極26aおよび26bのそれぞれの歯の間に高周波電界が形成され、ピット群29aの効果により形成される電界は1MV/mオーダーとなる。
サンプルステージ25に粒径100nmのナノ粒子を配置してマイクロスコープにより観察した後、電極26に電圧10V、周波数が100kHzから5MHzの高周波を印加した。その後、再びサンプルステージ上のナノ粒子をマイクロスコープにより観察した。この観察の結果、凝集サイズの小さいナノ粒子が移動した様子が見られた。凝集サイズの大きいものに関して、さらに高い電界を印加したり、上記の逆スパッタリング機能やベーキング機能と組み合わせることにより、スパッタリングによりコア部5にシェル部6を形成する工程中およびその前に、コア部5である多数のナノ粒子を分散および泳動させることが可能である。
3.1.5 その他の分散機能
サンプルステージ25は、微振動発生機構28を含む。駆動源34から微振動発生機構28に超音波を発信することにより、サンプルステージ上のナノ粒子を機械的に振動させて分散させることができる。さらに、上記の他の分散方法と組み合わせることにより、分散させた粒子をサンプルステージ25上で、微振動させ、ナノ粒子の全面にスパッタリングするためのアシスト機構として使用することもできる。
さらに、サンプルステージ25には、バイアス電源31も接続されているため、ナノ粒子へのスパッタリング中に、バイアス電源31をオンすることにより、Arイオンを照射して分散させることも可能である。
以上で説明した分散方法は、それぞれ単独で使用しても効果があるが、これらを適当に組み合わせることにより分散の効果をさらに高めることができる。
3.2 ナノ粒子タイプの触媒体の形成および評価
図31に、Niナノ粒子5の上にPtによりシェル部6を島状または粒状に形成したナノ粒子(触媒体)9の表面状態をケルビン法により評価した様子を示している。図32に、触媒体9を、粒子表面を流れる電流(直流抵抗)で評価した様子を示している。図33に、触媒体9を、内部と表面での電流の流れ易さの測定(インピーダンス測定)で評価した様子を示している。直流抵抗測定では上下での導体連結状態の程度の測定となり、インピーダンス測定では、粉体の導電体被覆割合が示される。
これらの結果により、製造装置50により、コアシェルナノ構造体であって、コア部5の表面に島状または粒状に断続したシェル部6を有するナノ粒子(触媒体)9が製造できることが確認された。
今日、代替燃料開発、環境浄化、地球温暖化の原因への対処および有害物質や病原菌から我々を安全に保つ方法など様々な課題へのチャレンジに我々は直面している。これらのチャレンジに触媒が大きな役割を果たす。しかしながら、触媒の複雑性、多様性、さらに稀少金属を多く利用するなどの問題が残されており、高効率化かつ省資源を同時に実現する新しい触媒材料開発が急務である。
本発明により得られる触媒体1および9は、ナノスケール化(ナノ粒子化)による比表面積の増大や、触媒材料の複合化による触媒の耐久性の改善、電子密度の調整により触媒能力のさらなる活性化が可能であり、高性能な触媒を提供できる。さらに、ウェットプロセスでは、生成時のパラメータの制御が困難であったり化学反応に伴って副生物・廃液が発生したりといった問題があるのに対し、本発明においては、気相プロセス(ドライプロセス)によりコアシェルナノ触媒を製造することができる。上述した製造方法は、いくつかの例が含まれているが、ナノ粒子コア材の選定、スパッタ法とアニール処理を組み合わせた生成法による平板上でのコアシェルナノ粒子の創成、電気泳動によるナノ粒子の分散、逆スパッタによるナノ粒子の分散、成膜されたナノ粒子の特性評価を含むものである。
図34に、上記において製造された触媒体1を電極61として用いた燃料電池60の概略構成を示している。燃料電池60はセル69の単位で構成されるが、電解質層65と、それを挟むように配置される複数の電極61とを含み、触媒体1は電極61として、あるいは電極61の表面を構成する部材として使用できる。板状の触媒体1の代わりにナノ粒子状の触媒体9を電極61の表面または電極自体に混在させて使用することも可能である。また、燃料電池に限らず、他の一次電池または二次電池の電極材料としても有効である。
図35に、触媒体1または9を含む触媒セル75と、触媒セル75がガスに接触するようにガスを流す流路77とを含むガス処理装置70を示している。処理対象のガスの典型的なものは車の排ガスであるが、その他の排ガス処理にも適用できる。触媒体1および9は、ナノレベルの構造体を含む微小構造体であり、さらに、高い触媒能力を有する。従って、上記以外の様々な用途に対して有用である。
1、9 触媒体
2 コアシェルナノ構造体
5 コア部
6 シェル部
10、50 製造装置

Claims (17)

  1. コア部の表面にナノオーダーの島状または粒状に断続したシェル部を含むコアシェルナノ構造体を有する触媒体。
  2. 請求項1において、前記シェル部は、前記コア部に含まれる第1の金属に対して仕事関数の大きな第2の金属を含む、触媒体。
  3. 請求項1または2において、
    さらに、複数の前記コアシェルナノ構造体が表面に形成された基体を有する、触媒体。
  4. 請求項1または2において、
    前記コアシェルナノ構造体はナノ粒子である、触媒体。
  5. 請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記シェル部は白金を含み、前記コア部はニッケル、パラジウム、銀、銅またはアルミニウムの少なくともいずれかを含む、触媒体。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載の触媒体を含む電極。
  7. 複数の電極と、前記複数の電極の間に配置された電解質層とを有し、
    前記複数の電極は、請求項6に記載の電極を含む、電池。
  8. 請求項1ないし5のいずれかに記載の触媒体と、
    前記触媒体に接するようにガスが流れる流路とを有するガス処理装置。
  9. ナノサイズのコア部の表面にナノオーダーの金属薄膜を気相中で成膜し、コアシェルナノ構造体を形成することと、
    前記コアシェルナノ構造体をアニールすることにより、前記コア部の表面に島状または粒状に断続したシェル部を形成することとを有する、触媒体の製造方法。
  10. 請求項9において、前記コアシェルナノ構造体を形成することの前に、基体の表面に気相中で複数の前記コア部を形成することを含む、触媒体の製造方法。
  11. 請求項10において、前記コア部を形成することは、前記コア部を構成する金属に対し格子不整合の大きな前記基体の表面に前記コア部を構成する金属を気相中で成膜することと、
    前記基体をアニールすることによりナノサイズの前記コア部を形成することとを含む、触媒体の製造方法。
  12. ナノ粒子をコア部として、その表面に気相中で、ナノオーダーの島状または粒状に断続したシェル部を含むコアシェルナノ構造体を形成することと、
    前記コアシェルナノ構造体を形成する間、また前に、前記ナノ粒子を分散することとを含む、触媒体の製造方法。
  13. 請求項12において、前記分散することは、前記ナノ粒子を逆スパッタリングすることを含む、触媒体の製造方法。
  14. 請求項12または13において、前記分散することは、前記ナノ粒子を加熱することを含む、触媒体の製造方法。
  15. 請求項12ないし14のいずれかにおいて、前記分散することは、前記ナノ粒子を誘電泳動することを含む、触媒体の製造方法。
  16. 複数のナノ粒子をコア部とし、そのコア部の表面にナノオーダーのシェル部をスパッタで形成するスパッタリングユニットと、
    前記複数のナノ粒子を前記スパッタリングユニット内に分散させる分散ユニットとを有するコアシェルナノ構造体の製造装置。
  17. 請求項16において、前記分散ユニットは、前記複数のナノ粒子を逆スパッタする逆スパッタリングユニット、前記複数のナノ粒子を間接加熱する間接加熱ユニットおよび前記複数のナノ粒子を誘電泳動する誘電泳動ユニットの少なくともいずれかを含む、製造装置。
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JP2020004527A (ja) * 2018-06-26 2020-01-09 株式会社グラヴィトン 固体高分子形燃料電池および電極製造方法
JP2020084291A (ja) * 2018-11-29 2020-06-04 株式会社グラヴィトン 電気分解装置

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