JP2014150594A - 表面弾性波発生装置、及び、液体又は粉粒体の輸送方法 - Google Patents

表面弾性波発生装置、及び、液体又は粉粒体の輸送方法 Download PDF

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裕一 内海
Tsunemasa Saiki
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Abstract

【課題】単一の電極層を用いて、表面弾性波の伝搬方向と同じ方向、表面弾性波の伝搬方向と反対の方向、及び、表面弾性波の伝搬方向と交差する方向のうちいずれか一つ以上の方向に液体又は粉粒体を輸送可能な表面弾性波発生装置、及び、液体又は粉粒体の輸送方法を得る。
【解決手段】表面弾性波発生装置1は、圧電基板2と、前記圧電基板2の一方の面において前記圧電基板2の結晶面方位に合わせた位置に形成され、粉粒体Pを輸送可能な表面弾性波を前記粉粒体Pに向けて伝搬可能な電極層3と、前記電極層3を駆動可能な駆動周波数を制御することによって、前記表面弾性波の伝搬方向と同じ方向、前記伝搬方向と反対の方向、及び、前記伝搬方向と交差する方向のうちいずれか一つ以上の方向に前記粉粒体Pを輸送可能な周波数制御部4と、を備えることを特徴とするものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、表面弾性波(SAW:Surface acoustic wave)を利用した表面弾性波発生装置、及び、液体又は粉粒体の輸送方法に関するものである。
近年、医療又は環境測定の分野において、少量のサンプルで一連の処理を短時間に行うことができるという利点から、微小化学分析システム(μTAS:Micro Total Analysis System)が注目されている。特に、Lab-on-a-Chip(Laboratory on a Chip)と呼ばれるようなμTASでは、ワンチップ上にポンプ、バルブ、混合器、及び、センサ等の複数の小型デバイスを集積化するために、各デバイスにおける製作プロセスの簡略化が望まれている。各デバイスの中でも、ダイヤフラムポンプ等の流体駆動デバイスは使用頻度が高く、その構造が複雑であることから、製作プロセスの簡略化への要請が特に強い。
一方、弾性体の表面だけにエネルギーが集中して伝搬する音波(表面弾性波)を利用したアクチュエータ及びセンサが報告されている。表面弾性波の伝播面に対象物を置くと、表面弾性波が対象物に作用することで、対象物の駆動、及び、表面弾性波の減衰といった現象が起こる。上記アクチュエータ及びセンサは、これらの現象を利用している。この表面弾性波は、圧電基板上に製作した櫛歯電極(IDT:Interdigital transducer)に高周波電圧を印加することで発生する。この櫛歯電極は構造が非常に簡単で,半導体プロセス技術によって容易に製作することができる。すなわち、表面弾性波を用いたデバイスは、μTASなどのマイクロシステムへの応用に適している。
他方、従来から、表面弾性波を利用して液滴及び物体を移動可能な表面弾性波アクチュエータが知られている(特許文献1参照)。この表面弾性波アクチュエータ(図1参照)は、表面弾性波を発生可能な圧電基板1と、表面弾性波を励振可能な櫛形電極2と、表面弾性波を伝搬可能な伝搬路3と、表面弾性波の放射を直接受ける液滴4と、液滴と共に移動する物体5と、を備えている。そして、圧電基板1の表面上に複数の櫛形電極2を設けた場合に、上記表面弾性波アクチュエータは、液滴4及び物体5を平面上の任意の方向に移動可能な構成となっている(明細書段落0009参照)。
特開平10−327590号公報
ところで、図1中の矢印A,Bは、圧電基板1の表面上に単一の櫛形電極2を設けた際の、表面弾性波の放射方向、及び、液滴4及び物体5の移動方向をそれぞれ示している。これらの矢印A,Bに示されるように、表面弾性波の放射方向Aと、液滴4及び物体5の移動方向Bとは鋭角をなしている。つまり、圧電基板1の表面上に単一の櫛形電極2を設けた際には、従来の表面弾性波アクチュエータは、表面弾性波の放射方向と鋭角をなす方向に液滴4及び物体5を移動させることができるに過ぎない。
このため、圧電基板1の表面上に単一の櫛形電極2を設けた際に、従来の表面弾性波アクチュエータでは、液滴4及び物体5を、表面弾性波の伝搬方向と同じ方向に移動させたり、表面弾性波の伝搬方向と反対の方向に移動させたり、表面弾性波の伝搬方向と交差する方向に移動させたりすることはできなかった。
そこで、本発明は、単一の電極層を用いて、表面弾性波の伝搬方向と同じ方向、表面弾性波の伝搬方向と反対の方向、及び、表面弾性波の伝搬方向と交差する方向のうちいずれか一つ以上の方向に液体又は粉粒体を輸送可能な表面弾性波発生装置、及び、液体又は粉粒体の輸送方法を提供することを目的とするものである。
(1) 本発明の表面弾性波発生装置は、圧電基板と、前記圧電基板の一方の面において前記圧電基板の結晶面方位に合わせた位置に形成され、液体又は粉粒体を輸送可能な表面弾性波を前記液体又は前記粉粒体に向けて伝搬可能な電極層と、前記電極層を駆動可能な駆動周波数を制御することによって、前記表面弾性波の伝搬方向と同じ方向、前記伝搬方向と反対の方向、及び、前記伝搬方向と交差する方向のうちいずれか一つ以上の方向に前記液体又は前記粉粒体を輸送可能な周波数制御部と、を備えることを特徴とするものである。ここでの「伝搬方向と交差する方向」とは、「表面弾性波の伝搬方向に対して右側へ向かう方向」、及び、「表面弾性波の伝搬方向に対して左側へ向かう方向」を含む。
上記(1)の構成によれば、圧電基板の結晶面方位に着目し、該結晶面方位に合わせた位置に電極層を形成することで、液体又は粉粒体の輸送に適した位置に電極層を設置することができる。その結果、電極層の設置位置と駆動周波数の組み合わせによって、表面弾性波の伝搬方向と同じ方向、表面弾性波の伝搬方向と反対の方向、及び、表面弾性波の伝搬方向と交差する方向のうちいずれか一つ以上の方向への液体又は粉粒体の輸送を単一の電極層のみを用いて容易に実現することができる。
(2) 上記(1)の表面弾性波発生装置においては、前記結晶面方位の方向が、前記圧電基板及び前記電極層の積層方向と同じ方向であって、前記電極層が、前記結晶面方位の方向と直交する方向に対して所定角度をなす位置に形成されることが好ましい。ここでの「所定角度」は、0°、30°、60°、及び、90°のいずれかに設定されることが好ましい。
上記(2)の構成によれば、結晶面方位の方向と直交する方向を基準とした角度の調整によって、電極層の位置を決定できるので、液体又は粉粒体の輸送に適した位置に電極層を容易に設置することができる。
(3) 上記(1)又は(2)の表面弾性波発生装置においては、前記液体又は前記粉粒体の輸送方向を示す輸送方向情報を、前記駆動周波数を示す駆動周波数情報に対応付けて記憶可能な輸送方向情報記憶部を備え、前記周波数制御部が、前記輸送方向情報記憶部に記憶されている駆動周波数情報に基づいて、前記駆動周波数を制御することが好ましい。
上記(3)の構成によれば、液体又は粉粒体の輸送方向情報に対応付けて予め記憶されている駆動周波数情報に基づいて、駆動周波数を制御することで、表面弾性波の伝搬方向と同じ方向、表面弾性波の伝搬方向と反対の方向、及び、表面弾性波の伝搬方向と交差する方向のうちいずれか一つ以上の方向に液体又は粉粒体を確実に輸送することができる。
(4) 上記(3)の表面弾性波発生装置においては、前記輸送方向情報が、前記液体又は前記粉粒体の輸送速度を前記電極層の駆動電力で除すことで得られる前記液体又は前記粉粒体の輸送効率を示す輸送効率情報に対応付けられて、前記輸送方向情報記憶部に記憶されていることが好ましい。
上記(4)の構成によれば、液体又は粉粒体の輸送方向情報及び輸送効率情報に対応付けて予め記憶されている駆動周波数情報に基づいて、駆動周波数を制御することで、液体又は粉粒体の輸送方向ごとに液体又は粉粒体の輸送効率を調整することできる。その結果として、表面弾性波発生装置の使用状況に応じて、液体又は粉粒体の輸送距離を短くしたり、長くしたりすることによって、液体又は粉粒体の輸送距離を調整できるので、液体又は粉粒体の位置合わせを容易に実現できる。さらに、駆動周波数に対して増幅処理を施すことで、液体又は粉粒体の輸送可能範囲を広げることができる。その結果として、液体又は粉粒体の輸送をより大きな範囲内で実現でき、表面弾性波発生装置の使用状況に応じて、液体又は粉粒体の柔軟な輸送制御を実現できる。
(5) 本発明の液体又は粉粒体の輸送方法は、液体又は粉粒体を輸送可能な表面弾性波を前記液体又は前記粉粒体に向けて伝搬可能な電極層を、前記電極層において反射する反射電力と、前記電極層に入射される入射電力との比である反射損失のピークに対応する駆動周波数で駆動可能な位置に設ける工程と、前記駆動周波数で前記電極層を駆動させて、前記電極層から前記液体又は前記粉粒体に向けて前記表面弾性波を伝搬させることによって、前記表面弾性波の伝搬方向と同じ方向、前記伝搬方向と反対の方向、及び、前記伝搬方向と交差する方向のうちいずれか一つ以上の方向に前記液体又は前記粉粒体を輸送する工程と、を含むことを特徴とするものである。ここでの「伝搬方向と交差する方向」とは、上記(1)と同様に、「表面弾性波の伝搬方向に対して右側へ向かう方向」、及び、「表面弾性波の伝搬方向に対して左側へ向かう方向」を含む。
上記(5)の構成によれば、反射損失のピークに対応する駆動周波数に着目し、該駆動周波数で駆動可能な位置に電極層を設けることで、液体又は粉粒体の輸送に適した位置に電極層を設置することができる。その結果、反射損失のピークに対応する駆動周波数で電極層を駆動させることによって、表面弾性波の伝搬方向と同じ方向、表面弾性波の伝搬方向と反対の方向、及び、表面弾性波の伝搬方向と交差する方向のうちいずれか一つ以上の方向への液体又は粉粒体の輸送を単一の電極層のみを用いて容易に実現することができる。
本発明の一実施形態に係る表面弾性波発生装置1の要部構成を示す説明図である。 櫛歯電極3と、圧電基板2の結晶面方位の方向(OF)との位置関係を示す説明図である。 実験用に製作された表面弾性波発生装置の写真を示している。 櫛歯電極3A〜3Dを用いた表面弾性波発生装置について、反射損失RL[dB]の周波数特性を測定した結果をそれぞれ示している。 粉粒体Pとして用いた無水タングステン酸の粉末の写真を示している。 表面弾性波発生装置1による粉粒体P1の輸送の様子を撮影した時系列の写真の一例を示している。 表面弾性波発生装置1による粉粒体P2の輸送の様子を撮影した時系列の写真の一例を示している。 表面弾性波発生装置1による粉粒体P3の輸送の様子を撮影した時系列の写真の一例を示している。 (a)は、櫛歯電極のピッチ幅と反射損失との関係の調査に使用した櫛歯電極の形状を示した概略図である。(b)は、ピッチ幅を200[μm]とした場合の反射損失特性を示したグラフである。(c)は、ピッチ幅を400[μm]とした場合の反射損失特性を示したグラフである。 (a)は、櫛歯電極のピッチ幅と、粉粒体の輸送速度との関係の調査に用いた粉粒体の詳細を示した表である。(b)は、粉粒体の輸送速度の特性を示したグラフである。
以下、図1〜図10を参照しながら、本発明の一実施形態に係る表面弾性波発生装置、及び、液体又は粉粒体の輸送方法について説明する。
(表面弾性波発生装置1の構成)
図1及び図2に示すように、表面弾性波発生装置1は、圧電基板2と、櫛歯電極(電極層)3と、周波数制御部4と、輸送方向情報記憶部5と、ハイビジョンカメラ6と、を備えているものである。なお、表面弾性波発生装置1による輸送対象となる粉粒体Pは、図1に示すように、圧電基板2の一方の面2aにおける所定位置に配置されているものである。
(圧電基板2の構成)
圧電基板(piezoelectric substrate)2は、粉粒体Pを輸送可能な表面弾性波を伝搬可能なニオブ酸リチウム(LiNbO)、水晶、タンタル酸リチウム(LiTaO)、ケイ酸ビスマス(BSO)、ゲルマン酸ビスマス(BGO)、酸化亜鉛(ZnO)薄膜などの圧電材料からなるものである。また、図2に示すように、圧電基板2の結晶面方位の方向OF(Orientation Flat)は、圧電基板2及び櫛歯電極3の積層方向と同じ方向となっている。
(櫛歯電極3の構成)
櫛歯電極3は、表面弾性波を発生可能なAl、Au、Cu、Cr、Ti、Ptなどの金属、又は、これらの金属の合金からなるものであり、図1に示すように、圧電基板2の一方の面2aにおいて表面弾性波を粉粒体Pに向けて伝搬可能に形成されているものである。なお、図1中の太線で示す矢印は、櫛歯電極3から粉粒体Pに向けて伝搬される表面弾性波の伝搬方向Dを示している。また、櫛歯電極3は、図1に示すように、直線状の基端部3aと、該基端部3aに対して略直交する方向に夫々櫛歯状に延びる複数本の細幅状の櫛歯部3bと、を備えている。また、櫛歯電極3は、図2に示すように、上記結晶面方位の方向OFと直交する方向に対して所定角度θ[°]をなす位置に形成されている。ここでの所定角度θ[°]は、粉粒体Pの輸送方向に応じて、0[°]、30[°]、60[°]、及び、90[°]のいずれかに設定されるものである。
(周波数制御部4の構成)
周波数制御部4は、櫛歯電極3を駆動可能な駆動周波数(Drive frequency)fD[Hz]を制御することによって、図1に示す表面弾性波の伝搬方向Dと同じ方向、伝搬方向Dと反対の方向、及び、伝搬方向Dと交差する方向のうちいずれか一つ以上の方向に粉粒体Pを輸送可能に構成されているものであって、信号発生器40と、増幅器41と、パワーメーター42と、を備えているものである。
信号発生器40は、上記駆動周波数fD[Hz]を有する駆動信号を生成可能に構成されている。なお、該駆動周波数fD[Hz]を示す駆動周波数情報は、後述するように、輸送方向情報記憶部5に予め記憶されているものである。
増幅器41は、信号発生器40で発生した駆動信号を所定の増幅率で増幅可能であって、増幅した駆動信号を入射エネルギーPIとして櫛歯電極3に出力可能に構成されている。
パワーメーター42は、増幅器41から櫛歯電極3への入射エネルギーPIと、櫛歯電極3から増幅器41への反射エネルギーPRとを電力値[W]として測定可能であって、以下の式(1)に示すように、入射エネルギーPI[W]と反射エネルギーPR[W]の差分を、櫛歯電極3の駆動エネルギーPA[W]として測定可能に構成されている。
PA=PI−PR・・・・(1)
(輸送方向情報記憶部5の構成)
輸送方向情報記憶部5は、粉粒体Pの輸送方向を示す輸送方向情報をルックアップテーブル(Lookup table)として記憶可能に構成されている。該輸送方向情報は、駆動周波数fD[MHz]を示す駆動周波数情報と、以下の式(2)に示す粉粒体Pの輸送効率(Transport efficiency)η[mm/s/W]を示す輸送効率情報と、に対応付けられて、輸送方向情報記憶部5に予め記憶されている。なお、上記ルックアップテーブルの詳細については以下の表1〜4を用いて後述する。ここで、式(2)中のv[mm/s]は、粉粒体Pの輸送速度[mm/s]を示し、PA[W]は、櫛歯電極3の駆動エネルギー[W]を示している。なお、ここでの輸送効率η[mm/s/W]は、ハイビジョンカメラ6の分解能によって観測可能な粉粒体Pの粒子径等に限界があり真値と異なることを考慮して、本発明者が取り上げた輸送量を表す一つの目安である。
η=v/PA・・・・(2)
(ハイビジョンカメラ6の構成)
ハイビジョンカメラ6は、粉粒体Pの輸送を動画として記録可能に構成されているものである。
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。ここでは、上記駆動周波数fD[Hz]と、粉粒体Pの輸送方向との関係を調査し、本実施形態に係る表面弾性波発生装置1(図1参照)の有用性を検討した実験結果について説明する。なお、本発明は、本実施例に限定されるものではない。
(表面弾性波発生装置の製作について)
本発明者は、本実験に使用する表面弾性波発生装置をリソグラフィ技術によって製作した。まず、圧電基板2として、カットアングルが127.8 ゜回転Yカットであって、伝搬方向がX伝搬のLiNbOからなる圧電基板を準備した。ここで、圧電基板2の厚さは、500[μm](±30[μm])とし、圧電基板2の表面粗さは、0.3[nm]以下とした。次に、高周波スパッタリング法(radio frequency
sputtering)によって、圧電基板2の一方の面2aに対して、Cr及びAlの順に成膜処理を施し、櫛歯電極3の前駆体層を形成した。ここで、該前駆体層のうち、Crからなる層の膜厚は50[nm]とし、Alからなる層の膜厚は1000[nm]とした。次に、上記前駆体層において圧電基板2が形成されている側と反対側の面に、ポジ型のフォトレジスト(東京応化工業(株)製のOFPR-800(商品名))を塗布し、紫外線(UV)露光により現像液への溶解性が増大するフォトレジストの特性に基づき、フォトレジスタに櫛歯電極3の配線パターンを転写した。そして、上記前駆体層において圧電基板2が形成されている側と反対側の面に、該配線パターンに基づいたエッチング処理を施し、圧電基板2の一方の面2aに櫛歯電極3を形成した。
図3は、上記の手順で製作した表面弾性波発生装置の写真を示している。図3に示すように、本発明者は、4インチサイズのウェハ上に4つの櫛歯電極3A〜3Dを形成した。ここでは、各櫛歯電極3A〜3Dを、ウェハの結晶面方位の方向OF(図2参照)と直交する方向に対して、0[°]、30[°]、60[°]、及び、90[°]をなす位置にそれぞれ形成した。また、本発明者は、過去の実績を踏まえて、各櫛歯電極3A〜3Dにおいて、櫛歯部3bのピッチ幅を200[μm]とし、櫛歯部3bの開口幅を5[mm]とし、櫛歯部3bの対数を20とした。また、各櫛歯電極3A〜3Dの近傍に、SAM(Sub
Miniature Type A)端子を設けることにより、反射エネルギーPR[W]の低減、及び、再現性の確立等を考慮した。なお、櫛歯電極3とSAM端子は、ガラスエポキシ製のプリント基板の配線を介して、ボンディングワイヤと導線により電気的に接続されている。
(表面弾性波発生装置の駆動周波数fDについて)
次に、本発明者は、各櫛歯電極3A〜3D(図3参照)を用いた表面弾性波発生装置の周波数特性を調べるため、アンテナアナライザー(Rig Expert社製のAA-230PRO(商品名))を用いて反射損失RL(Return Loss)[dB]を測定した。図4(a)〜(d)は、櫛歯電極3A〜3Dを用いた表面弾性波発生装置について、反射損失RL[dB]の周波数特性を測定した結果をそれぞれ示している。ここで、図4(a)〜(d)の横軸は、駆動周波数fD[MHz]を示し、縦軸は、反射損失RL[dB]を示している。ここでの反射損失RL[dB]は、入射エネルギー(入射電力)PI[W]に対する反射エネルギー(反射電力)PR[W]の比(各櫛歯電極3A〜3Dにおいて反射する反射エネルギーPR[W]と、各櫛歯電極3A〜3Dに入射される入射エネルギーPI[W]との比)を対数表示した値であって、反射損失RL[dB]が大きいほど、各櫛歯電極3A〜3Dに供給される電力の比率が大きいことを示している。
図4(a)を見ると、櫛歯電極3Aを用いた表面弾性波発生装置では、まず、19.1[MHz]で反射損失RL[dB]のピークを確認することができる。さらに、40.5[MHz]から3.7[MHz]程度の間隔で連続した反射損失RL[dB]のピークを確認することができる。なお、短冊状の基板(47×15[mm])上に製作した表面弾性波発生装置においても、これらとほぼ同じ反射損失RL[dB]のピークに対応する駆動周波数が存在し、その差異は数百[kHz]以下であった。
図4(a)において、反射損失RL[dB]のピークに対応する実際の駆動周波数fD=19.1[MHz]は、レイリー波の伝搬速度(v=3690[m/s])と、櫛歯電極3Aのピッチ幅を示すピッチサイズ(p=200[μm])から決定される理論上の周波数(v/p=18.45[MHz])にほぼ近似しており、通常の表面弾性波発生装置で使用される駆動周波数(以下では、基本駆動周波数という)である。一方、駆動周波数fD=40.5[MHz]以上においても、反射損失RL[dB]のピークに対応する駆動周波数fD[MHz]が連続することから、これらの連続する駆動周波数fD[MHz]においても表面弾性波が発生する可能性があると考えられる。
また、図4(b)〜(d)を見ても、櫛歯電極3B〜3Dを用いた各表面弾性波発生装置においても、櫛歯電極3Aを用いた表面弾性波発生装置と同様に、反射損失RL[dB]のピークに対応する駆動周波数fD[MHz]が多く存在している。このことは、櫛歯電極3B〜3Dを用いた各表面弾性波発生装置においても、様々な駆動周波数fD[MHz]で表面弾性波が発生する可能性があることを示している。しかし、反射損失RL[dB]のピークに対応する駆動周波数fD[MHz]は、櫛歯電極3A〜3Dを用いた表面弾性波発生装置ごとに異なっている。言い換えれば、これは、結晶面方位によって、表面弾性波発生装置の反射損失RL[dB]の周波数特性が異なることを示している。
(駆動周波数fDと粉粒体Pの輸送との関係について)
上述のように、櫛歯電極3A〜3Dを用いた各表面弾性波発生装置において、様々な駆動周波数fD[MHz]で表面弾性波を発生可能であることが分かった。そこで、本発明者は、これらの駆動周波数fD[MHz]を、表面弾性波発生装置の駆動周波数として、粉粒体Pの輸送の様子を調査した。なお、ここでは、図1に示す表面弾性波発生装置1を実験装置に用いて、粉粒体Pの輸送実験を行った。
まず、実験前に、粉粒体Pを、篩(ふるい)により、圧電基板2の一方の面2aの全面に薄く均一に散布した。ここでは、粉粒体Pの見易さ(粉粒体Pと圧電基板2の各色のコンストラスト)と、絶縁性(粉粒体Pによる櫛歯電極3での電気的な短絡(ショート))とを考慮して、無水タングステン酸の粉末を粉粒体Pとして用いた。この粉末の平均粒子径は22.3[μm]であり、標準偏差は15[μm]である(図5参照)。
本実験では、信号発生器40(テクトロニクス社製のAFG3252(商品名))でバースト状の高周波電圧信号を発生させて、該高周波電圧信号を増幅器41(R&K社製のALM00110-2840FM(商品名))で増幅した。ここでは、高周波電圧信号として、2000周期及び駆動周波数fD[MHz]からなる正弦波で構成される1[kHz]のバースト波形を有する信号を用いた。ここで、バースト波形を有する信号を用いた理由は、デューティ比を下げることで熱による圧電基板2の損傷を防ぐためである。そして、増幅した高周波電圧信号を櫛歯電極3に印加した。また、櫛歯電極3に印加される駆動エネルギーPA[W]の測定は、パワーメーター42(ローデ・シュワルツ社製のNRP-2、NRP-Z91(ともに商品名)、AR社製のDC3001M1(商品名))を用いて、入射エネルギーPI[W]及び反射エネルギーPR[W]を測定することによって実現した(上記式(1)参照)。ここで、駆動周波数fD[MHz]からなる高周波電圧信号を櫛歯電極3に印加することによって表面弾性波が発生した場合、圧電基板2を伝搬可能な表面弾性波によって、粉粒体Pが輸送される。そこで、本発明者は、粉粒体Pの輸送の様子をハイビジョンカメラ6(SONY製のHDR-CX500V(商品名))を用いて動画として記録し、記録した動画に基づいて、粉粒体Pの輸送範囲及び輸送方向等を調査した。
図6〜図8は、表面弾性波発生装置1による粉粒体P1〜P3の輸送の様子を撮影した時系列の写真の一例を示している。図6〜図8では、粉粒体Pの輸送の推移を見易くするため、同じ粉粒体P1〜P3の位置を黒色の点でプロットしている。図6及び図7は、櫛歯電極3A(図3参照)を用いた表面弾性波発生装置1による輸送の様子を示している。図8は、櫛歯電極3C(図3参照)を用いた表面弾性波発生装置1による輸送の様子を示している。
図6は、駆動周波数fD[MHz]を19.1[MHz]とした場合を示している。なお、図6中の太線で示す矢印1は、櫛歯電極3Aから粉粒体P1に伝搬される表面弾性波の伝搬方向を示している。図6を見ると、時刻t=0(sec.)の時点では、粉粒体P1が、櫛歯電極3Aの前方(図6紙面上方向)に配置されている。そして、時刻t=0.2(sec.)以降の時点では、櫛歯電極3Aの開口幅に相当する分の粉粒体P1が、櫛歯電極3A側(図6中の太線の矢印2で示す方向)に輸送されている。この粉粒体P1の輸送の様子から、粉粒体Pを表面弾性波の伝搬方向(図6中の矢印1)と反対の方向(図6中の矢印2)に輸送可能であることが分かった。
図7は、駆動周波数fD[MHz]を47.7[MHz]とした場合を示している。なお、図7中の太線で示す矢印3は、櫛歯電極3Aから粉粒体P2に伝搬される表面弾性波の伝搬方向を示している。図7を見ると、時刻t=0(sec.)の時点では、粉粒体P2が、櫛歯電極3Aの前方(図7紙面上方向)に配置されている。そして、時刻t=4(sec.)以降の時点では、櫛歯電極3Aの開口幅に相当する分の粉粒体P2が、櫛歯電極3Aと反対側(図7中の太線の矢印4で示す方向)に輸送されている。この粉粒体P2の輸送の様子から、粉粒体P2を表面弾性波の伝搬方向(図7中の矢印3)と同じ方向(図7中の矢印4)に輸送可能であることが分かった。このことは、基本駆動周波数によるレイリー波による輸送では不可能であった方向への粉粒体Pの輸送に成功したことを表している。しかしながら、その輸送速度は、基本駆動周波数の輸送速度に比較すると遅くなることが分かった。このように櫛歯電極3Aの反対側(図7中の矢印4で示す方向)に粉粒体P2が輸送される原因としては、レイリー波の圧電基板2の一方の面2aにおける後方楕円回転運動によるものとは考え難い。そのため、本発明者は、圧電体の結晶面方位によって異なった表面弾性波が発生していると推測する。
図8は、駆動周波数fD[MHz]を20.4[MHz]とした場合を示している。なお、図8中の太線で示す矢印5は、櫛歯電極3Cから粉粒体P3に伝搬される表面弾性波の伝搬方向を示している。図8を見ると、時刻t=0(sec.)の時点では、粉粒体P3が、櫛歯電極3Cの前方に配置されている。そして、時刻t=0.2(sec.)以降の時点では、櫛歯電極3Cの開口幅に相当する分の粉粒体P3が、表面弾性波の伝搬方向(図8中の矢印5)に対して右側へ向かう方向(図8中の太線で示す矢印6で示す方向)に輸送されている。この粉粒体P3の輸送の様子から、粉粒体P3を表面弾性波の伝搬方向(図8中の矢印5)に対して右側へ向かう方向(図8中の矢印6)に輸送可能であることが分かる。
(ルックアップテーブルの構成について)
ここで、以下の表1〜4は、櫛歯電極3A〜3D(図3参照)を用いた際のルックアップテーブルをそれぞれ示している。表1〜4中における粉粒体Pの輸送方向「Back」は、表面弾性波の伝搬方向と反対の方向を示している。また、表1,4中における粉粒体Pの輸送方向「Front」は、表面弾性波の伝搬方向と同じ方向を示している。また、表2,3中における粉粒体Pの輸送方向「Right」は、表面弾性波の伝搬方向に対して右側へ向かう方向を示している。また、表3中における粉粒体Pの輸送方向「Left」は、表面弾性波の伝搬方向に対して左側へ向かう方向を示している。また、表1〜4に示すように、粉粒体Pの各輸送方向は、上記駆動周波数fD[Hz]と、粉粒体Pの輸送効率η[mm/s/W]と、に対応付けて、ルックアップテーブルに記憶されている。
表1を見ると、櫛歯電極3A(図3参照)を用いた表面弾性波発生装置1では、19.1[MHz]と59.3[MHz]の各駆動周波数fDにおいて、表面弾性波の伝搬方向と反対の方向に粉粒体Pが輸送されていることが分かる。一方、47.7[MHz]の駆動周波数fDでは、表面弾性波の伝搬方向と同じ方向に粉粒体Pが輸送されていることも分かる。更に、この表1を見ると、異なる輸送方向(「Back」及び「Front」)だけではなく、同じ輸送方向(「Back」)においても、駆動周波数fD[MHz]の変化に応じて、粉粒体Pの輸送効率η[mm/s/W]が異なることも分かる。
次に、表2を見ると、18.2[MHz]と46.4[MHz]の駆動周波数fDで、粉粒体Pの輸送方向がそれぞれ「Back」と「Right」となり異なっている。このことから、櫛歯電極3B(図3参照)を用いた表面弾性波発生装置1においても、櫛歯電極3A(図3参照)を用いた表面弾性波発生装置1と同様に、駆動周波数fD[MHz]により粉粒体Pの輸送方向を変更可能であることが分かる。表3,4を見ると、櫛歯電極3C,3D(図3参照)を用いた各表面弾性波発生装置1においても、櫛歯電極3A(図3参照)を用いた表面弾性波発生装置1と同様に、駆動周波数fD[MHz]により粉粒体Pの輸送方向を変更可能であることが分かる。特に、櫛歯電極3Cを用いた表面弾性波発生装置1は、櫛歯電極3A,3B,3Dを用いた各表面弾性波発生装置1と異なり、「Back」、「Right」、及び、「Left」の3種類の輸送方向に粉粒体Pを輸送可能であることが分かる。
また、表1〜4から、輸送効率η[mm/s/W]が比較的高かった組み合わせを見てみると、輸送方向「Back」では、櫛歯電極3Aを用いた際の駆動周波数fD=19.1[MHz]において輸送効率η=13.2[mm/s/W]が得られ、櫛歯電極3Bを用いた際の駆動周波数fD=18.2[MHz]において輸送効率η=7.2[mm/s/W]が得られた。また、輸送方向「Front」では、櫛歯電極3Dを用いた際の駆動周波数fD=33.7[MHz]において輸送効率η=8.9[mm/s/W]が得られた。また、輸送方向「Right」では、櫛歯電極3Cを用いた際の駆動周波数fD=20.4[MHz]において輸送効率η=2.9[mm/s/W]が得られた。
(ピッチ幅pと反射損失RLとの関係について)
続いて、本発明者は、櫛歯電極3のピッチ幅pと反射損失RLとの関係を調査した。図9(b),(c)は、その調査結果を示す。図9(b)は、ピッチ幅pを200[μm]とした場合の反射損失特性を示したグラフである。図9(c)は、ピッチ幅pを400[μm]とした場合の反射損失特性を示したグラフである。ここで、図9(b),(c)の横軸は、駆動周波数fD[MHz]を示し、縦軸は、反射損失RL[dB]を示す。なお、図9(a)は、本調査に使用した櫛歯電極3の形状を示した概略図であって、同図中の符号pは、櫛歯電極3のピッチ幅を示し、符号Wは、一対の基端部3aから夫々5本ずつ延びる櫛歯部3bの幅(交差幅)を示す。
図9(b)を見ると、まず、20[MHz]付近において、反射損失RL[dB]のピークが発生しており、図9(b)中の矢印で示すように、粉粒体が表面弾性波の伝搬方向と反対方向(「Back」)に輸送されることが分かった。そして、駆動周波数fD[MHz]が30[MHz]を超えたあたりから60[MHz]に至る範囲では、約3[MHz]〜5[MHz]程度の間隔で連続した反射損失RL[dB]のピークを確認できた。特に、50[MHz]付近で発生が確認されたピークでは、図9(b)中の矢印で示すように、粉粒体が表面弾性波の伝搬方向と同じ方向(「Front」)に輸送されることが分かった。
一方、図9(c)を見ると、まず、10[MHz]付近において、反射損失RL[dB]のピークが発生しており、図9(c)中の矢印で示すように、粉粒体が表面弾性波の伝搬方向と反対方向(「Back」)に輸送されることが分かった。そして、駆動周波数fD[MHz]が20[MHz]に達したあたりから60[MHz]に至る範囲では、約3[MHz]〜5[MHz]程度の間隔で連続した反射損失RL[dB]のピークを確認できた。特に、30[MHz]付近で発生が確認されたピークでは、図9(c)中の矢印で示すように、粉粒体が表面弾性波の伝搬方向と同じ方向(「Front」)に輸送されることが分かった。
続いて、図9(b),(c)に示すグラフの各波形を見比べると、図9(c)において駆動周波数fD[MHz]が0[MHz]〜約36[MHz]の範囲内で確認された波形が、図9(b)において駆動周波数fD[MHz]が0[MHz]〜約52[MHz]の範囲内で確認された波形を縮小したような略相似した部分を有していることが分かった。さらに、略相似した部分では、図9(b),(c)のいずれにおいても、表面弾性波の伝搬方向と反対方向(「Back」)、及び、表面弾性波の伝搬方向と同じ方向(「Front」)への粉粒体の輸送が実現されており、同じような輸送モードを構成できることが分かった。
(ピッチ幅pと輸送速度vとの関係について)
続いて、本発明者は、櫛歯電極3のピッチ幅pと、粉粒体の輸送速度vとの関係を調査した。図10(a)は、本調査に用いた粉粒体の詳細を示した表であって、当該粉粒体のSEM写真及び仕様を示している。当該粉粒体の仕様は、図10(a)に示すとおり、材料が銅であり、形状が球体であり、直径[μm]が8.8[μm]であり、標準偏差[μm]が3.3[μm]である。
図10(b)は、粉粒体の輸送速度の特性を示したグラフである。図10(b)の横軸は、櫛歯電極3に供給される供給電力P[mW]を示し、縦軸は、粉粒体の輸送速度v[mm/s]を示す。ここでは、ピッチ幅p[μm]と輸送速度v[mm/s]の関係を調べるために、供給電力P[mW]を300,450,600,750,900,1050,1200のいずれかの値に固定して、固定した値ごとに、ピッチ幅p[μm]を変化させて、輸送速度v[mm/s]を測定した。図10(b)中の「●」は、ピッチ幅p[μm]を200[μm]として輸送方向「Back」へ粉粒体を輸送した際の輸送速度を示し、「○」は、ピッチ幅p[μm]を200[μm]として輸送方向「Front」へ粉粒体を輸送した際の輸送速度を示す。また、図10(b)中の「▲」は、ピッチ幅p[μm]を400[μm]として輸送方向「Back」へ粉粒体を輸送した際の輸送速度を示し、「△」は、ピッチ幅p[μm]を400[μm]として輸送方向「Front」へ粉粒体を輸送した際の輸送速度を示す。
図10(b)を考察すると、粉粒体の輸送方向が「Back」の場合には、300[mW],450[mW],600[mW],750[mW],900[mW],1050[mW],1200[mW]のいずれの値においても、ピッチ幅p[μm]を200[μm]とした際の輸送速度v[mm/s]が、ピッチ幅p[μm]を400[μm]とした際の輸送速度v[mm/s]よりも高くなることが分かった。これに対して、粉粒体の輸送方向が「Front」の場合には、300[mW],450[mW],600[mW],750[mW],900[mW],1050[mW],1200[mW]のいずれの値においても、ピッチ幅p[μm]を400[μm]とした際の輸送速度v[mm/s]が、ピッチ幅p[μm]を200[μm]とした際の輸送速度v[mm/s]よりも高くなることが分かった。
これらの考察結果から、粉粒体の輸送速度v[mm/s]が最大となるピッチ幅p[μm]の最適値は、粉粒体の輸送方向が「Back」の場合と、「Front」の場合とで、それぞれ異なっている可能性があることが判明した。これらの考察結果から、粉粒体の輸送速度v[mm/s]は、ピッチ幅p[μm]以外にも、粉粒体の材料、形状、及び、直径などの仕様によって異なる可能性があるものと推測される。
上記構成によれば、圧電基板2の結晶面方位に着目し、該結晶面方位に合わせた位置に櫛歯電極3を形成することで、表面弾性波発生装置1の使用状況に応じて粉粒体Pの輸送に適した位置(櫛歯電極3A〜3Dのいずれかの位置)に櫛歯電極3を設置することができる。その結果、櫛歯電極3の設置位置θ[°]と駆動周波数fD[MHz]の組み合わせによって、表面弾性波の伝搬方向と同じ方向「Front」、表面弾性波の伝搬方向と反対の方向「Back」、表面弾性波の伝搬方向に対して右側へ向かう方向「Right」、及び、表面弾性波の伝搬方向に対して左側へ向かう方向「Left」のうちいずれか一つ以上の方向へ粉粒体Pの輸送を単一の櫛歯電極3のみを用いて容易に実現することができる。
また、上記構成によれば、結晶面方位の方向OFと直交する方向を基準とした角度θ[°]の調整によって、櫛歯電極3の位置を櫛歯電極3A〜3Dのいずれかの位置に決定できるので、表面弾性波発生装置1の使用状況に応じて粉粒体Pの輸送に適した位置(櫛歯電極3A〜3Dのいずれかの位置)に櫛歯電極3を容易に設置することができる。
また、上記構成によれば、粉粒体Pの輸送方向情報に対応付けて予め記憶されている駆動周波数情報に基づいて、駆動周波数fD[MHz]を制御することで、表面弾性波の伝搬方向と同じ方向「Front」、表面弾性波の伝搬方向と反対の方向「Back」、表面弾性波の伝搬方向に対して右側へ向かう方向「Right」、及び、表面弾性波の伝搬方向に対して左側へ向かう方向「Left」のうちいずれか一つ以上の方向に粉粒体Pを確実に輸送することができる。
また、上記構成によれば、粉粒体Pの輸送方向情報及び輸送効率情報に対応付けて予め記憶されている駆動周波数情報に基づいて、駆動周波数fD[MHz]を制御することで、粉粒体Pの輸送方向ごとに粉粒体Pの輸送効率η[mm/s/W]を調整することできる。その結果として、表面弾性波発生装置1の使用状況に応じて、粉粒体Pの輸送距離を短くしたり、長くしたりすることによって、粉粒体Pの輸送距離を調整できるので、粉粒体Pの位置合わせを容易に実現できる。
また、上記構成によれば、信号発生器40で発生した駆動信号を増幅器41で増幅し、増幅した駆動信号を入射エネルギーPIとして櫛歯電極3に出力することで、粉粒体Pの輸送可能範囲を広げることができる。その結果として、粉粒体Pの輸送をより大きな範囲内で実現でき、粉粒体Pの柔軟な輸送制御を実現できる。
また、上記構成によれば、反射損失RL[dB]のピークに対応する駆動周波数fD[MHz]に着目し、該駆動周波数fD[MHz]で駆動可能な位置に櫛歯電極3を設けることで、粉粒体Pの輸送に適した位置に櫛歯電極3を設置することができる。その結果、反射損失RL[dB]のピークに対応する駆動周波数fD[MHz]で櫛歯電極3を駆動させることによって、表面弾性波の伝搬方向と同じ方向「Front」、表面弾性波の伝搬方向と反対の方向「Back」、表面弾性波の伝搬方向に対して右側へ向かう方向「Right」、及び、表面弾性波の伝搬方向に対して左側へ向かう方向「Left」のうちいずれか一つ以上の方向へ粉粒体Pの輸送を単一の櫛歯電極3のみを用いて容易に実現することができる。
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
なお、上記実施形態では、表面弾性波発生装置による輸送対象を粉粒体とする例について述べたが、本発明はこれに限定されず、表面弾性波発生装置による輸送対象を液体としてもよい。
なお、上記実施形態では、電極層として櫛歯電極を用いたが、本発明はこれに限定されず、表面弾性波を伝搬可能な電極であれば、どのような形状の電極を用いてもよい。
なお、上記実施形態では、信号発生器40で発生した駆動信号を増幅器41で増幅し、増幅した駆動信号を入射エネルギーPIとして櫛歯電極3に出力する例について述べたが、本発明はこれに限定されず、増幅器41を用いずに、信号発生器40で発生した駆動信号をそのまま入射エネルギーPIとして櫛歯電極3に出力してもよい。この結果、増幅器41を用いた場合よりも、粉粒体Pの輸送可能範囲を狭めることができる。これにより、液体又は粉粒体の輸送をより小さな範囲内で実現でき、液体又は粉粒体を輸送する際における輸送距離の微調整を容易に実現できる。
1 表面弾性波発生装置
2 圧電基板
2a 面
3、3A〜3D 櫛歯電極(電極層)
3a 基端部
3b 櫛歯部
4 周波数制御部
5 輸送方向情報記憶部
6 ハイビジョンカメラ
40 信号発生器
41 増幅器
42 パワーメーター
P、P1〜P3 粉粒体

Claims (5)

  1. 圧電基板と、
    前記圧電基板の一方の面において前記圧電基板の結晶面方位に合わせた位置に形成され、液体又は粉粒体を輸送可能な表面弾性波を前記液体又は前記粉粒体に向けて伝搬可能な電極層と、
    前記電極層を駆動可能な駆動周波数を制御することによって、前記表面弾性波の伝搬方向と同じ方向、前記伝搬方向と反対の方向、及び、前記伝搬方向と交差する方向のうちいずれか一つ以上の方向に前記液体又は前記粉粒体を輸送可能な周波数制御部と、
    を備えることを特徴とする表面弾性波発生装置。
  2. 前記結晶面方位の方向が、前記圧電基板及び前記電極層の積層方向と同じ方向であって、
    前記電極層が、前記結晶面方位の方向と直交する方向に対して所定角度をなす位置に形成されることを特徴とする請求項1に記載の表面弾性波発生装置。
  3. 前記液体又は前記粉粒体の輸送方向を示す輸送方向情報を、前記駆動周波数を示す駆動周波数情報に対応付けて記憶可能な輸送方向情報記憶部を備え、
    前記周波数制御部が、前記輸送方向情報記憶部に記憶されている駆動周波数情報に基づいて、前記駆動周波数を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の表面弾性波発生装置。
  4. 前記輸送方向情報が、前記液体又は前記粉粒体の輸送速度を前記電極層の駆動電力で除すことで得られる前記液体又は前記粉粒体の輸送効率を示す輸送効率情報に対応付けられて、前記輸送方向情報記憶部に記憶されていることを特徴とする請求項3に記載の表面弾性波発生装置。
  5. 液体又は粉粒体を輸送可能な表面弾性波を前記液体又は前記粉粒体に向けて伝搬可能な電極層を、前記電極層において反射する反射電力と、前記電極層に入射される入射電力との比である反射損失のピークに対応する駆動周波数で駆動可能な位置に設ける工程と、
    前記駆動周波数で前記電極層を駆動させて、前記電極層から前記液体又は前記粉粒体に向けて前記表面弾性波を伝搬させることによって、前記表面弾性波の伝搬方向と同じ方向、前記伝搬方向と反対の方向、及び、前記伝搬方向と交差する方向のうちいずれか一つ以上の方向に前記液体又は前記粉粒体を輸送する工程と、
    を含むことを特徴とする液体又は粉粒体の輸送方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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