JP2014139168A - 架橋剤および封止材 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、架橋剤および封止材に関し、詳しくは、トリアリルイソシアヌレートを有効成分とする架橋剤および封止材に関する。以下、トリアリルイソシアヌレート(イソシアヌル酸トリアリル)を「TAIC」と表記する。
TAICの製造方法として、アリルクロライドとシアン酸ソーダとを反応させてアリルイソシアネート得、これを三量化するシアン酸ソーダ法(特許文献1)、塩基触媒存在下にアリルクロライドとイソシアヌル酸(シアヌル酸の互変異性体)とを反応させるイソシアヌル酸法がある(特許文献2)。
TAICは、耐熱性と耐薬品性に優れた架橋剤として有用であり、電子材料、液晶、半導体、太陽電池などの幅広い分野での使用が期待される。例えば、プリント配線基板、すなわち、集積回路、抵抗器、コンデンサー等の多数の電子部品を表面に固定し、その部品間を配線で接続することで電子回路を構成する板状またはフィルム状の部品においては、液体や気体などの物質が部品の内部に入り込まないようにするための封止材として、TAICの使用が提案されている(特許文献3)。斯かる提案において、TAICは、常温で粘性液体(融点26℃)であるため、液状封止材として使用されている。また、その濡れ性の向上のために、シランカップリング剤が添加されている。また、TAICは、架橋性高分子の架橋剤としても使用されている(特許文献4)。
ところで、上記の各製造法で得られるTAICの不純物については未だ報告されていないようであるが、金属腐食の原因となるような不純物は可能な限り除去する必要がある。
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、TAICの不純物の中から腐食原因物質を特定し、その原因物質の含有量の少ないTAICを有効成分とする架橋剤および封止材を提供することにある。
本発明者は、上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、次のような知見を得た。
(1)シアン酸ソーダ法やイソシアヌル酸法で得られるTAICには、不純物の1つとして化学式(I)で表される有機塩素化合物が含まれているが、この有機塩素化合物は、水中で除々に加水分解し、塩素イオンを生じるため腐食の原因となる。
(2)化学式(I)で表される有機塩素化合物は、シアン酸ソーダとアリルクロライド中に不純物として含まれている化学式(II)で表される1,3−ジクロロプロペンとの反応で生成する。また、シアヌール酸と1,3−ジクロロプロペンとの反応でも生成する。
(3)化学式(I)で表される有機塩素化合物は、蒸留などの分離手段で除去することが出来ないが、化学式(II)で表される1,3−ジクロロプロペンは、アリルクロライドの蒸留精製により容易に分離することが出来る。
本発明は、上記の知見を基に完成されたものであり、その要旨は、以下の化学式(I)で表される有機塩素化合物を含有し且つその含有量が500ppm以下であるトリアリルイソシアヌレートを有効成分とする架橋剤に存する。また、他の要旨は、以下の化学式(I)で表される有機塩素化合物を含有し且つその含有量が500ppm以下であるトリアリルイソシアヌレートを有効成分とする封止材に存する。
本発明の架橋剤および封止材は、含有される不純物に起因する金属腐食を惹起することがないため、例えば、特にプリント配線基板の封止材として好適である。
以下、本発明を詳細に説明する。
先ず、説明の便宜上、本発明で使用するTAICの製造方法について説明する。
本発明で使用するTAICは、基本的には、前述の特許文献1に記載されたシアン酸ソーダ法または前述の特許文献2に記載されたイソシアヌル酸法によって製造される。
シアン酸ソーダ法は、アリルクロライドとシアン酸ソーダとを反応させてアリルイロシアネート得、これを三量化する方法である。反応条件の詳細は前述の特許文献1の記載を参照することが出来るが、本発明の好ましい態様においては、シアン酸ソーダ、塩化カルシウム、臭化カリウム、DMFからなる溶液にアリルクロライドを滴下し、その後、0.5〜5時間、100〜150℃で反応熟成を行う。
イソシアヌル酸法は、塩基触媒存在下にアリルクロライドとイソシアヌル酸とを反応させる方法である。反応条件の詳細は前述の特許文献2の記載を参照することが出来るが、本発明の好ましい態様においては、イソシアヌル酸、DMF、トリエチルアミンからなる溶液にアリルクロライドを滴下し、その後、0.5〜5時間、100〜150℃で反応熟成を行う。
本発明においては、上記の何れの場合においても原料として1,3−ジクロロプロペンの含有量(シス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物としての含有量)が200ppm以下であるアリルクロライドを使用することが重要である。
通常、工業用アリルクロライドには、プロピルクロライド、1,2−ジクロロプロペン、1,3−ジクロロプロパン、1,3−ジクロロプロペン類などの不純物が含まれている。1,3−ジクロロプロペンの含有量が200ppm以下であるアリルクロライドは、工業用アリルクロライドを精密蒸留することにより得ることが出来る。精密蒸留に使用する蒸留塔の理論段数は、通常50段以上、好ましくは60〜90段であり、また、還流比は、通常5以上、好ましくは7〜10である。1,3−ジクロロプロペンの含有量(シス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物としての含有量)は、好ましくは100ppm以下である。
次に、本発明の架橋剤および封止材の有効成分であるTAICについて説明する。本発明で使用するTAICは、例えば、前述の製造方法で得られ、以下の化学式(I)で表される有機塩素化合物を含有し且つその含有量が500ppm以下であることを特徴とする。
TAIC中の化学式(I)で表される有機塩素化合物の含有量は、好ましくは300ppm以下、更に好ましくは100ppm以下、特に好ましくは30ppm以下である。本発明の架橋剤および封止材は、金属腐食を惹起する不純物の含有量が少ないため、特にプリント配線基板の封止材として好適である。また、架橋性エラストマーと混合し、加熱、放射線などにより加硫し、電子材料、半導体、太陽電池材料の封止材として使用したり、架橋性熱可塑性樹脂と混合して電子線などにより加硫して電線などの被覆に好適に使用される。
因に、TAICの製造方法としては、前述のシアン酸ソーダ法およびイソシアヌル酸法の他に、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン(塩化シアヌル)とアリルアルコールとを反応させてトリアリルシアヌレート(以下、「TAC」と表記する)を得、これを転移反応させる製造方法(TAC転移法)があるが、この製造法で得られるTAICは化学式(I)で表される有機塩素化合物を含有していない。
以下、本発明を実施例より更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。以下の諸例における分析方法は次の通りである。
(1)1,3−ジクロロプロペンの分析:
この分析は、GC−MS(Gas Chromatograph−Mass Spectrometry)によるシングルイオンモニタリング法(SIM法)によって行った。表1に分析条件を示す。なお、検出限界は0.5ppmである。比較例1の場合、1,3−ジクロロプロペンの分析試料は20倍に希釈して使用した。
この分析は、GC−MS(Gas Chromatograph−Mass Spectrometry)によるシングルイオンモニタリング法(SIM法)によって行った。表1に分析条件を示す。なお、検出限界は0.5ppmである。比較例1の場合、1,3−ジクロロプロペンの分析試料は20倍に希釈して使用した。
(2)化学式(I)の有機塩素化合物の分析:
この分析はガスクロマトグラフ(面積百分率法)によって行った。表2に分析条件を示す。なお、検出限界は10ppmである。
この分析はガスクロマトグラフ(面積百分率法)によって行った。表2に分析条件を示す。なお、検出限界は10ppmである。
比較例1:
シアン酸ソーダ100g、塩化カルシウム14g、臭化カリウム13g、DMF500gからなる溶液を120℃に保持し、アリルクロライド(1,3−ジクロロプロペン:シス体140ppm、トランス体140ppmを含む)98gを滴下した。反応熟成した後、溶媒を留去し、油状物を得た。次いで、この油状物について水洗浄し、得られた有機層を減圧蒸留し、粘調液体としてTAC得た(収率90%)。このTAICには化学式(I)の有機塩素化合物が590ppm含まれていた。
シアン酸ソーダ100g、塩化カルシウム14g、臭化カリウム13g、DMF500gからなる溶液を120℃に保持し、アリルクロライド(1,3−ジクロロプロペン:シス体140ppm、トランス体140ppmを含む)98gを滴下した。反応熟成した後、溶媒を留去し、油状物を得た。次いで、この油状物について水洗浄し、得られた有機層を減圧蒸留し、粘調液体としてTAC得た(収率90%)。このTAICには化学式(I)の有機塩素化合物が590ppm含まれていた。
実施例1:
比較例1において、原料のアリルクロライドとして、1,3−ジクロロプロペン(シス体0.1ppm、トランス体0.1ppmを含むアリルクロライドを使用した他は、比較例1と同様にしてTACを製造した(収率91%)。このTAICには一般式(I)の有機塩素化合物は検出されなかった(10ppm未満)。
比較例1において、原料のアリルクロライドとして、1,3−ジクロロプロペン(シス体0.1ppm、トランス体0.1ppmを含むアリルクロライドを使用した他は、比較例1と同様にしてTACを製造した(収率91%)。このTAICには一般式(I)の有機塩素化合物は検出されなかった(10ppm未満)。
試験例1(TAICの加水分解試験):
前記の各例で得られたTAIC1gと水20gとをテフロン(登録商標)製耐圧容器に入れ、120℃で200時間加熱した後、水中の塩素イオン濃度を測定した。塩素イオン濃度の測定はイオナクロマトグラフ(使用カラム:「DIONEX Ion Pack AS12A」、溶離液:2.7mM−Na2CO3/0.3mM−NaHCO3)で行った。検出限界は1ppmである。結果を表3に示す。
前記の各例で得られたTAIC1gと水20gとをテフロン(登録商標)製耐圧容器に入れ、120℃で200時間加熱した後、水中の塩素イオン濃度を測定した。塩素イオン濃度の測定はイオナクロマトグラフ(使用カラム:「DIONEX Ion Pack AS12A」、溶離液:2.7mM−Na2CO3/0.3mM−NaHCO3)で行った。検出限界は1ppmである。結果を表3に示す。
TAICの製造方法として、アリルクロライドとシアン酸ソーダとを反応させてアリルイソシアネートを得、これを三量化するシアン酸ソーダ法(特許文献1)、塩基触媒存在下にアリルクロライドとイソシアヌル酸(シアヌル酸の互変異性体)とを反応させるイソシアヌル酸法がある(特許文献2)。
シアン酸ソーダ法は、アリルクロライドとシアン酸ソーダとを反応させてアリルイソシアネートを得、これを三量化する方法である。反応条件の詳細は前述の特許文献1の記載を参照することが出来るが、本発明の好ましい態様においては、シアン酸ソーダ、塩化カルシウム、臭化カリウム、DMFからなる溶液にアリルクロライドを滴下し、その後、0.5〜5時間、100〜150℃で反応熟成を行う。
比較例1:
シアン酸ソーダ100g、塩化カルシウム14g、臭化カリウム13g、DMF500gからなる溶液を120℃に保持し、アリルクロライド(1,3−ジクロロプロペン:シス体140ppm、トランス体140ppmを含む)98gを滴下した。反応熟成した後、溶媒を留去し、油状物を得た。次いで、この油状物について水洗浄し、得られた有機層を減圧蒸留し、粘調液体としてTAICを得た(収率90%)。このTAICには化学式(I)の有機塩素化合物が590ppm含まれていた。
シアン酸ソーダ100g、塩化カルシウム14g、臭化カリウム13g、DMF500gからなる溶液を120℃に保持し、アリルクロライド(1,3−ジクロロプロペン:シス体140ppm、トランス体140ppmを含む)98gを滴下した。反応熟成した後、溶媒を留去し、油状物を得た。次いで、この油状物について水洗浄し、得られた有機層を減圧蒸留し、粘調液体としてTAICを得た(収率90%)。このTAICには化学式(I)の有機塩素化合物が590ppm含まれていた。
実施例1:
比較例1において、原料のアリルクロライドとして、1,3−ジクロロプロペン(シス体0.1ppm、トランス体0.1ppmを含むアリルクロライドを使用した他は、比較例1と同様にしてTAICを製造した(収率91%)。このTAICには一般式(I)の有機塩素化合物は検出されなかった(10ppm未満)。
比較例1において、原料のアリルクロライドとして、1,3−ジクロロプロペン(シス体0.1ppm、トランス体0.1ppmを含むアリルクロライドを使用した他は、比較例1と同様にしてTAICを製造した(収率91%)。このTAICには一般式(I)の有機塩素化合物は検出されなかった(10ppm未満)。
Claims (6)
- トリアリルイソシアヌレートがシアン酸ソーダ又はイソシアヌル酸とアリルクロライドとの反応で得られたものである請求項1に記載の架橋剤。
- アリルクロライド中の1,3−ジクロロプロペンの含有量(シス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物としての含有量)が200ppm以下である請求項2に記載の架橋剤。
- 請求項1に記載の化学式(I)で表される有機塩素化合物を含有し且つその含有量が500ppm以下であるトリアリルイソシアヌレートを有効成分とする封止材。
- トリアリルイソシアヌレートがシアン酸ソーダ又はイソシアヌル酸とアリルクロライドとの反応で得られたものである請求項4に記載の封止材。
- アリルクロライド中の1,3−ジクロロプロペンの含有量(シス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物としての含有量)が200ppm以下である請求項5に記載の封止材。
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