JP2014127047A - 運航支援システム、及び運航支援方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電気推進船において、船舶の運航スケジュールを確保した上で、燃料費を削減できる。
【解決手段】電気推進船に対して運航支援を行う場合、1航海分のスケジュールを時間或いは位置でいくつかのゾーンに分割する。また、当該ゾーン毎に、気象海象情報から推進抵抗を予測し、推進抵抗に応じた推進出力を算出する。また、当該ゾーン毎に、気象情報及びイベント計画から船内電力を予測する。また、当該ゾーン毎に、エンジンの発電効率の最良な組み合わせを算出する。また、当該1航海分のスケジュールを確保した上で、当該各ゾーンの合計の燃料消費量が最小の航路及び船速配分を選定して運航計画を作成する際に、変分法の停留値の手法を用いて、現状のポイントに対し、個別のパラメータの各々を微小に変更しながら最大或いは最小となるパラメータの組み合わせを求め、ゾーン毎の運航計画の組み合わせの最適化を行い、1航海分の運航計画を作成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、運航支援システムに関し、特に大型客船等の運航支援システムに関する。
現状の技術において、一般船を対象としたシステムは、一部メーカが商品化している。一般船では、ほとんどのエネルギーは推進系統にて消費され、船員や乗客の居住のための電力は、総エネルギーの1割にも満たないので、一定値を仮定して問題ない。
また、現在においても、天候や海象(Sea condition)等に応じた運転は、船長の経験と勘に頼っていることが多い。船舶の運航情報はその航海限りで活用されるのみであり、データベースとして取得・蓄積されることがほとんどなく、次の航海に活用されていない。
また、大型客船等では、一般船と異なり、船内電力に関しては推進系統と並行して居住区の電力使用量も多いが、需要(Demand)が発生した際にその需要に応じて発電するだけであり、現状最適化等については考慮されていない。
また、船内の冷暖房に使用する冷水・温水の需要についても、事前に予測することなく、必要になった段階で必要な量を生成するだけであり、効率化については考慮されていない。
このように、大型客船等の運航支援システムの分野においては、依然として多くの改善の余地が残されている。
[公知技術]
この技術分野における公知技術として、特許文献1(特表2009−505210号公報)に船舶でのエネルギー源の使用を最適化する技術が開示されている。この公知技術では、燃料効率に関して最適化された船舶のコンピュータシミュレーションモデルを作成する。なお、コンピュータシミュレーションモデルを作成する際、船舶のコア構成要素及び構造特徴を説明する式群から式を選択し、船舶のコア構成要素及び構造についての特徴データ群からデータを選択する。更に、コンピュータシミュレーションモデルを使用して船舶の燃料効率を最適化する。しかし、この公知技術では、エネルギー源の使用を最適化することは考慮されているが、エネルギー予測に基づくシミュレーションや居住区のエネルギー需要も想定した最適化については考慮されていない。
他にも、最適化計算手法を用いて燃費最小となる最適な航路を探索する運航支援システムに関する公知技術として、特許文献2(特許第4970346号公報)に船舶の運航支援システムと船舶の運航支援方法が開示されている。また、特許文献3(特許第4934756号公報)に船舶最適航路計算システムが開示されている。また、特許文献4(特開2008−145312号公報)に最適航路探索方法が開示されている。
しかし、上記の各公知技術においても、排熱回収機器の運転状況を含めたトータルの燃料消費量を事前に正確に評価することはできていない。また、船の運航や船内機器、船内の居住区や店舗設備等のエネルギー需要予測に基づき、船内機器の運転計画立案や計画的なエネルギー需要のピークカット・ピークシフト等を行うことはできていない。更に、船内機器(発電機、排熱回収機器等)の仕様変更や新規導入時、これらの燃費への影響を評価することはできていない。
特表2009−505210号公報 特許第4970346号公報 特許第4934756号公報 特開2008−145312号公報
現状では、船舶の運航計画は、基本的に船長任せであった。この場合、一般的に、初めに船速を出して(高速にして)距離を稼ぎ、途中から低速にして到着時刻を運航計画に合わせる(到着時刻を調整する)ことが多い。
運航支援システムによる運航が一部試験的に開始されている。現在運用されている運航支援システムは、電力のほとんど(大半)を推進系統に消費されるため、効率の良い推進エネルギーで運航できるように、気象海象情報から航路(ルート)を選定するものであった。また、推進系統は1つであり、効率の良い推進エネルギーは推進器特性のみで決まっていた。したがって、推進特性と気象海象特性のみから決まる比較的単純なものであり、また、運航データを蓄積して燃費の良い運航を真似するだけで良かった。
しかし、客船のような大型船では、低速運航が主流になり推進以外の電力の比率が増える。しかも、船内でのイベントスケジュールにより船内電力使用量が変化する。このような状況では、従来の運航支援システムでは対応できず、更に燃料費の高騰も懸念事項となっているため、新たな運航支援システムと、省エネ(省エネルギー)となる運航指針(運航計画)が求められていた。
本発明に係る運航支援システムは、電気推進船の運航支援システムであって、1航海分のスケジュールを時間或いは位置でいくつかのゾーンに分割するゾーン分割部と、ゾーン毎に、気象海象情報から推進抵抗を予測し、推進抵抗に応じた推進出力を算出する推進出力設定部と、ゾーン毎に、気象情報及びイベント計画から船内電力を予測する船内電力予測部と、ゾーン毎に、エンジンの発電効率の最良な組み合わせを算出する発電最適化部と、1航海分のスケジュールを確保した上で、各ゾーンの合計の燃料消費量が最小の航路及び船速配分を選定し、運航計画を作成する電力需要予測部を備える。このとき、電力需要予測部は、変分法の停留値の手法を用いて、現状のポイントに対し、個別のパラメータの各々を微小に変更しながら最大或いは最小となるパラメータの組み合わせを求め、ゾーン毎の運航計画の組み合わせの最適化を行い、1航海分の運航計画を作成する。
本発明に係る運航支援方法では、電気推進船に対して運航支援を行う場合、1航海分のスケジュールを時間或いは位置でいくつかのゾーンに分割する。また、当該ゾーン毎に、気象海象情報から推進抵抗を予測し、推進抵抗に応じた推進出力を算出する。また、当該ゾーン毎に、気象情報及びイベント計画から船内電力を予測する。また、当該ゾーン毎に、エンジンの発電効率の最良な組み合わせを算出する。また、当該1航海分のスケジュールを確保した上で、当該各ゾーンの合計の燃料消費量が最小の航路及び船速配分を選定して運航計画を作成する際に、変分法の停留値の手法を用いて、現状のポイントに対し、個別のパラメータの各々を微小に変更しながら最大或いは最小となるパラメータの組み合わせを求め、ゾーン毎の運航計画の組み合わせの最適化を行い、1航海分の運航計画を作成する
本発明に係る運航支援用プログラムは、上記の運航支援方法における処理を、計算機等の電子機器に実行させるためのプログラムである。なお、本発明に係る運航支援用プログラムは、記憶装置や記憶媒体に格納することが可能である。
電気推進船等の運航スケジュールを確保した上で、燃料費を削減できる。
第1実施形態に係る運航支援システムの構成例を示す図である。 発電機が1台の場合の発電機出力と燃料消費量の関係を示す図である。 発電機が4台の場合の発電出力と燃料消費量の関係及び最適化について説明するための図である。 ある推進抵抗の時の推進電力に係る船速と燃料消費量の関係を示す図である。 本発明に係る変分法の停留値について説明するための図である。 本発明に係る燃料消費量の最小化(最適化)の手順の例を示すフローチャートである。 従来の船長任せの運航での船速配分の変化を示す図である。 従来の船長任せの運航での1時間毎の燃料消費量の変化を示す図である。 燃費改善後の運航での船速配分の変化を示す図である。 燃費改善後の運航での1時間毎の燃料消費量の変化を示す図である。 第2実施形態に係る運航支援システムの構成例を示す図である。 第3実施形態について説明するための図である。 第3実施形態に係る運航支援システムの構成例を示す図である。
<第1実施形態>
以下に、本発明の第1実施形態について添付図面を参照して説明する。
本実施形態に係る運航支援システムは、船内のエネルギー予測モデルと気象海象予測データ、航路案を用いて、電力需要予測を行う。電力需要予測では、推進モデルと、船内電力予測モデルと、発電モデルを組み合わせることにより、燃料消費量が最小の航路及び船速配分を選定する。
[システム構成]
図1に示すように、本実施形態に係る運航支援システムは、ゾーン分割部11と、推進出力設定部12と、船内電力予測部13と、発電最適化部14と、電力需要予測部15を備える。
ゾーン分割部11は、1航海分のスケジュールをいくつかのゾーンに分割する。
推進出力設定部12は、推進モデルを利用して、ゾーン毎に、気象海象と個別の船型に対応して所定の船速を出すのに必要な推進出力を算出・設定する。推進モデルは、船舶の推進速度と消費電力の関係を示すモデルである。
船内電力予測部13は、船内電力予測モデルを利用して、ゾーン毎に、熱と電力の需要及び消費量の最適値を算出する。船内電力予測モデルは、推進機器や船内機器の必要電力と消費電力の関係を示すモデルである。
発電最適化部14は、発電モデルを利用して、ゾーン毎に、エンジンの発電効率の良い(最良な)組み合わせを算出する。発電モデルは、エンジンや排熱回収機器の運転状況と発電量の関係を示すモデルである。
電力需要予測部15は、推進出力設定部12、船内電力予測部13、及び発電最適化部14の算出結果に基づいて、燃料消費量が最小の航路及び船速配分を選定する。また、電力需要予測部15は、燃料消費量が最小の航路及び船速配分に基づき、運航計画を作成するようにしても良い。
[燃料消費量に関する分析]
本発明では、対象船舶として、ディーゼルエンジン等で直接プロペラを回転させる一般的な船舶ではなく、エンジンで駆動する発電機で発電し電動機でプロペラを回転させて船の推進力を得る電気推進船を想定している。電気推進船の場合、燃料消費量に影響するのは、(a)推進器特性と(b)発電機特性である。
(a)推進器特性
推進に必要な電力は、推進抵抗の条件に応じて異なる。
同じ推進抵抗の条件では、消費電力が船速の約3乗に比例するので、極力船速を上げず、船速一定の運転とすることが望ましい。
推進抵抗が異なる条件では、推進抵抗が大きい場合に船速を維持するために過大な電力が必要なため、推進抵抗が大きい場合に相対的に船速を低下させることが望ましい。
なお、推進抵抗は、気象海象や船特性等により決まる。気象では風速・風向の影響を受け、海象では潮流や波浪の影響、船特性では喫水や船体表面状態の影響を受ける。
総合的には、船速と電力の両方が比較的一定になるようバランスを取ることが望ましい。
(b)発電機特性
発電機の消費電力―出力特性の関係から、適切なポイントを取ることが望ましい。
一般的に、発電機は、図2に示すように、約80%負荷の時の効率が最良となるように設計されている。複数の発電機を組み合わせて使用する場合は、使用する発電機の組み合わせを最適化することができる。例えば、4台の発電機を組み合わせて使用する場合は、図3に示すように、均等負荷運転(ア)を行うよりも、発電負荷を適正化した運転(イ)を行うほうが、燃料消費効率が良くなる。なお、均等負荷運転(ア)は、動作対象の全ての発電機の負荷を均等(例えば100%を台数で割った値)にして、発電出力が増加するにつれて、均等に負荷を上げていき同時に約80%負荷(最良効率)にする運転である。また、発電負荷を適正化した運転(イ)は、現在動作中の発電機の負荷を約80%負荷(最良効率)で維持したまま、新たに起動した発電機の負荷を最初は低くして徐々に上げていき約80%負荷(最良効率)に近づけていく運転である。
推進のみの電力を仮定した時と、総合的に、推進と推進以外(その他)の電力を仮定した時の夫々について、ある推進抵抗の時の推進電力に係る船速と燃料消費量の関係は、図4のように表される。このとき、排熱回収等も考慮してエネルギー利用最適化した条件下で設定されるものである。
例えば、発電エンジンの燃料消費効率(燃費)の高い負荷帯(80〜90%)の運転となるように推進電力又は船内電力を調整する。或いは、発電エンジンの燃料消費効率(燃費)の低い負荷帯(50%未満)の運転とならないように推進電力又は船内電力を調整する。
[推進電力又は船内電力の調整]
ゾーン分割部11は、出発から到着までを、時間或いは位置で、いくつかのゾーンに分割する。すなわち、1航海分のスケジュールや航路を、時間帯や区間等で、いくつかのゾーンに分割する。
推進出力設定部12は、ゾーン毎に、気象海象情報から推進抵抗を予測し、推進抵抗に応じた推進出力を算出・設定する。船内電力予測部13は、ゾーン毎に、気象情報とイベント計画から船内電力を予測する。このとき、発電最適化部14は、熱(排熱回収)も考慮して発電量が最適化されている発電モデルを利用して、ゾーン毎に、エンジンの発電効率の良い(最良な)組み合わせを算出する。
電力需要予測部15は、1航海分について、スケジュールを確保した上で、燃料消費量が最小となる運航計画を提案する。具体的には、各ゾーンの船速配分と船内イベントスケジュールの調整可能なものを調整し、合計の燃料消費量を最小化する。すなわち、ゾーン毎の運航計画の組み合わせの最適化を行い、1航海分の運航計画を作成する。
[燃料消費量の最小化(最適化)]
ゾーン毎の運航計画の組み合わせの最適化検討に、変分法の停留値(stationary value)の手法を用いることが考えられる。この手法は、数学的にある区間における最大値或いは最小値を求める方法である。この手法を用いることで、現状のポイントに対し、個別のパラメータの各々を微小に変更しながら最大或いは最小となるパラメータの組み合わせを求めることができる。
具体的には、以下の通りである。
出発から到着までを分割したゾーンの各々について、推進速度もしくは運航距離(以下、xとする)と、必要な電力もしくは燃料消費量の関係(以下、F(x)とする)を示すデータを作成する。ここでは、一例として、船速と燃料消費量の関係を示すデータを作成する。
スケジュールは変えないで(式では「Σx=const.」)、船速増加あたりの燃料消費量増大の傾きを一定(「dF(x)/dx=一定」)とすることである。なお、「const」は、定数(constant)を意味し、指定した変数が定数である(中身を変更できない)ことを指定するための修飾子である。const修飾子を付加した変数は定数となる。
その意味は、各ゾーンでの船速増加あたりの燃料消費量増大の傾き(以下、dF(x)/dxをΔと記載する)について、Δが小さいゾーンは船速を上昇(増大)させ、Δが大きいゾーンはその分船速低下させると、運航距離は変わらずに合計の燃料消費量を低減できるということである。
2つのゾーン(例えば、ゾーン1、ゾーン2)では、各ゾーンのΔが等しくなるまで船速変化することで、燃料消費量を削減することができる。例えば、図5に示すように、Δが等しい場合(Δ1=Δ2)、燃料消費量を極小とすることができる。Δが逆転した場合、それ以上船速変化させると逆に燃料消費量が増大することとなる。すなわち、「dF1(x)/dx1=dF2(x)/dx2」かつ「Σx=const.」の場合、燃料消費量を極小とすることができる。なお、ゾーンがn個(3個以上)に拡張された場合も同様に考えられ、「dF1(x)/dx1=dF2(x)/dx2=・・・=dFn(x)/dxn」かつ「Σx=const.」の場合、燃料消費量を極小とすることができる。
上記の方法では、関数F(x)の極小値を取ることができるが、それが最小値であるかどうかは不明である。そのため、最小値を取るための方法として、以下の(a)、(b)のいずれか或いは両方の手法で最小を得ることができる。
(a)まず、関数F(x)の傾きを所定の範囲(広い範囲であると好適)で取得して、およそ(大体)の範囲を絞り、絞られた範囲で微小範囲での傾き(dF/dx)を適正化する。
(b)仮に得られた「dF/dx=一定」のところから、「x」をずらしてみて(例えば利用エンジンが異なる範囲まで)燃料消費量が更に改善しないか確認し、改善すれば同様に他のゾーンの「x」も順にずらして最適化する。
[具体例]
図6を参照して、上記の手法について具体的に説明する。
(1)ステップS101
平均船速とその船速±3kn(ノット)の3点のデータから、xとdF(x)/dxの関数を作成し、各時間で「Σx=const.」かつ「dF(x)/dx=一定」の速度配分(船速)を算出する。
(2)ステップS102
算出した船速とその船速±3knの3点のデータから、xとdF(x)/dxの関数を作成し、各時間で「Σx=const.」かつ「dF(x)/dx=一定」の速度配分を算出する。
(3)ステップS103
算出した船速とその船速±1knの3点のデータから、xとdF(x)/dxの関数を作成し、各時間で「Σx=const.」かつ「dF(x)/dx=一定」の速度配分を算出する。
(4)ステップS104
算出した船速とその船速±0.2knの3点のデータから、xとdF(x)/dxの関数を作成し、各時間で「Σx=const.」かつ「dF(x)/dx=一定」の速度配分を算出する。
(5)ステップS105
前回算出した船速と今回算出した船速との船速差が全て±0.1kn以下であるか確認する。船速差が全て±0.1kn以下でなければ、再度、速度配分を算出する(ステップS104に戻る)。
(6)ステップS106
船速差が全て±0.1kn以下であれば、発電機の負荷率が最低の時間(時間帯)において、発電機の運転台数を減らし、残りの台数での「Σx=const.」かつ「dF(x)/dx=一定」の速度配分を算出する。
(7)ステップS107
算出した船速に基づいて、燃料費が削減したか確認する。
(8)ステップS108
燃料費が削減していれば、発電機の負荷率が次に低い時間(時間帯)において、発電機の運転台数を減らし、残りの台数での「Σx=const.」かつ「dF(x)/dx=一定」の速度配分を算出する。
(9)ステップS109
更に、算出した船速に基づいて、燃料費が削減したか確認する。燃料費が削減していれば、再度、速度配分を算出する(ステップS108に戻る)。
(10)ステップS110
燃料費が削減していなければ、1つ前の速度配分が最適と判断する。
なお、上記の手法は、実際のデータから変分法の停留値を推定する手法の一例に過ぎない。実際には、このような例に限定されるものではない。
ここでは、簡易的に3点から変分法の停留値を推定したが、実際には、更に多くのデータから変分法の停留値を推定しても良いし、実際に関数を推定した上で変分法の停留値を推定しても良い。
また、「船速配分適正化」のみに限定されるものではなく、「実質的な船速配分適正化」であれば良い。ここでは、「x」を「船速」としたが、他の例として、「推進出力」や「推進器回転数」等の、船速と関連する推進パラメータを使用しても良い。船速と関連する推進パラメータであれば、実質的に、船速の関数に変換することと同義である。
また、説明の簡略化のため、3点のデータを経験的に選定する事例について説明しているが、この例に限定されるものではない。本実施形態では、演算や選定を繰り返して3点のデータの範囲を徐々に小さくしていくことが重要である。
[燃費改善結果]
図7A、図7Bに示すような従来の船長任せの運航を上記の手法で適正化すると、図8A、図8Bに示すような燃費改善結果が得られ、燃料消費量を4.6%削減できた。
[本実施形態固有の作用・効果]
船舶の運航スケジュールを確保した上で、燃料費を削減できる。また、その削減方法を定量的に決めることができるため、船長の勘に頼らずとも、システムで最適運航を提示できるようになる。
<第2実施形態>
以下に、本発明の第2実施形態について説明する。
第1実施形態で説明した変分法の停留値による運航支援は、航海開始時(事前)に運航計画を立てることになるが、実際の運航は、運航計画に従った船速或いは発電電力になるように推進出力を調整することとなる。その調整は、自動プログラム制御であっても良いが、手動制御であっても良い。
手動制御の場合、監視用のモニタ画面に、制御すべき船速、発電電力、推進力のいずれか或いはこれらの組み合わせについて、運航計画における設定値(予測値)と実際の測定値(実測値)が表示される。通常、船長又は運転者は、予測値と実測値を一致させるように運転する。
本実施形態では、運航計画の通りに運転できなかった場合や、気象海象の予測と実際のずれ等が生じた場合、手動制御でその後の運航計画を再計算して運航計画を修正することができる。例えば、運航計画に従って自動運航で一定時間或いは一定区間(距離)航行する毎に、計画的に(自動的に)運航計画の見直し修正を入れることにより、最終的なずれを予防できる。
[システム構成]
図9に示すように、本実施形態に係る運航支援システムは、第1実施形態の構成に加え、更に、手動制御部16と、運航計画修正部17を備える。
手動制御部16は、監視用のモニタ画面に、制御すべき船速、発電電力、推進力のいずれか或いはこれらの組み合わせについて、運航計画における設定値(予測値)と実際の測定値(実測値)を表示する。
運航計画修正部17は、手動で運航計画を再計算して運航計画を修正するためのユーザインターフェースを提供する。また、運航計画修正部17は、運航計画における設定値(予測値)と実際の測定値(実測値)のずれを自動的に検知し、自動的に運航計画を再計算して運航計画を修正する機能を有していても良い。自動操縦(オートパイロット/オートクルーズ)の場合は、自動的に運航計画を修正するほうが好適であると考えられる。
[本実施形態固有の作用・効果]
船舶の運航スケジュールを確保した上で、燃料消費量(燃料費)を削減できる。また、その削減方法を定量的に決めることができるため、船長の勘に頼らずとも、システムで最適運航を提示できるようになる。
<第3実施形態>
以下に、本発明の第3実施形態について説明する。
第2実施形態では、運航計画の通りに運転できなかった場合や、気象海象の予測と実際のずれ等が生じた場合、運航計画を修正していたが、本実施形態では、図10に示すように、船内イベントの開始時間や船内機器等の運転時間をずらすことで、燃料消費量の増大を抑え、予測値と実測値を近づけるように調整する。
[システム構成]
図11に示すように、本実施形態に係る運航支援システムは、第1実施形態又は第2実施形態の構成に加え、更に、調整対象抽出部18と、電力緩和制御部19を備える。
調整対象抽出部18は、ゾーン毎に、イベントや機器運転のうち、時間をずらすことができるもの(シフト可能なもの)を抽出しておく。この場合、船内電力予測部13は、ゾーン毎に、熱と電力の需要及び消費量と共に、抽出されたイベントや機器運転の時間も変数として適正化することができる。
電力緩和制御部19は、予測と異なる場合(例えば、エンジン稼動数が計画より増大する場合)に、一時的に船内の電力消費量を緩和する。船内の電力消費量を緩和する手法・機構の例として、船員室や客室(不在の部屋)や公共空間(public space)の空調の設定温度調整や運転制御、不在の部屋の照明の制御等が考えられる。
例えば、船内イベントで客が公共空間に集まる場合には、客室に不在の部屋が増えると予想されるため、公共空間の電力消費量が客室全体の電力消費量よりも少ない場合、公共空間と客室全体の電力消費量の差分だけ、船内の電力消費量を緩和することができる。また、イベントスケジュールに合わせて、客室や公共空間の空調や照明の制御を行うことができる。
<各実施形態の関係>
なお、上記の各実施形態は、組み合わせて実施することも可能である。
<ハードウェアの例示>
以下に、本発明に係る運航支援システムを実現するための具体的なハードウェアの例について説明する。
図示しないが、本発明に係る運航支援システムは、プログラムに基づいて駆動し所定の処理を実行するプロセッサと、当該プログラムや各種データを記憶するメモリと、ネットワークとの通信に用いられるインターフェースを備えた計算機等の電子機器によって実現されると考えられる。
上記のプロセッサの例として、CPU(Central Processing Unit)、ネットワークプロセッサ(NP:Network Processor)、マイクロプロセッサ(microprocessor)、マイクロコントローラ(microcontroller)、或いは、専用の機能を有する半導体集積回路(LSI:Large Scale Integration)等が考えられる。
上記のメモリの例として、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリ等の半導体記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の補助記憶装置、又は、DVD(Digital Versatile Disk)等のリムーバブルディスクや、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等の記憶媒体(メディア)等が考えられる。また、バッファ(buffer)やレジスタ(register)等でも良い。或いは、DAS(Direct Attached Storage)、FC−SAN(Fibre Channel − Storage Area Network)、NAS(Network Attached Storage)、IP−SAN(IP − Storage Area Network)等を用いたストレージ装置でも良い。
なお、上記のプロセッサ及び上記のメモリは、一体化していても良い。例えば、近年では、マイコン等の1チップ化が進んでいる。したがって、電子機器等に搭載される1チップマイコンが、上記のプロセッサ及び上記のメモリを備えている事例も考えられる。
上記のインターフェースの例として、ネットワーク通信に対応した基板(マザーボード、I/Oボード)やチップ等の半導体集積回路、NIC(Network Interface Card)等のネットワークアダプタや同様の拡張カード、アンテナ等の通信装置、接続口(コネクタ)等の通信ポート等が考えられる。
また、ネットワークの例として、インターネット、LAN(Local Area Network)、無線LAN(Wireless LAN)、WAN(Wide Area Network)、バックボーン(Backbone)、ケーブルテレビ(CATV)回線、固定電話網、携帯電話網、WiMAX(IEEE 802.16a)、3G(3rd Generation)、専用線(lease line)、IrDA(Infrared Data Association)、Bluetooth(登録商標)、シリアル通信回線、データバス等が考えられる。
なお、運航支援システムの内部の構成要素は、モジュール(module)、コンポーネント(component)、或いは専用デバイス、又はこれらの起動(呼出)プログラムでも良い。
但し、実際には、これらの例に限定されない。
<備考>
以上、本発明の実施形態を詳述してきたが、実際には、上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があっても本発明に含まれる。
11… ゾーン分割部
12… 推進出力設定部
13… 船内電力予測部
14… 発電最適化部
15… 電力需要予測部
16… 手動制御部
17… 運航計画修正部
18… 調整対象抽出部
19… 電力緩和制御部

Claims (7)

  1. 電気推進船の運航支援システムであって、
    1航海分のスケジュールを時間或いは位置でいくつかのゾーンに分割するゾーン分割部と、
    前記ゾーン毎に、気象海象情報から推進抵抗を予測し、推進抵抗に応じた推進出力を算出する推進出力設定部と、
    前記ゾーン毎に、気象情報及びイベント計画から船内電力を予測する船内電力予測部と、
    前記ゾーン毎に、エンジンの発電効率の最良な組み合わせを算出する発電最適化部と、
    前記1航海分のスケジュールを確保した上で、前記各ゾーンの合計の燃料消費量が最小の航路及び船速配分を選定して運航計画を作成する電力需要予測部と
    を具備し、
    前記電力需要予測部は、変分法の停留値の手法を用いて、現状のポイントに対し、個別のパラメータの各々を微小に変更しながら最大或いは最小となるパラメータの組み合わせを求め、ゾーン毎の運航計画の組み合わせの最適化を行い、1航海分の運航計画を作成する
    運航支援システム。
  2. 請求項1に記載の運航支援システムであって、
    前記電力需要予測部は、
    船速と燃料消費量との関係を示すデータを作成する手段と、
    前記1航海分のスケジュールを確保した状態で、前記各ゾーンでの船速増加あたりの燃料消費量増大の傾きについて、前記傾きが小さいゾーンでは船速を上昇させ、前記傾きが大きいゾーンでは船速を低下させ、前記傾きを一定にする手段と、
    前記各ゾーンの前記傾きが等しくなるまで船速を変化させ、燃料消費量を極小化する手段と
    を具備する
    運航支援システム。
  3. 請求項2に記載の運航支援システムであって、
    前記電力需要予測部は、
    前記傾きを所定の範囲で取得して範囲を絞り、前記絞られた範囲で微小範囲での前記傾きを適正化する手段と、
    前記各ゾーンの順に、前記傾きが一定のところから船速をずらして燃料消費量の改善状況を確認し、改善すれば継続し、改善しなければ終了し、全体での燃料消費量を最適化する手段と
    を更に具備する
    運航支援システム。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の運航支援システムであって、
    手動制御の場合、監視用のモニタ画面に、制御すべき船速、発電電力、推進力のうち少なくとも1つについて、運航計画における設定値と実際の測定値を表示する手動制御部と、
    運航計画を再計算して運航計画を修正するためのユーザインターフェースを提供する運航計画修正部と
    を更に具備する
    運航支援システム。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の運航支援システムであって、
    ゾーン毎に、イベントや機器運転のうち、時間をずらすことができるものを抽出する調整対象抽出部と、
    予測と異なる場合に、抽出されたイベントや機器運転の時間をずらし、一時的に船内の電力消費量を緩和する電力緩和制御部と
    を更に具備し、
    前記船内電力予測部は、ゾーン毎に、熱と電力の需要及び消費量と共に、抽出されたイベントや機器運転の時間も変数として適正化する
    運航支援システム。
  6. 電気推進船に対し、電子機器により実施される運航支援方法であって、
    1航海分のスケジュールを時間或いは位置でいくつかのゾーンに分割することと、
    前記ゾーン毎に、気象海象情報から推進抵抗を予測し、推進抵抗に応じた推進出力を算出することと、
    前記ゾーン毎に、気象情報及びイベント計画から船内電力を予測することと、
    前記ゾーン毎に、エンジンの発電効率の最良な組み合わせを算出することと、
    前記1航海分のスケジュールを確保した上で、前記各ゾーンの合計の燃料消費量が最小の航路及び船速配分を選定して運航計画を作成する際に、変分法の停留値の手法を用いて、現状のポイントに対し、個別のパラメータの各々を微小に変更しながら最大或いは最小となるパラメータの組み合わせを求め、ゾーン毎の運航計画の組み合わせの最適化を行い、1航海分の運航計画を作成することと
    を含む
    運航支援方法。
  7. 電気推進船に対する運航支援用プログラムであって、
    1航海分のスケジュールを時間或いは位置でいくつかのゾーンに分割するステップと、
    前記ゾーン毎に、気象海象情報から推進抵抗を予測し、推進抵抗に応じた推進出力を算出するステップと、
    前記ゾーン毎に、気象情報及びイベント計画から船内電力を予測するステップと、
    前記ゾーン毎に、エンジンの発電効率の最良な組み合わせを算出するステップと、
    前記1航海分のスケジュールを確保した上で、前記各ゾーンの合計の燃料消費量が最小の航路及び船速配分を選定して運航計画を作成する際に、変分法の停留値の手法を用いて、現状のポイントに対し、個別のパラメータの各々を微小に変更しながら最大或いは最小となるパラメータの組み合わせを求め、ゾーン毎の運航計画の組み合わせの最適化を行い、1航海分の運航計画を作成するステップと
    を電子機器に実行させるための
    運航支援用プログラム。
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