以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、本発明に係る熱処理装置の全体構成について概説する。図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。熱処理装置1は基板として略円形の半導体ウェハーWにフラッシュ光(閃光)を照射してその半導体ウェハーWを加熱するランプアニール装置である。
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容する略円筒形状のチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するランプハウス5と、を備える。また、熱処理装置1は、チャンバー6およびランプハウス5に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
チャンバー6は、ランプハウス5の下方に設けられており、略円筒状の内壁を有するチャンバー側部63、および、チャンバー側部63の下部を覆うチャンバー底部62によって構成される。また、チャンバー側部63およびチャンバー底部62によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。熱処理空間65の上方は上部開口60とされており、上部開口60にはチャンバー窓61が装着されて閉塞されている。
チャンバー6の天井部を構成するチャンバー窓61は、石英により形成された円板形状部材であり、ランプハウス5から出射されたフラッシュ光を熱処理空間65に透過する石英窓として機能する。チャンバー6の本体を構成するチャンバー底部62およびチャンバー側部63は、例えば、ステンレススチール等の強度と耐熱性に優れた金属材料にて形成されており、チャンバー側部63の内側面の上部のリング631は、光照射による劣化に対してステンレススチールより優れた耐久性を有するアルミニウム(Al)合金等で形成されている。
また、熱処理空間65の気密性を維持するために、チャンバー窓61とチャンバー側部63とはOリングによってシールされている。すなわち、チャンバー窓61の下面周縁部とチャンバー側部63との間にOリングを挟み込むとともに、クランプリング90をチャンバー窓61の上面周縁部に当接させ、そのクランプリング90をチャンバー側部63にネジ止めすることによって、チャンバー窓61をOリングに押し付けている。
チャンバー底部62には、保持部7を貫通して半導体ウェハーWをその下面(ランプハウス5からの光が照射される側とは反対側の面)から支持するための複数(本実施の形態では3本)の支持ピン70が立設されている。支持ピン70は、例えば石英により形成されており、チャンバー6の外部から固定されているため、容易に取り替えることができる。
チャンバー側部63は、半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部66を有し、搬送開口部66は、軸662を中心に回動するゲートバルブ185により開閉可能とされる。チャンバー側部63における搬送開口部66とは反対側の部位には熱処理空間65に処理ガスを導入するガス導入路81が接続されている。ガス導入路81の一端はチャンバー側部63の内部に形成されるガス導入バッファ83に接続され、他端はガス供給源88に連通接続されている。ガス導入路81の経路途中にはガスバルブ82および流量調整弁85が介挿されている。ガス供給源88は、窒素ガス(N2)、ヘリウムガス(He)、アルゴンガス(Ar)等の不活性ガス、または、酸素ガス(O2)、アンモニアガス(NH3)等の反応性ガスをガス導入路81に送給する。ガス供給源88は、これらのガスを択一的に、または、混合して処理ガスとして供給する。また、搬送開口部66には熱処理空間65内の気体を排出する排出路86が形成され、ガスバルブ87を介して図示省略の排気機構に接続される。
図2は、チャンバー6をガス導入バッファ83の位置にて水平面で切断した断面図である。図2に示すように、ガス導入バッファ83は、図1に示す搬送開口部66の反対側においてチャンバー側部63の内周の約1/3に亘って形成されている。ガスバルブ82を開放することによって処理ガスはガス供給源88からガス導入路81に送給されてガス導入バッファ83へと導かれ、複数のガス供給孔84から熱処理空間65内へと供給される。処理ガスの供給流量は流量調整弁85によって定められる。また、ガスバルブ87を開放することによって熱処理空間65内の雰囲気は排出路86から排気される。これによって、熱処理空間65に図2の矢印AR4にて示すような処理ガスの気流が形成される。
図1に戻り、熱処理装置1は、チャンバー6の内部において半導体ウェハーWを水平姿勢にて載置して保持しつつフラッシュ光照射前にその保持する半導体ウェハーWの予備加熱を行う略円板状の保持部7と、保持部7をチャンバー6の底面であるチャンバー底部62に対して昇降させる保持部昇降機構4と、を備える。図1に示す保持部昇降機構4は、略円筒状のシャフト41、移動板42、ガイド部材43(本実施の形態ではシャフト41の周りに3本配置される)、固定板44、ボールネジ45、ナット46およびモータ40を有する。チャンバー6の下部であるチャンバー底部62には保持部7よりも小さい直径を有する略円形の下部開口64が形成されており、ステンレススチール製のシャフト41は、下部開口64を挿通して、保持部7(厳密には保持部7のホットプレート71)の下面に接続されて保持部7を支持する。
移動板42にはボールネジ45と螺合するナット46が固定されている。また、移動板42は、チャンバー底部62に固定されて下方へと伸びるガイド部材43により摺動自在に案内されて上下方向に移動可能とされる。また、移動板42は、シャフト41を介して保持部7に連結される。
モータ40は、ガイド部材43の下端部に取り付けられる固定板44に設置され、タイミングベルト401を介してボールネジ45に接続される。保持部昇降機構4により保持部7が昇降する際には、駆動部であるモータ40が制御部3の制御によりボールネジ45を回転し、ナット46が固定された移動板42がガイド部材43に沿って鉛直方向に移動する。この結果、移動板42に固定されたシャフト41が鉛直方向に沿って移動し、シャフト41に接続された保持部7が図1に示す半導体ウェハーWの受渡位置と図5に示す半導体ウェハーWの処理位置との間で滑らかに昇降する。
移動板42の上面には略半円筒状(円筒を長手方向に沿って半分に切断した形状)のメカストッパ451がボールネジ45に沿うように立設されており、仮に何らかの異常により移動板42が所定の上昇限界を超えて上昇しようとしても、メカストッパ451の上端がボールネジ45の端部に設けられた端板452に突き当たることによって移動板42の異常上昇が防止される。これにより、保持部7がチャンバー窓61の下方の所定位置以上に上昇することはなく、保持部7とチャンバー窓61との衝突が防止される。
また、保持部昇降機構4は、チャンバー6の内部のメンテナンスを行う際に保持部7を手動にて昇降させる手動昇降部49を有する。手動昇降部49はハンドル491および回転軸492を有し、ハンドル491を介して回転軸492を回転することより、タイミングベルト495を介して回転軸492に接続されるボールネジ45を回転して保持部7の昇降を行うことができる。
チャンバー底部62の下側には、シャフト41の周囲を囲み下方へと伸びる伸縮自在のベローズ47が設けられ、その上端はチャンバー底部62の下面に接続される。一方、ベローズ47の下端はベローズ下端板471に取り付けられている。べローズ下端板471は、鍔状部材411によってシャフト41にネジ止めされて取り付けられている。保持部昇降機構4により保持部7がチャンバー底部62に対して上昇する際にはベローズ47が収縮され、下降する際にはべローズ47が伸張される。そして、保持部7が昇降する際にも、ベローズ47が伸縮することによって熱処理空間65内の気密状態が維持される。
図3は、保持部7の構成を示す断面図である。保持部7は、半導体ウェハーWよりも大きな径の略円板状を有する。保持部7は、半導体ウェハーWを予備加熱(いわゆるアシスト加熱)するホットプレート(加熱プレート)71、および、ホットプレート71の上面(保持部7が半導体ウェハーWを保持する側の面)に設置されるサセプタ72を有する。保持部7の下面には、既述のように保持部7を昇降するシャフト41が接続される。サセプタ72は石英(あるいは、窒化アルミニウム(AIN)等であってもよい)により形成され、その上面には半導体ウェハーWの位置ずれを防止するピン75が設けられる。サセプタ72は、その下面をホットプレート71の上面に面接触させてホットプレート71上に設置される。これにより、サセプタ72は、ホットプレート71からの熱エネルギーを拡散してサセプタ72上面に載置された半導体ウェハーWに伝達するとともに、メンテナンス時にはホットプレート71から取り外して洗浄可能とされる。
ホットプレート71は、ステンレススチール製の上部プレート73および下部プレート74にて構成される。上部プレート73と下部プレート74との間には、ホットプレート71を加熱するニクロム線等の抵抗加熱線76が配設され、導電性のニッケル(Ni)ロウが充填されて封止されている。また、上部プレート73および下部プレート74の端部はロウ付けにより接着されている。
図4は、ホットプレート71を示す平面図である。図4に示すように、ホットプレート71は、保持される半導体ウェハーWと対向する領域の中央部に同心円状に配置される円板状のゾーン711および円環状のゾーン712、並びに、ゾーン712の周囲の略円環状の領域を周方向に4等分割した4つのゾーン713〜716を備え、各ゾーン間には若干の間隙が形成されている。また、ホットプレート71には、支持ピン70が挿通される3つの貫通孔77が、ゾーン711とゾーン712との隙間の周上に120°毎に設けられる。
6つのゾーン711〜716のそれぞれには、相互に独立した抵抗加熱線76が周回するように配設されてヒータが個別に形成されており、各ゾーンに内蔵されたヒータにより各ゾーンが個別に加熱される。保持部7に保持された半導体ウェハーWは、6つのゾーン711〜716に内蔵されたヒータにより加熱される。また、ゾーン711〜716のそれぞれには、熱電対を用いて各ゾーンの温度を計測するセンサ710が設けられている。各センサ710は略円筒状のシャフト41の内部を通り制御部3に接続される。
ホットプレート71が加熱される際には、センサ710により計測される6つのゾーン711〜716のそれぞれの温度が予め設定された所定の温度になるように、各ゾーンに配設された抵抗加熱線76への電力供給量が制御部3により制御される。制御部3による各ゾーンの温度制御はPID(Proportional,Integral,Derivative)制御により行われる。ホットプレート71では、半導体ウェハーWの熱処理(複数の半導体ウェハーWを連続的に処理する場合は、全ての半導体ウェハーWの熱処理)が終了するまでゾーン711〜716のそれぞれの温度が継続的に計測され、各ゾーンに配設された抵抗加熱線76への電力供給量が個別に制御されて、すなわち、各ゾーンに内蔵されたヒータの温度が個別に制御されて各ゾーンの温度が設定温度に維持される。なお、各ゾーンの設定温度は、基準となる温度から個別に設定されたオフセット値だけ変更することが可能とされる。
6つのゾーン711〜716にそれぞれ配設される抵抗加熱線76は、シャフト41の内部を通る電力線を介してプレート電源98(図6参照)に接続されている。プレート電源98から各ゾーンに至る経路途中において、プレート電源98からの電力線は、マグネシア(マグネシウム酸化物)等の絶縁体を充填したステンレスチューブの内部に互いに電気的に絶縁状態となるように配置される。なお、シャフト41の内部は大気開放されている。
次に、ランプハウス5は、チャンバー6の上方に設けられている。ランプハウス5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、ランプハウス5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。ランプハウス5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状部材である。ランプハウス5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53がチャンバー窓61と相対向することとなる。ランプハウス5は、チャンバー6内にて保持部7に保持される半導体ウェハーWにランプ光放射窓53およびチャンバー窓61を介してフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射することにより半導体ウェハーWを加熱する。
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。複数のフラッシュランプFLの配列によって形成される平面の平面エリアは少なくとも保持部7に保持される半導体ウェハーWよりも大きい。
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源99(図6参照)のコイル定数によって調整することができる。
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を保持部7の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されて梨地模様を呈する。このような粗面化加工を施しているのは、リフレクタ52の表面が完全な鏡面であると、複数のフラッシュランプFLからの反射光の強度に規則パターンが生じて半導体ウェハーWの表面温度分布の均一性が低下するためである。
制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。図6は、制御部3の構成を示すブロック図である。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行うCPU31、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM32、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM33および制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスク34をバスライン39に接続して構成されている。
また、バスライン39には、チャンバー6内にて保持部7を昇降させる保持部昇降機構4のモータ40、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源99、チャンバー6内への処理ガスの給排を行うガスバルブ82,87、流量調整弁85、搬送開口部66を開閉するゲートバルブ185およびホットプレート71のゾーン711〜716への電力供給を行うプレート電源98等が電気的に接続されている。制御部3のCPU31は、磁気ディスク34に格納された制御用ソフトウェアを実行することにより、これらの各動作機構を制御して、半導体ウェハーWの加熱処理を進行する。
さらに、バスライン39には、表示部35および入力部36が電気的に接続されている。表示部35は、例えば液晶ディスプレイ等を用いて構成されており、処理結果やレシピ内容等の種々の情報を表示する。入力部36は、例えばキーボードやマウス等を用いて構成されており、コマンドやパラメータ等の入力を受け付ける。装置のオペレータは、表示部35に表示された内容を確認しつつ入力部36からコマンドやパラメータ等の入力を行うことができる。なお、表示部35と入力部36とを一体化してタッチパネルとして構成するようにしても良い。
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にフラッシュランプFLおよびホットプレート71から発生する熱エネルギーによるチャンバー6およびランプハウス5の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6のチャンバー側部63およびチャンバー底部62には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ランプハウス5は、内部に気体流を形成して排熱するための気体供給管55および排気管56が設けられて空冷構造とされている(図1,5参照)。また、チャンバー窓61とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、ランプハウス5およびチャンバー窓61を冷却する。
次に、半導体ウェハーWの処理手順について説明する。図7は、半導体ウェハーWに対する処理フローの一部を示すフローチャートである。まず、シリコン基板11(図9参照)の表面にフォトリソグラフィー技術を用いてパターンを形成し、ソース・ドレイン領域にボロン(B)やヒ素(As)等の不純物(イオン)を注入する(ステップS1)。不純物の注入はイオン打ち込み法によって実行される。
次に、不純物が注入されたシリコン基板11の表面に炭素(C)の薄膜12を形成する(ステップS2)。炭素の薄膜12の形成には公知の種々の手法を採用することができ、例えばプラズマ蒸着によって形成するようにすれば良い。図9は、シリコン基板11の表面に炭素の薄膜12を形成してなる半導体ウェハーWの断面図である。本実施形態においては、イオン打ち込み法によって不純物が注入されたシリコン基板11の表面にプラズマ蒸着によってアモルファス炭素の薄膜12を形成している。本実施形態においては、シリコン基板11の表面に形成するアモルファス炭素の薄膜12の膜厚t(膜厚の初期値)を70nmとしている。
次に、炭素の薄膜12が形成された半導体ウェハーWに対して熱処理装置1による光照射熱処理が実行される(ステップS3)。熱処理装置1における半導体ウェハーWの光照射熱処理についてはさらに後述する。
熱処理装置1での光照射熱処理が終了した半導体ウェハーWには洗浄処理が行われる(ステップS4)。ここでの洗浄処理は、いわゆるSPM洗浄(硫酸と過酸化水素水との混合液を用いた洗浄)およびAPM洗浄(アンモニア水と過酸化水素水との混合液を用いた洗浄)である。この洗浄処理によってシリコン基板11の表面から炭素の薄膜12を完全に除去する。なお、本明細書において「半導体ウェハーW」は、表面に薄膜形成がなされていないシリコン基板11および表面に薄膜12が形成されたシリコン基板11の双方を含む。
図8は、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順を示すフローチャートである。図8に示す半導体ウェハーWの処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することによって実行される。
まず、保持部7が図5に示す処理位置から図1に示す受渡位置に下降する(ステップS20)。「処理位置」とは、フラッシュランプFLから半導体ウェハーWに光照射が行われるときの保持部7の位置であり、図5に示す保持部7のチャンバー6内における位置である。また、「受渡位置」とは、チャンバー6に半導体ウェハーWの搬出入が行われるときの保持部7の位置であり、図1に示す保持部7のチャンバー6内における位置である。熱処理装置1における保持部7の基準位置は処理位置であり、処理前にあっては保持部7は処理位置に位置しており、これが処理開始に際して受渡位置に下降するのである。
保持部7はチャンバー6に固定設置された支持ピン70に対して昇降するものであり、図1に示すように、保持部7が受渡位置にまで下降するとチャンバー底部62に近接し、支持ピン70の先端が保持部7を貫通して保持部7の上方に突出する。
次に、保持部7が受渡位置に下降した後、ガスバルブ82が開かれてガス供給源88からチャンバー6の熱処理空間65内に不活性ガス(本実施形態では、窒素ガス)が供給される。それと同時に、ガスバルブ87が開かれて熱処理空間65内の気体が排気される(ステップS21)。チャンバー6に供給された窒素ガスは、熱処理空間65においてガス導入バッファ83から図2中に示す矢印AR4の方向へと流れ、排出路86およびガスバルブ87を介してユーティリティ排気により排気される。また、チャンバー6に供給された窒素ガスの一部は、べローズ47の内側に設けられる排出口(図示省略)からも排出される。
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介して表面に炭素の薄膜12が形成された半導体ウェハーWがチャンバー6内に搬入され、複数の支持ピン70上に載置される(ステップS22)。半導体ウェハーWがチャンバー6内に搬入されると、ゲートバルブ185により搬送開口部66が閉鎖される。そして、保持部昇降機構4により保持部7が受渡位置からチャンバー窓61に近接した処理位置にまで上昇する(ステップS23)。保持部7が受渡位置から上昇する過程において、半導体ウェハーWは支持ピン70から保持部7のサセプタ72へと渡され、サセプタ72の上面に載置・保持される。保持部7が処理位置にまで上昇するとサセプタ72に保持された半導体ウェハーWも処理位置に保持されることとなる。
ホットプレート71の6つのゾーン711〜716のそれぞれは、各ゾーンの内部(上部プレート73と下部プレート74との間)に個別に内蔵されたヒータ(抵抗加熱線76)により所定の温度まで加熱されている。保持部7が処理位置まで上昇して半導体ウェハーWが保持部7と接触することにより、その半導体ウェハーWはホットプレート71に内蔵されたヒータによって予備加熱されて温度が次第に上昇する(ステップS24)。
この処理位置にて約60秒間の予備加熱が行われ、半導体ウェハーWの温度が予め設定された予備加熱温度T1まで上昇する。予備加熱温度T1は、半導体ウェハーWに添加された不純物が熱により拡散する恐れのない、200℃ないし600℃程度、好ましくは350℃ないし550℃程度とされる。また、保持部7とチャンバー窓61との間の距離は、保持部昇降機構4のモータ40の回転量を制御することにより任意に調整することが可能とされている。
また、処理位置にて半導体ウェハーWの予備加熱が行われるのと並行して、チャンバー6の熱処理空間65に酸素ガスが導入される(ステップS25)。すなわち、ガス供給源88からガス導入路81を経由して熱処理空間65に酸素ガスが供給される。このときに、酸素ガスのみを供給しても良いし、酸素ガスを窒素ガスに混合した混合ガスとして供給するようにしても良い。ガス供給源88から熱処理空間65に供給される酸素ガスの流量は制御部3がガスバルブ82および流量調整弁85を制御することによって調整される。本実施形態においては、ステップS25の酸素ガス供給によって、チャンバー6内の熱処理空間65の酸素濃度が90%以上とされる。
約60秒間の予備加熱時間が経過し、チャンバー6内の酸素濃度が90%以上となった後、保持部7が処理位置に位置したまま制御部3の制御によりランプハウス5のフラッシュランプFLから半導体ウェハーWへ向けてフラッシュ光が照射される(ステップS26)。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内の保持部7へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからの閃光照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。
すなわち、ランプハウス5のフラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予め蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからの閃光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度(正確には炭素の薄膜12の表面温度)は、瞬間的に処理温度T2まで上昇し、半導体ウェハーWに注入された不純物が活性化された後、表面温度が急速に下降する。このように、熱処理装置1では、半導体ウェハーWの表面温度を極めて短時間で昇降することができるため、半導体ウェハーWに注入された不純物の熱による拡散を抑制しつつ不純物の活性化を行うことができる。なお、不純物の活性化に必要な時間はその熱拡散に必要な時間に比較して極めて短いため、0.1ミリセカンドないし100ミリセカンド程度の拡散が生じない短時間であっても活性化は完了する。
図10は、炭素の薄膜12が形成された半導体ウェハーWにフラッシュ光が照射された状態を示す模式図である。表面に形成する炭素の薄膜12の膜厚が厚くなるにしたがって半導体ウェハーWの表面反射率が低下し、本実施形態の膜厚70nmでは約60%程度となる。表面反射率の低下は、半導体ウェハーWのフラッシュ光吸収率の上昇、より具体的には炭素の薄膜12のフラッシュ光吸収率が増大していることを意味している。なお、キセノンフラッシュランプFLからのフラッシュ光の放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、シリコン基板11をほとんど透過しない。
炭素の薄膜12の膜厚増加に伴う半導体ウェハーWの表面反射率の低下は、膜厚が厚くなるにしたがって薄膜12自体のフラッシュ光吸収率が高まることによるものである。すなわち、炭素の薄膜12がある程度以上に厚くなると、図10の矢印AR10にて示すように照射されたフラッシュ光の一部が薄膜12に吸収される。その吸収率は薄膜12の膜厚が厚くなるほど大きくなる。フラッシュ光を吸収した炭素の薄膜12の表面では熱が発生し、その熱が矢印AR11にて示すようにシリコン基板11の表面に伝導する。
このように、ある一定以上の膜厚を有する炭素の薄膜12は光吸収膜として機能し、半導体ウェハーWのフラッシュ光吸収率を高める。そして、半導体ウェハーWのフラッシュ光吸収率が高まった結果、フラッシュ光照射時の半導体ウェハーWの表面到達温度(厳密には不純物が注入されているシリコン基板11の表面到達温度)は薄膜12が形成されていないときよりも上昇し、より良好な不純物の活性化処理が行われることとなる。
図11は、チャージ電圧とシート抵抗値との相関関係を示す図である。横軸に示すチャージ電圧は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源99(図6参照)のコンデンサに印加する電圧であり、フラッシュランプFLから出射されるフラッシュ光のエネルギーの大きさを示す指標である。縦軸に示すシート抵抗値Rsは、不純物の活性化の程度を示す指標であり、シート抵抗値が低いほど半導体ウェハーWの表面が高温に加熱されて良好な不純物の活性化処理が行われたことを示している。また、図11において、実線で示すのは炭素の薄膜12を形成した本実施形態の半導体ウェハーWについての相関関係であり、点線にて示すのは炭素の薄膜12を形成していない半導体ウェハーについての相関関係である。
同図に示すように、同じチャージ電圧であれば、炭素の薄膜12を形成した場合の方がよりシート抵抗値が低く、すなわち半導体ウェハーWの表面がより高温に昇温することとなる。シート抵抗値の差異はチャージ電圧が低い場合において特に顕著であり、本実施形態のように炭素の薄膜12を形成した半導体ウェハーWであれば低いチャージ電圧であっても十分に低いシート抵抗値を得ることができる。すなわち、半導体ウェハーWの表面に炭素の薄膜12を形成すれば、フラッシュランプFLからのフラッシュ光のエネルギーが比較的小さかったとしても表面温度をより高温に昇温させてシート抵抗値を低下させることができるのである。
また、図10に示すように、フラッシュランプFLから照射されたフラッシュ光は均一に形成された炭素の薄膜12に一旦吸収されて薄膜12に熱が発生し、その熱が矢印AR11のようにシリコン基板11の表面に伝導することとなる。このため、シリコン基板11の表面にパターン形成にともなう吸収率のバラツキが存在していたとしても、薄膜12が形成されていない場合と比較して吸収率のバラツキは緩和され、不純物が注入されているシリコン基板11の表面は均一に加熱されることとなる。
また、本実施形態においては、フラッシュランプFLからフラッシュ光を照射する時点でのチャンバー6内の酸素濃度を90%以上としている。このため、フラッシュ光照射によって加熱された薄膜12の炭素と酸素とが反応して二酸化炭素(CO2)または一酸化炭素(CO)が生成される。これによって薄膜12の炭素が気化されて消費され、薄膜12の膜厚が低下する。すなわち、フラッシュ光照射時に炭素の薄膜12を光吸収膜として機能させると同時に、チャンバー6内に酸素を導入することによって炭素の薄膜12の剥離処理をも行っているのである。なお、生成した炭素の酸化物は気体であるため、チャンバー6内の雰囲気ガスとともに排出路86およびガスバルブ87を介して熱処理装置1の外部へと排気される。
フラッシュ光照射時に炭素が消費されて薄膜12の膜厚が低下するレートは半導体ウェハーWの面内において均一ではない。すなわち、フラッシュランプFLからランプ光放射窓53およびチャンバー窓61を介して熱処理空間65に照射されるフラッシュ光の強度も必ずしも均一ではなく、半導体ウェハーWの面内において強度分布にバラツキが生じている。このため、薄膜12の面内温度分布にもバラツキが生じた結果、膜厚低下レートが不均一となるのである。
図12は、炭素薄膜12の膜厚低下のバラツキを模式的に示した図である。フラッシュランプFLからランプ光放射窓53およびチャンバー窓61を介して熱処理空間65に照射されるフラッシュ光に、矢印AR12にて示すような強度の弱いフラッシュ光と矢印AR13にて示すような強度の強いフラッシュ光とが含まれているとする。この場合、炭素の薄膜12の表面のうち弱いフラッシュ光によって照射された領域よりも強いフラッシュ光によって照射された領域の方が高温に加熱される。その結果、弱いフラッシュ光によって照射された領域よりも強いフラッシュ光によって照射された領域の方が周辺雰囲気の酸素との反応が活性化され、膜厚低下レートも大きくなり、炭素の薄膜12の膜厚が図12に示すように不均一となる。
炭素の薄膜12のフラッシュ光吸収率は膜厚に依存しており、膜厚が厚いほど吸収率も大きくなる。よって、上記のようにして薄膜12の膜厚が不均一となった結果、強いフラッシュ光によって照射された領域よりも弱いフラッシュ光によって照射された領域の方が残存膜厚が大きくなってフラッシュ光吸収率が大きくなる。照射されるフラッシュ光の強度が強い領域ほど薄膜12の膜厚が薄くなってフラッシュ光吸収率が小さくなり、その結果当該領域の表面温度が低下することとなり、薄膜12全体としては面内温度分布が均一となるのである。すなわち、フラッシュ光の強度差によって生じた薄膜12の膜厚の不均一性が面内温度分布のバラツキを解消するように作用するのである。薄膜12全体としての面内温度分布が均一となれば、不純物が注入されているシリコン基板11の表面も均一に加熱されることとなる。
フラッシュ加熱が終了して所定時間(数秒)が経過した時点で再びガス供給源88から熱処理空間65に窒素ガスを供給するとともに、排出路86から熱処理空間65内の酸素ガスを含む気体を排気する。これによって、チャンバー6内の雰囲気が窒素ガスに置換される(ステップS27)。
その後、保持部7が保持部昇降機構4により再び図1に示す受渡位置まで下降し、半導体ウェハーWが保持部7から支持ピン70へと渡される(ステップS28)。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、支持ピン70上に載置された半導体ウェハーWは装置外部の搬送ロボットにより搬出され、熱処理装置1における半導体ウェハーWのフラッシュ加熱処理(アニール処理)が完了する(ステップS29)。
以上のように、本実施形態においては、半導体ウェハーWの表面に炭素の薄膜12を形成することによってその炭素薄膜12にフラッシュ光を吸収させている。フラッシュ光を吸収することによって炭素の薄膜12が昇温し、薄膜12が形成されていない場合に比較して不純物が注入されているシリコン基板11の表面をより高温に昇温してシート抵抗値を低下させることができる。
特に、半導体ウェハーWの表面に炭素の薄膜12を形成すれば、図11に示すように、低いチャージ電圧であっても十分に低いシート抵抗値を得ることができる。従って、フラッシュランプFLおよびランプ電源99の負荷を増大させることなく、低いシート抵抗値を実現することができる。
また、チャンバー6内の酸素濃度を90%以上とし、炭素の薄膜12が形成された半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射しているため、加熱された薄膜12の炭素が酸化されて気化することにより消費される。これによって、フラッシュ加熱時に炭素の薄膜12の剥離処理が進行することとなり、続く洗浄処理工程(ステップS4)において通常のSPM洗浄およびAPM洗浄のみによって炭素の残膜を除去することができる。チャンバー6内に酸素ガスを導入することなくフラッシュ光を照射した場合には、薄膜12の炭素が消費されないためフラッシュ加熱後も当初の膜厚が概ねそのまま維持される。この場合、通常のSPM洗浄やAPM洗浄のみでは十分に薄膜12を除去することができず、ステップS4の洗浄処理工程の前に別途アッシング処理工程を行う必要がある。本実施形態のように、チャンバー6内に酸素ガスを導入してフラッシュ光照射時点での酸素濃度を90%以上とすれば、フラッシュ光照射によって薄膜12の剥離処理をも同時に行うことができ、アッシング処理工程を省略して通常の洗浄処理のみによって残膜を確実に除去することができる。なお、フラッシュ光照射時に炭素の薄膜12の全てが気化することは無く、残膜はシリコン基板11の表面の酸化防止膜としても機能することとなる。
さらに、本実施形態においては、フラッシュランプFLからのフラッシュ光にバラツキがある場合には薄膜12の膜厚低下レートにもバラツキが生じて膜厚が不均一となるのであるが、その不均一性が半導体ウェハーWの面内温度分布のバラツキを解消するように作用する。すなわち、照射されるフラッシュ光の強度が強い領域ほど炭素の薄膜12の膜厚が薄くなってフラッシュ光吸収率が小さくなり、その結果当該領域の表面温度が低下することとなり、半導体ウェハーWの表面全体としては面内温度分布が均一となるのである。
ところで、炭素の薄膜12を形成した半導体ウェハーWのフラッシュ加熱処理を行った際に、チャンバー6の内部に炭素系の汚染が付着することがある。このような汚染が発生した場合には、チャンバー6内に半導体ウェハーWを収容することなく、チャンバー6内に酸素ガスを導入して酸素濃度を90%以上とし、フラッシュランプFLからフラッシュ光を照射する。すなわち、チャンバー6内の酸素濃度を90%以上として空フラッシュ処理を行うのである。このような空フラッシュ処理も半導体ウェハーWのフラッシュ加熱処理と同様に、制御部3が熱処理装置1の各動作機構(ガスバルブ82,87、流量調整弁85およびランプ電源99等)を制御することによって実行される。チャンバー6内に半導体ウェハーWを収容することなく、チャンバー6内の酸素濃度を90%以上としてフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射することにより、炭素系の汚染物質は酸化されて取り除かれる。すなわち、チャンバー6内の酸素濃度を90%以上として空フラッシュ処理を行うことにより、チャンバー6内のクリーニング処理を実行しているのである。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、不純物が注入されたシリコン基板11の表面にアモルファス炭素の薄膜12を形成していたが、アモルファス炭素に代えて結晶構造を有する炭素(例えば、グラファイト)にて薄膜12を形成するようにしても良い。結晶構造を有する炭素にて薄膜12を形成するようにしても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。もっとも、アモルファス炭素にて薄膜12を形成するようにした方がフラッシュ加熱時に酸化されやすく薄膜12の剥離処理が進行しやすい。
また、炭素化合物にて薄膜12を形成するようにしても良い。光吸収膜としての薄膜12を形成するのに適した炭素化合物としては、特に有機化合物が挙げられ、炭素と水素、或いはそれらに加えて酸素を含む化合物が好適である。すなわち、不純物が注入されたシリコン基板11の表面に炭素または炭素化合物の薄膜12を形成する形態であれば良い。
また、上記実施形態においては、シリコン基板11の表面に形成するアモルファス炭素の薄膜12の膜厚tを70nmとしていたが、これに限定されるものではなく、少なくとも膜厚tが20nm以上の炭素または炭素化合物の薄膜12が形成されていれば光吸収膜としての効果を得ることができる。もっとも、薄膜12のフラッシュ光吸収率は、薄膜12の膜厚が厚いほど大きくなるため、フラッシュ光を吸収してシリコン基板11の表面をより効果的に昇温するためには薄膜12の膜厚tが70nm以上であることが好ましい。一方、薄膜12の膜厚tが280nmを超えて厚くなったとしても光吸収膜としての昇温効果に大きな変化が無く、むしろフラッシュ加熱後の残膜の厚さが厚くなってその後の洗浄処理のみでは十分に除去できなくなるおそれがある。よって、シリコン基板11の表面に形成する炭素または炭素化合物の薄膜12の好適な膜厚tは70nm以上280nm以下である。
また、上記実施形態においては、フラッシュ光を照射する時点でのチャンバー6内の酸素濃度を90%以上としていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュ光照射時に半導体ウェハーWの周辺に僅かでも酸素ガスが存在していれば、薄膜12の炭素を酸化して剥離する効果が得られる。もっとも、薄膜12の十分な剥離効果を得るとともに、フラッシュ光の強度分布のバラツキに起因した面内温度分布の不均一を解消する効果を得るためにはフラッシュ光を照射する時点でのチャンバー6内の酸素濃度が高いほど好ましく、特に酸素濃度を90%以上とするのが好ましい。チャンバー6内の酸素濃度が90%以上であれば、フラッシュ光を照射したときにチャンバー6の内部に炭素系の汚染が付着するのを防止することもできる。
一方、より低いシート抵抗値を得るという観点からはフラッシュ光を照射する時点でのチャンバー6内の酸素濃度が低い方が好ましい。但し、有効な薄膜12の剥離効果、チャンバー6の内部への汚染付着防止効果および面内温度分布の不均一を解消する効果を得るためには、フラッシュ光を照射する時点でのチャンバー6内の酸素濃度が大気中の酸素濃度よりも高い、すなわち酸素濃度を21%以上とするのが望ましい。従って、フラッシュ光を照射する時点でのチャンバー6内の酸素濃度については、要求されるシート抵抗値、面内温度分布の均一性、薄膜12の剥離効果等のバランスを勘案して21%以上100%以下の間の任意と値とすることができる。なお、単に低いシート抵抗値を得るためだけであれば、チャンバー6の内部に酸素ガスを導入することなく(例えば、チャンバー6の内部を窒素雰囲気として)、表面に炭素の薄膜12を形成した半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射するようにしても良い。
また、チャンバー6内に酸素ガスを導入するタイミングは図8の例に限定されるものではなく、予備加熱よりも前から導入するようにしていても良い。すなわち、フラッシュ光を照射する時点でのチャンバー6内の酸素濃度が所定値となるのであれば、チャンバー6内に酸素ガスを導入するタイミングは任意である。
また、上記実施形態においては、ランプハウス5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。
また、上記実施形態においては、ホットプレート71を含む保持部7からの伝熱によって半導体ウェハーWの予備加熱を行っていたが、チャンバー6の底部にハロゲンランプを設け、そのハロゲンランプからの光照射によって半導体ウェハーWの予備加熱を行うようにしても良い。
また、本発明に係る技術は、シリコン膜が形成されたガラス基板に対して適用することもできる。