JP2014153106A - 姿勢基準器 - Google Patents

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Abstract

【課題】姿勢基準器の計測量におけるドリフト誤差を、高精度なリファレンス信号によって補正する際、リファレンス信号の伝送路における遅延時間のばらつきがあると正しくドリフト誤差を補正できないという問題があった。
【解決手段】補正対象となる信号のピークとリファレンス信号のピークは、その時間的関係に曖昧さがあったとしても値としては本来同一になるべきであるという性質を用い、補正対象となる信号のピーク値とリファレンス信号のピーク値を見つけ出して その差をドリフト誤差であると見なし、これを補正対象となる信号に加えることでドリフト誤差を低減させる。
【選択図】図1

Description

この発明は、同じ量を計測する2つの測定手段において、計測量が大きく乖離しないように補正する方法に関する。具体例としては、航空機、ヘリコプター等の移動体に搭載される複数の姿勢基準器において、それらの間で相対的に発生するドリフト誤差を低減させる方法に関する。
姿勢基準器は自身の姿勢(広義には、慣性座標系におけるロール角、ピッチ角、ヨー角、緯度、経度、高度、速度などの諸量を含む)を計測する装置であって、特に航空機には航法用として必ず搭載されている。
原理や構成には幾つかの種類があるが、位置・速度・角度を計測したい場合、多くは加速度や角速度が直接計測され、それを時間積分して算出する。この際、加速度や角速度を計測するセンサは概して小型であるほど低精度であって、計測値を長時間に亘って積算すると誤差が積みあがって系統誤差(これをドリフト誤差という)が生じてしまう。高精度なセンサは大型であったり、あるいは地球上での位置を高精度に直接計測できるGPSを用いたシステムなどでは、アンテナを設置しなければならないとか、システムの都合上計測レートを高くできないといったデメリットがある。
このドリフト誤差の低減させる方法については、リファレンス信号を用いて補正を行うなど、様々なものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
特開平3‐95407号公報
リファレンス信号を用いて補正を行う際に重要となるのは、リファレンス信号の正確性であるが、後述するように、従来、姿勢基準器の計測量におけるドリフト誤差を、高精度なリファレンス信号によって補正する際、リファレンス信号の伝送路における遅延時間のばらつきによって正しくドリフト誤差を補正することができないという課題があった。
本発明は係る課題を解決するためになされたものであり、不安定な遅延時間を持つリファレンスデータであっても、姿勢基準器の計測量が有するドリフト誤差を正確に算出して、精度の高い姿勢角を取得することを目的とする。
この発明に係る姿勢基準器は、移動体に搭載され、計測した前記移動体の姿勢量が有するドリフト誤差を、当該移動体に搭載されるリファレンス用姿勢基準器が計測した姿勢量であって伝送路を経由して受信した前記姿勢量をリファレンスとして用いて補正し、前記移動体の姿勢量を取得する姿勢基準器において、前記姿勢基準器の姿勢量を表す信号のピーク位置でのピーク値と、前記伝送路を経由して受信した姿勢量を表す信号のピーク位置でのピーク値を検出して、検出したピーク値の差分を算出するピーク検出式ドリフト誤差算出器と、前記差分を用いて前記ドリフト誤差を補正するドリフト補正器を備える。
本発明に係る姿勢基準器によれば、不安定な遅延時間を持つリファレンスデータであっても、姿勢基準器の計測量が有するドリフト誤差を正確に算出し補正することで、精度の高い姿勢角を取得することができる。
本発明の実施の形態1に係る姿勢基準器のハイレート姿勢基準器(補正付き)の構成、及び処理を説明する図である。 本発明の実施の形態1に係る姿勢基準器の一構成であるピーク検出式ドリフト誤差算出器における処理内容を説明する図である。 本発明の実施の形態1に係るピーク検出式ドリフト誤差算出器におけるピーク判定方法を説明する図である。 本発明の実施の形態1に係る姿勢基準器におけるドリフト誤差の算出方法を説明する図である。 本発明の実施の形態2に係る姿勢基準器の一構成であるピーク検出式ドリフト誤差算出器における処理内容を説明する図である。 本発明の実施の形態3に係る姿勢基準器の一構成であるのピーク検出式ドリフト誤差算出器の構成、処理を説明する図である。 従来の姿勢基準器が使用される一例を説明する図である。 従来の姿勢基準器を活用する装置の一例として光学目標探知器の構成について説明する図である。 従来の姿勢基準器を活用する装置の一例として光学目標探知器の構成について説明する図である。 従来の光学目標探知器におけるハイレート姿勢基準器についての内部構成、及び処理を説明する図である。 従来の姿勢基準器におけるドリフト誤差について説明する図である。 従来の姿勢基準器を活用する装置の一例として光学目標探知器の構成について説明する図である。 従来の光学目標探知器の構成のうち、ハイレート姿勢基準器についての内部構成、及び処理を説明する図である。 従来のハイレート姿勢基準器において、整合処理によるドリフト誤差の補正方法を説明する図である。 従来の、外部の姿勢基準器において計測された姿勢角と、その情報を光学目標探知器が受信した時点での姿勢角の差異について説明する図である。 従来の姿勢基準器で、伝送路において遅延した姿勢角情報を平均遅延時間に基づいて時間補正した場合に、遅延時間の変動によって依然として誤差が発生することを説明する図である。
まず、従来の姿勢基準器の構成と課題について図を参照して説明する。
図7は姿勢基準器の使われ方の一例を示す図である。
航空機1には光学的に目標2を探知する光学目標探知器センサヘッド3が搭載されている。光学目標探知器センサヘッド3は目標2の方向へ視軸4を向け、その角度を計測することで、航空機1の機軸5に対する目標方向(図7における角θ)を知る。なお、目標方向としては実際には2つの角度を計測する必要があるが、ここでは説明を簡単にするために1つの角度で説明する(以下同じ)。
一般に、目標方向としては慣性座標系(図7においては重力方向6、水平方向7を座標軸とする座標系)で知りたいことが多い。そのためには機体1の姿勢角を知る必要があり、これを計測する手段として姿勢基準器8を用いる。
姿勢基準器8は重力方向6と水平方向7で張られる平面において、機軸5の水平方向7に対する角度(図7における角φ)を計測する装置であり、本来は航法のために搭載されていて、一般にドリフト誤差は小さいが計測レートはあまり高くなく(以下ではこれを「ローレート」と表現する)、比較的大型の専用装置である。これによって得られた角φと角θを加算することで図7中の角δ、すなわち慣性座標系における目標2の方向を算出することができる。
図8は上記の構成をブロック図で説明するためのものである。
光学目標探知器9は光学目標探知器センサヘッド3を構成品として含み、光学目標探知器センサヘッド3は視軸4の方向を中心とする画像を撮影する。視軸4の方向は視軸方向制御器10により変化させることができ、視軸方向計測器11によって視軸4の方向を検出することができる。目標方向算出器12は撮影された画像を解析して視軸4の方向に目標がいるかどうかを判断し、目標がいる場合には画像上での目標位置と、視軸方向計測器11から送られる視軸方向情報13と、姿勢基準器8から送られるローレート姿勢角14が伝送路15を経て遅延したローレート姿勢角16 から慣性座標系における目標方向情報17を算出し、上位システム18に出力する。上位システム18は制御信号19により視軸方向制御器10に指令を送り視軸4を適宜コントロールできる。
光学目標探知器センサヘッド3は視軸4を制御するためにジンバルという機構を持っているが、これを慣性空間において精度良く制御するには自身の姿勢角を正確に知る必要がある。姿勢基準器8が光学目標探知器センサヘッド3から離れて設置されている場合、構成によっては伝送路15における遅延時間が大きくなる。また、航法用に設置されている姿勢基準器8はローレートであるため姿勢角動揺の高周波数成分が落ちてしまう。そのため、遅延したローレート姿勢角16は視軸4の制御のためには不適であり、ジンバル制御のために直接用いることができない場合がある。
図9はこのような問題を解決するために光学目標探知器9の内部にハイレート姿勢基準器20を内蔵したものである。ハイレート姿勢基準器20は姿勢角(ハイレート)21を出力し、この値には遅延がほとんどなくハイレートなので視軸4の制御においては優れる。しかし、小型化せざるを得ないハイレート姿勢基準器20は運用中にドリフト誤差を生じ、長時間の運用では慣性座標系における自身の姿勢情報が正しく得られなくなる。
図10のハイレート姿勢基準器(基本)22はハイレート姿勢基準器20の基本形における内部の処理を示し、ドリフト誤差が生じる理由を説明するものである。
レートセンサ23は姿勢角角速度24を出力する。この値は計測間隔25の間隔で出力されるので、両者を掛けたものがΔtにおける姿勢角の増分となり、これを時刻t−Δtでのハイレート姿勢角26に加算することで、時刻tにおける新しいハイレート姿勢角27が生成され、これがループ状に繰り返される。なお、動作の一番最初に初期姿勢角28が必要であるが、これについては本特許とは関係がないので説明を割愛する。この一連の処理を行うのが姿勢計算器29である。
ここで、姿勢角角速度24に僅かなオフセット誤差があるとループ状の処理の中でオフセット誤差が積み重なり、長時間の後に無視できないような大きな姿勢角誤差となって現れる。これがドリフト誤差である。
図11はドリフト誤差を視覚的に説明するものである。
ハイレート姿勢角27はレートが高いため高周波な姿勢角変動も捉えられている。このハイレート姿勢角27から平滑によって高周波成分を取り除いた平滑化ハイレート姿勢角30は、ローレート姿勢角14と同様の変化をするが、時間が経過するにつれて両者の値には差が生まれる。ここでローレート姿勢角14を真の姿勢角と同じと見なせるとするなら、これと平滑化ハイレート姿勢角30との差がドリフト誤差31である。
ドリフト誤差を低減させる方法としては様々なものが提案されており、例えば車に搭載される慣性速度検出装置のような場合では、停止しているという状態をタイヤの回転等から別途検出できるため、この時点において認識されている速度がすなわちドリフト誤差であり、それ以前の経過時間とドリフト誤差との関係などからドリフト誤差の時間変化量を推定し、以降はこれを引き去ることでドリフト誤差を低減できる(特許文献1参照)。
図12はドリフト誤差を低減させる別の方法を示すものであり、図9におけるハイレート姿勢基準器20をハイレート姿勢基準器(補正付)32に変更し、これに高精度な姿勢基準器8の情報をリファレンス信号として与えて補正できるように改善したものである。
図13はハイレート姿勢基準器(補正付)32’の構成を図示したもので、ハイレート姿勢基準器(基本)22の構成に対してドリフト補正器33が追加されている。
姿勢計算器29から出力されたハイレート姿勢角27はドリフト補正器33に入力されるが、もう一方で分岐させた信号を遅延フィルタ34で遅延させ、遅延されたハイレート姿勢角35と遅延したローレート姿勢角16とで差分をとる。遅延フィルタ34による遅延量が伝送路15における遅延量と一致していれば、この差分はハイレート姿勢角27が持つドリフト誤差である。このドリフト誤差36もドリフト補正器33に入力すると、ドリフト補正器33内で整合処理37が行われ、補正されたハイレート姿勢角38が得られる。
図14は整合処理37の処理内容を示すものである。
補正の効果を説明のために、便宜上 最初は補正されていないハイレート姿勢角27が与えられているものと仮定する。時刻t1において遅延したハイレート姿勢角35と遅延したローレート姿勢角16の差分がとられ、これがドリフト誤差36として検出できる。図では遅延したローレート姿勢角16よりも遅延したハイレート姿勢角35の方が大きいから、整合処理37ではドリフト誤差36に一定の比率をかけて得られる補正量39をハイレート姿勢角27から引くようにする。これによりハイレート姿勢角27は精度の高いローレート姿勢角14に接近する。この比率を調整し補正量がドリフト量を上回るように設定すれば、前述の処理を周期的に繰り返すことでハイレート姿勢角27は精度の高いローレート姿勢角14に漸近する。ドリフト誤差36を一気に補正するのではなく徐々に漸近させるのは、実際には遅延したローレート姿勢角16も遅延したハイレート姿勢角35もランダムな誤差を持ち、得られたドリフト誤差36そのものにも誤差が乗るため、この誤差をダイレクトに反映させないようにするためである。
図14で説明したような補正を行う際に重要となるのは、リファレンス信号たる遅延したローレート姿勢角16の正確性である。昨今では伝送路15はデジタルパケット転送であることが一般的であり、途中経路によっては遅延時間が変動することがある。
図15、図16は途中経路による遅延時間の変動の影響を説明する図である。
図15においてローレート姿勢角14に対して、遅延したローレート姿勢角16は遅延しているが、図16で平均遅延量だけずらしたローレート姿勢角40と遅延したローレート姿勢角16を比較してみても完全には重ならない。これは遅延時間が各ポイントで異なるからである。図16の場合では遅延時間をのこぎり波状に変化させたため、遅延時間が大きく変化したグラフ中央よりやや左側で位相差に大きな変化が見られ、位相が一致していない場所では大きな誤差41が見られる。
遅延したローレート姿勢角16にこのような位相誤差が乗っていると、図13におけるドリフト誤差36は不適切な値となり、整合処理37による整合処理が精度良く働かないという課題があった。更には、整合処理37によって不要な誤差を埋め込んでしまうという課題もあった。
一般に時刻については小型でも高精度なものが得られるため、データに時刻タグをつければ遅延時間の変動に対応することが可能だが、この時刻タグを付ける方法は、既存のシステムに新しいシステムを追加するような場合、既に機体に搭載されている姿勢基準器8に高精度な時刻タグをつける機能がついていなければならないという課題もあった。
実施の形態1.
以下では、本発明の実施の形態1に係る姿勢基準器について説明する。なお同様の機能を有する構成部分には同一番号を付し、その説明を省略する(実施の形態2、3においても同じ)。
図1は、実施の形態1に係る姿勢基準器の構成を示す図である。図13に示した従来のハイレート姿勢基準器(補正付)32を改良したものであり、遅延フィルタ34等に代わり、ピーク検出式ドリフト誤差算出器42を備える。
なお、前述のように遅延したローレート姿勢角16は、図示しない姿勢基準器8から送られるローレート姿勢角14が伝送路15を経て遅延が発生した遅延したローレート姿勢角であり、姿勢基準器8(図示せず)は例えばリングレーザジャイロを用いたINS(慣性航法装置)やGPS(Global Positioning System)を用いた方式による姿勢基準器である。姿勢基準器8は、ドリフト誤差は小さいが計測レートはあまり高くなく、高レートで姿勢角を計測することができない。一方、ハイレート姿勢角27は、レートセンサ23が出力する姿勢角角速度24と計測間隔25を掛けたΔtにおける姿勢角の増分を、時刻t−Δtでのハイレート姿勢角26に加算することで算出されるハイレート姿勢角であり、レートセンサ23は例えば機械式ジャイロやFOG(Fiber Optical Gyro)である。レートセンサ23は高レートで姿勢角を計測できるがドリフト誤差が大きく、長時間の運用では自身の姿勢情報が正しく得られなくなる。航空機等での使用では高レートの姿勢角情報が必要であり、姿勢基準器8の大きさ等の制限により姿勢基準器8とハイレート姿勢基準器(補正付)32は離れて設置されるため、これらの間を結ぶ伝送路15の伝送には遅延時間が発生する。
従来、リファレンスである遅延したローレート姿勢角16と遅延したハイレート姿勢角35の単純な差分を算出していたが(図13参照)、本実施の形態に係る姿勢基準器では、ピーク検出式ドリフト誤差算出器42は、遅延したローレート姿勢角16とハイレート姿勢角27の局所的なピーク点を検出する。そして、遅延したローレート姿勢角16のピークの値と、ドリフト誤差を除いたハイレート姿勢角27のピークの値は、本来一致する」という特徴を用いて、ピーク検出式ドリフト誤差算出器42はドリフト誤差36を算出する。
なお、ピークとは上に凸の場合と下に凸の場合の2つがあるが、以下の説明では説明を簡単にするために上に凸の場合についてのみ説明する。下に凸の場合も方法、効果に違いはなく、どちらを用いても、あるいは両方を用いても本質的には同じである。
図2はピーク検出式ドリフト誤差算出器42で行う処理を示す図である。図2において、遅延したローレート姿勢角16に対してはバッファリング処理43、ピーク検出処理46を行う。一方、ハイレート姿勢角27に対してはバッファリング処理43、平滑化処理44、ピーク検出処理46を行う。そして、ピーク検出処理46後の遅延したローレート姿勢角16とハイレート姿勢角27に対して差分計算及びホールド処理56を行う。
ドリフト誤差については一般にそれほど急速に積みあがるわけではないため、求めるべきドリフト誤差の値は数秒程度前のものであっても支障はない。つまり、常時過去数秒間分の姿勢角データを保存しておき、そのデータに対してピーク検出処理を行えばよい。そのため、遅延したローレート姿勢角16とハイレート姿勢角27は一旦バッファリング処理43で過去一定時間分だけ保存される。
次に、ハイレート姿勢角27は高周波成分を持ち、遅延したローレート姿勢角16に対して高周波成分の振幅分だけ常にピークが高く出てしまうため、遅延したローレート姿勢角16と同程度の滑らかさになるように平滑化処理44で平滑化し、平滑化ハイレート姿勢角45を生成する。
次に、ピーク検出処理46で、ハイレート姿勢角27と遅延したローレート姿勢角16のそれぞれのピーク値を検出する。
図3はピーク検出処理46を説明するものである。前述のようにピークとしては上に凸の場合と下に凸の場合の2種類があり、その両方を使用するが、ここでは上凸の場合を例にして説明する。
ピーク検出処理46においては、まず、姿勢角47(ハイレート姿勢角27あるいは遅延したローレート姿勢角16で表される姿勢角)の変曲点を求める。図3の上側図のようなケースでは、点48がピーク候補となる変曲点であるが、点48を中心として予め定められた時間的な幅49における姿勢角の変化量は幅50であり、点48での姿勢角は幅50における最大値ではない。このようなものはピーク値として見なさない。一方、図3の下側図のようなケースでは点51が幅52における最大値となっており、このような点については幅52が予め設定された所要変化量53以上の値となっていればピークと見なす。
所要変化量53を大きくとると、特に航空機1があまり姿勢変化しない場合に長時間に亘ってピーク検出ができない可能性が高くなる。一方、所要変化量53を小さく取るとノイズで反応する可能性が高くなり、遅延したローレート姿勢角16とハイレート姿勢角27において本来同一であるはずのピーク時刻を間違って検出する可能性が増す。そのため所要変化量53についてはこれらを考慮して決定する必要がある。
図4は上記処理によって得られる遅延したローレート姿勢角16のピークとハイレート姿勢角27のピークからドリフト誤差を求める方法について説明するものである。
ローレート姿勢角14が伝送路15によって遅延し、ピーク検出式ドリフト誤差算出器42において受信された段階での遅延したローレート姿勢角16については、点54がピークと認識され、一方、ハイレート姿勢角27を平滑化した平滑化ハイレート姿勢角45については点55がピークと認識される。
そこで、図2に示す差分計算及びホールド処理56にて点54での姿勢角から点55での姿勢角を引いた値としてドリフト誤差36が計算され、この値が次回のドリフト誤差算出時までドリフト誤差としてホールドされる。
このようにして、ピーク検出式ドリフト誤差算出器42はドリフト誤差36を算出する。ドリフト補正器33は、図13、図14において前述した処理と同じ処理によって、補正されたハイレート姿勢角38を得る。
以上のように、本実施の形態に係る姿勢基準器によれば、不安定な遅延時間を持つリファレンスデータであっても姿勢基準器の計測量が有するドリフト誤差を正確に算出し、このドリフト誤差を用いて補正することで、精度の高い姿勢角を取得することができる。
補正対象となる信号のピークとリファレンス信号のピークは、その時間的関係に曖昧さがあったとしても値としては本来同一になるべきであるという特徴があり、ピーク値を検出しその差をドリフト誤差であると見なし、これを補正対象となる信号に加えることでドリフト誤差を低減させることができる。
なお、ここでは説明を簡単にするために姿勢情報として1つの変数のみを取り上げて説明しているが、例えばロール、ピッチ、ヨーと呼ばれる3軸での姿勢角について考えるとするならば、この3つの姿勢角情報はセットで取り扱われ、同時に測定されるため、この中の1軸についてピーク位置が判明すれば他の軸については同じセットの中のデータを用いることでドリフト誤差を算出することができる。つまり、姿勢情報を構成する1つのパラメータについてピークが検出できれば、残りの姿勢情報に関するドリフト誤差が較正可能である。
実施の形態2.
図5は、実施の形態2に係る姿勢基準器のピーク検出式ドリフト誤差算出器42bの処理を説明する図である。実施の形態2に係る姿勢基準器のピーク検出式ドリフト誤差算出器42bは、補正間隔もニタ器59、ピーク検出パラメータ設定器60を備える。なお、破線57は実施の形態1におけるピーク検出式ドリフト誤差算出器42の処理を示したものである。
実施の形態2に係る差分計算及びホールド処理56は、ドリフト誤差36を更新した際に、更新を表す更新信号58を補正間隔モニタ器59に出力するとともに、図3において前述した幅49及び所要変化量53がピーク検出パラメータ設定器60から設定されるようになっている。
補正間隔モニタ器59は、直前のドリフト誤差36の更新からの経過時間61を算出し、ピーク検出パラメータ設定器60に送る。
ピーク検出パラメータ設定器60では、経過時間に応じて所要変化量53を低減させる。具体的には、経過時間61が予め設定された時間以内の場合は所要変化量53は実施の形態1と同じ所定量であるが、経過時間60が予め設定された時間を超えると所要変化量53をノイズレベル程度まで小さくして、ピーク判定が確実に行われるようにする。
本実施の形態に係る姿勢基準器では、姿勢変動がほとんどない場合における対処を可能とする。つまり、図7に示す航空機1が地上に静止していてまったく姿勢変動しない場合、実施の形態1に係る姿勢基準器の構成では遅延したローレート姿勢角16とハイレート姿勢角27はそれぞれ明確なピークを示さず、補正が長時間行われないため、ドリフト誤差が積み上がるという問題が生じる。
この際、遅延したローレート姿勢角16とハイレート姿勢角27は本来同一の値を示し続けるはずであり、両者の差異はドリフト誤差とノイズのみから成るはずである。
そこで、本実施の形態では、所要変化量53をノイズレベル程度まで小さくすることでノイズによる擬似ピークを検出させ、遅延したローレート姿勢角16とハイレート姿勢角27の差をそのままドリフト誤差36と見なして補正が効くようにした。
ドリフト誤差36にはノイズが乗っているが、ノイズは平均的に0であるため、補正が繰り返し行われるのであれば積みあがることはなく、問題にはならない。
このように本実施の形態の姿勢基準器においては、航空機1が地上に静止している場合でもドリフト誤差が積みあがることなく補正を行うことができる。
なお、航空機1が地上で駐機している場合には効果がないが、飛行中であればゆっくりとした姿勢変動は必ず発生するため、ピーク検出パラメータ設定器60によって幅49を増やしても同様の効果を得ることができる。
実施の形態3.
図6は、実施の形態3に係る姿勢基準器のピーク検出式ドリフト誤差算出器42cの処理を説明する図である。実施の形態3に係る姿勢基準器のピーク検出式ドリフト誤差算出器42cは、実施の形態1に対して補正間隔もニタ器59、警告送信器62を備える。なお、破線57は実施の形態1におけるピーク検出式ドリフト誤差算出器42の処理を示したものである。
実施の形態3において、差分計算及びホールド処理56はドリフト誤差36を更新した際に、更新を表す更新信号58を補正間隔モニタ器59に出力する。
補正間隔モニタ器59は、直前のドリフト誤差36の更新からの経過時間61を算出し、警告送信器62に送る。
警告送信器62は予め設定された一定時間以上、ドリフト誤差36を検出できない場合、上位システムに対して姿勢変化要求信号63を出力する。
姿勢変化要求信号63を受信する上位システムとしては、例えばパイロットに航法情報を表示するような表示器や、プラットフォームとなる航空機1が無人機の場合であれば航法を制御する装置が想定される。上位システムが表示器の場合、姿勢変化要求信号63を受けて「姿勢を動かせ」というような表示を行って、パイロットに機体動揺を促す。また、上位システムが航法を制御する装置の場合、姿勢変化要求信号63を受けて若干のロール機動、あるいは蛇行飛行を行わせる。
このように本実施の形態の姿勢基準器においては、一定時間以上、ドリフト誤差が更新されない場合には警告を発することで、ドリフト誤差の更新を促すようにした。これにより、ドリフト誤差を更新して精度の高い姿勢角を維持することができる。
リファレンスとなる信号とそれに追従させたいデータを整合させるという問題において、リファレンス信号の時刻同期性が失われているというケースは多い。本特許は姿勢基準器のみならず、そういった問題すべてに対して有効である。
1 航空機、2 目標、3 光学目標探知器センサヘッド、4 視軸、5 機軸、6 重力方向、7 水平方向、8 姿勢基準器、9 光学目標探知器、10 視軸方向制御器、11 視軸方向計測器、12 目標方向算出器、13 視軸方向情報、14 ローレート姿勢角、15 伝送路、16 遅延したローレート姿勢角、17 慣性座標系における目標方向情報、18 上位システム、19 制御信号、20 ハイレート姿勢基準器、21 姿勢角(ハイレート)、22 ハイレート姿勢基準器(基本)、23 レートセンサ、24 姿勢角角速度、25 計測間隔、26 ハイレート姿勢角、27 ハイレート姿勢角、28 初期姿勢角、29 姿勢計算器、30 平滑化ハイレート姿勢角、31 ドリフト誤差、32’ ハイレート姿勢基準器(補正付)、32 ハイレート姿勢基準器(補正付)、33 ドリフト補正器、34 遅延フィルタ、35 遅延されたハイレート姿勢角、36 ドリフト誤差、37 整合処理、38 補正されたハイレート姿勢角、39 量、40 平均遅延量だけずらしたローレート姿勢角、41 誤差、42 ピーク検出式ドリフト誤差算出器(実施の形態1)、42b ピーク検出式ドリフト誤差算出器(実施の形態2)、42c ピーク検出式ドリフト誤差算出器(実施の形態3)、43 バッファリング処理、44 平滑化処理、45 平滑化ハイレート姿勢角、46 ピーク検出処理、47 姿勢角、48 点、49 幅、50 幅、51 点、52 幅、53 所要変化量、54 点、55 点、56 差分計算及びホールド処理、57 破線、58 更新信号、59 補正間隔モニタ器、60 ピーク検出パラメータ設定器、61 経過時間、62 警告送信器、63 姿勢変化要求信号。

Claims (5)

  1. 移動体に搭載され、計測した前記移動体の姿勢量が有するドリフト誤差を、当該移動体に搭載されるリファレンス用姿勢基準器が計測した姿勢量であって伝送路を経由して受信した前記姿勢量をリファレンスとして用いて補正し、前記移動体の姿勢量を取得する姿勢基準器において、
    前記姿勢基準器の姿勢量を表す信号のピーク位置でのピーク値と、前記伝送路を経由して受信した姿勢量を表す信号のピーク位置でのピーク値を検出して、検出したピーク値の差分を算出するピーク検出式ドリフト誤差算出器と、
    前記差分を用いて前記ドリフト誤差を補正するドリフト補正器と、
    を備えることを特徴とする姿勢基準器。
  2. ドリフト誤差の補正間隔をモニタする補正間隔モニタ器と、
    前記ピーク検出式ドリフト誤差算出器がピークであるか否かを判定する際に用いるパラメータを設定するピーク検出パラメータ設定器を備え、
    前記パラメータは、予め定めた時間幅における前記姿勢量を表すカーブの最大値と最小値の差と比較する数値であって、前記補正間隔モニタ器がモニタする前記補正間隔に応じて前記補正間隔が長くなるに従い小さな値に設定される数値であり、
    前記ピーク検出式ドリフト誤差算出器は、前記時間幅における姿勢量の最小値と最大値の差が前記パラメータの値より大であり、かつ、前記時間幅における前記姿勢量の最大値が前記時間幅における前記カーブの変曲点における姿勢量と一致する場合に、前記変曲点をピークであると判定することを特徴とする請求項1記載の姿勢基準器。
  3. ドリフト誤差の補正間隔をモニタする補正間隔モニタ器と、警告器を備え、
    前記警告器は、前記補正間隔が予め定めた時間以上になった場合に警告を発することを特徴とする請求項1、2いずれか記載の姿勢基準器。
  4. 前記警告があった場合に、前記移動体の機体を動揺させる機構を備えることを特徴とする請求項3記載の姿勢基準器。
  5. 前記姿勢基準器はリファレンス用姿勢基準器と比較して、所定の時間内に姿勢量を計測する計測可能レートは高いが、ドリフト誤差が大きいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の姿勢基準器。
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