以下、画像解析装置、画像解析方法、画像解析プログラム、及び、MRI装置の実施形態について、添付図面に基づいて説明する。なお、各図において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態では一例として、上記課題を解決する画像解析装置が組み込まれたMRI装置10の実施形態を説明する。
図1は、第1の実施形態におけるMRI装置10の全体構成を示すブロック図である。ここでは一例として、MRI装置10の構成要素を寝台ユニット20、ガントリ30、制御装置40の3つに分けて説明する。
第1に、寝台ユニット20は、寝台21と、天板22と、寝台21内に配置される天板移動機構23とを有する。天板22の上面には、被検体Pが載置される。また、天板22内には、被検体PからのMR信号を検出する受信RFコイル24が配置される。さらに、天板22の上面には、装着型のRFコイル装置が接続される接続ポート25が複数配置される。図1の例では、被検体Pの頭部には頭部RFコイル装置100が装着され、頭部RFコイル装置100のコネクタ106(図2参照)が接続ポート25に接続される。
寝台21は、天板22を水平方向(装置座標系のZ軸方向)に移動可能に支持する。天板移動機構23は、天板22がガントリ30外に位置する場合に、寝台21の高さを調整することで、天板22の鉛直方向の位置を調整する。また、天板移動機構23は、天板22を水平方向に移動させることで天板22をガントリ30内に入れ、撮像後には天板22をガントリ30外に出す。
第2に、ガントリ30は、例えば円筒状に構成され、撮像室に設置される。ガントリ30は、静磁場磁石31と、シムコイルユニット32と、傾斜磁場コイルユニット33と、RFコイルユニット34とを有する。
静磁場磁石31は、例えば超伝導コイルであり、円筒状に構成される。静磁場磁石31は、後述の制御装置40の静磁場電源42から供給される電流により、撮像空間に静磁場を形成する。
撮像空間とは例えば、被検体Pが置かれて、静磁場が印加されるガントリ30内の空間を意味する。なお、静磁場電源42を設けずに、静磁場磁石31を永久磁石で構成してもよい。
シムコイルユニット32は、例えば円筒状に構成され、静磁場磁石31の内側において、静磁場磁石31と軸を同じにして配置される。
シムコイルユニット32は、後述の制御装置40のシムコイル電源44から供給される電流により、静磁場を均一化するオフセット磁場を形成する。
傾斜磁場コイルユニット33は、例えば円筒状に構成され、シムコイルユニット32の内側に配置される。傾斜磁場コイルユニット33は、X軸傾斜磁場コイル33xと、Y軸傾斜磁場コイル33yと、Z軸傾斜磁場コイル33zとを有する。
本明細書では、特に断りのない限り、X軸、Y軸、Z軸は装置座標系であるものとする。ここでは一例として、装置座標系のX軸、Y軸、Z軸を以下のように定義する。まず、鉛直方向をY軸方向とし、天板22は、その上面の法線方向がY軸方向となるように配置される。天板22の水平移動方向をZ軸方向とし、ガントリ30は、その軸方向がZ軸方向となるように配置される。X軸方向は、これらY軸方向、Z軸方向に直交する方向であり、図1の例では天板22の幅方向である。
X軸傾斜磁場コイル33xは、後述のX軸傾斜磁場電源46xから供給される電流に応じたX軸方向の傾斜磁場Gxを撮像領域に形成する。同様に、Y軸傾斜磁場コイル33yは、後述のY軸傾斜磁場電源46yから供給される電流に応じたY軸方向の傾斜磁場Gyを撮像領域に形成する。同様に、Z軸傾斜磁場コイル33zは、後述のZ軸傾斜磁場電源46zから供給される電流に応じたZ軸方向の傾斜磁場Gzを撮像領域に形成する。
そして、スライス選択方向傾斜磁場Gss、位相エンコード方向傾斜磁場Gpe、及び、読み出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場Groは、装置座標系の3軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzの合成により、任意の方向に設定可能である。
上記撮像領域は、例えば、1画像又は1セットの画像の生成に用いられるMR信号の収集範囲の少なくとも一部であって、画像となる領域である。撮像領域は例えば、撮像空間の一部として装置座標系で3次元的に規定される。例えば折り返しアーチファクトを防止するために、画像化される領域よりも広範囲でMR信号が収集される場合、撮像領域はMR信号の収集範囲の一部である。
一方、MR信号の収集範囲の全てが画像となり、MR信号の収集範囲と撮像領域とが合致する場合もある。また、上記「1セットの画像」は、例えばマルチスライス撮像などのように、1のパルスシーケンスで複数画像のMR信号が一括的に収集される場合の複数画像である。ここでは一例として、撮像領域は、厚さの薄い領域であればスライスと称し、ある程度の厚みのある領域であればスラブと称する。
RFコイルユニット34は、例えば円筒状に構成され、傾斜磁場コイルユニット33の内側に配置される。RFコイルユニット34は、例えば、RFパルスの送信及びMR信号の受信を兼用する全身用コイルや、RFパルスの送信のみを行う送信RFコイルを含む。
第3に、制御装置40は、静磁場電源42と、シムコイル電源44と、傾斜磁場電源46と、RF送信器48と、RF受信器50と、シーケンスコントローラ58と、演算装置(Operation Device)60と、画像解析装置65と、入力装置72と、表示装置74と、記憶装置76とを有する。
傾斜磁場電源46は、X軸傾斜磁場電源46xと、Y軸傾斜磁場電源46yと、Z軸傾斜磁場電源46zとを有する。X軸傾斜磁場電源46x、Y軸傾斜磁場電源46y、Z軸傾斜磁場電源46zは、傾斜磁場Gx、Gy、Gzを形成するための各電流を、X軸傾斜磁場コイル33x、Y軸傾斜磁場コイル33y、Z軸傾斜磁場コイル33zにそれぞれ供給する。
RF送信器48は、シーケンスコントローラ58から入力される制御情報に基づいて、核磁気共鳴を起こすラーモア周波数のRF電流パルスを生成し、これをRFコイルユニット34に送信する。このRF電流パルスに応じたRFパルスが、RFコイルユニット34から被検体Pに送信される。
RFコイルユニット34の全身用コイル、受信RFコイル24、頭部RFコイル装置100は、被検体P内の原子核スピンがRFパルスによって励起されることで発生したMR信号を検出し、検出されたMR信号は、RF受信器50に入力される。
RF受信器50は、受信したMR信号に所定の信号処理を施した後、A/D(analog to digital)変換を施すことで、デジタル化されたMR信号の複素データである生データを生成する。RF受信器50は、MR信号の生データを演算装置60(の画像再構成部62)に入力する。
シーケンスコントローラ58は、演算装置60の指令に従って、傾斜磁場電源46、RF送信器48及びRF受信器50の駆動に必要な制御情報を記憶する。ここでの制御情報とは、例えば、傾斜磁場電源46に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報である。
シーケンスコントローラ58は、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源46、RF送信器48及びRF受信器50を駆動させることで、傾斜磁場Gx、Gy、Gz及びRFパルスを発生させる。
演算装置60は、システム制御部61と、システムバスSBと、画像再構成部62と、画像データベース63と、画像処理部64とを有する。
システム制御部61は、本スキャンの撮像条件の設定、撮像動作及び撮像後の画像表示において、システムバスSB等の配線を介してMRI装置10全体のシステム制御を行う。
上記撮像条件とは例えば、どの種類のパルスシーケンスにより、どのような条件でRFパルス等を送信し、どのような条件で被検体PからMR信号を収集するかを意味する。撮像条件の例としては、撮像空間内の位置的情報としての撮像領域、繰り返し時間、スライス数、撮像部位、パラレルイメージング等のパルスシーケンスの種類などが挙げられる。
上記撮像部位とは、例えば、頭部、胸部などの被検体Pのどの部分を撮像領域として画像化するかを意味する。
上記「本スキャン」は、T1強調画像などの、目的とする診断画像の撮像のためのスキャンであって、位置決め画像用のMR信号収集のスキャンや、較正スキャンを含まないものとする。スキャンとは、MR信号の収集動作を指し、画像再構成を含まないものとする。
較正スキャンとは例えば、本スキャンの撮像条件の内の未確定のものや、画像再構成処理や画像再構成後の補正処理に用いられる条件やデータを決定するために、本スキャンとは別に行われるスキャンを指す。プレスキャンとは、較正スキャンの内、本スキャン前に行われるものを指し、本スキャンでのRFパルスの中心周波数を算出するシーケンスなどが挙げられる。
また、システム制御部61は、撮像条件の設定画面情報を表示装置74に表示させ、入力装置72からの指示情報に基づいて撮像条件を設定し、設定した撮像条件をシーケンスコントローラ58に入力する。また、システム制御部61は、撮像後には、生成された表示用画像データが示す画像を表示装置74に表示させる。
入力装置72は、撮像条件や画像処理条件を設定する機能をユーザに提供する。
画像再構成部62は、位相エンコードステップ数及び周波数エンコードステップ数に応じて、RF受信器50から入力されるMR信号の生データをk空間データとして配置及び保存する。k空間とは、周波数空間の意味である。
画像再構成部62は、k空間データに2次元フーリエ変換などを含む画像再構成処理を施すことで、被検体Pの画像データを生成する。
画像再構成部62は、生成した画像データを画像データベース63に保存する。
なお、MRIの画像データは、例えば、各々の画素が画素値を有することで構成される。画素値は、例えば、その画素が表示される際の輝度レベル(その画素に対応する被検体領域から検出されたMR信号の強度)を示す。スライスの場合、MRIの画像データは、縦横の画素数が例えば位相エンコードステップ数×周波数エンコードステップ数となる。
画像処理部64は、画像データベース63から画像データを取り込み、これに所定の画像処理を施し、画像処理後の画像データを表示用画像データとして記憶装置76に保存する。
記憶装置76は、上記の表示用画像データに対し、その表示用画像データの生成に用いた撮像条件や被検体Pの情報(患者情報)等を付帯情報として付属させて記憶する。
画像解析装置65は、被検体Pの脳の画像データ(以下、脳画像データという)を解析することで、血流低下領域を判定するものである。画像解析装置65は、画像記憶部66と、灌流マップ生成部67と、判定条件設定部68と、判定部69と、演算装置60と共通のシステムバスSBとを有する。
画像記憶部66は、連続した複数時相にそれぞれ対応する複数セットの脳画像データを記憶装置76から取得し、これら脳画像データを記憶する。ここでは一例として、1時相の脳画像データを1セットの脳画像データと定義し、1セットの脳画像データは、スライス画像でもスラブ画像でもよい。
灌流マップ生成部67は、上記複数セットの脳画像データに基づいて、脳内の灌流の状態を示す灌流マップ(Perfusion Map)を生成する。本実施形態での灌流マップは、CBF(Cerebral Brood Flow: 脳血流)マップと同義であるものとする。灌流マップは、例えば、脳内における血流の多い位置の画素ほど画素値が大きくなるように生成され、画素値に応じて例えば有彩色で色分けされたマップ画像である。
判定条件設定部68は、脳画像データに基づいて、脳画像データにより示される被検体の脳内の構造情報を抽出する。ここでの構造情報とは、例えば、脳実質領域の輪郭、及び、灰白質や白質などの脳内の組織毎の形状的分布である。
判定条件設定部68は、構造情報に基づいて、血流低下領域であるか否かを判定するための閾値マップを生成する。
判定部69は、閾値マップと灌流マップとの対比により、血流低下領域(血流異常領域)を判定する。
ここで、本実施形態での「血流低下領域」とは、当該領域の健常な場合の脳血流量(CBV: Cerebral Blood Volume)よりも、医学的に異常と認められる程度に脳血流量が低い領域である。健常な場合の脳血流量は、脳内の領域毎に異なる。例えば、灰白質の方が白質よりも健常な場合の脳血流量が多い。
なお、演算装置60、画像解析装置65、入力装置72、表示装置74、記憶装置76の5つを1つのコンピュータとして構成し、例えば制御室に設置してもよい。
また、上記説明では、MRI装置10の構成要素をガントリ30、寝台ユニット20、制御装置40の3つに分類したが、これは一解釈例にすぎない。例えば、天板移動機構23は、制御装置40の一部として捉えてもよい。
或いは、RF受信器50は、ガントリ30外ではなく、ガントリ30内に配置されてもよい。この場合、例えばRF受信器50に相当する電子回路基盤がガントリ30内に配設される。そして、受信RFコイル24等によって電磁波からアナログの電気信号に変換されたMR信号は、当該電子回路基盤内のプリアンプで増幅され、デジタル信号としてガントリ30外に出力され、画像再構成部62に入力される。ガントリ30外への出力に際しては、例えば光通信ケーブルを用いて光デジタル信号として送信すれば、外部ノイズの影響が軽減されるので望ましい。
図2は、装着型のRFコイル装置の一例として、頭部RFコイル装置100の構成の一例を示す模式的斜視図である。図2に示すように、頭部RFコイル装置100は、筺体102と、ケーブル104と、コネクタ106とを有する。筺体102内には、ループ状の要素コイル(coil element)108a、108b、108cが配設されている。
頭部RFコイル装置100は、MR信号の受信だけではなく、RFパルスの送信も可能な送受信兼用コイルとして構成され、この送受信は要素コイル108a、108b、108cにより行われる。要素コイル108a、108b、108cは、筺体102内の増幅回路等を含む公知の回路構成によって、個別にケーブル104内の別々の配線に電気的に接続されている(図示せず)。
コネクタ106がMRI装置10の接続ポート(図示せず)に接続されることで、要素コイル108a、108b、108cは、ケーブル104を介してRF送信器48及びRF受信器50に接続される。
なお、頭部RFコイル装置100は、制御回路(図示せず)と、頭部RFコイル装置100の識別情報を記憶した記憶素子(図示せず)とを筺体102内に有する。コネクタ106がMRI装置10の接続ポート25に接続された場合、頭部RFコイル装置100の識別情報は、この制御回路から、MRI装置10内の配線を介してシステム制御部61に入力される。
また、上記説明では、頭部RFコイル装置100がMRI装置10の一部であるとしたが、これは一解釈にすぎない。頭部RFコイル装置100は、MRI装置10とは別個の独立した構成として捉えてもよい。
図3は、脳実質領域の抽出方法の一例を示す患者座標系のアキシャル断面における頭部の断面模式図である。上記患者座標系は、X軸、Y軸、Z軸が例えば以下のように定義される座標系である。即ち、被検体Pの左右方向がX軸方向、腹側を前、背中側を後ろとした被検体Pの前後方向がY軸方向、およそ背骨延在方向に頭を上、足を下とした被検体Pの上下方向がZ軸方向である。このとき、患者座標系のX−Y平面が上記アキシャル断面である。
判定条件設定部68は、脳画像データに例えばメディアンフィルタや収縮処理によるノイズ除去処理を施し、ノイズ除去後の画像データに閾値処理を施すことで、空気の部分と被検体部分(この例では頭部)とを抽出したマスク画像を取得する。
一般に、MR画像における空気や骨の領域は、水を殆ど含まないゆえに水素原子が少ないから、低信号領域として(MR画像としては黒く)写るため、隣接する他の組織の領域とは識別できる。従って、頭表面の境界線抽出では、画像データに閾値処理を施し、画像周辺の低信号部分(黒い領域)と連結している部分を空気領域とみなし、微分フィルタを用いたエッジ抽出処理をすることで、頭皮の境界線情報を取得できる。
なお、図3の断面では表れないが、目や顎などの領域の境界線抽出は、例えば、頭蓋骨の形状、大きさ等を含む標準的な人体の骨格モデルに基づいて撮像画像とのテンプレートマッチングを行う、といった従来技術の画像処理によって可能である。
以上のような画像処理によって、頭部の輪郭の頭蓋骨領域と、その外側および内側の脂肪領域とを抽出できる。図3において、環状の黒く塗り潰した領域は、上記画像処理によって抽出した頭部の骨領域130(頭蓋骨)である。骨領域130の内側に隣接する環状の白い領域は、同様にして抽出した脂肪領域132であり、骨領域130の外側に隣接する環状の白い領域も、脂肪領域134である。脂肪領域132の内側の斜線領域が脳実質領域136である。また、ここでは一例として、脳実質領域の外縁は灰白質の領域であるものとする。
なお、画像処理前の脳画像データでは、脳実質領域の外縁の灰白質が隣接領域よりも高輝度で描出されるので、閾値処理による2値化によって脳実質領域を抽出してもよい。
また、脳実質領域の抽出は、複数のスライス又は複数のスラブの脳画像データの内の代表的なものを用いて実行してもよいし、1のスラブの脳画像データを用いて実行してもよい。ここでは一例として、頭部全体に亘ってボリュームデータとして撮像して得られた脳画像データにより、脳実質領域は3次元的に抽出されるものとする。
以下、各組織領域の抽出や、灌流マップについて、説明の簡単化のため2次元の画像図を用いて説明するが、各組織領域の抽出も3次元的に抽出され、閾値マップも灌流マップも3次元的に生成されるものとする。但し、表示に際しては、表示装置74は、任意の断面において2次元的に表示できる。
図4は、脳実質領域内における各組織領域の抽出方法の一例を示す頭部の部分的な断面模式図である。図4において、斜線領域は、灰白質領域140であり、その内側が白質領域142である。ここでは一例として、灰白質の内側は白質領域であるものとする。
ここで、灌流画像の場合、灰白質と白質の分離が容易ではない。ここでは一例として、灌流画像の場合、判定条件設定部68は、脳実質領域の表面から例えば4mmまでを灰白質領域140とし、それより深い領域を白質領域142として画一的に処理する。
但し、灰白質と白質との分離が容易なMRI画像が別シーケンスで既に撮像されている場合、判定条件設定部68は、当該MRI画像を用いて灰白質領域140と白質領域142とを抽出してもよい。灰白質と白質の分離がし易いMRI画像として、例えばプロトン密度強調画像の場合、判定条件設定部68は、画像上の輝度差(プロトン密度差)によって閾値処理することで、両者の境界を判定できる。
判定条件設定部68は、上記のようにして、脳画像データにより示される構造情報(組織毎の輪郭)を抽出する。
図5は、脳実質領域外、灰白質、白質の領域毎に設定される脳血流量の基準正常値の一例を示す表である。ここでは一例として、入力装置72を介して、脳実質領域外、灰白質、白質の領域毎に脳血流量の基準正常値がユーザの入力により設定される。
脳血流量(CBV)の基準正常値の単位は、例えば、各画素における1分間当たりの血流量(ml)を、一定の基準重量(100グラム)で割ったものである。但し、基準正常値の単位は、脳血流量(CBV)ではなく、脳血流(CBF:Cerebral Blood Flow)などの他の単位で換算してもよい。
健常な場合、灰白質の方が白質よりも血流量が多く、脳実質領域の周囲(脳実質領域外)の血流量は、脳実質領域内よりもかなり少ない。
従って、判定条件設定部68は、脳実質領域外よりも多い血流量を示す基準正常値を白質に設定すると共に、白質よりも多い血流量を示す基準正常値を灰白質に設定する。
このため、ユーザの入力が灰白質、白質、脳実質領域外、の順に血流量が多くなっている場合のみ、判定条件設定部68は、ユーザの入力通りに基準正常値を設定する。
ユーザの入力による血流量が灰白質、白質、脳実質領域外、の順に多くなっていない場合、判定条件設定部68は、表示装置74にエラー表示をさせる。
このように基準正常値が入力設定される構成であるので、ユーザは、危険度の高い領域に絞った判定をするために、意図的に高く又は低くした値を基準正常値として入力できる。
図6は、暫定閾値マップの生成方法の一例を示す模式図である。判定条件設定部68は、脳実質領域外、灰白質、白質の脳血流量の各基準正常値に基づいて、暫定閾値マップを生成する。暫定閾値マップは、前述の閾値マップの生成元となるマップである。
図6の上段において、判定条件設定部68は、脳画像データから抽出された構造情報に基づいて、脳画像データの各画素を脳実質領域外、灰白質140、白質142の3つのいずれか1つに分類する。なお、図6では煩雑化を避けるため、9×9の少ない画素数で脳画像データを示している。
次に、判定条件設定部68は、図6の下段に示すように、脳実質領域外、灰白質140、白質142の各画素に対して、図5で説明した各基準正常値を閾値(画素値又はマトリクス値)として割り当てる。このようにして各画素に3種類のいずれかの閾値が割り当てられたものが暫定閾値マップである。
一般に健常時の灰白質の血流量はほぼ均一であり、健常時の白質の血流量もほぼ均一である。従って、頭部の組織を上記3種類に分けて閾値を設定するだけでも、血流低下領域を十分正確に判定できる。
ここで、灌流解析に際しては、S/N比(Signal to Noise Ratio)の改善等のため、灌流マップの生成に用いられる脳画像データ、即ち、灌流の解析元の脳画像データに対して、リサンプリングが施される場合がある。ここでのリサンプリングとは、画像平滑化や、解像度縮小(画素数の縮小)などである。
図7は、灌流の解析元の脳画像データに対するリサンプリングの一例を示す模式図である。図7の上側が灌流の解析元の画像データに対応し、図7の下側がリサンプリング後の画像データに対応する。ここでは説明の簡単化のため、解析元の画像データの画素数を12×12とし、解像度縮小後の画素数をその1/4としている。
図7の上側において太枠内の左下がりの斜線で示す4画素は、位置的には、図7の下側(リサンプリング後)の左下がりの斜線で示す1画素に対応する。
図7の下側で左下がりの斜線で示す1画素の画素値は、例えば、図7上側の点線枠で囲われた36画素の値に基づいて算出される。
算出方法としては、例えば、図7の上側の太枠内の4画素の重みを最大とし、これら4画素に隣接する10画素の重みを下げ、点線枠の縁側の20画素の重みを最小として重み付け加算すればよい。
このように、画像平滑化や解像度縮小などのリサンプリングにより、灌流解析の結果である灌流マップの各画素の画素値(その画素の脳血流量を示す)は、周辺画素の画素値の影響を受ける。
そこで本実施形態では、判定条件設定部68は、灌流の解析元の脳画像データと同サイズの画素数(要素数)で暫定閾値マップを生成後、灌流マップ生成時のリサンプリングと同じリサンプリングを暫定閾値マップに施すことで、閾値マップを生成する。理由は以下である。
第1に、灌流マップと閾値マップとで縦横及び奥行きの画素数を揃える方が、両者を対比する閾値処理を実行し易いからである。
第2に、灌流の解析元の脳画像データに平滑化処理が施された場合、閾値マップに対しても同じ平滑化処理を施すことで両者の生成条件を近づける方が、血流低下領域をより正確に判定できると考えられるからである。即ち、灌流マップと閾値マップとの生成条件を揃えることで、灌流マップの生成過程で生じる周辺画素の影響を閾値マップ上で再現すれば、血流低下領域をより正確に判定できると考えられる。
従って、灌流マップの生成時のリサンプリング処理として、灌流マップ生成部67が解像度縮小処理を実行した場合、判定条件設定部68は、同じ解像度縮小処理を暫定閾値マップに施す。また、灌流マップの生成時のリサンプリング処理として、灌流マップ生成部67が平滑化処理を実行した場合、判定条件設定部68は、同じ平滑化処理を暫定閾値マップに施す。
なお、解析元の脳画像データに対してリサンプリング処理が施されずに灌流マップが生成される場合、判定条件設定部68は、暫定閾値マップをそのまま閾値マップとすることができる。
図8は、上記リサンプリングの影響を加味する場合と、加味しない場合とにおける、脳血流量の基準正常値の一例を示す模式図である。図8の上段は、各組織領域が抽出された脳画像の一例である。図8の上段において、画素PAは、脳実質領域外の一画素であり、画素PBは、白質内の一画素である。
図8の中段及び下段は、図8の上段の画素PAから画素PBまでの直線上の各位置の脳血流量の基準正常値の一例を太線で示すグラフである。図8の中段及び下段において、横軸は位置を示し、縦軸は脳血流量の基準正常値を示す。図8の中段は、リサンプリングの影響を加味しない場合(実際の脳血流量)に対応し、図8の下段は、リサンプリングの影響を加味する場合(灌流解析結果の脳血流量)に対応する。
図8の中段は、各位置が組織的に何であるかに基づいて算出される各位置の脳血流量の基準正常値であり、暫定閾値マップと同様の分布である。即ち、図8の中段は、各画素が脳実質領域外、灰白質、白質のどれであるかに応じて、階段状の分布となっている。
図8の下段は、図8の中段の分布に上記リサンプリング処理を施した分布であり、閾値マップと同様の分布である。即ち、図8の下段は、脳実質領域外、灰白質、白質の各領域の境界において、脳血流量の変化が滑らかとなっている。
図9は、上述した算出方法により生成される閾値マップの一例を示す模式図である。図9では一例として、脳血流量の基準正常値の閾値が低い画素ほど黒く、閾値が高い画素ほど白く示している。
なお、判定条件設定部68は、例えば有彩色を割り当てて、閾値マップを表示装置74にカラー表示させてもよい。例えば、閾値が高い画素から順に、赤、黄、緑、青、紫、黒、の順に有彩色を割り当てることができる。
図10は、灌流マップ生成部67により生成される灌流マップの一例を示す模式図である。図10では、血流量の少ない画素ほど黒く、血流量が多い画素ほど白く示す。実際には、灌流マップ生成部67は、例えば有彩色を割り当てて、灌流マップを表示装置74にカラー表示させてもよい。例えば、血流量が多い画素から順に、赤、黄、緑、青、紫、黒、の順に有彩色を割り当てることができる。
上記灌流マップの生成方法については、従来技術と同様でよい。造影剤を用いたMRIで灌流マップの生成する方法は、例えば特許文献1に記載されている。造影剤を用いないMRIで灌流マップの生成する場合、例えば、t−SLIP(Time-Spatial Labeling Inversion Pulse)法などのASL(Arterial Spin Labeling)法を用いることができる。即ち、血液をラベリングしつつ、時系列的に画像データを取得後、例えば各時相間の画像データ同士で差分処理等を施すことで、各画素の脳血流量を算出できる。
上記t−SLIP法は、撮像断面に流入する血液をラベリングすることで、ラベリングされた血液を選択的に描出又は抑制するためのASLパルスの印加を伴うパルスシーケンスである。t−SLIP法により、反転時間(TI:inversion time)後に撮像断面に到達した血液のみの信号強度を選択的に強調又は抑制できる。なお、t−SLIP法におけるパルスは、必要に応じてECG(electrocardiogram)信号のR波から一定の遅延時間経過後に印加され、心電同期下において撮像が行われる。
t−SLIP法のパルスシーケンスは、領域選択インバージョンパルスのみで構成される場合と、領域選択インバージョンパルス及び領域非選択インバージョンパルスの双方で構成される場合とがある。領域非選択インバージョンパルスは、オン/オフの切換が可能である。領域選択インバージョンパルスは、撮像断面とは独立に任意に設定できる。この領域選択インバージョンパルスで撮像領域に流入する血液をラベリングすると、反転時間の経過後に血液が到達した部分の信号強度は、高くなる。なお、領域非選択インバージョンパルスをオフにすると、反転時間の経過後に血液が到達した部分の信号強度は、低くなる。このため、血液の移動方向や距離を把握できる。
図11は、判定部69による血流低下領域の暫定的な判定結果の一例を示す模式図である。ここでは一例として、判定部69は、灌流マップの各画素の画素値と、灌流マップと閾値マップの各画素の値(閾値)とを対比し、閾値マップ内の対応する画素の閾値よりも画素値が低い画素を、血流低下領域として判定する。図11の例では、図10の灌流マップと対比して血流低下領域として判定された領域が、斜線領域として灌流マップに重畳表示されている。
このように血流低下領域が識別表示された灌流マップを、以下の説明では「補正灌流マップ」と称する。補正灌流マップにおける血流低下領域の識別方法については、図11のように枠内の斜線領域に限定されるものではなく、例えば血流低下領域のみを周囲とは異なる有彩色で表示してもよい。
図12は、判定部69による血流低下領域の判定結果の補正処理の一例を示す模式図である。図12の上段は、血流低下領域200の暫定的な判定結果であり、補正処理の前の状態である。図12の上段において、斜線領域は、上述のように、灌流マップと、閾値マップとの対比による閾値処理で算出された血流低下領域200である。
図12の上段のように、血流低下領域に囲まれた正常領域202(血流低下領域とは判定されなかった領域)が存在する場合、判定部69は、当該正常領域202を血流低下領域200として補正する。
図12の下段は、補正後の血流低下領域200を斜線領域で示す。周囲が血流低下領域で囲まれた領域は、閾値処理では血流低下領域と判定されなかったとしても、当然に血液が行き渡りにくくなるから、血流低下領域として扱うのが妥当だからである。
図13は、判定部69による血流低下領域の判定結果の補正処理の別の例を示す模式図である。図13の上段は、血流低下領域の暫定的な判定結果であり、補正処理の前の状態である。図13の上段において、点線で囲われた各領域は、上述のように灌流マップと閾値マップとの対比で算出された6つの血流低下領域200a〜200fであり、この場合は6領域に離散している。
例えば、灌流マップ生成部67による灌流の解析結果が閾値近傍で推移している場合、血流低下領域が離散的に出現する可能性がある。その場合、閾値処理で血流低下領域として判定された複数領域の間も、実際には血流低下領域である可能性がある。
そこで判定部69は、血流低下領域が複数領域に離散している場合、図13の中段に示すように、各血流低下領域200a〜200fを暫定的に膨張させる。膨張の程度は、例えば、装置座標系のX軸、Y軸、Z軸の各方向に5%ずつとすることができる。但し、この数値は一例にすぎず、上記3軸方向に10%ずつ膨張させてもよいし、3%ずつ膨張させてもよい。或いは、入力装置72を介して、補正処理で暫定的に膨張させる割合をユーザが入力設定する構成としてもよい。
図13の中段に示すように、補正処理で暫定的に膨張された複数の血流低下領域200a、200b、200e、200fが互いに連結した場合、それら連結した複数の血流低下領域200a、200b、200e、200fは、1の血流低下領域200gに合成される。
具体的には、まず、各血流低下領域200a〜200fは、膨張前の状態に戻される。そして、膨張処理で連結した血流低下領域200a、200b、200e、200f間の正常領域が血流低下領域に変更される。さらに、連結した血流低下領域の輪郭が例えばスムージング処理によって、体積が減らないように(体積が若干増えるように)円滑化される。
図13の下段は、図13の中段の膨張処理で連結した4つの血流低下領域200a、200b、200e、200fが1の血流低下領域200gに補正された状態を示す。図13の下段において、血流低下領域200g内の斜線領域は、上記補正処理によって、正常領域から血流低下領域に変更された領域である。
(本実施形態の動作説明)
図14は、本実施形態におけるMRI装置10の動作の流れの一例を示すフローチャートである。以下、前述した各図を適宜参照しながら、図14に示すステップ番号に従って、MRI装置10の動作を説明する。
[ステップS1]システム制御部61(図1参照)は、入力装置72を介してMRI装置10に対して入力された撮像条件に基づいて、本スキャンの撮像条件の一部を設定する。ここでは一例として、t−SLIP法などによる灌流マップの生成用のダイナミック撮像のパルスシーケンスが本スキャンとして設定されるものとする。この後、ステップS2に進む。
[ステップS2]システム制御部61は、MRI装置10の各部を制御してプレスキャンを実行させる。これにより、本スキャンのRFパルスの中心周波数の補正値などの未確定の撮像条件が設定される。この後、ステップS3に進む。
[ステップS3]設定された撮像条件に従って本スキャンのデータ収集が行われる。具体的には、天板22に被検体Pが載置され、被検体Pの頭部に頭部RFコイル装置100が装着される。また、静磁場電源42により励磁された静磁場磁石31によって撮像空間に静磁場が形成される。また、シムコイル電源44からシムコイルユニット32に電流が供給されて、撮像空間に形成された静磁場が均一化される。
そして、入力装置72からシステム制御部61に撮像開始指示が入力されると、システム制御部61は、上記灌流マップの生成用のパルスシーケンスを含む撮像条件をシーケンスコントローラ58に入力する。
シーケンスコントローラ58は、入力されたパルスシーケンスに従って傾斜磁場電源46、RF送信器48及びRF受信器50を駆動させることで、被検体Pの撮像部位が含まれる撮像領域に傾斜磁場を形成させる。また、シーケンスコントローラ58は、RFコイルユニット34、頭部RFコイル装置100(図2参照)の少なくとも一方からRFパルスを発生させる。
このため、被検体P内の核磁気共鳴により生じたMR信号が頭部RFコイル装置100及び受信RFコイル24により検出されて、RF受信器50に入力される。RF受信器50は、MR信号に前述の処理を施すことでMR信号の生データを生成し、これら生データを画像再構成部62に入力する。
画像再構成部62は、MR信号の生データをk空間データとして配置及び保存する。このようにして、ダイナミック撮像の各時相のMR信号の生データが収集され、k空間データとして保存される。この後、ステップS4に進む。
[ステップS4]画像再構成部62は、k空間データにフーリエ変換を含む画像再構成処理を施すことで、ダイナミック撮像の各時相の脳画像データ(ボリュームデータ)を再構成する。画像再構成部62は、再構成した脳画像データを画像データベース63に保存する。
ここで、次のステップS5、S6に進む前に、例えばユーザによる撮像画像の確認のために、上記本スキャンの撮像画像の表示処理が実行されてもよい。具体的には、画像処理部64は、画像データベース63から脳画像データを取り込み、これに所定の画像処理を施すことで2次元の表示用脳画像データを生成し、この表示用脳画像データを記憶装置76に保存する。システム制御部61は、上記表示用脳画像データを表示装置74に転送し、表示装置74に撮像画像を表示させる。
ステップS4の後、MRI装置10の画像解析装置65内で画像解析処理が実行されるため、ステップS5、S6に進む。ここでは一例として、ステップS5の灌流マップ生成処理と、ステップS6〜S9の閾値マップ生成処理とは、画像解析装置65内の各構成要素により、並行して実行されるものとする。
即ち、ステップS5の灌流マップ生成処理と、ステップS6〜S9の閾値マップ生成処理の双方が終了後、画像解析装置65は、ステップS10に処理を移行する。
[ステップS5]画像記憶部66は、ステップS4で生成されたダイナミック撮像の各時相の脳画像データを画像データベース63から取得し、保存する(この取得データは、ステップS6〜S9の処理でも用いられる)。
灌流マップ生成部67は、画像記憶部66から各時相の脳画像データを取得し、図10で説明したように各時相の脳画像データに基づいて灌流解析を施すことで灌流マップを生成し、灌流マップのデータを保存する。この灌流解析に際して、前述のリサンプリング処理が実行される場合がある。
ステップS6〜S9の処理も終了している場合、この後、ステップS10に進む。
[ステップS6]判定条件設定部68は、画像記憶部66から各時相の脳画像データを取得し、取得した脳画像データを用いて、脳実質領域を抽出する。この抽出方法は、図3で説明済である。この後、ステップS7に進む。
[ステップS7]判定条件設定部68は、脳実質領域内における灰白質領域140、白質領域142などの各組織領域を抽出する。この抽出方法は、図4で説明済みである。この後、ステップS8に進む。
[ステップS8]入力装置72を介して、脳実質領域外、灰白質、白質の領域毎に脳血流量の基準正常値がユーザにより入力設定される(図5参照)。
なお、以下の第1〜第4の変形例のように、ユーザの入力項目を減らし、操作負担を軽減してもよい。特に、所定時間を経過しても入力がない場合、判定条件設定部68は、以下の第3の変形例のように基準正常値を自動設定する。
第1に、脳実質領域外の基準正常値については、0に固定し、入力されない構成としてもよい。即ち、灰白質、白質の基準正常値のみが入力装置72を介して判定条件設定部68に対して入力設定される構成としてもよい。
脳梗塞の異常領域の検出を目的とする場合、脳実質領域外が後述の閾値処理で異常領域として抽出されない方が、紛れが少ない。そのためには、脳実質領域外の脳血流量の基準正常値を最低値(例えば0)とすることが好都合である。
第2に、脳実質領域外の基準正常値を0、灰白質の基準正常値を1.0にそれぞれ固定することで、基準正常値を正規化してもよい。この場合、ユーザは、白質の基準正常値のみを入力装置72により入力設定すればよい。そして、判定条件設定部68及び入力装置72は、前述同様の理由から、白質の基準正常値として、0より大きく1より小さい値のみを受け付ける。
第3に、脳画像データに付属する被検体Pの患者情報を判定条件設定部68が取得し、判定条件設定部68が脳実質領域外、灰白質、白質の各領域の脳血流量の基準正常値を自動設定してもよい。患者情報については、判定条件設定部68は、入力装置72やシステム制御部61から取得してもよい。
この場合、医学上の統計的なデータに基づいて、性別、体重、身長、年齢などの患者情報毎に灰白質、白質、脳実質領域外の脳血流量の各基準正常値のテーブルデータを作成しておく。そして、MRI装置10の据え付け調整時などに、上記テーブルデータを予め判定条件設定部68に入力及び記憶させておけばよい。この場合、ユーザは、各領域の基準正常値を入力不要である。
第4に、上記テーブルデータに基づく各基準正常値を判定条件設定部68が表示装置74に表示させ、ユーザが入力装置72に許可入力をした場合に、判定条件設定部68が各基準正常値を自動表示した値に設定してもよい。許可入力がされない場合、ユーザは、上記のように、任意の基準正常値を入力装置72から入力設定できる。
そして、判定条件設定部68は、上記基準正常値に基づいて、暫定閾値マップを生成する。暫定閾値マップの生成方法については、図6で説明済みである。この後、ステップS9に進む。
[ステップS9]判定条件設定部68は、ステップS8で生成した暫定閾値マップに対して、ステップS5において灌流マップに施されたリサンプリング処理と同じリサンプリング処理を施すことで、閾値マップを算出する。これについては、図7、図8で説明済みである。これにより、閾値マップは、灌流マップと縦横及び奥行きの画素数が同じになり、灌流マップと同条件のリサンプリング処理が施されたマップとなる。
ステップS5の処理も終了している場合、この後、ステップS10に進む。
[ステップS10]判定部69は、閾値マップと、灌流マップとを対比することで、血流低下領域を暫定的に判定する。例えば、判定部69は、灌流マップの各画素に対して、閾値マップ内の対応する画素の閾値よりも画素値が低いか否かをそれぞれ判定する。灌流マップにおいて、閾値よりも画素値が低い画素が血流低下領域として暫定的に判定される(図11参照)。
但し、判定方法は、別のアルゴリズムでもよい。例えば、脳実質領域外のように閾値マップ内で閾値0となっている画素については、判定部69は、正常領域として一律的に判定する。一方、閾値マップ内で閾値が0より大きい画素については、判定部69は、灌流マップの同位置の画素の画素値を閾値で割った値に基づいて暫定的に判定する。判定部69は、灌流マップの画素値を閾値で割った値が所定値(例えば0.7)より大きい場合、正常領域として暫定的に判定し、そうではない場合、血流低下領域として暫定的に判定する。この後、ステップS11に進む。
[ステップS11]判定部69は、血流低下領域の暫定的な判定結果を補正する。例えば血流低下領域に囲まれた正常領域202が存在する場合、判定部69は、当該正常領域202を血流低下領域200として補正する(図12参照)。
また、例えば血流低下領域が複数領域に離散している場合、判定部69は、前述のように、所定割合での膨張処理を行うことで、連結した複数の血流低下領域間の正常領域を血流低下領域に変更する。さらに判定部69は、連結した血流低下領域の輪郭を例えばスムージング処理により、体積が減らないように(体積が若干増えるように)円滑化する(図13参照)。
ここでは一例として、血流低下領域に囲まれた正常領域が存在せず、血流低下領域が複数領域に離散していない場合、補正は行われず、ステップS10での血流低下領域の暫定的な判定結果が最終的な判定結果になるものとする。そして、判定部69は、例えば図11のように最終的な血流低下領域が識別された補正灌流マップを生成する。
この後、ステップS12に進む。
[ステップS12]判定部69は、補正後の判定結果のデータ、即ち、最終的な補正灌流マップをシステム制御部61に入力する。システム制御部61は、入力された判定結果のデータを表示装置74に入力し、血流低下領域の判定結果を補正灌流マップとして表示させる。
以上が本実施形態のMRI装置10の動作説明である。
(本実施形態の効果)
特許文献1の従来技術では、健常側との対比によって異常領域を検出している。しかし、この従来技術では、健常領域を正しく抽出できないと、異常領域を誤検出するおそれがある。
また、脳全体に亘って画一的な閾値を用いることで画素毎或いは小領域毎に血流低下領域であるか否かを判定しても、正確に判定できない。灰白質や白質などの組織毎に正常な脳血流量が異なるからである。
そこで本実施形態では、判定条件設定部68は、まず、画像データから脳実質領域を抽出し、さらに灰白質、白質等の各組織領域の輪郭を抽出する(図3、図4、ステップS6、S7)。次に、判定条件設定部68は、各画素を組織的に3つの領域に分類後、組織領域毎に設定される脳血流量の基準正常値(図5参照)に基づいて、暫定閾値マップを生成する。
暫定閾値マップは、被検体毎に異なる脳の各組織領域の輪郭に応じて、組織の違いによる正常血流量の違いが反映されるので、脳血流量の判定条件として信頼性が高いものとなる。判定部69は、このような暫定閾値マップを生成元とする閾値マップと、灌流マップとの対比によって血流低下領域を判定するので、血流低下領域を従来よりも正確に判定できる。
また、判定条件設定部68は、灌流マップの生成過程で施されたリサンプリング処理と同じリサンプリング処理を暫定閾値マップに施すことで、閾値マップを生成する(ステップS9)。このように、平滑化処理の有無や画素数等の生成条件が灌流マップと同条件にされた閾値マップと、灌流マップとの対比によって血流低下領域が判定されるので、判定精度は向上する。
さらに、判定部69は、暫定的に判定された血流低下領域が複数領域に離散している場合や、暫定的に判定された血流低下領域が正常領域を包含する場合、補正処理を実行する(図12、図13、ステップS11)。これにより、判定精度はさらに向上する。
以上説明した実施形態によれば、画像解析技術において、脳梗塞の範囲を従来よりもさらに正確に判定できる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、灌流マップ生成用の画像データに基づく血流低下領域の判定及び表示が、各組織領域に対する基準正常値の入力設定を除いてMRI装置10により全自動で進められる例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。
血流低下領域の判定までのプロセスにおいて、例えば、距離マップや閾値マップなどの途中経過が表示装置74に表示され、ユーザの確認入力又は補正指示の入力を受け付ける構成としてもよい。第2の実施形態では一例として、閾値マップが表示装置74に表示され、閾値マップに対するユーザの確認入力又は補正指示が入力される。補正指示が入力された場合には、画像解析装置65により閾値マップが補正される。その他の構成は第1の実施形態と同様であるので、以下、第1の実施形態との違いのみを説明する。
図15は、閾値マップの補正処理の一例を示す模式的説明図である。図15の上段は、補正処理前の閾値マップの一例であり、図15の下段は、補正処理後の閾値マップの一例である。
図15の上段において、脳画像の中心より左下の太線で囲われた領域が、ユーザにより指定された領域である。この指定領域は、隣接画素間での濃淡の差が大きく、隣接画素間で閾値の増減が激しくなっている。第2の実施形態では一例として、判定条件設定部68は、ユーザにより指定された領域に対して閾値の平滑化を実行する。
図15の下段において、脳の中心より左下の太線で囲われた領域は、上段と同じ位置であるが、判定条件設定部68により平滑化されている。即ち、図15の下段において、ユーザの指定領域は、隣接画素間での濃淡の差が緩やかになり、隣接画素間で閾値の増減が緩やかに補正されている。
なお、判定条件設定部68が自動的に実行する平滑化処理は、補正処理の一例に過ぎない。例えば、入力装置72を介して、ユーザが指定した領域の全画素の閾値をユーザが入力した均一な値にしてもよい。
図16は、図15の平滑化処理の具体的方法の一例を示す模式的説明図である。図16の上段、中段、下段において、各横軸は1次元の座標位置を示し、各縦軸は、各座標位置に該当する画素の閾値を示す。図16の上段、中段、下段において、縦の2本の一点鎖線で挟まれた範囲は、ユーザにより指定された補正領域である。
図16の上段は平滑化前の状態を示し、図16の中段は平滑化の途中を示し、図16の下段は平滑化後の状態を示す。図16の上段において、一点鎖線で挟まれた補正領域では、隣接画素間の閾値の増減が激しくなっている。
図16の中段において、当該補正領域に平滑化処理が施され、隣接画素間の閾値の増減が緩やかになる。しかし、単なる平滑化処理を施したままの状態では、補正領域の一端側及び他端側において、隣接画素との閾値が大きく離れ、不連続的な閾値分布となってしまう。
そこで、判定条件設定部68は、補正領域の境界における閾値変化の不連続部分を連続的に補正する。例えば、判定条件設定部68は、平滑化処理を施しただけの補正領域の全画素の閾値(図16の中段の状態)を、所定レベルだけシフトさせる。図16の下段の例では、補正領域の全画素の閾値を所定レベルだけ下げることで、補正領域の境界における閾値変化が連続的に補正されている。
なお、図16は、表示装置74に表示される2次元閾値マップの縦方向又は横方向に、1次元で1ラインの平滑化処理を行う場合の説明である。しかし、閾値マップは実際には3次元であるので、ここでは一例として、判定条件設定部68は、平滑化処理を3次元的に実行する。
具体的には、判定条件設定部68は、例えば、X軸方向の複数の画素ラインに対して、Y座標値を1つずつ繰り上げて図16の平滑化処理を行うことで、図15の下段の閾値マップのように2次元的に平滑化処理を実行する。さらに、判定条件設定部68は、ユーザにより補正領域が指定された閾値マップの一スライス(表示されたスライス)を中心として、Z軸方向に所定の厚さのスラブに対して、同様にZ軸方向に平滑化処理を実行する。ここでの所定の厚さとは、例えば、ユーザが2次元的に指定した補正領域の最短幅又は最大幅とすることができる。これにより、判定条件設定部68は、3次元的に平滑化処理を実行できる。
図17は、第2の実施形態におけるMRI装置10の動作の流れの一例を示すフローチャートである。以下、前述した各図を適宜参照しながら、図17に示すステップ番号に従って、MRI装置10の動作を説明する。
[ステップS21〜S29]第1の実施形態の図14のステップS1〜S9の各処理とそれぞれ同様である。ステップS25における灌流マップの生成と、ステップS29の処理とが終了後、ステップS30に進む。
[ステップS30]判定条件設定部68は、閾値マップのデータを表示装置74に入力し、表示装置74に閾値マップを表示させる(図15の上段参照)。この後、ステップS31に進む。
[ステップS31]判定条件設定部68は、入力装置72に対してユーザにより閾値マップの補正指示が入力されたか否かを判定する。補正指示が入力された場合、ステップS32に進み、補正指示が入力されなかった場合、閾値マップの補正は実行されずにステップS33に進む。
[ステップS32]判定条件設定部68は、図16で説明したように、閾値マップにおいてユーザが指定した領域に平滑化処理を施す。この後、判定条件設定部68は、平滑化後の閾値マップのデータを表示装置74に入力し、表示装置74に補正後の閾値マップを表示させる(図15の下段参照)。この後、ステップS31に戻る。
[ステップS33〜S35]第1の実施形態の図14のステップS10〜S12の各処理とそれぞれ同様である。
このように第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、第2の実施形態では、ユーザは、閾値マップを目視で確認し、例えば被検体P毎の個別具体的な状況に応じて、閾値マップを補正できる。従って、判定部69による血流低下領域の判定結果に対して、ユーザの意図を反映させることができる。
(実施形態の補足事項)
[1]第1の実施形態の図14のステップS5〜S12の画像解析方法の処理をプログラムコード化することで、画像解析プログラムを作成してもよい。
同様に、第2の実施形態の図17のステップS25〜S35の画像解析方法の処理をプログラムコード化することで、画像解析プログラムを作成してもよい。
なお、第1及び第2の実施形態の画像解析装置65はそれぞれ、そのような画像解析プログラムがインストールされたコンピュータとして捉えることもできる。
[2]上記実施形態では、MRIで得られた脳の画像データに基づいて、灌流マップ及び閾値マップを生成し、これらに基づいて脳の血流低下領域を判定する例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。
X線CT装置などの他の画像診断装置で得られた画像データに対しても、上記実施形態による脳の血流低下領域を判定する解析方法を適用可能である。
[3]請求項の用語と実施形態との対応関係を説明する。なお、以下に示す対応関係は、参考のために示した一解釈であり、本発明を限定するものではない。
灌流マップ生成部67、判定条件設定部68及び判定部69は、請求項記載の補正部の一例である。
閾値マップは、請求項記載の判定条件の一例である。
ガントリ30内の各構成要素、RFコイル装置100、受信RFコイル24、静磁場電源42、シムコイル電源44、傾斜磁場電源46、RF送信器48、RF受信器50、シーケンスコントローラ58、システム制御部61の全体(図1参照)が、静磁場、傾斜磁場及びRFパルスの印加を伴った撮像により被検体PからMR信号を収集する構成は、請求項記載の信号収集部の一例である。
[4]本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。