本発明は、係止具を使用して物品を取付る際の取付具に関する。
近年、カメラや携帯音楽プレイヤー、ゲーム機器、携帯電話、照明器具、IC付き身分証明カード等の電子機器の小型化や多様化に伴い、これらの電子機器を含む多くの物品を、ズボン、鞄、靴、帽子などの被取付対象へ取付けたいという要求が増えてきている。
そして、被取付対象に物品の取付を行う為の取付具は、特許文献1のような、被取付対象と取付具に互いを取付る為に専用の係止具を設けた取付具が一般的である。また、より多くの取付場所を提供可能とする為、特許文献2のように、被取付対象に取付を行う為の係止具を必要としないクリップのような係止具を使用した取付具が開示されている。その一方で、物品取付の為に使用可能な係止具の多くは、主に被取付対象に、自身の部位や部品を繋ぐ目的で既設され使用されている事が多く、使用場所や数量も多い。
特許文献1の発明は、取付具と被取付対象に互いに取付専用の係止具を設ける為、係止具を使用した確実な取付が可能となるが、取付場所が限られるという問題や、非取付時には被取付対象に係止具のみ残留してしまうというデザイン上の問題が発生する。また、特許文献2の発明では、取付具のみに係止具が設けられ、被取付対象となる衣服などの端部を挟み込む事で取付可能となる為、服のポケットやベルト等、取付場所の選択肢が広がる利点がある。一方で、取付具が複雑な構造を持つ高価な物であり、また、被取付対象には取付けの為の係止具がない為、衝撃や振動により脱落しやすいという欠点がある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、被取付対象に既設されている係止具を使用して物品の取付けを可能とし、より確実で、より安価で、よりデザイン性の高いスマートな物品の取付が可能な取付具を提供することを目的とする。
課題を解決する為の手段
上記課題を解決する為、請求項1に記載の発明に係る取付具は、被取付対象に物品を取付る為の取付具において、被取付対象に取付る為に設けられた係止基部と、この係止基部に接続され、物品を取付る為の手段をもつ物品取付部と、係止基部には、1対の雌部と雄部で構成される係止具と、を有し、係止具の雄部と雌部は、雄部の係止方向と、雌部の係止方向と、が略反対を向くように係止基部に固着されている、ことを特徴としている。
請求項2に記載の発明に係る取付具は、被取付対象に物品を取付る為の取付具において、物品と、この物品と一体に形成された、被取付対象に取付る為に設けられた係止基部と、係止基部には、1対の雌部と雄部で構成される係止具と、を有し、係止具の雄部と雌部は、雄部の係止方向と、雌部の係止方向と、が略反対を向くように係止基部に固着されている、ことを特徴としている。
請求項3に記載の発明は、請求項1〜請求項2のいずれかに記載の取付具で、上記係止基部の係止具の雄部と雌部は、それぞれの係止方向に対して垂直な平面に投影しても互いが重ならない様にオフセットされ、雄部の係止方向における雌部との距離を所望の距離に設定して、係止基部にそれぞれ固着した、ことを特徴としている。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の取付具で、上記係止基部にある係止具の雄部と被取付対象の係止具の雌部が係止する第1係止部の第1係止力と、係止基部にある係止具の雌部と被取付対象の係止具の雄部が係止する第2係止部の第2係止力において、係止基部に固着された係止具は、第1係止部を構成する雄部と、第2係止部を構成する雌部の、いずれか1方または両方の係止力を構成する要素を変更し、第1係止力と第2係止力を不均等とした、ことを特徴としている。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の取付具で、上記係止基部にある係止具の雄部と被取付対象の係止具の雌部が係止する第1係止部と、係止基部にある係止具の雌部と被取付対象の係止具の雄部が係止する第2係止部において、第1係止部を構成する係止基部の係止具の雄部の大きさや形状を、第2係止部を構成する被取付対象の係止具の雄部と比較して異なる物とする第1手段と、第2係止部を構成する係止基部の係止具の雌部の大きさや形状を、第1係止部を構成する被取付対象の係止具の雌部と比較して異なる物とする第2手段と、第1手段と第2手段のいずれか1つ、もしくは両方の手段を持つ、ことを特徴としている。
発明の効果
本発明によれば、物品などの取付の為に特別な係止具を使用することなく、被取付対象に既設されている係止具を使用して、より確実で、より安価に、よりデザイン性の高いスマートな取付具を提供することができる。
本発明の第1の実施の形態における取付具の構造を示す斜視図
本発明の第2の実施の形態における取付具の示す斜視図
本発明の第2の実施の形態における取付具の、被取付対象へ取付た時の正面図(a)、断面図(b)、被取付対象から外した時の断面図(c)
本発明の第3、4の実施の形態に使用のベルト(被取付対象)の正面図
本発明の第3の実施の形態における取付具の、斜視図(a)、断面図(b)、物品を取付た時の斜視図(c)、被取付対象へ取付た時の概略図(d)
本発明の第4の実施の形態における取付具の、斜視図(a)、断面図(b)、物品を取付た時の斜視図(c)、被取付対象へ取付た時の概略図(d)
本発明の第5の実施の形態における取付具に使用の係止具雌部の構造図
本発明の第6の実施の形態における取付具の構造を示す斜視図(a)、取付具に使用の係止具雌部の構造図(b)
本発明の第7の実施の形態における取付具と被取付対象の、取付具を被取付対象へ取付た時の正面図(a)、断面図(c)、取付具のみの断面図(b)、被取付対象のみの断面図(d)
本発明の8の実施の形態における取付具の、構造を示す斜視図(a)、(b)、被取付対象へ取付た時の正面図(c)、断面図(d)
本発明の第9の実施の形態における取付具の斜視図
本発明の第10の実施の形態における取付具の斜視図
本発明の第10の実施の形態における取付具を、ジャケットに取付た時の正面図(a)、ブーツに取付た時の側面図(b)、ズボンの裾をまとめるベルトに取付た時の側面図(d)、ズボンの裾をまとめるベルトの構造図(c)
発明を実施する為の形態
以下、本発明に係る取付具の実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
本実施の形態は、名札ホルダーを取付けた取付具であり、図1に従って説明する。
図1(a)は取付具00の構造をわかりやすく説明する為に係止具を外した取付具00の斜視図である。図1(b)は取付具00の斜視図である。取付具00は物品取付手段3である物品を接着する為の接着面をもつ物品取付部2と、被取付対象に取付る為に設けられた係止基部1を基本構造体としている。物品取付部2と係止基部1は樹脂で一体成形され接続されている。係止基部1には外側に向かい略反対方向の係止具取付部8と係止具取付部9が設けられており、係止具取付部8には面ファスナー10の雄部5Mが接着により固着され、係止具取付部9には面ファスナー10の雌部5Fが雄部5Mと背中合わせとなるように接着されている。
この為、雄部5Mの係止方向Mと雌部5Fの係止方向Fが反対方向を向く構造となっている。さらに係止基部1と係止基部1に設けられた雄部5Mと雌部5Fは被取付対象に取付の為に専用に設けられている。
図1(c)は取付具00の物品取付手段3の接着面に樹脂で成形された名札ホルダー30(物品)を接着剤により接着した状態の斜視図である。
なお、本実施の形態では、物品を取付る為の手段として接着剤による接着を使用しているが、鋲や、ボタンなどの係止具、を使用した取付手段を用いても同様の効果を奏する。
また、この取付具00は、これから説明の第2の実施の形態と取付具と物品の接続方法を除いて全く同じである為、第2の実施の形態で同じ符号を用いて詳細に説明する。
(第2の実施の形態)
本実施の形態を図2、図3で詳細に説明する。図2は係止基部1が名札ホルダー30(物品)と一体に形成された取付具00の斜視図であり、図3は取付具00の被取付対象100である服への取付け方法を図示している。なお、取付具00の係止基部1の構造については第1の実施の形態と同じである為、説明を省略する。
取付具00の係止基部1は、名札ホルダー30の1端面に設けられ、名札ホルダー30と一体に樹脂成形されている。
図3に、取付具00を服に取付けた様子を示す。図3(a)に取付時の正面図を、また、図3(a)中の1点鎖線AA´における断面図を図3(b)に示す。図3(c)に図3(b)の状態から取付具00を取り外した状態の1点鎖線AA´における断面図を示す。
服には自身にあるポケット蓋部と服表地を繋ぐ為に、取付具00の面ファスナー10と係止可能な同じ種類の面ファスナーで、正対する1対の雌部6Fと雄部6Mで構成の面ファスナー20が既設されている。具体的には、服のポケット蓋部の裏側には雄部6Mが、その係止方向を服表地に向くように縫付けられ、服表地には雌部6Fが、6Mと係止可能な位置に係止方向がポケット蓋部を向くように縫付けられている。服の雄部6Mと雌部6Fはポケット蓋部と服表地に正対する様に設けられている為、お互いが係止可能となる。
このようなポケット蓋部の役割は、ポケットへの物品収容時には、ポケットの蓋を開けてポケット内部への出入りを可能にし、通常時は蓋を閉じることでポケット収容物の外部への飛散防止や、収容物が外部から安易に見られないようにするものである。このポケット開口部の開閉が面ファスナー20が服に既設されている本来の目的で、取付具00の取付とは別の目的である。
そして取付具00は服のポケット蓋部と服表地に既設の面ファスナー20を使用して取付けを行う。
具体的には、被取付対象100の雌部6Fと取付具00にある係止基部1の雄部5Mが係止し、且つ、被取付対象100の雄部6Mと係止基部1の雌部5Fが係止する方向で、被取付対象100の正対する雄部6Mと雌部6Fの間に係止基部1を挿入し、係止基部1を雌部6Fと雄部6Mの間に挟着することにより、係止基部1を被取付対象100へ取付ることが可能となる。
取付具00の使用時には服のポケット蓋部と服表地は、取付具00の係止基部1を介して間接的に繋がれ、取付具00も確実に服に取付けられている。
具体的には、係止基部1にある雄部5Mと被取付対象100にある雌部6Fが係止する第1係止部と、係止基部1の雌部5Fと被取付対象100の雄部6Mが係止する第2係止部と、これら2つの係止部が係止することにより被取付対象100の雄部6Mと雌部6Fが係止基部1を介して間接的に係止されることとなる。さらに係止基部1は上記第1係止部と第2係止部の2カ所の係止具を使用した係止部により確実に取付けられる。
さらに、服の面ファスナー20の本来の目的の1つであるポケット蓋部の開口も実現可能なうえ、その際も取付具00は服へ取付けられたまま残留することが可能となる。
具体的には、上記第1係止部と第2係止部のいずれかを外すことで係止基部1により間接的に繋がれていた被取付対象100の雄部6Mと雌部6Fを外すことが可能となり、その際、外されずに残されたもう一方の係止部により係止基部1は被取付対象100に取付けられたまま残留することとなる。
以上のとおり服に既設されている面ファスナー20を使用して、面ファスナー20の本来の目的である、ポケット蓋部と服表地を繋ぐ目的を妨げることなく、同時に取付具00の取付が実施可能となる。また図3(c)に示されるとおり、取付具00を使用しない場合は服に既設されている面ファスナー20のみが残される為、先行技術の問題点である物品取付の為の係止具が残されるといった不具合が発生しない。また、取付には被取付対象に既設されている汎用の係止具を使用する為、取付の為に専用の複雑な構造を持つ高価な係止具も必要としない。つまり、本発明に係る取付具を使用することで、係止具を使用したより確実で、より安価で、よりデザイン性の高いスマートな名札ホルダー30の取付が可能となる。
このように、本発明による取付具を使用する事で、本来の“繋ぐ”目的の為に被取付対象に既設されている係止具を使用して、その係止具を使用した第1係止部と第2係止部による確実な物品の取付を可能とする。また、被取付対象に既設されている“繋ぐ”目的の為の係止具を外す際も、取付具は被取付対象から外れることが無い。つまり本発明に係る取付具を使用する事で、被取付対象に既設の係止具の本来の目的に、その目的を一切損なうことなく、物品取付の目的を追加することが可能となる。
さらに係止基部1の取付場所としては、服のポケット蓋部に限らず、被取付対象自身に属する2つ以上の部位または部品を繋ぐ為に既設され正対する1対の雌部と雄部で構成される係止基部1と係止可能な同じ種類の係止具を持つ場所であれば取付け可能となる。
また本実施の形態では、係止基部1と被取付対象100に設けられた雄部と雌部で構成される係止具として面ファスナーを使用しているが、ボタン、スナップボタン、バックル、ファスナー、チャック、ひねり、などの雄部と雌部で構成される係止具であれば同様に適用でき、同様の効果を奏する。
本実施の形態では、係止基部1の形状が係止基部1の雄部5Mと雌部5F、並びに被取付対象100の雄部6Mと雌部6F形状に合わせて矩形となっているが、係止基部1や被取付対象100の係止具の形状に合わせて、楕円形、多角形、丸状、リング状など、取付具00や被取付対象100に既設の係止具の目的に沿った機能的な形状としても良い。
(第3の実施の形態)
本実施の形態を図4、図5で詳細に説明する。図4は被取付対象100となるベルトについて示し、図5では物品取付手段3として貫通孔をもつ物品取付部2を有した取付具00と、取付具00のベルトへの取付け方法を図示している。
図5(a)は取付具00の斜視図で、図中の1点鎖線BB´における断面を図5(b)に示す。取付具00は貫通孔をもつ物品取付部2と、被取付対象に取付る為に設けられた係止基部1を基本構造体とし、物品取付部2と係止基部1は樹脂で一体成形され接続されている。係止基部1には外側に向かい略反対方向の係止具取付部8と係止具取付部9が設けられており、係止具取付部8に樹脂製のバックル11の雄部5Mが、また、係止具取付部9にはバックル11の雌部5Fが雄部5Mと背中合わせとなるように、係止基部1にそれぞれ一体成形にて固着されている。
図4はベルトの正面図で、自身の両端部には、両端部を繋ぐ為に取付具00のバックル11と係止可能な同じ種類のバックルで、正対する1対の雌部と雄部で構成のバックル21が既設されている。このようなベルトは様々な場所で利用されているが、例えば衣服などがずれ落ちないようにする目的で衣服やズボン腰部の締付け具などに利用される。
図5(c)にポーチ31(物品)を糸で貫通孔に縫い付けた取付具00を示し、図5(d)にはポーチ31を付けた取付具00を、ベルトに取付けた様子を示す。なお、第2の実施の形態と同様の部分については同一の符号を用いてその説明を省略する。
本実施の形態では比較的大きな係止具であるバックルを使用している為、取付具00非使用時のベルトのバックル21が係止した時の雄部6Mと雌部6Fの距離L1と比較し、取付具00使用時の雄部6Mと雌部6Fの距離L2が長くなる現象が発生する。ベルトの使用目的が衣服の締付けの場合、取付具00非使用時の締付け具合から、取付具00の使用時にはL1とL2の差分の距離が本来のベルトの全長に加えられることになり、結果として締付け具合を緩める現象を発生させる。しかしながら、このような現象が問題になるか否かは、ベルト装着時の使用者の感覚によって判断される物で、必ずしも問題になるとは限らない。一般的には、上記現象が数センチメートルであれば問題にはならない。
(第4の実施の形態)
上記現象を解決する為の本実施の形態を図6で詳細に説明する。図6(a)は取付具01の斜視図で、図中の1点鎖線CC´における断面を図6(b)に示す。さらに図6(c)にポーチ31(物品)を取付けた取付具01を示し、図6(d)にはポーチ31を取付けた取付具01を、ベルトに取付けた様子を示す。
取付具01は取付具00と同様、物品取付手段3となる貫通孔をもつ物品取付部2と、係止基部1と、係止基部1にあるバックル11が樹脂で一体成形されている。ただし、取付具00と異なり、取付具01の係止基部1には、バックル11の雄部5Mと雌部5Fが、それぞれの係止方向に垂直の平面に投影しても互いが重ならない様に距離L4の量をオフセットされ、且つ、それぞれの係止方向が反対を向き固着できるように、係止具取付部8と係止具取付部9が設けられている。この係止基部1と係止基部1に設けられた雄部5Mと雌部5Fは被取付対象に取付の為に専用に設けられている。
つまり、取付具01の雄部5Mと雌部5Fは互いの係止方向が反対となるように設けられている為、雄部5Mと雌部5Fは、そのどちらかの係止方向に設けた平面に投影しても互いが重ならない様にオフセットされていることになる。また係止基部1の係止具取付部8と係止具取付部9はこの条件が満たされるように設定され設けられている。以上の係止基部1により、距離L3を所望の量に設定可能となる。
より詳細に図6(b)を使用して説明する。係止具取付部8を基準に、係止具取付部9を係止具取付部9に固着される雌部5Fの係止方向Fの方向に移動させると距離L3は長くなり距離L2より長くする事も可能となる。逆に係止具取付部9を係止具取付部8に固着される雄部5Mの係止方向Mの方向に移動させると距離L3は短くなり、距離L1より短くする事も可能となる。取付具01はL3とL1が等しくなるように係止具取付部8と係止具取付部9を設定し、取付具01を使用する事で、第3の実施の形態で説明した取付具00を使用時における距離L2が距離L1よりも長くなるという現象を抑えている。
距離L4について考察すると、距離L4は図6(b)で理解できるが、係止方向に垂直な方向における雄部5Mの幅の半分の距離W1と、同方向における雌部5Fの幅の半分の距離W2と、同方向における係止基部1の幅の距離W3の和となる。ここで、雄部5Mの幅、と、雌部5Fの幅、と表現しているが、この幅はそれぞれの一部の幅を示すものでは無く、雄部5M、雌部5F共に係止具として機能する有効な部分の幅を指し示していることは言うまでもない。そしてオフセット距離L4を設けたのは、距離L1と距離L3の差を小さくする為であり、同様の理由から、図4の状態では略0となる距離L4についても可能な限り小さい方が好ましい。従って、係止具の雄部5Mと雌部5Fが係止基部1と一体で形成されているような取付具01において、距離L4の最良値はW1とW2の和の最小値となる。また、取付具や係止基部の構造上の理由から距離W3が必要な場合でも、係止基部1や取付具01の構造を維持する上で可能な限り短い距離が好ましい。
本実施の形態の他の構成については、第3の実施の形態と同様である為、ここでの説明は繰り返さない。
(第5の実施の形態)
本実施の形態を図7、図2、図3で説明する。本実施の形態では、先に説明した第2の実施の形態における取付具00の係止基部1にある面ファスナー10において、その面ファスナー10を構成する雌部5Fを雌部5F′に変更している。他の構成については第2の実施の形態と同様である為、ここでの説明は繰り返さない。
本実施の形態では第2の実施の形態で使用の図7(a)に示す面ファスナー10の雌部5Fに変えて、図7(b)に示す雌部5F′を使用している。これにより、取付具00の係止基部1にある面ファスナー10の雄部5Mと被取付対象100の面ファスナー20の雌部6Fが係止している第1係止部の第1係止力と、係止基部1にある面ファスナー10の雌部5Fと被取付対象100の面ファスナー20の雄部6Mが係止している第2係止部の第2係止力において、第1係止力と第2係止力を意図的に不均等としている。
面ファスナーは、雌部と雄部の表面に互いに嵌合可能な素子を無数に備え、この素子が嵌合する事で係止具として機能する。面ファスナー10と面ファスナー20は、雄部表面に無数のフック状の素子を持ち、雌部表面に無数の繊維質でループ状の素子を持つ構造をしている。面ファスナーの係止力を構成する要素としては、各素子を有する雌部、雄部の面積を変更する方法、雄部と雌部が互いに有効に嵌合する面積を変更する方法、雄部と雌部を構成するそれぞれの素子の密度や形状を変更する方法などが有る。
本実施の形態は、面ファスナーの係止力の調整を、面ファスナー10の雌部5Fに設けられている繊維質でループ状の素子200が存在する面積を変更する事で実現している。具体的には図7で示すとおり5Fにある繊維質でループ状の素子200を間引き、5Fと比較して5F′の繊維質でループ状の素子200が存在する面積を小さく設定した。
そして被取付対象100の雌部6Fと同種類で同じ面積の雌部5Fを雌部5F′に変更し第1係止部の第1係止力と第2係止部の第2係止力を不均等に、つまり、第2係止力を第1係止力より弱く設定した。これにより、使用者がポケット収容物にアクセスする際、ポケット蓋部を引っ張ると取付具00がより大きな係止力を持つ服表地側(第1係止部側)に残留してポケット蓋部が外れる為、取付具00をポケット蓋部と一緒に持ち上げる必要が無く、使い勝手の良い取付具00を提供可能となる。
本実施の形態では取付具00の雌部5Fの係止力を構成する要素を変更して第1係止力と第2係止力を不均等としたが、雄部5Mの係止力を構成する要素を変更して第2係止力を操作しても良い。また第1係止力と第2係止力を同時に操作しても良い。
ところで、面ファスナーのような係止具の特徴として、雌部と雄部が係止する力は前述の通り面積に比例する。従って取付具00の使用時における被取付対象100の雄部6Mと雌部6Fが間接的に係止される係止力は、被取付対象の面ファスナー20よりも係止基部1の面ファスナー10の面積が大きい場合、雄部6Mと雌部6Fが直接係止した時の係止力と略等価となる。逆に面ファスナー20よりも面ファスナー10の面積が小さい場合は面ファスナー10の雄部5Mと雌部5Fが直接係止した時の係止力と略等価となる。
ただし、面ファスナー20よりも面ファスナー10の面積が小さい場合で、且つ、係止基部1の面積と面ファスナー10の面積が等しい場合は、面ファスナー20と面ファスナー10が重ならない部分、つまり、面ファスナー20が面ファスナー10と係止できない面は、雄部6Mと雌部6Fが直接係止可能となる。この為、雄部6Mと雌部6Fが間接的に係止される係止力は、雄部6Mと雌部6Fが直接係止した時の係止力と略等価となる。さらにこの場合、係止基部1の雄部5Mもしくは雌部5Fのいずれかの面積を0として係止力を不均等としても、係止基部1は面積を0としなかった雄部5Mもしくは雌部5Fと雌部6Fもしくは雄部6Mのいずれかが係止する事で取付けが可能となる為、面ファスナー20の本来の目的である被取付対象自身に属する2つ以上の部位または部品を繋ぐということと取付具00の取付が同時に可能となる。
(第6の実施の形態)
本実施の形態を図8で説明する。図8では係止具としてスナップボタンを使用した取付具00を図示している。なお、本実施の形態では、スナップボタンを使用した場合の取付具の特徴を説明しており、前述の実施の形態と同様の部分については同一の符号を用いてその説明を省略する。
図8(a)に示す通り、取付具00は物品と縫い合わせ可能な物品取付部2と、被取付対象に取付る為の係止基部1で構成されており、物品取付部2と係止基部1は1枚の布地に設けられている。係止基部1には係止方向を略反対になるように、金属製のスナップボタン12の雄部5Mと雌部5Fが略背中合わせに縫い付けられている。
そして、取付具00は、被取付対象自身に属する2つ以上の部位または部品を繋ぐ為に既設され、正対する1対の雌部と雄部で構成の取付具00のスナップボタンと係止可能な同じ種類の金属製のスナップボタンを持つ被取付対象への取付けが可能となる。
スナップボタンは金属製のものや樹脂製のものがある。多くは凸状の雄部と、雄部に嵌合可能な凹状の雌部で構成されており、雄部もしくは雌部に弾性部材が設けられ、相手側にはこの弾性部材と係合する係合部が設けられている。そしてこの弾性部材と、係合部が係合することで係止具として利用可能となる。樹脂製のものには特別な弾性部材を設けず、樹脂自体がもつ弾性を利用した物もある。このようなスナップボタンの係止力の変更は、上記弾性部材の係合部側へ付勢する力を制御することで可能となる。また、雄部と嵌合する雌部の凹状の内径を変更したり、逆に雌部と嵌合する雄部の凸状の外径を変更したりする方法がある。取付具00は図8(b)に示すとおり、スナップボタン12の雌部5F内部に弾性体として設けられている金属製のばね202のばね係数を、被取付対象に既設のスナップボタンの雌部に弾性体として使用しているばねのばね係数に比べて大きく設定している。これにより係止基部1の雄部5Mと被取付対象の雌部が係止している第1係止力と、係止基部1の雌部5Fと被取付対象の雄部が係止している第2係止力において、第1係止力と第2係止力を不均等、且つ第2係止力を第1係止力より強くしている。
(第7の実施の形態)
本実施の形態を図9で詳細に説明する。なお、ボタン13とボタン23は、雄部であるボタンと雌部であるボタンホールで構成されている。また、本実施の形態では、第2の実施の形態と同様の部分については同一の符号を用いてその説明を省略する。
図9(a)は名札ホルダー33を取付けた取付具00を被取付対象100である服へ取付けた状態の正面図であり、図9(c)は図9(a)の1点鎖線DD´における断面図を示している。また、図9(b)は図9(c)の取付具00と名札ホルダー33の構成のみの断面図を示しており、図9(d)は図9(c)から取付具00を外した際の、服の1点鎖線DD´における断面図を示している。
取付具00は、物品を縫い付け(物品取付手段)可能な物品取付部2と、被取付対象に取付る為の係止基部1によって構成されており、係止基部1にはそれぞれの係止方向が略反対となるようにボタン13の雄部5Mであるボタンと雌部5Fであるボタンホールが設けられている。より具体的には、取付具00は2枚の布地40Aと布地40Bで構成されている。布地40Aの1面に雄部5Mであるボタンが縫付けられている。布地40Aのもう1方の面には、雌部5Fであるボタンホールを設けた布地40Bが、雄部5Mと雌部5Fが略背中合わせとなる様に、その一端を布地40Aに縫付けられている。このとき、布地40Bの縫付けられている一端と反対側の端面は、布地40Aと布地40Bの間に指が挿入できるよう開口部が設けられている。さらに布地40Aの前記開口部と反対側には物品取付部2が設けられ、布地で作られた名札ホルダー33が縫付けられている。
そして服には自身にあるポケット蓋部と服表地を繋ぐ為に、取付具00のボタン13と係止可能な同じ種類のボタンで、正対する1対の雌部6Fと雄部6Mで構成のボタン23が既設されている。具体的には、服のポケット蓋部にはボタンホールである雌部6Fが設けられ、また、服表地にはボタンである雄部6Mが、雌部6Fと係止可能な位置に係止方向がポケット蓋部を向くように縫付けられている。服に既設の係止具の雄部6Mと6Fはポケット蓋部と服表地に正対する様に設けられている為、互いが係止可能となる。
そして取付具00は、ボタン23の雌部6Fとボタン13の雄部5Mが係止し、且つ、ボタン23の雄部6Mとボタン13の雌部5Fが係止する方向で、ボタン23の正対する雄部6Mと雌部6Fの間に係止基部1を挿入され、係止基部1を雌部6Fと雄部6Mの間に挟着することにより、取付具00を服へ取付ることが可能となる。
さらに、本実施の形態で示される取付具00は、係止基部1にあるボタン13の雄部5Mと服のボタン23の雌部6Fが係止している第1係止部と、係止基部1にあるボタン13の雌部5Fと服のボタン23の雄部6Mが係止している第2係止部において、第1係止部を構成する係止基部1の雄部5Mであるボタンの大きさ、形状を、第2係止部を構成する服の雄部6Mと異なる物とする第1手段を採用している。
この効果として具体的には、雄部5Mのボタンと雄部6Mのボタンの形状を異なる物にすることで第1係止部と第2係止部の、使用者による、主に視覚や手の触覚による差別化を実現して2つの係止部の選択を容易にすることにある。さらに、雄部6Mと比較して雄部5Mのボタン形状の指の掛かる部分を大きく取ることでボタンを外しやすくする効果を持たせ、優先的に第1係止部を選択可能としている。
前述のとおり取付具00は、雄部5Mであるボタンの大きさと形状を、服の雄部6Mと異なる物としているが、雌部5Fであるボタンホールの大きさと形状を、服の雌部6Fのボタンホールと異なる物とする第2手段を採用してもよい。ボタンと同様、より大きなボタンホールを形成することでボタンを外しやすくする事ができる。また、上記第1手段と第2手段を同時に採用しても良い。
(第8の実施の形態)
本実施の形態を図10で詳細に説明する。図10では取付具00と非接触ICタグ34(物品)を被取付対象100である服へ取付けている様子を図示している。なお、本実施の形態では、第2の実施の形態と同様の部分については同一の符号を用いてその説明を省略する。
図10(a)は取付具00の構造をわかりやすく説明する為、係止具を外した取付具00の斜視図である。図10(b)は取付具00の斜視図である。非接触ICタグ34は取付具00の係止基部1より小さく、係止基部1に収容可能となり、樹脂製の係止基部1に包まれ内蔵されている。つまり、物品と取付具が一体で形成されている。そのほかの構成は第2の実施の形態で使用した取付具00と同様である。
図10(c)は被取付対象100である服のポケット蓋部と服表地の間に取付具00を取付けた状態の正面図で、図10(d)は図10(c)の1点鎖線EE´における断面図を示している。図で示すとおり、服のポケット蓋部と服表地を繋ぐ為に既設されている面ファスナー20の雌部6Fと雄部6Mに非接触ICタグ34を内蔵した取付具00が挟着されて非接触ICタグ34の取付を行うことが可能となる。
非接触ICタグ34は、非接触通信による個人情報などの認証及び情報管理が行える仕組みをもつICを使用した技術で、近年、社員証などに利用されている。
(第9の実施の形態)
図11は本実施の形態である、第1の実施の形態で説明した取付具と物品取付手段3のみ異なる取付具00の構成を示している。なお、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様の部分については同一の符号を用いてその説明を省略する。
本実施の形態では物品取付部に設けられた物品取付手段3が貫通孔であり、この貫通孔を使用してカラビナ35を取付ている。
(第10の実施の形態)
図12と図13は本実施の形態を示している。なお、本実施の形態では、第2の実施の形態と同様の部分については同一の符号を用いてその説明を省略する。
本実施の形態における取付具00は図12のとおり、第2の実施の形態で使用の取付具と同様に面ファスナー10が固着された係止基部をもち、その係止基部は樹脂製のカメラホルダと一体に形成されている。そしてカメラホルダは小型カメラ36を搭載している。
図13(a)は小型カメラ36を搭載した取付具00を被取付対象100であるジャケットの、前立部分に使用されている面ファスナーに取付を実施した際の正面図である。前開きとなるジャケットの2つの前立て部分を互いに止める為に、ジャケットの前立て部分には複数組の正対する雄部と雌部で構成される面ファスナーが使用され、本実施の形態ではこのうちの1組の面ファスナーを使用して、取付具00を取付ている。
また、図13(b)は小型カメラ36を搭載した取付具00を被取付対象100であるブーツに取付けを実施した時の側面図である。取付は、ブーツ本体の、脛部の締め付けを行うベルト状の締め具とブーツ本体の間で使用されている面ファスナーを使用して実施している。この脛部の締め付けを行うベルト状の締め具は一端をブーツ本体に固定され、ブーツ本体側の面に面ファスナーの雄部が固着されている。また、ブーツ本体側の締め具と正対する部位には面ファスナーの雌部が固着され、締め具側の雄部と、ブーツ本体側の雌部が互いに係止し、ブーツ脛部の締め付けが可能となる。図13(b)はこれら1対の面ファスナーを使用して、小型カメラ36を搭載した取付具00を取付けている。
図13(c)は被取付対象100であるズボンの裾をまとめるベルトを図示している。ズボンの裾をまとめるベルトはベルト形状で、その一端には取付具00と同じ面ファスナーを使用した面ファスナー28の雄部6Mが、反対側の端には面ファスナー28の雌部6Fが備わっており、図13(d)の示す通り足裾に巻き付ける事で使用される。ズボンの裾をまとめるベルトの両端に設けられた雄部6Mと雌部6Fは、使用時に正対して係止可能となるように、ズボンの裾をまとめるベルトの両端の表側と裏側にそれぞれ設けられている。このズボンの裾をまとめるベルトの両端に既設の面ファスナー28を使用して小型カメラ36を搭載した取付具00の取付を実施している。
上記3つの例のとおり、本発明に係る取付具の使用により、被取付対象に既設の係止具が持つ、2つ以上の部位または部品を繋ぐという本来の目的を阻害することなく、物品の取付が同時に実現可能となる。また、取付場所に取付具の為に専用の係止具を設ける必用が無い為、使用者に、より多くの取付場所を提供可能となる。
なお、前述の実施の形態は単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。
00…取付具、01…取付具、1…係止基部、2…物品取付部、3…物品取付手段(物品を取付る為の手段)、5F…係止基部の係止具の雌部、5F′…係止基部の係止具の雌部、5M…係止基部の係止具の雄部、6F…被取付対象に既設の係止具の雌部、6M…被取付対象に既設の係止具の雄部、8…係止具取付部、9…係止具取付部、10…面ファスナー(1対の雌部、雄部で構成される係止具)、11…バックル(1対の雌部、雄部で構成される係止具)、12…スナップボタン(1対の雌部、雄部で構成される係止具)、13…ボタン(1対の雌部、雄部で構成される係止具)、20…面ファスナー(1対の雌部、雄部で構成される係止具)、21…バックル(1対の雌部、雄部で構成される係止具)、23…ボタン(1対の雌部、雄部で構成される係止具)、28…面ファスナー(1対の雌部、雄部で構成される係止具)、30…名札ホルダー、31…ポーチ、33…名札ホルダー、34…非接触ICタグ、35…カラビナ、36…小型カメラ、40A…布地、40B…布地、100…被取付対象、200…面ファスナー雌部表面の繊維質でループ状の素子、202…ばね、F…係止方向、L1〜L4…距離、M…係止方向、W1〜W3…距離
上記課題を解決する為、請求項1に記載の発明に係る取付具は、着脱自在な1対の雌部と雄部で構成の係止具を、自分自身の部位や部品を繋ぐ目的で、その部位や部品に既設している被取付対象に、着脱自在な物品の取付を可能とする取付具であって、取付具は、被取付対象に取付る為に設けられた係止基部と、この係止基部に接続され、物品を取付る為の手段をもつ物品取付部と、係止基部には、1対の雌部と雄部で構成される係止具と、を有し、係止基部の係止具の雄部と雌部は、被取付対象に既設されている係止具の雌部と雄部にそれぞれ着脱自在に係止可能であると共に、雄部の係止方向と、雌部の係止方向と、が略反対を向くように係止基部に固着されており、係止基部にある係止具の雄部と雌部を、被取付対象の係止具の雌部と雄部の間にそれぞれが係止する方向で係止基部を挟着し着脱自在な取付を可能とした、ことを特徴としている。
請求項2に記載の発明に係る取付具は、着脱自在な1対の雌部と雄部で構成の係止具を、自分自身の部位や部品を繋ぐ目的で、その部位や部品に既設している被取付対象に、着脱自在な物品の取付を可能とする取付具であって、取付具は、物品と、この物品と一体に形成された、被取付対象に取付る為に設けられた係止基部と、係止基部には、1対の雌部と雄部で構成される係止具と、を有し、係止基部の係止具の雄部と雌部は、被取付対象に既設されている係止具の雌部と雄部にそれぞれ着脱自在に係止可能であると共に、雄部の係止方向と、雌部の係止方向と、が略反対を向くように係止基部に固着されており、係止基部にある係止具の雄部と雌部を、被取付対象の係止具の雌部と雄部の間にそれぞれが係止する方向で係止基部を挟着し着脱自在な取付を可能とした、ことを特徴としている。