JP2014152363A - 鉄鋼用コーティング組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】温間加工または熱間加工により鉄鋼部品を製造する際、鉄鋼部材の表面に生成するスケールおよび鉄−アルミニウム合金を抑制させる鉄鋼用コーティング組成物を提供する。
【解決手段】温間加工または熱間加工に供される鉄鋼部材に付与される鉄鋼用コーティング組成物であって、アルミニウム粉末と、膨潤性合成マイカと、バインダーと、溶剤と、を含有する鉄鋼用コーティング組成物である。
【選択図】なし

Description

本発明は、鉄鋼部材の温間加工または熱間加工時に使用される鉄鋼用コーティング組成物、該鉄鋼用コーティング組成物を用いた鉄鋼部品および鉄−アルミニウム合金の生成抑制方法に関する。
鉄鋼部材に対して温間加工または熱間加工を施し、鉄鋼部品を製造する際、該鉄鋼部材が約600℃以上に加熱されると、大気中の酸素によって鉄鋼部品の表面にスケールが生成する。鉄鋼部品表面におけるスケールの発生は外観の低下のみならず、得られた鉄鋼部品の強度の低下などを引き起こすため、スケール防止を目的として、温間加工または熱間加工に際しては、コーティング組成物を鉄鋼部材に適用することがある。
スケール発生防止技術としては、特定の組成を有する鱗片状の粉体を鉄鋼部材表面にそのまま、あるいは分散液の形態で塗布し、熱間圧延する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、ここに記載の鱗片状材料は、1000℃以上に加熱されると変質し、除去が困難になることが特許文献1に記載されており、使用温度範囲が限られるという問題があった。
また、鉄系金属ベースを持つ金属ストリップの表面に、バインダー樹脂に分散された細分化金属(アルミニウムなど)および非金属耐火材料の幅広い範囲の改良保護皮膜を造る方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
前記特許文献2に記載の方法によれば、スケール発生はある程度抑制される。しかしながら、該方法によれば、鉄鋼とアルミニウムとを温間加工あるいは熱間加工における温度範囲である660℃以上で加熱すると、鉄鋼とアルミニウムとの界面においてアルミニウムの一部が鉄鋼内部に拡散して鉄−アルミニウム合金が形成されるが、鉄−アルミニウム合金の形成は、温間加工または熱間加工により製造される鉄鋼部品の平滑性、強度、塗装性などを低下させる観点から好ましくない。
特開昭54−5828号公報 特表昭60−501747号公報
上記問題点を考慮してなされた本発明の課題は、温間加工または熱間加工により鉄鋼部品を製造する際、鉄鋼部材の表面におけるスケールのみならず、鉄−アルミニウム界面における鉄−アルミニウム合金の発生を抑制させ得る鉄鋼用コーティング組成物を提供することにある。
また、本発明のさらなる課題は、本発明の鉄鋼用コーティング組成物を用いてなる表面におけるスケールならびに鉄−アルミニウム合金の発生が抑制された鉄鋼部品および鉄−アルミニウム合金の生成抑制方法を提供することにある。
前記課題を解決するための具体的手段は以下のとおりである。
<1> 温間加工または熱間加工に供される鉄鋼部材に付与される鉄鋼用コーティング組成物であって、アルミニウム粉末と、膨潤性合成マイカと、バインダーと、溶剤と、を含有する鉄鋼用コーティング組成物。
<2> アルミニウム粉末が表面処理されたアルミニウム粉末であり、且つ、溶剤として水を含有する<1>記載の鉄鋼用コーティング組成物。
<3> <1>または<2>に記載の鉄鋼用コーティング組成物を付与した鉄鋼部材を温間加工または熱間加工してなる鉄鋼部品。
<4> 鉄鋼部材表面に、アルミニウム粉末と、膨潤性合成マイカと、バインダーと、溶剤と、を含有する鉄鋼用コーティング組成物を付与した後、該鉄鋼部材を温間加工または熱間加工する、鉄鋼表面における鉄−アルミニウム合金の生成抑制方法。
本発明によれば、鉄鋼部材の表面のスケール、および鉄−アルミニウム合金の発生を抑制させ得る温間加工または熱間加工鉄鋼用コーティング組成物が提供される。
また、前記本発明の鉄鋼用コーティング組成物を用いることで、表面のスケールと鉄−アルミニウム合金の発生が抑制された鉄鋼部品および鉄−アルミニウム合金の生成抑制方法が提供される。
本明細書では、「温間加工または熱間加工に供される鉄鋼部材に付与される鉄鋼用コーティング組成物」を、単に「鉄鋼用コーティング組成物」あるいは、「本発明の組成物」と称することがある。
以下、本発明の鉄鋼用コーティング組成物を構成する各成分や、本発明の鉄鋼用コーティング組成物および鉄鋼部品の製造方法について説明する。
<鉄鋼用コーティング組成物>
本発明の鉄鋼用コーティング組成物は、アルミニウム粉末、膨潤性合成マイカ、バインダーおよび溶剤を含有し、温間加工または熱間加工を施す鉄鋼部材に使用される。
本発明の作用効果は明確ではないが、以下のように考えている。
本発明の組成物を鉄鋼部材の表面に付与したとき、膨潤性合成マイカがアルミニウム粉末に優先して鉄鋼部材表面へ配向することで、鉄鋼部材界面側に膨潤性合成マイカが配向した塗膜が形成される。この膨潤性合成マイカの層が、熱間加工などにより鉄鋼部材が加熱された際に溶融したアルミニウムへ鉄成分が拡散するのを防止することにより、界面での鉄−アルミニウム合金の抑制効果が発現しているものと推測される。
なお、本明細書において、「温間加工」、および「熱間加工」は以下に示す意味で用いられる。
本明細書における「温間加工」とは、室温以上、且つ、金属の再結晶温度以下の温度範囲において、鉄鋼を圧延、鍛造、押出しなどに代表される塑性加工を行うことを指す。「熱間加工」とは、金属の再結晶温度を超える温度で圧延、鍛造、押出しなどの塑性加工を行う方法を指す。被加工体である鉄鋼においては、一般的に再結晶温度は約800℃〜900℃の範囲であり、組成による。再結晶温度の測定方法としては、結晶粒を直接観察する光学顕微鏡観察法、硬度を測定することにより加工硬化と焼き鈍し挙動により再結晶温度を決定する微小硬度測定法、あるいは電気的特性の変動を測定する電気特性測定法、再結晶にともなう熱量変化を測定する熱分析法等が挙げられる。
本発明の組成物は、鉄鋼部材に適用され、高温処理されるという実施形態を考慮した場合、鉄鋼部材の表面にスケールが発生する温度、具体的には約500℃〜600℃、以上であり、且つ、本発明の組成物に含有されるアルミニウム粉末が溶融して、通常であれば、鉄−アルミニウム合金が生成される温度以上で効果を発現する。なお、アルミニウムの溶融温度は、660℃である。
〔アルミニウム粉末〕
本発明に使用するアルミニウム粉末は、粒状、板状、塊状、鱗片状など種々の形状が挙げられる。中でも、1μm〜100μm、好ましくは5μm〜40μmの平均粒径、5〜1000、好ましくは15〜500のアスペクト比(平均粒径を平均厚みで割った形状係数)を有する鱗片状のアルミニウム粉末が好ましい。アルミニウム粉末の平均粒径は、レーザー回折法(JIS Z8825−1:粒子径解析−レーザー回折法)により求めたメジアン径である。
アルミニウム粉末は、そのまま使用してもよく、何らかの表面処理を施したものを使用してもよい。
本発明の鉄鋼用コーティング組成物は、以下に詳述するように溶剤を含有するが、溶剤として水あるいは、水と水溶性有機溶剤との混合物など水を含有するものを使用する場合、水とアルミニウムが反応し、水素ガスが発生するという問題がある。このため、水系の溶剤を使用する際には、アルミニウム粉末は、水への安定性を付与するための表面処理を施されたアルミニウム粉末を用いることが好ましい。
アルミニウム粉末の表面処理方法には特に制限はなく、例えば、アルミニウム粉末を有機化合物により表面処理する方法、無機化合物により表面処理する方法、あるいは、有機ケイ素化合物もしくはケイ酸塩(いわゆるシリカ)により表面処理する方法などが挙げられ、目的に応じて適宜選択される。
アルミニウム粉末の表面処理に用いられる処理剤としては、アルミニウム粉末表面に付着して粉末表面の少なくとも一部を被覆しうるものであれば特に制限なく用いられる。
アルミニウム粉末の表面処理に用いられる有機化合物としては、例えば、界面活性剤、分散樹脂などの高分子化合物、アクリル酸などの低分子化合物、脂肪酸などの油脂類などが挙げられ、これらは複数を併用してもよい。
有機化合物で表面処理されたアルミニウム粉末としては、ダイマー酸、界面活性剤、および炭素数8以上の高級脂肪族アミンの1種以上からなる組成物で被覆処理を施したアルミニウム粉末(特公昭59−15153号公報)、有機リン酸エステル化合物で処理したアルミニウム粉末(特公平2−31751号公報)、モリブデン酸被膜の上に有機リン酸エステルあるいはその塩類からなるリン酸系被膜を形成したアルミニウム粉末(特開平7−70468号公報)、無機リン酸または無機リン酸塩、および有機リン酸エステル化合物で処理したアルミニウム粉末(特開平10−130545号公報)、重合性二重結合を有する化合物を反応させて生成した重合物で被覆したアルミニウム粉末(特開昭58−83034号公報)、アクリル樹脂オリゴマーとアクリル酸またはメタクリル酸で処理したアルミニウム粉末(特開昭62−81460号公報)、ラジカル重合性不飽和カルボン酸、ラジカル重合性二重結合を有するリン酸またはホスホン酸のモノまたはジエステル、および、ラジカル重合性二重結合を有するカップリング剤から選ばれた少なくとも1種を添加する第一工程を実施した後に、ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体と重合開始剤とを添加する第二工程を実施することで被覆したアルミニウム粉末(特開2002−226733号公報)などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
表面処理されたアルミニウム粉末は、取扱い時の粉塵拡散防止および溶剤への分散性向上の観点から予め溶剤および添加剤と混合されてペーストとした市販品としても入手可能である。
本発明の組成物に用いうる有機化合物により表面処理されたアルミニウム粉末を含有するアルミニウムペーストの市販品を以下に例示するが、これらに制限されるものではない。
界面活性剤で表面処理されたアルミニウム粉末を含有するアルミニウムペーストの市販品としては、例えば、旭化成ケミカルズ(株)製のFWシリーズ、東洋アルミニウム(株)製の#1500などが挙げられる。ダイマー酸で処理したアルミニウム粉末を含有するアルミニウムペーストの市販品としては、例えば、東洋アルミニウム(株)製のWBシリーズなどが挙げられる。リン酸エステルで処理したアルミニウム粉末を含有するアルミニウムペーストの市販品としては、例えば、東洋アルミニウム(株)製のSWシリーズなどが挙げられる。また、樹脂で処理を施した後にリン酸エステル処理を施したものとして東洋アルミニウム(株)製のWAシリーズ、WRシリーズ、WXシリーズ、Vシリーズなどが挙げられる。樹脂で処理したアルミニウム粉末を含有するアルミニウムペーストの市販品としては、例えば、東洋アルミニウム(株)製の010WDなどが挙げられる。
アルミニウム粉末の表面処理に用いられる無機化合物としては、例えば、無機リン酸などの無機酸およびその塩、金属、金属酸化物等の金属化合物などが挙げられ、これらは複数を併用してもよい。
無機化合物で表面処理されたアルミニウム粉末としては、無機リン酸もしくは無機リン酸塩の水溶液で処理したアルミニウム粉末(特公昭34−9729号公報)、クロム酸で処理したアルミニウム粉末(特公平1−54386号公報)、アルミニウムに対してモリブデン金属換算量で0.1〜10重量%のモリブデン酸被膜で被覆した粒子構造を有するアルミニウム粉末(特開平6−57171号公報)、モリブデン酸などの酸化剤とリン酸イオンおよびアルカリ土類金属イオンを含有する処理液で処理したアルミニウム粉末(特開平4−318181号公報)、過酸化ポリ酸により処理されたアルミニウム粉末(特開平9−328629号公報)などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
本発明の組成物に用いうる無機化合物により表面処理されたアルミニウム粉末を含有するアルミニウムペーストの市販品を以下に例示するが、これらに制限されるものではない。
無機リン酸で表面処理したアルミニウム粉末を含有するアルミニウムペーストの市販品としては、例えば、東洋アルミニウム(株)製のWXシリーズなどが挙げられる。クロムめっきを施したアルミニウム粉末を含有するアルミニウムペーストの市販品としては、例えばECKART(株)製のSTAPA HYDROLUXシリーズなどが挙げられる。モリブデン処理を施したアルミニウム粉末を含有するアルミニウムペーストの市販品としては、例えば、東洋アルミニウム(株)製のWJシリーズ、WLシリーズなどが挙げられる。
アルミニウム粉末の表面処理に用いられる有機ケイ素化合物もしくはケイ酸塩(いわゆるシリカ)としては、例えば、ケイ酸ナトリウムなどが挙げられ、これらは複数を併用してもよい。
有機ケイ素化合物もしくはケイ酸塩(いわゆるシリカ)で表面処理されたアルミニウム粉末としては、アルミニウム粉末をケイ酸ナトリウムで処理したアルミニウム粉末(米国特許2,885,366号公報)、アミノシラン化合物で処理したアルミニウム粉末(特開昭56−100865公報)、アルミニウム粉末表面にシロキサン被覆を行い、さらに合成樹脂を被覆したアルミニウム粉末(特開平7−003185公報)、アルミニウム粉末表面にリンを含有するシリカ被膜を形成したアルミニウム粉末(特許第4633239号公報)、シロキサン結合を有する化合物の加水分解縮合物で被覆したアルミニウム粉末(特許第4260454号公報)、モリブデン酸被膜に加え、さらにシリカ被膜を有するアルミニウム粉末(国際公開WO2004/096921号パンフレット)、シリカ被覆にて被覆されたアルミニウム粉末を、さらにリン含有チタネート化合物で表面処理した複合アルミニウム粉末(特許第4491601号公報)などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
シリカで被覆されたアルミニウム粉末を含有するアルミニウムペーストの市販品としては、例えば、ECKART(株)製のSTAPA HYDROLANシリーズや東洋アルミニウム(株)製のEMRシリーズ、FM4010JBなどが挙げられる。
これらの中でも、アルミニウム粉末としては、有機ケイ素化合物もしくはケイ酸塩(いわゆるシリカ)で表面処理されたアルミニウム粉末などが好ましい。
本発明の鉄鋼用コーティング組成物には、アルミニウム粉末は1種のみを含んでいてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の鉄鋼用コーティング組成物の全質量に対する、アルミニウム粉末の含有量は、0.1質量%〜50質量%が好ましく、0.5質量%〜20質量%がより好ましく、1質量%〜10質量%がさらに好ましい。上記含有量は、複数種のアルミニウム粉末を用いた場合はその総量を指す。
〔膨潤性合成マイカ〕
本発明の組成物は、膨潤性合成マイカを含有する。
本発明に使用する膨潤性合成マイカは、シリカ、アルミナ、マグネシアなどの酸化物やタルクなどの粘土鉱物、ケイ化フッ化ソーダ、フッ化リチウム、フッ化ナトリウムなどの弗素化合物などの原料を化学組成比に合わせて調合し、加熱して得られる雲母であり、下記一般式(1)で示される。
(1)
前記一般式(1)中、Mは、Na、Li、およびCa2+から選ばれる1種以上の層間陽イオンを表し、XはLi、Mg2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Mn2+、Zn2+、Cu2+、Al3+、Fe3+、およびCr3+から選ばれる1種以上の八面体配位位置の陽イオンを表し、Yは四面体配位位置のSi4+、ZはOH、およびFから選ばれる1種以上の陰イオンを表す。
YにおけるSi4+の一部はAl3+、B3+、Fe3+、Zn2+、およびGe4+から選ばれる1種以上の陽イオンで置換されてもよい。
aは0.5〜1.5、bは2〜3.5、cは3.5〜4.5、dは9.5〜10.5、eは1.5〜2.5の数を表す。
より好ましい膨潤性合成マイカとしては、前記一般式(1)中、MがNa、Li、またはCa2+の層間陽イオンであり、XはLi、およびMg2+から選ばれる1種以上の八面体配位位置の陽イオンであり、Yは四面体配位位置のSi4+、ZはOH、およびFから選ばれる1種以上の陰イオンを表す組成を示し、aは0.5〜1.5、bは2〜3.5、cは3.5〜4.5、dは9.5〜10.5、eは1.5〜2.5の数を表すものが挙げられる。
本発明で用いる合成マイカとしては、少なくとも1種の膨潤性合成マイカを含有する。
合成マイカが膨潤性合成マイカであるか否かについては、以下の基準により確認することができる。
日本ベントナイト工業会標準試験方法JBAS−104−77に従って測定した膨潤力、すなわち100mLメスシリンダーに蒸留水を100mL入れ、2gの試料を10回もしくはそれ以上に分けて加え、24時間放置した後の沈降部分の体積を読み取り、膨潤力とした。この評価方法において、膨潤力とし、10mL/2g以上の体積を示したものを膨潤性合成マイカと評価した。
非膨潤性合成マイカの場合には、結晶層間への水の浸入が生じないために体積変化は生じない。
本発明に用いる膨潤性合成マイカは、前記膨潤力が10mL/2g以上の体積を示すものが用いられ、前記膨潤力が20mL/2g以上であるものが好ましい。
ちなみに、加工されていない天然マイカは通常、本発明に規定する膨潤性を示さない。例えば、本発明者らの検討によれば、天然マイカ(商品名:セリサイトFSN、三信鉱工社製)を前記日本ベントナイト工業会標準試験方法JBAS−104−77に従って測定したところ、膨潤力は7mL/2gであった。
本発明で用いられるより好ましい膨潤性合成マイカの具体例としては、例えば、Na型四ケイ素フッ素雲母、Li型四ケイ素フッ素雲母、Ca型四ケイ素フッ素雲母、Na型フッ素テニオライト、Li型フッ素テニオライトなどの化学的に合成した膨潤性合成マイカ、これらの置換体または誘導体、ならびにこれらの混合物が例示される。
本発明の膨潤性合成マイカとしては、Na型四ケイ素フッ素雲母がさらに好ましい。
膨潤性合成マイカの平均粒径は、0.1μm〜100μmが好ましく、1μm〜15μmがより好ましい。マイカの平均粒径は、既述のレーザー回折法より求めたメジアン径である。
前記一般式(1)で表される膨潤性合成マイカは市販品を使用することができる。市販品の膨潤性合成マイカとしては、例えばコープケミカル社製のソマシフシリーズやトピー工業社製のNTSシリーズなどが挙げられる。
本発明の鉄鋼用コーティング組成物には、膨潤性合成マイカは1種のみ含有されてもよく、2種以上を含有してもよい。
鉄鋼用コーティング組成物の全質量に対する膨潤性合成マイカの含有量は、0.1質量%〜50質量%が好ましく、0.5質量%〜20質量%がより好ましく、1質量%〜5質量%がさらに好ましい。上記含有量は、複数種の膨潤性合成マイカを用いた場合はその総量を指す。
〔バインダー〕
本発明に使用するバインダーは、鉄鋼用コーティング組成物を鉄鋼部材の表面に安定に付与するのに適したものであればよく、無機バインダー、有機バインダーなどが挙げられる。
バインダーはそのまま本発明の組成物に含有されてもよく、後述する溶剤に溶解あるいは分散した形態で含有されてもよい。
無機バインダーとしては、特に限定されないが、ケイ素、チタン、ジルコニウム、またはアルミニウムの金属アルコキシド、これらの部分加水分解縮重合物、オルガノシラザンなどが挙げられる。
有機バインダーとしては、特に限定されないが、例えば、亜麻仁油、サフラワー油、大豆油などの油脂、脂肪酸、脱水ひまし油、マレイン化油などの油脂加工品、コーパル、ロジン、セラックなどの天然樹脂、溶融コーパル、硬化ロジン、脱色セラックなどの天然樹脂加工品、アルキド樹脂、フタル酸樹脂、アミノ樹脂、ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂などの合成樹脂、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの繊維素誘導体などが用いられる。
バインダーは、本発明の組成物においては、溶剤である水に溶解あるいは分散された形態で用いられることが好ましく、容易に水に溶解あるいは分散できるものが好ましい。
そのような観点からは、水溶性であって、水に溶解して適度な粘度を発現する繊維素誘導体が好ましく、その中でもヒドロキシエチルメチルセルロースなどが好ましい。
本発明の組成物にバインダーは1種のみ含有されてもよく、2種以上を併用してもよい。
バインダーの含有量は、鉄鋼用コーティング組成物の全量に対して、0.01質量%〜40質量%が好ましく、0.05質量%〜20質量%がより好ましく、0.1質量%〜10質量%がさらに好ましい。
〔溶剤〕
本発明の組成物に使用する溶剤は、アルミニウム粉末、膨潤性合成マイカを分散させ、且つ、必要に応じてバインダーを溶解もしくは分散させ、被加工材である鉄鋼部材表面に付与するために好適な物性をするために用いられる。
各種の溶剤を組合せ、鉄鋼用コーティング組成物のレオロジーや溶剤の蒸発速度を制御して塗装性および乾燥性を改良するために用いることもできる。
溶剤としては、水であっても、有機溶剤であってもよく、特に限定されない。安全性の面から水が好ましい。溶剤として水を用いる場合は、水溶性有機溶剤を混合してもよい。
有機溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンなどの脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロへキサン、プロピルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、トルエン、キシレン、クメン、メシチレンなどの芳香族炭化水素、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸オクチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸ブチルなどの脂肪酸エステル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピルなどの芳香族エステルなどのカルボン酸エステル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブなどのエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、シクロヘキサノンなどのケトン、エタノール、イソプロパノールなどのアルコールなどが挙げられる。
溶剤は、1種または2種以上を組合せて用いてもよい。
溶剤の含有量は、既述のアルミニウム粉末、膨潤性合成マイカ、バインダーの種類や含有量により変動し、好ましい物性を達成するために適宜調整されるが、一般的には、本発明の組成物の固形分濃度は、0.5質量%〜90質量%が好ましく、1質量%〜45質量%の範囲となる量が好ましい。
本発明の鉄鋼用コーティング組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、非膨潤性合成マイカ、着色剤、体質顔料、フィラー、骨材、湿潤分散剤、表面調整剤、消泡剤、レオロジーコントロール剤、レベリング剤、増粘剤、沈降防止剤、艶消し剤、防腐剤、防錆剤、光安定剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、可塑剤、凍結防止剤などを含有してもよい。
<鉄鋼用コーティング組成物の製造方法>
本発明の鉄鋼用コーティング組成物は、アルミニウム粉末、合成マイカ、バインダー、溶剤および所望による含有される各種成分を混合することによって製造することができる。
例えば、まず、アルミニウム粉末、合成マイカ、バインダーを、別々の容器で溶剤と混合させる。このとき、必要に応じて前記各混合物に、それぞれ湿潤分散剤を添加して混合してもよい。
湿潤分散剤としては、アルミニウム粉末あるいは合成マイカの溶剤への分散を容易にする、あるいはアルミニウム粉末あるいは合成マイカの溶剤中における良好な分散状態を保つために用いられるものであれば、特に限定されない。例えば、粉末に吸着する部位と、溶剤に親和性の高い部位との構造を持つ界面活性剤が使用できる。湿潤分散剤は、アルミニウム粉末および合成マイカを良好に分散でき、分散状態を良好に保つものであれば、特に限定されない。
既述の任意成分を含有させる場合、固体成分は、アルミニウム粉末や膨潤性合成マイカが含まれる混合物に投入して分散混合してもよく、また、溶媒に溶解しうる成分であれば、いずれかの混合物に予め添加してもよく、後述する3種の混合物を合一して混合する工程において添加してもよい。
次いで、別々の容器において溶剤と混合させたアルミニウム粉末、合成マイカ、およびバインダーを1つの容器に投入して、さらに混合する。
当該混合工程は、好ましくは10℃〜80℃の温度条件下、1分間〜72時間行われる。混合は、撹拌混合であってもよく、また、槽と撹拌翼を備えた一般的な混合装置で製造できる。
このようにして、本発明の鉄鋼用コーティング組成物を得ることができる。なお、組成物の調製方法は上記方法に限定されず、必要な各成分を均一に混合、分散しうる方法であればいずれの方法であってもよい。
<鉄鋼部品の製造方法および鉄−アルミニウム合金の生成抑制方法>
本発明の鉄鋼部品の製造方法は、鉄鋼用コーティング組成物を鉄鋼部材に付与する工程と、該鉄鋼用コーティング組成物が付与された該鉄鋼部材を加熱する工程と、該鉄鋼用コーティング組成物が塗布された該鉄鋼部材に対して温間加工または熱間加工を行う工程とを含む構成とすることができる。
ここで、本発明の鉄−アルミニウム合金の生成抑制方法は、鉄鋼部材表面に、アルミニウム粉末と、膨潤性合成マイカと、バインダーと、溶剤と、を含有する鉄鋼用コーティング組成物を付与した後、該鉄鋼部材を温間加工または熱間加工するものである。
本発明に使用する鉄鋼部材としては、炭素鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、マンガン鋼、マンガンクロム鋼、クロムバナジウム鋼、珪素マンガン鋼、高炭素クロム鋼、タングステンクロム鋼、タングステンバナジウム鋼、タングステンクロムバナジウム鋼の他、H鋼、窒化鋼、高張力鋼、ダイス鋼、軸受鋼、耐熱鋼、ボロン鋼などの各種合金鋼などが挙げられる。また、純鉄や炭素鋼などに浸炭処理を行ったものでもよい。
鉄鋼用コーティング組成物を鉄鋼部材に付与する方法としては、刷毛塗り、ローラー塗装、シャワー塗装、スプレー塗装、静電塗装、ロールコートなどの各種塗布法や、浸漬法などが挙げられる。
前記の鉄鋼部材に加工油あるいは防錆油などの油脂が付着している場合は、組成物の付与前に脱脂処理を行ってもよい。
脱脂処理の手法は、特に限定されないが、有機溶剤による脱脂、界面活性剤による脱脂、アルカリ系薬剤による脱脂、酸系薬剤による脱脂など公知の方法を用いることができる。また、油脂を揮発させる目的で、該鉄鋼用コーティング組成物を付与する前に鉄鋼部材を予め150℃〜300℃に加熱してもよい。
本発明の鉄鋼用コーティング組成物を前記鉄鋼部材に付与した後は、雰囲気温度下(例えば、5℃〜35℃)で乾燥してもよいし、加熱乾燥してもよい。加熱乾燥温度は、80℃〜300℃が好ましい。また、乾燥性を改良する目的で、該鉄鋼用コーティング組成物を塗布する前に鉄鋼部材を予め80℃〜300℃に加熱してもよい。特に本発明の鉄鋼用コーティング組成物が有機溶剤を含む場合は、安全性の観点から、温間加工または熱間加工に供する前に十分乾燥させることが望ましい。
温間加工または熱間加工の前に鉄鋼用コーティング組成物が塗布された鉄鋼部材を加熱する。加熱温度は600℃〜1400℃が好ましく、800℃〜1200℃がより好ましい。
前記加熱方法として、電気炉、ガス炉での加熱、火炎加熱、通電加熱、高周波加熱、誘導加熱、近赤外線加熱、遠赤外線加熱などが挙げられる。
温間加工または熱間加工としては、公知の方法、例えば、鍛造、プレス加工、曲げ加工、圧延、押出し加工、引抜き加工、ロール加工、せん断加工、絞り加工、深絞り加工、スピニング、転造、ダイス加工、伸線加工、張出し加工、圧造、チューブフォーミング、ハイドロフォーミングなどが挙げられる。
例えば熱間プレス加工の場合、本発明の鉄鋼用コーティング組成物を鋼板に(前記の方法のいずれかにより)付与し乾燥させる。その後、該鋼板は目的の鉄鋼部品に成型するために適した大きさに切断される。切断された鋼板は(前記の方法のいずれかにより)加熱された後、金型に搬送され、加圧成型と同時に冷却され、鉄鋼部品に成型される。
例えば熱間鍛造成型の場合、本発明の鉄鋼用コーティング組成物を鉄鋼のビレットに(前記の方法のいずれかにより)塗装し乾燥させる。その後、本ビレットは(前記の方法のいずれかにより)加熱された後、鍛造成型工程へ搬送され鉄鋼部品に成型される。
本発明の鉄鋼用コーティング組成物を用いると、約660℃を超える温度で鉄鋼部材を温間加工または熱間加工した場合であっても、鉄鋼部品の表面のスケールおよび鉄−アルミニウム合金の生成を抑制することができる。
<鉄鋼部品の使用方法>
本発明の鉄鋼用コーティング組成物を用いて得られた鉄鋼部品は、表面のスケールや鉄‐アルミニウム合金の発生が抑制され、強度に優れるため、各種用途に好適に使用される。具体的には、例えば、自動車用部品、建設機械用部品、農業機械用部品、鉄道用部品、船舶用部品、宇宙・航空機用部品、産業機械用部品、作業用工具などに用いることができる。
以下、実施例、比較例および参考例を挙げ、本実施形態をより具体的に説明する。特に断りのない限り、「部」および「%」は質量基準である。また、本実施例において「常温」とは、特に温度条件を記載したものを除き、特別の温度制御がなされていない雰囲気温度(例えば、5℃〜35℃)を指すものとする。
<評価方法>
〔スケール抑制効果の評価〕
鉄鋼部材として、JIS G 4051(2009)で規定される機械構造用炭素鋼S45Cのビレット(直径8mm、高さ12mm、重量4.825±0.005g)を用いた。鉄鋼用コーティング組成物(1)、(2)、(5)〜(10)を塗装する場合には、250℃に調節した電気炉で大気雰囲気下、20分間、ビレットを加熱し、次いで、電気炉から取り出したビレットを、該鉄鋼用コーティング組成物の浴槽へ1秒間浸漬して、ビレット表面に該鉄鋼用コーティング組成物を付与した。鉄鋼用コーティング組成物(3)〜(4)を塗装する場合には、水用性刷毛で常温のビレット表面に該鉄鋼用コーティング組成物を塗装し、常温で十分に乾燥した。
その後、精密電子天秤を用いて、付与された該鉄鋼用コーティング組成物の重量が1mgから20mgの範囲であることを確認した。
付与された該鉄鋼用コーティング組成物の重量は、鉄鋼用コーティング組成物を付与した後のビレット重量から鉄鋼用コーティング組成物を付与する前のビレット重量を差し引いて求めた。
次に、1100℃に調節した電気炉で大気雰囲気下、4分間、鉄鋼用コーティング組成物を付与したビレットあるいは、何らの組成物を付与していないビレットを加熱した。電気炉から取り出したビレットを直ぐにプレス機に装備された常温の金型上に配置し、20MPaの荷重で据え込み成形した。据え込み成形後、ビレットを30℃以下まで冷却した後、ビレットを真鍮製のワイヤーブラシで擦り、表面に残存したスケールを除去した。
鉄鋼用コーティング組成物の付与と、熱間加工との間に、以下に示すビレットの重量を測定し、下記の式から鉄鋼用コーティング組成物のスケール抑制効果を求めた。
即ち、加工処理前のビレット(未処理の鉄鋼部材)の重量を測定して重量(1)とし、実施例または比較例の鉄鋼用コーティング組成物を用いて、据え込み成形し、真鍮製のワイヤーブラシで残存したスケールを除去したビレットの重量を重量(2)とし、鉄鋼用コーティング組成物を用いずに据え込み成形し、真鍮製のワイヤーブラシで残存したスケールを除去したビレットの重量を重量(3)として、下記式(A)により求めた値をスケール抑制効果(%)とした。
スケール抑制効果(%)=
〔(重量(2)−重量(3))/(重量(1)−重量(3))〕×100 式(A)
〔鉄−アルミニウム合金の観察〕
鉄鋼の材料として、JIS G 3141(2005)でSPCD−SDに規定される一般用の冷間圧延鋼板(70mm×150mm×1.6mm)を用いた。鉄鋼用コーティング組成物(1)、(2)、(5)〜(10)を塗装する場合には、250℃に調節した電気炉で大気雰囲気下、10分間、鋼板を加熱した。電気炉から取り出した鋼板を該鉄鋼用コーティング組成物の浴槽へ1秒間浸漬し、塗装した。鉄鋼用コーティング組成物(3)〜(4)を塗装する場合には、常温の鋼板へ該鉄鋼用コーティング組成物を水性用刷毛で塗装し、十分に乾燥した。
その後、電磁膜厚計を用いて、塗装膜厚が1μmから5μmの範囲であることを確認した。電磁膜厚計は、Kett社製「LE‐370」を使用した。
次に、前記鉄鋼用コーティング組成物を塗装した鋼板を、900℃に調節した電気炉で大気雰囲気下、2分間加熱した。加熱後、電気炉から取り出された鋼板は、直ちに約20℃に温度管理された金属板2枚に挟み込み冷却した。
その後、電子プローブマイクロアナライザー(Electron Probe Micro Analyzer;EPMA)を用いて鋼板の断面を観察し、熱間加工時の鉄−アルミニウム合金の生成を確認した。EPMAは、日本電子社製「JXA−8530F」を使用した。また、マッピング像の観察(分析元素:鉄、アルミニウム、酸素)は倍率1000倍で行った。鉄−アルミニウム合金の生成は、鉄とアルミニウムとが同じ領域に存在する箇所に酸素が存在しないことから確認した。
その結果により、試料の画像において、鋼板表面の幅100μmの領域における鉄−アルミニウム合金の生成箇所を確認した。生成が認められない場合には、「0」とした。また、この鉄−アルミニウム合金の生成はアルミニウムの鋼材深部への拡散に起因することから、鉄−アルミニウム合金の生成が認められた試料はアルミニウムの鋼材への拡散「あり」とし、生成が認められない試料をアルミニウムの鋼材への拡散「なし」と判定した。
<実施例1>
常温(25℃)下で、1Lのビーカーに蒸留水160.00g、湿潤分散剤(商品名:DISPERBYK−192、BYK−Chemie社製)0.36gを入れ、ディスパーを用いて300rpmの速度で撹拌しながら繊維素誘導体(商品名:SNB−04T、信越化学工業社製)1.64gを加え、1000rpmで90分撹拌し、繊維素誘導体溶液を調製した。
別途、200mLのビーカーに蒸留水104.00g、前記湿潤分散剤0.24gを入れ、ディスパーを用い300rpmの速度で撹拌しながら膨潤性合成マイカ(商品名:ソマシフME−100、コープケミカル社製)4.56gを加え、700rpmで30分撹拌して膨潤性合成マイカ分散液を調製した。
なお、ここで、膨潤性合成マイカ(商品名:ソマシフME−100、コープケミカル社製)を、既述の日本ベントナイト工業会標準試験方法JBAS−104−77に従って測定したところ、膨潤力は33mL/2gであり、本発明に規定する膨潤性合成マイカであることを確認した。
さらに別途、200mLのビーカーに蒸留水110.60g、前記湿潤分散剤0.32gを入れ、ディスパーを用いて300rpmの速度で撹拌しながらシリカで被覆されたアルミニウムペースト(商品名:STAPA HYDROLAN701、ECKART社製、アルミニウム粉末成分60%)18.28gを加え、1000rpmで30分撹拌してアルミニウム粉末分散液を調製した。
常温(25℃)下で、前記繊維素誘導体溶液に、ディスパーを用いて1000rpmで撹拌しながら前記合成マイカ分散液、前記アルミニウム粉末分散液を順次加え、1000rpmで5分撹拌して鉄鋼用コーティング組成物(1)を得た。
前記スケール抑制効果の評価方法に従い、スケール抑制効果を評価した結果、鉄鋼用コーティング組成物(1)のスケール抑制効果は98%であった。
また、加工後の鋼板のEPMA画像を確認したところ、鋼板の表面に酸化鉄の層が形成され、その上に酸化鉄および酸化アルミニウムが僅かに存在することが観察された。しかし、鉄とアルミニウムから形成される鉄−アルミニウム合金の生成(鉄とアルミニウムとが同じ領域に存在する箇所)および、鋼板の内部(酸化鉄の層と母材との界面から10μmの深度の領域)に拡散して存在するアルミニウムのいずれも観察されなかった。
<実施例2〜4>
配合の組成を表1に記載した組成に変更する以外は、実施例1と同様にして、鉄鋼用コーティング組成物(2)〜(4)を得た。
鉄鋼用コーティング組成物(2)〜(4)について、前記評価方法に従って評価した。評価結果を下記表1に示す。
<実施例5>
実施例1で用いたシリカで被覆されたアルミニウムペースト(商品名:STAPA HYDROLAN701、ECKART社製、アルミニウム粉末成分60%)に代えてモリブデンで被覆されたアルミニウムペースト(商品名:WJBP5660、東洋アルミニウム社製、アルミニウム粉末成分60%)を等量用いた以外は、実施例1と同様にして、鉄鋼用コーティング組成物(5)を得た。
鉄鋼用コーティング組成物(5)について、実施例1と同様の評価を行った。試験例に記載の方法で鉄−アルミニウム合金の生成を評価した。評価結果を下記表1に示す。
<実施例6>
蒸留水113.86g、リン酸エステルで被覆されたアルミニウムペースト(商品名:260PSW−K、東洋アルミニウム社製、アルミニウム粉末成分73%)15.02gを用いてアルミニウム粉末分散液を調製し、実施例1で用いたシリカで被覆されたアルミニウムペーストの分散液に代えてこれを用いた以外は実施例1と同様にして、鉄鋼用コーティング組成物(6)を得た。
鉄鋼用コーティング組成物(6)について、実施例1と同様に評価した。評価結果を下記表1に示す。
<比較例1>
実施例1で用いた膨潤性合成マイカに代えて、非膨潤性合成マイカ(商品名:ミクロマイカMK−200、コープケミカル社製、日本ベントナイト工業会標準試験方法JBAS−104−77に従って測定した膨潤力:3ml/2g)を用いた以外は、実施例1と同様にして、鉄鋼用コーティング組成物(7)を得た。
鉄鋼用コーティング組成物(7)について、実施例1と同様の評価を行った。スケール抑制効果については、実施例と同等か、やや劣るレベルであったが、鋼板のEPMA画像を観察したところ、鉄47.4%、アルミニウム48.1%、酸素0.3%が含まれる幅約8μm、高さ約12μmの大きさの鉄―アルミニウム合金が鋼板表面に存在した。この鉄―アルミニウム合金はアルミニウムへ鉄成分が拡散して形成されたものであった。鉄―アルミニウム合金は、鋼板表面の幅100μmの範囲に2箇所存在した。
<比較例2>
常温(25℃)下で、1Lのビーカーに蒸留水160.00g、湿潤分散剤(商品名:DISPERBYK−192、BYK−Chemie社製)0.36gを入れ、ディスパーを用いて300rpmの速度で撹拌しながら繊維素誘導体(商品名:SNB−04T、信越化学工業社製)1.64gを加え、1000rpmで90分撹拌し、繊維素誘導体溶液を調製した。
別途、500mLのビーカーに蒸留水219.16g、前記湿潤分散剤0.56gを入れ、ディスパーを用いて300rpmの速度で撹拌しながらシリカで被覆されたアルミニウムペースト(商品名:STAPA HYDROLAN701、ECKART社製、アルミニウム粉末成分60%)18.28gを加え、1000rpmで30分撹拌してアルミニウム粉末分散液を調製した。
前記繊維素誘導体溶液に、ディスパーを用いて1000rpmで撹拌しながら前記アルミニウム粉末分散液を加え、1000rpmで5分撹拌して鉄鋼用コーティング組成物(8)を得た。
鉄鋼用コーティング組成物(8)について、実施例1と同様の評価を行った。スケール抑制効果については、実施例と同等か、やや劣るレベルであったが、鋼板のEPMA画像を観察したところ、鉄46.4%、アルミニウム48.2%、酸素0.8%が含まれる幅約6μm、高さ約8μmの大きさの鉄−アルミニウム合金が鋼板表面に存在することが確認された。この鉄−アルミニウム合金はアルミニウムへ鉄成分が拡散して形成されたものであった。鉄−アルミニウム合金は、鋼板表面の幅100μmの範囲に3箇所存在した。
<比較例3>
常温(25℃)下で、1Lのビーカーに変性エポキシ樹脂(商品名:アラキード9201N、荒川化学工業社製、樹脂成分40%)86.6g、エチレングリコールモノブチルエーテル21.9g、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート21.9gを入れ、ディスパーを用いて300rpmで30分撹拌し、樹脂溶液を調製した。
前記樹脂溶液に、ディスパーを用いて300rpmで撹拌しながら、アルミニウムペースト(商品名:SAP 270N、東洋アルミニウム社製、アルミニウム粉末成分65%)69.6gを加え、30分撹拌した。その後、エチレングリコールモノブチルエーテル200gを入れ、ディスパーを用いて300rpmで1時間撹拌して鉄鋼用コーティング組成物(9)を得た。
鉄鋼用コーティング組成物(9)について、実施例1と同様の評価を行った。スケール抑制効果については、実施例よりも劣るレベルであった。更に、実施例1と同様に鋼板のEPMA画像を観察したところ、鉄49.8%、アルミニウム49.4%、酸素0.7%が含まれる幅約8μm、深さ約10μmの大きさの鉄−アルミニウム合金が鋼板表面に存在することが確認された。この鉄−アルミニウム合金はアルミニウムが鋼板の内部にまで拡散して形成されたものであった。また、鉄−アルミニウム合金は、鋼板表面の幅100μmの範囲に5箇所存在した。
<参考例1>
参考例として、膨潤性合成マイカに代えて、天然マイカ(商品名:セリサイトFSN、三信鉱工社製:日本ベントナイト工業会標準試験方法JBAS−104−77に従って測定した膨潤力:7mL/2g)を用いた以外は、実施例1と同様にして、鉄鋼用コーティング組成物(10)を得た。
鉄鋼用コーティング組成物(10)について、実施例1と同様の評価を行った。スケール抑制効果については、実施例と同等か、やや劣るレベルであったが、鋼板のEPMA画像を観察したところ、鉄48.7%、アルミニウム32.6%、酸素2.3%が含まれる幅約3μm、高さ約5μmの大きさの鉄−アルミニウム合金が鋼板表面に存在することが確認された。この鉄−アルミニウム合金はアルミニウムへ鉄成分が拡散して形成されたものであった。鉄―アルミニウム合金は、鋼板表面の幅100μmの範囲に2箇所存在した。
Figure 2014152363
表1の結果より明らかなように、本発明の鉄鋼用コーティング組成物を用いた場合、鋼材の温間加工、熱間加工におけるスケール発生および鉄−アルミニウム合金の発生のいずれもが効果的に抑制されることが分かる。他方、膨潤性合成マイカを用いないか、または、非膨潤性合成マイカあるいは天然マイカを用いた鉄鋼用コーティング組成物では、鉄−アルミニウム合金の発生は抑制し得ないことが分かる。

Claims (4)

  1. 温間加工または熱間加工に供される鉄鋼部材に付与される鉄鋼用コーティング組成物であって、アルミニウム粉末と、膨潤性合成マイカと、バインダーと、溶剤と、を含有する鉄鋼用コーティング組成物。
  2. アルミニウム粉末が表面処理されたアルミニウム粉末であり、且つ、溶剤として水を含有する請求項1記載の鉄鋼用コーティング組成物。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の鉄鋼用コーティング組成物を付与した鉄鋼部材を温間加工または熱間加工してなる鉄鋼部品。
  4. 鉄鋼部材表面に、アルミニウム粉末と、膨潤性合成マイカと、バインダーと、溶剤と、を含有する鉄鋼用コーティング組成物を付与した後、該鉄鋼部材を温間加工または熱間加工する、鉄鋼表面における鉄−アルミニウム合金の生成抑制方法。
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